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明細書 :細線導波路付2次元フォトニック結晶の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3920260号 (P3920260)
公開番号 特開2005-172933 (P2005-172933A)
登録日 平成19年2月23日(2007.2.23)
発行日 平成19年5月30日(2007.5.30)
公開日 平成17年6月30日(2005.6.30)
発明の名称または考案の名称 細線導波路付2次元フォトニック結晶の製造方法
国際特許分類 G02B   6/12        (2006.01)
G02B   6/13        (2006.01)
FI G02B 6/12 Z
G02B 6/12 M
請求項の数または発明の数 9
全頁数 12
出願番号 特願2003-409209 (P2003-409209)
出願日 平成15年12月8日(2003.12.8)
審査請求日 平成17年8月10日(2005.8.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
発明者または考案者 【氏名】野田 進
【氏名】浅野 卓
【氏名】初田 蘭子
【氏名】宮井 英次
個別代理人の代理人 【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
審査官 【審査官】日夏 貴史
参考文献・文献 特開2004-109627(JP,A)
特開2001-272555(JP,A)
宮井英次 et al.,2002年秋季第63回応用物理学会学術講演会講演予稿集,2002年 9月24日,第3分冊,p.912, 25p-YA-5
E.Miyai et al.,Applied Physics Letters,2002年11月11日,Vol.81 No.20,p.3729-3731
初田蘭子 et al.,2003年春季第50回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,2003年 3月27日,第3分冊,p.1133, 28p-YN-11
調査した分野 G02B 6/12 - 6/13
特許請求の範囲 【請求項1】
スラブ層とクラッド層が積層して成る板材から、導波路を有する2次元フォトニック結晶と該導波路に接続された細線導波路とから成る細線導波路付2次元フォトニック結晶を製造する方法であって、
a)スラブ層にエッチング剤導入用空孔を形成する空孔形成工程、
b)エッチング剤導入用空孔を通してエッチング剤を導入することにより、エッチング剤導入用空孔の周囲のクラッド層をエッチングして該クラッド層に空洞を形成するエアブリッジ空洞形成工程、
c)前記空洞に面するスラブ層に空孔を周期的に設け、該空孔を設けた領域の外縁からその内側に向けて結晶内導波路を形成することにより2次元フォトニック結晶を形成すると共に、該空孔を設けた領域の外縁からその外側に向けて前記結晶内導波路の延長上に所定の幅だけスラブ層を残し、その周囲のスラブ層を除去することにより細線導波路を形成する細線導波路付2次元フォトニック結晶形成工程、
の順に行うことを特徴とする細線導波路付2次元フォトニック結晶の製造方法。
【請求項2】
前記結晶内導波路が、前記空孔を形成しない領域を線状に設けたものであることを特徴とする請求項1に記載の細線導波路付2次元フォトニック結晶の製造方法。
【請求項3】
前記エッチング剤導入用空孔を細線導波路付2次元フォトニック結晶となる領域の外側のスラブ層に形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の細線導波路付2次元フォトニック結晶の製造方法。
【請求項4】
前記エッチング剤導入用空孔が、前記結晶内導波路の両側に、該結晶内導波路から所定の距離だけ離れて略平行に配列されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の細線導波路付2次元フォトニック結晶の製造方法。
【請求項5】
前記細線導波路付2次元フォトニック結晶形成工程において、スラブ層を細線導波路の両側を溝状に空孔配置の1周期分以上の幅だけ除去することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の細線導波路付2次元フォトニック結晶の製造方法。
【請求項6】
前記細線導波路付2次元フォトニック結晶形成工程において、更に前記2次元フォトニック結晶の外縁部のスラブ層を前記細線導波路から空孔配置の5周期分以上除去することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の細線導波路付2次元フォトニック結晶の製造方法。
【請求項7】
前記板材のスラブ層がSiから成り、クラッド層がSiO2から成ることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の細線導波路付2次元フォトニック結晶の製造方法。
【請求項8】
前記板材がSOI基板であることを特徴とする請求項7に記載の細線導波路付2次元フォトニック結晶の製造方法。
【請求項9】
前記エッチング剤がフッ化水素水溶液であることを特徴とする請求項7又は8に記載のエアブリッジ構造を有する2次元フォトニック結晶の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、波長分割多重通信等の分野において分合波器等に用いられる2次元フォトニック結晶、特に結晶外部に光を導出又は導入するための細線導波路を接続した細線導波路付2次元フォトニック結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、周期屈折率分布をもった光学機能材料であるフォトニック結晶が注目されている。フォトニック結晶は、その周期屈折率分布により光や電磁波のエネルギーに対してバンド構造が形成され、光や電磁波の伝播が不可能となるエネルギー領域(フォトニックバンドギャップ)が形成されるという特徴を有する。なお、本明細書及び特許請求の範囲において用いる「光」には、光以外の電磁波も含むものとする。
【0003】
フォトニック結晶中に適切な欠陥を導入することにより、エネルギー準位(欠陥準位)がフォトニックバンドギャップ中に形成される。これにより、フォトニックバンドギャップ中のエネルギーに対応する波長(周波数)範囲のうち、欠陥準位のエネルギーに対応する波長の光のみがその欠陥の位置において存在可能になる。この欠陥を線状に設けることにより導波路が形成され、点状に設けることにより光共振器が形成される。この点状欠陥において共振する光の波長(共振波長)はその形状や屈折率に依存する。
【0004】
この共振器及び導波路を用いて様々な光デバイスを作製することが検討されている。例えば、この共振器を導波路の近傍に配置することにより、導波路内を伝播する様々な波長の光のうち共振器の共振波長に一致する波長の光を導波路から共振器を介して外部へ取り出す分波器として機能すると共に、共振器の共振波長を有する光を外部から共振器を介して導波路に導入する合波器としても機能する分合波器となる。このような分合波器は、例えば光通信の分野において、一本のファイバに複数の波長の光を伝播させてそれぞれの波長の光に別個の信号を乗せる波長分割多重方式通信に用いることができる。
【0005】
フォトニック結晶には1次元結晶、2次元結晶及び3次元結晶があるが、このうち2次元フォトニック結晶は製造が比較的容易であるという利点を有する。その一例として、特許文献1には、高屈折率の板材(スラブ)に、その材料よりも屈折率の低い物質を周期的に配列した2次元フォトニック結晶であって、その周期的配列を線状に欠陥させた導波路と、周期的配列を乱す点状欠陥を導波路に隣接して設けた2次元フォトニック結晶及び光分合波器が記載されている。なお、上記のように2次元フォトニック結晶内に形成される導波路を、本出願では「結晶内導波路」と呼ぶ。
【0006】

【特許文献1】特開2001-272555号公報([0019]~[0032]、図1)
【0007】
2次元フォトニック結晶において、高屈折率であるスラブ内に周期的に配置される低屈折率領域を空気(すなわち、空孔)とするのが、屈折率の差を大きくすることができるという点、及び製造上の容易さの点より、最も一般的である。
【0008】
特許文献1に記載の2次元フォトニック結晶においては、スラブは上下共に空気に接する。前述のとおり、スラブと空気の間の屈折率の差が大きいことから、こうすることにより、結晶内導波路内を伝播する光はその大半が全反射によりスラブ内に閉じこめられ、高い伝播効率を得ることができる。
【0009】
このような2次元フォトニック結晶において、外部から導波路へ光を導入し、又は導波路から外部へ光を導出するために、本願発明者らは、この2次元フォトニック結晶に細線導波路を接続した細線導波路付2次元フォトニック結晶について検討している。その一例を図1に示す。2次元フォトニック結晶10はスラブ11に空孔12を周期的に配置することにより形成され、空孔12を1列分欠損させることにより結晶内導波路13が形成される。細線導波路14は結晶内導波路の延長上に接続される。この細線導波路をスラブと同じ材料で形成することにより、2次元フォトニック結晶と細線導波路を一体のものとすることができる。
【0010】
本願発明者らは、結晶内導波路及び細線導波路を導波する光の周波数と波数の関係(導波モード)を計算した。その結果、図1のように細線導波路の全ての面が空気に接する場合には、細線導波路には2種類の導波モードが存在することが明らかになった。すなわち、1本の導波路内で両モードが同時に導波することとなり、1つの周波数に対して2つの波数の光が存在し得るマルチモードとなる。両モードの光は伝播速度が異なるため、このようなマルチモードの存在は光通信の際に障害となる可能性がある。
【0011】
一方、図2のように、細線導波路14の1つの側面に細線導波路の屈折率よりも低く空気の屈折率よりも高い屈折率を有する材料からなるクラッド部材15を設けた場合には、図3に示すように、細線導波路の導波モードは、1つの周波数に対して1つの波数の光のみが存在し得るシングルモードとなり、上記問題は生じない。
【0012】
以上のように、細線導波路付2次元フォトニック結晶では、2次元フォトニック結晶の方はスラブの上下共に空気に接し(従って、クラッド部材には接しない)、一方、細線導波路の方はクラッド部材に接することが望ましい。
【0013】
スラブの上下共に空気に接する2次元フォトニック結晶(但し、細線導波路は設けられていない)を製造する方法が特許文献1に記載されている。その方法においては、InP又はSiから成る層(以下、「スラブ層」とする)の下にInGaAsP又はSiO2から成る層(以下、「クラッド層」)を有する基板を用いている。まず、スラブ層を貫通する空孔を周期的に形成することにより、2次元フォトニック結晶を形成する。その際、空孔の大きさや配置を適宜設定することにより点状欠陥や結晶内導波路を形成する。次に、形成した空孔からエッチング剤を導入することにより、空孔の下にあるクラッド層をエッチングする。この時、一定の時間以上エッチングを行うことにより、空孔の間にあるクラッド層もエッチングし、空孔を設けた領域、即ち2次元フォトニック結晶の下部全体に1つの空洞を形成するようにする。このように製造された2次元フォトニック結晶では、空洞の上に2次元フォトニック結晶のスラブによる橋を架けたような架橋状の構造が形成されるため、本出願ではこのような構造を「エアブリッジ構造」と呼び、この空洞を「エアブリッジ空洞」と呼ぶ。
【0014】
2次元フォトニック結晶と細線導波路を一体で形成する場合、細線導波路付2次元フォトニック結晶を製造するときには、スラブ層に2次元フォトニック結晶と細線導波路のパターンを一緒に形成し、エッチング等により一挙に作成するのが自然である。しかし、こうして形成した細線導波路付2次元フォトニック結晶の、2次元フォトニック結晶部分の下にエッチングによりエアブリッジ空洞を設けようとすると、エッチング剤が細線導波路の周囲からクラッド層に浸入し、2次元フォトニック結晶の下部のみならず細線導波路の直下もエッチングされてしまう。そのため、細線導波路がクラッド層に接しなくなり、マルチモード伝播となる。また、強度不足から細線導波路が折損する恐れがある。これを防ぐために細線導波路の周囲をマスクしたとしても、細線導波路とマスクとの隙間からエッチング剤が浸入することを完全に防ぐことは難しく、やはり細線導波路の直下の一部がエッチングされてしまう。
【0015】
また、細線導波路が結晶内導波路の延長線上からずれると、結晶内導波路と細線導波路の間の導波効率が低下する。そのため、細線付2次元フォトニック結晶を製造する際には、結晶内導波路と細線導波路とができるだけ所定の位置関係からずれないようにすることが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、2次元フォトニック結晶のスラブは上下共に空気に接し、該2次元フォトニック結晶に接続された細線導波路の下部にはクラッド部材が設けられた細線導波路付2次元フォトニック結晶を製造する方法であって、2次元フォトニック結晶が有する結晶内導波路と細線導波路との位置関係のずれが生じない製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために成された本発明は、スラブ層とクラッド層が積層して成る板材から、導波路を有する2次元フォトニック結晶と該導波路に接続された細線導波路とから成る細線導波路付2次元フォトニック結晶を製造する方法であって、
a)スラブ層にエッチング剤導入用空孔を形成する空孔形成工程
b)エッチング剤導入用空孔を通してエッチング剤を導入することにより、エッチング剤導入用空孔の周囲のクラッド層をエッチングして該クラッド層に空洞を形成するエアブリッジ空洞形成工程
c)前記空洞に面するスラブ層に空孔を周期的に設け、該空孔を設けた領域の外縁からその内側に向けて結晶内導波路を形成することにより2次元フォトニック結晶を形成すると共に、該空孔を設けた領域の外縁からその外側に向けて前記結晶内導波路の延長上に所定の幅だけスラブ層を残し、その周囲のスラブ層を除去することにより細線導波路を形成する細線導波路付2次元フォトニック結晶形成工程
の順に行うことを特徴とする。
【発明の実施の形態及び効果】
【0018】
本発明の細線導波路付2次元フォトニック結晶の製造方法では、スラブ層とクラッド層が積層して成る板材を材料とする。なお、以下では説明の都合上、クラッド層の上にスラブ層が形成されているように記載する場合があるが、本発明の細線導波路付2次元フォトニック結晶はスラブ層を上側、クラッド層を下側にして使用されることに限定されず、任意の向きに配置して使用することができる。板材には、スラブ層とクラッド層に続いて更に他の層が積層されているものも含まれる。例えば、Siの厚膜上にSiO2薄膜を形成し、その上にSi薄膜を形成した、市販のSOI(Silicon On Insulator)基板を用いることができる。SOI基板の場合、Si薄膜がスラブ層となり、SiO2薄膜がクラッド層となる。SiO2薄膜の下にあるSi厚膜は、これらスラブ層及びクラッド層を支える基板の役割を有する。
【符号の説明】
【0019】
まず、スラブ層を貫通する空孔を形成する。この空孔をここでは「エッチング剤導入用空孔」と呼ぶ。エッチング剤導入用空孔は、後述のように、完成後に細線導波路付2次元フォトニック結晶となる領域の外側に設けることが望ましく、更に結晶内導波路の両側に該結晶内導波路から所定の距離だけ離れて略平行に配列されるように設けることがより望ましい。エッチング剤導入用空孔は、例えば各種半導体装置の製造に用いられるフォトリソグラフィや電子線リソグラフィあるいはドライエッチング等により形成する。
【0020】
次に、エッチング剤導入用空孔を通して、クラッド層にエッチング剤を導入する。エッチング剤は空孔からクラッド層に浸入し、空孔の下部及びその周囲のクラッド層をエッチングする。これにより、空孔から一定の範囲内にエアブリッジ空洞が形成される。エッチング剤には、既存のエッチング液やエッチングガスを用いることができる。例えばクラッド層がSiO2から成る場合にはフッ化水素溶液を用いることができる。
【0021】
次に、エアブリッジ空洞に面するスラブ層、即ちエアブリッジ空洞上のスラブ層に空孔を周期的に設ける。これにより屈折率の周期的分布が形成されるため、空孔を設けた領域内は2次元フォトニック結晶になる。ここで空孔を設ける領域は、エアブリッジ空洞の領域と完全に一致する必要はなく、それよりも多少大きく、又は小さくてもよい。また、空孔を設ける際、併せて結晶内導波路を形成する。結晶内導波路の一端又は両端が空孔を設けた領域の外縁部に達するようにする。結晶内導波路は、一般的には空孔の周期配列の線状の乱れにより形成されるが、典型的には空孔を形成しない領域を線状に設けることにより形成される。なお、その両側の空孔配置を寄せることにより幅を狭めたり、又は逆に拡げても、結晶内導波路として十分に作用する。更に、周囲の空孔とは異なる径の空孔を線状に配置したり、別異の物質を埋め込むことによってももちろん結晶内導波路を形成することができる。2次元フォトニック結晶には、必要に応じて点状欠陥を形成する。点状欠陥は、例えば、周期的に配置された空孔とは径の異なる空孔を配置したり、空孔を欠損させること等により形成される。この工程における空孔の形成は、エッチング剤導入用空孔と同様にフォトリソグラフィや電子線リソグラフィあるいはドライエッチング等により行うことができる。
【0022】
上記のように2次元フォトニック結晶を形成すると共に、前記結晶内導波路の端部から、エアブリッジ空洞の外側に向けて細線導波路を形成する。この細線導波路は、その幅の分だけスラブ層を残して、その周囲のスラブ層を除去することにより形成される。エアブリッジ空洞の外側にはクラッド層が残されているため、こうして形成される細線導波路はその下部にクラッド層を有するものとなる。スラブ層の除去は、空孔を形成する際と同様に、フォトリソグラフィや電子線リソグラフィあるいはドライエッチング等により行うことができる。
【0023】
仮に2次元フォトニック結晶と細線導波路を別の工程でそれぞれ形成した場合、結晶内導波路と細線導波路のうち先の工程で形成された一方の導波路の位置に合わせるように他方の導波路を形成するため、後の工程において導波路同士の位置合わせを行う必要があり、そのための手間と時間を要する。それに対して本願発明では、2次元フォトニック結晶の形成と細線導波路の形成が同じ工程(細線導波路付2次元フォトニック結晶形成工程)において行われるため、そのような位置合わせのための作業を行う必要がなく、そのための手間と時間を要しないうえ、両者の位置を確実に合わせることができる。
【0024】
エッチング剤導入用空孔は、完成後に細線導波路付2次元フォトニック結晶となる領域の外側に設けることが望ましい。これにより、エッチング剤導入用空孔の形成やエッチングによるエアブリッジ空洞の形成を比較的ラフに行うことができ、製造工程を簡略化することができる。一方、エッチング剤導入用空孔を細線導波路付2次元フォトニック結晶の領域内に設けて、このエッチング剤導入用空孔を、後に形成する2次元フォトニック結晶の空孔の一部や点状欠陥等とすることも可能である。但し、この場合には、細線導波路付2次元フォトニック結晶形成工程において、エッチング剤導入用空孔と2次元フォトニック結晶のパターンとの位置合わせを行う必要がある。
【0025】
更に、エッチング剤導入用空孔は、複数の空孔が結晶内導波路の両側に該結晶内導波路から所定の距離だけ離れて略平行に配列されることが望ましい。
エッチング剤導入用空孔を1個のみ設けた場合には、エアブリッジ空洞の外縁の形状は円形となる。また、エッチング剤導入用空孔を複数個線状に設けた場合には、各空孔からそれぞれ同じ距離だけクラッド層がエッチングされるため、エアブリッジ空洞の外縁の形状はエッチング剤導入用空孔の列に平行な帯状となるが、その帯の端部はいちばん端の空孔を中心とする円弧状の形状となる。これらの円弧形状である外縁に前記結晶内導波路の端部を配置すると、その位置から該導波路の幅方向にはエアブリッジ空洞が存在しない。そのため、2次元フォトニック結晶の一部がエアブリッジ空洞に接しなくなる。
それに対して、結晶内導波路の両側に該結晶内導波路から所定の距離だけ離れて略平行にエッチング剤導入用空孔を配列すると、形成されるエアブリッジ空洞は、上記エアブリッジ空洞の帯の側部が重なった形状となる。この場合、結晶内導波路の端部では、上記帯状エアブリッジ空洞の円弧形状の領域が交差する形状となる。そのため、結晶内導波路の端部から該導波路の幅方向にもエアブリッジ空洞が存在し、2次元フォトニック結晶全体がエアブリッジ空洞に接するようにすることができる。前記のように結晶内導波路から光が浸み出しても、その光はクラッド層により損失することがない。
【0026】
細線導波路形成工程においてスラブ層を除去する際には、細線導波路の部分以外のスラブ層を全て除去する必要はなく、細線導波路の両側に溝を形成するようにスラブ層を除去するだけでもよい。例えば電子線リソグラフィによりスラブ層を除去する場合には、スラブ層を広範囲に亘って除去するよりも、このように溝の部分のみを除去する方が容易である。
【0027】
この溝の幅は、以下の理由により、空孔配置の1周期分以上とすることが望ましい。なお、本出願においては、「空孔配置の周期」は最隣接の空孔間の距離を意味する。
図4に、細線導波路を伝播する光の電場の分布を、該導波路の幅方向について示す。横軸は細線導波路の幅方向の位置を表し、図中の符号41の範囲が細線導波路の領域に該る。縦軸は電場の振幅を表し、縦軸の絶対値が大きいほど電場が大きいことを示す。電場は細線導波路41の外側にも存在するが、細線導波路の端から空孔配置の1周期分aだけ離れた位置42では電場はほぼ0になる。従って、上記溝の幅が空孔配置の1周期分以上あれば、細線導波路の側方のスラブ層には光がほとんど漏れないことになる。
【0028】
2次元フォトニック結晶内では、光は結晶内導波路から該導波路の幅方向に或る程度の範囲まで浸み出しつつ伝播する(但し、光はその範囲よりも外側には拡がらないため、このことが原因となって結晶内導波路の光が損失することはない)。この浸み出しの範囲は、空孔配置の5周期分程度である。細線導波路の両側の溝よりも外側に残されたスラブ層と2次元フォトニック結晶とが直接接続していると、結晶内導波路から浸み出した光がこの残されたスラブ層に浸入するため、光が損失する原因となる。そこで、前記細線導波路形成工程において、更に2次元フォトニック結晶の外縁部のスラブ層を細線導波路から空孔配置の5周期分以上除去することが望ましい。これにより、結晶内導波路から浸み出した光が溝の外側に残されたスラブ層に浸入して損失することを防ぐことができる。
【0029】
本発明により、以下の効果を得ることができる。本発明では、エアブリッジ空洞を形成した後に、エアブリッジ空洞の外側に細線導波路を形成するため、細線導波路の下部には確実にクラッド層が接するようにすることができる。そのため、この方法により製造された細線導波路は、導波モードがシングルモードとなり、マルチモードに起因する問題が生じることがない。また、エアブリッジ空洞を形成した後に、その上部に2次元フォトニック結晶を形成するため、2次元フォトニック結晶の下部には確実にエアブリッジ空洞が接するようにすることができる。そのため、2次元フォトニック結晶の上下に存在する空気とスラブとの屈折率の差により、光をスラブの面に垂直な方向に閉じこめて光の損失を最小限に抑えることができる。更に、結晶内導波路の形成と細線導波路の形成が同じ工程で行われることから、結晶内導波路と細線導波路との位置合わせを行う必要がなく、細線導波路を結晶内導波路の延長上に正しく配置することができる。
【実施例】
【0030】
本発明に係る細線導波路付2次元フォトニック結晶の製造方法の一実施例を、図5を用いて説明する。
Siを材料とするスラブ層211、SiO2を材料とするクラッド層212及びSiを材料とする基板層213の3層から成るSOI基板21を用意する。SOI基板21には市販のものを用いることができる。本実施例で用いたSOI基板21の各層の厚さは、スラブ層211が0.25μm、クラッド層212が1.5μm、基板層213が725μmである。まず、スラブ層211の表面にレジスト291を塗布し、電子ビームにより、エッチング剤導入用空孔22のパターンでレジスト291を除去する((a))。このパターンは、半径0.12μmの空孔を直線状に2列、略平行に並べたものである。これら2列の間の距離は7.2μmである。次に、エッチングガス(SF6ガス)を用いたドライエッチングにより、スラブ層211にエッチング剤導入用空孔22を穿孔する。その後、レジスト291を除去する((b))。
【0031】
次に、SOI基板21を濃度5%のフッ化水素水溶液に3分間浸す。エッチング剤導入用空孔22から浸入したフッ化水素水溶液は、スラブ層211及び基板層213のSiには影響を及ぼすことなくクラッド層212のSiO2のみをエッチングする。これにより、各エッチング剤導入用空孔22から一定の距離までクラッド層212がエッチングされ、2本の帯の側部が重なった形状のエアブリッジ空洞23が形成される((c))。図6には、このエアブリッジ空洞をSOI基板21の断面A-A'(図5(c)に図示)から見た図を示す。
【0032】
次に、スラブ層211の上にレジスト292を塗布し、電子ビームにより、空孔が周期的に配置されたパターンでレジスト292を除去する((d))。この空孔は2次元フォトニック結晶の周期屈折率分布を形成するためのものである。本実施例では、空孔の半径は0.12μm、空孔の配置は三角格子であり、その格子定数は0.42μmである。この時、結晶内導波路となる位置には空孔を形成しない。なお、結晶内導波路は、空孔の形状を他と異なるものとしたり、空孔の位置をずらすことによっても形成することができる。また、エアブリッジ空洞23の円弧形状の領域が交差する位置24に結晶内導波路の端部の位置を合わせる。この位置合わせには、市販のリソグラフィ装置が有する重ね合わせ機能を用いるとよい。結晶内導波路の幅は、本実施例では0.48μmとする。これらと共に、細線導波路を形成する位置の両側のレジスト292を、所定の幅だけ電子ビームにより除去する((d))。この溝の幅は、空孔25の1周期分とする。本実施例では、この溝を形成すると同時に、2次元フォトニック結晶の外縁部に、細線導波路に略垂直な方向の溝をレジスト292に形成する((d))。この結晶外縁部の溝の長さは、空孔25の5周期分よりも長い、空孔25の列の6列分(5.2周期分)とし、その幅は細線導波路の両側の溝の幅と同じ空孔25の1周期分とする。次に、SF6ガスを用いたドライエッチングにより、スラブ層211に空孔25及び溝26を形成する。これにより、結晶内導波路27と細線導波路28が形成される。その後、レジスト292を除去し((e))、細線導波路付2次元フォトニック結晶が完成する。
【0033】
このように製造される細線導波路付2次元フォトニック結晶では、結晶内導波路27と細線導波路28が位置24において接続される。この位置24から導波路の幅方向にエアブリッジ空洞23が形成されているため、2次元フォトニック結晶はその全体がエアブリッジ空洞に接する。そのため、結晶内導波路27を伝播する光は、該導波路から一定の範囲まで浸み出して伝播しても、その光はクラッド層212により損失することがない。
【0034】
また、結晶内導波路27の下部にエアブリッジ空洞23が形成されるため、基板層213の方向に光が漏れることがない。更に、細線導波路28の下部がクラッド層212に接することにより、細線導波路28の導波モードはシングルモードとなり、結晶内導波路27と細線導波路28の間を高い効率で光が導波することができる。細線導波路28の両側の溝26の幅が空孔25の1周期分あるため、細線導波路28の光は該導波路の側方のスラブ層211に漏れることがない。更に、溝26は結晶外縁部に、細線導波路28の光に略垂直な方向に空孔25の列の5列分形成されているため、結晶内導波路27からその幅方向に浸み出す光が細線導波路28の側方のスラブ層211に漏れることがない。
【0035】
点状欠陥を設ける場合には、図5(d)に示される前記工程において、目的位置に空孔を形成しないようにすればよい。あるいは、その位置の空孔の形状を他と異なるものとしたり、周期配列を乱すような位置に空孔を配置してもよい。図7(a)は位置61に3個分の空孔を形成しない例を、(b)は位置62に形成される空孔の径を他の空孔よりも大きくする例を、それぞれ示す図である。それ以外の工程を上記と同様に行うことにより、3個分の空孔が欠損した点状欠陥((a)の場合)、あるいは他の空孔よりも径の大きい点状欠陥((b)の場合)が設けられた、細線導波路付2次元フォトニック結晶が得られる。なお、これらの点状欠陥については、特許文献1及び特開2003-279764号公報に詳しく記載されている。
【0036】
本実施例により製造された細線導波路付2次元フォトニック結晶の走査電子顕微鏡(SEM)写真を図8に示す。(a)はスラブ層の上側から撮影したものであり、2次元フォトニック結晶31全体と細線導波路32の一部が示されている。2次元フォトニック結晶31の長手方向の全長は約100μmである。図中に変色して見える領域の下部にあるクラッド層にはエアブリッジ空洞33が形成されている。
【0037】
(b)は、結晶内導波路34と細線導波路32の境界付近を拡大したものである。エッチング剤導入用空孔35は2次元フォトニック結晶の外側に2列形成されている。2次元フォトニック結晶の空孔36は三角格子状に配列され、また、空孔36が1列分欠損した結晶内導波路34が形成されている。2本の溝37の間に細線導波路32が形成されている。溝37は更に、結晶内導波路34と細線導波路32との接続部から、細線導波路に略垂直な方向にも形成されている。この接続部付近を拡大して(c)に示す。これらの結晶内導波路34と細線導波路32とは、エアブリッジ空洞33の外縁である2つの円弧381及び382の交点39において接続されている。そのため、接続部から導波路に垂直な方向にもエアブリッジ空洞33が存在し、2次元フォトニック結晶全体がエアブリッジ空洞33上に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】細線導波路付2次元フォトニック結晶の一例を示す図。
【図2】クラッド部材を設けた細線導波路付2次元フォトニック結晶の一例を示す図。
【図3】クラッド部材を設けた細線導波路及び結晶内導波路の導波モードを示すグラフ。
【図4】細線導波路の幅方向への光の拡がりを示すグラフ。
【図5】本発明に係る細線導波路付2次元フォトニック結晶の製造方法の一実施例を示す斜視図。
【図6】エアブリッジ空洞の一例を示す、細線導波路付2次元フォトニック結晶の断面図。
【図7】本発明に係る細線導波路付2次元フォトニック結晶の製造方法において、点状欠陥を設ける例を示す斜視図。
【図8】本実施例により製造された細線導波路付2次元フォトニック結晶の走査電子顕微鏡写真。
【0039】
10、31…2次元フォトニック結晶
11…スラブ
12、25、36…空孔
13、27、34…結晶内導波路
14、28、32…細線導波路
15…クラッド部材
21…SOI基板
211…スラブ層
212…クラッド層
213…基板層
22、35…エッチング剤導入用空孔
23、33…エアブリッジ空洞
26、37…溝
291、292…レジスト
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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