TOP > 国内特許検索 > 異極像結晶を用いたX線発生装置 > 明細書

明細書 :異極像結晶を用いたX線発生装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4905721号 (P4905721)
登録日 平成24年1月20日(2012.1.20)
発行日 平成24年3月28日(2012.3.28)
発明の名称または考案の名称 異極像結晶を用いたX線発生装置
国際特許分類 H01J  35/20        (2006.01)
H01J  35/16        (2006.01)
H05G   2/00        (2006.01)
G21K   5/08        (2006.01)
FI H01J 35/20
H01J 35/16
H05G 1/00 J
G21K 5/08 X
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2007-554917 (P2007-554917)
出願日 平成19年1月17日(2007.1.17)
国際出願番号 PCT/JP2007/050598
国際公開番号 WO2007/083662
国際公開日 平成19年7月26日(2007.7.26)
優先権出願番号 2006009927
優先日 平成18年1月18日(2006.1.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年12月24日(2009.12.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
【識別番号】505114488
【氏名又は名称】中西 義一
発明者または考案者 【氏名】吉門 進三
【氏名】伊藤 嘉昭
【氏名】中西 義一
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査官 【審査官】桐畑 幸▲廣▼
参考文献・文献 特開2005-285575(JP,A)
米国特許第3840748(US,A)
米国特許出願公開第2003/021052(US,A1)
調査した分野 H01J 35/20
H01J 35/16
H05G 2/00
G21K 5/08
特許請求の範囲 【請求項1】
内部に低圧ガス雰囲気を維持する内側密封容器と、
前記内側密封容器の内部に設けられた異極像結晶支持手段と、
前記内側密封容器の内部において前記異極像結晶支持手段に支持された異極像結晶と、
前記異極像結晶の温度を昇降させる温度昇降手段と、
内部に大気圧に略等しい圧力のガス雰囲気を維持し、かつ前記内側密封容器を収容する外側密封容器を備え、
前記内側密封容器内には、前記外側密封容器内に封入されるガスよりも第1イオン化エネルギーの小さいガスが封入されていて、
前記異極像結晶の温度の昇降に伴って前記外側密封容器から外部にX線を放射するものであることを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
前記内側密封容器に封入されるガスは、NおよびArおよびKrおよびOのうちのいずれか1つ、またはそれらの2つ以上の組み合わせからなり、前記外側密封容器に封入されるガスは、HeおよびNeのうちのいずれか1つ、またはそれらの組み合わせからなっていることを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記外側密封容器の壁はX線を透過させない材料から形成され、前記外側密封容器の壁には少なくとも1つのX線透過窓が気密シールされた状態で設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記内側密封容器の壁はX線を透過させない材料から形成され、前記内側密封容器の壁には、前記外側密封容器のX線透過窓に整合する位置に開口が設けられ、前記開口には金属ターゲットが気密シールされた状態で取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載のX線発生装置。
【請求項5】
前記温度昇降手段は、
前記異極像結晶の加熱および冷却を繰り返し行うことができる加熱・冷却手段と、
前記異極像結晶の温度を測定する温度センサーと、
前記温度センサーからの温度検出信号に基づき、前記加熱・冷却手段の動作を制御する制御手段と、を有していることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載のX線発生装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱的に励起された異極像結晶から発生されるX線を利用したX線発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、X線発生源として、異極像結晶を用いたX線発生装置が注目されつつある。
図6には、異極像結晶を用いた従来のX線発生装置の構成が示されている。図6を参照して、低圧ガス雰囲気が維持されたパッケージ51内の底面に、ヒーター/クーラー板52が配置され、その上面には、異極像結晶53が置かれている。異極像結晶53は、その正の電気面がヒーター/クーラー板52の上面によって支持され、上向きに露出した負の電気面が、パッケージ51上面に備えられた銅製ターゲット54に対向している。ターゲット54の上面には、X線を透過し、気密保持が可能なベリリウム窓55が備えられている。
パッケージ51にはグラウンド線56が接続されて接地電位に維持され、さらに、ヒーター/クーラー板52への直流電圧印加線57および温度制御信号線58が接続されて、温度昇降を行う加熱サイクルを生ずるようになっている。
【0003】
異極像結晶は、焦電結晶とも呼ばれ、加熱および冷却を繰り返してその温度を昇降させると、結晶内部の自発分極が増減し、表面吸着電荷がその変化に追随できなくなって、電気的な中和が破られるという特性を有している。代表的な異極像結晶としては、LiNbO単結晶があり、この結晶体内では正電荷(Li、Nb5+)の重心と負電荷(O2-)の重心とが一致しないため、定常状態でも分極していて、この電荷量と等量で異符号の電荷が結晶表面に吸着しているために、常時は電気的に中和されている。
【0004】
そして、異極像結晶53が一定の加熱サイクルで温度昇降され、主として、温度昇降時の負の電気面および正の電気面の電荷の増減による電界の変化により、負の電気面から解放される荷電粒子や、電子がパッケージ内のガスを遊離および励起し、それによって電離した電子をターゲットに衝突させてX線が励起され、外部に放射されるようになっている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
この従来のX線発生装置は、高圧電源や真空排気装置等を必要としないため、小型軽量で可搬である。しかしその一方で、真空排気装置が備えられていないことから、パッケージ内を一定の低圧ガス雰囲気に維持することが非常に難しく、外部からパッケージ内への大気のリークによって、短時間のうちにパッケージ内のガス圧が上昇してしまう。
そして、パッケージ内のガス圧が上昇すると、X線の発生効率が著しく低下し、安定したX線の発生が困難となるばかりか、X線の発生自体が停止してしまい、よって、X線発生装置の寿命が非常に短くなってしまう。
この問題を解決すべく、パッケージをより気密性の高い構造にすることが考えられるが、それには多大のコストがかかり、非現実的である。

【非特許文献1】AMPTEK社の製品カタログ、「AMPTEK X-RAY GENERATOR WITH PYROELECTRIC CRYSTAL COOL-X」、インターネット<URL:http://www.amptek.com/coolx.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、真空排気装置を備えることなく、しかもパッケージの気密構造を従来と同程度として、長時間にわたって安定してX線を発生させることができる、異極像結晶を用いたX線発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、内部に低圧ガス雰囲気を維持する内側密封容器と、前記内側密封容器の内部に設けられた異極像結晶支持手段と、前記内側密封容器の内部において前記異極像結晶支持手段に支持された異極像結晶と、前記異極像結晶の温度を昇降させる温度昇降手段と、内部に大気圧に略等しい圧力のガス雰囲気を維持し、かつ前記内側密封容器を収容する外側密封容器を備え、前記内側密封容器内には、前記外側密封容器内に封入されるガスよりも第1イオン化エネルギーの小さいガスが封入されていて、前記異極像結晶の温度の昇降に伴って前記外側密封容器から外部にX線を放射するものであることを特徴とするX線発生装置を構成したものである。
【0008】
かかる構成において、外側密封容器内の圧力は略大気圧に等しいので、外部から外側密封容器内への大気のリークはほとんど生じない。一方、内側密封容器内の圧力は、外側密封容器内の圧力より低いので、外側密封容器内から内側密封容器内へのガスのリークが生じる。
一方、異極像結晶は、第1イオン化エネルギーのより大きいガス雰囲気中に置かれた場合の方が、第1イオン化エネルギーのより小さいガス雰囲気中に置かれる場合よりも、より高い圧力下において、最大X線強度を生じさせるという物性を有している。
こうして、異極像結晶が収容された内側密封容器内は、当初、第1イオン化エネルギーのより小さいガスの低圧雰囲気に維持され、それによって、異極像結晶は熱的に励起されることによって、X線を安定して効率よく発生させる。その後、内側密封容器内にガスのリークが生じ始めると、外側密封容器から第1イオン化エネルギーのより大きいガスが入り込むとともに、内側密封容器内のガス圧は次第に上昇するが、このとき、内側密封容器内の第1イオン化エネルギーのより大きいガスの濃度が上昇していくので、異極像結晶は、依然として、熱的に励起されることにより、X線を安定して効率よく発生させる。
【0009】
上記構成において、好ましくは、前記内側密封容器に封入されるガスは、NおよびArおよびKrおよびOのうちのいずれか1つ、またはそれらの2つ以上の組み合わせからなり、前記外側密封容器に封入されるガスは、HeおよびNeのうちのいずれか1つ、またはそれらの組み合わせからなっている。
【0010】
また好ましくは、前記外側密封容器の壁はX線を透過させない材料から形成され、前記外側密封容器の壁には少なくとも1つのX線透過窓が気密シールされた状態で設けられており、さらに好ましくは、前記内側密封容器の壁はX線を透過させない材料から形成され、前記内側密封容器の壁には、前記外側密封容器のX線透過窓に整合する位置に開口が設けられ、前記開口には金属ターゲットが気密シールされた状態で取り付けられている。
【0011】
上記構成において、また好ましくは、前記温度昇降手段は、前記異極像結晶の加熱および冷却を繰り返し行うことができる加熱・冷却手段と、前記異極像結晶の温度を測定する温度センサーと、前記温度センサーからの温度検出信号に基づき、前記加熱・冷却手段の動作を制御する制御手段とを有している。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、異極像結晶が収容された密封容器を別の密封容器内に収容して二重構造とし、内側密封容器内には、外側密封容器内に封入されるガスよりも第1イオン化エネルギーが小さいガスを封入するとともに、外側密封容器内の圧力を略大気圧に等しくし、内側密封容器内の圧力を外側密封容器内の圧力より低くしたことにより、内側密封容器内にガスのリークが生じた場合にも、長時間にわたって、X線を安定して効率的に発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の1実施例による異極像結晶を用いたX線発生装置の概略構成を示した透視図である。
【図2】図1に示されたX線発生装置の縦断面図である。
【図3】ガスの第1イオン化エネルギーと、そのガス雰囲気中における最大X線強度が生じるガス圧との関係を示すグラフである。
【図4】種々のガス雰囲気中におけるX線強度とガス圧との関係を示すグラフである。
【図5】Nガスを封入した密封容器内にNeガス、Heガスを導入した時のX線強度とガス圧の関係を示すグラフである。
【図6】異極像結晶を用いたX線発生装置の従来例の縦断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 内側密封容器
2 ペルチェ素子
3 異極像結晶
4 銅板
5 金属ターゲット
6 外側密封容器
7 スペーサ
8 X線透過窓
9 温度センサー
10 制御部
11 直流電圧印加線
12 制御部
13 信号伝送線
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例について説明する。図1は、本発明の1実施例による異極像結晶を用いたX線発生装置の概略構成を示した透視図であり、図2は、図1に示されたX線発生装置の縦断面図である。
図1および図2を参照して、本発明のX線発生装置は、内部に低圧ガス雰囲気(3~6Pa)を維持する内側密封容器1を備えている。この実施例では、内側密封容器1は、X線を透過させない材料(例えば金属)から形成された、両端開口が閉じられた円筒形状を有している。
【0016】
内側密封容器1内には、後述する外側密封容器内に封入されるガスよりも第1イオン化エネルギーが小さいガス、例えば、NおよびArおよびKrおよびOのうちのいずれか1つ、またはそれらの2つ以上の組み合わせが封入されている。
【0017】
内側密封容器1の内側底壁には、ペルチェ素子2が接合されている。ペルチェ素子2は、この実施例では、異極像結晶の加熱および冷却を繰り返し行う加熱・冷却手段として機能するだけでなく、異極像結晶支持手段としても機能する。そして、ペルチェ素子2の基板上に、銅板4を介して、異極像結晶3が接合、支持されている。銅板4は、ペルチェ素子2が発熱または吸熱作用を生じさせる際に、ペルチェ素子2と異極像結晶3との間において均一かつ効率的な熱伝導が行われるようにする。
【0018】
この実施例では、異極像結晶3は、その正の電気面が銅板4上に支持され、負の電気面が上向きとなるように配置される。異極像結晶としては、例えば、LiNbOやLiTaO等の公知の異極像結晶がすべて使用可能である。この実施例では、異極像結晶3は円柱形状を有し、銅板4は円形を有し、ペルチェ素子2もまた対応する円柱形状を有しており、また、異極像結晶3は、直径が約10mm、厚さが約1~10mmの寸法を有している。
この実施例では、異極像結晶3は、負の電気面が上向きとなるように銅板4上に置かれるが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、異極像結晶3を、正の電気面が上向きとなるように配置することもできる。
【0019】
内側密封容器1の上壁における、異極像結晶3の負の電気面に対向する位置には、円形の開口が設けられ、この開口には板状の金属ターゲット5が気密シールされた状態で取り付けられている。金属ターゲット5は、例えば、銅、チタン、亜鉛、クロム、アルミニウム、鉄、錫、モリブデン、タングステン、タンタル等からなっている。
【0020】
内側密封容器1は、大気圧とほぼ等しい圧力のガス雰囲気を内部に維持する外側密封容器6内に収容されている。さらに、内側密封容器1の外側底壁面および外側密封容器6の内側底壁面の間には、金属製またはガラス製のスペーサ7が接合され、このスペーサ7によって、内側密封容器1は、外側密封容器6内に支持、固定される。
【0021】
外側密封容器6内には、内側密封容器1内に封入されるガスよりも第1イオン化エネルギーの大きいガス、例えば、HeおよびNeのうちのいずれか1つ、またはそれらの組合わせが封入される。
外側密封容器6の上壁における、内側密封容器1の金属ターゲット5に対向する位置には、例えばBeまたはX線透過性プラスチックから形成されたX線透過窓8が備えられている。X線透過窓8にも気密シールがなされている。
【0022】
異極像結晶3には、温度センサー9が取付けられている。また、外側密封容器6の外部には、ペルチェ素子2に電力を供給する、例えば電池からなる電源部10が配置される。電源部10とペルチェ素子2とは、内側密封容器1および外側密封容器6の各底壁を貫通してのびる直流電圧印加線11によって互いに接続されている。外側密封容器6の外部には、温度センサー9からの温度検出信号に基づき、電源部10による電力供給を制御することによって、ペルチェ素子2の動作を制御する制御部12が配置されている。温度センサー9と制御部12とは、内側密封容器1および外側密封容器6の各底壁を貫通してのびる信号伝送線13によって互いに接続されている。直流電圧印加線11および信号伝送線13は、内側密封容器1および外側密封容器6の各底壁とハーメチックシールにより接合されている。
【0023】
そして、これらペルチェ素子2、温度センサー9、電源部10および制御部12から、異極像結晶3の温度を昇降させる温度昇降手段が構成される。温度昇降手段2、9、10、12は、異極像結晶3の温度を、種々の温度勾配で、種々の周期であるいは非周期的に昇降させることができるようになっている。この場合、各温度昇降過程毎に、温度の上昇時間と下降時間は同じであることが好ましく、また、室温と、異極像結晶のキューリー点以下の適当な高温度との間で温度の昇降が繰り返されることが好ましい。
【0024】
この実施例では、異極像結晶の加熱・冷却手段としてペルチェ素子が使用されているが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、発熱および吸熱作用を繰り返し生じ得る適当な公知の手段を、異極像結晶の加熱・冷却手段として使用することができる。この場合、必要に応じて、別途、異極像結晶を支持するための異極像結晶支持手段を密封容器内に設ける必要がある。
【0025】
そして、異極像結晶3の温度が上昇せしめられると、異極像結晶3の金属ターゲット5に対向する面(負の電気面)に発生する負の電荷の表面電荷密度が減少し、結晶3の表面に吸着していた正の電荷量よりも減少し、表面は実質的に正に帯電する。
その結果、異極像結晶3の上方空間には、結晶3から上向きに高電界が発生する。このとき、異極像結晶3の上方空間には低気体圧力のガスが存在するが、この高電界により、一部のガスが電離され、正電荷を有するイオンと電子が発生してプラズマが形成される。また、異極像結晶3の上方空間に、高電界によって放電が発生することもあり、これがさらなるガスの電離を促進する。
【0026】
こうして発生した電子およびイオンが、高電界により、それぞれ電界に対して逆の向きおよび同じ向きに加速される。その結果、X線の発生に大きな寄与をすると考えられる電子については、異極像結晶3および金属ターゲット5間に存在する電子は異極像結晶3の表面に衝突し、制動輻射機構により、異極像結晶3から、当該結晶3を構成する全元素固有の特性X線および連続スペクトルを構成する白色X線が発生する。発生した種々のX線は、さらに、外側密封容器6のX線透過窓8を通って外部に放射される。
【0027】
異極像結晶3の温度が下降せしめられると、異極像結晶3の金属ターゲット5に対向する面(負の電気面)に発生する負の電荷の表面電荷密度が増加し、結晶3の表面に吸着していた正の電荷量よりも増加し、表面は実質的に負に帯電する。
その結果、異極像結晶3の上方空間には、結晶3に向かって高電界が発生する。そして、異極像結晶3および金属ターゲット5間に存在する電子は、金属ターゲット5に衝突し、制動輻射機構により、金属ターゲット5に固有の特性X線および連続スペクトルを構成する白色X線が発生する。発生した種々のX線は、さらに、外側密封容器6のX線透過窓8を通って外部に放射される。
【0028】
この場合、外側密封容器6内の圧力は略大気圧に等しいので、外部から外側密封容器6内への大気のリークはほとんど生じない。一方、内側密封容器1内の圧力は、外側密封容器6内の圧力より低いので、外側密封容器6内から内側密封容器1内へのガスのリークが生じる。
【0029】
一方、異極像結晶3は、第1イオン化エネルギーのより高いガス雰囲気中に置かれた場合の方が、第1イオン化エネルギーのより低いガス雰囲気中に置かれる場合よりも、より高い圧力下において、最大X線強度を生じさせるという物性を有している。
これを確認するため、本発明によるX線発生装置における内側密封容器の部分のみを使用し、内側密封容器内に第1イオン化エネルギーの異なる種々のガス(He、Ne、N、Ar、Kr、O)を封入し、封入ガスのそれぞれについて、X線強度が最大値となる時の内側密封容器内圧力を測定した。測定結果を図3のグラフに示す。図3のグラフから、第1イオン化エネルギーのより高いガス(He、Ne等)の方が、第1イオン化エネルギーのより低いガス(N、Ar、Kr、O等)よりも、より高い圧力下において、最大X線強度を生じさせることがわかる。
また、上記と同様に、本発明によるX線発生装置の内側密封容器の部分のみを使用し、内側密封容器内に第1イオン化エネルギーの異なる種々のガス(He、Ne、N、Ar、Kr、O)を封入し、それぞれのガス雰囲気中における、銅の特性X線(8.09eV)の発生強度のガス圧力依存性を調べた。結果を図4のグラフに示す。図4のグラフから、ガスの第1イオン化エネルギーが高くなると、発生X線強度が最大値となるポイントは、次第に高圧側にシフトすることがわかる。
【0030】
こうして、異極像結晶3が収容された内側密封容器1内は、当初、第1イオン化エネルギーのより低いガスの低圧雰囲気に維持され、それによって、異極像結晶3は熱的に励起されることによって、X線を安定して効率よく発生させる。その後、内側密封容器1内にガスのリークが生じ始めると、外側密封容器6から第1イオン化エネルギーのより高いガスが入り込むとともに、内側密封容器1内のガス圧は次第に上昇するが、このとき、内側密封容器1内の第1イオン化エネルギーのより高いガスの濃度が上昇していくので、異極像結晶3は、依然として、熱的に励起されることにより、X線を安定して効率よく発生させる。
【0031】
上記の作用効果を調べるため、本発明によるX線発生装置の内側密封容器の部分のみを使用し、予めNガスを封入した内側密封容器内にNeガスまたはHeガスを導入した時のX線強度とガス圧の関係を測定した。測定結果を図5に示す。
この実験では、最初、内側密封容器内にNを発生X線強度が最大となる圧力で封入しておき、その後、Neを徐々に導入したときの発生X線強度と、その時の容器内の圧力を測定した(図5においては、1.Ne-addedと表記)。同様に、内側密封容器内にNを発生X線強度が最大となる圧力で封入しておき、その後、Heを徐々に導入したときの発生X線強度と、その時の容器内の圧力を測定した(図5においては、2.He-addedと表記)。
また、内側密封容器内にNを徐々に導入していき、内部圧力が3Paになった時点でNからHeに切り替えて導入したときの発生X線強度と、その時の容器内の圧力を測定した(図5においては、3.He-addedと表記)。
図5のグラフから分るように、容器内にNeまたはHeが導入されても、発生X線強度は急激には変化しない。また、第1イオン化エネルギーのより大きいHeを用いると発生X線強度をより維持できることが分る。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5