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明細書 :2次元フォトニック結晶

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5854383号 (P5854383)
公開番号 特開2013-156585 (P2013-156585A)
登録日 平成27年12月18日(2015.12.18)
発行日 平成28年2月9日(2016.2.9)
公開日 平成25年8月15日(2013.8.15)
発明の名称または考案の名称 2次元フォトニック結晶
国際特許分類 G02B   6/122       (2006.01)
H01L  31/0352      (2006.01)
FI G02B 6/122 301
H01L 31/04 340
請求項の数または発明の数 25
全頁数 23
出願番号 特願2012-019111 (P2012-019111)
出願日 平成24年1月31日(2012.1.31)
審査請求日 平成26年9月8日(2014.9.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
発明者または考案者 【氏名】野田 進
【氏名】田中 良典
【氏名】オスクイ アルダバン
【氏名】ファブッチ ペドロ
【氏名】重田 博昭
【氏名】宮西 晋太郎
【氏名】小川 裕之
【氏名】川森 秀次
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査官 【審査官】林 祥恵
参考文献・文献 特開2008-283037(JP,A)
国際公開第2011/083674(WO,A1)
国際公開第2011/083694(WO,A1)
特表2006-523956(JP,A)
特開2004-061905(JP,A)
宇野 和行,不規則度の異なるAlAs/GaAs不規則超格子の光励起発光特性(II),応用物理学関係連合講演会講演予稿集1994春3 Extended Abstracts (The 41st Spring Meeting, 1994);The Japan Society of Applied Physics and Related Societies No.3,(社)応用物理学会,1994年 3月,p.1198
調査した分野 G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-1/39
G02B 6/12-6/14
H01L 33/00
H01L 31/04
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
Scopus
JJAP
特許請求の範囲 【請求項1】
板状の本体内に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域が、該本体に平行な2次元格子の各格子点に配置されて成る2次元フォトニック結晶であって、
各異屈折率領域が、前記2次元格子の各格子点から前記2次元格子の格子面に平行に、最大ずれ量Δpmax(≠0)以下のずれ量Δpだけずれてランダムに配置されており、
前記ずれ量Δpが0から最大ずれ量Δpmaxの間で、一様に、またはガウス分布型で、または一次関数で分布しており、その方向については一様に分布しており、
前記異屈折率領域のうち少なくとも1つは、前記ずれ量Δpが0ではない
ことを特徴とする2次元フォトニック結晶。
【請求項2】
前記最大ずれ量Δpmaxが2次元格子の周期長の1/2以下であることを特徴とする請求項1に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項3】
板状の本体内に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域が、該本体に平行な2次元格子の各格子点に配置されて成る2次元フォトニック結晶であって、
前記2次元格子の連接する複数個の格子点から成る超格子を単位格子とする超格子構造を備え、
各超格子において、
a) 予め定められた1個又は複数個の格子点において、各格子点から該2次元格子の格子面に平行に、第1最大ずれ量Δp1max(≠0)以下のずれ量Δpだけずれてランダムに配置された第1異屈折率領域と、
b) 前記第1異屈折率領域が配置された格子点以外の格子点において、各格子点から該2次元格子の格子面に平行に、第2最大ずれ量Δp2max以下のずれ量Δpだけずれてランダムに配置された第2異屈折率領域と
が存在しており、
前記第1異屈折率領域のうち少なくとも1つは、前記ずれ量Δpが0ではないことを特徴とする2次元フォトニック結晶。
【請求項4】
前記第2最大ずれ量Δp2maxが0であることを特徴とする請求項に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項5】
全ての前記第2異屈折率領域のずれ量Δpが0から前記第2最大ずれ量Δp2maxの間で一様に、またはガウス分布型で、または一次関数で分布しており、その方向について一様に分布していることを特徴とする請求項に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項6】
全ての前記第1異屈折率領域のずれ量Δpが0から前記第1最大ずれ量Δp1maxの間で一様に、またはガウス分布型で、または一次関数で分布しており、その方向について一様に分布していることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項7】
板状の本体内に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域が、該本体に平行な2次元格子の各格子点に配置されて成る2次元フォトニック結晶であって、
前記2次元格子の連接する複数個の格子点から成る超格子を単位格子とする超格子構造を備え、
各超格子において格子点がn個の部分集合に分割され、各部分集合において前記異屈折率領域が各格子点から前記2次元格子の格子面に平行に、最大ずれ量Δpkmax(kは1~nのいずれかの整数。少なくとも1つの部分集合においてΔpkmax≠0。)以下のずれ量Δpだけランダムにずれて配置されており、
前記異屈折率領域の各部分集合は、それぞれ、前記ずれ量Δpが0ではない少なくとも1つの異屈折率領域を含むことを特徴とする2次元フォトニック結晶。
【請求項8】
前記部分集合のうちの1つにおいて、最大ずれ量Δpnmaxが0であることを特徴とする請求項に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項9】
前記各部分集合のうちの1つ又は複数において、該部分集合に属する全ての異屈折率領域のずれ量Δpが0から前記最大ずれ量Δpnmaxの間で一様に、ガウス分布型で、または一次関数で分布していることを特徴とする請求項又はに記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項10】
さらに、各異屈折率領域のうちの少なくとも一部において、前記異屈折率領域の平面形状が最小値と該最小値よりも大きい最大値の間でランダムな大きさを有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項11】
板状の本体内に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域が、該本体に平行な2次元格子の各格子点に配置されて成る2次元フォトニック結晶であって、
各異屈折率領域の平面形状が、最小値と該最小値よりも大きい最大値の間でランダムな大きさを有しており、
個々の異屈折率領域における平面形状の大きさの、全ての異屈折率領域における分布が、前記最小値から前記最大値の間で一様に分布してい
ことを特徴とする2次元フォトニック結晶。
【請求項12】
各異屈折率領域が同一の平面形状を有することを特徴とする請求項11に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項13】
板状の本体内に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域が、該本体に平行な2次元格子の各格子点に配置されて成る2次元フォトニック結晶であって、
前記2次元格子の連接する複数個の格子点から成る超格子を単位格子とする超格子構造を備え、
各超格子において、
a) 予め定められた1個又は複数個の格子点に配置された第1の異屈折率領域であって、平面形状が第1の最小値と該第1の最小値よりも大きい第1の最大値の間でランダムな大きさを有する第1異屈折率領域と、
b) 前記第1異屈折率領域が配置された格子点以外の格子点に配置された第2の異屈折率領域であって、平面形状が第2の最小値と第2の最大値の間でランダムな大きさを有する第2異屈折率領域と
が存在することを特徴とする2次元フォトニック結晶。
【請求項14】
各第1異屈折率領域及び各第2異屈折率領域が同一の平面形状を有することを特徴とする請求項13に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項15】
全ての前記第2異屈折率領域の平面形状の大きさが同じであることを特徴とする請求項13又は14に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項16】
全ての前記第2異屈折率領域の平面形状の大きさが前記第2の最小値から前記第2の最大値の間で一様に分布していることを特徴とする請求項13又は15に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項17】
全ての前記第1異屈折率領域の平面形状の大きさが前記第1の最小値から前記第1の最大値の間で一様に分布していることを特徴とする請求項1316のいずれか1項に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項18】
板状の本体内に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域が、該本体に平行な2次元格子の各格子点に配置されて成る2次元フォトニック結晶であって、
前記2次元格子の連接する複数個の格子点から成る超格子を単位格子とする超格子構造を備え、
各超格子において格子点がn個の部分集合に分割され、各部分集合において前記異屈折率領域の平面形状の大きさが最小値と最大値(少なくとも1つの部分集合において最小値と最大値が異なる値を有する)の間でランダムな大きさを有することを特徴とする2次元フォトニック結晶。
【請求項19】
各異屈折率領域が同一の平面形状を有することを特徴とする請求項18に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項20】
前記部分集合のうちの1つにおいて、前記異屈折率領域の平面形状が同じ大きさを有することを特徴とする請求項18又は19に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項21】
前記部分集合のうちの1つ又は複数において、該部分集合に属する全ての異屈折率領域の大きさが前記最小値から前記最大値の間で一様に分布していることを特徴とする請求項1820のいずれか1項に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項22】
さらに、各異屈折率領域のうちの少なくとも一部において、前記異屈折率領域が、前記2次元格子の各格子点から前記2次元格子の格子面に平行に、最大ずれ量Δpmax(≠0)以下のずれ量Δpだけランダムにずれて配置されており、
前記異屈折率領域のうち少なくとも1つは、前記ずれ量Δpが0ではないことを特徴とする請求項1121のいずれか1項に記載の2次元フォトニック結晶。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項に記載の2次元フォトニック結晶の結晶構造が形成された光電変換層を備えることを特徴とする光センサ。
【請求項24】
前記光電変換層が、p型半導体又はn型半導体から成り1対の電極のいずれか一方の電極に接する第1層と、該第1層とは逆極性の半導体から成る第2層を含む積層構造を有し、
前記異屈折率領域が前記光電変換層の厚さ方向に、前記第1層の前記一方の電極との界面から前記第2層よりも手前まで形成されており、
前記異屈折率領域の材料が前記一方の電極の材料から成る
ことを特徴とする請求項23に記載の光センサ。
【請求項25】
前記光電変換層がSiの単結晶若しくは多結晶の薄膜、又はCu(In,Ga)Se2の多結晶の薄膜であることを特徴とする請求項23又は24に記載の光センサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池や光センサ等の光デバイスに用いられる2次元フォトニック結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、入射した光(電磁波)のエネルギーを電流に変換するための、半導体から成る光電変換層を有している。入射光は、光電変換層に吸収され、そのエネルギーによって光電変換層の半導体内の電子が価電子帯から伝導帯に励起されることにより、電流に変換される。ここで、入射光が光電変換層に吸収されることなく通過すると、光電変換の効率が低下する。そのため、太陽電池では、光電変換層における入射光の吸収効率を高めることが重要となる。この吸収効率を高める手法の1つとして、光電変換層の厚みを大きくすることが挙げられるが、半導体材料の使用量が増加するため、コストが上昇してしまうという問題がある。
【0003】
特許文献1には、入射光の吸収効率を高めるために2次元フォトニック結晶を用いた太陽電池が記載されている。ここでフォトニック結晶とは、誘電体から成る部材内に周期的な屈折率分布が形成されたものをいう。図14に、2次元フォトニック結晶を用いた太陽電池の一例を示す。この太陽電池90では、p型半導体から成るp層911、真性半導体から成るi層912及びn型半導体から成るn層913の3層により構成される光電変換層91に、それら3層とは屈折率が異なる柱状の部材から成る異屈折率領域92が周期的に配置されることにより、光電変換層91に2次元フォトニック結晶が形成されている。光電変換層91以外の構成は一般的な太陽電池と同様であり、光電変換層91を挟むように第1電極931及び第2電極932が設けられていると共に、第1電極931の外側(光電変換層91の反対側)には反射層94が、第2電極932の外側にはガラス基板95が、それぞれ設けられている。光はガラス基板95の側から太陽電池90内に入射する。
【0004】
この2次元フォトニック結晶内においては、光電変換層91に入射した光のうち、異屈折率領域92の配置の周期長に対応した(複数の)特定の波長を有する光が定在波を形成するため、それらの光は光電変換層91内に留まり易くなる。そのため、それらの波長において、2次元フォトニック結晶が無い場合よりも入射光の吸収効率が向上する。但し、太陽光は連続的な波長分布を有するため、太陽電池では、特定の波長における吸収効率ではなく、光電変換の対象となる波長帯全体での太陽光の吸収効率を高めることが必要となる。このような特定の波長帯全体での太陽光の吸収効率を、以下では「積分吸収効率」と呼ぶ。積分吸収効率は、以下の式(1)で求められる。
【数1】
JP0005854383B2_000002t.gif
ここで、λは光の波長、λ1及びλ2は対象波長帯の下限値及び上限値、dI/dλは単位波長当たりの太陽光の強度(図15)、A(λ)は波長毎の吸収効率、である。
【0005】
以下、具体的な太陽電池の一例において、波長毎の吸収効率、及び積分吸収効率を計算した結果について述べる。この計算で用いた太陽電池は、上記の太陽電池90であって、光電変換層91の材料にケイ素(Si)を、第1電極931及び第2電極932の材料に導電性の酸化物であるインジウム・亜鉛酸化物(IZO)を、異屈折率領域92の材料にIZO(第1電極931及び第2電極932と同じ材料)を、それぞれ用いたものである。また、異屈折率領域92は、半径150nm、高さ200nmの円柱状のものを格子定数500nmの正方格子の格子点に配置している。以下、この例の太陽電池を「PC(フォトニック結晶:Photonic Crystal)有りの例」と呼ぶ。また、この計算は、500~1100nmの波長帯を対象として行った。この波長帯は、Siを用いた光電変換層において光電変換の対象となる波長帯のうち、吸収効率が他の波長帯よりも低く、それゆえに吸収効率を高めることが求められる波長帯である。さらに、PC有りの例との比較のために、光電変換層91に異屈折率領域92を設けない点を除いてPC有りの例と同じ構成を有する太陽電池(「PC無しの例」)についても同様の計算を行った。
【0006】
図16に、波長毎の吸収効率を表したグラフを示す。このグラフによれば、PC有りの例では特定の複数の波長において狭いピークが見られる。このようなピークは、それらの波長に関して2次元フォトニック結晶内に定在波が形成され、それにより、それらの波長の光が光電変換層91内に留まり易くなって、それらの波長における吸収効率が向上することを示している。また、積分吸収効率は、PC無しの例では27.2%であるのに対して、PC有りの例では53.2%という、PC無しの例よりも2倍近く高い値が得られた。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】国際公開WO2011/083674号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、2次元フォトニック結晶を用いた従来の太陽電池では、特定の波長において吸収効率が向上し、それにより、積分吸収効率も向上するため、光電変換効率が高まる。しかしながら、光電変換効率を更に高めるためには、それら特定の波長以外の波長における吸収効率を高めなければならない。
【0009】
また、2次元フォトニック結晶を用いた従来の太陽電池では、光電変換層91への入射光の入射角(光電変換層91の法線と入射光の成す角度)が大きくなるほど、積分吸収効率が低下することが知られている。上記PC有りの例において、入射角が0°(図16に示したもの)、10°、20°、30°及び40°という5つの場合について500~1100nmの波長帯の全体における積分吸収効率を計算したところ、前記入射角の順に53.2%、53.1%、52.6%、48.9%及び47.3%となった。このように入射角による積分吸収効率の相違が存在すると、太陽の位置、すなわち時刻や季節によって積分吸収効率、ひいては光電変換効率が変動してしまう。
【0010】
フォトダイオード、CCD(電荷結合型素子)、CMOS素子(相補型金属酸化膜半導体素子)といった、光を感知する素子である光センサ(それら光センサを多数用いたイメージングセンサを含む)等、太陽電池以外の光デバイスにおいても太陽電池と同様の光電変換層を有するものがある。例えば、そのような構成を有する光センサにおいては、光電変換層に入射した光が変換された電気信号を検出することによって、光の入射が検出される。その際、太陽電池の場合と同様に光電変換層に2次元フォトニック結晶を設けると、光の積分吸収効率が向上するため、電気信号の強度が大きくなり、それにより光の検出感度が高くなる。しかしながら、上述のように、波長毎の吸収効率は特定の複数の波長においてのみ高くなるため、それら特定の波長の光の検出感度のみが高くなり、それ以外の波長の光の検出感度が低くなってしまう。このような光センサは、白色光のように連続的な波長スペクトルを有する光の検出には適さない。また、光の入射角によって検出感度が異なるという問題も生じる。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、太陽電池や光センサ等の光デバイスにおいて光の波長や入射角等に依存した特性の変化を小さくしたり効率を高めたりするために用いることができる2次元フォトニック結晶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1) 第1の態様の2次元フォトニック結晶
上記課題を解決するために成された本発明に係る2次元フォトニック結晶の第1の態様のものは、
板状の本体内に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域が、該本体に平行な2次元格子の各格子点に配置されて成る2次元フォトニック結晶であって、
各異屈折率領域が、前記2次元格子の各格子点から前記2次元格子面に平行に、最大ずれ量Δpmax(≠0)以下のずれ量Δpだけランダムにずれて配置されている
ことを特徴とする。
【0013】
第1の態様の2次元フォトニック結晶では、異屈折率領域が、2次元格子の各格子点からその格子面に平行に、最大ずれ量Δpmax以下のずれ量(距離)Δpだけランダムに(すなわち、ランダムな大きさ及び方向に)ずれて配置されていることにより、2次元フォトニック結晶には、周期性がある程度保持されつつ乱れ(ランダムネス)が導入された屈折率分布が形成される。そのため、2次元フォトニック結晶内における波長毎の光の共振強度分布は、格子点の基本的な周期性に対応した複数の波長においてピークを有する形状を呈するものの、そのランダムネスによって、それらのピークトップの高さが低くなる一方、幅が広くなるため、ピークトップからある程度離れた波長では共振強度が大きくなる。すなわち、ランダムネスが無い場合よりも、波長による結晶内での光の共振強度分布の変化が小さくなる。
【0014】
そのため、例えば、第1の態様の2次元フォトニック結晶構造を太陽電池や光センサの光電変換層に形成すると、光電変換層における波長毎の入射光の吸収効率の分布において、ランダムネスが無い場合よりも、各ピークの幅が広くなる。すなわち、ランダムネスが無い場合と比較すると、ピークトップではやや吸収効率の値が小さくなるものの、それ以外の波長では吸収効率の値が大きくなり、吸収効率の波長依存性が少なくなる。従って、光センサでは、光の検出感度の波長依存性が少なくなり、例えば環境の影響で波長がずれたり広がった検出光であってもより適切に検出することができるようになる。波長域全体としての吸収効率(積分吸収効率)は、ピークトップでの吸収効率の低下とそれ以外の波長での吸収効率の向上という上述の2つの作用の兼ね合いにより定まるが、最大ずれ量Δpmaxの値が比較的小さい場合には、ランダムネスが無い場合よりも高くなる傾向にある。従って、最大ずれ量Δpmaxの値を比較的小さくすることにより、太陽電池における発電効率を向上させることができる。
【0015】
また、最大ずれ量Δpmaxの値に関わらず、ランダムネスが無い場合よりも、ランダムネスを導入した場合には、入射光の光電変換層への入射角の変化による波長毎の吸収効率及び積分吸収効率の変化は小さくなる。また、最大ずれ量Δpmaxの値を大きくするほど、入射角の変化による積分吸収効率の変化の度合いは小さくなる。従って、最大ずれ量Δpmaxの値を或る程度大きくしておくことにより、太陽電池においては入射角の変化による発電効率の変化の度合いを、光センサにおいては入射角の変化による検出感度の変化の度合いを、それぞれ小さくすることができる。
【0016】
上記2次元格子には、典型的には正方格子や三角格子が用いられるが、それら以外の2次元格子である長方格子、面心長方格子、斜方格子等を用いることもできる。
【0017】
屈折率分布の周期長よりも最大ずれ量Δpmaxの方が大きいと、屈折率分布は周期性があるものよりもそれが全くないものに近くなる。この場合、周期性を導入することにより、特定の波長を持つ光において共振強度が向上するという2次元フォトニック結晶構造の効果自体が著しく小さくなる。特に、最大ずれ量Δpmaxが2次元格子の周期長の1/2を超えると、ずれ量Δpが1/2を超える異屈折率領域の位置は、そのずれ量を定める原点となる格子点よりも他の格子点に近くなるため、その2次元格子の周期性を反映しなくなる。そのため、最大ずれ量Δpmaxは、2次元格子の周期長の1/2以下とすることが望ましい。
【0018】
本発明において、各異屈折率領域は各格子点からランダムにずれて配置されているが、そのランダムさには分布を持たせることもできる。本発明ではその場合でも、最大ずれ量がΔpmaxを超えないようにしている。これは、例えばガウス分布(正規分布)のようにΔpの大きい部分においても(僅かであっても)ずれの存在が許容されるような分布(すなわち、テールを有する分布)とすると、そのテール部分による悪影響が生じるためである。
なお、ガウス分布において最大ずれ量がΔpmaxを超えないようにしたものよりも、最大ずれ量Δpmax以下の範囲内、すなわち0から最大ずれ量Δpmaxの間において、格子点からのずれの距離及び方向が一様に分布しているものの方が、積分吸収効率を高めることができる。
【0019】
第1の態様の2次元フォトニック結晶は、以下に述べる超格子構造を有していてもよい。そのような2次元フォトニック結晶は、板状の本体内に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域が、該本体に平行な2次元格子の各格子点に配置されて成る2次元フォトニック結晶であって、
前記2次元格子の連接する複数個の格子点から成る超格子を単位格子とする超格子構造を備え、
各超格子において、
a) 予め定められた1個又は複数個の格子点において、各格子点から該2次元格子の格子面に平行に、第1最大ずれ量Δp1max(≠0)以下のずれ量Δpだけランダムにずれて配置された第1異屈折率領域と、
b) 前記第1異屈折率領域が配置された格子点以外の格子点において、各格子点から該2次元格子の格子面に平行に、第2最大ずれ量Δp2max以下のずれ量Δpだけランダムにずれて配置された第2異屈折率領域と
が存在することを特徴とする。
【0020】
ここで、各超格子において第1異屈折率領域(及びそれが配置される格子点)の個数は、各超格子内の異屈折率領域(格子点)の個数よりも少なくする。従って、各超格子において、第2異屈折率領域(及びそれが配置される格子点)は少なくとも1個存在する。また、第1異屈折率領域と第2異屈折率領域の個数は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、第2最大ずれ量Δp2maxは、第1最大ずれ量Δp1maxよりも、大きくてもよいし、小さくてもよい。さらには、第1最大ずれ量Δp1maxと第2最大ずれ量Δp2maxは同じであってもよいが、この場合は実質的には超格子構造の無い第1の態様の2次元フォトニック結晶と同じ構成になる。
【0021】
このような超格子構造を有する2次元フォトニック結晶においては、第1異屈折率領域と第2異屈折率領域のうち最大ずれ量が小さい方の異屈折率領域によって、比較的周期性が高い屈折率分布が形成され、それにより波長毎の光の共振強度のピークが特定の波長において高くなる。また、最大ずれ量が大きい方の異屈折率領域により形成される大きいランダムネスによって、前記ピークの幅が広くなる。そのため、このような2次元フォトニック結晶は、光電変換層における積分吸収効率をより高める方向に作用する。
【0022】
上述の超格子構造を有する2次元フォトニック結晶では、前記第2最大ずれ量Δp2maxが0である、すなわち全ての第2異屈折率領域が格子点に配置されていてもよい。これにより、第2異屈折率領域の屈折率分布が完全な周期性を有することとなるため、波長毎の光の共振強度のピークを特定の波長においてより高くすることができる。
【0023】
また、上述の超格子構造を有する2次元フォトニック結晶では、全ての第1異屈折率領域の格子点からのずれの距離及び方向は一様に分布している方が望ましい。同様に、第2異屈折率領域の格子点からのずれが存在する場合には、全ての第2異屈折率領域における格子点からのずれの距離及び方向は一様に分布している方が望ましい。
【0024】
さらに、超格子構造を有する第1の態様の2次元フォトニック結晶において、異屈折率領域の位置の最大ずれ量を3種以上としても、最大ずれ量が2種である上記の2次元フォトニック結晶と同様の効果を奏する。そのような3種以上の異屈折率領域を用いた2次元フォトニック結晶は、板状の本体内に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域が、該本体に平行な2次元格子の各格子点に配置されて成る2次元フォトニック結晶であって、
前記2次元格子の連接する複数個の格子点から成る超格子を単位格子とする超格子構造を備え、
各超格子において格子点がn個の部分集合に分割され、各部分集合において前記異屈折率領域が各格子点から前記2次元格子の格子面に平行に、最大ずれ量Δpkmax(kは1~nのいずれかの整数。少なくとも1つの部分集合においてΔpkmax≠0。)以下のずれ量Δpだけランダムにずれて配置されていることを特徴とする。
【0025】
このような3種以上の異屈折率領域を用いた2次元フォトニック結晶においても、前記部分集合のうちの1つにおいて、最大ずれ量Δpnmaxを0、すなわちその部分集合において異屈折率領域が全て格子点に配置されていてもよい。また、前記各部分集合のうちの1つ又は複数において、該部分集合に属する全ての異屈折率領域のずれ量Δpが0から前記最大ずれ量Δpnmaxの間で一様に分布していてもよい。
【0026】
(2) 第2の態様の2次元フォトニック結晶
本発明に係る2次元フォトニック結晶の第2の態様のものは、
板状の本体内に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域が、該本体に平行な2次元格子の各格子点に配置されて成る2次元フォトニック結晶であって、
各異屈折率領域の平面形状が、最小値と該最小値よりも大きい最大値の間でランダムな大きさを有する
ことを特徴とする。
【0027】
異屈折率領域の平面形状(本体に平行な断面の形状)は、円(真円)形、楕円形、三角形や四角形等の多角形等、様々な形状のものを適用することができる。また、これら円や楕円の弧、あるいは多角形の辺に凹凸等の変形要素が加わっていてもよい。平面形状の大きさは例えば、面積や、その平面形状において例えば以下に述べるように特定可能な線分の長さで規定することができる。線分の長さは、例えば平面形状が円形の場合には径の長さにより、楕円形の場合には長径又は短径の長さにより、多角形の場合には特定の辺又は対角線の長さにより、定めることができる。
【0028】
また、各異屈折率領域の平面形状は、同一形状(相似形)であってもよいし、異なる形状であってもよい。
【0029】
第2の態様の2次元フォトニック結晶では、異屈折率領域が2次元格子の各格子点に配置されていることによって屈折率の周期的分布が形成される一方、異屈折率領域毎の平面形状の大きさをランダムにすることにより、屈折率の周期的分布の乱れが形成される。これにより、2次元フォトニック結晶には、周期性がある程度保持されつつランダムネスが導入された屈折率分布が形成される。これにより、第2の態様の2次元フォトニック結晶では、第1の態様の2次元フォトニック結晶と同様に、波長毎の光の共振強度分布は格子点の周期性に対応した複数の波長においてピークを有する形状を呈し、そのピークはランダムネスによって高さが低くなる一方、幅が広くなる。すなわち、波長による結晶内での光の共振強度分布の変化が小さくなる。
【0030】
従って、第2の態様の2次元フォトニック結晶構造を太陽電池や光センサの光電変換層に形成すると、第1の態様の場合と同様に、光電変換層における波長毎の入射光の吸収効率の波長依存性が少なくなるため、光センサにおける光の検出感度の波長依存性が少なくなる。また、これも第1の態様の場合と同様、平面形状の大きさの違いが比較的小さい(すなわち、最大値と最小値の差が小さい)場合には、積分吸収効率が高くなる。これにより、上記同様、太陽電池における発電効率を向上させることができる。また、入射光の光電変換層への入射角の変化による積分吸収効率の変化も同様に小さくなるため、太陽電池においては入射角の変化による発電効率の変化の度合いを、光センサにおいては入射角の変化による検出感度の変化の度合いを、それぞれ小さくすることができる。
【0031】
前記同様の理由により、第2の態様の2次元フォトニック結晶においても、個々の異屈折率領域における平面形状の大きさは最大値と最小値の間になければならない。そして、その範囲内では一様に分布していることが望ましい。
【0032】
また、第2の態様の2次元フォトニック結晶は超格子構造を有していてもよく、それにより、超格子構造を有する第1の態様の2次元フォトニック結晶と同様の効果を奏する。そのような超格子構造を有する第2の態様の2次元フォトニック結晶は、板状の本体内に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域が、該本体に平行な2次元格子の各格子点に配置されて成る2次元フォトニック結晶であって、
前記2次元格子の連接する複数個の格子点から成る超格子を単位格子とする超格子構造を備え、
各超格子において、
a) 予め定められた1個又は複数個の格子点に配置された第1の異屈折率領域であって、平面形状が第1の最小値と該第1の最小値よりも大きい第1の最大値の間でランダムな大きさを有する第1異屈折率領域と、
b) 前記第1異屈折率領域が配置された格子点以外の格子点に配置された第2の異屈折率領域であって、平面形状が第2の最小値と第2の最大値の間でランダムな大きさを有する第2異屈折率領域と
が存在することを特徴とする。
【0033】
第2の最小値は第1の最小値と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第2の最大値は第1の最大値と同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、第1の最小値と第2の最小値が同じであって、且つ第1の最大値と第2の最大値が同じである場合には、実質的には超格子構造が無い第2の態様の2次元フォトニック結晶と同じ構成になる。さらには、第1異屈折率領域及び第2異屈折率領域の平面形状は、同一形状(相似形)であってもよいし、異なる形状であってもよい。
【0034】
また、第2の最小値と第2の最大値は同じ値、すなわち全ての第2異屈折率領域の平面形状の大きさが同じであってもよい。これは、第1の態様の2次元フォトニック結晶に超格子を設けた場合において第2最大ずれ量Δp2maxを0にした場合に相当する。
【0035】
また、超格子構造が無い場合と同様に、全ての第1異屈折率領域及び/又は第2異屈折率領域の平面形状の大きさは一様に分布していることが望ましい。
【0036】
さらに、超格子構造を有する第2の態様の2次元フォトニック結晶において、異屈折率領域の平面形状の最大値及び/又は最小値の組み合わせを3種以上としても、上述の2種の異屈折率領域を用いた超格子構造を有する2次元フォトニック結晶と同様の効果を奏する。そのような3種以上の異屈折率領域を用いた2次元フォトニック結晶は、板状の本体内に該本体とは屈折率が異なる異屈折率領域が、該本体に平行な2次元格子の各格子点に配置されて成る2次元フォトニック結晶であって、
前記2次元格子の連接する複数個の格子点から成る超格子を単位格子とする超格子構造を備え、
各超格子において格子点がn個の部分集合に分割され、各部分集合において前記異屈折率領域の平面形状の大きさが最小値と最大値(少なくとも1つの部分集合において最小値と最大値が異なる値を有する)の間でランダムな大きさを有することを特徴とする。
【0037】
このような3種以上の異屈折率領域を用いた2次元フォトニック結晶においても、前記部分集合のうちの1つにおいて、前記異屈折率領域の平面形状が同じ大きさを有するようにしてもよい。また、前記部分集合のうちの1つ又は複数において、該部分集合に属する全ての異屈折率領域の大きさが前記最小値から前記最大値の間で一様に分布するようにしてもよい。
【0038】
ここまで、異屈折率領域が格子点からランダムにずれた位置に配置された第1の態様の2次元フォトニック結晶と、異屈折率領域の平面形状の大きさがランダムである第2の態様の2次元フォトニック結晶について説明したが、これら位置のずれのランダムネスと、大きさのランダムネスを組み合わせて用いてもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、太陽電池や光センサ等の光デバイスにおいて、入射光の波長や入射角等の変化による吸収効率の分布等の特性の変化を小さくすることができ、また、全体としての吸収効率を高めることもできる2次元フォトニック結晶が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る2次元フォトニック結晶を用いた太陽電池の第1実施例を示す縦断面図(a)、2次元フォトニック結晶構造を示す横断面図(b)、及び(b)の部分拡大図(c)。
【図2】第1実施例において光電変換層における太陽光の吸収効率を計算した結果を示すグラフ。
【図3】図2に示した例における異屈折率領域のずれ量Δpの分布(a)、及びΔpの分布の他の例(b)~(d)を示すグラフ。
【図4】第1実施例において、正方格子の周期長a及び異屈折率領域の径rが図2に示した例とは異なる光電変換層における太陽光の吸収効率を計算した結果を示すグラフ。
【図5】第1実施例において入射角θ及び最大ずれ量Δpmaxの違いによる吸収効率の違いを計算した結果を示すグラフ。
【図6】本発明に係る2次元フォトニック結晶を用いた太陽電池の第2実施例を示す縦断面図(a)及び2次元フォトニック結晶構造を示す横断面図(b)。
【図7】第2実施例において光電変換層における太陽光の吸収効率を計算した結果を示すグラフ。
【図8】本発明に係る2次元フォトニック結晶を用いた太陽電池の第3実施例における2次元フォトニック結晶構造を示す横断面図。
【図9】第3実施例において吸収効率を計算した例の結果を示すグラフ。
【図10】第3実施例において、正方格子の周期長a及び異屈折率領域の径rが図9に示した例とは異なる光電変換層における太陽光の吸収効率を計算した結果を示すグラフ。
【図11】第3実施例において、最大ずれ量Δpmaxが異なる3種以上の異屈折率領域を有する2次元フォトニック結晶の超格子構造を示す横断面図。
【図12】本発明に係る2次元フォトニック結晶を用いた太陽電池の第4実施例における2次元フォトニック結晶構造を示す横断面図。
【図13】本発明に係る2次元フォトニック結晶を用いた太陽電池の第5実施例における2次元フォトニック結晶構造を示す横断面図。
【図14】従来の2次元フォトニック結晶を用いた光電変換素子の一例を示す縦断面図(a)、及びn層を通過する横断面における該フォトニック結晶の横断面図(b)。
【図15】光の吸収効率の計算に用いた太陽光のスペクトル強度を示すグラフ。
【図16】従来の光電変換素子における光の波長毎の吸収効率の例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明に係る2次元フォトニック結晶の実施例として、かかる2次元フォトニック結晶を有する太陽電池の例を、図1~図13を用いて説明する。なお、太陽電池の構成は、後述のように光センサにもそのまま適用することができる。そのため、以下では、光センサについては、それに特有の(太陽電池にはない)作用・効果についてのみ述べる。
【実施例1】
【0042】
(1) 第1実施例の太陽電池10の構成
本発明の第1実施例である太陽電池10について説明する。この太陽電池10は、図1(a)に示すように、p型半導体から成るp層111、真性半導体から成るi層112及びn型半導体から成るn層113の3層により構成される、いわゆる「pin構造」の光電変換層11を有する。光電変換層11内には、後述のように2次元フォトニック結晶構造が形成されている。光電変換層11の外側には、光電変換層11を挟むように第1電極131及び第2電極132が設けられている。また、第1電極131の外側(光電変換層11の反対側)には反射層14が、第2電極132の外側には受光面となるガラス基板15が、それぞれ設けられている。本実施例では、p層111、i層112及びn層113の材料にはSi半導体(電気的特性は上述のように各層で異なる)の微結晶を、第1電極131及び第2電極132の材料には前述のIZOを、反射層14の材料にはAgを、それぞれ用いた。
【実施例1】
【0043】
本実施例における光電変換層11内の2次元フォトニック結晶構造は、光電変換層11内に、それとは屈折率が異なる異屈折率領域12が多数、後述の位置に配置されることにより形成されている(図1(b))。異屈折率領域12の材料にはIZO、すなわち第2電極132と同じ材料を用いた。これは、第2電極132と異屈折率領域12の境界において、屈折率差に起因した界面による光の反射が生じることを防ぎ、光電変換層11における光の吸収効率を高めることを目的としている。異屈折率領域12の形状は、本実施例では、光電変換層11に垂直な方向を軸方向とする円柱状である。従って、光電変換層11に平行な面における異屈折率領域12の形状(平面形状)は円形である。また、異屈折率領域12の高さ(光電変換層11に垂直な方向の大きさ)は、n層113の第2電極132側の表面からi層112の途中まで達する、すなわちp層111までは達しないように定めた。これは、異屈折率領域12がp層111まで達すると、光電変換によって生じた電荷が、導電性の材料から成る異屈折率領域12を通してp層111とn層113の間でリークしてしまうためである。
【実施例1】
【0044】
本実施例における光電変換層11内の2次元フォトニック結晶構造では、図1(b)に示すように、正方格子16の格子点1個あたりに異屈折率領域12が1個、配置されている。ただし、異屈折率領域12と格子点の位置関係は、格子点毎に異なる。すなわち、異屈折率領域12の平面形状である円の中心Cは、その異屈折率領域12が属する格子点からずれ量(距離)Δpだけずれている。そのずれ量Δpの大きさ及びずれの方向は、異屈折率領域12毎に異なっている、すなわちランダムである。本願では、全ての異屈折率領域12を通じて最も大きいずれ量Δpの値を、前述のようにΔpmaxと呼ぶ。本実施例では、図3(a)に示すように、全ての異屈折率領域12のずれ量Δpの大きさは、0以上かつΔpmax以下の範囲内で一様に分布している(従って、格子点からのずれの無い異屈折率領域12も存在する)。言い換えれば、全ての異屈折率領域12のずれ量Δpの分布は、0以上かつΔpmax以下の範囲内では有限の値を有し、Δpmaxよりも大きい範囲内では0である階段関数で表される。なお、ずれ量Δpを定めるために用いる異屈折率領域12の位置の基準は、本実施例では円の中心としたが、後述のように異屈折率領域12が円以外の平面形状を有する場合には、平面形状の重心(言うまでもなく、円では中心と重心が一致している)を用いることができる。
【実施例1】
【0045】
(2) 第1実施例の太陽電池10の動作(作用・効果)
本発明の太陽電池10の動作を説明する。太陽光が受光面(ガラス基板15)から入射すると、太陽光のエネルギーの一部が光電変換層11に吸収され、そのエネルギーによって光電変換層11の半導体内の電子が価電子帯から伝導帯に励起されることにより、電流に変換される。
その際、光電変換層11内に形成されている2次元フォトニック結晶において、太陽光のうち正方格子16の周期長に対応した、複数の特定の波長を有する光が定在波を形成する。これにより、それらの波長の光は光電変換層11内に留まり易くなり、2次元フォトニック結晶が無い場合よりも入射光の吸収効率が向上する。また、本発明の太陽電池10では、異屈折率領域12の位置が正方格子16の格子点からランダムなずれ量Δp及びランダムな方向にずれていることにより、上記定在波を形成する波長においては、このずれが無い場合よりも吸収効率が低下するものの、それらの波長からある程度離れた波長における吸収効率は上昇する。
これら波長毎の吸収効率の低下及び上昇の兼ね合いにより、Δpmaxがある程度の値以下の場合には、吸収効率を高めようとする波長帯(本実施例では500~1100nm)全体での積分吸収効率が向上する。これにより、光電変換層11に入射した光が光電変換に寄与する確率が高くなるため、光電変換効率が向上する。
また、Δpmaxの大きさに関わらず、光電変換層11への太陽光の入射角の変化による積分吸収効率の変化が小さくなり、それにより光電変換効率の変化も小さくなる。従って、太陽電池10を固定架台に固定した状態で時間や季節により太陽光の入射角度が変化しても、光電変換効率の変化を小さくすることができる。
【実施例1】
【0046】
(3) 光センサの動作(作用・効果)
本発明の太陽電池10と同じ構成(図1参照)を有する光センサの動作を説明する。光電変換層11において光電変換が生じる波長の光が受光面(ガラス基板15)から入射すると、その光のエネルギーが光電変換層11に吸収され、そのエネルギーによって光電変換層11の半導体内の電子が価電子帯から伝導帯に励起されることにより、電流に変換される。この電流を検出することにより、光の入射を検出することができる。その際、太陽電池の場合と同様に、光電変換層11内に形成されている2次元フォトニック結晶にランダムネスが導入されていることにより、ランダムネスが無い場合よりも、上記定在波を形成する波長においては吸収効率が低下する一方、それらの波長からある程度離れた波長における吸収効率は上昇する。これにより、光を検出可能な波長帯内における検出感度の波長依存性が少なくなる。また、光電変換層11への太陽光の入射角の変化による(波長毎の)吸収効率の変化が小さくなり、それにより、入射角の変化による検出感度の変化を小さくすることができる。
【実施例1】
【0047】
(4) 第1実施例の太陽電池10の吸収効率を計算した結果
以下、太陽電池10における上述の作用・効果を確認するために、最大ずれ量Δpmaxのみが異なる複数の例において、波長毎の吸収効率A(λ)及び積分吸収効率Aiを計算した結果を説明する。
まず、図2を用いて、正方格子16の周期長aが500nm、異屈折率領域12における平面形状の円の半径rが300nm、異屈折率領域12の高さが200nm、光電変換層11の厚みが500nm、光電変換層11への入射角θ(光電変換層11の法線と入射光の成す角度)が0°の場合について計算を行った結果を説明する。この計算は、最大ずれ量Δpmaxが(a)0(比較例)、(b)0.05a(25nm)、(c)0.1a(50nm)、(d)0.3a(150nm)、(e)0.5a(250nm)及び(f)0.7a(350nm)の6種類の場合について行った。積分吸収効率Aiの計算においては、上述の式(1)を用いた。
【実施例1】
【0048】
この計算の結果、図2(a)~(f)からわかるように、吸収効率A(λ)は特定の複数の波長でピークを有するが、そのピークはΔpmaxが大きくなるほど、ピークトップの高さが低く、且つ幅が広くなる。このように幅が広くなることにより、ピークトップからある程度以上離れた波長においては吸収効率A(λ)が高くなる。そして、積分吸収効率Aiは、Δpmaxが(b)0.05a及び(c)0.1aの場合に、ランダムネスが無い(a)の場合よりも高くなる。
【実施例1】
【0049】
また、Δpmaxが大きくなるほど、吸収効率A(λ)の波長依存性が少なくなるため、この太陽電池10の構成を適用した光センサでは、検出感度の波長依存性が少なくなる。
【実施例1】
【0050】
これと同様の計算を、周期長aが350nm、半径rが140nmの場合において行った結果を図4に示す。この例では、最大ずれ量Δpmaxは(a)0.05a(17.5nm)、(b)0.1a(35nm)、(c)0.15a(52.5nm)、(d)0.2a(70nm)、(e)0.3a(105nm)及び(f)0.5a(175nm)とした。この例においても、ピークはΔpmaxが大きくなるほど、ピークトップの高さが低く、且つ幅が広くなる。そして、この例においては、(a)~(f)の全ての場合において、積分吸収効率Aiはランダムネスが無い場合よりも高くなり、この計算の範囲内では(d)のΔpmax=0.2aの時に最も高くなる。この(d)の場合の積分吸収効率Aiの値は、ランダムネスが無い場合よりも6.0%高い。
【実施例1】
【0051】
次に、図2の計算を行った構成のうちΔpmax=0, 0.1a及び0.3a(図2(a), (c)及び(d))の3つにおいて、光電変換層11への太陽光の入射角θを10°、20°、30°及び40°とした場合における波長毎の吸収効率A(λ)及び積分吸収効率Aiを計算した結果を図5に示す。最大ずれ量Δpmaxが0(図5(a)、比較例)の場合には、入射角θの違いにより、吸収効率A(λ)のグラフの曲線が大幅に異なり、積分吸収効率Aiも53.9%(入射角θが0°の場合。図2(a)参照。)から47.3%(θ=40°)の範囲内で異なる値を有する。それに対して、最大ずれ量Δpmaxが0.1a及び0.3a(図5(b), (c))の場合には、比較例よりも入射角θによる吸収効率A(λ)のグラフの曲線の相違が小さくなる。また、Δpmaxが0.1aの場合における積分吸収効率Aiは、54.4%(θ=0°)から51.8%(θ=30°)の範囲内になり、比較例よりも入射角θによる積分吸収効率の相違が小さくなる。さらには、Δpmaxが0.3aの場合における積分吸収効率Aiは、50.2%(θ=0°)から49.6%(θ=40°)の範囲内となり、入射角θによる積分吸収効率Aiの相違がほとんど無くなる。
【実施例1】
【0052】
(5) 変形例
第1実施例の太陽電池の構成は、例えば以下に示すように、種々の変形が可能である。
光電変換層11のp層111、i層112及びn層113の材料は上記のSi半導体の多結晶には限られず、Si半導体の薄膜単結晶やアモルファスを用いることができ、また、Cu(In,Ga)Se2等のその他の半導体を用いることもできる。これらのうちSi半導体の薄膜単結晶を用いた光電変換層は、それ自体により太陽電池や光センサの特性を高めることができる。また、Si半導体やCu(In,Ga)Se2の多結晶から成る光電変換層11の作製には、CVD法を用いることができるため、以下の理由により、第1実施例の太陽電池(光センサ)を容易に作製することができる。
第1実施例の太陽電池(光センサ)を作製する際には、(i)第2電極132及び異屈折率領域12を作製した後に、それら第2電極132及び異屈折率領域12の上に光電変換層11を作製する方法や、(ii)光電変換層11を作製した後に、光電変換層11に周期的に空孔を設け、それら空孔及び光電変換層11の表面に第2電極132及び異屈折率領域12を作製する方法を取ることができる。これらの方法のうち、(i)を例に取ると、第2電極132及び異屈折率領域12によって凹凸が形成された面の上に光電変換層11を作製することにより、光電変換層11が凹部でで途切れる(いわゆる「段切れ」が生じる)おそれがある。(ii)の場合も同様である。それに対して、(i)の方法においてCVD法を用いて(Si半導体やCu(In,Ga)Se2の多結晶から成る)光電変換層11を作製すると、光電変換層11の材料が凹部に行き渡り、段切れが生じ難くなる。
【実施例1】
【0053】
光電変換層11には、p層111とn層113が隣接した、いわゆる「pn構造」を取るものを用いることもできる。
第1電極131及び第2電極132も上記の材料には限られず、第2電極132においては太陽光に関してある程度透明であれば、インジウム・錫酸化物(ITO)、SnO2、ZnO等の種々の電極材料を用いることができる。また、第1電極131は太陽光に関して透明である必要は無く、AgやAl等)の種々の電極材料を用いることができる。
【実施例1】
【0054】
異屈折率領域12の材料は、第2電極132(及び光電変換層11)とは異なるものであってもよい。そのような材料には、例えば、空気(すなわち、異屈折率領域12を空孔とする)やSiO2等を用いることができる。また、異屈折率領域12の材料に絶縁体を用いる場合には、異屈折率領域12はp層111からn層113に達するように形成してもよい。
異屈折率領域12の形状は円柱には限られず、例えば楕円柱、三角柱、四角柱等の種々の形状を取り得る。また、円錐、三角錐、四角錐のように光電変換層11の厚み方向に形状(大きさ)が異なる形状のものを用いることもできる。さらには、円柱の一部に凹部や凸部を有する等の一定の形状を有していてもよい。
また、異屈折率領域12が配置される格子点を形成する格子は、正方格子には限られず、三角格子やハニカム格子等の格子を用いることもできる。
異屈折率領域12毎のずれ量Δpの分布は、図3(a)に示したずれ量Δpが0からΔpmaxの間において一様なものには限られず、例えば図3(b)に示すようにずれ量Δpが0からΔpmaxの間においてガウス分布型(Δpmaxよりも大きい範囲では0)の分布を有するものであってもよい。あるいは、図3(c), (d)に示すように、ずれ量Δpの分布はずれ量Δpが0からΔpmaxの間において負の傾きを有する1次関数で減少するものであってもよい。
【実施例2】
【0055】
本発明の第2実施例である太陽電池20について説明する。太陽電池20は、図6に示すように、光電変換層11内に形成された2次元フォトニック結晶構造の構成を除いて、第1実施例の太陽電池10と同様の構成を有する。
【実施例2】
【0056】
第2実施例における2次元フォトニック結晶構造は、円柱状の異屈折率領域22が正方格子16の格子点1個あたりに1個ずつ設けられている点では、第1実施例における2次元フォトニック結晶構造と同様である。本実施例では、異屈折率領域22の平面形状である円の中心は、正方格子16の格子点上に配置されている。そして、各異屈折率領域22におけるこの円の径(大きさ)rは、最小値rminと最小値rmaxの間で、ランダムな値を有している。なお、隣接する2個の異屈折率領域22の径rの和が正方格子16の周期長aよりも大きくなるとそれら2個の異屈折率領域22が繋がった1個の部材22Aになる(図6参照)が、これら2個の異屈折率領域22がそれぞれ正方格子16の周期に応じた屈折率分布を形成するため、差し支えない。
【実施例2】
【0057】
第2実施例の太陽電池20の動作は、基本的には第1実施例の太陽電池10と同様である。第2実施例では、2次元フォトニック結晶が径rに関してランダムネスを有することにより、ランダムネスが無い場合よりも、2次元フォトニック結晶内に形成される定在波の波長においては吸収効率が低下するものの、それらの波長からある程度離れた波長における吸収効率は上昇する。これにより、最小値rminと最大値rmaxの差をある程度の値よりも小さくすると、積分吸収効率が向上する。また、最小値rminと最大値rmaxの差の大きさに関わらず、光電変換層11への太陽光の入射角の変化による積分吸収効率の変化が小さくなり、それにより光電変換効率の変化も小さくなる。
【実施例2】
【0058】
第2実施例の太陽電池20の構成を光センサに適用した場合には、第1実施例の場合と同様に、光を検出可能な波長帯内における検出感度の波長依存性を少なくすることができると共に、入射角の変化による検出感度の変化を小さくすることができる。
【実施例2】
【0059】
次に、第2実施例の太陽電池20において、最小値rminと最大値rmaxの差ρ=(rmax-rmin)の大きさが異なる複数の例について波長毎の吸収効率A(λ)及び積分吸収効率Aiを計算した結果を説明する。この計算では、正方格子16の周期長aを500nm、異屈折率領域12の高さを200nm、光電変換層11の厚みを500nm、光電変換層11への入射角θを0°とした。最小値rminをいずれの計算においても150nmとし、ρを(a)0nm(すなわち、全ての異屈折率領域の径rが同じである比較例)、(b)25nm、(c)50nm及び(d)75nmとした。各場合において、最小値rminと最大値rmaxの間で一様に分布している。積分吸収効率Aiの計算においては、上述の式(1)を用いた。
【実施例2】
【0060】
この計算の結果を図7に示す。吸収効率A(λ)は特定の複数の波長でピークを有するが、そのピークはρが大きくなるほど、ピークトップの高さが低く、且つ幅が広くなる。このように幅が広くなることにより、ピークトップからある程度以上離れた波長においては吸収効率A(λ)が高くなる。そして、積分吸収効率Aiは、ρ=25nmの場合に、ランダムネスが無い(ρ=0)場合よりも高くなる。
【実施例2】
【0061】
また、ρが大きくなるほど、吸収効率A(λ)の波長依存性が少なくなるため、この太陽電池20の構成を適用した光センサでは、検出感度の波長依存性が少なくなる。
【実施例2】
【0062】
第2実施例の太陽電池20においても、第1実施例の太陽電池10の場合と同様に、種々の変形例を取ることができる。
光電変換層11、第1電極131及び第2電極132、並びに異屈折率領域22の材料は、第1実施例の変形例と同じものを用いることができる。また、光電変換層11には、いわゆる「pn構造」を有するものを用いることもできる。
異屈折率領域22の形状も第1実施例の変形例と同様に種々の形状を取り得る。平面形状の大きさは、例えば楕円の場合には長径又は短径の長さにより、多角形の場合には特定の辺又は対角線の長さにより、定めることができる。異屈折率領域22が配置される格子点を形成する格子も、第1実施例の変形例と同様のものを用いることができる。
最大値rmaxと最小値rminの差ρの値の分布は、0と(rmax-rmin)の間で一様なものには限られず、第1実施例の変形例と同様に、ガウス分布型((rmax-rmin)よりも大きい範囲では0)や1次関数で減少するもの等を用いることができる。
さらに、第2実施例では異屈折率領域22の平面形状の大きさを円の径で定義したが、面積で定義してもよい。
【実施例3】
【0063】
本発明の第3実施例である、超格子構造を有する2次元フォトニック結晶を用いた太陽電池について説明する。この太陽電池は、光電変換層11内に形成された2次元フォトニック結晶の構造を除いて、第1実施例の太陽電池10と同様の構成を有する。第3実施例の太陽電池における2次元フォトニック結晶36Aでは、図8(a)に示すように、光電変換層11内に、第1異屈折率領域321及び第2異屈折率領域322が、正方格子16の各格子点に配置されている。第1異屈折率領域321と第2異屈折率領域322は同じ大きさの円柱状のものであり、その材料も同じ(IZO)である。第1異屈折率領域321は、格子点から、第1最大ずれ量Δp1max(≠0)以下のずれ量Δpだけランダムにずれて配置されている。一方、第2異屈折率領域322は格子点からずれることなく(第2最大ずれ量Δp2maxが0)配置されている。
【実施例3】
【0064】
この2次元フォトニック結晶36Aでは、正方格子16の縦方向及び横方向共に、第1異屈折率領域321と第2異屈折率領域322が交互に配置されている。これにより、正方格子16の縦方向に2周期分、及び横方向に2周期分の合計4個の格子点に、2個の第1異屈折率領域321と2個の第2異屈折率領域322から成る単位超格子37Aが周期的に配置された超格子が形成されている。この単位超格子37Aを1周期分(正方格子16の2周期分)、縦方向又は横方向に(仮想的に)移動させると、正方格子16の格子点は隣接する超格子内の格子点に一致するが、第1異屈折率領域321は格子点からランダムにずれて配置されているため、隣接する超格子内の第1異屈折率領域321とは(偶然、ずれ量及びずれの方向が同じである場合を除いて)一致しない。
【実施例3】
【0065】
このような超格子構造を有する2次元フォトニック結晶36Aを光電変換層11内に形成することにより、位置のずれの無い第2異屈折率領域322により形成される周期的な屈折率分布によって、光電変換層11に入射した太陽光に含まれる所定の複数の波長を持つ光が定在波を形成し易くなり、それら波長における入射光の吸収効率を高めることができる。それと共に、位置のずれを有する第1異屈折率領域321が存在することにより、上記所定の波長では吸収効率が低下する方向に作用するものの、それらの波長からある程度離れた波長における吸収効率は上昇する。これにより、Δp1maxがある程度小さい範囲では積分吸収効率が向上し、光電変換効率も向上する。また、Δp1maxの値に関わらず、光電変換層11への太陽光の入射角の変化による積分吸収効率の変化が小さくなり、それにより光電変換効率の変化も小さくなる。
また、超格子構造を有する2次元フォトニック結晶36Aを光センサの光電変換層内に形成すると、上記所定の波長では吸収効率が低下するのに対して、それらの波長からある程度離れた波長における吸収効率は上昇するため、波長による吸収効率の変化が小さくなる。そのため、波長による検出感度の変化も小さくなる。
一方、この2次元フォトニック結晶36Aにおいて、第1異屈折率領域321だけではなく、第2異屈折率領域322を格子点からランダムにずれるように、すなわち、第2最大ずれ量Δp2maxが0以外の値を取るように配置してもよい。
【実施例3】
【0066】
第3実施例の太陽電池について、波長毎の吸収効率A(λ)及び積分吸収効率Aiを計算した結果を、図9を用いて説明する。この計算では、周期長aを500nm、第1異屈折率領域321及び第2異屈折率領域322における平面形状の円の半径rを300nmとした。その他の条件は、異屈折率領域の位置に関する条件を除いて、第1実施例で行った2つの計算の条件と同じとした。ここでは、第2異屈折率領域322が格子点からずれることなく配置された(Δp2max=0の)例として、(b)Δp1max=0.05a、及び(c)Δp1max=0.10aという条件における計算をおこなった。併せて、第2異屈折率領域322が格子点からずれて配置される(Δp2max≠0の)例として、(d)(Δp1max, Δp2max)=(0.15a, 0.03a)、(e)(Δp1max, Δp2max)=(0.20a, 0.04a)、及び(f)(Δp1max, Δp2max)=(0.25a, 0.05a)という条件における計算をおこなった。図9(a)は第1異屈折率領域321及び第2異屈折率領域322共に格子点からのずれのない、比較例の太陽電池に関する計算結果である。
【実施例3】
【0067】
図9の計算結果より、(b)~(f)のいずれの場合も、従来の(a)の場合よりも波長毎の吸収効率A(λ)のピーク幅が広くなり、波長依存性が小さくなっていることがわかる。また、(b)及び(c)では、積分吸収効率Aiが従来の(a)の場合よりも向上している。
【実施例3】
【0068】
続いて、図10に、a=350nm、r=140nmであって、(a)Δp1max=0.05a、(b)Δp1max=0.10a、(c)Δp1max=0.15a、(d)Δp1max=0.20a、(e)Δp1max=0.25a、及び(f)Δp1max=0.50aの(第2異屈折率領域322は格子点からずれることなく配置されている)場合について、図9の場合と同様の計算を行った結果を示す。(a)~(f)のいずれの場合も、波長毎の吸収効率A(λ)の波長依存性が小さくなると共に、積分吸収効率が従来のものよりも1.0%((a)の場合)~7.3%((f)の場合)向上している。
【実施例3】
【0069】
第3実施例の太陽電池は、以下に述べるように種々の変形が可能である。例えば、縦方向及び横方向共に2個、合計4個の異屈折率領域を有する場合において、それらのうち3個を第2異屈折率領域322とし、残り1個のみを第1異屈折率領域321とする単位超格子37Bを形成してもよい(図8(b))。また、それら4個の異屈折率領域のうち1個のみを第2異屈折率領域322とし、残り3個を第1異屈折率領域321としてもよい。あるいは、単位超格子37Cを、正方格子16の縦方向及び横方向共に3個、合計9個の格子点から成るものとし、それら格子点のうちの定められた1個又は複数個の格子点に第1異屈折率領域321を配置し、残りの格子点に第2異屈折率領域322を配置してもよい(図8(c))。あるいは、単位超格子37Cを構成する格子点の数をこれらの例以外にしてもよく、また、縦方向の格子点の数と横方向の格子点の数が異なるようにしてもよい。
【実施例3】
【0070】
また、各部材の材料、第1異屈折率領域321及び第2異屈折率領域322の形状、それら異屈折率領域が配置される格子(超格子ではなく、上記第3実施例における正方格子に相当する格子)の種類、それら異屈折率領域におけるずれ量Δpの分布等は第1実施例と同様の変形が可能である。
【実施例3】
【0071】
さらに、単位超格子内に、最大ずれ量がΔpkmax(kは1~nのいずれかの整数)である第1異屈折率領域、第2異屈折率領域、第3異屈折率領域、...及び第n異屈折率領域を設けてもよい。なお、上述の図8(a)~(c)に示した例はいずれも、n=2の場合に該当する。図11に、n=3である2次元フォトニック結晶の一例を示す。この例では、正方格子16の縦方向に2個、横方向に2個の合計4個の格子点から成る単位超格子37D内に、最大ずれ量がΔp1maxである第1異屈折率領域321が1個、最大ずれ量が0(すなわち、ずれのない)第2異屈折率領域322が2個、及び最大ずれ量がΔp1maxよりも小さいΔp3maxである第3異屈折率領域323が1個配置されている。もちろん、第2異屈折率領域322も最大ずれ量Δp2maxで格子点の位置からずれていてもよい。
【実施例4】
【0072】
図12を用いて、本発明の第4実施例である、第3実施例とは異なる超格子構造を有する2次元フォトニック結晶を用いた太陽電池について説明する。この太陽電池は、光電変換層11内に形成された2次元フォトニック結晶の構造を除いて、第1実施例の太陽電池10と同様の構成を有する。図12(a)に示すように、第4実施例の太陽電池における2次元フォトニック結晶46Aでは、正方格子16の縦方向及び横方向共に、円柱状の第1異屈折率領域421と、同じく円柱状の第2異屈折率領域422が交互に配置されている。これにより、正方格子16の縦方向に2周期分、及び横方向に2周期分の合計4個の格子点に、2個の第1異屈折率領域421と2個の第2異屈折率領域422から成る単位超格子47Aが周期的に配置された超格子が形成されている。第1異屈折率領域421の径は所定の最大値及び最小値の間でランダムな値を有する。一方、第2異屈折率領域422の径は全て同じである。
【実施例4】
【0073】
第4実施例の太陽電池における異屈折率領域の径に関するランダムネスの有無(第1異屈折率領域421では「有」、第2異屈折率領域422では「無」)は、第3実施例の太陽電池における異屈折率領域の位置のずれに関するランダムネスの有無(第1異屈折率領域321では「有」、第2異屈折率領域322では「無」)に対応する。そのため、第4実施例の太陽電池は、第3実施例の太陽電池と同様の作用・効果を奏する。
【実施例4】
【0074】
第4実施例の太陽電池においても、第2実施例(超格子構造を有さず、径に関するランダムネスを有する例)や第3実施例(超格子構造を有し、径以外のランダムネスを有する例)と同様の変形が可能である。例えば、第2異屈折率領域422は、第1異屈折率領域421における径の最大値及び/又は最小値が異なる所定の範囲内において、径がランダムネスを有するようにしてもよい。また、図12(b)に示すように、径の最大値及び/又は最小値が異なる3種以上の異屈折率領域を有する超格子47Bを用いてもよい。図12(b)の例では、超格子47Bは、径が所定の最大値及び最小値の間でランダムな値を有する第1異屈折率領域421を1個、径が全て同じである第2異屈折率領域422を2個、及び第1異屈折率領域421よりも径の最大値が小さく、且つ最小値が大きい第3異屈折率領域423を1個有する。
【実施例5】
【0075】
ここまでは、異屈折率領域の平面形状の大きさ(実施例1、3)と、異屈折率領域の位置(実施例2、4)のいずれか一方にランダムネスを導入した例を示したが、それら平面形状の大きさ及び位置の双方にランダムネスを導入してもよい。図13に示した例では、異屈折率領域52は円柱状であって、正方格子16の格子点から最大ずれ量Δpmax(≠0)の範囲内でランダムなずれ量Δp及びランダムな方向にずれ、且つ、その平面形状の大きさ(径r)も所定の最小値rminと最大値rmaxの間でランダムな値を有する。
【符号の説明】
【0076】
10、20、90…太陽電池
11、91…光電変換層
111、911…p層
112、912…i層
113、913…n層
12、22、52、92…異屈折率領域
131、931…第1電極
132、932…第2電極
14、94…反射層
15、95…ガラス基板
22A…異屈折率領域を構成する部材
321、421…第1異屈折率領域
322、422…第2異屈折率領域
323、423…第3異屈折率領域
36A、46A…2次元フォトニック結晶
37A、37B、37C、37D、47A、47B…単位超格子
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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