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明細書 :粉茶の製造方法および粉茶製造用ボールミル装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4936395号 (P4936395)
登録日 平成24年3月2日(2012.3.2)
発行日 平成24年5月23日(2012.5.23)
発明の名称または考案の名称 粉茶の製造方法および粉茶製造用ボールミル装置
国際特許分類 A23F   3/06        (2006.01)
FI A23F 3/06 Z
請求項の数または発明の数 12
全頁数 17
出願番号 特願2007-511199 (P2007-511199)
出願日 平成18年3月31日(2006.3.31)
国際出願番号 PCT/JP2006/306931
国際公開番号 WO2006/106964
国際公開日 平成18年10月12日(2006.10.12)
優先権出願番号 2005101399
優先日 平成17年3月31日(2005.3.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年2月19日(2009.2.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】592074175
【氏名又は名称】株式会社福寿園
発明者または考案者 【氏名】日高 重助
【氏名】吉門 進三
【氏名】白川 善幸
【氏名】伊藤 嘉昭
【氏名】早川 潔
【氏名】渡辺 祐子
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査官 【審査官】平塚 政宏
参考文献・文献 特開2005-040745(JP,A)
特開2004-275937(JP,A)
特開2003-093907(JP,A)
特開2002-238457(JP,A)
特開2000-135057(JP,A)
特開2001-045971(JP,A)
特開2003-251207(JP,A)
特開2001-178444(JP,A)
特開平11-165089(JP,A)
調査した分野 A23F
B02C 17/00 - 17/24
特許請求の範囲 【請求項1】
合成樹脂製のポットを備えたボールミル装置を使用し、前記ポットに粉茶の原料と合成樹脂製のボールを封入し、前記ポットを公転運動、または公転および自転運動させて前記粉茶の原料を粉砕することを特徴とする粉茶の製造方法。
【請求項2】
前記ボールの直径の2.6~4倍の大きさの内径を有する前記ポットを使用し、かつ同一の前記ボールを4~8個、前記ポット中に封入することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポットの上端開口を蓋体によって密封した状態で、前記ポットの内部空間における周壁面から底壁面への移行部分および周壁面から上壁面への移行部分の一方または両方を、所定の曲率半径をもって湾曲させて形成し、前記移行部分の曲率半径を前記ボールの曲率半径と等しくまたはそれより大きくしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポットの上端開口を蓋体によって密封した状態で、前記ポットの内部空間の高さが前記ボールの直径の約1.1~1.9倍となるように、前記ポットを形成したことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ボールを、第1の合成樹脂から形成された球形の核と、前記核の外側を取り巻く、第2の合成樹脂から形成された外皮層からなる2層構造としたことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ボールの内部に金属球からなる芯を組み込み、または前記ボールの内部を中空としたことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記合成樹脂が、ポリアセタール、テフロン(登録商標)、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリメチルペンテン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレートのうちの1つからなるグループより選ばれたポリマー、または当該ポリマーの混合物、または当該ポリマーの構成モノマーからなるコポリマーであることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ポット内の温度が所定温度以下となるように回転数と回転継続時間を設定して、前記ポットを公転運動、または公転および自転運動させることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
粉茶を製造するのに適したボールミル装置であって、合成樹脂製のポットと合成樹脂製のボールを備え、かつ、前記ポットを公転運動、または公転および自転運動させることが可能なボールミル装置。
【請求項10】
前記ポットの内側空洞部の径は、前記ボールの直径の2.6~4倍の大きさを有し、かつ、前記ポットには、同一の前記ボールが4~8個封入されるようになっていることを特徴とする請求項9に記載のボールミル装置。
【請求項11】
前記ポットの上端開口が蓋体によって密封された状態で、前記ポットの内部空間における周壁面から底壁面への移行部分および前記周壁面から上壁面への移行部分の一方または両方が、所定の曲率半径をもって湾曲し、前記移行部分の曲率半径は前記ボールの曲率半径と等しくまたはそれよりも大きくなっていることを特徴とする請求項9または請求項10に記載のボールミル装置。
【請求項12】
前記ポットの上端開口が蓋体によって密封された状態で、前記ポットの内部空間の高さが前記ボールの直径の約1.1~1.9倍となっていることを特徴とする請求項9~請求項11のいずれかに記載のボールミル装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールミル装置を使用して粉茶を製造する方法および粉茶製造用ボールミル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、石臼を使用して原料茶葉を粉砕することによって、抹茶や粉茶を製造する伝統的な方法が知られている。特に、石臼を用いて抹茶を製造すると、原料茶葉が必ず臼の粉砕部を通過するために、葉脈が確実に切断され、品質の良い製品が得られる。
【0003】
しかし、この方法によれば、茶葉の粉砕に時間がかかり、また、臼を程良い加減で挽くには長い経験が必要であり、さらには、単位時間あたりの生産量が少ないという欠点があった。
【0004】
この問題を解消するため、ボールミル装置を使用して抹茶や粉茶を製造する方法が提案されている(特許文献1、2および3参照)。これらの方法によれば、ステンレスや鉄等から形成されたポットと、クロム鋼、セラミックス、アルミナまたはジルコニア等から形成されたボールを備えたボールミル装置を用いて原料茶葉が粉砕され、粉茶が製造される。
しかしながら、従来のボールミル装置を使用した方法によって製造された粉茶は、石臼を用いて製造された粉茶と比べて、舌触り、喉ごしが悪く、また、味覚の面でも劣っていた。この主たる原因は、比重の大きい硬質ボールによる打撃によって、茶葉中の特に葉脈が、粉砕される前に押しつぶされて扁平化され、柔らかくなり、細かく切断されずに大量に残ってしまい、茶葉を均一に微粉末化することができない点にあると考えられる。また、この従来の装置では、粉砕の際に茶葉の温度が上昇し、製造される粉茶の品質を劣化させるという問題を生じていた。さらに、クロム鋼球等の重金属が使用されると、摩耗粉の発生等により食品衛生上の問題が生じるおそれもある。

【特許文献1】特開2000-135057号公報
【特許文献2】特開2001-45971号公報
【特許文献3】特開2003-93907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、ボールミル装置を使用して、石臼を使用した場合と同様の品質を有する粉茶を製造することができ、食品衛生上の問題もクリアし得る粉茶の製造方法を提供することにある。
また、本発明の課題は、上記粉茶の製造方法を使用するのに適したボールミル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、合成樹脂製のポットを備えたボールミル装置を使用し、前記ポットに粉茶の原料と合成樹脂製のボールを封入し、前記ポットを公転運動、または公転および自転運動させて前記粉茶の原料を粉砕することを特徴とする粉茶の製造方法を構成したものである。
【0007】
上記構成において、前記ボールの直径の2.6~4倍の大きさの内径を有する前記ポットを使用し、かつ同一の前記ボールを4~8個、前記ポット中に封入することが好ましい。
また、前記ポットの上端開口を蓋体によって密封した状態で、前記ポットの内部空間における周壁面から底壁面への移行部分および周壁面から上壁面への移行部分の一方または両方を、所定の曲率半径をもって湾曲させて形成し、前記移行部分の曲率半径を前記ボールの曲率半径と等しくまたはそれよりも大きくすることが好ましく、また、前記ポットの上端開口を蓋体によって密封した状態で、前記ポットの内部空間の高さが前記ボールの直径の約1.1~1.9倍となるように、前記ポットを形成することが好ましい。
【0008】
上記構成において、また、前記ボールを、第1の合成樹脂から形成された球形の核と、前記核の外側を取り巻く、第2の合成樹脂から形成された外皮層からなる2層構造とすることが好ましい。また、合成樹脂のみからなるボールでは軽量すぎる場合には、内部に金属球からなる芯を組み込んだボールとするのが好ましく、また重すぎる場合には、内部を中空にしたボールとすることが好ましい。
【0009】
前記合成樹脂は、人体に対する毒性がなく、耐摩耗性に優れたものであればいずれも使用可能であるが、特に、ポリアセタール、テフロン(登録商標)、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリメチルペンテン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレートのうちの1つからなるグループより選ばれたポリマーであることが好ましく、あるいは、前記合成樹脂は、これらのポリマーを配合したものからなる混合物であってもよく、あるいは、これらのポリマーの構成モノマーからなるコポリマーであってもよい。
【0010】
上記構成において、また、前記ポット内の温度が所定温度以下となるように回転数と回転継続時間を設定して、前記ポットを公転運動、または公転および自転運動させて前記粉茶の原料を粉砕することが好ましい。
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、また、粉茶を製造するのに適したボールミル装置であって、合成樹脂製のポットと合成樹脂製のボールを備え、かつ、前記ポットを公転運動、または公転および自転運動させることが可能なボールミル装置を構成したものである。
【0012】
上記構成において、好ましくは、前記ポットの内側空洞部の径は、前記ボールの直径の2.6~4倍の大きさを有し、かつ、前記ポットには、同一の前記ボールが4~8個封入されるようになっている。
また好ましくは、前記ポットの上端開口が蓋体によって密封された状態で、前記ポットの内部空間における周壁面から底壁面への移行部分および前記周壁面から上壁面への移行部分の一方または両方が、所定の曲率半径をもって湾曲し、前記移行部分の曲率半径は前記ボールの曲率半径と等しくまたはそれよりも大きくなっている。
また、前記ポットの上端開口が蓋体によって密封された状態で、前記ポットの内部空間の高さが前記ボールの直径の約1.1~1.9倍となっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比重の小さい軟質ボールを使用するので、従来の比重の大きい硬質ボールの場合のように茶葉、特に葉脈が粉砕される前に押しつぶされて扁平化され、柔らかくなってしまうことがなく、葉脈まで細かく粉砕することができる。また、本発明によれば、ポットおよびボールを共に合成樹脂から形成したので、ボール、ポットおよび茶葉が相互に接触および衝突することによって発生する静電気により、粉砕途中の茶葉の細片をうまく分散させながらポットおよびボールに衝突させることができる。
その結果、茶葉の葉脈が、石臼を使用した場合と同程度に細かく切断され、茶葉は、均一に、市販の抹茶と同程度の大きさまで(抹茶の平均の大きさは約3~4μm)微粉末化される。そして、得られた粉茶は、石臼を使用して製造されたものと同程度の品質を有している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ボールミル装置の回転テーブル上にポットがセットされた状態を示す斜視図である。なお、図中、ボールミル装置の操作パネル部、および運転中に回転するポットを保護する保護カバー等は省略してある。
【図2】ボールミル装置のポットの1実施例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。
【図3】ポット内にボールが収容された状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は縦断面図である。
【図4】ボールミル装置のポットの別の実施例を示す図であり、(A)はポット内にボールが収容された状態の平面図、(B)はその縦断面図である。
【図5】図4の実施例による粉砕過程におけるポット内でのボールの運動状態を説明する図である。
【図6】ボールの直径と、ポットボールミル装置の動作開始後、ボール間の衝突音が消失するまでの時間との関係を示すグラフである。
【図7】本発明による方法を使用して得られた粉茶の光学顕微鏡写真である。
【図8】本発明による方法を使用して得られた粉茶の光学顕微鏡写真である。
【図9】ステンレス製のポットおよびボールを備えたボールミル装置によって得られた粉茶の光学顕微鏡写真である。
【図10】石臼によって得られた抹茶の光学顕微鏡写真である。
【図11】粉砕される前のキトサンの光学顕微鏡写真である。
【図12】本発明による方法を使用して粉砕されたキトサンの光学顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0015】
1 回転テーブル
2 ポット回転台座
3 ポット
4 ポット本体
4a 周壁面
4b 底壁面
4c 移行部分
5 蓋体
6 内側空洞部
7 リング状パッキン
8 ボール
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施例について添付図面を参照して説明する。本発明の好ましい実施例による粉茶の製造方法によれば、まず最初、合成樹脂製のポットと合成樹脂製のボールを備え、かつ、ポットを公転および自転運動させることが可能なボールミル装置が準備される。
図1は、このボールミル装置の回転テーブル上にポットがセットされた状態を示す斜視図である。なお、図1においては、ボールミル装置の操作パネル部、および運転中に回転するポットを保護する保護カバー等は省略してある。
【0017】
本発明による方法に使用されるボールミル装置は、ポットおよびボールを除き、公知のボールミル装置と同じ構成を有している。したがって、以下では、ボールミル装置のポットおよびボール以外の構成要素に関する詳細な説明は省略する。
図1を参照して、ボールミル装置は、円盤状の回転テーブル1と、回転テーブル1上に配置されたポット回転台2を備えている。回転テーブル1は、その中心軸のまわりに回転駆動され、ポット回転台2は、それぞれ、その中心軸のまわりに、回転テーブル1に対して回転駆動されるようになっている。ポット回転台2には、内部にボールおよび粉茶の原料が封入されたポット3が、起立状態で強固に固定され、回転テーブル1の回転駆動によって公転運動せしめられ、また、ポット回転台2の回転駆動によって自転運動せしめられるようになっている。
【0018】
図2は、ポットの1実施例を示した図であり、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。図2に示されるように、ポット3は、一端が閉じられた円筒形状のポット本体4と、ポット本体4の他端開口をリング状のパッキン7を介して密閉し得る蓋体5からなっている。また、ポット本体4の内側空洞部6の周壁面4aから底壁面4bへの移行部分4cは、所定の曲率半径rをもって湾曲して形成されている。
【0019】
ポット3およびボール8は、合成樹脂から形成されている。合成樹脂は、人体に対する毒性がなく、耐摩耗性に優れたものであればいずれも使用可能であるが、特に、ポリアセタール、テフロン(登録商標)、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリメチルペンテン、ポリエーテルスルホンおよびポリエチレンテレフタレートからなるグループより選ばれたポリマーであることが好ましく、あるいは、これらのポリマーを配合したものよりなる混合物であってもよいし、あるいは、これらのポリマーの構成モノマーからなるコポリマーであってもよい。
なお、同一種類の合成樹脂から形成されたポット3およびボール8を常に組み合わせて使用する必要はなく、異なる種類の合成樹脂から形成されたポット3およびボール8を組み合わせて使用してもよい。
ポット3は、内壁面が合成樹脂製であればよく、変形防止等のために、内壁面を形成する合成樹脂層の外側に、ステンレスや鉄等の金属からなる外皮を有するポットとしてもよい。
【0020】
良好な粉砕を実現するために、ボール8およびポット3の寸法、並びに粉茶の原料の種類に応じて、ボール8の比重を適宜変化させて用いればよい。ボール8の比重を変化させる方法としては、互いに比重の異なる2種類の合成樹脂を用意し、ボール8を、第1の合成樹脂から形成された球形の核と、核の外側を取り巻く、第2の合成樹脂から形成された外皮層からなる2層構造として比重を変化させる方法、あるいは、ボール8の内部に金属球からなる芯を組み込みんで比重を大きくする方法、あるいは、ボール8の内部を中空とすることで比重を小さくする方法がある。
【0021】
図3は、ポット内にボールが収容された状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は縦断面図である。図3を参照して、ポット3の内側空洞部6の周壁面4aから底壁面4bへの移行部分4cの曲率半径rは、ボール8の曲率半径と等しいかまたはそれよりも大きくなっている。
さらに、ポット3の内側空洞部6の径sは、ボール8の直径Rの2.6~4倍の大きさを有し、かつ、ポット3には4~8個の同一のボール8が収容されるようになっている。
【0022】
本発明による粉茶の製造方法によれば、粉茶の原料およびボール8が封入されたポット3をボールミル装置に装着し、ポット3を公転および自転運動させる。
【0023】
本発明の粉茶の製造方法によれば、茶葉の葉脈が、石臼を使用した場合と同程度に細かく切断され、茶葉は、均一に、市販の抹茶と同程度の大きさまで微粉末化される。こうして、石臼を使用して製造されたものと同程度の品質の粉茶が得られる。
【0024】
次に、ポットおよびボールを実際に作成し、所望の結果が得られるか実証実験を行った。実証実験の内容は次のとおりである。
ボールミル装置のポットとして、次の2種類のものを作成した。
(a)ポットNo.1:内径s=40mm、深さd=40mmのポリアセタール製ポット
(b)ポットNo.2:内径s=40mm、深さd=40mmのステンレス製ポット
また、ボールとしては、次の3種類のものを作成した。
(c)ボールNo.1:鉄球入りナイロン被覆ボール(比重約3.2、直径R=15mm、個数6個)
(d)ボールNo.2:ナイロン製ボール(比重約1.1、直径R=15.89mm、個数6個)
(e)ボールNo.3:ステンレス製ボール(比重約7.9、直径R=15mm、個数6個)
【0025】
[実施例1]
ポットNo.1とボールNo.1の組合わせを使用し、粉茶の原料として点茶5gを用い、公転600rpmおよび自転600rpmの回転数で、かつ公転および自転の回転方向を互いに逆向きにして、10分間、ボールミル装置を作動させ、粉茶を製造した。得られた粉茶の光学顕微鏡写真を図7に示した。
[実施例2]
ポットNo.1とボールNo.2の組合わせを使用し、実施例1と同じ点茶を同量用い、公転600rpmおよび自転600rpmの回転数で、かつ公転および自転の回転方向を互いに逆向きにして、20分間、ボールミル装置を作動させ、粉茶を製造した。得られた粉茶の光学顕微鏡写真を図8に示した。
[比較例1]
ポットNo.2とボールNo.3の組合わせを使用し、実施例1と同じ点茶を同量用い、公転600rpmおよび自転600rpmの回転数で、かつ公転および自転の回転方向を互いに逆向きにして、10分間、ボールミル装置を作動させ、粉茶を製造した。得られた粉茶の光学顕微鏡写真を図9に示した。
[比較例2]
石臼を使用し、実施例1と同じ点茶を用いて抹茶を製造した。得られた抹茶の光学顕微鏡写真を図10に示した。
【0026】
実施例1、2の結果と比較例1、2の結果を比較検討した。
実施例1では、葉脈が確実に切断され、点茶が均一に微粉末化され、比較例2で得られた抹茶とほぼ同程度の大きさに粉砕された。得られた粉茶は、手触りもほぼ比較例2で得られた抹茶と同様であった。
実施例2では、実施例1の場合と同様、点茶は均一に微粉末化され、比較例2で得られた抹茶より小さい粒径のものが得られた。
比較例1では、大きな粒径のものが見られ、また、葉脈が押しつぶされたようになっていて、細かく切断されていない。手触りは、比較例2で得られた抹茶より幾分ざらつき感があった。味は幾分渋みがあった。
【0027】
図4は、ポットの別の実施例を示した図であり、(A)はポット内にボールが収容された状態の平面図、(B)はその縦断面図である。図4の実施例は、図3の実施例と、ポットの内部構造が異なっているだけである。したがって、図4中、図3と同一の構成要素には同 一番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0028】
図4を参照して、この実施例では、ポット本体4の上端開口が蓋体5によって密封された状態で、ポット3の内部空間6における周壁面4aから底壁面4bへの移行部分4c、および周壁面4aから上壁面への移行部分4dが、いずれも所定の曲率半径rをもって湾曲して形成されている。この場合、移行部分4c、4dの曲率半径rはボール8の曲率半径と等しく、またはそれよりも大きくなっている。
この実施例では、さらに、ポット本体4の上端開口が蓋体5によって密封された状態で、ポット3の内部空間6の高さdがボール8の直径Rの約1.1~1.9倍となっている。したがって、この実施例では、ポット3内にボール8が2段に配置されることはない。
【0029】
図3の実施例の場合と同様、ポット3の内側空洞部の径sは、ボール8の直径の2.6~4倍の大きさを有し、かつ、ポット3には同一のボール8が4~8個封入されるようになっている。
そして、粉茶の原料およびボール8が封入されたポット3をボールミル装置に装着し、ボールミル装置を公転および自転運動させる。
【0030】
この実施例では、粉砕過程の初期段階であって、粉砕が進まないうちは、遊星運動するポット3内でボール8が運動するとき、茶葉による粘性が大きいために、ボール8の運動は無秩序となり、ボール8間の衝突、ボール8とポット3内壁の間の衝突が頻繁に生じ(図5(A)参照)、それに起因する衝突音が発生する。そして、この衝突の際に、茶葉がボール8間、およびボール8とポット3内壁の間に入り込み、粉砕される。
【0031】
ボール8間、およびボール8とポット3内壁の間の衝突に伴い、茶葉が粉砕されてある程度細かくなると、茶葉による粘性が低下して、ボール8の運動に無秩序さを与える力が弱くなり、ボール8の全体が整然とした運動を開始し、上述のような衝突は生じなくなり(図5(B)参照)、衝突音は消失する。そして、その後、茶葉は、主として、ボール8の集合体とポット3内壁の相対運動による剪断的な力によって粉砕され、微粉化される。
【0032】
ボールミル装置の作動開始後、衝突音が消失するまでの時間は、ポット3の公転速度、自転速度、原料茶葉の種類、製造される粉茶の量や粒径に依存する。公転速度、自転速度、原料茶葉の種類、および製造される粉茶の量がすべて同じであれば、粉の粘度が大きくなると長くなり、また、公転速度、自転速度、および原料茶葉の種類が同じであれば、製造される粉茶の量が多くなると長くなる。
【0033】
結果的には、衝突音が発生している間の粉砕過程は粗粉砕過程であり、衝突音が消失した後の粉砕過程はより微細な粒径への粉砕過程である。粉茶をより微粉化するためには、衝突音が消失した後の粉砕過程を継続するとよい。
【0034】
この実施例においても、図1~図3の実施例の場合と同様、石臼を使用して製造されたものと同程度の品質の粉茶が得られる。
【0035】
本発明による方法によれば、ポットの公転または自転運動の速度が大きくなるにつれて、また、公転および自転運動の継続時間が長くなるにつれて、ポット内の温度が上昇する。この温度上昇は、衝突およびせん断的な力の両方に起因する。
ところで、原料茶葉の粉砕時に、ポット内の温度上昇が激しいと、製造される粉茶が熱の作用によって退色し、香りや風味等の品質を低下させてしまうことがある。よって、良質の粉茶を製造するには、50℃以下の低温で粉砕を行うことが望ましい。このため、粉砕時のポット内の温度上昇が約50℃以下に抑えられるように、ボールミル装置の回転数および回転継続時間を設定することが望ましい。
この回転数および回転継続時間の設定は、例えば、予め試験的な粉砕を繰り返し行い、粉砕終了直後のポット内の温度を赤外線放射温度計等を用いて測定し、その際に取得したデータに基づいて、ポットおよびボールの寸法、原料茶葉の種類および製造される粉茶の量等毎に、粉砕時の温度上昇が約50℃以下となる回転数および回転継続時間の範囲を決定してテーブル化しておき、実際の運転時に、そのテーブルに従ってその都度行うようにすればよい。
【0036】
この実施例においても、ポットおよびボールを実際に作成し、所望の結果が得られるか実証実験を行った。実証実験の内容は次のとおりである。
(f)ポットNo.3:内径s=110mm、深さd=65mm、周壁面から底壁面および上壁面への移行部分の曲率半径r=20mmのポリアセタール製ポット。
また、ボールとして、次のものを作成した。
(g)ボールNo.4:;ポリアセタール製ボール(比重約1.45、直径R=35mm、個数5個)
【0037】
[実施例3]
ポットNo.3とボールNo.4の組合わせを使用し、粉茶の原料として、点茶、玉露、煎茶、茎茶、ほうじ茶を各50gを用い、公転300~320rpmおよび自転600~640rpmの回転数で、かつ公転および自転の回転方向を互いに逆向きにして、20~60分間、ボールミル装置を作動させ、粉茶を製造した。
得られた粉茶の粒度分布を測定したところ、この実証実験の場合にも、図1~図3の実施例と同様の粒度分布であることが確かめられた。
【0038】
[実施例4]
さらに、異なる直径のポリアセタール製ボールを5個ずつ用意し、ポットNo.3を用いて、粉茶の原料として茎茶および点茶50gを用い、実施例3と同様に、公転300~320rpmおよび自転600~640rpmの回転数で、かつ公転および自転の回転方向を互いに逆向きにして、ボールミル装置を作動させ、ボールの衝突音が消失するまでの時間を測定した。
測定結果を図6のグラフに示した。図6のグラフにおいて、縦軸は、ボールミル装置の動作開始後、衝突音が消失するまでの時間(分)を、横軸は、ボールの直径(mm)をそれぞれ表している。図6からわかるように、ポットの内径が110mmのとき、ボールの直径が36.7mmであれば、消音時間は約20分と、他の直径のボールと比べて半分程度になる。このことから、粉茶の粉砕過程には、ポットの内径とボールの直径との比率が大きく影響することがわかる。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施例について説明してきたが、本発明による方法は、お茶(茎茶、あら茶、煎茶、玉露、点茶)の微粉末化に使用することができるだけでなく、生薬(漢方薬)やキトサンの微粉末化、乾燥食品(鰹節、昆布、キノコ、乾燥アワビ等)の微粉末化、真珠の微粉末化、薬品の微粉末化にも使用することができる。
【0040】
図11および図12には、本発明による方法を、キトサンの微粉末化に使用して得られた結果を説明した光学顕微鏡写真を示した。図11は、粉砕される前のキトサンの光学顕微鏡写真であり、図12は、本発明による方法によって粉砕されたキトサンの光学顕微鏡写真である。図12と図11との比較から明らかなように、キトサンは、従来、強繊維質であり、微粉砕することは困難であったにもかかわらず、本発明による方法によれば、お茶の場合と同様、極めて容易に、均一に微粉末化することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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