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明細書 :異極像結晶体を用いたX線発生装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4056970号 (P4056970)
公開番号 特開2005-174556 (P2005-174556A)
登録日 平成19年12月21日(2007.12.21)
発行日 平成20年3月5日(2008.3.5)
公開日 平成17年6月30日(2005.6.30)
発明の名称または考案の名称 異極像結晶体を用いたX線発生装置
国際特許分類 H01J  35/06        (2006.01)
G21K   1/00        (2006.01)
G21K   5/08        (2006.01)
H01J  35/00        (2006.01)
H01J  35/08        (2006.01)
H01J  35/14        (2006.01)
H01J  35/16        (2006.01)
FI H01J 35/06 B
H01J 35/06 H
G21K 1/00 X
G21K 5/08 X
H01J 35/00 C
H01J 35/08 C
H01J 35/14
H01J 35/16
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2003-407985 (P2003-407985)
出願日 平成15年12月5日(2003.12.5)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2003年9月17日社団法人日本分析化学会主催の「第39回X線分析討論会講演(2003)において文書をもって発表
審査請求日 平成17年7月20日(2005.7.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
【識別番号】505114488
【氏名又は名称】中西 義一
発明者または考案者 【氏名】中西 義一
【氏名】深尾 真司
【氏名】吉門 進三
【氏名】伊藤 嘉昭
【氏名】福島 整
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査官 【審査官】松岡 智也
参考文献・文献 米国特許第03840748(US,A)
深尾真司,"LiNbO3結晶の熱励起について",第48回人工結晶討論会講演要旨集,人工結晶学会,2003年11月 4日,p.73-74
James D.Brownridge,"Investigations of pyroelectric generation on x rays",Journal of Applied Physics,米国,1999年,Vol.86 Num.1,p.640-647
中西義一,結晶励起によるX線源について,第39回X線分析討論会講演要旨集,日本,日本分析化学会,2003年 9月,p.111-112
調査した分野 H01J 35/00-35/32
G21K 1/00
G21K 5/08
特許請求の範囲 【請求項1】
外部にX線を放出するためのX線放射部と、前記X線放射部に任意の角度で対向した正極面を有するとともに反対側に負極面を位置せしめた異極像結晶体と、前記負極面に対向して異極像結晶体を支持するとともにこの結晶体を昇温及び降温させるための、接地電位に維持された金属表面を有する加熱・冷却ステージとを備え、前記異極像結晶体の負極面と、前記加熱・冷却ステージの金属表面との間に、前記負極面に接触して前記異極像結晶体を支持する活性層を介在させ、前記加熱・冷却ステージによってこの活性層を介して前記異極像結晶体を昇温及び降温せしめて前記X線放射部からX線を放出するように構成したことを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
前記X線放射部が、金属ターゲットを含むことを特徴とする請求項1記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記金属ターゲットが網状であることを特徴とする請求項2記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記X線発生装置が更に、加熱・冷却ステージの金属表面から立設されて前記異極像結晶体を囲繞し、上端縁が前記X線放射部に近接しかつ対向するように配置された導電性又は半導電性のホローカソードを備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載のX線発生装置。
【請求項5】
前記X線発生装置が更に、前記X線放射部と加熱・冷却ステージ、及びこれらX線放射部/ステージ間のすべての構造を包囲するとともに、前記X線放射部と装置外部との境界を為すX線取り出し窓を有する電磁シールド兼X線シールド用の密封容器を備えたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のX線発生装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、異極像結晶体を用いたX線発生装置、特にターゲット等と異極像結晶体との新たな配置関係の創出・採用に係るX線発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線発生源として従来一般的に知られているのは電子銃X線発生装置である。この電子銃方式では、ターゲットに打ち込まれた電子のエネルギーが殆ど熱に変換され、X線への変換効率は0.1%と極めて低いものであり、その効率の改善が大きな課題とされてきた。これを克服するものとして最近注目されているのが、異極像結晶を用いたX線発生源である(例えば、非特許文献1参照)。異極像結晶とは、いわゆる焦電結晶体であって、加熱及び冷却することにより結晶内部の自発分極が増減し、表面吸着電荷がその変化に追随できないために、電気的な中和が破られるものである、ということはよく知られている。代表的な異極像結晶体としてはLiNbO単結晶があり、この結晶体内では正電荷(Li、Nb5+)の重心と負電荷(O2-)の重心とが一致しないため、定常状態でも分極していて、この電荷量と等量で異符号の電荷が結晶表面に吸着しているために、常時は電気的に中和されている。
【0003】
この異極像結晶体を用いた従来のX線発生装置の代表的なものは、例えば、図1に示すようにパッケージ1内の底面に台座としてのヒーター/クーラー板2が設置され、この上面に異極像結晶体3が、そのZ+面を支持して載置され、上向きに露出したZ-面がパッケージ1上面をなす銅製ターゲット4に対向している。なお、ターゲット4の上面には、X線に対して透明で気密保持が可能なベリリウム窓5が装着されている。パッケージ1にはグラウンド線6が接続されて接地電位に維持され、更にヒーター/クーラー板2への直流電圧印加線7及び温度制御信号線8が接続されて室温からの昇温及び降温を行う加熱サイクルを生ずるようになっている(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
パッケージ1内は、特定雰囲気状態に維持され、主として昇温及び降温時のZ-及びZ+電荷の増減による電界の変化により、Z-面から解放される荷電粒子や、電子がパッケージ内のガス(特にO2分子)を遊離及び励起し、これによって電離した電子を対向したターゲットに衝突させて、X線を励起するものと考えられる。後述するが、我々の実験で見る限り、昇降温の速度にもよるが、この従来型構成でX線がより多く発生するのは昇温時よりも降温時であり、これはZ-及びZ+表面電荷量がより大きく(早く)変化する昇温時の電界変化を有効に利用できていないことも一因であると考えられる。

【非特許文献1】科学雑誌"Nature"(1992,Vol. 358, P.278)
【非特許文献2】インターネットURL,www.amptek.comホームページより配信されているAMPTEK INCの商品カタログ「AMPTEK X-RAY GENERATOR WITH PYROELECTRIC CRYSTAL COOL-X」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の異極像結晶体によるX線発生能力を飛躍的に高めるために、ターゲット等のX線放射部と異極像結晶体との独自の配置関係を有するX線発生装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載した本発明のX線発生装置は、外部にX線を放出するためのX線放射部と、前記X線放射部に任意の角度で対向した正極面を有するとともに反対側に負極面を位置せしめた異極像結晶体と、前記負極面に対向して異極像結晶体を支持するとともにこの結晶体を昇温及び降温させるための、接地電位に維持された金属表面を有する加熱・冷却ステージとを備え、前記異極像結晶体の負極面と、前記加熱・冷却ステージの金属表面との間に、前記負極面に接触して前記異極像結晶体を支持する活性層を介在させ、前記加熱・冷却ステージによってこの活性層を介して前記異極像結晶体を昇温及び降温せしめて前記X線放射部からX線を放出するように構成したものである。X線放射部と異極像結晶体の正極面とが「任意の角度で対向した」とは、角度0=平行状態の他、傾きをもって対向した状態を含むものである。
【0007】
請求項2に記載した本発明のX線発生装置は、前記X線放射部が、金属ターゲットを含むことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載した本発明のX線発生装置は、前記金属ターゲットが網状であることを特徴とするものである。この場合、網状金属は金属部分がターゲットとして作用するとともに、開口部分が結晶体及びその包囲空間から放射されたX線を透過して外部に放出する役目を果たす。
【0010】
請求項4に記載した本発明のX線発生装置においては、更なる構造要素として、加熱・冷却ステージの金属表面から立設されて前記異極像結晶体を囲繞し、上端縁が前記X線放射部に近接しかつ対向するように配置された導電性又は半導電性のホローカソード構造体、又はホローカソード機能を有する電極構造体を備えたことを特徴とするものである。なお、ホローカソード構造体の上端縁が前記X線放射部に近接しかつ対向する状態には、ホローカソード構造体の上端縁がX線放射部に接触する状態を含むものである。
【0011】
請求項6に記載した本発明のX線発生装置においては、更なる構造要素として、前記X線放射部と加熱・冷却ステージ、及びこれらX線放射部/ステージ間のすべての構造を包囲するとともに、前記X線放射部と装置外部との境界を為すX線取り出し窓を有する電磁シールド兼X線シールド用の密封容器を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の基本構成原理は、図2に示すとおり、異極像結晶体10がそのZ-極面を下向きにして、温度制御機能を有する加熱・冷却ステージ11上に位置し、異極像結晶体10のZ+極面(上面)の上方に金属製(例えばCu)の薄膜ターゲット12が配置されたものである。図示の状態は、昇温時において結晶体10内の自発分極が小さくなったとき、結晶が作る電界に基づいて放出及び加速された電子がターゲット12に衝突し、X線が励起発生する様子を示している。この操作に伴う電界強度は、標準的には10kV/mm程度の極めて高い値となり、ターゲット12直前の電子を顕著に加速する。本発明の結晶体極性配置において、昇温時に生ずるこのような電子加速は、従来型配置のものより極めて大きいものと認められる。
【0013】
図2において、結晶体10の両側に破線で示したもの(13)は、グラファイト製のホローカソードであり、加熱・冷却ステージ11の導電性表面を介して接地電位に維持されるものであり、前述した電子放出及び加速に寄与する。
【0014】
本発明の、典型的な構成原理は、図3に示すとおり、異極像結晶体10の負極面と、加熱・冷却ステージ11の金属表面との間に、その負極面に接触して異極像結晶体10を支持する低仕事関数の活性層14を介在させ、加熱・冷却ステージ11がこの活性層14を介して異極像結晶体10を昇温及び降温させるようにしたものである。異極像結晶体10としてLiNbO単結晶を用いる場合、活性層14として好ましくはMgOが用いられるが、代わりにCaOを用いてもよいし、場合によっては前述したグラファイト製ホローカソード13の底面をもって代用することができる。活性層14は、この場合、銀ペースト等で加熱・冷却ステージ11の導電性表面に接着され、接地電位に維持される。

【0015】
図3の状態は、図2の場合と同じく、昇温時において結晶体10内の自発分極が小さくなったとき、結晶が作る強電界(二重矢印で示す)に基づいて放出及び加速された電子がターゲット12に衝突し、X線が励起発生する様子を示している。しかし、図2の場合と著しく異なるのは、結晶体10下面のZ-電荷の減少による同下面からの強電界により励起される活性層14は、MgOなどの場合、多数の電子を放出する。このように放出された電子もまた、結晶体10の包囲空間内の電界により加速され、またこの強い電界は空間内のガス(特にO2分子)を励起して電子を遊離させ、これらに由来する多量の荷電粒子が対向したターゲットに衝突して、X線を励起発生させるものと考えられる。更に、空間内を飛来する荷電粒子はその過程においても制動輻射によりX線を励起し、これらのX線はターゲット12からの蛍光X線の発生に寄与することになる。
【0016】
図4は、上述した高電界によるO2分子の遊離促進と励起電子の発生、及び加速のメカニズムを示す模式図である。例えば、昇温時の結晶体10上方において、O分子は電界Eに励起されて分子中の1個のO原子から直接電子をはじき出すか、2個のO原子に遊離してから、不安定な個々のO原子から電子をはじき出すという二態様においてプラズマ状態を生成する。これらプラズマ中の電子は、昇温時の結晶体による電界に加速されてターゲット12に衝突し、十分な量のX線を励起発生させる。
【0017】
図5は、降温時においてもターゲットからX線が発生するメカニズムを示す模式図である。図4について説明したとおり、定常状態(A)において分極電荷に対応する表面電荷を有して電界を生じない結晶体10は、昇温時(B)においては、その上方に下向きの電界を生じ、電子をターゲットに向かって加速する。しかし、降温時(C)には、その上方に上向きの電界を生じ、プラズマ中の荷電粒子(主として電子)を自身(結晶体10)の上面に引き寄せ、衝突させる。この結晶体10表面への粒子衝撃はその結晶体表面を励起してX線を放出させる原因となる。これが後述するように、本発明の結晶体X線源が降温時においてもX線を発生しうると言う主な理由である。
【0018】
図6は、科学雑誌"Nature"(1992,Vol. 358, P.278)において、Brownridgeが発表した従来形の異極像結晶体(銅の上にZ-面を上向きにして載置されたLiNbO)X線源による昇温時のX線スペクトルS0と、銅の上にCaOを銀ペーストで接着し、更にその上にZ+面を上向きにしてLiNbOを載置した本発明の異極像結晶体X線源による同一条件で測定されたX線スペクトルS1とを比較したグラフであり、チャンネルピークにおいて1.4倍の向上が見られたことが分かる。この結果は、原理的な差異を示すにすぎないものであり、本発明において種々の構造要素及び稼働条件を設定することにより、更なる成果が得られたことが、以下の説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図7は、本発明のX線発生装置の好ましい実施形態を示す断面図である。この場合、LiNbO単結晶からなり、Z+面を上向けにした結晶体20は、ヒーター及びクーラーを内蔵した加熱・冷却ステージ21により温度制御されるもので、結晶体20/加熱・冷却ステージ21間には、典型的にはCaOからなる低仕事関数の活性層22が、銀ペースト等によりステージ21表面に接着して配置され、ステージ21の金属表面を介して接地電位に維持される。加熱・冷却ステージ21の加熱・冷却機構としてはペルチエ素子を用いて、昇温と降温の両方を制御すること、あるいは電熱ヒーターと水冷チャンネルを用いること、あるいは電熱ヒーターのみの通電制御と放冷によること等、目的に応じて種々の構成を採用することができる。
【0020】
加熱・冷却ステージ21表面の活性層22外周縁から露出した上面縁からは、例えば、グラファイトからなるホローカソード筒28が立設され、活性層22及び結晶体20を同軸的に包囲し、十分高い位置まで延びてプラズマ生成及び電子及びX線放出空間を形成している。好ましくは銅薄板からなるX線発生ターゲット23は、このホローカソード筒22の上端から空隙gを置いたレベルで対向するように配置される。ホローカソードとしては、グラファイト以外にもタングステン等の金属や半導体を用いてもよい。
【0021】
以上すべての構造要素20~23及び28は、電磁シールド兼X線シールド用の密封容器24によって同軸的に包囲されるとともに、容器24内の定位置に固定される。すなわち、仮想線25で略示する台は、加熱・冷却ステージ21を容器24の内底面に固定する固定台であり、仮想線26で略示する吊り枠はX線発生ターゲット23を前述した定位置に吊設固定するものである。これらの固定台や吊り枠には当業者の設計事項として、種々の代替構造を採用しうる。
【0022】
密封容器24の本体は機械強度及び必要な物理特性を満たすものとして、例えば、ステンレス鋼から形成され、X線発生ターゲット23の上面(X線放射面)に対向した容器24天面部は本体金属を開口し、ポリイミドや他のフッ素系樹脂等からなるX線透過窓27を装着し、気密性を維持するようになっている。なお、窓材としてベリリウムを用い、ターゲット23と一体化してもよい。
【0023】
例えば、密封容器24の外径を2~3cmφ、高さも同様に2~3cmとした場合、図示の結晶体20の厚さtは数mm、面積Sは80mm程度,結晶体20上面からターゲット23までの距離dは15~20mm程度が望ましく、ホローカソード筒22の上端と、ターゲット23下面との間隔gは2~3mm程度、場合によってはg=0(接触)でもよい。なお、X線ターゲット23と接地電位との間に接続された抵抗Rはターゲット23に衝突する電子のエネルギーと、ターゲット23から発生するX線量との関係を制御するために設けられたものであるが、逆にその抵抗Rに流れる電流から前記の関係を分析することもできる。
【0024】
上記構成のX線発生装置を作動させるにあたり、結晶体20は加熱・冷却ステージ21により、室温から、キューリー点(LiNbOの場合、1200℃)より低い適当な高温度、例えば200℃になるまで20分かけて加熱され、以後3分間ごとに200℃と室温よりやや低い温度(例えば、10℃)との間の昇温及び降温を繰り返すように制御される。前述したように、この昇温及び降温時に発生する高電界によって、酸素プラズマを励起して電子加速及びX線発生に寄与させるためには、容器24内に酸素ガスが残存していることが重要であると考えられ、事実、従来型(結晶体Z+面下向き構造)において、高真空下でのX線発生は不可能とされていたが、上記本発明の装置においては10-3Pa程度という実質的な真空状態においても十分な量のX線を発生することができた。
【0025】
すなわち、従来型のように数Pa程度という実質的なガス封入状態であると、密封された容器であっても使用中に必ずガス漏れが生じ、X線発生効率が悪くなり、封入ガス圧の管理等が重要となる。本発明のように実質的な真空状態でも実施可能と言うことは、X線発生効率の安定的な維持及び操作の簡便性という大きな利点となる。しかし、電子発生及びX線発生という見地からは、高濃度酸素、又は酸素を20数%含む大気を5Pa程度の低圧で充填することにより、それらの発生量を飛躍的に増大させることができるため、ガス漏れによる影響は相対的に小さくなる。
【実施例1】
【0026】
図8は、加熱・冷却ステージの上面として用意された銅の試料台の上に、Caを蒸着後に雰囲気酸化してCaO活性層の被膜を形成した厚さ4.5mmのグラファイト板を載せて、その活性層上に正の電気面を、厚さ5μm、直径37mmの銅薄膜からなるターゲットに対し、間隔21mmで対向させた面積100mm、厚さ5.0mmのLiNbO結晶体を置いた場合の昇温時のX線スペクトルを示すグラフである。なお、試料台からターゲットまでの構造を同軸的に包囲するX線取出し窓付きの密封容器の金属製周側壁がホローカソードの役目を果たしている。試験空間の圧力は10×10-3Paであった。 この例では、エネルギー8keV付近において、約520×10 カウントのX線量を検出することができた。
【0027】
この例による発生X線量が画期的な大きさであることは、同様な条件において、LiNbO結晶体のZ極性配置のみを本発明と逆の従来型とした場合のX線スペクトルグラフを示す図9を参照して容易に理解できるであろう。すなわち、図9のグラフではエネルギー約3~25keVの範囲で、約23 カウントという極微量のX線量しか検出できなかった。
【実施例2】
【0028】
図10は、加熱・冷却ステージの上面として用意された銅の試料台の上に、Caを蒸着後に雰囲気酸化してCaO活性層の被膜を形成した厚さ4.5mmのグラファイト板を載せ、その活性層上に正の電気面を、厚さ5μm、直径37mmの銅薄膜からなるターゲットに対し、間隔21mmで対向させた面積100mm、厚さ5.0mmのLiNbO結晶体を置いた場合の降温時のX線スペクトルを示すグラフである。なお、試料台からターゲットまでの構造を同軸的に包囲するX線取出し窓付きの密封容器の金属製周側壁がホローカソードの役目を果たしている。試験空間の圧力は10×10-3Paであった。 この例では、エネルギー約3~8keVの範囲で約70~180カウント、約8~16keVの範囲で約70カウント、約17keV付近のピークで約310 カウントのX線量を検出することができた。
【0029】
この例のX線量が十分な大きさであることは、同様な条件において、LiNbO結晶体のZ極性配置のみを本発明と逆の従来型とした場合のX線スペクトルグラフを示す図11を参照して容易に理解できるであろう。すなわち、図11のグラフではエネルギー約4~7keVの範囲で約40カウント前後、エネルギー約8keV付近のピークで約150 カウントというピーク比において、本発明の実施例2の場合の半分以下の発生X線量しか検出できなかった。
【0030】
以上述べた実施例においては、異極像結晶体の適切な表面処理が不可欠である。異極像結晶体の表面処理が不適切な場合には、温度変化により生じる電界が弱くなるからである。好ましくは、結晶体表面を、ハロゲン、特に塩素を含む溶媒(液体又はガス)中で超音波洗浄する。例えば、結晶体表面をトリクロロエチレン99.5%溶液中で、5分間以上洗浄すれば結晶より発生する電子エネルギーの強度を飛躍的に増大させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、以上述べたとおりに構成されたものであるため、従来の大型且つ低効率の電子銃でなく、小型結晶体で数10kV/mmという高電界を発生する画期的な異極像結晶体によるX線発生装置を提供するものであるため、これを元素分析、結晶解析、超小型X線顕微鏡等に用いることができる。また装置自体を小型化して口腔内からX線透視したり、生体内の透視等の医療分野に用いることができる。
【0032】
超小型であって、可搬性にも富むため、発掘現場等での考古学的な年代判定や、産廃汚染度(有害金属の有無)のチェック等にも利用可能である。また、逆に結晶体の表面積を大きくすれば、X線の面的発生による面的投影像を得ることができるため、X線検査の新たな利用可能性を開くものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】異極像結晶体を用いた従来のX線発生装置の代表的な形態を示す断面略図である。
【図2】本発明の基本構成原理を示す模式図である。
【図3】本発明の典型的な構成原理を示す模式図である。
【図4】高電界によるO2分子の遊離促進と励起電子の発生、及び加速のメカニズムを示す模式図である。
【図5】降温時においても、ターゲットからX線が発生するメカニズムを示す模式図である。
【図6】従来形の異極像結晶体(銅の上にZ-面を上向きにして載置されたLiNbO)X線源による昇温時のX線スペクトルS0と、本発明の異極像結晶体X線源による同一条件で測定されたX線スペクトルS1とを比較したグラフである。
【図7】本発明のX線発生装置の好ましい実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施例のX線発生スペクトルを示すグラフである。
【図9】上記実施例と同一条件で測定した従来型装置のX線発生スペクトルを示すグラフである。
【図10】本発明の別の実施例のX線発生スペクトルを示すグラフである。
【図11】上記別の実施例と同一条件で測定した従来型装置のX線発生スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0034】
10,20 結晶体
11,21 加熱・冷却ステージ
12,23 X線発生ターゲット
14,22 活性層
24 真空容器
25 固定台
26 吊り枠
27 X線透過窓
28 ホローカソード筒
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10