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明細書 :レクテナ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5540284号 (P5540284)
公開番号 特開2012-075227 (P2012-075227A)
登録日 平成26年5月16日(2014.5.16)
発行日 平成26年7月2日(2014.7.2)
公開日 平成24年4月12日(2012.4.12)
発明の名称または考案の名称 レクテナ装置
国際特許分類 H02J  17/00        (2006.01)
H01P   1/212       (2006.01)
FI H02J 17/00 A
H01P 1/212
請求項の数または発明の数 2
全頁数 16
出願番号 特願2010-216742 (P2010-216742)
出願日 平成22年9月28日(2010.9.28)
審査請求日 平成25年1月17日(2013.1.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】西川 健二郎
【氏名】関 智弘
【氏名】平賀 健
【氏名】篠原 真毅
個別代理人の代理人 【識別番号】110001634、【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
審査官 【審査官】関口 明紀
参考文献・文献 特開平05-335811(JP,A)
特開2009-044933(JP,A)
調査した分野 H01P 1/20- 1/219、 7/00- 7/10、
H02J 17/00
特許請求の範囲 【請求項1】
電波を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した電波を整流する整流手段と、
前記整流手段が整流した電波の高調波のインピーダンスが、偶数次高調波では零、奇数次高調波では無限大となる共振回路と、
を備え
前記共振回路は、
前記整流手段に一端が接続され、前記受信手段が受信した電波の基本波の伝送線路上の波長λの1/4の長さの第1伝送路と、
前記第1伝送路の他端に一端が接続され、他端が負荷に接続され、前記受信手段が受信した電波の基本波の伝送線路上の波長λの1/4の長さの第2伝送路と、
前記第1伝送線路と前記第2伝送線路との接続点に互いに並列に接続された複数の第1の分布定数線路と、
前記第1伝送線路と前記第2伝送線路との接続点に互いに並列に接続された複数の第2の分布定数線路と、
を備え、
前記第1の分布定数線路は、L=λ/(4m)(mは2以上nまでの整数)で表される伝送線路長Lであり、mは互いに異なり、
前記第2の分布定数線路は、L=λ(2m-1)/(4m)(mは2以上nまでの整数)で表される伝送線路長Lであり、mは互いに異なる
ことを特徴とするレクテナ装置。
【請求項2】
記共振回路と前記負荷と接続点に一端が接続され、他端が接地されているキャパシタを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のレクテナ装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、レクテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波無線電力伝送に用いられるレクテナ(受電整流アンテナ;Rectenna(rectifying antennaの略))は、1960年代に発明されて以来、様々な方式のものが開発され、公表されてきた。レクテナは、整流回路部とアンテナ部に別れる。公知のレクテナ整流回路は、基本となるシングルシャント整流回路と、それ以外の整流回路に大別される。
【0003】
図14は、シングルシャント整流回路を用いたレクテナ装置900の等価回路図である。図15は、シングルシャント整流回路の動作を説明する図である。
図14のように、シングルシャント整流回路910は、ダイオード911と、λg/4線路912と、キャパシタ913とを有している。シングルシャント整流回路910は、簡単な構成ながら、図13のように、λg/4線路912とキャパシタ913で構成される出力フィルタが高調波処理と平滑を同時に行うため、全波整流が可能であり、理論効率100%となる。
【0004】
レクテナ装置において、キャパシタを用い、λg/4線路の最適化によって高効率化を図ることが提案されている。
例えば、特許文献1では、レクテナ装置においてシングルシャント整流回路の基本構成であるダイオード、λg/4線路、及びキャパシタのうち、λg/4線路をλg/22.5からλg/14の範囲とすることで最適化し、弱いマイクロ波強度での高効率化を図っている。
【0005】
シングルシャント整流回路で必須のキャパシタは、理論上100%変換効率を実現するためには容量が無限大である必要がある。さらに、実際のキャパシタは、ある周波数まではキャパシタとして動作するが、さらに高周波においてはインダクタとして動作することもある。
【0006】
また、特許文献2に記載の従来技術では、受信信号において発生する高調波のうち、1波のみ、例えば2次高調波を遮断している。入力段に2次高調波を遮断するために、2次高調波の波長λの1/4のオープンスタブが形成され、整流器を結ぶ線路によりフィルタが形成されている。また当該線路の先に、整流器と基本波λgの1/4の線路が接続され、1/4の線路にはキャパシタが接続されている。この構成により、出力手段で反射されて逆相で戻ってきた基本波と同相で合成されて整流手段に入射することになるため、半波整流時よりも倍の波高値で整流できるので、交流-直流変換効率が向上する。
さらに特許文献2に記載の従来技術では、入力フィルタ部で複数の高周波を遮断するように、各高調波に合わせた1/4のオープンスタブを形成することで、ダイオードから発生する複数の高調波に対してインピーダンスを零として高効率化を図っている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2007-116515号公報
【特許文献2】特開平5-335811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術によるシングルシャント整流回路では、容量の大きなキャパシタが必要であり、また、使用するキャパシタによっては、周波数の増加に伴いインピーダンスが大きくなり、ミリ波等の高周波では理想的なキャパシタとして動作することが徐々に難しくなる。この結果、ミリ波等の高周波になると、受信した信号を直流に変換する際の変換効率が下がるという課題があった。
また、特許文献2に記載の従来技術では、整流器で発生する複数の高調波を反射させて高効率化を図っているが、出力フィルタ部にキャパシタが用いられているため、容量の大きなキャパシタが必要である。また、使用するキャパシタによっては、周波数の増加に伴いインピーダンスが大きくなり、ミリ波等の高周波では理想的なキャパシタとして動作することが徐々に難しくなる。この結果、ミリ波等の高周波になると、受信した信号を直流に変換する際の変換効率が下がるという課題があった。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、マイクロ波またはミリ波等の高周波においても高効率なレクテナ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のレクテナ装置は、電波を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した電波を整流する整流手段と、前記整流手段が整流した電波の高調波のインピーダンスが、偶数次高調波では零、奇数次高調波では無限大となる共振回路と、を備え、前記共振回路は、前記整流手段に一端が接続され、前記受信手段が受信した電波の基本波の伝送線路上の波長λの1/4の長さの第1伝送路と、前記第1伝送路の他端に一端が接続され、他端が負荷に接続され、前記受信手段が受信した電波の基本波の伝送線路上の波長λの1/4の長さの第2伝送路と、前記第1伝送線路と前記第2伝送線路との接続点に互いに並列に接続された複数の第1の分布定数線路と、前記第1伝送線路と前記第2伝送線路との接続点に互いに並列に接続された複数の第2の分布定数線路と、を備え、前記第1の分布定数線路は、L=λ/(4m)(mは2以上nまでの整数)で表される伝送線路長Lであり、mは互いに異なり、前記第2の分布定数線路は、L=λ(2m-1)/(4m)(mは2以上nまでの整数)で表される伝送線路長Lであり、mは互いに異なることを特徴としている。
【0013】
また、本発明に係るレクテナ装置において、前記共振回路と前記負荷と接続点に一端が接続され、他端が接地されているキャパシタを備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、負荷共振回路を用いて、偶数次高調波ではインピーダンスが0(零)、奇数次高調波ではインピーダンスが∞(無限大)となるような高調波処理を行うことで、マイクロ波またはミリ波等の高周波においても高効率なレクテナ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係るレクテナ装置の等価回路図である。
【図2】F級増幅回路の等価回路図である。
【図3】同実施形態に係るレクテナ装置のシミュレーション用の等価回路図である。
【図4】従来技術に係るレクテナ装置のシミュレーション用の等価回路図である
【図5】従来技術に係るレクテナ装置100における入力の電流・電圧波形と出力の電流・電圧波形を示す図である。
【図6】従来技術に係るレクテナ装置100におけるダイオードの電圧・電流波形、λ/4線路を流れる電流波形、変換効率と反射率の変化を表す図である。
【図7】同実施形態のレクテナ装置1aにおける入力の電流・電圧波形と出力の電流・電圧波形を示す図である。
【図8】同実施形態に係るレクテナ装置1aにおけるダイオードの電圧・電流波形、λ/4線路を流れる電流波形、変換効率と反射率の変化を表す図である。
【図9】第2実施形態に係るレクテナ装置の等価回路図である。
【図10】同実施形態におけるレクテナ装置のシミュレーション用の等価回路図である
【図11】同実施形態のレクテナ装置200aにおける入力の電流・電圧波形と出力の電流・電圧波形を示す図である。
【図12】同実施形態に係るレクテナ装置200aにおけるダイオードの電圧・電流波形、λ/4線路を流れる電流波形、変換効率と反射率の変化を表す図である。
【図13】従来技術におけるLC共振回路を用いたF級増幅器の等価回路図である。
【図14】従来技術に係るシングルシャント整流回路を用いたレクテナ装置の等価回路図である。
【図15】従来技術に係るシングルシャント整流回路の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、本発明は係る実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内で種々の変更が可能である。

【0017】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態におけるレクテナ装置の等価回路図である。
図1において、本実施形態におけるレクテナ装置1は、アンテナ11(受信手段)、サーキュレータ12、抵抗13、伝送路21、キャパシタ23、整流部30(整流手段)、負荷共振回路40(共振回路)を備えている。
レクテナ装置1には、負荷51が接続されている。
図1のように、従来技術に対する本実施形態の差異は、従来技術のキャパシタ部140の代わりに負荷共振回路40を備えていることである。

【0018】
サーキュレータ12は、アンテナ11を介して送受信を行うために、送信信号を送信部へ、受信信号を受信部へ導く3端子の受動素子である。サーキュレータ12は、アンテナ11が受信した信号を伝送路21に出力する。
抵抗13は、一端がサーキュレータ12に接続され、他端が接地されている。抵抗13は、出力部を置き換えたものである。

【0019】
キャパシタ23は、一端が伝送路21を介してサーキュレータ12に接続され、他端が分岐31に接続されている。また、符号22は、キャパシタ23にパッケージ部品を用いる場合、キャパシタ23が有する寄生容量を表している。

【0020】
整流部30は、分岐31、ダイオード33、伝送路34を備えている。分岐31は、入力端子がキャパシタ23の他端に接続され、出力端子の一端がダイオード33のカソードに接続され、出力端子の他端が負荷共振回路40のλ/4線路T11に接続されている。
ダイオード33は、カソードが分岐31の出力端子の一端に接続され、アノードが伝送路34を介して接地されている。また、符号32は、ダイオード33にパッケージ部品を用いる場合、ダイオード33が有する寄生容量を表している。
ストリップ線路32は、ダイオード33と並列に接続され、一端が分岐31に接続され、他端が伝送路34に接続されている。

【0021】
負荷共振回路40は、λ/4線路T11(第1伝送路)、λ/4線路T12(第2伝送路)、高周波処理(Harmonic treatment)スタブ(分布定数線路)T~T(第1の分布定数線路)、補償(Compensation)スタブT~T(第2の分布定数線路)、分岐41、43、45および46、および伝送路42、44を備えている。分岐41、43、45および46は、例えば、ウィルキンソン型電力分配回路やマイクロストリップ線路によるQマッチセッション電力分配回路である。
なお、図1では、伝送路42と44のみを示してあるが、負荷共振回路40の伝送路は、n-1個備えている。スタブTは、スタブTより長く、スタブTは、スタブTより長い。また、スタブTは2fに対して共振し、スタブTは2fに対して共振する。なお、fは、この共振器における基本周波数を表している。

【0022】
高周波処理スタブT~Tと補償スタブT~Tは、F級増幅器におけるスタブ(Stub)である。なお、スタブとは、負荷による反射波を打ち消すように整合性を取るための、平行平板線路に形成される溝などによる構造である。

【0023】
負荷共振回路40は、例えば、以下の文献1記載のF級増幅回路で用いられている負荷共振回路を用いる。

【0024】
文献1:石川亮、黒田健太 他、GaN HEMTを用いたSSPS用5.8GHz帯F級高効率増幅器、電子情報通信学会、信学技報SPS2008-04、2008

【0025】
なお、F級電力増幅器とは、1/4波長伝送線路2の出力値を高周波に対して短絡させ、増幅素子1の負荷、つまり1/4波長伝送線路2の入力値を基本波及び奇数次高周波に対して開放、偶数次高周波に対して短絡とすることにより、効率の高い電力増幅をはかる回路である。この結果、偶数次高調波ではインピーダンスが0(零)、奇数次高調波ではインピーダンスが∞(無限大)となるような高調波処理が行え、高調波合成によって整流波形が整形され、高効率化が可能となる。

【0026】
次に、図1において、各部の定数等の設定手順の一例を説明する。図2は、F級増幅回路の等価回路図である。図2において、正弦波発振回路70は、アンテナ11を置き換えた発振回路である。この正弦波発振回路70の出力は、伝送路を介してスイッチング素子のゲートに入力される。スイッチング素子は、ソースが接地され、ドレインがF級増幅回路の入力に接続されている。また、スイッチング素子のドレインは、チョークコイルを介して電源電圧Vddに接続されている。また、スイッチング素子のゲートは、チョークコイルを介してバイアス電圧Vgに接続されている。

【0027】
負荷共振回路40の各スタブ(T~T)の電気長は、図2のように、次式(1)を用いて算出する。また、F級増幅回路40の各スタブ(T~T)の電気長は、図2のように、次式(2)を用いて算出する。

【0028】
=λ/4m (m=2,3,・・・,n)・・・(1)

【0029】
=λ0(2m-1)/4m (m=2,3,・・・,n)・・・(2)

【0030】
式(1)と式(2)において、λは、正弦波発振回路(信号源)70から入力される信号の波長である。また、伝送路T11と伝送路T12は、λ/4に設定する。

【0031】
次に、F級増幅回路の動作についての概要を説明する。
図2において、スイッチング素子に流れる半波整流した電流をフーリエ級数に展開すると、その周波数成分Iは、次式(3)のように表される。

【0032】
=Imax(1/π+1/2π・cosωt+1/3π・cos2ωt-2/15π・cos4ωt+2/35π・cos6ωt-・・・) ・・・(3)

【0033】
式(3)において、ωはアンテナ11から入力される周波数の角周波数である。式(3)のように、基本波分の他には、偶数次の高周波成分のみ存在する。このため、スイッチング素子のドレインにかかる電圧を、電流と逆相の基本波と奇数次の高調波のみで構成すると、基本波に関して力率100%で電力を発生できる。そして、全ての高調波で電力消費が零の状態となる。
このような状態にするには、スイッチング素子の出力から負荷側を見たインピーダンスが、偶数次高調波の場合に短絡(電流のみ存在)、奇数次高調波で開放(電圧のみ存在)、基本波の電流と電圧が互いに完全逆相且つ力率がマイナス1になるようにする。
以上のような関係になるように、スタブの線路長を設定することで、偶数次高調波ではインピーダンスが0、奇数次高調波ではインピーダンスが∞(無限大)となるような高調波処理を行うことができる。

【0034】
次に、図1の本実施形態によるレクテナ装置1において、整流部30、負荷共振回路140を含む範囲60において、各線路長と各スタブ長を、式(1)と式(2)、伝送路T11=λ/4、伝送路T12=λ/4を算出して設定する。なお、算出した各線路長と各スタブ長を、例えば実測値に基づいて微調節するようにしてもよい。

【0035】
次に、本実施形態におけるレクテナ装置1および従来技術によるレクテナ装置100におけるシミュレーション結果を、図3~図8を用いて説明する。
図3は、本実施形態におけるレクテナ装置1aのシミュレーション用の等価回路図である。図1のアンテナ11を、正弦波発振回路70に置き換えて表している。

【0036】
これに対し、図4は、従来技術におけるレクテナ装置100のシミュレーション用の等価回路図である。図2と同じ機能部は同じ符号を用いて、説明を省略する。図4において、レクテナ装置100は、正弦波発振回路70、サーキュレータ12、抵抗13、伝送路21、キャパシタ23、整流部30、キャパシタ部140、λ/4線路151、λ/4線路152、負荷51を備えている。また、キャパシタ部140は、分岐141、キャパシタ143、伝送路144を備えている。また、符号22と符号142は、キャパシタ23とキャパシタ143とにパッケージ部品を用いる場合、キャパシタ23と143とが各々有する寄生容量を表している。

【0037】
シミュレーション条件は、発振周波数を2.45[GHz]に設定し、入力電力Pを10[mW]から1000[mW]まで10[mW]刻みで変化させたときに最大変換効率を得る入力電力で回路シミュレーションを行った。入力電力Pを750[mW]に設定して、シミュレーションを行った、
また、整流部30、キャパシタ部140、λ/4線路151とλ/4線路152を含む範囲160の全ての部品の定数と伝送路の線路長を、公知の手法を用いて最適化した。

【0038】
図5は、従来技術におけるレクテナ装置100における入力の電流・電圧波形と出力の電流・電圧波形を示す図である。図5(a)は、入力の電圧波形g1であり、図5(b)は、入力の電流波形g2、図5(c)は、出力の電圧波形g3、図5(d)は、出力の電流波形g4である。図5(a)~図5(d)の横軸は時間軸であり、図5(a)と図5(c)の縦軸は電圧値を表し、図5(b)と図5(d)の縦軸は電流値を表している。
図5(c)の実線g3、図5(d)の実線g4のように、出力電圧および出力電流は、交流波形である。

【0039】
図6は、従来技術におけるレクテナ装置100におけるダイオードの電圧・電流波形、λ/4線路を流れる電流波形、変換効率と反射率の変化を表す図である。図6(a)は、ダイオード33への入力の電圧波形g11であり、図6(b)は、ダイオード33への入力の電流波形g12、図6(c)は、λ/4線路を流れる電流波形g13、図6(d)は、変換効率g14と反射率g15の変化を表す図である。図6(a)~図6(c)の横軸は時間を表し、図6(a)の縦軸は電圧値を表し、図6(b)と図6(c)の縦軸は電流値を表している。図6(d)の横軸は入力電力Pを表し、縦軸は変換効率と反射率を表している。
図6(d)の実線g14のように、従来技術におけるレクテナ装置100の変換効率は約65%である。

【0040】
次に、本実施形態について行ったシミュレーション結果について、図3、図7と図8を用いて説明する。図3の回路図において、正弦波発振回路70には、正弦波状の入力電力を与え、発振周波数は2.45[GHz]に設定し、入力電力Pを10[mW]から1000[mW]まで10[mW]刻みで変化させたときに最大変換効率を得る入力電力で回路シミュレーションを行った。また、入力電力Pを750[mW]に設定して、シミュレーションを行った。
また、負荷共振回路40において、スタブの段数はn=7とした。また、負荷共振回路40の各スタブ(T~T、T~T)の電気長は、式(1)と式(2)を用いて算出した。また、伝送路T11=λ/4、伝送路T12=λ/4に設定した。
整流部30、負荷共振回路40を含む範囲60において、スタブと伝送路T11およびT12以外の伝送路の線路長、各部品の定数を公知の手法を用いて最適化した。

【0041】
図7は、本実施形態のレクテナ装置1aにおける入力の電流・電圧波形と出力の電流・電圧波形を示す図である。図7(a)は、入力の電圧波形g21であり、図7(b)は、入力の電流波形g22、図7(c)は、出力の電圧波形g23、図7(d)は、出力の電流波形g24である。図7(a)~図7(d)の横軸は時間を表し、図7(a)と図7(c)の縦軸は電圧値を表し、図7(b)と図7(d)の縦軸は電流値を表している。
図7(c)の実線g23、図7(d)の実線g24のように、出力電圧および出力電流の波形は、図5(c)の実線g3と図5(d)の実線g4と比較し、直流に近い波形である。

【0042】
図8は、本実施形態におけるレクテナ装置1aにおけるダイオードの電圧・電流波形、λ/4線路を流れる電流波形、変換効率と反射率の変化を表す図である。図8(a)は、ダイオード33への入力の電圧波形g31であり、図8(b)は、ダイオード33への入力の電流波形g32、図8(c)は、λ/4線路を流れる電流波形g33、図8(d)は、変換効率g34と反射率g35の変化を表す図である。図8(a)~図8(c)の横軸は時間軸であり、図8(a)の縦軸は電圧値を表し、図8(b)と図8(c)の縦軸は電流値を表している。図8(d)の横軸は入力電力Pを表し、縦軸は変換効率と反射率を表している。
図8(d)の実線g34ように、本実施形態におけるレクテナ装置1aの変換効率は約71%であり、従来技術におけるレクテナ装置100の変換効率の約65%より高い。
また、図8(a)のダイオード33に流れる電圧波形g31は、図6(a)のダイオード33に流れる電圧波形g11に比べると、明らかに矩形波に近づいている。各高調波処理が理論どおりに高調波処理がなされると、ダイオード33の電圧波形は矩形波となる。
なお、ダイオード33に、3次高調波、5次高調波、・・・の電圧が反射により戻ってくるために、各高調波処理が理論どおりに高調波処理がなされると、ダイオード33の電圧波形は矩形波となる。

【0043】
このため、本実施形態におけるレクテナ回路は、より完全な高調波処理がなされていることを示している。なお、出力波形g23、g24がほぼ直流波形であるにもかかわらず、変換効率が約71%に留まっているのは、図3において、回路図中の各不連続点で、わずかに反射する分や、ダイオードを逆方向に流れる電流の影響によるものであると考えられる。

【0044】
以上のように、レクテナ装置において、従来技術においては整流回路にキャパシタが用いられていたが、本実施形態においては整流部に負荷共振回路を用いた。この結果、偶数次高調波ではインピーダンスが0(ゼロ)、奇数次高調波ではインピーダンスが∞(無限大)となるような高調波処理が行え、高調波合成によって整流波形が整形され、マイクロ波またはミリ波等の高周波においても高効率化が可能となる。
また、本実施形態においては、従来技術のシングルシャント整流回路で用いられていたキャパシタを用いないようにしたので、容量の大きなキャパシタが不要になり、さらにキャパシタが高周波でキャパシタとして動作しなくなることによる整流回路の効率悪化を防止することができる。この結果、マイクロ波またはミリ波等の高周波においても高効率化が可能となる。

【0045】
[第2実施形態]
図9は、本実施形態におけるレクテナ装置200の等価回路図である。第1実施形態の図1と同じ機能を有する機能部は同じ符号を用いて、説明を省略する。
図9において、本実施形態におけるレクテナ装置200は、アンテナ11、サーキュレータ12、抵抗13、伝送路21、キャパシタ23、整流部30、負荷共振回路40、キャパシタ部240、λ/4線路251を備えている。すなわち、本実施形態におけるレクテナ装置200は、第1実施形態に加え、負荷共振回路40の後段にキャパシタ部240を備えている。
キャパシタ部240は、分岐241、キャパシタ243、伝送路244を備えている。また、符号242は、キャパシタ243にパッケージ部品を用いる場合、キャパシタ243が有する寄生容量を表している。
また、レクテナ装置200には、負荷51が接続されている。

【0046】
本実施形態におけるレクテナ装置200において、各部品の定数、線路長などの設定方法を説明する。負荷共振回路40の各スタブ(T~T、T~T)の電気長は、第1実施形態と同様に、式(1)と式(2)を用いて算出し、伝送路T11=λ/4、伝送路T12=λ/4に設定する。
また、整流部30、負荷共振回路40、キャパシタ部240およびλ/4線路251を含む範囲260において、スタブおよび伝送路T11、伝送路T12以外の伝送路の線路長、各部品の定数は、公知の手法を用いて算出する。

【0047】
次に、本実施形態におけるレクテナ装置200および従来技術によるレクテナ装置200aにおけるシミュレーション結果を、図10~図12を用いて説明する。
図10は、本実施形態におけるレクテナ装置のシミュレーション用の等価回路図である。図1のアンテナ11を、正弦波発振回路70に置き換えて表している。正弦波発振回路70は、正弦波状の入力電力を与え、発振周波数は2.45[GHz]に設定し、入力電力Pを10[mW]から1000[mW]まで10[mW]刻みで変化させたときに最大変換効率を得る入力電力で回路シミュレーションを行った。入力電力Pを750[mW]に設定して、シミュレーションを行った。
負荷共振回路40において、スタブの段数はn=7とした。また、整流部30、負荷共振回路40を含む範囲260において、スタブおよび伝送路T11、伝送路T12以外の伝送路の線路長、各部品の定数は、公知の手法を用いて算出する。

【0048】
図11は、本実施形態のレクテナ装置200aにおける入力の電流・電圧波形と出力の電流・電圧波形を示す図である。図11(a)は、入力の電圧波形g41であり、図11(b)は、入力の電流波形g42、図11(c)は、出力の電圧波形g43、図11(d)は、出力の電流波形g44である。図11(a)~図11(d)の横軸は時間軸であり、図11(a)と図11(c)の縦軸は電圧値を表し、図11(b)と図11(d)の縦軸は電流値を表している。
図11(c)の実線g43、図11(d)の実線g44のように、出力電圧および出力電流の波形は、キャパシタ部240の効果により、第1実施形態のシミュレーション結果である図7(c)の実線g23と図7(d)の実線g24と比較し、さらに交流分が少なくなっている。

【0049】
図12は、本実施形態におけるレクテナ装置200aにおけるダイオードの電圧・電流波形、λ/4線路を流れる電流波形、変換効率と反射率の変化を表す図である。図12(a)は、ダイオード33への入力の電圧波形g51であり、図12(b)は、ダイオード33への入力の電流波形g52、図12(c)は、λ/4線路を流れる電流波形g53、図12(d)は、変換効率g54と反射率g55の変化を表す図である。図12(a)~図12(c)の横軸は時間軸であり、図12(a)の縦軸は電圧値を表し、図12(b)と図12(c)の縦軸は電流値を表している。図12(d)の横軸は入力電力Pを表し、縦軸は変換効率と反射率を表している。
図12(d)の実線g54ように、本実施形態におけるレクテナ装置200aの変換効率は、第1実施形態と同等(約71%)であり、従来技術におけるレクテナ装置100の変換効率の約65%より高い。
また、図12(a)のダイオード33に流れる電圧波形g51は、第1実施形態のシミュレーション結果である図8(a)のダイオード33に流れる電圧波形g31と同様に矩形波に近づいている。

【0050】
以上のように、レクテナ装置において、第1実施形態の負荷共振回路の後段に、さらにキャパシタ部を備えることで、第1実施形態よりもさらに理想的な整流処理が行える。この結果、偶数次高調波ではインピーダンスが0、奇数次高調波ではインピーダンスが∞となるような高調波処理が行え、高調波合成によって整流波形が整形され、マイクロ波またはミリ波等の高周波においても高効率化が可能となる。
また、本実施形態においては、第1実施形態の負荷共振回路の後段に付加的にキャパシタ243を用いたのみであり、従来技術のシングルシャント整流回路で用いられていたキャパシタを用いないようにした。このため、容量の大きなキャパシタが不要になり、さらにキャパシタが高周波でキャパシタとして動作しなくなることによる整流回路の効率悪化を防止することができる。この結果、マイクロ波またはミリ波等の高周波においても高効率化が可能となる。

【0051】
[第3実施形態]
第1実施形態と第2実施形態では、共振回路として各高調波に対する分布定数線路である負荷共振回路40を用いて、偶数次高調波ではインピーダンスが0、奇数次高調波ではインピーダンスが∞を実現する例を説明した。第3実施形態では、共振回路としてLC共振回路を用いる例について説明する。

【0052】
図13は、従来技術におけるLC共振回路を用いたF級増幅器の等価回路図である。図13のように、従来技術におけるレクテナ装置500は、アンテナ11、高周波チョーク501、スイッチング素子502(FET)、キャパシタ511、λ/4線路521、LC共振部530を備えている。レクテナ装置500には、負荷51が接続されている。

【0053】
スイッチング素子502は、ゲートに入力信号が入力され、ソースは接地され、ドレインはキャパシタ511の一端に接続されている。また、スイッチング素子502のドレインは、高周波チョーク501を介して電源電圧Vddに接続されている。 キャパシタ511は、一端がアンテナ11、スイッチング素子502のドレインおよび高周波チョーク501の一端に接続され、他端がλ/4線路521の一端に接続されている。
λ/4線路521は、一端がキャパシタ511の他端に接続され、他端がLC共振部530と負荷51に接続されている。

【0054】
LC共振部530は、インダクタ531、キャパシタ532を備える。インダクタ531とキャパシタ532とは、並列に接続され、インダクタ531とキャパシタ532の一端がλ/4線路521の他端と負荷51に接続され、インダクタ531とキャパシタ532の他端が接地されている。そして、このLC共振部530は、基本波の周波数で共振する。

【0055】
このLC共振部530は、高周波に対して短絡回路となる。しかし、スイッチング素子502のドレインからλ/4線路521を介して見た場合、LC共振部530は、奇数次高調波に対してλ/4線路521のインピーダンス変換作用により開放回路となる。また、LC共振部530は、偶数次高調波に対してλ/4線路521のインピーダンス変換作用が働かず短絡回路となる。このため、スイッチング素子502に十分なバイアスを与え、高周波信号を入力すると、ドレインの電圧波形は、基本波と奇数次高調波成分による矩形波となり、ドレインの電流波形は基本波と偶数次高調波からなる半波整流波形になる。

【0056】
このため、図3の負荷共振回路40の代わりに、各高調波にその高調波に対応したLC共振部530を用いた場合においても、ダイオード33は、偶数次高調波ではインピーダンスが0、奇数次高調波ではインピーダンスが∞を実現できるため、従来技術より高変換効率のレクテナ装置を実現することができる。または、各高調波にその高調波に対応したLC共振部530を、図9の負荷共振回路40の代わりに用いた場合においても、偶数次高調波ではインピーダンスが0、奇数次高調波ではインピーダンスが∞を実現できるため、従来技術より高変換効率のレクテナ装置を実現することができる。

【0057】
以上のように、レクテナ装置において、従来技術でキャパシタを用いた回路部に受信信号の各高調波に対応したLC共振回路を用いることで、偶数次高調波ではインピーダンスが0、奇数次高調波ではインピーダンスが∞となるような高調波処理が行え、高調波合成によって整流波形が整形され、マイクロ波またはミリ波等の高周波においても高効率化が可能となる。

【0058】
なお、本発明のレクテナ装置は、単独で、あるいは連結して使用することが可能である。また、本発明のレクテナ装置は、無線電力伝送に有用であるが、環境発電と呼ばれるエネルギー・ハーベスティングにも用いることが可能で、汎用性は極めて広い。
【符号の説明】
【0059】
1・・・レクテナ装置
11・・・アンテナ
12・・・サーキュレータ
13・・・抵抗
21、34、42、44・・・伝送路
22、32・・・寄生容量
23・・・キャパシタ
30・・・整流部
31、41、43、45、46・・・分岐
33・・・ダイオード
40・・・負荷共振回路
11、T12・・・λ/4線路
~T・・・高周波処理スタブ
~T・・・補償スタブ
51・・・負荷
530・・・LC共振部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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【図14】
13
【図15】
14