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明細書 :2次元フォトニック結晶及びそれを用いた光デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4297358号 (P4297358)
公開番号 特開2006-065150 (P2006-065150A)
登録日 平成21年4月24日(2009.4.24)
発行日 平成21年7月15日(2009.7.15)
公開日 平成18年3月9日(2006.3.9)
発明の名称または考案の名称 2次元フォトニック結晶及びそれを用いた光デバイス
国際特許分類 G02B   6/12        (2006.01)
FI G02B 6/12 Z
請求項の数または発明の数 9
全頁数 10
出願番号 特願2004-249582 (P2004-249582)
出願日 平成16年8月30日(2004.8.30)
審査請求日 平成19年5月24日(2007.5.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
発明者または考案者 【氏名】野田 進
【氏名】浅野 卓
【氏名】北川 均
【氏名】高山 清市
個別代理人の代理人 【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
審査官 【審査官】吉田 英一
参考文献・文献 特開2000-258645(JP,A)
特開2004-046181(JP,A)
特開2001-272555(JP,A)
特開2004-125919(JP,A)
特開2001-272557(JP,A)
特開2005-157336(JP,A)
特開2005-99672(JP,A)
特表平11-509644(JP,A)
特開2003-43274(JP,A)
高山清市、北川均、浅野卓、野田進,完全バンドギャップをもつ2次元フォトニック結晶スラブの作製と評価,2004年(平成16年)春季第51回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,日本,社団法人応用物理学会,2004年 3月28日,第3分冊,1169頁
北川均、チュティナンアロンカーン、浅野卓、野田進,2次元フォトニック結晶スラブにおける完全フォトニックバンドギャップ,2003年(平成15年)春季第50回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,日本,社団法人応用物理学会,2003年 3月27日,第3分冊,1129頁
Cecile Jamois, Ralf B. Wehrspohn, Jorg Schilling, Frank Muller, Reinald Hillebrand, and Wolfram Hergert,Silicon-Based Photonic Crystal Slabs: Two Concepts,IEEE JOURNAL OF QUANTUM ELECTRONICS,2002年 7月,Vol. 38, No. 7,p. 805 - 810
Junichiro Takeda, Masashi Akabori, Junichi Motohisa and Takashi Fukui,Formation of AlxGa1-xAs periodic array of micro-hexagonal pillars and air holes by selective area MOVPE,Applied Surface Science,2002年 5月 8日,Vol. 190,p. 236 - 241
調査した分野 G02B 6/12
特許請求の範囲 【請求項1】
スラブ状の本体に該本体とは屈折率の異なる同一形状の領域を周期的に配置して成る2次元フォトニック結晶であって、
前記異屈折率領域を配置する格子点の配列は6mmの対称性を満たし、
前記異屈折率領域は、本体に平行な面による断面形状が3mの対称性を満たし、
前記異屈折率領域の上面及び下面の双方が前記本体と同じ屈折率を有する部材で閉塞されていることを特徴とする2次元フォトニック結晶。
【請求項2】
前記本体の上面又は下面の一方又は双方が該本体とは屈折率の異なるクラッド部材に接することを特徴とする請求項1に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項3】
前記クラッド部材が空気よりも屈折率が高く、本体の材料よりも屈折率が低い材料から成ることを特徴とする請求項2に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項4】
前記本体がSiから成り、前記クラッド部材がSiO2から成ることを特徴とする請求項3に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項5】
前記異屈折率領域が空孔から成ることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶に、異屈折率領域の欠陥を線状に設けて成ることを特徴とする光導波路デバイス。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶に、異屈折率領域の欠陥を点状に設けて成ることを特徴とする光共振器デバイス。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶と、該2次元フォトニック結晶に異屈折率領域の欠陥を線状に設けて成る少なくとも1本の光導波路と、該光導波路の近傍に異屈折率領域の欠陥を点状に設けて成る少なくとも1個の光共振器と、を備えることを特徴とする光合分波器。
【請求項9】
スラブ状の本体に空孔を周期的に配置して成る2次元フォトニック結晶の製造方法において、
前記本体に空孔を形成する空孔形成工程と、
前記空孔に接する前記本体の上面又は下面の一方又は双方に、該本体と同じ屈折率を有する板状の部材を接着する工程と、
を有することを特徴とする2次元フォトニック結晶の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、波長分割多重通信等の分野において光分合波器等に用いられる2次元フォトニック結晶に関する。なお、本願において用いる「光」には、可視光以外の電磁波も含むものとする。
【背景技術】
【0002】
光通信は、今後のブロードバンド通信の中心的役割を担う通信方式である。光通信の普及のために、そのシステムに使用される光部品類に対して、より高性能化、小型化、低価格化が求められているが、このような要求を満たす次世代光通信部品の有力候補のひとつとして、フォトニック結晶を利用した光通信用デバイスがある。これらは既に一部で実用化段階に入っており、偏波分散補償用フォトニック結晶ファイバーなどが実用に供されている。現在では更に、波長分割多重通信(Wavelength Division Multiplexing:WDM)に使用される光分合波器等の開発が実用化に向けて進められている。
【0003】
フォトニック結晶は、誘電体に周期構造を人工的に形成したものである。この周期構造は一般に、誘電体本体とは屈折率が異なる領域(異屈折率領域)を誘電体本体内に周期的に配置することにより形成される。その周期構造により、結晶中に光のエネルギーに関するバンド構造が形成され、光の伝播が不可能となるエネルギー領域が形成される。このようなエネルギー領域は「フォトニックバンドギャップ」(Photonic Band Gap:PBG)と呼ばれる。PBGが形成されるエネルギー領域(波長帯)は、誘電体の屈折率や周期構造の周期により定まる。
【0004】
また、このフォトニック結晶中に適切な欠陥を導入することにより、PBG中にエネルギー準位(欠陥準位)が形成され、その欠陥準位に対応する波長の光のみがその欠陥の近傍に存在できるようになる。従って、このような欠陥を有するフォトニック結晶はその波長の光の光共振器として使用することができる。更に、この欠陥を線状に設けることにより、導波路として使用することができる。
【0005】
上記技術の一例として、特許文献1には、本体(スラブ)に異屈折率領域を周期的に配置し、その周期的配置に欠陥を線状に設けることにより導波路を形成するとともに、その導波路に隣接して点状欠陥を形成した2次元フォトニック結晶が記載されている。この2次元フォトニック結晶は、導波路内を伝播する様々な波長の光のうち共振器の共振波長に一致する波長の光を外部へ取り出す分波器として機能すると共に、外部から導波路に導入する合波器としても機能する。
【0006】
特許文献1に記載のものを含め、多くの2次元フォトニック結晶では、電場が本体に平行に振動するTE偏波又は磁場が本体に平行に振動するTM偏波のどちらか一方の偏波の光に対してPBGが形成されるように設計される。従って、両偏波を含む光が2次元フォトニック結晶の導波路や共振器に導入された場合、一方の偏波は本体内を散逸してしまうため、導波路の伝播効率が低下してしまう。例えば、周期構造を三角格子とし、異屈折率領域を円形(円柱状)とした場合には、TE偏波に対してのみPBGが形成されるが、このような2次元フォトニック結晶の導波路や共振器ではTE偏波の損失はほとんど生じないのに対し、TM偏波はPBGが形成されないため本体内を自由に伝播し、損失が発生する。
【0007】
そこで、TE偏波及びTM偏波の両方に対してPBGを形成し、その両PBGが共通域を持つようにした2次元フォトニック結晶が検討されている。以下、この共通域を「完全フォトニックバンドギャップ(完全PBG)」と呼ぶ。例えば、非特許文献1には、図1に示すように、スラブ状の本体11に三角形(三角柱状)の空孔12を三角格子状に周期的に配置することにより完全PBGが形成される2次元フォトニック結晶が記載されている。この2次元フォトニック結晶では、完全PBG内の波長の光は、TE偏波及びTM偏波のいずれであっても、導波路や共振器等から本体内に漏れることがなく、導波路の伝播効率の低下が生じない。
【0008】

【特許文献1】特開2001-272555号公報([0023]~[0027]、[0032]、図1、図5~6)
【非特許文献1】北川均 他、『2次元フォトニック結晶スラブにおける完全フォトニックバンドギャップ』、第50回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集、社団法人応用物理学会、2003年3月、pp. 1129
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
完全PBGが大きければ、TE偏波及びTM偏波のいずれも本体内に漏れることがないという条件下において、例えば導波路の透過波長帯域と共振器の共振波長とを合わせやすくなる等、光デバイスの設計の自由度が大きくなるという効果がある。しかし、上述したように、これまで、完全PBGが形成される2次元フォトニック結晶に関する研究は鋭意行われてきたものの、十分に大きな完全PBGが得られているとは言えない。
【0010】
そこで本発明が解決しようとする課題は、従来の2次元フォトニック結晶よりも大きな完全PBGを有する2次元フォトニック結晶及びその2次元フォトニック結晶を用いた光デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係る2次元フォトニック結晶は、スラブ状の本体に該本体とは屈折率の異なる同一形状の領域を周期的に配置して成る2次元フォトニック結晶であって、前記異屈折率領域を配置する格子点の配列は6mmの対称性を満たし、前記異屈折率領域は、本体に平行な面による断面形状が3mの対称性を満たし、前記異屈折率領域の上面及び下面の双方が前記本体と同じ屈折率を有する部材で閉塞されていることを特徴とする。
【0013】
前記本体の上面又は下面の一方又は双方は、本体とは屈折率の異なるクラッド部材に接するようにすることができる。この場合、クラッド部材には空気よりも屈折率が高く、本体の材料よりも屈折率が低い材料から成るものを用いることができる。例えば、本体にはSiから成り、前記クラッド部材にはSiO2から成るものを用いる。
【0014】
前記異屈折率領域は空孔から成ることが望ましい。
【0015】
本発明に係る光導波路デバイスは、上記本発明の2次元フォトニック結晶に異屈折率領域の欠陥を線状に設けて成るものである。また、本発明に係る光共振器デバイスは、上記本発明の2次元フォトニック結晶に異屈折率領域の欠陥を点状に設けて成るものである。本発明に係る光合分波器は、上記本発明の2次元フォトニック結晶と、該2次元フォトニック結晶に異屈折率領域の欠陥を線状に設けて成る少なくとも1本の光導波路と、該光導波路の近傍に異屈折率領域の欠陥を点状に設けて成る少なくとも1個の光共振器と、を備えるものである。
【0016】
本発明に係る2次元フォトニック結晶の製造方法は、スラブ状の本体に空孔を周期的に配置して成る2次元フォトニック結晶の製造方法において、
前記本体に空孔を形成する空孔形成工程と、
前記空孔に接する前記本体の上面又は下面の一方又は双方に、該本体と同じ屈折率を有する板状の部材を接着する工程と、
を有することを特徴とする。
【0017】
なお、本願では便宜上、2次元フォトニック結晶の本体や異屈折率領域の「上面」、及び「下面」という表現を用いるが、これは2次元フォトニック結晶の向きを限定するものではなく、単に一つの方向を示すに過ぎない。
【発明の実施の形態及び効果】
【0018】
本発明に係る2次元フォトニック結晶は、異屈折率領域の形状及びその周期的配置に特徴を有するが、スラブ状の本体にそれとは屈折率の異なる領域(異屈折率領域)を周期的に配置する点では、例えば特許文献1に記載されたような従来の2次元フォトニック結晶と同様である。異屈折率領域は、本体とは屈折率の異なる何らかの部材を埋め込むことによっても形成することができるが、本体に空孔を設けることにより形成することもできる。後者の方が作製が容易であり、本体との屈折率の差も十分に大きくすることができるため望ましい。
【符号の説明】
【0019】
この異屈折率領域の形状について説明する。なお、以下、本体に平行な方向を平面方向とし、本体の厚さ方向を垂直方向とする。異屈折率領域の平面形状は、3回回転対称軸とその回転軸を含む垂直鏡映面を持つ対称性を有する形状とする。この対称性は、国際表記であるヘルマンモーガン表記では「3m」と表され、シェーンフリース表記では「C3v」と表される。このような対称性を有する平面形状には、例えば正三角形状のものや、正三角形の3個の頂点をそれぞれ中心とした3個の円形の異屈折率領域の集合体等がある。
【0020】
異屈折率領域の平面形状は、垂直方向に一様でないようにする。すなわち、図2に示すように、本体21の平行方向の断面22で切断した異屈折率領域23の断面24の形状が、その面22をそれに垂直な方向に移動したときに、変化するようにする。その変化の形態の例を図3(a)~(f)に示す。図3(a)は、本体21に垂直な面25(図4)で切断したときの異屈折率領域23の縁26の形状が、異屈折率領域23の垂直中心線27に向かって凸状となっているものであり、(b)は凹状、(c)はコの字状、(d)は傾斜線となっているものである。また、(e)に示すように異屈折率領域23の上面及び下面を閉塞したものや、(f)に示すように異屈折率領域23の上面又は下面の一方のみを閉塞したものであってもよい。
【0021】
本体に多数設けられる異屈折率領域の周期的配置は、その配置する位置の格子点の配列が、ヘルマンモーガン表記による表現で6mm(シェーンフリース表記ではC6v)となるようにする。
【0022】
上記のように、平行方向の断面形状が3mの対称性を有する異屈折率領域を、6mmの対称性を有する格子点状に複数配置することにより、TE偏波とTM偏波の双方に対するPBGが形成される。そして、更に垂直方向の断面形状を一様でないものとすることにより、平面形状が垂直方向に一様である場合よりもTM偏波のPBGが大きくなり、それによりTE偏波のPBGと重なり、あるいはその重なりが大きくなる。これにより、従来よりも大きな完全PBGを得ることができる。その結果、2次元フォトニック結晶を用いた光デバイスの設計の自由度が大きくなる。
【0023】
本発明の2次元フォトニック結晶の本体が有する上下2つの面のうち、一方又は双方に、本体とは屈折率の異なる部材(クラッド部材)を設けることにより、完全PBGを大きくすることができる。これは、このようなクラッド部材が本体の上下に存在することにより本体に垂直な方向の電磁界分布が平坦化し、これが最終的にフォトニックバンドギャップの起源となる誘電体バンドと空気バンドの電磁界分布全体としての差を大きくできるためである。クラッド部材の材料は、本体よりも屈折率の大きいものでも小さいものでもよいが、多くの2次元フォトニック結晶では通常、本体の材料には、空気との屈折率の差を大きくするために、屈折率の大きいものが用いられるため、クラッド部材には本体よりも屈折率の小さいものを用いるのが自然である。また、本体の材料にSiを用いた場合には、クラッド部材の材料にはSiO2を用いるとよい。この場合、Siの層とSiO2の層が積層した市販のSOI(Silicon On Insulator)基板を利用することができる。
【0024】
本発明の2次元フォトニック結晶は、異屈折率領域の欠陥を線状に設けることにより光導波路デバイスとなり、欠陥を点状に設けることにより光共振器デバイスとなる。また、このような光導波路の近傍に光共振器を設けることにより光合分波器となる。これらの光デバイスでは、線状又は点状に配置される欠陥の位置のみにおいて、完全PBG内に光が存在することのできるエネルギー準位(欠陥準位)が形成される。この欠陥準位に対応する波長(周波数)を持つ光は、欠陥内には存在することができるのに対して、欠陥の外部である2次元フォトニック結晶内では、完全PBGが存在するためにTE偏波、TM偏波の双方が伝播することができない。そのため、欠陥内の光が欠陥外の2次元フォトニック結晶内に漏れ出すことを防ぐことができる。これにより、光導波路や光共振器における光の損失を抑制することができる。
【0025】
なお、異屈折率領域の本体に平行な面による断面形状が3mの対称性を満たさず垂直方向に一様でない場合には完全PBGは形成されない。しかし、該断面形状が3mの対称性を満たさず垂直方向に一様でない異屈折率領域を有する2次元フォトニック結晶は、(i)TE-PBGが大きくなる、(ii)導波路の透過波長帯域が大きくなる、(iii)光共振器のQ値が大きくなる、という効果を奏する。
【実施例】
【0026】
(1)本発明の2次元フォトニック結晶の一実施例
本発明の2次元フォトニック結晶の一構造を図5の本体の斜視図(a)、本体に平行に切断したときの断面図(b)、及び本体に垂直に切断したときの断面図(c)を用いて説明する。まず、例えばSiから成るスラブ状の本体31に空孔32を周期aで配置する。この空孔32の配置は三角格子状であり、この三角格子は6mmの対称性を満たす。但し、空孔32は、その上面及び下面が閉塞された形状を有する(図5(c))ため、本体の表面には現れない。各空孔32の平面形状は図5(b)に示されるように正三角形であり、この形状は3mの対称性を満たしている。
【0027】
(2)製造方法
図6を用いて、図5に示したような2次元フォトニック結晶の製造方法の一例について説明する。
本実施例では、SiO2から成る基板41上に、本体となるSi薄膜42が形成されたSOI基板40を用いる(a)。Si薄膜42上にレジスト43を塗布し、レジスト43に平面形状が正三角形(図6はSi薄膜42に垂直な方向の断面図であるため、この形状は示されていない。)である孔44を三角格子状に形成する(b)。孔44は、露光や電子線描画等、半導体装置の製造において通常用いられる方法により形成することができる。次に、エッチングガス(例えばSF6ガス)を用いたドライエッチング等の方法によりSi薄膜42に正三角柱形の空孔45を穿孔する(c)。ここで、エッチングを行う時間を調節することにより、空孔45の穿孔を途中で止め、孔44の基板41側にSi薄膜42が一部残るようにする。次に、レジストを除去する(d)。これとは別に、SiO2から成る基板46上にSi薄膜47を形成したものを作製しておき、Si薄膜42とSi薄膜47を重ね(e)、両者を接着する(f)。この接着には、例えば900~1100℃に加熱して融着する等の方法を用いることができる。これによりSi薄膜42と47は一体となる。最後に、エッチング液(例えばHF水溶液)を用いたウエットエッチング等の方法によりSiO2基板41及び46を除去する(g)。なお、後述するようにクラッド部材を設ける場合には、SiO2基板41及び46を除去することなくそれをクラッド部材とすればよい。
【0028】
(3)本発明の2次元フォトニック結晶の他の実施例
図7は空孔の平行方向の断面形状を正三角形以外の形状とした場合の、本体の平行方向の断面図である。本体に垂直に切断したときの空孔の断面形状は図5(c)と同じである。図7(a)の例では、正三角形52の頂点53a、53b、53cを中心とする3個の円柱状の空孔54a、54b、54cを設け、この3個の空孔が一体となって1個の異屈折率領域55として作用する。また、この3個の空孔から成る異屈折率領域は3mの対称性を満たしている。そして、このような異屈折率領域55を三角格子状に配置する。この異屈折率領域55を配置する格子点の配列は6mmの対称性を満たす。図7(b)は、図7(a)の3個の円柱状の空孔54a、54b、54cが重なり合うことにより、1個の空孔56となったものである。上記の例と同様に、空孔56を三角格子状に配置する。この例においても、空孔56は3mの対称性を満たし、空孔56を配置する格子点の配列は6mmの対称性を満たす。
【0029】
(4)本実施例の2次元フォトニック結晶の完全PBG値
以下に、上記本実施例の2次元フォトニック結晶のうちのいくつかについて、完全PBGの幅の値(以下、完全PBG値とする)を計算により求めた結果を示す。計算には、3次元時間領域差分(Finite Difference Time Domain:FDTD)法を用いた。この3次元FDTD法は、非特許文献1等で用いられた平面波展開法よりも複雑であるが、結果の値がより正確である。併せて、TM偏波に係るPBG(以下、TM-PBGとする)とTE偏波に係るPBG(以下、TE-PBGとする)の値を示す。上記のように完全PBGはTM-PBGとTE-PBGが重なるエネルギー領域である。以下の計算結果では、PBG値は、周波数で表したPBG幅ΔωをそのPBGの中心値ω0で除して百分率で表したもので示す。
【0030】
[比較例]
まず、比較のために、従来の2次元フォトニック結晶について、TM-PBG値と完全PBG値を計算した(図8)。(a)~(c)はいずれも、本体81はSiから成る(後述の計算例1~3においても同様)。空孔82の平面形状は(i)正三角形、又は(ii)正三角形の3個の頂点をそれぞれ中心とした3個の円から成る。空孔の体積を本体の体積で除した値であるフィリングファクタfairは、(i)では0.45、(ii)では0.58であった。本体81の厚さは空孔82の周期aの0.8倍とした。また、本体81は、(a)では上面及び下面の双方が空気に接し、(b)では上面が空気に、下面が本体よりも十分に厚いSiO2から成るクラッド部材83に接し、(c)では上面及び下面の双方がクラッド部材83に接する。これらの各構成についてTM-PBG値と完全PBG値の計算結果を図8に示す。この結果、完全PBGが形成されるのは(a)(i)の場合と(b)(ii)の場合のみであり、その値は0.4%及び1.2%であった。
【0031】
[計算例1]
次に、本発明の2次元フォトニック結晶の例として、空孔82の平面形状が正三角形であって、空孔82の上面及び下面が閉塞された2次元フォトニック結晶について、完全PBG値を計算した(図9)。空孔82のフィリングファクタはfair=0.45であった。空孔の高さは0.6aであり、空孔82の上面及び下面を閉塞する覆いの高さは上面、下面のいずれも0.1aであった。この図9(a)~(c)の構成は、本体81の上面及び下面が、上記図8の(a)~(c)の各構成に対応して、同様に空気、又はSiO2から成るクラッド部材83に接している。
【0032】
計算の結果、完全PBG値は(a)2.1%、(b)2.6%、(c)3.1%となり、上記図8の比較例の場合よりも大きくなることが明らかになった。この時、TM-PBG値も(a)2.1%、(b)2.6%、(c)3.1%となった。(b)、(c)については、対応する図8の比較例においてTM-PBGが開かないのに対して本実施例ではTM-PBGが開くため、本計算例の場合のみ完全PBGが開く。また、(a)については対応する図8の比較例よりもTM-PBGが大きくなることにより、完全PBGも大きくなる。また、本計算例より、クラッド部材83を設けることにより、完全PBGはより大きくなることが明らかになった。
【0033】
[計算例2]
次に、図7(a)に示した2次元フォトニック結晶、即ち空孔82の平面形状が3個の円の中心を正三角形の3つの頂点に配置した形状であって、空孔82の上面及び下面が閉塞された2次元フォトニック結晶について、完全PBG値を計算した(図10)。(a)では空孔及び覆いの高さをそれぞれ0.6a及び0.1a(上面、下面のいずれも)とし、(b)では空孔及び覆いの高さをそれぞれ0.7a及び0.05aとした。(c)は(b)の上下にSiO2から成るクラッド部材83を設けたものである。
【0034】
計算の結果、完全PBG値は(a)2.0%、(b)3.5%、(c)3.2%となり、上記比較例の場合よりも大きい。このことより、本体の厚さが同じ(0.8a)場合において、空孔の高さを変化させると完全PBGの大きさも変化することが明らかになった。ここで、(a)及び(c)の場合には、計算例1の場合とは異なり、完全PBGはTM-PBGよりも小さい。これは計算例1及び図10(b)の場合にはTM-PBGがTE-PBGのエネルギーの範囲に完全に含まれるのに対して、図10(a)及び(c)の場合にはTM-PBGがTE-PBGの一部にのみ重なるためである。
【0035】
なお、図10(a)と(b)を比較すると、空孔の高さを大きくする(覆いの高さを小さくする)ことにより完全PBGが大きくなるようにも思われるが、更に空孔の高さを大きくして覆いをなくした場合(図8(a)(ii))には完全PBGが形成されないことに留意する必要がある。
【0036】
[計算例3]
さらに、空孔82の平面形状が図7(b)に示すものであって、下面のみが閉塞された2次元フォトニック結晶について、完全PBG値を計算した(図11)。(a)では空孔の高さを0.75a、空孔の下面のみに設けた覆いの高さを0.05aとした。(b)は、(a)の下面のみにSiO2から成るクラッド部材83を設けたものである。計算の結果、完全PBG値は(a)4.4%、(b)3.0%となった。(a)では上記各実施例よりも大きな完全PBGが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】スラブ状の本体に三角柱状の空孔を周期的に設けた従来の2次元フォトニック結晶の一例を示す斜視図。
【図2】本発明における異屈折率領域の形状を説明するための図。
【図3】本発明における異屈折率領域の形状の例を示す図。
【図4】異屈折率領域の形状を説明するための断面を示す斜視図。
【図5】本発明の2次元フォトニック結晶の一実施例を示す斜視図(a)、平面図(b)及び断面図(c)。
【図6】本発明の2次元フォトニック結晶の製造方法の一実施例を示す断面図。
【図7】本発明の2次元フォトニック結晶の他の実施例を示す平面図。
【図8】比較例の2次元フォトニック結晶の完全PBGの計算結果を示す図。
【図9】本実施例の2次元フォトニック結晶の完全PBGの計算結果を示す図。
【図10】本実施例の2次元フォトニック結晶の完全PBGの計算結果を示す図。
【図11】本実施例の2次元フォトニック結晶の完全PBGの計算結果を示す図。
【0038】
11、21、31、81…本体
12、32、54a、54b、54c、56、61、62、63、64、82…空孔
22…本体21の平行方向の断面
23、55…異屈折率領域
24…断面22で切断した異屈折率領域23の断面
25…本体21に垂直な面
26…面25で切断したときの異屈折率領域23の縁
51…格子点
83…クラッド部材
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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