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明細書 :高分子材料の直接造形法および直接造形装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4972725号 (P4972725)
公開番号 特開2008-194968 (P2008-194968A)
登録日 平成24年4月20日(2012.4.20)
発行日 平成24年7月11日(2012.7.11)
公開日 平成20年8月28日(2008.8.28)
発明の名称または考案の名称 高分子材料の直接造形法および直接造形装置
国際特許分類 B29C  67/00        (2006.01)
A61L  27/00        (2006.01)
FI B29C 67/00
A61L 27/00 F
A61L 27/00 U
請求項の数または発明の数 14
全頁数 20
出願番号 特願2007-033269 (P2007-033269)
出願日 平成19年2月14日(2007.2.14)
審査請求日 平成22年2月2日(2010.2.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
発明者または考案者 【氏名】西村 理
【氏名】井元 俊之
【氏名】北條 正樹
【氏名】安達 泰治
【氏名】西野 孝
個別代理人の代理人 【識別番号】100123504、【弁理士】、【氏名又は名称】小倉 啓七
審査官 【審査官】鏡 宣宏
参考文献・文献 国際公開第2005/105164(WO,A1)
国際公開第2005/037529(WO,A1)
特開2005-319634(JP,A)
特開平7-108610(JP,A)
特開平9-24552(JP,A)
特許第2930420(JP,B2)
特開平9-246707(JP,A)
特開平8-281173(JP,A)
調査した分野 B29C 67/00
A61L 27/00
B05C 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
気体加圧ディスペンサが加熱シリンジを備え、該加熱シリンジ内で加熱融解された高分子材料がノズルから押し出され、前記ノズルの吐出位置若しくは造形ステージが三次元に可動制御されることによりスキャフォールド構造体が形成されることを特徴とするスキャフォールドの直接造形法。
【請求項2】
前記高分子材料がポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸のコポリマー、ポリカプロラクトン、乳酸とカプロラクトンのコポリマーからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載のスキャフォールドの直接造形法。
【請求項3】
前記高分子材料がポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸のコポリマー、ポリカプロラクトン、乳酸とカプロラクトンのコポリマーからなる群より選ばれるものに、骨形成能を有するハイドロキシアパタイト(HAp)が均一に、かつ単分散されているものであることを特徴とする請求項1に記載のスキャフォールドの直接造形法。
【請求項4】
前記気体が前記高分子材料に対して不活性な気体(非酸化気体)であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスキャフォールドの直接造形法。
【請求項5】
前記気体加圧ディスペンサの加圧圧力を変化させることにより、吐出される前記高分子材料からなる繊維径を変化し得ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスキャフォールドの直接造形法。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載のスキャフォールドの直接造形法において、前記高分子材料が、粉末、フレーク、ペレット、タブレットのいずれかの固体形状で、前記加熱シリンジ内に搬送されることを特徴とするスキャフォールドの直接造形法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のスキャフォールドの直接造形法において、前記ノズルを複数用いて、各ノズルから異なった融解高分子材料を押し出させることにより、部分的に異なった高分子材料でスキャフォールド構造体が形成されることを特徴とするスキャフォールドの直接造形法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載のスキャフォールドの直接造形法において、前記ノズルを複数用いて、各ノズルから融解高分子材料と表面コーティング材料を押し出させることにより、高分子材料の造形処理と表面処理が同時進行しながらスキャフォールド構造体が形成されることを特徴とするスキャフォールドの直接造形法。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれかに記載のスキャフォールドの直接造形法において、前記ノズルを複数用いて、各ノズルから融解高分子材料と充填材料を押し出させることにより、造形された高分子材料層の間の空間に前記充填材料を充填しながらスキャフォールド構造体が形成されることを特徴とするスキャフォールドの直接造形法。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれかに記載のスキャフォールドの直接造形法において、前記ノズルを複数用いて、各ノズルから融解高分子材料とサポート材料を押し出させることにより、造形された高分子材料層をサポートするサポート層を構築しながらスキャフォールド構造体が形成されることを特徴とするスキャフォールドの直接造形法。
【請求項11】
前記サポート材料が、ポリエチレングリコール、ステアリン酸、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、エチルセルロース、およびそれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする請求項10に記載のスキャフォールドの直接造形法。
【請求項12】
前記ノズルの先端の開口形状が、吐出される前記高分子材料からなる繊維の表面積が増大するように、周囲が山形にカット加工されているものを使用することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のスキャフォールドの直接造形法。
【請求項13】
前記ノズルとプラットフォームの間に高電圧を印加し、電圧を変化させることで吐出される前記高分子材料からなる繊維の径を変化させることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のスキャフォールドの直接造形法。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載のスキャフォールドの直接造形法を実行するための装置であって、
加熱シリンジを備えた気体加圧ディスペンサと、該気体加圧ディスペンサの先端ノズルを三次元に可動制御し得る駆動機構と具備することを特徴とするスキャフォールドの直接造形装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性樹脂などの高分子材料からなるスキャフォールド(組織再生用足場材料)の直接造形法および直接造形装置に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
生体適合性樹脂による医療用デバイスの製作には、種々の方法が用いられる。例えば、鋳型などの中間的媒体を用いない直接造形法に限定しても、三次元プリンタ(3DP:3D-printer),光重合成形法(SLA:Stereo-lithography)、レーザー焼結法(SLS:Selective laser sintering),衝撃粒子造形法(BPM:Ballistic particle manufacturing),溶融積層造形法(FDM: Fusion Deposition Modeling)などが知られている(例えば、特許文献1~特許文献3を参照)。
これらの方法により、樹脂を直接目的とする形に成形でき、個々の患者の状態に応じた医療用デバイスの作製が可能となっている。
【0003】
こういった個々の患者の状態に応じた医療用デバイスの作製は、特に再生医療において、骨をはじめとする患者の個々の組織の患部・欠損部に対してオーダーメードの先端的医療を進めるに際し重要なプロセスである。つまり、医療用デバイスとして、臓器や組織、あるいは傷害または外科的切除による欠損の形状や大きさを三次元的に正確に修復するため、連続微細多孔を有するスキャフォールド(生体細胞が接着・増殖する足場)の作製が必要となっている。
【0004】
上述した従来の直接造形法には個々に得失があるものの、共通している問題点は、それぞれの方法に適合する特殊な材料が不可欠なことにある。インクジェットの三次元プリンタ(3DP)、レーザー焼結法(SLS)および衝撃粒子造形法(BPM)では、微粒子状の樹脂懸濁液が必要となる。また、光重合成形法(SLA)では、光重合性のモノマーまたはポリマー前駆体が必要となる。
【0005】
特に、インクジェットの三次元プリンタ(3DP)においては、ミクロンオーダの成形が可能であるが、射出できる液体の粘性に上限があり、多くの場合、融解したワックス等の低粘性材料のみを射出して、先ず鋳型を成形する。そして、成形した鋳型に粉末状の樹脂を付着させる、溶解した樹脂を含浸・固化させるなどした後、鋳型部分のワックス等を溶解するなどして取り除く手順を経る。このような手順を経て、目的となる樹脂の成形体を得るため、成型後の変形、溶媒の残留が問題となる。
【0006】
また、溶融積層造形法(FDM)は、可塑的に変形し得る物質のフィラメント状材料を小さなノズルから押し出し三次元構造体を作製する。ノズルは、所望の三次元構造体を得るように、適切なX,Y,Z運動制御によって、三次元構造体が作製される造形ステージの表面に向けられる。
【0007】
図9に、従来の溶融積層造形法(FDM)を実現する装置概念図を示す。
従来の溶融積層造形装置では、ノズルヘッドから、半流動性の熱可塑性ポリマー材料が押し出し加工されて非常に薄い層に堆積する。熱可塑性ポリマー材料を、樹脂の軟化温度から分解温度の間に設定し、成形に適した半流動性の状態を維持することが溶融積層造形法の基本となる。ノズル上部のヒーターによる温度制御で、熱可塑性ポリマー材料を半流動性の状態に維持している。フィラメントはローラーにより、図示しないボビンから巻き出され、押し出しノズルに供給され、ノズル先端の半流動性の材料を押し出す。このように、ノズルはフィラメント状の熱可塑性ポリマー材料を融かすために熱せられ、融かされた熱可塑性ポリマー材料の流れをオン/オフさせ得るメカニズムを備えている。そして、このノズルは、水平方向(X,Y方向)および垂直方向(Z方向)に動かされることができる機械のステージに取り付けられる。
【0008】
このように、溶融積層造形法(FDM)では、熱可塑的に変形し得る物質のフィラメント状材料を小さなノズルから押し出すことによって三次元構造体を作製するものであり、ノズルに供給する、ポリマー材料から形成された押し出し可能な屈曲性のあるフィラメント状(長繊維状)の材料が必要となる。このため、溶融積層造形法(FDM)では、使用できる材料が比較的柔らかなものに限定されており、吸収性医用材料として使用されるポリ乳酸などの曲げ強度が低く硬い樹脂、逆に軟らかくて粘着性やゴム状弾性をもつ樹脂、およびハイドロキシアパタイトのような無機物質を高率に含む複合材料は、使用することが困難であるといった問題がある。
【0009】

【特許文献1】特許第2930420号公報
【特許文献2】米国特許第5518680号公報
【特許文献3】米国特許第6730252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、溶融積層造形法(FDM)を発展させたものであり、材料自体の硬軟、粘着性の有無、軟化点、融点や曲げ強度などの制約が無く、また、フィラメント状材料を不要とし任意の材料形態を使用可能であり、高融点の樹脂においても造形が可能で、造形時間が短く生産性に優れた直接造形法および直接造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点のスキャフォールドの直接造形法は、気体加圧ディスペンサが加熱シリンジを備え、該加熱シリンジ内で加熱融解された高分子材料がノズルから押し出され、ノズルの吐出位置若しくは造形ステージが三次元に可動制御されることにより三次元構造体が形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明のスキャフォールドの直接造形法は、気体加圧ディスペンサを用いて、加熱融解された高分子材料がノズルから押し出され、ノズルの吐出位置若しくは造形ステージが制御されることにより三次元構造体が形成されるものである。
溶融積層造形法(FDM)では、熱可塑的に変形し得る物質のフィラメント状材料を小さなノズルから押し出すことによって三次元構造体を作製するものであり、ノズルに供給する、ポリマー材料から形成された押し出し可能な屈曲性のあるフィラメント状材料が必要となるのに対し、本発明のスキャフォールドの直接造形法は、シリンジ内で加熱融解された高分子材料を、加圧気体により小さなノズルから押し出すことによって三次元構造体を作製することで、材料自体の硬軟、粘着性の有無、軟化点、融点や曲げ強度などの制約が無く、また、フィラメント状材料を不要とし任意の材料形態が使用可能となる。
【0013】
ここで、高分子材料は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸のコポリマー、ポリカプロラクトン、乳酸とカプロラクトンのコポリマーからなる群より選択される。材料自体の硬軟、粘着性の有無、軟化点、融点や曲げ強度などの制約が無いことから、例えば粘着性と硬質ゴム状弾性をもつ、モノマーの比率がそれぞれ75%/25%である乳酸-カプロラクトン共重合体、または粘着性と蜜蝋状の軟らかさをもつ、モノマーの比率がそれぞれ25%/75%である乳酸-カプロラクトン共重合体や、高い融点(170~240℃)を持つポリ乳酸やポリグリコール酸などの樹脂による造形が可能である。
【0014】
また、高分子材料は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸のコポリマー、ポリカプロラクトン、乳酸とカプロラクトンのコポリマーからなる群より選ばれるものに、骨形成能を有するハイドロキシアパタイト(HAp)が均一に、かつ単分散されているものが好ましい。目的物であるスキャフォールドの性能を高めるべく、高分子材料に骨形成能を有するハイドロキシアパタイト(HAp)を混入する。フィラメント状材料が必要となる従来の溶融積層造形法(FDM)では、ハイドロキシアパタイトの含有率や分散性を上げることは困難であったのに対して、本発明のスキャフォールドの直接造形法は、シリンジ内で加熱融解された高分子材料を利用するものであるため、高分子材料の調合の自由度が高く、ハイドロキシアパタイトの含有率や分散性を制御することが容易に実現可能となる。
なお、ハイドロキシアパタイトを意図的に不均一にして、骨形成能を有するハイドロキシアパタイトの含有率を、スキャフォールドの構造体の部位によって制御することも可能である。
【0015】
ハイドロキシアパタイトの分散性が、たとえば複数のハイドロキシアパタイト粒子の凝集などにより良くないと、つまり、均一に、かつ単分散されていないと、ノズルからの吐出量が一定とならず、均一な造形、さらには構造や強度を任意に変化させるための制御が不可能となる。このことは目的物であるスキャフォールドの構造上の欠陥となる。従って、ノズルに供給する材料に対して、ハイドロキシアパタイトの分散性を制御する必要があるのである。
【0016】
高分子材料の調合の具体的な手順の一例として、ポリ乳酸にハイドロキシアパタイトを均一に、かつ単分散させる方法について説明する。なお、上記の特許文献3にはポリ乳酸の溶液に、ハイドロキシアパタイト(HAp)の粉末を入れ、例えば、シャーレなどに流し込み乾燥させる方法が述べられている。
ポリ乳酸にハイドロキシアパタイトを均一に、かつ単分散させる方法としては、例えば、メチレンクロライド、クロロホルム、ジオキサンなどの溶媒にハイドロキシアパタイト(HAp)を超音波分散させたものにポリ乳酸を溶解させ、これをエタノールなどに滴下して沈殿させ、ハイドロキシアパタイトが均一に、かつ単分散されている材料を得る方法がある。
【0017】
また、本発明のスキャフォールドの直接造形法において、気体加圧ディスペンサに供給する気体は、高分子材料に対して不活性な気体(非酸化気体)であることが望ましい。加圧気体に高分子材料に対して不活性なガスを使用することにより、高分子材料、特に生分解性高分子や生理活性物質の熱分解による酸化物の生成を抑制することができる。ここで、不活性な気体は、窒素、二酸化炭素のような非酸化気体である。
【0018】
また、本発明のスキャフォールドの直接造形法において、気体加圧ディスペンサの加圧圧力を変化させることにより、吐出される前記高分子材料からなる繊維の径を変化させることができる。ディスペンサへ供給する気体の加圧圧力を制御することにより、目的物のスキャフォールドの繊維径、すなわち、スキャフォールドの構造体の強度を制御できることとなる。従来の溶融積層造形法(FDM)では、ノズルの吐出位置の駆動速度を変化させたり、フィラメント状材料の送り出し速度(ローラーの回転速度)を変化させたりすることにより、吐出される前記高分子材料からなる繊維の径を変化させることが可能であった。しかしながら、フィラメント状材料の送り出し速度(ローラーの回転速度)は、フィラメント状材料のテンションを考慮せねばならず、制御は容易ではない。
本発明のスキャフォールドの直接造形法は、ディスペンサへ供給する気体の加圧圧力を制御することにより、目的物のスキャフォールドの繊維径を連続的に制御できるのである。このように、繊維の太さを連続的に変化させることにより、スキャフォールド構造体の強度分布、生分解・吸収速度、空間率などを変化させたり、逆に、繊維の太さを規則的あるいは不規則に変化させることにより、細胞接着性、生理活性物質のコーティング量などを制御することを可能にするのである。
なお、ここでいう繊維とは、アスペクト比のきわめて大きいものを指し、例えばASTM(American Society of Testing and Materials;米国材料試験協会)ではアスペクト比が100倍以上と定義されている。
【0019】
また、本発明のスキャフォールドの直接造形法において、高分子材料は、粉末、フレーク、ペレット、タブレットのいずれかの固体形状で、加熱シリンジ内に搬送されることが好ましい。骨形成能を有するハイドロキシアパタイト(HAp)が均一に、かつ単分散されるなどの前処理を施した高分子材料を、特に特別な加工をすることなく、粉末、フレーク、ペレット、タブレットのいずれかの固体形状のまま、加熱シリンジ内に入れることでよい。加熱シリンジ周囲のヒーターが固体形状の高分子材料を融解し、この融解された高分子材料が加圧気体によりノズルから押し出されることとなる。
【0020】
次に、本発明の第2の観点のスキャフォールドの直接造形法は、上記第1の観点のスキャフォールドの直接造形法におけるノズルを複数用いることにより、以下に示すようなスキャフォールド構造体を形成することが可能となる。
(1)各ノズルから異なった融解高分子材料を押し出させることにより、部分的に異なった高分子材料でスキャフォールド構造体を形成することが可能である。複数のノズルを用いることにより、1層毎に、あるいは1層内の各部分毎にポリマー材料を変更することが可能となる。
(2)各ノズルから融解高分子材料と表面コーティング材料を押し出させることにより、高分子材料の造形処理と表面処理が同時進行しながらスキャフォールド構造体を形成することが可能である。
(3)各ノズルから融解高分子材料と充填材料を押し出させることにより、造形された高分子材料層の間の空間に充填材料を充填しながらスキャフォールド構造体を形成することが可能である。
(4)各ノズルから融解高分子材料とサポート材料を押し出させることにより、造形された高分子材料層をサポートするサポート層を構築しながら三次元スキャフォールド構造体を形成することが可能である。
【0021】
上記(4)の高分子材料層をサポートするサポート層を構築しながら三次元スキャフォールド構造体を形成する場合について説明する。成形体の形状が不規則な空間やオーバーハングを有する場合、溶融樹脂を支えるためのサポートが必要となる。3Dプリンタでは造形材料がワックスであることから、これより融点が高く石油系溶剤に可溶な支持体が用いられるが、本発明のスキャフォールドの直接造形法では、さまざまな樹脂に対応するために、樹脂の融点に応じたサポートをポリエチレングリコール(66℃)、ステアリン酸(70℃)、キシリトール(95℃)、ソルビトール(135℃)、マンニトール(166℃)、エチルセルロース(180~220℃)など、およびそれらの混合物から選択するのが好ましい。
【0022】
また、本発明の第1又は2の観点のスキャフォールドの直接造形法において、ノズルの先端の開口形状が、吐出される前記高分子材料からなる繊維の表面積が増大するように、周囲が山形にカット加工されているものを使用することを特徴とするのが好ましい。これにより、目的物であるスキャフォールドにおける細胞接着性を向上させることが可能となる。
【0023】
また、本発明の第1又は2の観点のスキャフォールドの直接造形法において、ノズルとプラットフォームの間に高電圧を印加し、電圧を変化させることで吐出される高分子材料からなる繊維の径を変化させることができる。これにより、目的物のスキャフォールドの繊維径、すなわち、スキャフォールドの構造体の強度を制御できる。
【0024】
本発明のスキャフォールドの直接造形装置は、加熱シリンジを備えた気体加圧ディスペンサと、該気体加圧ディスペンサの先端ノズルを三次元に可動制御し得る駆動機構とを具備し、上記第1又は2の観点のスキャフォールドの直接造形法を実現するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明のスキャフォールドの直接造形法や直接造形装置によれば、材料自体の硬軟、粘着性の有無、軟化点、融点、曲げ強度などの制約が無く、また、フィラメント状材料を不要とし任意の形態の材料が使用可能であり、高融点の樹脂においても造形が可能で、造形時間が短く生産性に優れているといった効果を有する。
【0026】
具体的な効果について、以下に列挙する。
1)ポリグリコール酸やポリ乳酸などの高融点の高分子材料による造形が可能である。
2)20~120mm/秒の速度で直接造形するため、造形時間が短い。
3)材料の種類(材質)ならびに形状(粉末、フレーク、ペレット、タブレット)選択の自由度が極めて高い。
4)加圧気体に不活性なガス(窒素、二酸化炭素)を使用することにより、材料、特に生分解性高分子や生理活性物質の熱分解を抑制することができる。
5)使用する高分子材料の融点に応じて、ポリエチレングリコール(66℃)、ステアリン酸(70℃)、キシリトール(95℃)、ソルビトール(135℃)、マンニトール(166℃)、エチルセルロース(180~220℃)など、およびそれらの混合物をサポート材料として使用する。これらは生体適合性または生体成分であり、水やアルコールで除去が可能であり、残留についての安全性も高い。
6)コンピュータ制御することで自動造形が可能であり、また三次元CADデータとのインタフェースも可能であり、造形の効率化が図れるとともに、医療用デバイスであるスキャフォールドのテーラーメードを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
実施例1として、本発明の第1の観点のスキャフォールドの直接造形法を実現する装置の実施形態の一例を示すことにする。図1は、本発明の第1の観点のスキャフォールドの直接造形法を実現する造形装置とその付帯装置からなるシステム構成図を示している。スキャフォールドの直接造形法を実現する直接造形装置1は、加熱シリンジを備えた気体加圧ディスペンサ2と、気体加圧ディスペンサ2の先端ノズル3をX,Y,Z方向に可動制御し得る駆動機構である三軸ロボット4とから構成されている。
【0029】
気体加圧ディスペンサ2内部にあるシリンジは、周囲をヒートブロックおよびヒーターで囲まれており、温調装置11により温度調整される。また、気体加圧ディスペンサ2は、調圧装置12を介してコンプレッサー13、あるいは不活性気体が充填されたガスボンベ14に接続されており、気体加圧ディスペンサ2に加圧気体が送られることにより、加熱シリンジ内で加熱融解された高分子材料がノズルから押し出される。ノズル3の吐出位置が三軸ロボット4により三次元に可動制御されることによりスキャフォールドの三次元構造体が形成される。
【0030】
スキャフォールドの三次元構造は、患部のX線CTスキャン断層画像から修復すべき組織形状の輪郭抽出を行い、コンピュータ15内で作製すべきスキャフォールドの三次元構造体のCAD化を図り、そのCADデータから断面形状を抽出するインタフェースを介して、制御装置16で自動造形を行う。これにより、スキャフォールドのテーラーメードを可能にする。
図2に、スキャフォールドの三次元構造体の作製フローの概念図を示す。
【0031】
次に、気体加圧ディスペンサの構造について図3を参照して説明する。気体加圧ディスペンサ2は、シリンジ21とノズル22とジョイント23とから構成され、ジョイント23を介して圧力配管と接続され、外部から加圧された気体がディスペンサ内部に送り込まれる構造を成す。また、シリンジ21は、ステンレス製で、周囲をヒートブロック24とヒーター25で囲まれており、シリンジ内部の材料を加熱し得る構造を成す。
ヒーターを取り付けたステンレス製シリンジ21の内部で樹脂ペレットを溶融し、気体を圧力媒体としてノズル22より押し出す。圧力媒体として用いる気体は、空気、あるいは窒素、二酸化炭素などの非酸化性気体から選択する。特に、非酸化性気体を圧力媒体として用いることで、生分解性高分子や生理活性物質の熱分解を抑制することができる。
【0032】
シリンジ内部には、目的とするスキャフォールドを作製するための適量の樹脂ペレットが投入されている。樹脂ペレットは、ハイドロキシアパタイトが均一に、かつ単分散されている。樹脂にハイドロキシアパタイトを均一に、かつ単分散させる方法は、溶媒にハイドロキシアパタイトを超音波分散させたものに樹脂を溶かし、これをエタノール等に滴下して得た沈殿を乾燥させる。これにより、ハイドロキシアパタイトが均一に、かつ単分散されている樹脂固形物を得る。
【0033】
実施例1では、図4-1に示されるように、三軸ロボット4は気体加圧ディスペンサ2の先端ノズル3をX,Y,Z方向に可動制御し得るが、図4-2に示されるように、気体加圧ディスペンサ2の先端ノズル3を固定し、造形ステージ5をX,Y,Z方向に可動制御してもよい。
【0034】
図5に、実施例1のスキャフォールドの直接造形装置によって造形される造形パターンの一例を示す。一筆書きのようにノズルを可動若しくは造形ステージを可動させ、図5(a)~(c)のようなパターンを積層して、内外周で空間率の異なる中空円筒状や、(d)~(g)のようなパターンを積層して、空間率の一定な円柱状の三次元構造体を造形する。
第1層の造形が終われば、同じパターンを一定角度回転させて第1層の上に造形してゆく。これを繰り返すことで三次元構造の造形を行うのである。X-Y平面での造形では、樹脂の間隔は任意であるが、Z方向では押し出された樹脂の太さに依存する。この場合、同じパターンを90度回転させることなく複数回積み重ねることで間隔を調整することが可能である。
さらに複雑な三次元構造体を得るために、第3層、第4層の樹脂の押し出し位置を第1、第2層に対して任意の距離だけ移動、あるいは任意の角度だけ回転させるなどの方法がある。
図10-1に、図5(a)~(c)のようなパターンを積層して、内外周で空間率の異なる中空円筒状に成形されたスキャフォールドの三次元構造体の写真を、図10-2に、図5(d)~(g)のようなパターンを積層して、空間率の一定な円柱状に成形されたスキャフォールドの三次元構造体の写真を示す。
【0035】
次に、実施例1の直接造形装置を用いて、気体加圧ディスペンサの加圧圧力を変化させることにより、吐出される高分子材料からなる繊維の径を変化させ得ることを、図6のグラフを参照しながら説明する。図6のグラフは、195℃で溶融したポリ乳酸を加圧圧力200および240kPaでノズルから押し出した場合において、ノズル掃引速度を20~120mm/秒の範囲で変化させたときの平均繊維径を測定したものである。繊維径の測定は、2層の正方形の構造体を作製し、重量測定と繊維全体の長さから間接的に算出している。図11(A)~(C)に、195℃で溶融したポリ乳酸を加圧圧力200kPaでノズルから押し出したもので、それぞれノズル掃引速度を20,40,80mm/秒として成形されたスキャフォールドの構造体(1層の正方形の構造体)の写真を示す。
図6のグラフから、気体加圧ディスペンサの加圧圧力を増加させることで、吐出される繊維の径を太く制御できることがわかる。
【実施例2】
【0036】
次に、実施例2として、本発明の第2の観点のスキャフォールドの直接造形法を実現する装置の実施形態の一例を示すことにする。実施例2の直接造形装置は、実施例1のスキャフォールドの直接造形装置におけるノズルを2個備えたものである。図7は実施例2の直接造形装置における気体加圧ディスペンサの概略構成図を、図8は実施例2の直接造形装置の外観図を示している。
【0037】
実施例2の直接造形装置における気体加圧ディスペンサの構造について図7を参照して説明する。気体加圧ディスペンサ2は、2個のシリンジ(21a,21b)と2個のノズル(22a,22b)と2個のジョイント(23a,23b)とから構成され、ジョイント(23a,23b)を介して各々異なる圧力配管と接続され、外部から加圧された気体がディスペンサ内部の各シリンジ(21a,21b)に送り込まれる構造を成す。シリンジ(21a,21b)は、ステンレス製で、それら周囲をヒートブロック24とヒーター25で囲まれており、シリンジ内部の材料を加熱し得る構造を成す。なお、図7はヒートブロックとヒーターを共通にしているが、これを分離し図3のものを二つ並べることでも良い。これにより各シリンジの温度制御を独立に行なえるのでより性能の向上を図ることができる。
【0038】
実施例2の直接造形装置を用いることにより、以下(1)~(4)の処理を施すことが可能となる。
(1)各ノズルから異なった融解高分子材料を押し出させることにより、部分的に異なった高分子材料でスキャフォールド構造体を形成できる。例えば、一方のノズルからポリ乳酸の樹脂を押し出し、他方のノズルからポリグリコール酸の樹脂を押し出すこととし、1層毎、あるいは1層内の任意の部分でポリマー材料を変更しながら、生分解・吸収時間の異なる領域を有する力学的特性が時間的に変化する機能性スキャフォールド構造体を形成させることが可能である。
【0039】
(2)各ノズルから融解高分子材料と表面コーティング材料を押し出させることにより、高分子材料の造形処理と表面処理が同時進行しながらスキャフォールド構造体を形成できる。例えば、一方のノズルからポリ乳酸の樹脂を押し出し、他方のノズルから乳酸とポリグリコール酸の共重合体を押し出すこととし、ポリ乳酸の造形処理と乳酸とグリコール酸のコポリマーによる表面コーティング処理を同時進行させながら、乳酸とグリコール酸のコポリマーに含ませた薬剤を除放する機能性スキャフォールド構造体を形成させることが可能である。
【0040】
(3)各ノズルから融解高分子材料と充填材料を押し出させることにより、造形された高分子材料層の間の空間に充填材料を充填しながらスキャフォールド構造体を形成できる。例えば、一方のノズルからポリ乳酸の樹脂を押し出し、他方のノズルから生体活性因子を押し出すこととし、ポリ乳酸の造形処理と生体活性因子を充填しながら、複合的な組織再生、例えば骨・軟骨再生、に適した機能性スキャフォールド構造体を形成させることが可能である。
【0041】
(4)各ノズルから融解高分子材料とサポート材料を押し出させることにより、造形された高分子材料層をサポートするサポート層を構築しながら三次元スキャフォールド構造体を形成することが可能である。
成形体の形状が不規則な空間やオーバーハングを有する場合、溶融樹脂を支えるためのサポートが必要となる。3Dプリンタでは造形材料がワックスであることから、これより融点が高く石油系溶剤に可溶な支持体が用いられるが、本直接造形法ではさまざまな樹脂に対応するために、樹脂の融点に応じたサポートをポリエチレングリコール(66℃)、ステアリン酸(70℃)、キシリトール(95℃)、ソルビトール(135℃)、マンニトール(166℃)、エチルセルロース(180~220℃)など、およびそれらの混合物から選択する。この場合、加熱シリンジを2本とし、一方に樹脂を、他方にサポートを入れて加熱溶融する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のスキャフォールドの直接造形法や直接造形装置は、スキャフォールドのテーラーメードに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の観点のスキャフォールドの直接造形法を実現する直接造形装置とその付帯装置からなるシステム構成図を示す。
【図2】スキャフォールドの三次元構造体の作製フローの概念図を示す。
【図3】実施例1の気体加圧ディスペンサの概略構成図を示す。
【図4-1】ノズル可動型の直接造形装置
【図4-2】ノズル固定型の直接造形装置
【図5】スキャフォールドの直接造形装置によって造形される造形パターンの一例を示す。
【図6】気体加圧ディスペンサの加圧圧力を変化させることにより、吐出される高分子材料からなる繊維の径を変化させ得ることを示すグラフ。
【図7】実施例2の気体加圧ディスペンサの概略構成図を示す。
【図8】実施例2の直接造形装置の外観図を示す。
【図9】従来の溶融積層造形法(FDM)を実現する装置概念図を示す。
【図10-1】成形されたスキャフォールドの三次元構造体の写真1(中空円筒の造形パターン)
【図10-2】成形されたスキャフォールドの三次元構造体の写真2(円柱の造形パターン)
【図11】成形されたスキャフォールドの三次元構造体の写真2(2層の正方形の構造体、A,B,Cは、195℃で溶融したポリ乳酸を加圧圧力200kPaでノズルから押し出したもので、それぞれノズル掃引速度を20,40,80mm/秒として作製したものである。)
【符号の説明】
【0044】
1 直接造形装置
2 気体加圧ディスペンサ
3 ノズル
4 三軸ロボット
5 造形ステージ
11 温調装置
12 調圧装置
13 コンプレッサー
14 ガスボンベ
15 コンピュータ
16 制御装置
21,21a,21b シリンジ
22,22a,22b ノズル
23,23a,23b ジョイント
24 ヒートブロック
25 ヒーター
30,30a,30b 圧力配管
31 X軸駆動機構
32 Y軸駆動機構
33 Z軸駆動機構
41 フィラメント状材料
42 ローラー
43 ノズル
44 ヒートブロック
45 ヒーター
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4-1】
3
【図4-2】
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【図5】
5
【図6】
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【図7】
7
【図8】
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【図9】
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【図10-1】
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【図10-2】
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【図11】
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