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明細書 :熱電材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4496333号 (P4496333)
公開番号 特開2007-227755 (P2007-227755A)
登録日 平成22年4月23日(2010.4.23)
発行日 平成22年7月7日(2010.7.7)
公開日 平成19年9月6日(2007.9.6)
発明の名称または考案の名称 熱電材料
国際特許分類 H01L  35/20        (2006.01)
H01L  35/34        (2006.01)
C22C  38/00        (2006.01)
H02N  11/00        (2006.01)
FI H01L 35/20
H01L 35/34
C22C 38/00 302Z
H02N 11/00 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2006-048461 (P2006-048461)
出願日 平成18年2月24日(2006.2.24)
審査請求日 平成18年4月25日(2006.4.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】鈴木 理
【氏名】藤城 孝宏
【氏名】鈴木 亮輔
個別代理人の代理人 【識別番号】100080621、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 寿一郎
審査官 【審査官】▲高▼橋 英樹
参考文献・文献 特開2005-330570(JP,A)
特開2004-179264(JP,A)
特開2005-277343(JP,A)
特開2005-294566(JP,A)
調査した分野 H01L 35/20
C22C 38/00
H01L 35/34
H02N 11/00
特許請求の範囲 【請求項1】
主にFe、V及びAlを含有し、V濃度が20~40at%、Al濃度が20~30at%であり、かつバナジウム炭化物がマトリクス中に分散し、
C濃度が0at%を超え10at%以下、かつSi濃度が0at%を超え5at%以下とすることを特徴とする鉄合金熱電材料。
【請求項2】
S濃度が0at%を超え0.5at%以下とすることを特徴とする請求項1記載の鉄合金熱電材料。
【請求項3】
V濃度を20at%以上25at%以下、かつAl濃度を23at%以上26at%未満としたことを特徴とする請求項1または請求項に記載のp型鉄合金熱電材料。
【請求項4】
V濃度を25at%以上32at%以下、かつAl濃度を20at%以上23at%以下としたことを特徴とする請求項1または請求項に記載のn型鉄合金熱電材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷が低い新しいエネルギー変換技術として熱電発電が注目されている。これは、p型熱電材料とn型熱電材料を用いて、材料の温度差によって熱エネルギーを電気エネルギーに変換するゼーベック効果を利用するものである。
熱電材料の熱電変換性能は、材料特有の因子であるゼーベック係数S、電気抵抗率ρ、熱伝導率κにより下記の式で表される。
性能指数Z=S2/ρκ
また、S2/ρを出力因子といい、電気の流れやすさを示す熱電特性の指標のひとつである。従って、熱電変換性能を挙げるためにはゼーベック係数が高い、電気抵抗率と熱伝導率が低い材料が望ましい。
【0003】
従来の熱電材料としては、Bi-Te系、Pb-Te系、Si-Ge系といった半導体焼結材料が大半を占めている。近年ではCo-Sb系スクッテルダルトや層状酸化物などが研究されている。Bi-Te系材料を使用し、ペルチェ効果を利用した熱電冷却技術は、電気冷蔵庫や温調装置として実用化されているが、ゼーベック効果を利用した発電技術は大型化に伴うコストの問題などで衛星用電源等の特殊用途でしか実用化に至っていない。
また、従来からの熱電半導体は、Bi-Te系材料ではp型とn型とするためB(ホウ素)やSe(セレン)を添加する必要がある。これらのSe、Te(テルル)、Pb(鉛)は有害元素であり、地球環境面で好ましくない。また、上記元素やGe(ゲルマニウム)などは資源として希少元素あり、材料コストが高いことも問題である。
本発明で着目したFe-V-Al系材料は、DO3型結晶構造をもつFe3AlにおいてFeをV(バナジウム)で置換していくと、より規則的なホイスラー型L21結晶構造(Fe2VAl)に変化し、フェルミ準位に鋭い擬ギャップを形成する。これまで提案されたFe-V-Al系材料は、Fe2VAlのFeの一部をMnやCrで置換したもの(特許文献1参照)、Vの一部をTiやMoで置換したもの(特許文献2参照)、Al(アルミニウム)の一部をSiやGeやSnで置換したもの(特許文献2参照)により熱電特性を向上させている。

【特許文献1】特開2003-197985号公報
【特許文献2】特開2004-253618号公報
【非特許文献1】Journal of Alloys and Compounds,329(2001)p.63~68
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これら既知の材料は上記の合金元素で置換したり、焼結等の後工程を加えることにより熱伝導率を低減させているが、材料の低廉化を図るには、合金元素の添加をできるだけ省くことが必要で、製造上簡易な材料組成にするとともに、製造工程も省略化することが必要である。
また、簡易な材料組成では、Fe2VAlにおいてVの僅かな濃度変化のみでゼーベック係数の符号が大きく変化することが公知となっているが(非特許文献1参照)、電気抵抗率が比較的高いことが課題であった。
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた熱電特性を有し、環境に優しく、低コストで量産性に向いた熱電材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、本発明による鉄合金熱電材料は、主にFe、V及びAlを含有し、V濃度が20~40at%、Al濃度が20~30at%であり、かつバナジウム炭化物がマトリクス中に分散し、
C濃度が0at%を超え10at%以下、かつSi濃度が0at%を超え5at%以下とすることを特徴とする。
【0007】
また、前記鉄合金熱電材料は、S濃度が0at%を超え0.5at%以下とすることを特徴とする。
【0008】
また、前記鉄合金熱電材料は、V濃度を20at%以上25at%以下、かつAl濃度を23at%以上26at%未満としたp型熱電材料であることを特徴とする。
【0009】
また、前記鉄合金熱電材料は、V濃度を25at%以上32at%以下、かつAl濃度を20at%以上23at%以下としたn型熱電材料であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の鉄合金熱電材料によれば、優れた熱電特性を有するとともに、有害で希少な元素を用いない構成のため材料コストの低廉化が図れ、また鋳放しのみの製造工程が可能となるので工程が簡素化され、生産性を向上することができる。
【0011】
また、特に本発明の鉄合金熱電材料においては、Cの添加によりマトリクス中にバナジウム炭化物を析出分散させることにより、電気抵抗率ρを大幅に低下させ、出力因子を向上させる効果を見出したのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の熱電材料について説明する。
図1はV濃度とゼーベック係数の関係を示す図、図2はAl濃度とゼーベック係数の関係を示す図、図3はC濃度と電気抵抗率の関係を示す図である。
【0013】
本願発明者等が前記課題を解決するために鋭意実験研究を重ねた結果、鉄合金熱電材料の配合比を適切に調整することにより、熱電材料の熱電特性を向上させることができることを見出した。
【0014】
まず、熱電材料の作製方法について説明する。
本発明で着目したFe-V-Al系材料は、Fe2VAlにおいてV(バナジウム)の僅かな濃度変化により、フェルミ準位が僅かにずれてゼーベック係数の符号が大きく変化することが公知となっている(Journal of Alloys and Compounds,329(2001)p.63~68)。Fe-V-Al系材料は従来の半導体材料とは異なり、鉄系材料であるため、原子濃度比が目的の組成となるように調整し鋳造により熱電材料を作製することが可能である。
【0015】
<作製方法>
本実施例においては、純鉄、FeV(フェロバナジウム)、純Al(アルミニウム)を原材料とし、高周波誘導加熱炉を用いてアルゴンガス雰囲気での溶解を行い、鋳型へ溶湯温度1600~1800℃で所定の形状に鋳造し、鋳放し材を加工して熱電材料を作製した。
さらに本発明においてはV、Alを多量に含む本材料系は溶解温度が高くなるため、鋳造性を良好にするため鋳鉄材料に含有されているC(炭素)、Si(けい素)、S(硫黄)といった鋳造性を良好にする元素を添加して熱電材料を作製した。本発明では、これらの元素添加のみで高いゼーベック係数と低い電気抵抗率の両立を図った。
なお、鋳造方法については上記に限定されるものではなく真空鋳造等の別の方法で鋳造しても構わない。
【0016】
<測定方法>
ゼーベック係数の測定は、試験片を作製しアルバック理工製「ZEM-1S」を用いて測定した。また電気抵抗率の測定は、直流4端子法により測定した。熱伝導率はレーザーフラッシュ法により測定した。
<分析方法>
元素及び炭化物含有の分析については、赤外線吸収法、発光分光分析法、ICP(誘導結合プラズマ発光分光分析法)、EDX(エネルギー分散型X線分析)を使用した。
【0017】
次にFe-V-Al系への各元素添加の効果を説明する。
【0018】
本発明者らは、Fe-V-Al系の各元素及び、前記Fe-V-Al系に添加する元素C、Si、Sの各元素において多くの配合種を作製し熱電特性の評価を行った。その結果として、本実施形態に係る熱電材料においてV濃度は、20~40at%の間であることが好ましい。V濃度が20at%未満、および40at%を超えるとゼーベック係数が極端に低くなる。またAl濃度が20~30at%の間であることが好ましい。Al濃度が20at%未満、および30at%を超えるとゼーベック係数が極端に低くなる。
また、特に上記配合比において、Cの添加による炭化物形成がCを添加しないものと比較して熱電特性の改善、特に性能指数の重要因子である電気抵抗率の低減に大きな効果を果たしているのである。
【0019】
こうして、本発明では主にFe、V及びAlを含有し、V濃度が20~40at%、Al濃度が20~30at%であり、かつ炭化物がマトリクス中に分散している鉄合金熱電材料としたのである。
【0020】
まず、Cの添加効果については、溶解温度(融点)を下げることによる鋳造性向上と電気抵抗率減少に効果がある。Cの添加量については、要求される溶解温度によるが、微量添加においても融点低下が見られるが、十分な効果を得るためには2at%以上程度の添加が好ましい。また過剰な添加は粗大な炭化物を生成し、成形体の機械的強度が著しく低下するため、10at%以下の添加が好ましい。
【0021】
また、Siの添加効果については、熱電特性の向上(合金の総価電子数が増大しキャリアに占める電子の割合が増える)と溶湯の流動性を向上させる効果に寄与する。過剰添加は成形体の機械的強度が低下するため、5at%までの添加が好ましい。
【0022】
こうして、前記鉄合金熱電材料は、C濃度が0at%を超え10at%以下、かつSi濃度が0at%を超え5at%以下とすることにより鋳造性向上、熱電特性の向上及び溶湯の流動性の向上を果たしたのである。
【0023】
また、Sの添加効果については、Siと同様に熱電特性の向上と溶湯の流動性を向上させる効果がある。過剰な添加は硫化物を多量に生成し、成形体の機械的強度が著しく低下するため、0.5at%までの添加が好ましい。更に好ましくは0.1at%以上0.5at%までとする。
【0024】
こうして、前記鉄合金熱電材料は、上記C及びSiの添加効果に加えて、S濃度が0at%を超え0.5at%以下とすることにより熱電特性の更なる向上と溶湯の流動性を向上させることができる。
【0025】
次に、各配合条件で熱電材料を作製し、ゼーベック係数、電気抵抗率を測定した。各配合条件による熱電特性の詳細結果を図1から図3をもとに説明する。
【0026】
図1は横軸にV濃度をとり、縦軸にゼーベック係数をとって、V濃度とゼーベック係数の関係を示す図である。また、図2は横軸にAl濃度をとり、縦軸にゼーベック係数をとって、Al濃度とゼーベック係数の関係を示す図である。図1及び図2に示すように、本発明による合金は、鋳鋼並みのC、Si、Sを添加したうえ、V濃度を20~25at%、かつAl濃度を23~25at%とすることで50μV/K以上(最大75μV/K)のゼーベック係数となるp型鉄合金熱電材料が作製でき、V濃度を25~32at%、かつAl濃度を20~23at%とすることで100μV/K以上(最大159μV/K)のゼーベック係数となるn型鉄合金熱電材料が作製できる。
従って、本発明のp型鉄合金熱電材料において高いゼーベック係数を得るために、V濃度を20at%以上25at%以下、かつAl濃度を23at%以上26at%未満とする。更に好ましくは、V濃度を22at%以上24at%以下、かつAl濃度を23at%以上25at%以下とする。
また、本発明のn型鉄合金熱電材料において高いゼーベック係数を得るために、V濃度を25at%以上32at%以下、かつAl濃度を20at%以上23at%以下とする。更に好ましくは、V濃度を26at%以上32at%以下、かつAl濃度を20at%以上22at%以下とする。
【0027】
図3は横軸にC濃度をとり、縦軸に電気抵抗率をとって、C濃度と電気抵抗率の関係を示す図である。図3に示すように、Cの添加は電気抵抗率の大幅な低下に効果があることがわかる。
すなわち、上記の効果は、Cの添加によりマトリクス中でバナジウム炭化物が析出したことによるものであり、本発明のFe-V-Al系材料にバナジウム炭化物等の炭化物が析出分散することにより導電性が改善され電気抵抗率が改善されたと考えられる。これにより、3μΩm程度のp型熱電材料、4.5μΩm程度のn型熱電材料が作製でき、簡易な合金組成でも優れた鋳造性と出力因子(高いゼーベック係数と低い電気抵抗率)が得られる。また、このときの熱伝導率は10~17W/mKであり、性能指数Z はp型+n型で最大3.5×10-4-1と高い値となる。従って、本発明の鉄合金熱電材料において低い電気抵抗率を得るために、C濃度が0at%を超え10at%以下、かつSi濃度が0at%を超え5at%以下とする。更に好ましくはC濃度が0at%を超え3at%以下、かつSi濃度が0at%を超え2at%以下とする。
【0028】
つまり、図1、図2及び図3に示したように本発明において高いゼーベック係数を維持しつつ、低い電気抵抗率を獲得できたので、出力因子が向上し優れた熱電特性が得られたのである。
【0029】
このように、本発明の熱電材料は鋳造による鋳放し材で使用可能であり、既知の材料のように後熱処理を行わなくても高い性能が得られる。従って、材料面や製造面で安価に造ることができ、量産性もよく、熱電変換モジュールの大型化にも繋がる。
つまり、本発明の鉄合金熱電材料によれば、優れた熱電特性を有するとともに、有害で希少な元素を用いない構成のため材料コストの低廉化が図れ、また鋳放しのみの製造工程が可能となるので工程が簡素化され、生産性を向上することができるのである。
【0030】
なお、本発明においてはCの添加によりバナジウム炭化物をマトリクス中で析出させて電気抵抗率低減を実現したが、原料配合時に、最初からバナジウム炭化物を添加する方法においても同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】V濃度とゼーベック係数の関係を示す図。
【図2】Al濃度とゼーベック係数の関係を示す図。
【図3】C濃度と電気抵抗率の関係を示す図。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2