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明細書 :異極像結晶体を用いたX線発生装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4619028号 (P4619028)
公開番号 特開2005-285575 (P2005-285575A)
登録日 平成22年11月5日(2010.11.5)
発行日 平成23年1月26日(2011.1.26)
公開日 平成17年10月13日(2005.10.13)
発明の名称または考案の名称 異極像結晶体を用いたX線発生装置
国際特許分類 H05G   2/00        (2006.01)
G21K   1/00        (2006.01)
G21K   5/08        (2006.01)
H01J  35/00        (2006.01)
H01J  35/08        (2006.01)
FI H05G 1/00 J
G21K 1/00 X
G21K 5/08 X
H01J 35/00 C
H01J 35/08 B
請求項の数または発明の数 9
全頁数 15
出願番号 特願2004-098371 (P2004-098371)
出願日 平成16年3月30日(2004.3.30)
審査請求日 平成19年3月30日(2007.3.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
【識別番号】505114488
【氏名又は名称】中西 義一
発明者または考案者 【氏名】吉門 進三
【氏名】深尾 真司
【氏名】中西 義一
【氏名】伊藤 嘉昭
【氏名】福島 整
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査官 【審査官】小島 寛史
参考文献・文献 特開昭55-039104(JP,A)
特開平01-194298(JP,A)
米国特許第03840748(US,A)
Jeffrey Geuther, Yaron Danon, Frank Saglime, Bryndol Sones,Electron Acceleration for X-ray Production Using Paired Pyroelectric Crystals,Proceedings of Sixth International Meeting on Nuclear Applications of Accelerator Technology (AccApp '03),米国,American Nuclear Society,2003年 6月 1日,591-595
中西義一、外9名,結晶励起によるX線源について,第39回X線分析討論会,日本,社団法人日本分析化学会X線分析研究懇談会,2003年 9月14日,111-112
James D. Brownridge, Stephen M. Shafroth,Pressure dependence of energetic (<=160 keV) focused electron beams arising from heated or cooled (LiNbO3) pyroelectric crystals,Applied Physics Letters,米国,American Institute of Physics,2003年 8月,Vol. 83, No. 7,1477 - 1479James D. Brownridge, Sol Raboy,Investigations of pyroelectric generation of x rays,Journal of Applied Physics,米国,American Institute of Physics,1999年 7月,Vol. 86, No. 1,640 - 647
調査した分野 H05G 2/00
G21K 1/00
G21K 5/08
H01J 35/00
H01J 35/08
特許請求の範囲 【請求項1】
内部に低気体圧雰囲気を維持する容器と、
前記容器の内部に設けられた異極像結晶体支持手段と、
前記容器の内部において前記異極像結晶体支持手段に支持され、互いに間隔をあけて対向配置された少なくとも一対の異極像結晶体と、を備え、
前記少なくとも一対の異極像結晶体は、正負の異なる電気面が互いに向き合うように配置され、前記少なくとも一対の異極像結晶体の間には、金属ターゲットが配置され、前記容器の内部に設けられたターゲット支持手段に支持されており、さらに、
前記異極像結晶体の温度を昇降させる温度制御手段を備え、前記異極像結晶体の温度の昇降に伴って前記異極像結晶体から発生するX線を、前記容器の外部に放射するものであることを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
内部に低気体圧雰囲気を維持する容器と、
前記容器の内部に設けられた異極像結晶体支持手段と、
前記容器の内部において前記異極像結晶体支持手段に支持され、互いに間隔をあけて対向配置された少なくとも一対の異極像結晶体と、を備え、
前記少なくとも一対の異極像結晶体は、正の電気面同士または負の電気面同士が互いに向き合うように配置されており、さらに、
前記異極像結晶体の温度を昇降させる温度制御手段を備え、
前記温度制御手段は、前記少なくとも一対の異極像結晶体の温度の昇降を、互いに逆の温度勾配でかつ同じ周期で生じさせるようになっており、前記異極像結晶体の温度の昇降に伴って前記異極像結晶体から発生するX線を、前記容器の外部に放射するものであることを特徴とするX線発生装置。
【請求項3】
前記容器の壁はX線を透過させない材料から形成され、前記容器の壁には少なくとも1つのX線透過窓が備えられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線発生装置。
【請求項4】
内部に低気体圧雰囲気を維持する容器と、
前記容器の内部に設けられた異極像結晶体支持手段と、
前記容器の内部において前記異極像結晶体支持手段に支持され、互いに間隔をあけて対向配置された一対の異極像結晶体と、を備え、前記一対の異極像結晶体は、正の電気面同士または負の電気面同士が互いに向き合うように配置され、さらに、
前記容器の内部において、前記一対の異極像結晶体の間の間隙の周囲を取り囲むように配置され、前記容器の内部に設けられたターゲット支持手段に支持された金属ターゲットと、
前記異極像結晶体の温度を昇降させる温度制御手段と、を備え、前記異極像結晶体の温度の昇降に伴って前記異極像結晶体から発生するX線を、前記容器の外部に放射するものであることを特徴とするX線発生装置。
【請求項5】
前記容器の壁はX線を透過させない材料から形成され、前記容器の壁には少なくとも1つのX線透過窓が備えられていることを特徴とする請求項4に記載のX線発生装置。
【請求項6】
前記温度制御手段は、
前記少なくとも一対の異極像結晶体のそれぞれの温度を測定する温度センサーと、
前記異極像結晶体の加熱および冷却を繰り返し行うことができる加熱・冷却手段と、
前記温度センサーからの温度検出信号に基づき、前記加熱・冷却手段の動作を制御する制御手段と、を有していることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載のX線発生装置。
【請求項7】
内部に低気体圧雰囲気を維持する容器と、
前記容器の内部に設けられた異極像結晶支持手段と、
前記容器の内部において前記異極像結晶支持手段に支持され、互いに間隔をあけて対向配置された一対の異極像結晶集合体と、
前記異極像結晶集合体の温度を昇降させる温度制御手段と、を備え、
前記一対の異極像結晶集合体は、それぞれ、ベース上に多数個の異極像結晶体が凹面をなすように配列、固着されたものからなり、一方の異極像結晶集合体は、それを構成するすべての異極像結晶体が正の電気面を表面側に向けて配置され、他方の異極像結晶集合体は、それを構成するすべての異極像結晶体が負の電気面を表面側に向けて配置され、前記一対の異極像結晶集合体は、前記凹面をなす表面が互いに向き合うように配置されており、さらに、前記一対の異極像結晶集合体の間には、金属ターゲットが配置され、前記容器の内部に設けられたターゲット支持手段に支持されていることを特徴とするX線発生装置。
【請求項8】
前記容器の壁はX線を透過させない材料から形成され、前記容器の壁には、同一平面上に位置する少なくとも1つの細長いスリット状のX線透過窓が備えられており、前記ベースは半円筒形状を有し、前記多数個の異極像結晶体は前記ベースの凹面上に配列固着され、前記一対の異極像結晶集合体は、その軸方向の間隙が前記少なくとも1つのスリット状のX線透過窓に整合するように前記容器の内部に対向配置されていることを特徴とする請求項7に記載のX線発生装置。
【請求項9】
X線を透過させない材料から形成され、内部に低気体圧雰囲気を維持する容器と、
前記容器の内部に設けられた異極像結晶支持手段と、
誘電体を介して互いに接合された状態で対向配置され、かつ、前記容器の内部において前記異極像結晶支持手段に支持された一対の異極像結晶集合体と、
前記異極像結晶集合体の温度を昇降させる温度制御手段と、を備え、
前記一対の異極像結晶集合体は、それぞれ、半球殻形状のベースの凹面上に多数個の異極像結晶体が固着されたものからなり、一方の異極像結晶集合体は、それを構成するすべての異極像結晶体が正の電気面を表面側に向けて配置され、他方の異極像結晶集合体は、それを構成するすべての異極像結晶体が負の電気面を表面側に向けて配置され、前記一対の異極像結晶集合体は、リング状の誘電体を介して互いに接合されて球殻を形成し、前記球殻の内部には、その中心を含む位置に金属ターゲットが配置されて、前記異極像結晶集合体に備えられたターゲット支持手段に支持されており、前記一対の異極像結晶集合体の少なくとも一方には、少なくとも1つの貫通孔が形成され、前記容器の壁には、前記貫通孔に整合するX線透過窓が形成されていることを特徴とするX線発生装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、異極像結晶体を用いたX線発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線発生源としては、電子銃X線発生装置が従来より一般に知られている。電子銃X線発生装置では、ターゲットに打ち込まれた電子のエネルギーがほとんど熱に変換されてしまい、X線への変換効率は0.1%と極めて低く、この変換効率を上げることがこれまで重要な課題とされてきた。
【0003】
そして、この課題を解決し得るものとして、異極像結晶を用いたX線発生源が最近注目されている(例えば、非特許文献1参照)。異極像結晶は、焦電結晶体とも呼ばれ、加熱および冷却を繰り返してその温度を昇降させると、結晶内部の自発分極が増減し、表面吸着電荷がその変化に追随できなくなって、電気的な中和が破られるという特性を有している。代表的な異極像結晶体としては、LiNbO単結晶があり、この結晶体内では正電荷(Li、Nb5+)の重心と負電荷(O2-)の重心とが一致しないため、定常状態でも分極していて、この電荷量と等量で異符号の電荷が結晶表面に吸着しているために、常時は電気的に中和されている。
【0004】
図8には、異極像結晶体を用いた従来のX線発生装置の1例の構成を示した。図8を参照して、低気体圧雰囲気に維持されたパッケージ51内の底面に、台座としてのヒーター/クーラー板52が配置され、この上面に異極像結晶体53が、その正の電気面を支持して置かれ、上向きに露出した負の電気面がパッケージ51上面をなす銅製ターゲット54に対向している。ターゲット54の上面には、X線に対して透明で気密保持が可能なベリリウム窓55が装着されている。パッケージ51にはグラウンド線56が接続されて接地電位に維持され、さらに、ヒーター/クーラー板52への直流電圧印加線57および温度制御信号線58が接続されて室温からの温度の昇降を行う加熱サイクルを生ずるようになっている(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
この従来のX線発生装置によれば、主として温度昇降時の負の電気面および正の電気面の電荷の増減による電界の変化により、負の電気面から解放される荷電粒子や、電子がパッケージ内のガス(特にO2分子)を遊離および励起し、これによって電離した電子をターゲットに衝突させて、X線を励起するものと考えられる。
しかしながら、この構成では、装置から発生するX線の強度は弱く、実用に適したものではなく、しかも、X線は、異極像結晶体の温度の上昇時および下降時に不連続にしか発生しないという問題を生じていた。

【非特許文献1】科学雑誌"Nature"(1992,Vol. 358, P.278)
【非特許文献2】インターネットURL,www.amptek.comホームページより配信されているAMPTEK INCの商品カタログ「AMPTEK X-RAY GENERATOR WITH PYROELECTRIC CRYSTAL COOL-X」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、従来のものより強度の強いX線を発生させることができ、また、X線を連続的に発生させることができる、異極像結晶体を用いたX線発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1発明は、内部に低気体圧雰囲気を維持する容器と、前記容器の内部に設けられた異極像結晶体支持手段と、前記容器の内部において前記異極像結晶体支持手段に支持され、互いに間隔をあけて対向配置された少なくとも一対の異極像結晶体と、を備え、前記少なくとも一対の異極像結晶体は、正負の異なる電気面が互いに向き合うように配置され、前記少なくとも一対の異極像結晶体の間には、金属ターゲットが配置され、前記容器の内部に設けられたターゲット支持手段に支持されており、さらに、前記異極像結晶体の温度を昇降させる温度制御手段を備え、前記異極像結晶体の温度の昇降に伴って前記異極像結晶体から発生するX線を、前記容器の外部に放射するものであることを特徴とするX線発生装置を構成したものである。
【0008】
上記課題を解決するため、また、第2発明は、内部に低気体圧雰囲気を維持する容器と、前記容器の内部に設けられた異極像結晶体支持手段と、前記容器の内部において前記異極像結晶体支持手段に支持され、互いに間隔をあけて対向配置された少なくとも一対の異極像結晶体と、を備え、前記少なくとも一対の異極像結晶体は、正の電気面同士または負の電気面同士が互いに向き合うように配置されており、さらに、前記異極像結晶体の温度を昇降させる温度制御手段を備え、前記温度制御手段は、前記少なくとも一対の異極像結晶体の温度の昇降を、互いに逆の温度勾配でかつ同じ周期で生じさせるようになっており、前記異極像結晶体の温度の昇降に伴って前記異極像結晶体から発生するX線を前記容器の外部に放射するものであることを特徴とするX線発生装置を構成したものである。
第1および第2発明の構成において、好ましくは、前記容器の壁はX線を透過させない材料から形成され、前記容器の壁には少なくとも1つのX線透過窓が備えられている。
【0010】
上記課題を解決するため、また、第3発明は、内部に低気体圧雰囲気を維持する容器と、前記容器の内部に設けられた異極像結晶体支持手段と、前記容器の内部において前記異極像結晶体支持手段に支持され、互いに間隔をあけて対向配置された一対の異極像結晶体と、を備え、前記一対の異極像結晶体は、正の電気面同士または負の電気面同士が互いに向き合うように配置され、さらに、前記容器の内部において、前記一対の異極像結晶体の間の間隙の周囲を取り囲むように配置され、前記容器の内部に設けられたターゲット支持手段に支持された金属ターゲットと、前記異極像結晶体の温度を昇降させる温度制御手段と、を備え、前記異極像結晶体の温度の昇降に伴って前記異極像結晶体から発生するX線を、前記容器の外部に放射するものであることを特徴とするX線発生装置を構成したものである。
【0011】
第3発明の構成において、好ましくは、前記容器の壁はX線を透過させない材料から形成され、前記容器の壁には少なくとも1つのX線透過窓が備えられている。
また、第1~第3発明の構成において、好ましくは、前記温度制御手段は、前記少なくとも一対の異極像結晶体のそれぞれの温度を測定する温度センサーと、前記異極像結晶体の加熱および冷却を繰り返し行うことができる加熱・冷却手段と、前記温度センサーからの温度検出信号に基づき、前記加熱・冷却手段の動作を制御する制御手段と、を有している。
【0012】
上記課題を解決するため、また、第4発明は、内部に低気体圧雰囲気を維持する容器と、前記容器の内部に設けられた異極像結晶支持手段と、前記容器の内部において前記異極像結晶支持手段に支持され、互いに間隔をあけて対向配置された一対の異極像結晶集合体と、前記異極像結晶集合体の温度を昇降させる温度制御手段と、を備え、前記一対の異極像結晶集合体は、それぞれ、ベース上に多数個の異極像結晶体が凹面をなすように配列、固着されたものからなり、一方の異極像結晶集合体は、それを構成するすべての異極像結晶体が正の電気面を表面側に向けて配置され、他方の異極像結晶集合体は、それを構成するすべての異極像結晶体が負の電気面を表面側に向けて配置され、前記一対の異極像結晶集合体は、前記凹面をなす表面が互いに向き合うように配置されており、さらに、前記一対の異極像結晶集合体の間には、金属ターゲットが配置され、前記容器の内部に設けられたターゲット支持手段に支持されていることを特徴とするX線発生装置を構成したものである。
【0013】
第4発明の構成において、好ましくは、前記容器の壁はX線を透過させない材料から形成され、前記容器の壁には、同一平面上に位置する少なくとも1つの細長いスリット状のX線透過窓が備えられており、前記ベースは半円筒形状を有し、前記多数個の異極像結晶体は前記ベースの凹面上に配列固着され、前記一対の異極像結晶集合体は、その軸方向の間隙が前記少なくとも1つのスリット状のX線透過窓に整合するように前記容器の内部に対向配置されている。
【0014】
上記課題を解決するため、また、第5発明は、X線を透過させない材料から形成され、内部に低気体圧雰囲気を維持する容器と、前記容器の内部に設けられた異極像結晶支持手段と、誘電体を介して互いに接合された状態で対向配置され、かつ、前記容器の内部において前記異極像結晶支持手段に支持された一対の異極像結晶集合体と、前記異極像結晶集合体の温度を昇降させる温度制御手段と、を備え、前記一対の異極像結晶集合体は、それぞれ、半球殻形状のベースの凹面上に多数個の異極像結晶体が固着されたものからなり、一方の異極像結晶集合体は、それを構成するすべての異極像結晶体が正の電気面を表面側に向けて配置され、他方の異極像結晶集合体は、それを構成するすべての異極像結晶体が負の電気面を表面側に向けて配置され、前記一対の異極像結晶集合体は、リング状の誘電体を介して互いに接合されて球殻を形成し、前記球殻の内部には、その中心を含む位置に金属ターゲットが配置されて、前記異極像結晶集合体に備えられたターゲット支持手段に支持されており、前記一対の異極像結晶集合体の少なくとも一方には、少なくとも1つの半径方向にのびる貫通孔が形成され、前記容器の壁には、前記貫通孔に整合するX線透過窓が形成されていることを特徴とするX線発生装置を構成したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例について説明する。図1は、本発明の1実施例による異極像結晶体を用いたX線発生装置の概略構成を示した図である。図1を参照して、本発明のX線発生装置は、内部に低気体圧雰囲気(3~6Pa)を維持する容器1を備えている。この実施例では、容器1は、X線を透過させない材料(例えば金属)から形成された、両端開口が閉じられた円筒形状を有しており、容器1の壁、例えば周壁には、例えばBeまたはX線透過性プラスチックから形成された少なくとも1つのX線透過窓2が備えられている。
【0016】
また、容器1の上壁および底壁には、ペルチェ素子3a、3bが、Oリング等のシール部材4を介して気密状態で接合されている。ペルチェ素子3a、3bは、この実施例では、異極像結晶体の加熱および冷却を繰り返し行う加熱・冷却手段として機能するだけでなく、異極像結晶体支持手段としても機能する。そして、ペルチェ素子3a、3bにおける容器1の内部側に位置する基板上に、異極像結晶体5a、5bが接合、支持され、これら一対の異極像結晶体5a、5bは、容器1の内部において、互いに間隔をあけて対向配置される。なお、この実施例では、一対の異極像結晶体5a、5bはそれぞれ同一の円盤形状を有しており、また、ペルチェ素子3a、3bもまた、対応する円柱形状を有している。
【0017】
本発明においては、例えば、LiNbOやLiTaO等の公知の異極像結晶体がすべて使用可能である。また、異極像結晶体のサイズは、特に限定はされないが、この実施例では、直径約10mm、厚さ約1~10mmを有し、一対の異極像結晶体は、20mm以下の間隔をあけて対向配置される。
【0018】
一対の異極像結晶体5a、5bには、それぞれ、適当な位置に、温度を測定する温度センサー6a、6bが取付けられている。さらに、容器1の外部には、ペルチェ素子3a、3bに電力を供給する、例えば電池からなる電源部7a、7bと、温度センサー6a、6bからの温度検出信号に基づき、電源部7a、7bによる電力供給を制御することによって、ペルチェ素子3a、3bの動作を制御する制御部8a、8bが配置されている。
【0019】
そして、これらペルチェ素子3a、3b、温度センサー6a、6b、電源部7a、7bおよび制御部8a、8bから、異極像結晶体5a、5bの温度を昇降させる温度制御手段が構成される。温度制御手段3a、3b;5a、5b~8a、8bは、異極像結晶体5a、5bの温度を、それぞれ独立に、種々の温度勾配で、種々の周期であるいは非周期的に昇降させることができるようになっている。この場合、各温度昇降過程毎に、温度の上昇時間と下降時間は同じであることが好ましく、また、室温と、当該異極像結晶体のキューリー点以下の適当な高温度との間で温度の昇降が繰り返されることが好ましい。
【0020】
この構成において、一対の異極像結晶体5a、5bの配置方法としては、正負の異なる電気面が互いに向き合うような配置、および正の電気面同士または負の電気面同士が互いに向き合うような配置のいずれかを選択することができる。
そして、一対の異極像結晶体5a、5bが、正負の異なる電気面が互いに向き合うように配置される場合には、温度制御手段3a、3b;5a、5b~8a、8bは、一対の異極像結晶体5a、5bの温度の昇降を、互いに同じ温度勾配でかつ同じ周期で生じさせるようになっていることが好ましい。
また、一対の異極像結晶体5a、5bが、正の電気面同士または負の電気面同士が互いに向き合うように配置される場合には、温度制御手段3a、3b;5a、5b~8a、8bは、一対の異極像結晶体5a、5bの温度の昇降を、互いに逆の温度勾配でかつ同じ周期で生じさせるようになっていることが好ましい。
【0021】
図6は、一対の異極像結晶体が、正負の異なる電気面が互いに向き合うように配置され、その温度の昇降が互いに同じ温度勾配でかつ同じ周期で生じる構成における、X線の発生過程を図説したものである。図6において、一対の異極像結晶体は、上側の異極像結晶体が負の電気面を下側の異極像結晶体に向け、下側の異極像結晶体が正の電気面を上側の異極像結晶体に向けるように対向配置されている。
【0022】
まず最初、図6(A)を参照して、一対の異極像結晶体の温度が同じ温度勾配で上昇せしめられると、下側の異極像結晶体における上側の異極像結晶体に対向する面に発生する正の電荷の表面電荷密度が減少し、当該結晶体の表面に吸着していた負の電荷量よりも減少し、表面は実質的に負に帯電する。一方、上側の異極像結晶体の下側の異極像結晶体に対向する面に発生する負の電荷の表面電荷密度が減少し、当該結晶体の表面に吸着していた正の電荷量よりも減少し、表面は実質的に正に帯電する。
【0023】
その結果、一対の異極像結晶体間の空間には上側の結晶体から下側の結晶体に向かって高電界が発生する。このとき、一対の異極像結晶体間の空間には低気体圧力の気体(例えば酸素)が存在するが、この高電界により、一部の気体が電離され、正電荷を有するイオンと電子が発生してプラズマが形成される。また、一対の異極像結晶体間に、高電界によって放電が発生することもあり、これがさらなる気体の電離を促進する。
【0024】
このようにして発生した電子およびイオンが、一対の異極像結晶体間に発生した高電界により、それぞれ電界に対して逆の向きおよび同じ向きに加速される。その結果、X線発生に大きな寄与をすると考えられる電子は、上側の異極像結晶体の表面に衝突し、制動輻射機構により、上側の異極像結晶体から、当該結晶体を構成する全元素固有の特性X線および連続スペクトルを構成する白色X線が発生する。
【0025】
次に、図6(B)を参照して、一対の異極像結晶体の温度が同じ温度勾配で下降せしめられると、下側の異極像結晶体における上側の異極像結晶体に対向する面に発生する正の電荷の表面電荷密度が増加し、当該結晶体の表面に吸着していた負の電荷量よりも増加し、表面は実質的に正に帯電する。一方、上側の異極像結晶体における下側の異極像結晶体に対向する面に発生する負の電荷の表面電荷密度が増加し、当該結晶体の表面に吸着していた正の電荷量よりも増加し、表面は実質的に負に帯電する。
【0026】
その結果、一対の異極像結晶体間の空間には下側の結晶体から上側の結晶体に向かって高電界が発生する。そして、X線発生に大きな寄与をすると考えられる電子は、下側の異極像結晶体の表面に衝突し、制動輻射機構により、下側の異極像結晶体から、当該結晶体を構成する全元素固有の特性X線および連続スペクトルを構成する白色X線が発生する。
【0027】
こうして、一対の異極像結晶体が共にその温度を上昇せしめられる時には、上側の異極像結晶体(負の電気面から、一方、下降せしめられる時には、下側の異極像結晶体から、それぞれ同じスペクトルのX線が放射される。すなわち、この構成においては、一対の異極像結晶体の温度の昇降が互いに同じ温度勾配でかつ同じ周期で繰り返されることにより、X線が、上側および下側の異極像結晶体から交互に間断なく放射される。
【0028】
このように、本発明によるX線発生装置においては、対向配置された一対の異極像結晶体の温度の昇降が繰り返されることによってX線が発生し、容器1に備えられたX線透過窓2を通って外部に放射される。この場合、容器1の全体をX線透過性を有する材料から形成すれば、X線は容器1から2π方向に放射される。
なお、この実施例では、容器内に異極像結晶体が一対だけ対向配置されるが、異極像結晶体の複数の対を、それぞれ、容器内において対向配置するようにしてもよく、この場合には、より強度の高いX線が連続的に得られる。
また、この実施例では、異極像結晶体の加熱・冷却手段としてペルチェ素子が使用されているが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、発熱および吸熱作用を繰り返し生じ得る適当な公知の手段を、異極像結晶体の加熱・冷却手段として使用することができる。この場合、必要に応じて、別途、異極像結晶体を支持するための異極像結晶体支持手段を容器内に設ける必要がある。
【0029】
本発明のX線発生装置によれば、従来のような、高電圧源を使用し、大型で効率の悪い電子銃方式のX線発生装置とは異なり、小型の異極像結晶体を用い、電池レベルの電源を使用することによって、非常にコンパクトな構成において、数10kV/mmという高電界を発生させて、電子銃方式に比べて単位面積当たりのX線強度が格段に高いX線を連続して発生させることができる。すなわち、本発明のX線発生装置は、従来のX線発生装置に取って代わり得る十分な実用性を備えている。
【0030】
図2は、本発明の別の実施例による異極像結晶体を用いたX線発生装置の概略構成を示した図である。この実施例は、一対の異極像結晶体の間に金属ターゲットが配置されている点が、図1の実施例と相違するだけである。したがって、図2において、図1の構成要素と同じ構成については同一番号を付して説明を省略する。
図2を参照して、一対の異極像結晶体5a、5bの間には、平板状の金属ターゲット9が配置され、容器1の内周壁面に突設されたターゲット支持部10に支持されている。
この実施例では、一対の異極像結晶体5a、5bは、正負の異なる電気面が互いに向き合うように配置されていることが好ましい。それによって、異極像結晶体5a、5bの温度が昇降されると、一対の異極像結晶体の間に電気力線が平行に生じ、異極像結晶体から発生する電子、および一対の異極像結晶体間の空間内に存在する気体の電離により発生したイオンおよび電子が、ターゲット9に効果的に衝突する。
【0031】
図7は、この実施例の場合のX線の発生過程を図説したものである。図7において、一対の異極像結晶体は、上側の異極像結晶体は負の電気面をターゲットに向け、下側の異極像結晶体は正の電気面をターゲットに向けるように対向配置されている。
一対の異極像結晶体の温度が同じ温度勾配で上昇せしめられると、下側の異極像結晶体のターゲットに対向する面に発生する正の電荷の表面電荷密度が減少し、同結晶体の表面に吸着していた負の電荷量よりも減少し、表面は実質的に負に帯電する。一方、上側の異極像結晶体のターゲットに対向する面に発生する負の電荷の表面電荷密度が減少し、同結晶体の表面に吸着していた正の電荷量よりも減少し、表面は実質的に正に帯電する。
【0032】
その結果、一対の異極像結晶体間の空間には上側の結晶体から下側の結晶体に向かって高電界が発生する。このとき、一対の異極像結晶体間の空間には低気体圧力の気体(例えば酸素)が存在するが、この高電界により、一部の気体が電離され、正電荷を有するイオンと電子が発生してプラズマが形成される。また、一対の異極像結晶体間に、高電界によって放電が発生することもあり、これがさらなる気体の電離を促進する。
【0033】
こうして発生した電子およびイオンが、一対の異極像結晶体間に発生した高電界により、それぞれ電界に対して逆の向きおよび同じ向きに加速される。その結果、X線の発生に大きな寄与をすると考えられる電子については、ターゲットおよび下側の異極像結晶体間に存在する電子はターゲットに衝突し、制動輻射機構により、ターゲットから、当該ターゲットに固有の特性X線および連続スペクトルを構成する白色X線が発生する。また、上側の異極像結晶体およびターゲット間に存在する電子は上側の異極像結晶体の表面に衝突し、制動輻射機構により、上側の異極像結晶体から、当該結晶体を構成する全元素固有の特性X線および連続スペクトルを構成する白色X線が発生する。
この場合、ターゲットが1~5μm程度の厚さの箔の場合には、X線は空間のあらゆる方向に放射されるが、ターゲットの厚みが増加すると、X線はターゲットの下部の空間に主に放射される。
【0034】
一対の異極像結晶体の温度が同じ温度勾配で下降せしめられると、下側の異極像結晶体のターゲットに対向する面に発生する正の電荷の表面電荷密度が増加し、同結晶体の表面に吸着していた負の電荷量よりも増加し、表面は実質的に正に帯電する。一方、上側の異極像結晶体のターゲットに対向する面に発生する負の電荷の表面電荷密度が増加し、同結晶体の表面に吸着していた正の電荷量よりも増加し、表面は実質的に負に帯電する。
【0035】
その結果、一対の異極像結晶体間の空間には、下側の異極像結晶体から上側の異極像結晶体に向かって高電界が発生する。そして、X線発生に大きな寄与をすると考えられる電子については、ターゲットおよび下側の異極像結晶体間に存在する電子は、下側の異極像結晶体の表面に衝突し、制動輻射機構により、下側の異極像結晶体から、当該結晶体を構成する全元素固有の特性X線および連続スペクトルを構成する白色X線が発生する。また、上側の異極像結晶体およびターゲット間に存在する電子は、ターゲットに衝突し、制動輻射機構により、当該ターゲットに固有の特性X線および連続スペクトルを構成する白色X線が発生する。
この場合、ターゲットが1~5μm程度の厚さの箔の場合には、X線は空間のあらゆる方向に放射されるが、ターゲットの厚みが増加すると、X線はターゲットの上部の空間に主に放射される。
【0036】
この実施例によれば、異極像結晶体を構成する元素に固有の特性X線および連続スペクトルを構成する白色X線だけでなく、ターゲットに固有の特性X線および連続スペクトルを構成する白色X線を発生させることができる。
【0037】
図3は、本発明のさらに別の実施例による異極像結晶体を用いたX線発生装置の主要部を示した斜視図である。この実施例は、ターゲットの構造および配置が、図2の実施例と相違するだけである。したがって、図3において、図2の構成要素と同じ構成要素には同一番号を付し、さらに、容器、並びに電源部および制御部は省略し、これらの説明を省略する。
図3を参照して、金属ターゲット11は円筒形状を有し、一対の異極像結晶体5a、5bの間の間隙13の周囲を取り囲むように配置され、容器の内周壁面に突設されたターゲット支持部12に支持されている。
【0038】
この実施例では、一対の異極像結晶体5a、5bは、正の電気面同士または負の電気面同士が互いに向き合うように配置される。そして、前者の場合には、異極像結晶体5a、5bのそれぞれから出た電気力線は、異極像結晶体5a、5b間の間隙から放射状に無限遠方向に発散し、後者の場合には、電気力線は、前者と逆向きに生じる。その結果、各異極像結晶体5a、5bから発生する電子、および異極像結晶体5a、5b間の空間内に存在する気体の電離により発生したイオンおよび電子が、ターゲット11に効果的に衝突し、それによって、異極像結晶体5a、5bを構成する元素に固有の特性X線および連続スペクトルを構成する白色X線、並びに、ターゲットに固有の特性X線および連続スペクトルを構成する白色X線が、高い強度で連続的に容器のX線透過窓から放射される。
【0039】
図4は、本発明のさらに別の実施例による異極像結晶体を用いたX線発生装置の概略構成を示した図である。図4を参照して、本発明のX線発生装置は、内部に低気体圧雰囲気(3~6Pa)を維持する容器20を備えている。この実施例では、容器20は、X線を透過させない材料(例えば金属)から形成された、両端開口が閉じられた円筒形状を有し、容器20の壁、例えば周壁に、例えばBeまたはX線透過性プラスチックから形成された少なくとも1つのX線透過窓21が備えられている。この場合、X線透過窓21は、容器の周壁のほぼ中央において容器の軸に垂直な面上に位置する細長いスリットの形状を有している。
【0040】
また、容器20の上壁内面および底壁内面には、異極像結晶支持部26a、26bが設けられている。そして、容器20の内部には、一対の異極像結晶集合体31a、31bが、異極像結晶支持部26a、26bに支持され、互いに間隔をあけて対向配置されている。
【0041】
一対の異極像結晶集合体31a、31bは、それぞれ、半円筒状のベース22a、22bの凹面側に、多数個の異極像結晶体23が配列、固着されたものからなり、一方の異極像結晶集合体31aは、それを構成するすべての異極像結晶体23が正の電気面を表面側に向けて配置され、他方の異極像結晶集合体31bは、それを構成するすべての異極像結晶体23が負の電気面を表面側に向けて配置されている。そして、一対の異極像結晶集合体31a、31bは、凹面をなす表面が互いに向き合うように、かつ、一対の異極像結晶集合体31a、31bの間のその軸方向にのびる間隙25とX線透過窓21とが整合するように配置される。
【0042】
一対の異極像結晶集合体31a、31bの間には、平板状の金属ターゲット27が配置され、一方の異極像結晶集合体31bのベース22bに設けられたターゲット支持部28に支持されている。ターゲット27は、好ましくは、両面がそれぞれ異極像結晶集合体31a、31bに対向するように配置される。
【0043】
それぞれの異極像結晶集合体31a、31bのベース22a、22bの凸面側には、その凹面側に固着された各異極像結晶体23に対応して、ペルチェ素子24が取り付けられている。ベース22a、22bは熱伝導性を有していて、ペルチェ素子24の発熱および吸熱作用によって、対応する異極像結晶体23が効率良く加熱および冷却されるようになっている。ペルチェ素子24は、異極像結晶集合体31a、31b毎に、それぞれ、直列接続又は並列接続され、容器20の外部に配置された、例えば電池からなる電源部29a、29bから電力供給を受けるようになっている。
【0044】
また、図示されないが、各異極像結晶集合体31a、31bには、それを構成する異極像結晶体の温度を検出するための温度センサーが設けられている。さらに、容器20の外部には、温度センサーからの温度検出信号に基づいて、電源部29a、29bからの電力供給を制御することによって、ペルチェ素子24の動作を制御する制御部30a、30bが備えられている。
【0045】
これらペルチェ素子24、温度センサー、電源部29a、29bおよび制御部30a、30bから、異極像結晶集合体31a、31bの温度を昇降させる温度制御手段が構成される。温度制御手段24;29a、29b;30a、30bは、異極像結晶集合体31a、31bの温度を、それぞれ独立に、種々の温度勾配で、種々の周期であるいは非周期的に昇降させることができるようになっている。この場合、一対の異極像結晶集合体31a、31bの温度の昇降は、互いに同じ温度勾配でかつ同じ周期で生じることが好ましく、また、各温度昇降過程毎に、温度の上昇時間と下降時間は同じであることが好ましく、さらには、室温と、当該異極像結晶体23のキューリー点以下の適当な高温度との間で温度の昇降が繰り返されることが好ましい。この実施例の場合においても、X線の発生過程は、図2の実施例の場合と同様である。
【0046】
この実施例の場合には、多数個の異極像結晶体23を組み合わせて異極像結晶集合体31a、31bとし、さらに、一対の異極像集合体31a、31bを凹面(半円筒面)として対向配置したことにより、単一の異極像結晶体を互いに対向配置した構成の場合より、大量の電子およびイオンを発生させることができ、かつ、より大量の電子をターゲットに衝突させることができる。その結果、より高い強度のX線を、連続的に発生させることができる。しかも、この実施例では、一対の異極像結晶集合体31a、31bの間の空間中に生じたX線が、一対の異極像結晶集合体31a、31bの軸方向にのびる間隙からスリット状のX線透過窓21を通って容器外部に放射されるので、実用に適した強度のライン状のX線が得られる。
【0047】
図5は、本発明のさらに別の実施例による異極像結晶体を用いたX線発生装置の概略構成を示した図である。図5を参照して、本発明のX線発生装置は、内部に低気体圧雰囲気(3~6Pa)を維持する容器32を備えている。容器32は、X線を透過させない材料(例えば金属)から形成された、両端開口が閉じられた円筒形状を有し、容器32の周壁の一部に、例えばBeまたはX線透過性プラスチックから形成された円形のX線透過窓33が備えられる。
【0048】
容器32の上壁内面には異極像結晶支持部34が設けられている。そして、容器32の内部には、一対の異極像結晶集合体35a、35bが、異極像結晶支持部34に支持され、対向配置される。一対の異極像結晶集合体35a、35bは、それぞれ、半球面殻形状のベース36a、36bの凹面側に、多数個の異極像結晶体37が配列、固着されたものからなり、一方の異極像結晶集合体35aは、それを構成するすべての異極像結晶体37が正の電気面を表面側に向けて配置され、他方の異極像結晶集合体35bは、それを構成するすべての異極像結晶体37が負の電気面を表面側に向けて配置されている。
また、他方の異極像結晶集合体35bには、半径方向にのびる貫通孔42が形成されている。
一対の異極像結晶集合体35a、35bは、凹面をなす表面が互いに向き合うように配置され、かつ誘電体からなるリング39を介して互いに接合されて、全体として球殻を形成するとともに、貫通孔42が、容器32のX線透過窓33に整合するように配置される。
【0049】
一対の異極像結晶集合体35a、35bの間には、金属ターゲット41が配置され、一方の異極像結晶集合体35aのベース36aに設けられたターゲット支持部40に支持されている。この場合、ターゲット41は、球殻の中心を含む位置に配置されることが好ましい。
【0050】
それぞれの異極像結晶集合体35a、35bのベース36a、36bの凸面側には、その凹面側に固着された各異極像結晶体37に対応して、ペルチェ素子38が取り付けられる。ベース36a、36bは熱伝導性を有していて、ペルチェ素子38の発熱および吸熱作用によって、対応する異極像結晶体37が効率良く加熱および冷却されるようになっている
ペルチェ素子38は、異極像結晶集合体35a、35b毎に、それぞれ、直列接続または並列接続され、容器32の外部に配置された、例えば電池からなる電源部43a、43bから電力供給を受ける。
【0051】
また、図示されないが、各異極像結晶集合体35a、35bには、それを構成する異極像結晶体37の温度を検出するための温度センサーが設けられている。さらに、容器32の外部には、温度センサーからの温度検出信号に基づいて、電源部43a、43bからの電力供給を制御することによって、ペルチェ素子38の動作を制御する制御部44a、44bが備えられる。
【0052】
これらペルチェ素子38、温度センサー、電源部43a、43bおよび制御部44a、44bから、異極像結晶集合体35a、35bの温度を昇降させる温度制御手段が構成される。なお、温度制御手段による異極像結晶集合体の温度昇降動作は、図4の実施例の場合と同様であり、また、X線の発生過程も図4の実施例の場合と同様である。
【0053】
この実施例によれば、一対の異極像結晶集合体35a、35bの間に生じる電気力線は、球殻の中心付近でかなり密になるので、ターゲット41から発生する特性X線の強度は図4の実施例の場合よりも強くなる。さらには、球殻内部(一対の異極像結晶集合体35a、35bの内部)に生じたX線は、貫通孔42から円形のX線透過窓33を通って容器32の外部に放射される。こうして、この実施例によれば、実用に適した強度の高い点状のX線が得られる。
【0054】
なお、本発明においては、対向配置した異極像結晶体の温度を昇降させることによって、X線を発生させるようにしているが、異極像結晶体に交流電圧を適用して、異極像結晶体を電歪することによって、温度昇降時と同様にX線を発生させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、従来の大型で効率の悪い電子銃方式のX線発生装置とは異なり、小型の異極像結晶体を用い、電池レベルの電源を使用することによって、数10kV/mmという高電界を発生させて、電子銃方式に比べて単位面積当たりのX線強度が格段に高いX線を連続して発生させることができる。したがって、本発明によれば、従来の電子銃方式のX線発生装置に置き換わり得る、コンパクトなX線発生装置を提供し、これをX線顕微鏡、元素分析、結晶解析または非破壊検査、あるいは種々の医療的検査等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の1実施例による異極像結晶体を用いたX線発生装置の概略構成を示した図である。
【図2】本発明の別の実施例による異極像結晶体を用いたX線発生装置の概略構成を示した図である。
【図3】本発明のさらに別の実施例による異極像結晶体を用いたX線発生装置の主要部を示した斜視図である。
【図4】本発明のさらに別の実施例による異極像結晶体を用いたX線発生装置の概略構成を示した図である。
【図5】本発明のさらに別の実施例による異極像結晶体を用いたX線発生装置の概略構成を示した図である。
【図6】図1のX線発生装置のX線の発生過程を説明する図である。
【図7】図2のX線発生装置のX線の発生過程を説明する図である。
【図8】異極像結晶体を用いた従来のX線発生装置の断面略図である。
【符号の説明】
【0057】
1 容器
2 X線透過窓
3a、3b ペルチェ素子
4 Oリング
5a、5b 異極像結晶体
6a、6b 温度センサー
7a、7b 電源部
8a、8b 制御部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7