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明細書 :電力系統の固有周波数の監視システム及び監視方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4664113号 (P4664113)
公開番号 特開2006-296105 (P2006-296105A)
登録日 平成23年1月14日(2011.1.14)
発行日 平成23年4月6日(2011.4.6)
公開日 平成18年10月26日(2006.10.26)
発明の名称または考案の名称 電力系統の固有周波数の監視システム及び監視方法
国際特許分類 H02J  13/00        (2006.01)
G01R  23/12        (2006.01)
FI H02J 13/00 301A
G01R 23/12
請求項の数または発明の数 17
全頁数 11
出願番号 特願2005-114618 (P2005-114618)
出願日 平成17年4月12日(2005.4.12)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成16年11月25日 平成16年電気関係学会 関西支部連合大会実行委員会発行の「平成16年 電気関係学会関西支部連合大会 講演論文集」に発表
特許法第30条第1項適用 平成17年2月8日 国立大学法人京都大学主催の「国立大学法人京都大学エネルギー科学研究科エネルギー応用科学専攻修士論文発表会」において文書をもって発表
特許法第30条第1項適用 2005年3月17日 社団法人電気学会発行の「平成17年 電気学会全国大会講演論文集 5」に発表
審査請求日 平成20年3月27日(2008.3.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
発明者または考案者 【氏名】白井 康之
【氏名】仁田 旦三
【氏名】柴田 勝彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100098280、【弁理士】、【氏名又は名称】石野 正弘
【識別番号】100125874、【弁理士】、【氏名又は名称】川端 純市
審査官 【審査官】高野 誠治
参考文献・文献 特開平03-256533(JP,A)
特開昭62-114435(JP,A)
調査した分野 H02J 13/00
G01R 23/12
特許請求の範囲 【請求項1】
電力系統の固有周波数を監視するシステムであって、
電力系統に対し、特定周波数の微小電力を注入する擾乱付加手段と、
微小電力注入後の電力系統からの応答である応答電力を入力し、その応答電力から、電力系統で送電される電力本来の周波数成分を除去して、応答電力における微小電力による変動分を抽出するフィルタと、
該抽出した応答電力の変動分における前記特定周波数成分と、前記擾乱付加手段から出力された微小電力との位相差を検出する位相差検出手段と、
前記検出された位相差に基づいて、前記検出された位相差が所定値となるように前記擾乱付加手段の特定周波数を制御する制御手段とを備え、
前記制御された特定周波数を、電力系統の固有周波数または固有周波数からシフトした周波数として検出する、
ことを特徴とする電力系統の固有周波数の監視システム。
【請求項2】
前記所定値は90度であることを特徴とする請求項1記載の電力系統の固有周波数の監視システム。
【請求項3】
前記所定値は90度から所定量だけシフトした値であることを特徴とする請求項1記載の電力系統の固有周波数の監視システム。
【請求項4】
電力系統の固有周波数を監視するシステムであって、
電力系統に対し、特定周波数の微小電力を注入する擾乱付加手段と、
微小電力注入後の電力系統からの応答である応答電力を入力し、その応答電力から、電力系統で送電される電力本来の周波数成分を除去して、応答電力における微小電力による変動分を抽出するフィルタと、
該抽出した応答電力の変動分の振幅が所定値となるときの変動分の周波数を検出する固有周波数検出手段と、
前記擾乱付加手段により注入される微小電力の特定周波数が前記検出された周波数に一致するように前記特定周波数を制御する制御手段とを備え、
前記制御された特定周波数を、電力系統の固有周波数または固有周波数からシフトした周波数として検出する、
ことを特徴とする電力系統の固有周波数の監視システム。
【請求項5】
前記所定値は、前記変動分の振幅の最大値であることを特徴とする請求項記載の電力系統の固有周波数の監視システム。
【請求項6】
前記所定値は、前記変動分の振幅の最大値から所定量だけシフトした値であることを特徴とする請求項4記載の電力系統の固有周波数の監視システム。
【請求項7】
前記擾乱付加手段はSMES(Superconducting Magnetic Energy Storage System)またはSVG(Static Var Generator)であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の電力系統の固有周波数の監視システム。
【請求項8】
前記微小電力は正弦波状電力であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の電力系統の固有周波数の監視システム。
【請求項9】
前記微小電力は、前記応答電力の特定周波数成分の位相を90度進めた信号成分を含むことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の電力系統の固有周波数の監視システム。
【請求項10】
電力系統の固有周波数を監視する方法であって、
電力系統に対し、特定周波数の微小電力を注入し、
微小電力注入後の電力系統からの応答である応答電力を入力し、
その応答電力から、電力系統で送電される電力本来の周波数成分を除去して、応答電力における微小電力による変動分を抽出し、
該抽出した応答電力の変動分における前記特定周波数成分と、前記注入された微小電力との位相差を検出し、
該検出した位相差に基づいて、前記位相差が所定値となるように、前記注入する微小電力の特定周波数を制御し、
前記制御された特定周波数を、電力系統の固有周波数または固有周波数からシフトした周波数として検出する
ことを特徴とする電力系統の固有周波数の監視方法。
【請求項11】
前記所定値は90度であることを特徴とする請求項10記載の電力系統の固有周波数の監視方法。
【請求項12】
前記所定値は90度から所定量だけシフトした値であることを特徴とする請求項10記載の電力系統の固有周波数の監視方法。
【請求項13】
電力系統の固有周波数を監視する方法であって、
電力系統に対し、特定周波数の微小電力を注入し、
微小電力注入後の電力系統からの応答である応答電力を入力し、
その応答電力から、電力系統で送電される電力本来の周波数成分を除去して、応答電力における微小電力による変動分を抽出し、
該抽出した応答電力の変動分の振幅が所定値となるときの変動分の周波数を検出し、
前記特定周波数が前記検出した周波数に一致するように、前記注入する微小電力の特定周波数を制御し、
前記制御された特定周波数を、電力系統の固有周波数または固有周波数からシフトした周波数として検出する
ことを特徴とする電力系統の固有周波数の監視方法。
【請求項14】
前記所定値は、前記変動分の振幅の最大値であることを特徴とする請求項13記載の電力系統の固有周波数の監視方法。
【請求項15】
前記所定値は、前記変動分の振幅の最大値から所定量だけシフトした値であることを特徴とする請求項13記載の電力系統の固有周波数の監視方法。
【請求項16】
前記微小電力は正弦波状電力であることを特徴とする請求項10ないし15のいずれか1つに記載の電力系統の固有周波数の監視方法。
【請求項17】
前記微小電力は前記応答電力の特定周波数成分の位相を90度進めた信号成分を含むことを特徴とする請求項10ないし15のいずれか1つに記載の電力系統の固有周波数の監視方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は電力系統の状態を監視するシステム及び方法であって、特に、電力系統の固有周波数をオンラインで監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力送電事業においては、送電する電気の品質(周波数、電圧)を常時一定に保持する必要がある(特許文献1、2参照)。このため、電力事業者は電力系統の状態、安定度余裕の把握、制御を行っている。従来、電力系統の運転状態や安定度の把握は、オフラインの計算機による解析によって行われていた。すなわち、電力系統をモデル化し、オフラインで所定のパラメータを与えて計算機で解析することにより行っていた。
【0003】
しかし、実際の電力系統を正確にモデル化することは困難であり、また、実際の電力系統では、運転状態は時々刻々と変化することから、オフライン解析では精度または即時性において充分な情報が得られないのが実情である。そのため、電力系統の運転はある程度のマージンを持った上で行われており、系統設備を効率よく利用しているとは言い難い状況にある。
【0004】
また、近年のわが国における電力事業の自由化にともない、電力系統運用者が十分把握していない多くの電源が連系される状況となっている。これらの不確定な要素はオフラインの計算機解析において十分に反映することができず、系統状態を精度よく把握する上で問題となる。
【0005】
また、電力系統の状態を把握する要素として、電力系統の固有値の固有周波数を把握することは重要である。

【特許文献1】特開平5-336666号公報
【特許文献2】特開平3-256533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような状況を鑑みれば、今後益々、種々の電源が連系される電力系統において時々刻々と変化する系統状態を精度よくかつ迅速に把握できる監視システムが要望される。
【0007】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、電力系統状態を示す要素として電力系統の固有周波数をリアルタイムにかつ精度よく監視できる、電力系統のオンライン監視システム及び監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の監視システムは電力系統の固有周波数を監視するシステムである。擾乱付加手段は、電力系統に対し、特定周波数の微小電力を注入する。フィルタは、微小電力注入後の電力系統からの応答である応答電力を入力し、その応答電力から、電力系統で送電される電力本来の周波数成分を除去して、応答電力における微小電力による変動分を抽出する。位相差検出手段は、抽出した応答電力の変動分における特定周波数成分と、擾乱付加手段から出力された微小電力との位相差を検出する。制御手段は、検出された位相差に基づいて、検出された位相差が所定値となるように擾乱付加手段の特定周波数を制御する。制御された特定周波数が、電力系統の固有周波数または固有周波数からシフトした周波数として検出される
【0009】
本発明の第2の監視システムは電力系統の固有周波数を監視するシステムである。擾乱付加手段は、電力系統に対し、特定周波数の微小電力を注入する。フィルタは、微小電力注入後の電力系統からの応答である応答電力を入力し、その応答電力から、電力系統で送電される電力本来の周波数成分を除去して、応答電力における微小電力による変動分を抽出する。固有周波数検出手段は、抽出した応答電力の変動分の振幅が所定値となるときの変動分の周波数を検出する。制御手段は、擾乱付加手段の特定周波数が検出された周波数に一致するように特定周波数を制御する。制御された特定周波数が、電力系統の固有周波数または固有周波数からシフトした周波数として検出される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電力系統に注入する微小電力の周波数を、検出した電力系統の固有周波数にロックさせるように制御することが可能となるため、オンラインでの電力系統の固有周波数の精度よいモニタが可能となる。従来では、電力系統の状態を精度よく把握できず、電力事業の自由化にともない不確定な要素が増えることから、ある程度のマージンを持たせて電力系統を運用する必要があったが、本発明により、電力系統の固有周波数すなわち電力系統の状態を精度よく把握できるため、マージンを低減でき、電力設備の稼働効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明に係る電力系統の監視システムの好ましい実施の形態について説明する。以下に説明する電力系統の監視システムは、電力系統の状態を支配する要素として電力系統の固有値の固有周波数を監視する。
【0012】
第1の実施形態
図1は本発明の第1の実施形態における電力系統の固有周波数の監視システムの構成を示した図である。監視システム1は電力系統100の固有値の固有周波数を監視する。電力系統100は一例として8機無限大母線系統を用いており、G1からG8の8つの発電機から例えばトータルでおよそ1000MWの電力が供給されている。
【0013】
監視システム1は、電力系統100に対して擾乱としての微小電力を与えるSMES(Superconducting Magnetic Energy Storage System)11と、SMES11から出力される微小電力Psmの周波数fsmを制御する周波数コントローラ13と、電力系統100にて送電される電力における擾乱による変動分ΔPlineを抽出するフィルタ15と、フィルタ15の出力信号中から一定周波数成分の振幅、位相を測定するロックインアンプ17とを備える。
【0014】
監視システム1は、電力系統100に微小電力Psmを注入し、これに対する系統の電力動揺、例えば送電線電力を計測する。一般に、注入した微小電力Psmの周波数fsmが、電力系統の安定度を支配する固有値の固有周波数に近い場合、電力系統100からの応答電力Plineの振幅は最大となり、また、応答電力Plineと、与えた微小電力Psmとの位相差Δθは所定値(例えば90度)となる。そこで、本実施形態の監視システム1では、応答電力の位相差をフィードバック量として用い、与える微小電力Psmの周波数fsmを電力系統の固有周波数にロックさせるように制御する。これによって、電力系統の状態の変化により固有周波数が変化した場合、与える微小電力の周波数fsmがこれに追従するため、オンラインでの電力系統の固有周波数のモニタが可能となる。
【0015】
図2は、電力系統100において発電機の出力を変化させたときの電力系統の固有周波数の変化例を示した図である。図2において横軸の単位(p.u.)は、出力されている電力の、発電機の最大出力電力に対する割合を示す。例えば、0.8p.u.とは、最大出力の80%の電力が出力されていることを示す。同図より、発電機出力の増大とともに電力系統の固有周波数は減少していくことが分かる。このことから、固有周波数をモニタすれば、発電機出力が安定限界に近づいてきたか否かを知ることができることが分かる。
【0016】
図3は、微小電力Psmの周波数fsmを0.5~2.5Hzの範囲で変化させながら、電力系統に擾乱として微小電力Psmを注入し、その微小電力による応答電力Plineの変動分ΔPlineを測定したときの、変動分ΔPlineの振幅、および、変動分ΔPlineと微小電力Psmの位相差の変化を示した図である。図3(a)に示すように、変動分ΔPlineの振幅は、ある周波数(1.01Hz)で最大値を示している。この最大値を示す周波数が電力系統の固有周波数である。また、電力系統に与えた微小電力Psmと、その微小電力による変動成分ΔPlineの位相差は、図3(b)に示すように、周波数変化につれて180度から0度へと変化するが、特に、固有周波数(1.01Hz)において90度となる。本実施形態では、この特性に着目し、微小電力Psmと変動成分ΔPlineの位相差が90度となるように微小電力Psmの周波数を制御することで、微小電力Psmの周波数を電力系統の固有周波数に追従させるようにする。
【0017】
微小電力Psmの周波数の制御についてより具体的に説明する。発電機出力の変動により電力系統の状態が変化すると、それにつれて電力系統の固有周波数も変化する。図4は、2つの電力系統の状態について位相差Δθの変化を示した図である。今、図4において「×」で示す第1の状態から「▲」で示す第2の状態に電力系統の状態が変化した場合を考える。この場合、固有周波数は1.1Hzから0.86Hzへ変化するため、微小電力の周波数fsmは減少させる必要がある。このとき、第1の状態の固有周波数である1.1Hz近傍で第2の状態の位相差を測定すると、90度より小さい値が観測される。よって、位相差として90度より小さい値が観測された場合は、微小電力の周波数fsmは減少させればよいことが分かる。逆に、第2の状態から第1の状態へ変化したとき、すなわち、電力系統の固有周波数が増加したときは、微小電力の周波数fsmを増加させればよい。このように位相差に基づいて微小電力の周波数fsmを増減することで、周波数fsmを電力系統の固有周波数に追従させることができる。
【0018】
なお、電力系統の構成によっては、固有周波数が複数存在する場合もあるが、電力系統の安定度に関しては、一般的に最小の固有周波数のみを監視すれば十分である。
【0019】
上記の点を踏まえて、図1に示す監視システム1の動作を以下に詳細に説明する。
【0020】
SMES11は電力系統100に対し、擾乱として微小電力Psmを与える。本実施形態では、次式で表される正弦波状電力を与える。
sm=P0 sin(2πfsmt) (1)
0は振幅であり、電力系統100に送電される電力の0.数%程度の値(例えば、2~3MW)とする。また、fsmは例えば0.5~2.5Hzの値をとる。電力系統に注入する微小電力Psmの波形を図5(a)に示す。
【0021】
フィルタ15は、微小電力注入後の電力系統100の一回線から応答電力Plineを入力し、その入力電力Plineから、電力系統100に本来的に送電される電力の周波数成分を除去して、SMES11による擾乱による変動分ΔPlineのみを取り出す。応答電力の変動分ΔPlineの波形を図5(b)に示す。
【0022】
ロックインアンプ17はフィルタ15から変動分ΔPlineを測定信号として入力し、SMES11から参照信号として微小電力Psmを入力し、変動分ΔPlineにおける、微小電力Psmの周波数fsmと同じ周波数の成分と、微小電力Psmとの位相差Δθを出力する。
【0023】
周波数コントローラ13はロックインアンプ17からの位相差Δθに基づいて、SMES11から出力される微小電力Psmの周波数fsmを電力系統100の固有周波数に一致させるよう、SMES11に対して制御信号を出力する。具体的には、周波数コントローラ13は、位相差Δθを所定値(ここでは、所定値は電力系統100の固有周波数を与える位相差である90度)と比較する。周波数コントローラ13は、位相差Δθが90度より大きければ、周波数fsmを増加させるように、位相差Δθが90度より小さければ、周波数fsmを減少させるように、周波数fsmを変化させるための制御信号を出力する。
【0024】
SMES11は周波数コントローラ13から制御信号を受けて微小電力Psmの周波数fsmを制御する。これにより、電力系統100に擾乱を与えるPsmの周波数fsmが、電力系統の固有周波数に追従するよう制御される。すなわち、周波数コントローラ13で制御される周波数fsmの値は電力系統100の固有周波数と実質的に等しいため、周波数fsmをモニタすれば、電力系統100の固有周波数をリアルタイムにかつ精度よく認識できることになる。これにより、電力系統の状態もリアルタイムにかつ精度よく把握できる。
【0025】
なお、上記説明では、電力系統に対して大きな影響を与えず微小な電力擾乱を与える装置としてSMESを用いたが、SMESの代わりに、有効電力と無効電力を独立かつ高速に制御でき、与えた擾乱により自身の出力が影響を受けないものであれば、他の電力供給装置(例えば、SVG(Static Var Generator))を利用することもできる。
【0026】
第2の実施形態
第1の実施形態では、周波数コントローラ13は、微小電力の周波数fsmを電力系統の固有周波数に追従するよう制御した。しかし、追従を行う間、SMES11の励振が電力系統の固有周波数付近での電力動揺になるため、そのままでは電力系統の安定度に悪影響を及ぼす恐れがある。そこで微小電力の印加と同時に、SMES11から電力系統100に対して安定化制御をかける。すなわち、次式により与えられる微小電力Psmを電力系統に注入する。
sm=P0 sin(2πfsmt)+ksmstab (2)
ここで、ksmは制御ゲインであり、Pstabは応答電力Plineの変動分ΔPlineを90度だけ位相を進めた信号である。ksmstabの項により電力系統の制動係数が増加し、動揺を早く減衰させることで系統を安定化することができる。
【0027】
図6は、上記の安定化制御を考慮した監視システムの構成を示した図である。本実施形態の監視システム1bにおいて実施の形態1のものと相違する点は、周波数コントローラ13が位相差Δθに加えて応答電力Plineの変動分ΔPlineを入力している点である。周波数コントローラ13は、SMES11に対し、上式(2)を満たす微小電力Psmが出力されるよう制御信号を出力する。
【0028】
図7は、本実施形態の監視システムによる実験結果を示した図である。図中、曲線Xは発電機の出力の変化を示し、同図では、時間経過にほぼ比例して発電機出力を増加させている。「●」は、発電機の出力を時間的に変化させずある値で一定にした場合に測定された固有周波数を示す。曲線Yは本実施形態の監視システムにより測定された電力系統の固有周波数(すなわち、微小電力の周波数fsm)の変化を示す。曲線Yと「●」とを比較すると、両者はほぼ一致しており、本実施形態の監視システムにより、精度のよい固有周波数の測定結果が得られていることがわかる。また、曲線Zは位相差Δθの変化を示し、ほぼ90度に制御されていることがわかる。
【0029】
第3の実施形態
第1および第2の実施形態では、ロックインアンプ17から出力される位相差Δθに基づいて、系統に注入する微小電力の周波数fsmを制御した。本実施形態では、位相差Δθの代わりに、応答電力の変動分ΔPlineの振幅の最大値に基づいて、周波数fsmを制御する例を説明する。
【0030】
図8は、本実施形態における電力系統の監視システムの構成を示す図である。本実施形態の監視システム1cにおいて、周波数コントローラ13は、参照信号P(fr)を、その周波数(fr)を0.5Hzから2.5Hzの範囲で変化させながら、ロックインアンプ17に出力する。ロックインアンプ17は、周波数コントローラ13から参照信号P(fr)を受けて、変動分ΔPlineにおける周波数(fr)成分の振幅(|ΔPline(fr)|)を、周波数(fr)の変化に応じて出力する。周波数コントローラ13は、振幅が最大となる周波数(すなわち、固有周波数を与える周波数)を求め、SMES11の微小電力の周波数を、その求めた周波数になるよう制御する。このように、位相差Δθの代わりに変動分ΔPlineの振幅を用いても、微小電力Psmの周波数fsmを系統の固有周波数にロックさせることができる。
【0031】
以上のように、第1ないし第3の実施形態の監視システムによれば、電力系統100に微小電力Psmを擾乱として注入し、これに対する系統の電力動揺を応答電力として計測し、応答電力の擾乱による変動分の位相差又は振幅をフィードバック量として用い、与える微小電力Psmの周波数fsmを電力系統の固有周波数にロックさせるように制御する。これによって、電力系統の状態の変化により固有周波数が変化した場合、与える微小電力の周波数fsmがこれに追従するため、オンラインでの電力系統の固有周波数のモニタが可能となる。
【0032】
なお、上記の各実施形態においては、電力系統に注入する微小電力Psmの周波数fsmを系統の固有周波数となるよう制御した。この場合、電力系統には、共振点において擾乱を与えることになり、電力系統の動作が不安定となることも考えられる。そこで、微小電力Psmの周波数fsmを固有周波数ではなく、固有周波数から所定値だけシフトした値にロックさせるようにしてもよい。これにより、共振点を避けて電力系統に擾乱を与えることができ、電力系統の安定度をより向上できる。すなわち、第1および第2の実施形態では、位相差Δθが90度となるよう微小電力Psmの周波数fsmを制御したが、その代わりに、位相差Δθが100度や110度となるように周波数fsmを制御してもよい。また、第3の実施形態の場合は、振幅の最大値を与える周波数の代わりに、最大値から所定値だけずれた値を与える周波数にロックさせるように制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態における電力系統の固有周波数の監視システムの構成図
【図2】電力系統における発電機の出力を変化させたときの電力系統の固有周波数の変化を示した図
【図3】微小電力Psmの周波数fsmを変化させながら、電力系統に擾乱として微小電力Psmを注入したときの、(a)応答電力における擾乱による変動分の振幅、および、(b)微小電力と変動分の位相差の変化を示した図
【図4】2つの電力系統の状態について、微小電力Psmとそれによる応答電力の変動分ΔPlineとの位相差Δθの変化を示した図
【図5】(a)微小電力の波形を示す図、(b)応答電力の変動分ΔPlineの波形を示す図
【図6】本発明の第2の実施形態における安定化制御を考慮した監視システムの構成を示した図
【図7】実施形態の監視システムによる実験結果を示した図
【図8】本発明の第3の実施形態における安定化制御を考慮した監視システムの構成を示した図
【符号の説明】
【0034】
1、1b、1c 電力系統の固有周波数の監視システム
11 SMES(超電導電力貯蔵装置)
13 周波数コントローラ
15 フィルタ
17 ロックインアンプ
100 電力系統(8機無限大母線系統)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7