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明細書 :2次元フォトニック結晶

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4900572号 (P4900572)
公開番号 特開2007-256382 (P2007-256382A)
登録日 平成24年1月13日(2012.1.13)
発行日 平成24年3月21日(2012.3.21)
公開日 平成19年10月4日(2007.10.4)
発明の名称または考案の名称 2次元フォトニック結晶
国際特許分類 G02B   6/12        (2006.01)
FI G02B 6/12 Z
G02B 6/12 N
G02B 6/12 F
請求項の数または発明の数 7
全頁数 12
出願番号 特願2006-077600 (P2006-077600)
出願日 平成18年3月20日(2006.3.20)
審査請求日 平成20年8月28日(2008.8.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
発明者または考案者 【氏名】野田 進
【氏名】浅野 卓
【氏名】北川 均
個別代理人の代理人 【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
審査官 【審査官】山本 元彦
参考文献・文献 特開2006-65150(JP,A)
国際公開第2004/086102(WO,A1)
特開2005-99672(JP,A)
特開2004-93787(JP,A)
特開2004-258454(JP,A)
調査した分野 G02B 6/12-6/14、6/26、6/30-6/34、
6/42、6/43
G02F 1/00-1/125、2/00-2/02、
3/00-3/02、7/00
H01S 5/00-5/50

JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
スラブ状の本体に該本体とは屈折率の異なる領域を周期的に配置して成る2次元フォトニック結晶であって、
前記本体の一方の表面である第1表面において、異屈折率領域が三角格子状に、且つ各格子点に関して少なくとも3回回転対称性を持つように配置されており、
前記本体の他方の表面である第2表面において、異屈折率領域が前記第1表面の三角格子に対して相補的な位置にある三角格子状に、且つ各格子点に関して少なくとも3回回転対称性を持つように配置されており、
前記第1表面の各格子点から該格子点に最隣接である前記第2表面の3個の格子点に向けてそれぞれ異屈折率領域の柱が延びている、
ことを特徴とする2次元フォトニック結晶。
【請求項2】
前記本体に平行な断面において、最隣接の3個の異屈折率領域から成る周期構造単位がC3v又はC6vの対称性を有することを特徴とする請求項1に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項3】
前記本体に平行な断面における前記柱の断面が円形であることを特徴とする請求項2に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項4】
前記異屈折率領域が空孔から成ることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶に異屈折率領域の欠陥を点状に設けて成ることを特徴とする光共振器デバイス。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶に異屈折率領域の欠陥を線状に設けて成ることを特徴とする光導波路デバイス。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶と、該2次元フォトニック結晶に異屈折率領域の欠陥を線状に設けて成る少なくとも1本の光導波路と、該光導波路の近傍に異屈折率領域の欠陥を点状に設けて成る少なくとも1個の光共振器と、を備えることを特徴とする光合分波器デバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、波長分割多重通信等の分野において光分合波器等に用いられる2次元フォトニック結晶に関する。なお、本願において用いる「光」には、可視光以外の電磁波も含むものとする。
【背景技術】
【0002】
波長分割多重通信(Wavelength Division Multiplexing:WDM)に使用される光分合波器等の光通信用デバイスの分野において、高性能化、小型化、低価格化をはかるために、フォトニック結晶を利用したデバイスの開発が進められている。フォトニック結晶は、誘電体に周期構造を人工的に形成したものである。この周期構造は一般に、誘電体本体とは屈折率が異なる領域(異屈折率領域)を誘電体本体内に周期的に配置することにより形成される。その周期構造により、結晶中に光のエネルギーに関するバンド構造が形成され、光の伝播が不可能となるエネルギー領域が形成される。このようなエネルギー領域は「フォトニックバンドギャップ」(Photonic Band Gap:PBG)と呼ばれる。PBGが形成されるエネルギー領域(波長帯)は、誘電体の屈折率や周期構造の周期により定まる。
【0003】
また、このフォトニック結晶中に適切な欠陥を導入することにより、PBG中にエネルギー準位(欠陥準位)が形成され、その欠陥準位に対応する波長の光のみがその欠陥の近傍に存在できるようになる。従って、このような欠陥を有するフォトニック結晶はその波長の光の光共振器として使用することができる。更に、この欠陥を線状に設けることにより、導波路として使用することができる。
【0004】
上記技術の一例として、特許文献1には、本体(スラブ)に異屈折率領域を周期的に配置し、その周期的配置に欠陥を線状に設けることにより導波路を形成するとともに、その導波路に隣接して点状欠陥を形成した2次元フォトニック結晶が記載されている。この2次元フォトニック結晶は、導波路内を伝播する様々な波長の光のうち共振器の共振波長に一致する波長の光を外部へ取り出す分波器として機能すると共に、外部から導波路に導入する合波器としても機能する。
【0005】
特許文献1に記載のものを含め、多くの2次元フォトニック結晶では、電場が本体に平行に振動するTE偏波又は磁場が本体に平行に振動するTM偏波のどちらか一方の偏波の光に対してPBGが形成されるように設計される。従って、両偏波を含む光が2次元フォトニック結晶の導波路や共振器に導入された場合、一方の偏波は本体内に散逸してしまい、導波路の伝播効率が低下してしまう。例えば、周期構造を三角格子とし、異屈折率領域を円形(円柱状)とした2次元フォトニック結晶ではTE偏波に対してのみPBGが形成され、PBGに対応する波長領域内の波長を有するTE偏波は本体内に存在し得ない。従って、この場合、導波路や共振器においてTE偏波の損失はほとんど生じない。それに対し、TM偏波についてはPBGが形成されないため、前記波長領域内の波長を有するTM偏波は導波路や共振器から本体内に散逸してしまい、損失が発生する。
【0006】
そこで、TE偏波及びTM偏波の両方に対してPBGを形成し、その両PBGが共通域を持つようにした2次元フォトニック結晶が検討されている。以下、この共通域を「完全フォトニックバンドギャップ(完全PBG)」と呼ぶ。例えば、特許文献2には、C3vの対称性を有する空孔を三角格子状に周期的に配置することにより完全PBGが形成される2次元フォトニック結晶が記載されている。C3vの対称性とは、3回回転対称軸とその回転対称軸を含む3枚の垂直鏡映対称面を持つ対称性をいい、例えば正三角形がこれに該当する。この2次元フォトニック結晶では、完全PBG内の波長の光は、TE偏波及びTM偏波のいずれであっても、導波路や共振器等から本体内に漏れることがなく、導波路の伝播効率の低下が生じない。
なお、対称性の表記にはシェーンフリース表記とヘルマンモーガン表記の2種類の表記法があるが、「C3v」はシェーンフリース表記によるものであり、この対称性はヘルマンモーガン表記では「3m」と表わされる。
【0007】
また、特許文献3には、本体に平行な断面(面内断面)では特許文献2の2次元フォトニック結晶と同様にC3vの対称性を有し、その面内断面形状が厚さ方向に変化する空孔を三角格子状に周期的に配置することにより完全PBGが形成される2次元フォトニック結晶が記載されている。このような空孔の例として、この文献には、面内断面形状が正三角形であり、その三角形の辺の長さが厚さ方向に変化する空孔が挙げられている。また、他の例として、本体の上面又は/及び下面付近のみが本体と同じ材料で塞がれ、それ以外は一定の面内断面形状を有する空孔が挙げられている。
【0008】
非特許文献1には、「ヤブロノバイト(Yablonovite)」という名で知られている3次元フォトニック結晶が記載されている。ヤブロノバイトは誘電体ブロックの表面における三角格子の各格子点から、表面の法線に対して35°の角度で3方向(120°ずつ異なる方向)に延びる空孔を形成したものである。これにより、屈折率には、誘電体ブロックの表面に平行な面内のみならず誘電体ブロックの深さ方向にも周期分布が形成され、その結果、結晶内のいずれの方向に対してもPBGが形成される。このPBGは偏光の方向に依存しない完全PBGである。
【0009】

【特許文献1】特開2001-272555号公報([0023]~[0027]、[0032]、図1、図5~6)
【特許文献2】特開2005-099672号公報([0008]、[0034]、[0040]、[0054]、[0055]、図1、図10~15)
【特許文献3】特開2006-065150号公報([0019]、[0020]、[0036]、図1、図3)
【非特許文献1】E. Yablonovitch 他2名、フィジカルレビューレターズ、(米国)、アメリカ物理学会発行、1991年10月21日、第67巻、第17号、第2295-2298頁(E. Yablonovitch et al.: "Photonic band structure: The face-centered-cubic case employing nonspherical atoms", Physical Review Letters 67 (1991) 2295-2298.)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
完全PBGの幅が広い程、TE偏波及びTM偏波のいずれに対しても導波路の透過波長帯域と共振器の共振波長とを合わせやすくなる等、光デバイスの設計の自由度をより大きくすることができる。その完全PBGの幅の指標として、この幅の広さを完全PBGのエネルギーの中央値で除した値が用いられる。一般に、光通信デバイスではPBGとして10%程度以上の値が得られることが望ましいとされているが、特許文献2及び3に記載の2次元フォトニック結晶では完全PBGの幅は最大でも4.4%であり、十分に広いとはいえない。
【0011】
また、特許文献3に記載の2次元フォトニック結晶は、個々の異屈折率領域を複雑な形状に加工する必要があり、容易に作製することができない。
【0012】
非特許文献1に記載のフォトニック結晶は3次元フォトニック結晶であるため、深さ方向にも空孔の周期構造を形成する必要がある。そのため、2次元フォトニック結晶の場合よりも空孔を深く形成する必要があり、これも容易に作製することができない。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、広い幅の完全PBGを持つ2次元フォトニック結晶及び/又は完全PBGを持ち、しかも容易に作製することができる2次元フォトニック結晶並びにそれを用いた光デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために成された本発明に係る2次元フォトニック結晶は、
スラブ状の本体に該本体とは屈折率の異なる領域を周期的に配置して成る2次元フォトニック結晶であって、
前記本体の一方の表面である第1表面において、異屈折率領域が三角格子状に、且つ各格子点に関して少なくとも3回回転対称性を持つように配置されており、
前記本体の他方の表面である第2表面において、異屈折率領域が前記第1表面の三角格子に対して相補的な位置にある三角格子状に、且つ各格子点に関して少なくとも3回回転対称性を持つように配置されており、
前記第1表面の各格子点から該格子点に最隣接である前記第2表面の3個の格子点に向けてそれぞれ異屈折率領域の柱が延びている、
ことを特徴とする。
【0015】
ここで、第2表面の三角格子が第1表面の三角格子に対して相補的な位置にあるとは、第2表面の三角格子の各格子点が、第1表面の三角格子の格子点から成る三角形の重心の位置に配置されていることをいう。
第1表面の三角格子と第2表面の三角格子が互いに相補的位置にあるため、上記のように、第1表面の各格子点からその最隣接の第2表面の3個の格子点に向けてそれぞれ異屈折率領域の柱が延びているという状態は、逆に、第2表面の各格子点からその最隣接の第1表面の3個の格子点に向けてそれぞれ異屈折率領域の柱が延びているという状態でもある。これらの異屈折率領域の柱は、一方の表面の1個の断面(領域断面)から本体内部へ行くに従い徐々に3本の柱に分離し、各柱は他方の表面に近づくにつれて他の領域断面から延びてくる柱と徐々に集合して、他方の表面において1つの領域断面に完全に統合される。すなわち、第1及び第2表面の各領域断面からは、本体の厚さ方向に異屈折率領域の柱が三叉(trident)状に延びている。なお、厚さ方向には異屈折率領域の周期性は形成されない。
【0016】
異屈折率領域は、第1表面、第2表面共に、格子点に関して少なくとも3回回転対称性を持つように配置する。このような異屈折率領域は、例えば、円形の異屈折率領域を用いることにより形成することができる。また、正三角形等の3回回転対称性を持つ形状、あるいは正六角形等の6回回転対称性を持つ形状、の異屈折率領域を同一方向に向けて各格子点に配置することにより形成することもできる。
【0017】
この2次元フォトニック結晶では、第2表面よりも第1表面に近い面内断面では第1表面の1個の格子点から延びる3個の異屈折率領域を、第1表面よりも第2表面に近い面内断面では第2表面の1個の格子点から延びる3個の異屈折率領域を、周期構造の単位とする三角格子が形成される。第1表面及び第2表面において空孔を前述のように配置することにより、その周期構造単位の面内断面形状は3回回転対称性又は6回回転対称性を持つこととなる。3回回転対称性はシェーンフリース表記では「C3」と、ヘルマンモーガン表記では「3」と表され、6回回転対称性はシェーンフリース表記では「C6」と、ヘルマンモーガン表記では「6」と表わされる。この対称性により、この2次元フォトニック結晶では完全PBGが形成される。
【0018】
周期構造単位の面内断面形状は、更に回転対称軸を含む3枚(3回回転対称性を有する場合)又は6枚(6回回転対称性を有する場合)の垂直鏡映対称面を持つ対称性を有することが望ましい。前者は特許文献2及び3に記載の2次元フォトニック結晶の異屈折率領域と同じ対称性であり、前述の通りC3v(3m)と表わされる。後者はシェーンフリース表記では「C6v」と、ヘルマンモーガン表記では「6m」と表わされる。このC3vの対称性は例えば、1個の異屈折率領域の柱の、本体に平行な断面(領域断面)が円形である場合に満たされる。また、領域断面が、正三角形であってその3本の辺が三角格子と平行になるように配置されている場合にも、C3vの対称性は満たされる。C6vの対称性は例えば、領域断面が正六角形であってその6本の辺が三角格子と平行になるか又は直交するように配置されている場合に満たされる。
【0019】
前記の通り、特許文献3によると、2次元フォトニック結晶の本体内において、異屈折率領域が厚さ方向に変化すると本体に平行な方向に振動する電場が抑制され、TM偏波に対してPBGが形成されるようになる。従って、異屈折率領域の形状を本体の厚さ方向に変化させ、しかも、その変化の度合いを調整することにより、PBGの幅を変化させることができる。本発明に係る2次元フォトニック結晶では、本体の厚さと三角格子の周期の比により、本体内を上下に(斜めに)延びる異屈折率領域の柱の角度が変わるとともに、本体の厚さ方向に進んでゆくときの離散・集合の度合いが変化する。従って、本体の厚さと三角格子の周期を適宜調整することにより、PBG幅を変化させることができる。本発明者らの計算によると、例えば、本体の厚さを三角格子の周期の0.8倍とすることにより、約15%の幅を有する完全PBGを形成することができる。
【0020】
異屈折率領域は、本体とは屈折率の異なる何らかの部材を埋め込むことによっても形成してもよいし、本体に空孔を設けることにより形成してもよい。後者の方が作製が容易であり、本体との屈折率の差も十分に大きくすることができるため望ましい。
【0021】
本発明の2次元フォトニック結晶に異屈折率領域の欠陥を点状に設けることにより光共振器デバイスが得られる。また、本発明の2次元フォトニック結晶に異屈折率領域の欠陥を線状に設けることにより光導波路デバイスが得られる。更に、本発明の2次元フォトニック結晶に線状欠陥から成る少なくとも1本の光導波路を設け、該光導波路の近傍に点状欠陥から成る少なくとも1個の光共振器を設けることにより光合分波器デバイスが得られる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る2次元フォトニック結晶では、3回回転対称性又は6回回転対称性を有する周期構造単位が形成されることにより、完全PBGが形成される。
【0023】
前記の通り、本発明の2次元フォトニック結晶では、周期構造単位の面内断面形状が厚さ方向に変化するため、本体に平行な方向に振動する電場が抑制され、それにより完全PBGの幅が増大する。そして、本体の厚さと三角格子の周期の比を適宜調整することにより、異屈折率領域の厚さ方向の変化の度合いを任意に設定することができ、それにより完全PBGの幅を制御することができる。これは、個々の異屈折率領域の形状を調整する場合よりも完全PBGの幅を大きい自由度で制御することができるという利点につながる。具体的には、本発明者らの計算によると、領域断面を三角格子の周期の0.32倍の半径を有する円形とし、本体の厚さを三角格子の周期の0.7~1.0倍とすることにより、約15%という、従来の2次元フォトニック結晶では得ることができない広い幅の完全PBGを形成することができることが明らかとなった。
【0024】
周期構造単位の対称性がC3v又はC6vの対称性を満たす場合には、より広い完全PBGを得ることができる。
【0025】
本発明の2次元フォトニック結晶は、本体内に設ける異屈折率領域がいずれも単純な柱状であるため、特許文献3に記載の2次元フォトニック結晶のように個々の異屈折率領域を複雑な形状に加工する必要がなく、また、非特許文献1に記載の3次元フォトニック結晶のように深さ(厚さ)方向に周期構造を形成する必要がなく深い所まで異屈折率領域を形成する必要がなため、極めて容易に作製することができる。
本発明における異屈折率領域は、例えば3次元フォトニック結晶を製造する際に用いられている異方性エッチング法(高橋重樹他、2005年秋季第66回応用物理学会学術講演会講演予稿集、第3分冊、講演番号8a-H-8)により形成することができる。この方法によれば、プラズマ化したガスを電界により本体に対して斜め方向に指向させて入射し、本体を物理的及び/又は化学的に、この方向に強くエッチングすることにより容易に形成することができる。
【0026】
本発明の2次元フォトニック結晶を用いた光共振器デバイス、光導波路デバイス及び光合分波器デバイスではいずれも、完全PBGの幅が広くなることにより、様々な方向の偏光を含む光を、より広い波長範囲で伝播及び分合波することができる。そのため、同一デバイスで伝播可能なチャネル数を従来よりも増加させることができる。
【実施例】
【0027】
本発明に係る2次元フォトニック結晶の実施例を図1~図11を用いて説明する。
図1(a)は本実施例の2次元フォトニック結晶10の斜視図である。スラブ状の本体11の一方の表面には、円形の空孔12が周期的に形成されている。裏面も同様であるが、両者における空孔12の位置は相補的となっている。図1(b)に、本体11の第1表面131(図1(a)の上側の表面)及び第2表面132(下側の表面)における空孔12の配置を重ねて描いた図を示す。空孔12は、第1表面131では三角格子141の格子点121に配置されており、第2表面132では第1表面131の三角格子141に対して相補的な位置にある三角格子142の格子点122に配置されている。図1(b)及び(c)に太矢印で示すように、第1表面131の各格子点121から、第2表面132の格子点のうち最隣接の3個の格子点に向けて、それぞれ空孔柱12Aが延びている。同様に、図1(b)及び(d)に太矢印で示すように、第2表面132の各格子点122からは、第1表面131の格子点のうち最隣接の3個の格子点に向けてそれぞれ空孔柱12Aが延びている。
各空孔柱12Aは、本体11の厚さ方向のいずれの位置においても、面内断面の形状が同じ径を持つ円形になるように形成されている。すなわち、各空孔柱12Aは斜円柱状となっている。但し、図1(e)及び(f)に示すように、本体11内において、複数の空孔柱12Aは互いに重なり合い、その重なり合う領域の形状は本体の厚さ方向に変化してゆく。
【0028】
本体内において空孔柱12Aがこのように形成されていることにより、面内断面では3個の空孔12を周期構造の単位16とする三角格子が形成される。第2表面132よりも第1表面131に近い面内断面151では、周期構造単位16は正三角形の3個の頂点に円形の空孔12を配置した形状を有し、三角格子141と同じ格子点上に配置されている(図1(e))。一方、第1表面131よりも第2表面132に近い面内断面152では、周期構造単位16は面内断面151のものを面に垂直な軸を中心に180°回転させた正三角形の3個の頂点に円形の空孔12を配置した形状を有し、三角格子142と同じ格子点上に配置されている(図1(f))。
【0029】
周期構造単位16の面内断面形状は、図2(a)に示すように、回転軸17のまわりに3回回転対称性を有する。なお、この面内断面形状は併せて、回転対称軸17を含む垂直鏡映対称面181、182及び183を持つ。即ち、この周期構造単位16の面内断面形状は特許文献2及び3に記載の2次元フォトニック結晶の空孔と同様にC3vの対称性を有する。空孔の半径が三角格子の周期の1/4以下である場合には、厚さ方向の中心付近では3個の空孔12は分離する(図2(b))。これら3個の空孔12相互間の距離は他の空孔との距離よりも小さいため、これら3個の空孔も1個の周期構造単位16として作用する。この場合にも周期構造単位16の面内断面での形状は3回回転対称性を含むC3vの対称性を有する。
【0030】
本実施例の2次元フォトニック結晶10では、三角格子141及び142の格子定数aと本体11の厚さdの比により、空孔柱12Aの角度θが異なる。例えば、格子定数aを一定にすると、厚さdを小さくするほど角度θは大きくなる。従って、本体11内において空孔柱12Aにより形成される屈折率の周期分布は、格子定数a及び厚さdにより調整することができる。
【0031】
図3に、本実施例の2次元フォトニック結晶10について3次元時間領域差分法によりフォトニックバンドを計算した結果をグラフで示す。ここでは、半径rを格子定数aで除したr/a値が0.32、厚さtを格子定数aで除したt/a値が0.8である場合について計算した。この場合、角度θは36°となる。このグラフの横軸には波数ベクトルを、縦軸には周波数にa/c(cは光速)を乗じて無次元とした規格化周波数を、それぞれ用いた。グラフ中の曲線はフォトニックバンドを示す。本実施例では本体内部で空孔集合部の形状が厚さ方向の位置により異なることにより、明確にはTE偏波とTM偏波の2つの偏波に分離しない。そのため、この図では偏波に関わらず全てのフォトニックバンドについて表した。この計算結果により、規格化周波数が約0.4の中央値を持ち、その中央値に対して約15%の幅を持つ領域において完全PBG(図3の斜線部)が形成されていることが明らかになった。
【0032】
図4(a)に、r/a値が0.32及び0.25である場合についてそれぞれ、t/a値が0.4~1.2の範囲内における完全PBGの幅を計算した結果を示す。図4(b)は、(a)のグラフと同じデータを、横軸を本体表面に対する法線と空孔柱の成す角度θで表したものである。r/a値が0.32である場合には、t/a値が0.6~1.0の時に、前述のように光通信デバイスにおいて望ましいとされる10%以上の幅を持つ完全PBGが得られる。t/a値が0.4及び1.2である時には、特許文献2及び3に記載の2次元フォトニック結晶において得られていた完全PBG幅の最大値である4.4%よりも広い幅を持つ完全PBGが得られる。r/a値が0.25である場合には、t/a値が0.6~0.8の時に特許文献2及び3に記載の2次元フォトニック結晶における完全PBGよりも広い約8%の幅を持つ完全PBGが得られる。
【0033】
次に、本発明の2次元フォトニック結晶の他の実施例を説明する。なお、ここでは、2次元フォトニック結晶10の構成要素と同じものにはそれと同じ符号を付し、詳細な説明を省略した。
まず、3回回転対称性を持つ異屈折率領域を有する2次元フォトニック結晶の例として、正三角形の空孔22が三角格子状に配置された2次元フォトニック結晶20を、図5及び図6を用いて説明する。
図5(a)は2次元フォトニック結晶20の斜視図である。本体11の第1表面131には、正三角形の空孔22が三角格子の格子点121上に、その正三角形の各辺が格子と略平行になるように配置され、第2表面132には空孔22が第1表面131と相補的な位置に第1表面131と同じ向きで配置されている(図5(b))。
第1表面131の各格子点121から、第2表面132の格子点のうち最隣接の3個の格子点に向けて、それぞれ空孔柱22Aが延び(図5(b), (c))、同様に、第2表面132の各格子点122から、第1表面131の格子点のうち最隣接の3個の格子点に向けてそれぞれ空孔柱22Aが延びている(図5(b), (d))。
面内断面では3個の空孔22を周期構造の単位26とする三角格子が形成される。図5(e)及び(f)に面内断面151及び152における周期構造単位26の配置を、図6にそれら面内断面における周期構造単位26の拡大図を示す。図6には、図5(b)~(d)に示した太矢印と同じ方向を示す太矢印を付した。面内断面151では、周期構造単位26の形状は3個の正三角形が重なった1個の正三角形になる。一方、面内断面152では、周期構造単位26は3個の正三角形がそれぞれ異なる1辺に垂直な方向にずれて重なった形状を有する。これら周期構造単位26はいずれもC3vの対称性を満たす。このような対称性を有することにより、この2次元フォトニック結晶20では完全PBGが形成される。
【0034】
2次元フォトニック結晶20では空孔22の各辺は格子に平行になるように配置したが、図7(a)に示すように、空孔22の各辺が格子に対して同じ角度αだけ傾いて配置されている場合には、周期構造単位は、C3vの対称性は持たないが3回回転対称性を持つ(図7(b))。そのため、このような空孔を有する2次元フォトニック結晶にも完全PBGが形成される。
【0035】
図8に、6回回転対称性を持つ異屈折率領域を有する2次元フォトニック結晶の例として、正六角形の空孔32が三角格子状に配置された2次元フォトニック結晶30を示す。図8(a)は2次元フォトニック結晶30の斜視図である。本体11の第1表面131には、正六角形の空孔32が三角格子の格子点121上に配置され、第2表面132には空孔32が第1表面131と相補的な位置に第1表面131と同じ向きで配置されている(図8(b))。空孔32の正六角形は、6本の辺が三角格子に直交するように配置されている。第1表面131の各格子点121及び第2表面132の各格子点122から、2次元フォトニック結晶10及び20と同様に空孔柱32Aが延びている(図8(c), (d))。
2次元フォトニック結晶30の面内断面151及び152における周期構造単位36は、2次元フォトニック結晶10及び20と同様に三角格子状に配置される。図9に、周期構造単位36の面内断面での形状を示す。この面内断面は、3個の正六角形が120°ずつ異なる方向にずれて重なった形状を有し、C3vの対称性を満たす。このような対称性を有することにより、この2次元フォトニック結晶30では完全PBGが形成される。
【0036】
正六角形の空孔32は、6本の辺を三角格子に直交するように配置する代わりに、図10に示すように、6本の辺を三角格子に平行に配置してもよい。この場合にも、周期構造単位36の面内断面はC3vの対称性を満たす。また、正六角形の各辺が格子に対して同じ角度(0°及び90°を除く)だけ傾くように空孔が配置されている場合には、周期構造単位は、C6vの対称性は持たないが6回回転対称性を持つため、完全PBGが形成される。
【0037】
図11に、本実施例の2次元フォトニック結晶10を用いた光合分波器40の一例を示す。この光合分波器40は、1列分の格子点121の各々においてそこから延びる3個の空孔12を欠損させる(設けない)ことにより線状の欠陥を設け、その線状欠陥から3列離れた所にある1個の格子点121から延びる3個の空孔12を欠損させることにより点状の欠陥を設けたものである。この線状欠陥が導波路41となり、この点状欠陥が共振器42となる。
【0038】
導波路41及び共振器42においては、完全PBG中に欠陥準位が形成される。それにより、導波路41では完全PBG中の特定の波長帯内にある波長の光が伝播することができる。また、共振器42は完全PBG中の特定の波長の光に共振する。導波路41の近傍に共振器42を設けることにより、光合分波器40は導波路41中を伝播する光のうち共振器42の共振波長を有する光を、共振器42を介して外部に取り出す分波器として機能する。それと共に、この共振波長を有する光を外部から共振器42を介して導波路41に導入する合波器としても機能する。
【0039】
線状欠陥や点状欠陥の形状を調整することにより、導波路の通過波長帯及び共振器の共振波長を制御することができる。例えば、上述の導波路41及び共振器42では、1個の格子点121から延びる3本の空孔柱12Aを全て欠損させたが、その代わりに1個又は2本の空孔柱12Aのみを欠損させた場合には通過波長帯及び共振波長は導波路41及び共振器42とは異なる値になる。また、空孔柱12Aを欠損させる代わりに他の空孔とは異なる径を有する空孔柱を設けること、あるいは一部の格子点121及び/又は122の位置を三角格子の格子点からずらすこと、等により導波路及び共振器を形成することもできる。
このようにして形成される、共振波長が異なる複数の共振器を導波路の近傍に配置することにより、各共振器がそれぞれ異なる波長の光を分波及び合波する光合分波器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る2次元フォトニック結晶の1実施例を示す斜視図(a)、第1表面131及び第2表面における表面図(b)、空孔柱12Aの形状を示す斜視図((c), (d))並びに面内断面151及び152における2次元フォトニック結晶の断面図((e), (f))。
【図2】本実施例の2次元フォトニック結晶における周期構造単位16の形状を示す平面図。
【図3】本実施例の2次元フォトニック結晶におけるフォトニックバンド図(計算結果)。
【図4】本実施例の2次元フォトニック結晶における完全PBGの幅の計算結果を示すグラフ。
【図5】正三角形の空孔を有する2次元フォトニック結晶の実施例を示す斜視図(a)、第1表面131及び第2表面における表面図(b)、空孔柱22Aの形状を示す斜視図((c), (d))並びに面内断面151及び152における2次元フォトニック結晶の断面図((e), (f))。
【図6】2次元フォトニック結晶20における周期構造単位26の形状を示す平面図。
【図7】正三角形の空孔を有する2次元フォトニック結晶の他の実施例を示す平面図(a)及び周期構造単位26の形状を示す平面図(b)。
【図8】正六角形の空孔を有する2次元フォトニック結晶の実施例を示す斜視図(a)、第1表面131及び第2表面における表面図(b)及び空孔柱32Aの形状を示す斜視図((c), (d))。
【図9】2次元フォトニック結晶30における周期構造単位36の形状を示す平面図。
【図10】正六角形の空孔の配置の別の例を示す平面図。
【図11】本実施例の2次元フォトニック結晶を用いた波長合分波器の一例を示す斜視図及び横断面図。
【符号の説明】
【0041】
10…2次元フォトニック結晶
11…本体
12、22、32…空孔
12A、22A、32A…空孔柱
121…三角格子141の格子点
122…三角格子142の格子点
131…第1表面
132…第2表面
141…第1表面131上の三角格子
142…第2表面132上の三角格子
151…第2表面132よりも第1表面131に近い面内断面
151…第1表面131よりも第2表面132に近い面内断面
16、26、36…周期構造単位
17…回転対称軸
181、182、183…垂直鏡映対称面
40…光合分波器
41…導波路
42…共振器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
9
【図11】
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