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明細書 :2次元フォトニック結晶

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4025738号 (P4025738)
公開番号 特開2005-250202 (P2005-250202A)
登録日 平成19年10月12日(2007.10.12)
発行日 平成19年12月26日(2007.12.26)
公開日 平成17年9月15日(2005.9.15)
発明の名称または考案の名称 2次元フォトニック結晶
国際特許分類 G02B   1/02        (2006.01)
G02B   6/12        (2006.01)
FI G02B 1/02
G02B 6/12 Z
G02B 6/12 N
G02B 6/12 F
請求項の数または発明の数 11
全頁数 10
出願番号 特願2004-061737 (P2004-061737)
出願日 平成16年3月5日(2004.3.5)
審査請求日 平成18年9月7日(2006.9.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
発明者または考案者 【氏名】野田 進
【氏名】浅野 卓
【氏名】高山 清市
【氏名】北川 均
個別代理人の代理人 【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
審査官 【審査官】柏崎 康司
参考文献・文献 特開2002-084037(JP,A)
特開2000-249828(JP,A)
特開2001-174652(JP,A)
特開2003-279764(JP,A)
調査した分野 G02B 1/02
G02B 6/12
G02B 5/23
特許請求の範囲 【請求項1】
スラブ状の本体に該本体とは屈折率の異なる同一形状の領域を面内で周期的に配置して成る2次元フォトニック結晶であって、
前記異屈折率領域の平面形状が、頂点を角取りした多角形であることを特徴とする2次元フォトニック結晶。
【請求項2】
前記異屈折率領域が3mの対称性を有する形状であることを特徴とする請求項1に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項3】
前記多角形が正三角形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項4】
頂点を円弧状に角取りしたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項5】
前記異屈折率領域の配置が三角格子状であり、前記多角形が正三角形であり、本体の屈折率が3.15~3.55の範囲内にあって、
前記円弧の半径raが次式を満足することを特徴とする請求項4に記載の2次元フォトニック結晶。
0<r<[1.23(FF-0.34)-1.28(FF-0.34)+1.03(FF-0.34)2]
(FF:本体中の異屈折率領域の面積分率)
【請求項6】
FFの値が0.45~0.85の範囲内にあることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項7】
FFの値が0.5~0.70の範囲内にあることを特徴とする請求項6に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項8】
異屈折率領域が空孔からなることを特徴とする請求項1~7に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶に、異屈折率領域の欠陥を線状に設けて成ることを特徴とする光導波路デバイス。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶に、異屈折率領域の欠陥を点状に設けて成ることを特徴とする光共振器デバイス。
【請求項11】
請求項1~8のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶と、該2次元フォトニック結晶に異屈折率領域の欠陥を線状に設けて成る少なくとも1本の光導波路と、該光導波路の近傍に異屈折率領域の欠陥を点状に設けて成る少なくとも1個の光共振器と、を備えることを特徴とする光分合波器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、波長分割多重通信等の分野において光分合波器等に用いられる2次元フォトニック結晶に関する。なお、本願において用いる「光」には、光以外の電磁波も含むものとする。
【背景技術】
【0002】
光通信は、今後のブロードバンド通信の中心的役割を担う通信方式である。光通信の普及のために、そのシステムに使用される光部品類に対して、より高性能化、小型化、低価格化が求められている。フォトニック結晶を利用した光通信用デバイスは、このような要求を満たす次世代光通信部品の有力候補のひとつである。
【0003】
フォトニック結晶は、誘電体に周期構造を人工的に形成したものである。周期構造は一般に、誘電体本体とは屈折率が異なる領域(異屈折率領域)を本体内に周期的に設けることにより形成される。その周期構造により、結晶中に光のエネルギーに関してバンド構造が形成され、光の伝播が不可能となるエネルギー領域が形成される。このようなエネルギー領域を「フォトニックバンドギャップ」(Photonic Band Gap:PBG)と呼ぶ。PBGが形成されるエネルギー領域(波長帯)は、誘電体の屈折率や周期構造の周期により定まる。
【0004】
このフォトニック結晶中に適切な欠陥を導入することにより、PBG中にエネルギー準位(欠陥準位)が形成され、その欠陥準位に対応する波長の光のみがその欠陥の近傍に存在できるようになる。従って、このような欠陥を有するフォトニック結晶はその波長の光の光共振器として使用することができ、更に、この欠陥を線状に設けることにより導波路として使用することができる。
【0005】
本体をシリコン板、異屈折率領域を空気(空孔)とした場合、現在の光通信で一般的に使用されている波長1.25~1.65μmの近赤外光に対する結晶周期の大きさは1μm以下になり、その加工に際してはナノメートルオーダーの精度が要求される。しかし、近年の加工プロセス機の性能向上によりナノメートルスケールの加工も可能となってきたことから、光通信用フォトニック結晶は既に一部で実用化段階に入っており、偏波分散補償用フォトニック結晶ファイバーなどが実用に供されている。現在は更に、波長分割多重通信(WDM)に使用される光分合波器等の開発が実用化に向けて進められている。
【0006】
特許文献1には、本体(スラブ)に異屈折率領域を周期的に配置し、その周期的配置に欠陥を線状に設けることにより導波路を形成するとともに、その導波路に隣接して点状欠陥を形成した2次元フォトニック結晶が記載されている。この2次元フォトニック結晶は、導波路内を伝播する様々な波長の光のうち共振器の共振波長に一致する波長の光を外部へ取り出す分波器として機能すると共に、外部から導波路に導入する合波器としても機能する。
【0007】
多くの2次元フォトニック結晶では、電場が面に平行に振動するTE偏波又は磁場が面に平行に振動するTM偏波のどちらか一方の偏波の光に対してPBGが形成されるように設計される。例えば、周期構造を三角格子とし、異屈折率領域を円形(円柱状)とした場合、TE偏波に対してのみPBGが形成される。このような2次元フォトニック結晶の導波路や共振器では、TE偏波のみを使用する限り、ほとんど損失が生じない。しかし、TM偏波についてはPBGが形成されないため、TM偏波は本体内を自由に伝播してしまう。従って、両偏波を含む光が2次元フォトニック結晶の導波路や共振器に導入された場合、一方の偏波は本体内を散逸してしまうため、効率が低下する。
【0008】
そこで、TE偏波及びTM偏波に対して共にPBGを形成し、しかも両PBGが共通域を持つようにした2次元フォトニック結晶が検討されている。以下、この共通域を「完全フォトニックバンドギャップ(完全PBG)」と呼ぶ。例えば、非特許文献1には、図1(a)の平面図に示すように、スラブ11に三角形(三角柱状)の空孔12を三角格子状に周期的に配置することにより完全PBGが形成される2次元フォトニック結晶が記載されている。この2次元フォトニック結晶では、完全PBG内の波長の光は、TE偏波及びTM偏波のいずれであっても、導波路や共振器等から本体の面内方向へ漏れることがなく、効率の低下が生じない。
【0009】
また、非特許文献1の2次元フォトニック結晶では、単位格子の面積に対するその単位格子内の空孔(異屈折率領域)の面積分率であるフィリングファクタ(FF)を大きくすることにより、完全PBGの幅を拡大することができる。これにより、使用可能な波長帯域を広くすることができる。
【0010】
しかし、非特許文献1の構成では、図1(b)に示すように、FFの値を0.5にすると隣接する空孔12と接してしまうため、実際上0.5以上のFF値をとることはできない。また、0.5以下であっても、FF値を大きくすると、三角形の頂点における本体の接続部分が細くなり、スラブの強度が低下するため、実用上は、FF値を0.45以下にしなければならない。このように、非特許文献1の構成では、設定可能な完全PBG、及びそれにより定まる、使用可能な波長帯域の広さに限界があった。
【0011】

【特許文献1】特開2001-272555号公報([0023]~[0027]、[0032]、図1、図5~6)
【非特許文献1】北川均 他、『2次元フォトニック結晶スラブにおける完全フォトニックバンドギャップ』、第50回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集、社団法人応用物理学会、2003年3月、pp. 1129
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、目的とする波長帯域において十分に広い完全PBG幅を得ることができる2次元フォトニック結晶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために成された本発明は、
スラブ状の本体に該本体とは屈折率の異なる同一形状の領域を面内で周期的に配置して成る2次元フォトニック結晶であって、
前記異屈折率領域の平面形状が、頂点を角取りした多角形であることを特徴とする。
【発明の実施の形態及び効果】
【0014】
本発明では、スラブ状の本体に、同一形状の異屈折率領域を周期的に配置することにより、2次元フォトニック結晶を形成する。異屈折率領域は、本体とは屈折率の異なる有形部材を本体内に埋め込むことにより形成することもできるが、空気(即ち、空孔)とするのが、屈折率の差を大きくすることができるという点、及び製造上の容易さの点より、好適である。
【符号の説明】
【0015】
本発明では、この異屈折率領域の平面形状を、頂点を角取りした多角形とする。
まず、多角形とすることにより、円形とした場合よりも2次元結晶構造の対称性が下がる。これにより、TE偏波とTM偏波の双方に対してPBGが形成される。この両PBGが共通域を持つように多角形の形状を選択することにより、完全PBGが形成される。そのような多角形には、正三角形、正方形や正六角形がある。
【0016】
本発明では、この頂点の角を取ることにより、異屈折率領域の頂点において、隣接する異屈折率領域との間に十分な太さの本体の接続部分を確保することができるようにした。これにより、2次元フォトニック結晶として実用上必要な強度を確保しつつ、角以外の部分の異屈折率領域を大きくすることにより異屈折率領域全体の面積を大きくして、大きなFF値を得ることができる。すなわち、頂点の角を取らない場合よりも完全PBG幅を広くすることができ、光デバイス等として使用可能な波長帯域を広くすることができる。例えば、平面形状が三角形の場合には、従来、理論上はFF値を0.5以上、実際には結晶の強度を確保するために0.45以上にすることができなかったのに対して、本発明では強度を確保しつつFF値を0.45以上、更には0.5以上にもすることができる。
【0017】
頂点の角取りは、頂点を1本の直線で切断する直線的なものでもよいが、以下の理由により、円弧状であることが望ましい。上記のように、現在の光通信で一般的に使用されている波長1.25~1.65μmの近赤外光に対するフォトニック結晶では、製造の際にナノメートルスケールの加工が要求される。例えば、目的波長の中心値が1.55μmの場合、正三角形である空孔の一辺の長さは約350nmとなる。このようなスケールの加工をドライエッチング等の方法により行うと、多角形の鋭い角を出すことは難しい。そのため、容易に空孔を形成するには、頂点付近は円弧状であることが望ましい。なお、異屈折率領域が空孔ではなく、何らかの有形部材を本体内に埋め込む場合でも、同様に加工容易性の理由から、角取りを円弧状とすることは望ましい。
【0018】
本発明において頂点の角取りを行う際、原多角形の基本的形状は残すようにする必要がある。例えば、正三角形の頂点を直線で角取りする場合、仮に、一辺における切除長さを辺の長さの1/3とすれば、角取り後の形状は正六角形となり、もはや正三角形という基本的形状は失われてしまう。そのため、この場合には切除長さを辺の長さの1/3以外とする必要がある。なお、円弧状に角取りする場合には、多角形の基本的形状を失うことはないため、直線状に角取りする場合よりも大きく角取りすることができる。
【0019】
異屈折率領域の形状によっては、多角形であってもTE偏波のPBGとTM偏波のPBGに共通の帯域が形成されない、即ち完全PBGが形成されない場合がある。例えば、正方形の異屈折率領域を正方格子状に配置した場合が該当する。この場合、TM偏波のPBGが開かないため完全PBGは形成されない。しかし、TE偏波のPBGは開くため、TE偏波のみを対象とする偏波依存型デバイスに対しては、この結晶構造は有効な構造である。正方格子-正方形孔の場合、隣接孔との最近接距離は頂点間の距離ではなく、辺と辺との間の距離であり、三角形孔の場合と異なる。この場合であっても加工が容易であるという効果を得ることができる。
【0020】
本発明の2次元フォトニック結晶においては、異屈折率領域の形状が3回回転対称軸とその回転軸を含む垂直鏡映面を持つ対称性を有することが望ましい。この対称性は、国際表記であるヘルマンモーガン表記では「3m」と表され、シェーンフリース表記では「C3v」と表される。このような3m対称性を有する2次元フォトニック結晶では、完全PBGが得られることが、本願発明者の一部により明らかにされている。3mの対称性を有する異屈折率領域の頂点付近を上記のような曲線にすることにより、幅の広い完全PBGを有する2次元フォトニック結晶を得ることができる。
【実施例】
【0021】
本発明に係る2次元フォトニック結晶の一実施例を図2~4に示す。本実施例の2次元フォトニック結晶は、図2に示すように、スラブ状の本体21に、三角格子(周期a)状に空孔22を設けたものである。空孔22は、図3(a)に示すように、その平面形状は基本的に正三角形23(破線)であり、各頂点を半径raの内接円の円弧24で角取りしたものである。
【0022】
なお、図3(b)に示すように、各頂点を直線で角取りしたものであってもよいが、空孔22を電子ビーム照射で製造する場合を考慮すると、電子ビームによる加工跡をそのまま利用することができるという点で、(a)のように円弧状とすることが望ましい。
【0023】
図4に、作製した2次元フォトニック結晶の電子顕微鏡写真を示す。シリコンから成るスラブ本体21内に、正三角形の頂点を円弧状に角取りした形状の空孔22がきれいに形成されている。この2次元フォトニック結晶の三角格子の周期aは460nm、角の円弧の半径raは0.12a(55nm)、FF値は0.42である。
【0024】
本実施例の2次元フォトニック結晶では、各空孔の形状(正三角形の角を円弧状にしたもの)が3mの対称性を満たすため、完全PBGが形成される。ここで、FF値が0.43、raが0.15aの場合において、TE偏波及びTM偏波に対するPBGを平面波展開法により計算した。その際、本体21の屈折率は3.46(Siの屈折率)とし、TE偏波に対する有効誘電率εTEを8.92、TM偏波に対する有効誘電率εTMを6.23とした。また、使用する波長帯域の中心波長(以下、単に「中心波長」とする)を1.55μmとし、本体21の厚さを320nmとした。そして、本体の上下は空気に接しているものとした。図5に、その計算結果を示す。TE偏波に対してはPBG31が、TM偏波に対してはPBG32が形成されている。このうち、TM偏波のPBG32の波長帯域の全体がTE偏波のPBG31の波長帯域に重なっている。従って、TM偏波のPBG32の波長帯域において完全PBGが形成されているといえる。
【0025】
強度の点でも、本実施例は有利な効果を持つ。正三角形の頂点を円弧状とすることにより、隣接する空孔22同士の頂点間距離を大きくすることができる。すなわち、その部分における本体の接続部分を太くすることができる。これにより、FF値を従来の実用上の上限である0.45以上、さらには、0.5よりも大きくすることができる。図6には、一例として、半径raを0.27a、FF値を0.65としたものを示す。この場合、FF値を0.5以上としているが、隣接する空孔22との間に太さb=0.12aの接続部分(本体)を確保することができることがわかる。
【0026】
図7に、本体の屈折率が3.46、中心波長が1.55μmの場合の完全PBG幅を、様々なFF値及び半径raにおいて計算した結果を示す。(a)にはFF値が0.30~0.50の場合を示し、(b)にはFF値が0.50~0.85の場合を、(a)よりも縦軸の最大値を大きくして示す。基本的には、半径raが同じ場合にはFF値が大きくなるにつれて完全PBG幅は広くなり、FF値が同じ場合には半径raが大きくなるにつれて完全PBG幅は狭くなる傾向が見られる。そして、FF値が0.35以上(図中の破線よりも上側)の場合に半径raがある値以下の範囲で、WDMにおいて使用されるCバンド(波長1.530μm~1.565μm)の幅である35nm以上の完全PBG幅が得られている。
【0027】
次に、角の円弧の半径raとFF値が完全PBGの幅(波長幅)に及ぼす影響について考察する。FF値を同じとした場合、raを大きくすると完全PBG幅は狭くなる。しかし、raを大きくすると正三角形の基本的形状を大きくしてFF値を大きくすることができるため、前記減少効果を上回って完全PBG幅を広くすることができる。例えば、隣接空孔の頂点間の最短距離bを共に0.15aとし、(i)空孔を正三角形とした場合(FF=0.35)と、(ii)正三角形の頂点を円弧状にした場合(FF=0.47)を比較する。両者は、頂点間の最短距離b、すなわち本体の接続部分の太さが等しいため、2次元フォトニック結晶としての強度はほぼ等しいと考えられる。図7(a)に示すように、(i)の場合、完全PBG幅は約55nm(点41)であるのに対して、(ii)の場合、完全PBG幅は約130nm(点42)と大きく増加している。
【0028】
図7(a)のグラフから分かるとおり、従来の方法ではFF値を0.5以上にすることができなかったため、完全PBG幅の理論上の上限は約180nmであった(点43)。それに対し、本発明によるとFF値を0.5以上とすることができるため、図7(b)に示すように、それ以上の幅の完全PBGを得ることができる。
【0029】
なお、FF値を0.5以上とすると、raが小さい領域において完全PBG幅が狭くなる傾向が見られる。また、FF値を0.7以上とすると、raの全領域において、FF値が大きくなるにつれて完全PBG幅が小さくなる。それでも、FF値が0.85以下においては、raを適切に設定することにより従来の理論的最大値(点43)よりも大きい完全PBG幅を得ることができる。
【0030】
WDM通信においては、おおむね中心波長を1.25μm~1.65μmとして、帯域幅を35nmとする。そこで、図2の構成において、いくつかの中心波長に対して、FF値を変えながら、完全PBG幅が35nmになる時の半径ra-35を計算した。その結果を図8に示す。ここでは、屈折率を3.46としたが、屈折率が3.15~3.55の範囲ではほぼ同様の結果を得ることができる。各中心波長において、図中に示した点よりも下側、即ち半径raの小さい方が、必要とされる35nm以上の完全PBG幅が形成される領域である。そして、中心波長が小さくなるほどra-35が小さくなる。そこで、中心波長が上記範囲中で最小である1.25μmの時に、ra-35の計算値を関数
f(FF)=α(FF-δ)0.5+β(FF-δ)+γ(FF-δ)2 …(1)
でフィッティングした(α, β, γ, δはフィッティングパラメータ)。その結果、α=1.23, β=-1.28, γ=1.03, δ=0.34の時、実験データによく一致した。従って、中心波長が1.25μmの時には、
0<r<[1.23(FF-0.34)-1.28(FF-0.34)+1.03(FF-0.34)2] …(2)
を満たすようにFF及びraを設定することにより、35nm以上の完全PBG幅を有する2次元フォトニック結晶を得ることができる。また、中心波長が1.25μmよりも大きい場合には、中心波長が1.25μmの場合よりも(2)式の右辺が大きくなる。従って、計算した中心波長の範囲(1.25μm~1.65μm)内では、少なくともraが(2)式の範囲内であれば、35nm以上の完全PBG幅を持つ2次元フォトニック結晶が得られる。もちろん、中心波長が1.25μm以外の場合にも上記と同様の計算を行うことにより、その波長において設定可能なraの範囲を求めることもできる。
【0031】
上記実施例では、基本形状を正三角形とし、頂点を円弧状に角取りしたものについて説明したが、基本形状が正方形や正六角形等の場合にも、本発明を適用することにより、隣接空孔の頂点間に十分な距離を確保しつつ、FF値を大きくすることができる。但し、3mの対称性を満たすという点において、正三角形を基本形状としたものがより望ましい。また、頂点付近の形状は、上記実施例では円弧状のもののみを示したが、楕円弧状等、その他の形状であってもよい。
【0032】
上記実施例では空孔(格子点)の配置を三角格子状としたが、図9(a)のように空孔22をハニカム状に配置してもよい。また、(b)に示すように、空孔の配置は図2と同様に三角格子状とし、空孔の向きを格子に対して回転(この例では30°)させてもよい。これらの場合にはいずれも、空孔の形状が3mの対称性を満たすため、隣接空孔間の距離(すなわち、フォトニック結晶の強度)を確保しつつ、FF値を大きくすることができる。
【0033】
本実施例の2次元フォトニック結晶により形成される光分合波器の一例を図10に示す。或る格子点において空孔22を設けないか、又はその大きさもしくは形状を他の空孔とは異なるものとすることにより、空孔22の欠陥を形成する。この欠陥を線状に設けることにより導波路51が形成される。なお、導波路51の場合は、本体21の面に垂直な方向に光が漏れないように、(空孔22の大きさや形状を変えるのではなく)空孔22を設けない(欠損させる)ことにより形成することが望ましい。また、導波路51の近傍に、空孔22の欠陥を点状に設けることにより光共振器52を形成する。点状欠陥は1個の空孔のみの欠陥であってもよく、また、隣接する複数個の空孔に欠陥を形成することによっても1個の光共振器が形成される。このように導波路51及び光共振器52を設けることにより、この2次元フォトニック結晶は、導波路51を流れる光のうち、所定の波長の光を導波路51から光共振器52を介して外部へ取り出す光分波器、及び所定の波長の光を外部から光共振器52を介して導波路51へ導入する光合波器として機能する。なお、この光分合波器は、空孔の形状及びそれから得られる効果を除いて、特許文献1や特開2003-279764号等に記載の光分合波器と同様である。そのため、これらの文献に記載された種々の光分合波器の構成に本発明の空孔の形状を適用したものは、本発明の範囲内に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来の2次元フォトニック結晶の一例を示す平面図。
【図2】本発明に係る2次元フォトニック結晶の一実施例を示す平面図。
【図3】本実施例の2次元フォトニック結晶における空孔の拡大図。
【図4】本実施例の2次元フォトニック結晶の電子顕微鏡写真。
【図5】完全フォトニックバンドギャップ(完全PBG)が形成される例を示すグラフ。
【図6】FF値が0.5よりも大きい空孔の周期的配置を形成する例を示す平面図。
【図7】様々なFF値及び半径raにおける完全PBG幅の計算結果を示すグラフ。
【図8】完全PBG幅が35nmになる時の半径ra-35を計算した結果を示すグラフ。
【図9】本発明の2次元フォトニック結晶の他の実施例を示す平面図。
【図10】本実施例の2次元フォトニック結晶により形成される光分合波器の一例を示す平面図。
【0035】
11、21…本体(スラブ)
12、22…空孔
31…TE偏波に対応するPBG
32…TM偏波に対応するPBG(完全PBGと一致)
51…導波路
52…光共振器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図4】
9