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明細書 :キチンナノファイバーの製造方法、キチンナノファイバーを含む複合材料および塗料組成物、ならびにキトサンナノファイバーの製造方法、キトサンナノファイバーを含む複合材料および塗料組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5186694号 (P5186694)
登録日 平成25年2月1日(2013.2.1)
発行日 平成25年4月17日(2013.4.17)
発明の名称または考案の名称 キチンナノファイバーの製造方法、キチンナノファイバーを含む複合材料および塗料組成物、ならびにキトサンナノファイバーの製造方法、キトサンナノファイバーを含む複合材料および塗料組成物
国際特許分類 D01F   9/00        (2006.01)
C09D 105/08        (2006.01)
FI D01F 9/00 ZNMA
C09D 105/08
請求項の数または発明の数 21
全頁数 18
出願番号 特願2010-543941 (P2010-543941)
出願日 平成21年6月30日(2009.6.30)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成20年7月1日 日本キチン・キトサン学会の「キチン・キトサン研究」第14巻第2号に掲載。
特許法第30条第1項適用 平成20年8月6日 日本キチン・キトサン学会主催の「第22回キチン・キトサンシンポジウム」にて発表
国際出願番号 PCT/JP2009/061929
国際公開番号 WO2010/073758
国際公開日 平成22年7月1日(2010.7.1)
優先権出願番号 2008334187
優先日 平成20年12月26日(2008.12.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年11月18日(2011.11.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】595004849
【氏名又は名称】大村塗料株式会社
発明者または考案者 【氏名】伊福 伸介
【氏名】斎本 博之
【氏名】矢野 浩之
【氏名】能木 雅也
【氏名】大村 善彦
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100084146、【弁理士】、【氏名又は名称】山崎 宏
【識別番号】100122301、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 憲史
【識別番号】100127638、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 美苗
【識別番号】100144923、【弁理士】、【氏名又は名称】中川 将之
審査官 【審査官】佐藤 健史
参考文献・文献 特開2009-102782(JP,A)
范一民 外2名,アルファおよびベータキチンナノファイバーの調製,繊維学会予稿集,日本,繊維学会,2008年 6月18日,Vol.63、No.1/2,33頁
調査した分野 D01F9/00、
C09D1/00~10/00、101/00~201/10、
D06M14/00~14/36
特許請求の範囲 【請求項1】
甲殻類由来のキチン含有材料を、
少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程に付し、
酸性試薬にて処理する工程に付し、次いで、
解繊工程に付す
ことを特徴とする、キチンナノファイバーの製造方法。
【請求項2】
酸性試薬が弱酸であり、処理工程におけるpHが3~4である請求項1記載の方法。
【請求項3】
解繊工程を石臼式摩砕機および高圧ホモジナイザーのいずれかまたは両方を用いて行う請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
甲殻類由来のキチン含有材料を、
少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程に付し、
弱酸での処理工程に付し、次いで、
解繊工程に付す
ことを特徴とする、キチンナノファイバーの製造方法であって、弱酸での処理工程におけるpHが3~4であり、解繊工程が石臼式摩砕機または高圧ホモジナイザーを用いて行われる請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
各工程を常に乾燥させずに行う請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載の方法により得られるキチンナノファイバー。
【請求項7】
ファイバーの幅が2nm~20nmである請求項6記載のキチンナノファイバー。
【請求項8】
繊維状態が伸びきり鎖結晶である請求項6または7記載のキチンナノファイバー。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項記載のキチンナノファイバーおよび樹脂を含む複合材料。
【請求項10】
熱膨張率が2x10-5-1以下に低減されている請求項9記載の複合材料。
【請求項11】
同じ厚さのキチンナノファイバー不含のものと比べて、600nmにおける透過率の損失が10%以下である請求項9または10記載の複合材料。
【請求項12】
請求項6~8のいずれか1項記載のキチンナノファイバーの存在下で樹脂モノマーを重合させることを特徴とする、複合材料の製造方法。
【請求項13】
請求項6~8のいずれか1項記載のキチンナノファイバーおよび水溶性樹脂またはエマルジョンを含む塗料組成物。
【請求項14】
請求項6~8のいずれか1項記載のキチンナノファイバーの水懸濁液と水溶性樹脂またはエマルジョンをブレンドすることを特徴とする、塗料組成物の製造方法。
【請求項15】
甲殻類由来のキチン含有材料を、
少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程
および少なくとも1回の脱アセチル化工程に付し、次いで、
解繊工程
に付すことを特徴とする、キトサンナノファイバーの製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法により得られるキトサンナノファイバー。
【請求項17】
ファイバーの幅が2nm~40nmである請求項16記載のキトサンナノファイバー。
【請求項18】
請求項16または17記載のキトサンナノファイバーおよび水溶性樹脂またはエマルジョンを含む塗料組成物。
【請求項19】
キトサンナノファイバーが請求項17記載のものである、請求項18記載の塗料組成物。
【請求項20】
請求項16または17記載のキトサンナノファイバーの水懸濁液と水溶性樹脂またはエマルジョンをブレンドすることを特徴とする、塗料組成物の製造方法。
【請求項21】
キトサンナノファイバーが請求項17記載のものである、請求項20記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、キチン含有生物由来の材料からキチンナノファイバーを製造する方法および該方法により得ることのできるキチンナノファイバー、ならびにキチンナノファイバーを含む複合材料および塗料組成物に関する。さらに本発明は、キチン含有生物由来の材料からキトサンナノファイバーを得る方法、ならびにキトサンナノファイバーを含む複合材料および塗料組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
ナノファイバーは、一般に数十ないし数百ナノメーターの径(幅)を有する極細繊維であり、従来の繊維と比べて格段に大きい表面積を有する等の特徴を有するため、新規かつ特殊な機能を発揮するものとして注目され、その利用が進められている。ナノファイバーの原料としては、ナイロン、ポリエステル等の高分子材料が主たるものであるが、最近では、環境への配慮から生物材料からナノファイバーを得て、これらを利用することについても盛んに研究がなされている。
【0003】
キチン、キトサンも生物由来のものであり、ナノファイバー化の研究が行われている。例えば、市販のキチンを回転デスク湿式粉砕機によりナノファイバーに解繊・乾燥する方法があるが(特許文献1、特許文献2)、市販のキチンは繊維間で極めて強固に水素結合を形成するため、物理的な負荷をかけても繊維を完全にほぐすことは困難であり、それゆえ繊維の形状が不揃いである。キトサンを溶媒中に溶解し、エレクトロスピニング(電解紡糸)でナノファイバーを紡糸している例もあるが(特許文献3、非特許文献1)、一度、キトサンを溶媒に溶解する必要があり、環境負荷が大きく、大量生産に不向きである。電解紡糸で得られる繊維は径が太く(繊維幅100nm以上)、不均一である。また電解紡糸法では大量生産が困難であり、エネルギーコストが高い。また、キチンは溶媒に不溶であるため、電解紡糸法ではキチンナノファイバーは製造できない。加水分解によりバイオナノファイバーを得る方法もあるが(非特許文献2)、酸処理によって繊維が寸断されてしまうため、繊維長が1μm以下に短くなってしまう。市販のキチンにTEMPO触媒を用いた酸化処理を施し、水への分散性を高め、超音波処理でナノファイバーを解繊する方法もあるが(非特許文献3)、この方法では酸化処理により加水分解され、繊維長が大幅に減少してしまう。得られたものはファイバーというよりは、ウィスカーに近いものである。そして酸化処理を行っているため、厳密には化学構造はキチンとは異なってしまう。イカの腱由来のキチンに酢酸を添加し、超音波処理でナノファイバー化する方法もある(特許文献4、非特許文献4)。イカ由来キチンは結晶化度が低いベータキチンであるためほぐれやすく、ナノファイバー化が可能であるが、カニ・エビ殻由来キチンは高結晶性で機械的強度が強いアルファキチンであるため、同様の処理を行ってもキチンナノファイバーは得られない。さらに、イカの腱はカニやエビの殻と比較して圧倒的に資源量が乏しいため、上記方法の実用化の可能性は低い。
【0004】
カニ、エビ等の甲殻類は外皮にキチンを豊富に含んでいる。しかも、エビ・カニは大量に消費されている。ほとんどの場合、これらの外皮は廃棄されている。そこで、これらの資源を有効利用するために、甲殻類からキチンを得て、ナノファイバーを製造する試みがいくつかなされている。しかし、これらの生物から、ありのままの状態の、細く、長く、しかも均質で結晶性、物性、処理操作の簡便さ、蓄積量のいずれにおいても優れたキチンナノファイバーは、得られていなかった。
【0005】
生物由来のナノファイバーの用途についても研究がなされており、実用化もされている。例えば、キトサンを利用した塗料が商品化されているが、キトサンが酸性溶液にしか溶けないので、キトサンを利用した塗料は金属には不向きである。また、キトサンは吸湿性が高いので、キトサンを利用した塗料は、夏場などでは空調設備のある場所で塗装をする必要がある。

【特許文献1】特開2003-155349号公報
【特許文献2】特開平4-281017号公報
【特許文献3】特開2007-236551号公報
【特許文献4】特開2009-102782号公報
【非特許文献1】Min B. et al., Polymer, 2004, 45, 7137
【非特許文献2】Gopalan N., et al., Biomacromolecules, 2003, 4, 657
【非特許文献3】Fan Y. et al, Biomacromolecules, 2008, 9, 192.
【非特許文献4】Fan Y. et al, Biomacromolecules, 2008, 9, 1919.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
キチン含有生物由来の材料から、細く、長く、しかも均質で結晶性、物性、処理操作の簡便さ、蓄積量のいずれにおいても優れたキチンナノファイバーを得ることが本発明の課題であった。そして、キチンナノファイバーの用途を開発することも本発明の課題であった。同様に、優れた性質を有するキトサンナノファイバーを得て、その用途を開発することも本発明の課題であった。例えば、従来のキトサン塗料の欠点をなくした塗料を開発することは、本発明の具体的課題の1つであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、キチン含有生物由来の材料から、ほとんど損傷のない状態の細く、長く、しかも均質で結晶性、物性、処理操作の簡便さ、蓄積量のいずれにおいても優れたキチンナノファイバーを得るための製造方法を開発した。キチンナノファイバーを複合材料に含ませることにより、従来のものよりも熱膨張が少なく、しかも光透過性および柔軟性が失われていない複合材料を製造することに成功した。さらに、キチンナノファイバーを塗料組成物に含ませることにより、従来のものより均一な塗膜を形成し、優れた接着性を有する塗料組成物を製造することに成功した。また、キチン含有生物由来の材料から、優れた特性を有するキトサンナノファイバー、ならびにキトサンナノファイバーを含む複合材料および塗料組成物を製造することにも成功した。
【発明の効果】
【0008】
本発明により得られるキチン含有生物由来の材料由来のキチンナノファイバーは、細く、長く、しかも均質で結晶性、物性、処理操作の簡便さ、蓄積量のいずれにおいても優れている。それゆえ、多くの用途に適用することができる。キチンナノファイバー、とりわけ本発明により得られるキチンナノファイバーを含有する複合材料は、従来のものよりも熱膨張が少なく、しかも光透過性および柔軟性が失われていないものである。キチンナノファイバー、とりわけ本発明により得られるキチンナノファイバーを含有する塗料組成物は、従来のものより均一な塗膜を形成し、優れた接着性を有するものである。さらに、本発明の塗料組成物は、中性の塗料組成物とすることができるので金属にも適用でき、しかも吸湿性が低く、塗装の際に空調が不要である。本発明にて得られるキトサンナノファイバー、それを含む複合材料および塗料組成物もまた優れた性質を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の方法により得られたカニ殻由来のキチンナノファイバーの走査電子顕微鏡(FE-SEM)による写真である。左は倍率2万倍、右は倍率7万倍である。
【図2】図2は、本発明の方法により得られたカニ殻由来のキチンナノファイバーの赤外分光光度計(FT-IR)によるスペクトルである。
【図3】図3は、本発明の方法により得られたカニ殻由来のキチンナノファイバーのX線散乱測定装置によるX線回折パターンである。
【図4】図4は、本発明の方法により得られたエビ殻由来のキチンナノファイバーの走査電子顕微鏡(FE-SEM)による写真である。倍率は3万倍である。
【図5】図5は、本発明の方法により得られたカニ殻由来のキチンナノファイバー含有複合材料の紫外可視分光光度計により透過率を測定した結果を示す図である。グラフ右の写真は、上が本発明のキチンナノファイバー含有複合材料の柔軟性を示すもので、下がキチンナノファイバーのシート(樹脂なし)である。
【図6】図6は、本発明の方法により得られたカニ殻由来のキチンナノファイバー含有複合材料の熱機械測定装置により熱膨張を測定した結果を示す図である。グラフ右の写真は、上が本発明のキチンナノファイバー含有複合材料の柔軟性を示すもので、下がキチンナノファイバーのシート(樹脂なし)である。
【図7】図7は、本発明の方法により得られたエビ殻由来のキトサンナノファイバーの走査電子顕微鏡(FE-SEM)による写真である。倍率は10万倍である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
したがって、本発明は下記のものを提供する。
(1)キチン含有生物由来の材料を、
少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程
に付し、次いで、
解繊工程
に付すことを特徴とする、キチンナノファイバーの製造方法。
(2)解繊工程の前に酸性試薬にて処理する工程をさらに含む、(1)記載の方法。
(3)酸性試薬が弱酸であり、処理工程におけるpHが3~4である(2)記載の方法。
(4)各工程を常に乾燥させずに行う(1)~(3)のいずれかに記載の方法
(5)キチン含有生物が甲殻類である(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)(1)~(5)のいずれかに記載の方法により得られるキチンナノファイバー。
(7)ファイバーの幅が2nm~20nmである(6)記載のキチンナノファイバー。
(8)繊維状態が伸びきり鎖結晶である(6)または(7)記載のキチンナノファイバー。
(9)キチンナノファイバーおよび樹脂を含む複合材料。
(10)熱膨張率が2x10-5-1以下に低減されている(9)記載の複合材料。
(11)同じ厚さのキチンナノファイバー不含のものと比べて、600nmにおける透過率の損失が10%以下である(9)または(10)記載の複合材料。
(12)キチンナノファイバーが(6)~(8)のいずれかに記載のものである、(9)~(11)のいずれかに記載の複合材料。
(13)キチンナノファイバーの存在下で樹脂モノマーを重合させることを特徴とする、複合材料の製造方法。
(14)キチンナノファイバーが(6)~(8)のいずれかに記載のものである、(13)記載の方法。
(15)キチンナノファイバーおよび水溶性樹脂またはエマルジョンを含む塗料組成物。
(16)金属用である(15)記載の塗料組成物。
(17)キチンナノファイバーが(6)~(8)のいずれかに記載のものである、(15)または(16)記載の塗料組成物。
(18)キチンナノファイバーの水懸濁液と水溶性樹脂またはエマルジョンをブレンドすることを特徴とする、塗料組成物の製造方法。
(19)キチンナノファイバーが(6)~(8)のいずれかに記載のものである、(18)記載の方法。
(20)キチン含有生物由来の材料を、
少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程
および少なくとも1回の脱アセチル化工程に付し、次いで、
解繊工程
に付すことを特徴とする、キトサンナノファイバーの製造方法。
(21)各工程を常に乾燥させずに行う(20)記載の方法。
(22)(20)または(21)記載の方法により得られるキトサンナノファイバー。
(23)ファイバーの幅が2nm~40nmである(22)記載のキトサンナノファイバー。
(24)キトサンナノファイバーおよび水溶性樹脂またはエマルジョンを含む塗料組成物。
(25)キトサンナノファイバーが(23)記載のものである、(24)記載の塗料組成物。
(26)キトサンナノファイバーの水懸濁液と水溶性樹脂またはエマルジョンをブレンドすることを特徴とする、塗料組成物の製造方法。
(27)キトサンナノファイバーが(23)記載のものである、(26)記載の方法。
【0011】
本発明は、1の態様において、
キチン含有生物由来の材料を、
少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程
に付し、次いで、
解繊工程
に付すことを特徴とする、キチンナノファイバーの製造方法を提供する。
【0012】
本発明のキチンナノファイバーはキチン含有生物由来の材料から得ることができる。キチン含有生物としては、甲殻類、昆虫類またはオキアミなどが例示されるが、これらに限定されない。本発明のキチンナノファイバーの原料となるキチン含有生物由来の材料は、例えば、昆虫類の外皮、オキアミなどの殻、甲殻類の殻および外皮などが挙げられる。キチン含有生物由来の材料としては、キチン含量の多い生物、例えば、エビ、カニなどの甲殻類の殻および外皮が好ましい。エビ、カニの甲羅、殻などは、消費後に廃棄される部分のほとんどを占める。そのうえ、エビやカニは大量に消費されるので、エビやカニの外皮は大量に得ることができ、好都合である。
【0013】
生体中のキチンナノファイバーは、その周囲および間隙に存在する蛋白および炭酸カルシウムを含むマトリクスを有しているので、脱マトリクス処理を行わなければ得ることができない。本発明のキチンナノファイバーの製造方法によれば、生体内のキチンナノファイバーをありのままの状態で単離・抽出することが可能である。そのため、本発明の製造方法により得られるキチンナノファイバーは、細くて均質であり、長く、分子が伸びきり鎖結晶で強度が高いものである。伸びきり鎖結晶とは、剛直性の高分子が伸びきった状態で規則正しく配列し、束になった繊維状の結晶のことであり、欠陥が少ないため強靭な物性を発揮することが可能である。特に、エビやカニなどの甲殻類のキチンは結晶性の高いアルファキチンであるため、本発明においてエビやカニなどの甲殻類の殻を原料にして得られるキチンナノファイバーは、上記の優れた特性が顕著である。
【0014】
脱蛋白により、キチンナノファイバーを囲んでマトリックスを形成している蛋白が除去される。脱蛋白処理には、アルカリ処理法、プロテアーゼなどのタンパク質分解酵素法などがあるが、アルカリ処理法が好適である。アルカリ処理による脱蛋白において、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリの水溶液が好ましく用いられ、その濃度は、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は約2~約10%(w/v)、好ましくは約3~約7%(w/v)、例えば約5%(w/v)である。アルカリ処理による脱蛋白の温度は、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は約80℃以上、好ましくは約90℃以上、さらに好ましくはアルカリ水溶液を還流しながら行う。処理時間も、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は数時間~約3日間、好ましくは数時間~約2日間行ってもよい。
【0015】
脱灰により、キチンナノファイバーを囲んでいる灰分、主に炭酸カルシウムが除去される。脱灰処理には、酸処理法、エチレンジアミン4酢酸処理法などがあるが、酸処理法が好適である。酸処理による脱灰において、塩酸の酸の水溶液が好ましく用いられ、その濃度は、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は約4~約12%(w/v)、好ましくは約5~約10%(w/v)である。酸処理による脱蛋白の温度は、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は約10~約50℃、好ましくは約20~約30℃、例えば室温であってもよい。酸処理による脱灰時間も、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は数時間~数日間、好ましくは約1~約3日、例えば2日間行ってもよい。
【0016】
次いで、上記工程で得られた外皮(ほとんどがキチンナノファイバーとなっている)を解繊処理し、目的のキチンナノファイバーを得る。キチンナノファイバーは乾燥すると水素結合して強固に凝集するため、本発明のキチンナノファイバーの製造方法の各工程を、材料を常に乾燥させずに行うことが好ましい。解繊処理には、石臼式摩砕器、高圧ホモジナイザー、凍結粉砕装置などの装置を用いることができ、好ましくは石臼式磨砕機などによりグラインダー処理を行う。石臼式磨砕機などのような、より強い負荷をかけることができる装置を用いれば、カニやエビなどの殻由来のアルファキチンでも速やかに解繊することができる。その後、得られたキチンナノファイバーを水などの水性媒体に分散させてもよい。
【0017】
上記のキチンナノファイバーの製造方法において、必要ならば、あるいは所望により、脱色工程を行ってもよい。脱色工程は、上記方法のいずれの段階において行ってもよいが、好ましくは、脱蛋白および脱灰処理が終わった後に行う。脱色はいずれの方法で行ってもよいが、塩素系漂白剤や酸素系漂白剤、還元系漂白剤の使用が好ましく、例えば、酢酸緩衝液などの緩衝液中約1~約2%の次亜塩素酸ナトリウムを用いて、約70~約90℃で数時間行ってもよい。
【0018】
さらに、脱蛋白工程、脱灰処理工程、脱色工程、解繊工程および以下に説明する酸性試薬での処理を効率よく行うために、粉砕工程を行ってもよい。粉砕工程は、上記方法のいずれの段階において行ってもよいが、好ましくは、解繊工程の直前に行う。粉砕工程はいずれの方法で行ってもよいが、ホモジナイザー処理やミキサー処理などの方法が好ましく、例えば、家庭用フードプロセッサーにより行ってもよい。
【0019】
上記の脱蛋白工程、脱灰処理工程、脱色工程、粉砕工程などの工程は、繰り返し、複数回、あるいは交互に行ってもよい。また、それぞれの行程は順序を問わない。
【0020】
さらに、必要ならば、あるいは所望により、脱灰処理されたキチン含有材料を酸性試薬にて処理することにより、キチンナノファイバーの水分散性を向上させてもよい。酸性試薬での処理方法は特に限定されず、材料に酸性試薬を浸透させる方法であればよい。酸性試薬での処理は、典型的には酸の水溶液に脱灰処理されたキチン含有材料を浸漬することにより行うことができる。この工程では、水分散性の向上のみならず、キチンナノファイバーの繊維の幅(または径)のばらつきを抑えることもできる。この工程に使用できる酸はいずれの酸であってもよく特に限定されないが、弱酸が好ましい。弱酸としては、酢酸、蟻酸、クロロ酢酸、フルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、クエン酸、マロン酸、アスコルビン酸などが挙げられるがこれらに限らない。この工程に使用される好ましい弱酸は酢酸である。この工程において弱酸の水溶液のpHを通常は約2~約5、好ましくは約2.5~約4.5、例えば、約3~約4に調節する。この工程の温度は、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は約10~約50℃、好ましくは約20~約30℃、例えば、室温であってもよい。この工程の処理時間も、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は1時間~約1日、好ましくは約3~約12時間、例えば、一晩であってもよい。この酸による処理工程は、解繊工程の前であればいずれの段階で行ってもよいが、脱蛋白および脱灰の後、キチンナノファイバーの精製がある程度進んだ段階で行うことが好ましく、例えば、解繊工程の直前に行ってもよい。
【0021】
本発明は、もう1つの態様において、上記製造方法により得られるキチンナノファイバーを提供する。上述のように、本発明の製造方法によれば、生体内のキチンナノファイバーをありのままの状態で単離・抽出することが可能であり、本発明の製造方法により得られるキチンナノファイバーは、細くて均質であり、しかも極めて長く、繊維が伸びきり鎖微結晶で強度が高いものである。したがって、本発明の製造方法により得られるキチンナノファイバーは、物性、処理操作の簡便さ、蓄積量のいずれにおいても優れている。それゆえ、多くの用途に適用することができる。本発明により得られるキチンナノファイバーの幅(または径)は、通常は、約2nm~約30nm、好ましくは約2nm~約20nm、例えば、5nm~20nmである。ここで、例えば、「キチンナノファイバーの幅(または径)は約2nm~約20nm」とは、電子顕微鏡観察にて観察した場合に,幅(または径)が約2nm~約20nm以下であるファイバーが全体の約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上を占める状態をいう。さらに、後述するキトサンナノファイバーの幅(または径)についても同様である。
【0022】
キチンナノファイバーは結晶性が高いので、他のナノファイバーには見られない優れた物性を有している。そして、上述のごとく、甲殻類、特にエビやカニの甲羅や殻は大量に廃棄されており、これらから有用なキチンナノファイバーを得ることは環境に優しい技術であるうえ、コスト的にも有利である。さらに、上述のごとく、本発明により得られるキチンナノファイバーは、優れた物性を備えている。そのため本発明は、本発明により得られるキチンナノファイバーのかかる優れた物性を樹脂や塗料に応用するものである。
【0023】
したがって、本発明は、さらにもう1つの態様において、キチンナノファイバーおよび樹脂を含む複合材料ならびにその製造方法を提供する。本発明の複合材料およびその製造方法において用いられるキチンナノファイバーは特に限定されないが、上で説明した本発明の方法により得られるキチンナノファイバーが好ましい。本発明の方法により製造されるキチンナノファイバーは、繊維状態が伸びきり鎖結晶であるため強度的にも強く、フレキシビリティーがあり、キチンナノファイバーの幅(または径)が比較的狭く、通常は、約2nm~約30nm、好ましくは約2nm~約20nmである。そのため、本発明の方法により得られるキチンナノファイバーを用いた場合には、複合材料は一層補強されたものとなり、柔軟性も増加し、光の透過性(透明性)も向上したものとなる。これらの特徴は、複合材料がプラスチックの場合に特に有利である。なお、複合材料とは、一般的には2種類以上の基材を組み合わせて一体化した材料をいう。本発明における複合材料は、キチンナノファイバーを他の基材と組み合わせたものであればいずれの種類の複合材料であってもよく、例えば、キチンナノファイバーを含むプラスチックまたは樹脂、キチンナノファイバーと生体材料との組合せ、キチンナノファイバーの紙への配合、キチンナノファイバーと天然または合成繊維との組合せなどが例示される。
【0024】
本発明のキチンナノファイバーを含有する複合材料は、キチンナノファイバーを他の材料と混合し、一体化させることにより製造することができる。他の材料は、複合材料の用途や必要な物性等に応じて、適宜選択することができ天然材料、人工材料のいずれであってもよい。キチンナノファイバーと他の材料との混合、一体化の方法も当該分野において公知の方法であってよく、適宜選択することができる。以下に、本発明の複合材料の一例としてプラスチックを製造する場合について説明する。本発明のキチンナノファイバー含有プラスチックは、キチンナノファイバーの存在下で樹脂モノマーを重合させることにより製造することができる。樹脂モノマーの種類、重合開始剤の種類は、当業者が適宜選択することができる。本発明のプラスチックの製造に使用できる樹脂モノマーとしては、モノアクリレート系モノマー、ジアクリレート系モノマー、トリアクリレート系モノマー、モノメタクリレート系モノマー、ジメタクリレート系モノマー、トリメタクリレート系モノマー、エポキシ樹脂系モノマー、フェノール樹脂系モノマー、メラミン樹脂系モノマー、ポリエステル系モノマー、ポリイミド系モノマー、等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の複合材料の製造に使用できる重合開始剤としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトンや2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルプロパン-1-オンやアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等が挙げられるが、これらに限定されない。キチンナノファイバー、樹脂モノマー、および重合開始剤の割合は、求めるプラチックの強度、柔軟性、透明性などの性質により、適宜選択することができる。本発明のキチンナノファイバー含有プラスチック製造の具体的手順を例示する。先ず、キチンナノファイバーの水性懸濁液を濾過、圧縮、乾燥などの公知の方法により脱水し、所望の形状(例えば、シート状、フィルム状など)に成形する。この工程で用いる濾過、圧縮、乾燥のための手段、方法も公知である。次に、所望の形状に成形されたキチンナノファイバーを、重合開始剤を含む樹脂モノマーに浸す。この工程で重合開始剤を含む樹脂モノマーがキチンナノファイバーに注入される。この注入工程において減圧にして樹脂モノマーの注入を促進してもよい。そして、樹脂モノマーが注入されたキチンナノファイバー中の重合開始剤を反応させてプラスチックを得ることができる。重合反応条件は、樹脂モノマー、重合開始剤の種類、所望のプラスチックの形状、サイズに応じて適宜選択することができる。また、上記説明では、本発明のプラスチックの形状としてシート状、フィルム状などを例示したが、公知の手段・方法を用いて、粉体状、ファイバー状、棒状、ブロック状、スポンジ状、ペレット状などの他の形状に成形することもできる。さらに、本発明のプラスチックの改質および機能付与のために添加剤(例えば、難燃剤、可塑剤、充填・補強材、軽量性付与材、核剤、硬化剤、耐衝撃性付与剤、カップリング剤、発泡剤、着色剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、導電性付与剤、抗菌・防カビ剤、防曇剤、滑剤、重金属不活性化剤など)や着色剤を適宜含ませてもよい。
【0025】
上述のごとく、本発明のキチンナノファイバー含有複合材料は、キチンナノファイバーを含まないものよりも補強されたものとなっている。本発明により得られるキチンナノファイバー含有複合材料は、熱膨張性が低減されたものであってもよい。含有するキチンナノファイバーの量にもよるが、熱膨張率が、例えば50×10-5/℃以下、好ましくは約30×10-5/℃以下、より好ましくは約10×10-5/℃以下、さらに好ましくは約2×10-5/℃以下に低減されているものを得ることができる。なお、本発明により得られるキチンナノファイバー含有複合材料の熱膨張性は公知の手段、例えば熱機械測定装置(TMA)を用いて測定することができる。また、本発明により得られるキチンナノファイバー含有複合材料は、キチンナノファイバーの性質を反映して、強度のみならず柔軟性も増強される。
【0026】
本発明により得られるキチンナノファイバー含有複合材料は、キチンナノファイバー不含の場合と比べて光の透過性(透明性)の低下が少ない。特に、キチンと同じまたは同程度の屈折率を有する樹脂を用いて複合材料を製造することにより、光の透過性(透明性)の低下が少ないものが得られる。キチンと同じまたは同程度の屈折率を有する樹脂の例としては、トリシクロデカンメタノールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメアクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明により得られるキチンナノファイバー含有複合材料は、樹脂の種類、含有するキチンナノファイバーの量にもよるが、可視光における直線透過率が、例えば約70%以上、好ましくは約75%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは85%以上のものを得ることができる。なお、本発明により得られるキチンナノファイバー含有複合材料の可視光における直線透過率は、例えば紫外可視分光光度計を用いて測定することができる。さらに、本発明により得られるキチンナノファイバー含有複合材料は、樹脂の種類、含有するキチンナノファイバーの量、複合材料の厚みにもよるが、同じ厚さのキチンナノファイバー不含のものと比べて、可視光の透過率の損失、例えば600nmにおける透過率の損失が、例えば約10%以下、好ましくは約5%以下、さらに好ましくは約2%以下のものを得ることができる。なお、本発明により得られるキチンナノファイバー含有複合材料の特定波長における光の透過率も、例えば紫外可視分光光度計を用いて測定することができる。
【0027】
したがって、本発明の複合材料は、強度や透明度が要求される用途に好適であり、特に、従来から用いられているプラスチックに代えて使用することができる。その代表的な使用例としては、様々な日用品;携帯電話、パソコン、照明器具等の電子機器の外側部分やパーツ;自動車、船舶、飛行機等の乗り物のボディー;ラケット、ゴルフクラブ、釣り竿等のスポーツ用品などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明はまた、キチンナノファイバーおよび水溶性樹脂またはエマルジョンを含む塗料組成物ならびにその製造方法を提供する。キチンは各種溶剤に対して不溶であるが、キチンナノファイバーは溶媒への分散性が高いので、塗料組成物への利用が可能である。本発明の塗料組成物ならびにその製造方法に用いる好ましいキチンナノファイバーは、本発明の製造方法により製造されるキチンナノファイバーである。本発明の製造方法により製造されるキチンナノファイバーは均質であり、その幅(または径)が通常約2nm~約30nm(好ましくは約2nm~約20nm)であるためナノサイズ効果が大きく、溶媒に対する分散性が極めて高いので、塗料組成物への利用に好適である。
【0029】
キチンナノファイバーは、カチオン荷電性を有し、金属吸着性、顔料吸着性、抗菌性、耐溶剤性、造膜性に優れ、また反応性にも富んでいる。したがって、本発明の製造方法により得られるキチンナノファイバーおよび水溶性樹脂またはエマルジョンを含む塗料組成物は、従来にはなかった新たな機能性を有するものと考えられる。さらに、本発明の製造方法により得られるキチンナノファイバーおよび水溶性樹脂またはエマルジョンを含む塗料組成物は、均一な塗膜を形成し、種々の被塗物に対し優れた付着性を有する。
【0030】
さらに、キトサンのようなカチオン性高分子と相溶性を有する水溶性樹脂あるいはエマルジョンは極めてまれであり、塗料組成としては非常に不利であった。一方、キチンナノファイバーはほぼ中性の高分子であるため、幅広い樹脂との混合が可能である。既に商品化されているキトサン含有塗料は酸性塗料(キトサンは酸性溶液にしか溶けない)であるため、金属表面への塗装は一般的に不向きである。また、建材や家具などの木部への塗装についても、釘など金属を複合している場合は使用が避けられていた。一方、キチンナノファイバーを用いることによって、中性条件での塗料化が可能となり、金属に対する塗装が容易となった。したがって、本発明の塗料組成物は金属用とすることも可能である。
【0031】
既に商品化されているキトサン塗料は吸湿性が極めて高く、高湿度雰囲気下では塗膜表面に水滴が生じてしまう(ブラッシング現象)ため、夏場など湿度の高い時期では空調を設備した塗装ブース内で塗装を行う必要があった。一方、キチンナノファイバーキトサンよりも極性が低く、高結晶性であるため、吸湿性がキトサンほど高くないので、本発明の塗料組成物はそのような空調設備を必要としない。
【0032】
本発明のキチンナノファイバーおよび水溶性樹脂またはエマルジョンを含む塗料組成物の一般的な製造方法の例としては、本発明の製造方法により得られるキチンナノファイバーの水懸濁液と、水溶性樹脂またはエマルジョンをブレンドする工程を含む方法が挙げられる。ブレンドは、公知の方法、例えば、混合、混和、撹拌、超音波処理、分散、超臨界などの処理によって行うことができる。ブレンド対象の水溶性樹脂およびエマルジョンは、キチンナノファイバー水懸濁液と混合可能あるいは相溶性を有する水溶性合成樹脂、天然水溶性樹脂、合成樹脂エマルジョン、天然樹脂エマルジョンであればいずれのものであってもよい。本発明の塗料組成物の製造に使用できる水溶性合成樹脂の例としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアミンサルホン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸/マレイン酸共重合体塩、アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体塩などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の塗料組成物の製造に使用できる天然水溶性樹脂としては、キトサン、カルボキシメチルキトサン、ヒドロキシメチルキトサン、ヒドロキシエチルキトサン、ヒドロキシプロピルキトサン等のキトサン誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、デキストラン、プルラン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、コンドロイチン硫酸、タンニン酸、カラギーナン、ペクチン、アラビアゴム、グァーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、キサンタンガム、カードラン、コラーゲン、フコイダン、ポリグルタミン酸、ポリリジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の塗料組成物の製造に使用できる合成樹脂エマルジョンとしては、酢酸ビニルホモポリマー系、酢酸ビニル・アクリルコポリマー系、エチレン・酢酸ビニルコポリマー系、アクリル系、アクリル・スチレン系等のエマルジョンさらにはこれらのウレタン、シリコーン、フッ素モノマーまたはプレポリマー共重合体などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の塗料組成物の製造に使用できる天然樹脂エマルジョンとしては、ガムロジン系、ウッドロジン系、トール油ロジン系、テルペン樹脂系、セラック樹脂系、カゼイン系、コーパルゴム系、カルナバワックス系、タラカントガム系などが挙げられるが、これらに限定されない。水溶性樹脂またはエマルジョンの種類、キチンナノファイバーと水溶性樹脂またはエマルジョンとのブレンド割合、ブレンド温度、時間などの条件は、当業者が適宜選択できるものである。
【0033】
さらに、上記製造方法において、キチンと同じかまたは同程度の屈折率を有するブレンド用樹脂またはエマルジョンを選択することにより、塗膜形成後に透明で導光性に優れた透明性の高い皮膜を得ることができる。キチンと同じかまたは同程度の屈折率を有するブレンド用樹脂の例としては、ポリスチレン、アクリル・スチレン共重合体さらにはこれらのウレタン、シリコーン、フッ素モノマーまたはプレポリマー共重合体などが挙げられるが、これらに限定されない。また、キチンと同じかまたは同程度の屈折率を有するエマルジョンの例としては、スチレン系、アクリル・スチレン系等のエマルジョンさらにはこれらのウレタン、シリコーン、フッ素モノマーまたはプレポリマー共重合体などが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、キチンと同じかまたは同程度の屈折率を有するブレンド用有機系樹脂ビーズまたは無機系粉体を選択することにより、塗膜形成後に透明で強度と導光・散乱性に優れた透明性の高い皮膜を得ることができる。キチンと同じかまたは同程度の屈折率を有するブレンド用樹脂ビーズの例としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル・スチレン共重合体さらにはこれらのウレタン、シリコーン、フッ素モノマーまたはプレポリマー共重合体などが挙げられるが、これらに限定されない。また、キチンと同じかまたは同程度の屈折率を有する無機系粉体としてはガラス粉砕物、石英、雲母等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明の樹脂組成物を着色する目的で顔料を添加してもよい。添加する顔料の例としては、天然無機顔料や合成無機顔料、セラミック顔料に代表される無機顔料、例えば、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウムおよびバライト粉、鉛丹、酸化鉄赤、黄鉛・クロム黄[1]、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)、カーボンブラック、カーボンブラックジルコングレー、プラセオジムイエロー、クロムチタンイエロー、クロムグリーン、ピーコック、ビクトリアグリーン、紺青、バナジウムジルコニウム青、クロム錫ピンク、陶試紅、サーモンピンク等が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、アゾ系顔料や多環式系顔料に代表される有機顔料、例えば、アントラキノン、キナクリドン、ジケト-ピロロ-ピロール、ペリレン、インジゴイド、ペリノン、ペリレン、ピラゾロン、ピランスロン、イミダゾロン、ジケト-ピロロ-ピロール、キノフタロン、イソインドリノン、ピラゾロン、イミダゾロン、フラバトロン、フタロシアニン、ペリレン、ニトロソ、カルボニウム、フタロシアニン、アントラキノン、インジゴイド、カルボニウム、キナクリドン、ジオキサジン、アントラキノン、ペリレン、イミダゾロン、インジゴイド、キサンテン、カルボニウム、ビオランスロンなどを添加してもよいが、これらに限定されない。
【0035】
増量的な意味で、本発明の塗料組成物に炭酸カルシウム、タルク、パーライトなどのいわゆる体質顔料を添加してもよい。さらに本発明の塗料組成物に、分散剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤などの添加剤を適宜加えてもよい。
【0036】
本発明はもう1つの態様において、キチン含有生物由来の材料を、少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程および少なくとも1回の脱アセチル化工程に付し、次いで、解繊工程に付すことを特徴とする、キトサンナノファイバーの製造方法を提供する。脱蛋白工程、脱灰工程、解繊工程については、キチンナノファイバーの製造に関して上で説明したのと同様である。なお、本発明において、脱蛋白工程と脱アセチル化工程を同時に行うことも可能である。さらに、既に脱蛋白工程および脱灰工程を行った市販のキチン粉末を脱アセチル化工程に付すことによって、キトサンナノファイバーを製造することも可能である。脱アセチル化方法はいくつかの方法が公知であるが、アルカリ処理法が好適である。アルカリ処理による脱アセチル化において、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリの水溶液が好ましく用いられ、その濃度は、通常は約20~約50%(w/v)、好ましくは約30~約40%(w/v)、例えば約40%(w/v)である。アルカリ処理による脱アセチル化の温度は、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は約80℃以上、好ましくは約90℃以上、さらに好ましくはアルカリ水溶液を還流しながら行う。処理時間も、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は30分~約3日間、好ましくは30分~一晩行ってもよい。なお、キトサンナノファイバーは乾燥すると水素結合して強固に凝集するため、本発明のキトサンナノファイバーの製造方法の各工程を、材料を常に乾燥させずに行うことが非常に好ましい。
【0037】
本発明は、さらなる態様において、キトサンナノファイバーおよび樹脂を含むプラスチックなどの複合材料、ならびにキトサンナノファイバーおよび水溶性樹脂またはエマルジョンを含むペンキなどの塗料組成物を提供する。かかる複合材料や塗料組成物に使用するキトサンナノファイバーはいずれのものであってもよく、特に限定されない。しかしながら、本発明の方法により製造されるキトサンナノファイバーは、繊維状態が伸びきり鎖結晶であるため強度的にも強く、フレキシビリティーがあり、その幅(または径)が比較的狭くて揃っているため、本発明の複合材料や塗料組成物に好ましく用いることができる。本発明の上記製造方法により製造されるキトサンナノファイバーの幅(または径)は、通常は約2nm~約40nmである。本発明の上記製造方法により得られるキトサンナノファイバーを含む複合材料は、キトサンナノファイバーを含まないものと比べて強度が増したものとなり、透明度の高いものを得ることができる。本発明のキトサンナノファイバーを含む複合材料の例としては、プラスチックなどが挙げられる。本発明のキトサンナノファイバーを含む複合材料の用途は、キチンナノファイバーを含む複合材料に関して上で説明したのと同様である。また、本発明の上記製造方法により得られるキトサンナノファイバーを含む塗料組成物は、均一な塗膜を形成し、種々の被塗物に対し優れた付着性を有する。
【0038】
本発明は、さらなる態様において、キトサンナノファイバーおよび樹脂を含む複合材料の製造方法、ならびにキトサンナノファイバーおよび水溶性樹脂またはエマルジョンを含む塗料組成物の製造方法を提供する。これらの製造方法は、キチンナノファイバーのかわりにキトサンナノファイバーを用いること以外は、上述のキチンナノファイバーおよび樹脂を含む複合材料の製造方法、ならびにキチンナノファイバーおよび水溶性樹脂またはエマルジョンを含む塗料組成物の製造方法と同様である。
【0039】
以下に、実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものと解してはならない。なお、特に断らないかぎり、実施例における%は重量/体積%である。
【実施例1】
【0040】
カニ殻からのキチンナノファイバーの製造(1)
乾燥カニ殻(カナダ産、川井肥料より購入、100g)を5% KOH水溶液に加え、6時間還流し、カニ殻中のタンパク質を除去した。処理したカニ殻を濾過した後、中性になるまで水でよく洗浄した。カニ殻を7% HCl水溶液で室温下、2日間撹拌し、カニ殻中の灰分を除いた。再びカニ殻を濾過して中性になるまで水でよく洗浄した。1.7%のNaClOの0.3M酢酸ソーダ緩衝溶液に処理カニ殻を加え、80℃、6時間撹拌し、カニ殻に含まれる色素分を除去した。再びカニ殻を濾過して中性になるまで水でよく洗浄した。カニ殻を水に分散させ、分散液を家庭用ミキサーで砕いた後、酢酸を添加してpHを3~4に調製し、一晩撹拌した。酢酸処理されたカニ殻を石臼式摩砕機(スーパーマスコロイダー(MKCA 6-2))に供し、キチンナノファイバーに解繊させた。キチンナノファイバーの収率は12%であった。また、元素分析により得られたキチンナノファイバーのN-アセチル基の置換度は95%であった。
【0041】
得られたキチンナノファイバーを走査電子顕微鏡(FE-SEM)(JSM-6700F、JEOL)にて観察した。繊維の大部分は幅約20nm以下で、幅10nm程度の非常に細くて長い均質なナノファイバーが多く認められた(図1)。赤外分光光度計(FT-IR)を用いて得られたナノファイバーの評価を行ったところ、タンパク質や炭酸カルシウム分の無い精製されたキチンであることが確かめられた(図2)。X線散乱測定装置(XRD6000、Shimadzu)を用いて得られたキチンナノファイバーの評価を行ったところ、α型の結晶性ナノファイバーであることが確かめられた(図3)。
【実施例2】
【0042】
カニ殻からのキチンナノファイバーの製造(2)
乾燥カニ殻(カナダ産、川井肥料より購入、100g)を5% KOH水溶液に加え、6時間還流し、カニ殻中のタンパク質を除去した。処理したカニ殻を濾過した後、中性になるまで水でよく洗浄した。カニ殻を7% HCl水溶液で室温下、2日間撹拌し、カニ殻中の灰分を除いた。再びカニ殻を濾過して中性になるまで水でよく洗浄した。カニ殻を5% KOH水溶液に加え、2日間還流し、カニ殻中のタンパク質を除去した。1.7%のNaClOの0.3M酢酸ソーダ緩衝溶液に処理カニ殻を加え、80℃、6時間撹拌し、カニ殻に含まれる色素分を除去した。再びカニ殻を濾過して中性になるまで水でよく洗浄した。カニ殻を水に分散させ、分散液を家庭用ミキサーで砕いた後、酢酸を添加してpHを3~4に調製し、一晩撹拌した。酢酸処理されたカニ殻を石臼式摩砕機(スーパーマスコロイダー(MKCA 6-2))に供し、キチンナノファイバーに解繊させた。得られたキチンナノファイバーを1%キチンナノファイバー水分散液とした。キチンナノファイバーの収率は12.1%であった。
【実施例3】
【0043】
エビ殻からのキチンナノファイバーの製造
新鮮なブラックタイガーの殻(10g)を5% KOH水溶液に加え、6時間還流し、エビ殻中のタンパク質を除去した。処理したエビ殻を濾過した後、中性になるまで水でよく洗浄した。エビ殻を7% HCl水溶液で室温下、2日間撹拌し、エビ殻中の灰分を除いた。再びエビ殻を濾過して中性になるまで水でよく洗浄した。1.7%のNaClOの0.3M酢酸ソーダ緩衝溶液に処理カニ殻を加え、80℃、6時間撹拌し、エビ殻に含まれる色素分を除去した。再びエビ殻を濾過して中性になるまで水でよく洗浄した。エビ殻を水に分散させ、分散液を家庭用ミキサーで砕いた後、エビ殻を石臼式摩砕機(スーパーマスコロイダー(MKCA 6-2))に供し、キチンナノファイバーに解繊させた。キチンナノファイバーの収率は16.7%であった。得られたキチンナノファイバーを走査電子顕微鏡(FE-SEM)(JSM-6700F、JEOL)にて観察した。繊維の大部分は幅約20nm以下で、幅10nm程度の非常に細くて長い均質なナノファイバーが多く認められた(図4)。
【実施例4】
【0044】
キチンナノファイバー含有複合材料の製造
0.7%のキチンナノファイバー(実施例1で得られた)の水懸濁液を濾過し、得られたシート状成形物を目の細かい金網シートに挟んでおもりを乗せ,80℃で一晩乾燥させた。乾燥したキチンナノファイバーシートを2x3cmにカットして、重合開始剤(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン)を5%加えたジメタクリレート樹脂モノマー(NK エステルDCP(新中村化学工業製))(屈折率n:1.556)に浸し、5mmHg以下で一晩、減圧注入した。樹脂モノマーを注入したキチンナノファイバーシートを取り出し、スライドガラスにはさみ、UV照射装置(スポットキュア、ウシオ電気製)を用いて樹脂を硬化させた。照射エネルギーは20J/cmとした。得られたキチンナノファイバー含有フィルムをスライドガラスから丁寧に剥がした。
【0045】
上記の方法によって、作成したキチンナノファイバー含有フィルムは厚さ69μm、繊維含有率約63%であった。紫外可視分光光度計(UV-4100、Hitachi High-Tech.Corp.)を用いて、上で得られたキチンナノファイバー含有フィルムの透明性の評価を行ったところ、可視光における直線透過率は88%と、非常に透明性の高い材料であることが確かめられた。例えば、キチンナノファイバーを含まない透明複合材料と比較して、キチンナノファイバーによる透過率の損失は波長600nmにおいて、わずか1.8%であった(図5)。熱機械測定装置(TMA)(TM/SS6100、SII Nanotechnology Inc.)を用いてキチンナノファイバー含有フィルムの熱膨張性を評価した。測定温度範囲:20~165℃、昇温速度5℃/分とした。その結果、キチンナノファイバーを含まないフィルムの熱膨張率は10.9×10-5/℃であったが、キチンナノファイバー含有フィルムの熱膨張率は1.6×10-5/℃であり、熱膨張を85%も低減することができた(図6)。これはキチンナノファイバーが低熱膨張性(熱膨張率:0.7×10-5/℃)であるため、複合化によって、フィルムの膨張を抑えるためである。しかも、図5および図6の写真に示すように、作成したキチンナノファイバー含有フィルムは柔軟性を有し、写真に示す程度の曲げでは折れ、ひび、白濁等の変化は見られなかった。
【0046】
このように、本発明により得られたキチンナノファイバー含有フィルムは、透明性が高く、強度が高く、しかも柔軟性のあるものであった。
【実施例5】
【0047】
キチンナノファイバーおよび水溶性樹脂またはエマルジョンを含む塗料組成物の製造
自己架橋型アクリルエマルジョンJONCRYL 1980(BASF製)71.09部に対し湿潤剤Dynol 604(Air Products社製)0.36部を添加し、あらかじめ調製済みのキチンナノファイバー1%水溶液(別途製法叙述)10.80部、共溶剤Dowanol DPM(ダウケミカル製)4.27部、Dowanol DPnB(ダウケミカル製)3.06部、Dowanol PPH(ダウケミカル製)0.81部の混合溶液を添加後1時間攪拌した。次に、消泡剤Tego Foamex 805(トロイケミカル製)0.42部、ポリエチレンワックスエマルジョンJONWAX 26(ジョンソンポリマー製)2.54部、潤滑剤Tego Glide 440(トロイケミカル製)0.18部を順次添加し、さらに1時間攪拌した。次にあらかじめ調製したDowanol DPM 0.62部と増粘剤Tafigel PUR 50(ウルトラアディティブ社製)0.63部の混合溶液を加えた後、最後に水5.23部を添加し、1時間攪拌することによって目的の塗料溶液を得た。
【0048】
得られた塗料液を杉板材(50mm×50mm×10mm)上に刷毛塗にて塗布することによって均一な塗膜が形成された。また、塗膜は板材に対して強固な接着性を示し、碁盤目試験(JIS 5600-5-5)を実施した結果、剥離は認められなかった。
【実施例6】
【0049】
エビ殻からのキトサンナノファイバーの製造
新鮮なブラックタイガーの殻(10g)を5% KOH水溶液に加え、6時間還流し、エビ殻中のタンパク質を除去した。処理したエビ殻を濾過した後、中性になるまで水でよく洗浄した。エビ殻を7% HCl水溶液で室温下、2日間撹拌し、エビ殻中の灰分を除き、再びカニ殻を濾過して中性になるまで水でよく洗浄した。1.7%のNaClOの0.3M酢酸ソーダ緩衝溶液に処理カニ殻を加え、80℃、6時間撹拌し、エビ殻に含まれる色素分を除去し、再びエビ殻を濾過して中性になるまで水でよく洗浄した。タンパク質、灰分、色素分を除いたエビ殻に、40%水酸化ナトリウムを加え、窒素ガスを絶えず吹き込みながら、6時間還流し、脱アセチル化を行った後、再びエビ殻を濾過して中性になるまで水でよく洗浄した。エビ殻を水に分散させ、分散液を家庭用ミキサーで砕いた後、エビ殻を石臼式摩砕機(スーパーマスコロイダー(MKCA 6-2))に供し、キトサンナノファイバーに解繊させた。キトサンナノファイバーの収率は10%であった。得られたキトサンナノファイバーを走査電子顕微鏡(FE-SEM)(JSM-6700F、JEOL)にて観察した。繊維の大部分は幅40nm以下で、平均約20nm程度の均質なナノファイバーが多く認められた(図7)。また、元素分析の結果より得られたキトサンナノファイバーのN-アセチル基の置換度は33%であった。
【実施例7】
【0050】
キトサンナノファイバーおよびエマルジョンを含む塗料組成物の製造
自己架橋型アクリルエマルジョンJONCRYL 8383(BASF製)71.13部に対し湿潤剤Dynol 604(Air Products社製)0.36部を添加し、あらかじめ調製済みのキトサンナノファイバー2%水溶液(別途製法叙述)19.96部、共溶剤Dowanol DPM(ダウケミカル製)1.55部、Dowanol DPnB(ダウケミカル製)3.59部の混合溶液を添加後1時間攪拌した。次に、消泡剤Tego Foamex 805(トロイケミカル製)0.42部、ポリエチレンワックスエマルジョンJONWAX 26(ジョンソンポリマー製)2.58部、潤滑剤Tego Glide 440(トロイケミカル製)0.18部を順次添加し、さらに1時間攪拌した。最後に増粘剤 Cognos DSX-1550(Henkel製) 0.23部を添加し、1時間攪拌することによって目的の塗料溶液を得た。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、ナノファイバーを使用する分野において利用可能である。また本発明は、複合材料や塗料の製造およびそれらを使用する分野においても利用可能である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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