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明細書 :偏波モード変換器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4669923号 (P4669923)
登録日 平成23年1月28日(2011.1.28)
発行日 平成23年4月13日(2011.4.13)
発明の名称または考案の名称 偏波モード変換器
国際特許分類 G02B   6/14        (2006.01)
G02B   6/12        (2006.01)
FI G02B 6/14
G02B 6/12 Z
請求項の数または発明の数 14
全頁数 19
出願番号 特願2007-509182 (P2007-509182)
出願日 平成18年3月7日(2006.3.7)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2005年(平成17年)秋季第66回応用物理学会学術講演会講演予稿集第3分冊(平成17年9月7日)社団法人応用物理学会発行912頁に発表
国際出願番号 PCT/JP2006/304394
国際公開番号 WO2006/100905
国際公開日 平成18年9月28日(2006.9.28)
優先権出願番号 2005080361
優先日 平成17年3月18日(2005.3.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年3月12日(2008.3.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
発明者または考案者 【氏名】野田 進
【氏名】浅野 卓
【氏名】田中 良典
【氏名】高山 清市
個別代理人の代理人 【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
審査官 【審査官】吉田 英一
参考文献・文献 特開2004-294517(JP,A)
特開2002-189135(JP,A)
特開2004-233941(JP,A)
高山清市、田中良典、浅野卓、野田進,2次元フォトニック結晶スラブ偏波モード変換器の提案,2005年(平成17年)春季第52回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,日本,社団法人応用物理学会,2005年 3月29日,第3分冊,1194頁
田中良典、浅野卓、高山清市、野田進,2次元フォトニック結晶スラブ偏波変換器の作製,2005年(平成17年)秋季第66回応用物理学会学術講演会講演予稿集,日本,社団法人応用物理学会,2005年 9月 7日,第3分冊,912頁
調査した分野 G02B 6/14
G02B 6/12
特許請求の範囲 【請求項1】
a) スラブ状の本体に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域を多数、格子状に配置して成る2次元フォトニック結晶と、
b) 上記異屈折率領域の欠陥を線状に形成して成る導波路であって、該導波路の長手方向と同じ方向に並ぶ該異屈折率領域の2個分以上の長さに亘って設けられた、断面形状が上下方向と左右方向にそれぞれ非対称である偏光変換導波路と、
を備えることを特徴とする偏波モード変換器。
【請求項2】
上記断面形状の異なる複数の導波路を接続したことを特徴とする請求項1に記載の偏波モード変換器。
【請求項3】
上記断面形状の非対称性が本体の面に対して斜め方向に延びる異屈折率領域を導波路の側部に設けることにより形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の偏波モード変換器。
【請求項4】
上記断面形状の非対称性が、導波路内の本体の一部を他の領域と異なる厚さとすることにより形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の偏波モード変換器。
【請求項5】
a) スラブ状の本体に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域を多数、格子状に配置して成る2次元フォトニック結晶と、
b) 上記異屈折率領域の欠陥を線状に形成して成る導波路であって、断面形状が、上下方向と左右方向にそれぞれ非対称であり、該断面形状の異なる複数の導波路を接続した偏光変換導波路と、
を備えることを特徴とする偏波モード変換器。
【請求項6】
a) スラブ状の本体に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域を多数、格子状に配置して成る2次元フォトニック結晶と、
b) 上記異屈折率領域の欠陥を線状に形成して成る導波路であって、前記本体の面に対して斜め方向に延びる異屈折率領域を該導波路の側部に設けることにより、断面形状が上下方向と左右方向にそれぞれ非対称に形成されている偏光変換導波路と、
を備えることを特徴とする偏波モード変換器。
【請求項7】
a) スラブ状の本体に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域を多数、格子状に配置して成る2次元フォトニック結晶と、
b) 上記異屈折率領域の欠陥を線状に形成して成る導波路であって、導波路内の本体の一部を他の領域と異なる厚さとすることにより、断面形状が上下方向と左右方向にそれぞれ非対称に形成されている偏光変換導波路と、
を備えることを特徴とする偏波モード変換器。
【請求項8】
上記断面形状の非対称性が、導波路の一方の側部に上下非対称の形状を有する異屈折率領域を設けることにより形成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の偏波モード変換器。
【請求項9】
a) 所定の周波数の光を導波させる導波路と、該導波路の近傍に設けられ、該周波数及び所定の偏波の光に共振する共振器とを有する第1及び第2の2次元フォトニック結晶光合分波器と、
b) 両2次元フォトニック結晶光合分波器の間に設けられ、スラブ状の本体に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域を多数、格子状に配置して成る2次元フォトニック結晶と、該異屈折率領域の欠陥を線状に形成して成る導波路であって、断面形状が、上下方向と左右方向にそれぞれ非対称である偏光変換導波路とを備えた、前記周波数の偏波を変換する偏波モード変換器と、
を備えることを特徴とする偏波モード変換光合分波器。
【請求項10】
a) 所定の周波数の光を導波させる導波路と、該導波路の近傍に設けられ、該周波数及び所定の偏波の光に共振する共振器とを有する第1及び第2の2次元フォトニック結晶光合分波器と、
b) 両2次元フォトニック結晶光合分波器の間に設けられた、該周波数の偏波を変換する請求項1~8のいずれかに記載の偏波モード変換器と、
を備えることを特徴とする偏波モード変換光合分波器。
【請求項11】
第1の2次元フォトニック結晶光合分波器と偏波モード変換器の間、及び第2の2次元フォトニック結晶光合分波器の偏波モード変換器とは反対の側にそれぞれ、前記所定周波数及び前記偏波の光を反射する2次元フォトニック結晶反射器を設けたことを特徴とする請求項9又は10に記載の偏波モード変換光合分波器。
【請求項12】
第1の2次元フォトニック結晶光合分波器と偏波モード変換器の間に前記所定周波数及び前記偏波の光を反射する2次元フォトニック結晶反射器を設けた請求項9又は10に記載の偏波モード変換光合分波器を複数個、直列に接続した多段偏波モード変換光合分波器であって、各偏波モード変換光合分波器において、
2次元フォトニック結晶反射器よりも上流側にある全ての導波路が、該2次元フォトニック結晶反射器に隣接する第1フォトニック結晶光合分波器の共振器に共振する周波数及び偏波の光を通過させるように形成されており、
第1フォトニック結晶光合分波器の導波路が、上流側に隣接する第2フォトニック結晶光合分波器の共振器に共振する周波数及び偏波の光を反射するように形成されている、
ことを特徴する多段偏波モード変換光合分波器。
【請求項13】
a) 所定の周波数の光を導波させる導波路と、該導波路の近傍に設けられ、該周波数及び所定の偏波の光に共振する共振器とを有する2次元フォトニック結晶光合分波器と、
b) 該周波数の偏波を反射する反射部と、
c) 前記2次元フォトニック結晶光合分波器と反射部の間に設けられ、スラブ状の本体に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域を多数、格子状に配置して成る2次元フォトニック結晶と、該異屈折率領域の欠陥を線状に形成して成る導波路であって、断面形状が、上下方向と左右方向にそれぞれ非対称である偏光変換導波路とを備えた、前記周波数の偏波を変換する偏波モード変換器と、
を備えることを特徴とする偏波モード変換光合分波器。
【請求項14】
a) 所定の周波数の光を導波させる導波路と、該導波路の近傍に設けられ、該周波数及び所定の偏波の光に共振する共振器とを有する2次元フォトニック結晶光合分波器と、
b) 該周波数の偏波を反射する反射部と、
c) 前記2次元フォトニック結晶光合分波器と反射部の間に設けられた、該周波数の偏波を変換する請求項1~8のいずれかに記載の偏波モード変換器と、
を備えることを特徴とする偏波モード変換光合分波器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、TE偏波とTM偏波の間で偏光を変換する偏波モード変換器に関し、特に2次元フォトニック結晶を用いた偏波モード変換器に関する。この偏波モード変換器は2次元フォトニック結晶を用いた光合分波器等における偏光の制御に好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
光通信は今後のブロードバンド通信の中心的役割を担う通信方式であることから、その普及のために、光通信システムに使用される光部品類に対して更なる高性能化、小型化、低価格化が求められている。このような要求を満たす次世代光通信部品の有力候補のひとつに、フォトニック結晶を利用した光通信用デバイスがある。これは既に一部で実用段階に入っており、偏波分散補償用フォトニック結晶ファイバーなどが実用に供されている。現在では更に、波長分割多重通信(Wavelength Division Multiplexing; WDM)に使用される光分合波器等の開発が実用化に向けて進められている。
【0003】
フォトニック結晶は、誘電体に周期構造を形成したものである。この周期構造は一般に、誘電体本体とは屈折率が異なる領域(異屈折率領域)を誘電体本体内に周期的に配置することにより形成される。その周期構造により、結晶中に光のエネルギーに関するバンド構造が形成され、光の伝播が不可能となるエネルギー領域が形成される。このようなエネルギー領域は「フォトニックバンドギャップ」(Photonic Band Gap; PBG)と呼ばれる。
【0004】
このフォトニック結晶中に適切な欠陥を設けることにより、PBG中にエネルギー準位(欠陥準位)が形成され、その欠陥準位に対応する周波数(波長)の光のみがその欠陥の近傍に存在できるようになる。点状に形成された欠陥はその周波数の光の光共振器として使用することができ、線状に形成された欠陥は導波路として使用することができる。
【0005】
上記技術の一例として、特許文献1には、本体(スラブ)に異屈折率領域を周期的に配置し、その周期的配置に欠陥を線状に設けることにより導波路を形成するとともに、その導波路に隣接して点状欠陥を設けることにより共振器を形成した2次元フォトニック結晶が記載されている。この2次元フォトニック結晶は、導波路内を伝播する様々な周波数の光のうち共振器の共振周波数に一致する周波数の光を外部へ取り出す分波器として機能すると共に、外部から導波路に導入する合波器としても機能する。
【0006】
特許文献1に記載のものを含め、多くの2次元フォトニック結晶では、電場が本体に平行に振動するTE偏波又は磁場が本体に平行に振動するTM偏波のいずれか一方の偏波に対してPBGが大きく形成されるように設計される。この場合、他方の偏波に対してはPBGが形成されないことや、形成されたとしても当該他方の偏波に対しては必ずしも最適な条件にはならないことがある。
【0007】
例えば、TE偏波に対してPBG(TE-PBG)が形成され、TE-PBG内に点状欠陥(共振器)による欠陥準位(共振周波数)が形成されるようにフォトニック結晶を設計した場合、そのTE-PBGの周波数領域にはTM偏波に対するPBG(TM-PBG)が形成されないことがある。この場合、その共振周波数を有するTM偏波の光はこの共振器では共振しない。そのため、この共振器の近傍に設けた導波路を通過する光のうち、その共振周波数の光を分波しようとしても、TE偏波はほぼ完全に取り出すことができるものの、TM偏波は取り出すことができず、分波効率が悪い。合波の場合も同様である。
【0008】

【特許文献1】特開2001-272555号公報([0023]~[0027]、[0032]、図1、図5~6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
共振器におけるこのようなTM偏波の損失を抑え、分波効率を上げるために、予め、偏波フィルタを用いて導波路を通過する光からTM偏波を除去しておくことが考えられるが、これは損失を2次元フォトニック結晶内から偏波フィルタに移動させたに過ぎない。
【0010】
そこで、偏波モード変換器を用いてTM偏波を予めTE偏波に変換しておくことが考えられるが、2次元フォトニック結晶とは別体の偏波モード変換器を用いると、その偏波モード変換器と2次元フォトニック結晶を接続する必要が生じ、その接続箇所において損失が生じる可能性がある。そのため、偏波モード変換器は2次元フォトニック結晶内部に構成するか、又は2次元フォトニック結晶にスムーズに(すなわち、目的とする電磁波の損失を殆ど生じることなく)接続するのに適した構成であることが望ましい。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、2次元フォトニック結晶の内部に設け、又は2次元フォトニック結晶にスムーズに接続することができる偏波モード変換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために成された本発明に係る偏波モード変換器は、
a) スラブ状の本体に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域を多数、格子状に配置して成る2次元フォトニック結晶と、
b) 上記異屈折率領域の欠陥を線状に形成して成る導波路であって、該導波路の長手方向と同じ方向に並ぶ該異屈折率領域の2個分以上の長さに亘って設けられた、断面形状が上下方向と左右方向にそれぞれ非対称である偏光変換導波路と、
を備えることを特徴とする。
ここで、導波路の「断面」は、導波路の長手方向に垂直な面を指す。また、「上下方向」は本体に垂直な方向、「左右方向」は導波路の幅方向を指す。なお、これらは方向を特定するために便宜上用いるものであり、本発明の偏波モード変換器は任意の向きに配置して使用することができる。
【0013】
上記偏波モード変換器において、断面形状の異なる複数の偏光変換導波路を接続してもよい。
【0014】
上記断面形状は、例えば以下のようにして非対称にすることができる。
(1) 本体の面に対して斜め方向に延びる異屈折率領域を導波路の側部に設ける。
(2) 導波路内の本体の一部を他の領域と異なる厚さとする。
(3) 導波路の側部の一方に上下非対称の形状を有する異屈折率領域を設ける。
また、これらの複数を組み合わせてもよい。
【0015】
上記偏波モード変換器を用いて、TE偏波とTM偏波のうちの一方のみを利用する偏波モード変換光合分波器を形成することができる。本発明に係る偏波モード変換光合分波器の第1の態様のものは、
a) 所定の周波数の光を導波させる導波路と、該導波路の近傍に設けられ、該周波数及び所定の偏波の光に共振する共振器とを有する第1及び第2の2次元フォトニック結晶光合分波器と、
b) 両2次元フォトニック結晶光合分波器の間に設けられ、スラブ状の本体に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域を多数、格子状に配置して成る2次元フォトニック結晶と、該異屈折率領域の欠陥を線状に形成して成る導波路であって、断面形状が、上下方向と左右方向にそれぞれ非対称である偏光変換導波路とを備えた、前記周波数の偏波を変換する偏波モード変換器と、
を備えることを特徴とする。

【0016】
本発明に係る偏波モード変換光合分波器の第2の態様のものは、
a) 所定の周波数の光を導波させる導波路と、該導波路の近傍に設けられ、該周波数及び所定の偏波の光に共振する共振器とを有する2次元フォトニック結晶光合分波器と、
b) 該周波数の偏波を反射する反射部と、
c) 前記2次元フォトニック結晶光合分波器と反射部の間に設けられ、スラブ状の本体に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域を多数、格子状に配置して成る2次元フォトニック結晶と、該異屈折率領域の欠陥を線状に形成して成る導波路であって、断面形状が、上下方向と左右方向にそれぞれ非対称である偏光変換導波路とを備えた、前記周波数の偏波を変換する偏波モード変換器と、
を備えることを特徴とする。
【0017】
第1の態様の偏波モード変換光合分波器において、第1の2次元フォトニック結晶光合分波器と偏波モード変換器の間、及び第2の2次元フォトニック結晶光合分波器の偏波モード変換器とは反対の側にそれぞれ、前記所定周波数及び前記偏波の光を反射する2次元フォトニック結晶反射器を設けることができる。
【0018】
本発明に係る多段偏波モード変換光合分波器は、上記第1の態様の偏波モード変換光合分波器に更に、第1の2次元フォトニック結晶光合分波器と偏波モード変換器の間に前記所定周波数及び前記偏波の光を反射する2次元フォトニック結晶反射器を設けた偏波モード変換光合分波器を複数個、直列に接続したものであって、各偏波モード変換光合分波器において、
2次元フォトニック結晶反射器よりも上流側にある全ての導波路が、該2次元フォトニック結晶反射器に隣接する第1フォトニック結晶光合分波器の共振器に共振する周波数及び偏波の光を通過させるように形成されており、
第1フォトニック結晶光合分波器の導波路が、上流側に隣接する第2フォトニック結晶光合分波器の共振器に共振する周波数及び偏波の光を反射するように形成されている、
ことを特徴する。
【発明の実施の形態及び効果】
【0019】
本発明の偏波モード変換器は、スラブ状の本体に、その本体とは屈折率が異なる異屈折率領域を多数、格子状に配置した従来と同様の2次元フォトニック結晶内に形成する。この2次元フォトニック結晶に、異屈折率領域の欠陥を線状に設けることにより導波路を形成する。この導波路の断面形状を、上下・左右ともに非対称となるようにする。
【符号の説明】
【0020】
このような導波路の一方の端からTE偏波の光が入射すると、この導波路の断面形状の非対称性によりTM偏波光が励起され、他方の端においてTM偏波として取り出される。同様に、この導波路の一方の端からTM偏波の光が入射するとTE偏波が励起され、他方の端においてTE偏波として取り出される。このように、上記構成を有する導波路は、TE偏波・TM偏波の少なくとも一部を他方の偏波に変換することができる。従って、この導波路は偏光変換導波路となる。
【0021】
導波路の断面形状は、例えば以下のようにして上下・左右非対称にすることができる。
第1の例は、異屈折率領域が本体の面に対して垂直に形成されている2次元フォトニック結晶において、導波路の側部に、本体の面に対して斜め方向に延びる異屈折率領域(斜行異屈折率領域)を設けるものである。斜行異屈折率領域は導波路の一方の側部にのみ設けてもよいし、両側部に左右非対称になるように設けてもよい。
第2の例は、導波路内の本体の一部を他の領域と異なる厚さとするものである。このような導波路は、例えば、導波路の幅方向の中心から外れた位置にその導波路に平行に溝を形成したり、その位置にその導波路に平行に部材を付加することにより形成することができる。
第3の例は、導波路の一方の側部に上下非対称の異屈折率領域を設けるものである。導波路の断面形状は、上下方向にはこの異屈折率領域の非対称形状により、左右方向にはこの異屈折率領域を導波路の一方の側部にのみに設けることにより、それぞれ非対称となる。上下非対称の形状を有する異屈折率領域には、例えばその内部に段差が設けられたものや、上下方向に連続的に大きさが変化するものを用いることができる。
【0022】
導波路を伝播する光は線状欠陥から幅方向にある程度拡がって伝播するため、上下・左右非対称の導波路は、線状欠陥の部分やその線状欠陥に隣接する異屈折率領域に限らず、その光の拡がる範囲内の本体や異屈折率領域の形態を調整することにより形成することもできる。例えば、異屈折率領域を三角格子状に配置した場合には、線状欠陥から異屈折率領域の3列分程度、幅方向に離れた領域の形態を調整することにより、上下・左右非対称の導波路を形成することができる。
【0023】
断面形状の異なる偏光変換導波路を複数接続して、一つの偏光変換導波路としてもよい。本願ではこのような偏光変換導波路を「多段偏光変換導波路」という。多段偏光変換導波路は、各段の断面形状及びそれらの接続を適切に選択することにより、後述のように高い偏光変換効率を得ることができる。
【0024】
本発明の偏波モード変換器は、2次元フォトニック結晶から成る光機能素子の一部としてその2次元フォトニック結晶内に組み込むことができる。ここでは、上記第1及び第2の態様の偏波モード変換光合分波器を例に説明する。
第1の態様の偏波モード変換光合分波器は、2次元フォトニック結晶から成る2個の合分波器(第1光合分波器及び第2光合分波器)の間に上記偏波モード変換器を設けたものである。両合分波器は共に所定の周波数の光を導波させる導波路と、その近傍にこの所定周波数を有する所定の偏波の光に共振する共振器を有する。多くの2次元フォトニック結晶では、TE偏波又はTM偏波のいずれか一方に対してのみフォトニックバンドギャップが形成されるため、共振器もTE偏波又はTM偏波のいずれか一方の光のみに共振する。
第1光合分波器の導波路、第2光合分波器の導波路及び偏波モード変換器は、それらの導波路及び偏光変換導波路が互いに連続するように接続する。
【0025】
ここでは説明の都合上、第1光合分波器と偏波モード変換器、偏波モード変換器と第2光合分波器を接続すると記載したが、実際にはこれらは1個の2次元フォトニック結晶に一体のものとして形成することができる。
【0026】
第1の態様の偏波モード変換光合分波器の動作を説明する。ここではTE偏波に共振する共振器を第1光合分波器及び第2光分合波器に設けた場合、即ちTE偏波の光を分波する場合を例に説明する。第1光合分波器の導波路に、多数の周波数が重畳した光を導入する。この重畳光のうち、第1光合分波器の共振器に共振する周波数のTE偏波が導波路から共振器に取り出される。この時、この共振周波数を有するTM偏波は共振器には取り出されずに通過する。第1光合分波器の共振器を通過した光は偏波モード変換器の偏光変換導波路に導入される。ここで、少なくとも前記共振周波数のTM偏波の一部がTE偏波に変換される。この共振周波数のTE偏波に変換された光を含む重畳光は第2光分合波器の導波路に導入される。そのうち、TE偏波に変換された前記共振周波数の光は第2光分合波器の共振器に取り出される。こうして、第1光合分波器及び第2光分合波器からそれぞれ前記共振周波数のTE偏波が取り出される。
この偏波モード変換光合分波器では、第1光合分波器の共振器から取り出すことができない前記共振周波数の光の一部を、偏波モード変換器で偏光変換することにより第2光合分波器の共振器から取り出すことができるようになるため、偏波モード変換器のない光合分波器よりも分波効率が向上する。
なお、TM偏波に共振する共振器を第1光合分波器及び第2光分合波器に設けた場合、即ちTM偏波の光を分波する場合の動作も同様である。
【0027】
第2の態様の偏波モード変換光合分波器は、第1の態様の偏波モード変換光合分波器において、第2光合分波器の代わりに、第1光合分波器の共振器の共振周波数の光を反射する反射部を設けたものである。反射部には金属ミラーなどの通常の鏡を用いることができる。なお、第2の態様の偏波モード変換光合分波器では、2次元フォトニック結晶光合分波器は1個のみであるが、便宜上これを「第1光合分波器」と呼ぶ。
【0028】
第2の態様の偏波モード変換光合分波器の動作を、TE偏波の光を分波する場合を例に説明する。第1光合分波器の導波路に多数の周波数が重畳した光を導入すると、この重畳光のうち、第1光合分波器の共振器に共振する周波数のTE偏波が導波路から共振器に取り出される。第1光合分波器の共振器を通過した光は偏波モード変換器の偏光変換導波路に導入され、反射部で反射された後、再び偏光変換導波路を通って第1光合分波器の導波路に戻る。この間に、TM偏波の一部はTE偏波に変換される。TE偏波に変換された前記共振周波数の光は導波路から第1光合分波器の共振器に取り出される。
このように、第1光合分波器に導入された前記共振周波数のTE偏波のみならず、同じく第1光合分波器に導入された前記共振周波数のTM偏波の一部も偏波モード変換器によりTE偏波に変換されたうえで第1光合分波器の共振器から取り出されるため、偏波モード変換器を設けない光合分波器よりも分波効率が向上する。また、この偏波モード変換光合分波器では、第1の態様のものとは異なり、1つの周波数及び偏波に対して共振器を1個設ければ足りる。
【0029】
第1の態様の偏波モード変換光合分波器において、第1光合分波器と偏波モード変換器の間に、第1光合分波器の共振器に共振する周波数及び偏波の光を反射する第1の2次元フォトニック結晶反射器を設けてもよい。このとき、この共振周波数を有する他方の偏波の光は第1の2次元フォトニック結晶反射器を通過できるようにする。また、第2光合分波器の偏波モード変換器とは反対の側に、第2光合分波器の共振器に共振する周波数及び偏波の光を反射する第2の2次元フォトニック結晶反射器を設けてもよい。
このような2次元フォトニック結晶反射器には、例えば、第1及び第2の光合分波器とは異なる所定の周期で異屈折率領域を配置し、導波路を形成したものがある。異屈折率領域の周期が異なる2次元フォトニック結晶同士では導波路を通過することができる光の周波数帯域も異なる。このことを利用して、前記共振周波数が、第1及び第2の光合分波器の導波路通過周波数帯域には含まれ、第1及び第2の2次元フォトニック結晶反射器の導波路通過周波数帯域に含まれないように異屈折率領域の周期を定める。なお、このような2次元フォトニック結晶は、特開2004-233941号公報に開示されている。これにより、第1光合分波器の導波路を伝播する前記共振周波数及び前記偏波の光は、第1の2次元フォトニック結晶反射器の導波路を伝播することができず、第1光合分波器とこの反射器の境界で反射される。なお、他方の偏波は、2次元フォトニック結晶反射器の導波路を通過して、その一部は偏波モード変換器において前記偏波の光に変換される。この変換光は、第2光合分波器の導波路を伝播する前記共振周波数の光は第2光合分波器と第2の2次元フォトニック結晶反射器の境界で反射される。
第1光合分波器及び第2光合分波器のそれぞれにおいて、共振器に捕獲されずにその共振器を通過した前記共振周波数及び前記偏波の光は2次元フォトニック結晶反射器により反射され、その共振器に導入される。これにより、この偏波モード変換光合分波器は分波効率を更に高くすることができる。
【0030】
第1光合分波器と偏波モード変換器の間に2次元フォトニック結晶反射器を設けた偏波モード変換光合分波器を複数個、直列に接続することもできる。なお、後述の理由により、第2光合分波器の偏波モード変換器とは反対の側には2次元フォトニック結晶反射器を設ける必要はない。各偏波モード変換光合分波器の導波路は以下の条件を満たすように形成する。
まず、各2次元フォトニック結晶反射器よりも上流側にある全ての導波路(他の偏波モード変換光合分波器内の導波路を含む)は、その2次元フォトニック結晶反射器に隣接する第1合分波器の共振器に共振する周波数及び偏波の光を通過させるように形成する。ここで、導波路には分波の場合において多数の周波数が重畳した光が各偏波モード変換光合分波器の第1合分波器側から第2合分波器側へ流れることから、その2次元フォトニック結晶反射器に隣接する第1合分波器の側を「上流側」と呼ぶ。
また、各偏波モード変換光合分波器において、第1合分波器の導波路は、上流側に隣接する第2合分波器の共振器に共振する周波数及び偏波の光を反射するように形成する。従って、この第1合分波器は2次元フォトニック結晶反射器の役割を併せ持つため、第2合分波器の下流側には別途2次元フォトニック結晶反射器を設ける必要がない。なお、この隣接第2合分波器は、この第1合分波器が属する偏波モード変換光合分波器ではなく、その上流側に隣接する偏波モード変換光合分波器に設けたものである。
【0031】
このように形成された多段偏波モード変換光合分波器の動作を、TE偏波の光を分波する場合を例に説明する。なお、TM偏波の光を分波する場合の動作も同様である。
まず、最初の偏波モード変換光合分波器における動作を説明する。第1光合分波器の導波路に、多数の周波数が重畳した光を導入する。第1光合分波器の共振器は、その共振周波数のTE偏波を捕獲して分波する。但し、この共振周波数のTE偏波の一部は共振器には捕獲されずに導波路を通過する。2次元フォトニック結晶反射器はこの通過光を反射し、第1光合分波器の共振器はこの反射光を捕獲して分波する。それ以外の周波数のTE偏波、及びこの共振周波数を含むTM偏波は第1光合分波器及び2次元フォトニック結晶反射器の導波路を通過する。
次に、偏波モード変換器は重畳光の一部をTM偏波からTE偏波に変換する。第2光合分波器の共振器は、TE偏波に変換されたこの共振周波数の光を捕獲して分波する。但し、この共振周波数のTE偏波の一部は共振器には捕獲されずに通過する。下流側に隣接する偏波モード変換光合分波器の第1光合分波器はこの通過光を反射し、前記第2光合分波器の共振器はこの反射光を捕獲して分波する。
2番目以降の偏波モード変換光合分波器では、それぞれ1つ前の偏波モード変換光合分波器を通過した、第1及び第2光合分波器の共振器の共振周波数を有するTE偏波を、最初の偏波モード変換光合分波器と同様に分波する。
【0032】
このように、本発明の多段偏波モード変換光合分波器では、共振器に捕獲されずに通過した光は2次元フォトニック結晶反射器又は下流側に隣接する偏波モード変換光合分波器の第1光合分波器により反射されて共振器に捕獲されるため、分波効率を更に高めることができる。
【0033】
(発明の効果)
本発明により、TE偏波をTM偏波に、TM偏波をTE偏波に、それぞれ変換することができる偏波モード変換器が得られる。この偏波モード変換器は2次元フォトニック結晶を母体とするものであるため、2次元フォトニック結晶から成る光機能素子の内部に組み込むことができ、あるいは、そのような素子にスムーズに接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の偏波モード変換器の一実施例の平面図及び断面図。
【図2】多段偏光変換導波路を有する偏波モード変換器の第1実施例を示す平面図及び断面図。
【図3】図2の偏波モード変換器の透過率及び変換効率の計算結果を示すグラフ。
【図4】複数の偏波モード変換器について最大透過率及び最大変換効率を計算した結果を示す表。
【図5】多段偏光変換導波路を有する2次元フォトニック結晶の顕微鏡写真。
【図6】1段のみの偏光変換導波路を有する2次元フォトニック結晶(結晶1)及び多段偏光変換導波路を有する2次元フォトニック結晶(結晶2)の偏光変換効率の測定結果を示すグラフ。
【図7】結晶1及び結晶2の偏光変換効率の計算結果を示すグラフ。
【図8】多段偏光変換導波路を有する偏波モード変換器の第2実施例を示す平面図及び断面図。
【図9】多段偏光変換導波路を有する偏波モード変換器の第3実施例を示す平面図及び断面図。
【図10】本発明の偏波モード変換光合分波器の第1実施例の平面図。
【図11】本発明の偏波モード変換光合分波器の第2実施例の平面図。
【図12】2次元フォトニック結晶反射器を設けた偏波モード変換光合分波器の実施例の平面図。
【図13】本発明の多段偏波モード変換光合分波器の一実施例を示す模式図。
【0035】
11、21、31、41…本体
12、12a、22、32、42、421、57…空孔
121、122、221、222…斜空孔
12g…空孔の重心
13、23、33、43、76、82…導波路
131、241~244、351~356、431、54…偏光変換導波路
24、35、78…多段偏光変換導波路
341、342…溝
51、61、71…第1光合分波器
52、72…第2光合分波器
53、63…多段偏波モード変換器
55、65…光合分波器の導波路
56、66、771、772…共振器
67…反射ミラー
73…偏波モード変換器
74…2次元フォトニック結晶反射器
791、792…導波路通過周波数帯域
793…周波数帯域
811、812、...…偏波モード変換光合分波器
831、832、...…共振器
881、882、...…導波路通過周波数帯域
【実施例】
【0036】
本発明の偏波モード変換器の実施例を図1~図9を用いて説明する。
図1は本発明の偏波モード変換器の一実施例の(a)平面図及び(b)平面図中のA-A'における断面図である。スラブ状の本体11に、本体11に垂直な方向に延びる円柱状の空孔12を三角格子状に配置する。本実施例では、空孔12の周期をa、空孔12の半径を0.29a、本体11の厚さを0.6aとする。この三角格子の格子点のうちの1列に空孔12を設けない(空孔12を欠損させる)ことにより、導波路13を形成する。更に、導波路13の両側部(右側部及び左側部)にある空孔を5個ずつ、本体11に対して45°だけ導波路13の幅方向に傾斜させた斜円柱状とする(斜空孔121)。ここで、右側部の斜空孔121と左側部の斜空孔121の傾斜方向を平行とする。また、両側とも、斜空孔121の位置は、その斜円柱の重心12gが三角格子の格子点上に配置されるように定める。導波路13のうち、両側を斜空孔121で挟まれた部分が偏光変換導波路131となる。
【0037】
図1において、偏光変換導波路131以外の部分の導波路13の断面形状は、空孔12が本体11に対して垂直であるため、左右方向、上下方向共に中心線に対して線対称である。それに対して、偏光変換導波路131の断面形状は、両側部の斜空孔121が本体11に対して斜めとなっており、且つその方向が右側部と左側部で平行となっているため、左右方向及び上下方向に対称性がない。このような断面形状とすることにより、偏光変換導波路131の一方の端からTE偏波の光が入射するとTM偏波光が励起され、TM偏波の光が入射するとTE偏波光が励起される。励起された光は偏光変換導波路131の他方の端から取り出される。このように、上記構成を有する導波路は、TE偏波・TM偏波の少なくとも一部を他方の偏波に変換することができる。
【0038】
この偏波モード変換器は、本体11に垂直な方向に延びる空孔12を通常の2次元フォトニック結晶の製造に用いられる方法(例えば特許文献1に記載の方法)を用いて形成し、斜空孔121を異方性エッチングの手法を用いて形成することにより、製造することができる。異方性エッチングは、プラズマエッチングにおいてプラズマ化したガスを電界により所定の方向に指向させて被処理物に入射させる方法や、収束イオンビームを用いる方法等により行うことができる。空孔12と斜空孔121の位置合わせは、通常の半導体製造の分野において従来より用いられている方法により行うことができる。
【0039】
図2に、断面形状の異なる複数の偏光変換導波路(多段偏光変換導波路)を有する偏波モード変換器の第1の実施例を示す。(a)は平面図、(b)は平面図中のA-A'及びB-B'における断面図である。なお、(a)には断面A-A'を2箇所に付与しているが、その2箇所では両者は同じ断面形状を有する。断面B-B'についても同様である。
この偏波モード変換器は、図1の偏波モード変換器と同様に形成された本体21、空孔22及び導波路23を有する。また、図1に示した斜空孔121と同様に本体21に対して45°だけ導波路23の幅方向に傾斜した斜空孔221を両側部に10個ずつ設けた偏光変換導波路241及び243を有する。また、斜空孔221とは反対方向に、本体21に対して45°だけ傾斜した斜空孔222を両側部に10個ずつ設けた偏光変換導波路242及び244を有する。偏光変換導波路241、242、243、244が順に接続されて1個の多段偏光変換導波路24となる。空孔22の周期及び半径、本体21の厚さ、並びに斜空孔221及び222の位置の定め方は図1の偏波モード変換器の場合と同様である。
【0040】
図2の偏波モード変換器の導波路の一方の端からTE偏波の光を導入した場合について、3次元FDTD法を用いて計算を行った結果を図3に示す。
図3(a)は導波路の他方の端から取り出されるTE偏波及びTM偏波の強度(透過率)のグラフ、図3(b)は取り出された光の中でTM偏波が占める率(変換効率)及びTE偏波のまま取り出される率のグラフである。なお、これらのグラフの横軸は、周波数に周期aを乗じて光速cで除した規格化周波数である。これらの図より、計算した規格化周波数の範囲(0.266~0.276)全体に亘って、TE偏波の一部をTM偏波に変換することができることが確認できる。規格化周波数が0.269~0.274の範囲内では、導入されたTE偏波の約70%が透過でき(図3(a)の全取り出し強度)、全取り出し強度に占めるTM偏波の割合を示す変換効率は90%以上となる(図3(b))。そして、規格化周波数が0.270のとき、最大強度75%、最大変換効率95%が得られる。
なお、同一構造の偏光変換導波路においては、電磁波伝播の相反性原理より、TE偏波からTM偏波に変換する効率とTM偏波からTE偏波に変換する効率は同じであるため、TM偏波の光を導入した場合も同様の結果が得られる。
【0041】
次に、導波路の両側部に斜空孔221をK個(Kは自然数)ずつ設けた偏光変換導波路に、同じく導波路の両側部に斜空孔222をK個ずつ設けた偏光変換導波路を接続した二段偏光変換導波路をM個(Mは自然数)接続して形成した多段偏光変換導波路を有する偏波モード変換器について、最大透過率及び最大変換効率を計算した結果を図4に示す。なお、図2の偏波モード変換器の計算結果は、図中にK=10, M=2と記載したものに対応する。K=2, 6, 10, 14であってMが2以上のとき(図中に○印を付したもの)に、最大透過率及び最大変換効率がそれぞれ70%以上及び90%以上という高い値になる。このことから、高い最大透過率及び最大変換効率を得るためには、Mを2以上、Kを4n-2(nは自然数)とすることが望ましいと考えられる。
【0042】
次に、K=2, M=1の偏光変換導波路(1段のみ)を設けた2次元フォトニック結晶(結晶1)、及びK=2, M=4の多段偏光変換導波路を設けた2次元フォトニック結晶(結晶2)を作製して実験を行った結果を、図5~図7を用いて説明する。
結晶1及び結晶2は次のように作製した。まず、Si層とSiO2層から成るSOI(Silicon on Insulator)基板のSi層に、EB(電子ビーム)レジストパターニング法及びICP(誘導結合プラズマ)エッチング法により、斜空孔を除く空孔22を作製した。次に、斜空孔221及び222を、集束イオンビーム(FIB)を、形成しようとする各斜空孔が延びる方向に向けてSi層の表面に照射することにより作製した。最後に、空孔及び斜空孔を形成したSi層の領域の下にあるSiO2をフッ酸エッチングにより除去した。
図5に、結晶2を上面から撮影した電子顕微鏡写真を示す。空孔22、斜空孔221及び斜空孔222はいずれも図2(b)に示したものと同様である。
【0043】
図6に、結晶1及び結晶2について変換効率を測定した結果を示す。この測定は、導波路23の光の入射側及び出射側の結晶の端面を劈開し、入射側集光レンズにより絞られたTE偏光のレーザビームを入射側の劈開面に入射させ、出射側の劈開面から出射した出射光を出射側集光レンズ及び光ファイバを用いて光パワーメータに導入することにより行った。その際、出射側集光レンズの後段に検光子を挿入して、出射光の偏光方向を調べた。図6の縦軸の変換効率は前述のものと同様に、全取り出し強度に占めるTM偏波の割合で表した。併せて、図7に、結晶1及び結晶2について変換効率を計算で求めた結果を示す。結晶1、結晶2共に、図6の実験値と図7の計算値はよく一致している。
【0044】
図6及び図7より、結晶1、結晶2のいずれにおいてもTE偏光からTM偏光への変換が実現していることがわかる。また、ほとんどの波長において結晶1よりも結晶2の方が変換効率が高い。このことから、多段偏光変換導波路を用いることにより、変換効率を高めることができると考えられる。結晶2では、波長1520nm~1590nmという、WDM用の波長合分波器に用いるのに十分広い波長帯域に亘って、約80%という高い変換効率が達成されている。
【0045】
なお、図2~図7には、一の方向の斜空孔221を設けた偏光変換導波路と、それと同じ個数の他の方向の斜空孔222を設けた偏光変換導波路を交互に同数設けた例を示したが、本発明における多段偏光変換導波路はそれには限定されない。例えば、多段偏光変換導波路中の、一方向の斜空孔221を設けた偏光変換導波路と他方向の斜空孔222を設けた偏光変換導波路の本数が異なる多段偏光変換導波路でもよい。また、斜空孔の個数が異なる偏光変換導波路同士を接続した多段偏光変換導波路であってもよい。
【0046】
図8に、多段偏光変換導波路を有する偏波モード変換器の第2実施例を示す。(a)は平面図、(b)は平面図中のA-A'における断面図である。この偏波モード変換器は、上記各偏波モード変換器と同様に形成された本体31、空孔32及び導波路33を有する。空孔32の周期及び半径、そして本体31の厚さは上記各実施例と同様である。この導波路33内に、この導波路33に平行な方向に延び、導波路33の中心から一方の側部までの幅を有する溝341を形成する。溝の深さは0.1a、長さは10aである。この溝により、導波路33は上下方向、左右方向ともに対称性を失い、溝341を形成した範囲が偏光変換導波路351となる。また、偏光変換導波路351に接続して、導波路33の反対の側に、溝341と同じ形状の溝342を設けた偏光変換導波路352を形成する。これらの偏光変換導波路351~356を交互に設けることにより、第2実施例の多段偏光変換導波路35を有する偏波モード変換器が形成される。このように形成された第2実施例の多段偏光変換導波路35を有する偏波モード変換器の最大透過率及び最大変換効率を計算した。その結果、最大透過率は65%、最大変換効率は40%であった。
【0047】
図9に、多段偏光変換導波路を有する偏波モード変換器の第3実施例を示す。(a)は平面図、(b)は平面図中のA-A'における断面図である。この偏波モード変換器は、上記各偏波モード変換器と同様に形成された本体41、空孔42及び導波路43を有する。空孔42の周期、半径及び本体41の厚さは上記各実施例と同様である。この導波路43の一方の側部にある空孔421を、本体の上半分においてのみ大きくする。ここでは、本体の上半分における半径を0.45a(下半分における半径は他の空孔42と同じ0.29a)とする。このような空孔421を一方の側部に10個設けたものを1つの構成単位とし、設ける側部を交互に入れ替えた偏光変換導波路441、442、443、444を順に接続することにより多段偏光変換導波路44を形成する。このように形成された第3実施例の多段偏光変換導波路44を有する偏波モード変換器の最大透過率及び最大変換効率を計算した。その結果、最大透過率は65%、最大変換効率は20%であった。
【0048】
次に、本発明の偏波モード変換器を用いた光合分波器の実施例を図10及び図11を用いて説明する。
図10に示す第1実施例の偏波モード変換光合分波器は、導波路55の近傍に共振器56を有する第1光合分波器51及び第2光合分波器52の間に、偏光変換導波路54を有する第1実施例の多段偏波モード変換器53を設けたものである。第1光合分波器51及び第2光合分波器52は、円柱状の空孔57を三角格子状に配置し、空孔57を1列分欠損させることにより導波路55を形成し、更に、導波路から空孔57の列を3列挟んで空孔57を直線状に3個欠損させることにより共振器56を設けたものである。第1光合分波器51の共振器56及び第2光合分波器52の共振器56’はいずれも、所定の周波数frのTE偏波にのみ共振し、その周波数frのTM偏波には共振しない。
【0049】
このように形成された偏波モード変換光合分波器の動作を説明する。第1光合分波器51の導波路55に、共振器56及び56’の共振周波数frの光を含む重畳光を導入する。この重畳光のうち周波数frのTE偏波は共振器56に捕獲されて導波路から取り出され、周波数frのTM偏波を含むそれ以外の光は共振器56を通過して偏光変換導波路54に導入される。偏光変換導波路54において、周波数frのTM偏波の一部(第1実施例の多段偏波モード変換器では最大75%)がTE偏波に変換される。こうしてTE偏波に変換された周波数frの光は、第2光合分波器52の導波路55’から共振器56’により捕獲され、導波路55’から取り出される。以上により、第1実施例の偏波モード変換光合分波器は、共振周波数frの光を、TE偏波として導波路55に導入されたもののみならず、TM偏波として導入されたものの一部も含めて導波路から分波することができ、分波効率を高めることができる。
【0050】
図11に、第2実施例の偏波モード変換光合分波器の平面図を示す。この偏波モード変換光合分波器は、導波路55の近傍に共振器56を有する第1光合分波器61、偏光変換導波路64を有する多段偏波モード変換器63、及び偏光変換導波路54を伝播する光を反射する反射ミラー67をこの順に接続したものである。この偏波モード変換光合分波器の動作を説明する。第1光合分波器61の導波路65に上記重畳光を導入する。第1実施例の光合分波器と同様に、共振周波数frを有するTE偏波は共振器66に捕獲されて導波路から取り出され、それ以外の光は偏光変換導波路64に導入される。偏光変換導波路64において、周波数frのTM偏波の一部はTE偏波に変換され、更に反射ミラー67により反射されることにより、再び導波路65に導入される。そして、TE偏波に変換された光は共振器66に捕獲されて導波路65から取り出される。以上により、第2実施例の偏波モード変換光合分波器は、共振周波数frの光を、TE偏波として導波路65に導入されたもののみならず、TM偏波として導入されたものの一部も含めて1つの共振器66から取り出すことができる。
【0051】
図12(a)に、2次元フォトニック結晶反射器を設けた偏波モード変換光合分波器の実施例の平面図を示す。この偏波モード変換光合分波器は、第1光合分波器(PC)71、第1の2次元フォトニック結晶反射器(PM)74、偏波モード変換器(MC)73、第2光合分波器(PC')72、第2の2次元フォトニック結晶反射器(PM')75の順に直列に接続したものである。第1光合分波器71及び第2光合分波器72はそれぞれ、導波路76の近傍に共振器771及び772を有し、偏波モード変換器73は導波路76に接続される多段偏光変換導波路78を有する。これらの第1光合分波器71、第2光合分波器72及び偏波モード変換器73には、これまで述べたものを用いることができる。第1及び第2の2次元フォトニック結晶反射器74及び75は、第1光合分波器71(第2光合分波器72も同様)を縮小したような構造を有し、これらの2次元フォトニック結晶反射器74及び75の空孔の周期a2は第1光合分波器71の空孔の周期a1よりも小さくなるように形成される。
【0052】
この場合、図12(b)に示すように、2次元フォトニック結晶反射器74の導波路を通過することができる光の周波数帯域792は、第1光合分波器71の導波路通過周波数帯域791よりも高周波数側に移動する。そのため、導波路通過周波数帯域791の一部(周波数帯域793)の周波数の光は、第1光合分波器71の導波路は通過することができるが、2次元フォトニック結晶反射器74の導波路を通過することができない。TE偏波では、導波路に平行に3個の空孔を欠損させた共振器771の共振周波数は、導波路通過周波数帯域791内の低周波数側の端付近にあるため、周波数帯域793に含まれる(特開2004-233941号公報参照)。そのため、導波路76内を伝播するこの共振周波数のTE偏波のうち、共振器771により捕獲されずに通過した光は、第1の2次元フォトニック結晶反射器74により反射される。反射された光の一部は共振器771に捕獲される。同様に、多段偏光変換導波路78によりTM偏波からTE偏波に変換されたこの共振周波数のTE偏波のうち、共振器772により捕獲されずに通過した光は、第2の2次元フォトニック結晶反射器75により反射され、その反射光の一部は共振器772に捕獲される。これによりこの共振周波数のTE偏波が共振器771及び772に捕獲される割合が増え、分波効率が向上する。
【0053】
図13(a)に、本発明の多段偏波モード変換光合分波器の一実施例を模式図で示す。
この多段偏波モード変換光合分波器は、図12(a)に示した偏波モード変換光合分波器から第2の2次元フォトニック結晶反射器PM'を除いたものと同様の構成を有する偏波モード変換光合分波器811、812、...、81n、...(81nは偏波モード変換光合分波器811から数えてn番目の偏波モード変換光合分波器である)が直列に接続されたものである。偏波モード変換光合分波器81nは第1光合分波器PCn、2次元フォトニック結晶反射器PMn、偏波モード変換器MCn、第2光合分波器PCn'を有する。また、全ての偏波モード変換光合分波器を貫く導波路82が形成される。この導波路82には、偏波モード変換光合分波器811側から多数の周波数が重畳した光が導入される。そのため、ここでは偏波モード変換光合分波器811側を上流側と呼ぶ。導波路82は、偏波モード変換器MCn内では多段偏光変換導波路となっている。
【0054】
第1光合分波器PCnの異屈折率領域はそれよりも上流側にある第1光合分波器PC(n-1)の異屈折率領域よりも小さい周期で配置される。第2光合分波器及び偏波モード変換器も同様である。2次元フォトニック結晶反射器PMnの異屈折率領域は、本実施例ではそれよりも下流側にある第1光合分波器PC(n+1)の異屈折率領域と同じ周期で配置される。第1光合分波器PCnはTE偏波に共振する共振器831、832、...、83n、...を、第2光合分波器PCn'は共振器831’、832’、...、83n’、...を有する。異屈折率領域の周期が小さく(nが大きく)なるに従いその共振周波数fnは大きくなる。また、共振器83n及び83n’は、図12のものと同様に、共振周波数fnが第1光合分波器PCn及び第2光合分波器PCn'における導波路通過周波数帯域881、882、...、88n、...の低周波数側の端付近にある(図13(b))。そのため、共振周波数fnのTE偏波はそれぞれ2次元フォトニック結晶反射器PMn及び第1光合分波器PC(n+1)の導波路を伝播することができず、2次元フォトニック結晶反射器PMn及び第1光合分波器PC(n+1)により反射される。なお、最も下流側にある偏波モード変換光合分波器81nmaxに設けた共振器83nmax、83nmax’の共振周波数fnmaxが第1光合分波器PCnの導波路通過周波数帯域881に含まれるように異屈折率領域の周期を調整することにより、全ての共振周波数fnのTE偏波は第1光合分波器PCnよりも上流側の導波路82を伝播することができる(図13(b))。
【0055】
本実施例の多段偏波モード変換光合分波器の動作を説明する。偏波モード変換光合分波器811側から導波路82に、周波数f1, f2, ..., fn, ..., fnmaxの重畳光を導入する。まず、偏波モード変換光合分波器811の第1光合分波器PC1において、周波数f1のTE偏波が共振器831に捕獲される。但し、その一部は共振器831に捕獲されずに通過し、2次元フォトニック結晶反射器PM1により反射される。そして、反射された周波数f1のTE偏波の一部が共振器831に捕獲される。一方、TM偏波及び周波数f1以外のTE偏波は第1光合分波器PC1及び2次元フォトニック結晶反射器PM1を通過し、偏波モード変換器MC1に導入される。偏波モード変換器MC1において、周波数f1のTM偏波の一部はTE偏波に変換される。このTE偏波に変換された周波数f1の光は、第2光合分波器PC1'の共振器831’に捕獲される。但し、その一部は共振器831’に捕獲されずに通過し、偏波モード変換光合分波器812の第1光合分波器PC2により反射されて共振器831’に捕獲される。周波数f1以外の光は第2光合分波器PC1'を通過する。
2番目以降の偏波モード変換光合分波器81nにおいては、上記偏波モード変換光合分波器811と同様に、周波数fnのTE偏波は第1光合分波器PCnの共振器83nに捕獲され、周波数fnのTM偏波の一部は偏波モード変換器MCnにおいてTE偏波に変換されて第2光合分波器PCn'の共振器83n’に捕獲される。その際、共振器83n及び83n’を通過した周波数fnのTE偏波は、2次元フォトニック結晶反射器PMn及び下流側に隣接する偏波モード変換光合分波器の第1光合分波器PC(n+1)により反射され、共振器83n及び83n’に捕獲される。
以上のように、各偏波モード変換光合分波器81nはそれぞれ周波数fnのTE偏波を分波することができる。本実施例の多段偏波モード変換光合分波器では、2次元フォトニック結晶反射器PMn及び第1光合分波器PC(n+1)が周波数fnのTE偏波の光を反射するため、この光が共振器83n及び83n’に捕獲される割合が増え、分波効率が向上する。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図5】
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