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明細書 :核内から細胞質へのターゲットmRNAの輸送を促進する方法、タンパク質の発現方法および製造方法、ならびに、それに用いるキット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6099075号 (P6099075)
公開番号 特開2014-023459 (P2014-023459A)
登録日 平成29年3月3日(2017.3.3)
発行日 平成29年3月22日(2017.3.22)
公開日 平成26年2月6日(2014.2.6)
発明の名称または考案の名称 核内から細胞質へのターゲットmRNAの輸送を促進する方法、タンパク質の発現方法および製造方法、ならびに、それに用いるキット
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12P  21/02        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 5/10
C12P 21/02 C
請求項の数または発明の数 16
全頁数 25
出願番号 特願2012-165287 (P2012-165287)
出願日 平成24年7月26日(2012.7.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 平成23年度受賞者研究成果発表会要旨集(平成24年4月20日)公益財団法人長瀬科学技術振興財団発行に「組換え型タンパク質生産の飛躍的増強を目指す特異的輸送体の分子創成」として発表。
特許法第30条第2項適用 平成24年4月20日大阪科学技術センター8階大ホールにおいて開催された公益財団法人長瀬科学技術振興財団平成23年度受賞者研究成果発表会で発表。
審査請求日 平成27年6月29日(2015.6.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】増田 誠司
個別代理人の代理人 【識別番号】100115255、【弁理士】、【氏名又は名称】辻丸 光一郎
【識別番号】100129137、【弁理士】、【氏名又は名称】中山 ゆみ
【識別番号】100146064、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 玲子
【識別番号】100154081、【弁理士】、【氏名又は名称】伊佐治 創
【識別番号】100183058、【弁理士】、【氏名又は名称】李 京佳
審査官 【審査官】白井 美香保
参考文献・文献 遺伝子発現に必須の4過程を直結・共役した次世代タンパク質生産セルファクトリーの開発,Rep. Grant. Res., Asahi Glass Foundation,2011年,pp.1-6
Journal of Biotechnology,2011年,vol.153,pp.86-91
遺伝子の核内空間配置の制御技術とウイルスRNAの細胞質への輸送メカニズムを融合した革新的医療用有用タンパク質生産システムの開発,Research Papers of The Suzuken Memorial Foundation(医科学応用研究財団研究報告),2011年,vol.28,pp.128-131
JOURNAL OF VIROLOGY,2009年,vol.83 no.24,pp.12759-12768
RNA Biology,2012年 1月,vol.9 no.1,pp.6-11
調査した分野 C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/MEDLINE/BIOSIS(STN)
PubMed
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
真核細胞において、核内から細胞質へのターゲットmRNAの輸送を促進する方法であって、
下記(A1)工程および下記(A2)工程の少なくとも一方の工程を有することを特徴とするmRNA輸送促進方法。
(A1)前記真核細胞において、前記ターゲットmRNAの3’側にMS2結合配列を有する融合RNA(X1)、および、MS2とTAPとを含む融合タンパク質(Y1)を発現させる工程であり、前記真核細胞が、サル、チンパンジー、ハムスター、ラット、マウス、またはウサギの細胞である工程
(A2)前記真核細胞において、前記ターゲットmRNAの3’側にRREを有する融合RNA(X2)、および、Revを含むタンパク質(Y2)を発現させる工程であり、前記真核細胞が、サル、チンパンジー、ハムスター、ラット、マウス、またはウサギの細胞である工程
【請求項2】
前記(A1)工程の前記融合RNA(X1)において、前記MS2結合配列の個数が、2個以上である、請求項1記載のmRNA輸送促進方法。
【請求項3】
前記(A1)工程の前記融合RNA(X1)において、2個以上の前記MS2結合配列が連結している、請求項1または2記載のmRNA輸送促進方法。
【請求項4】
前記(A1)工程において、前記真核細胞に、前記融合RNA(X1)を発現する核酸分子(x1)を導入して、前記融合RNA(X1)を発現させる、請求項1からのいずれか一項に記載のmRNA輸送促進方法。
【請求項5】
前記(A1)工程において、前記真核細胞が、前記融合タンパク質(Y1)を発現する形質転換体である、請求項記載のmRNA輸送促進方法。
【請求項6】
前記真核細胞に、前記融合タンパク質(Y1)を発現する核酸分子(y1)を導入して、前記融合タンパク質を発現させる、請求項記載のmRNA輸送促進方法。
【請求項7】
前記MS2が、配列番号3のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、
前記TAPが、配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質である、請求項1から6のいずれか一項に記載のmRNA輸送促進方法。
【請求項8】
前記(A2)工程の前記タンパク質(Y2)が、Revを含む融合タンパク質である、請求項記載のmRNA輸送促進方法。
【請求項9】
前記(A2)工程において、前記真核細胞に、前記融合RNA(X2)を発現する核酸分子(x2)を導入して、前記融合RNA(X2)を発現させる、請求項1または8記載のmRNA輸送促進方法。
【請求項10】
前記(A2)工程において、前記真核細胞が、前記タンパク質(Y2)を発現する形質転換体である、請求項記載のmRNA輸送促進方法。
【請求項11】
前記(A2)工程において、前記真核細胞に、前記タンパク質(Y2)を発現する核酸分子(y2)を導入して、前記タンパク質を発現させる、請求項記載のmRNA輸送促進方法。
【請求項12】
前記Revが、配列番号9のアミノ酸配列からなるタンパク質である、請求項1および9から11のいずれか一項に記載のmRNA輸送促進方法。
【請求項13】
前記真核細胞が、CHO細胞である、請求項1から12のいずれか一項に記載のmRNA輸送促進方法。
【請求項14】
真核細胞におけるターゲットタンパク質の発現方法であって、
前記真核細胞が、サル、チンパンジー、ハムスター、ラット、マウス、またはウサギの細胞であり、
請求項1から13のいずれか一項に記載のmRNAの輸送促進方法によって、前記ターゲットタンパク質をコードするターゲットmRNAを細胞核から細胞質に輸送させ、前記細胞質において、前記ターゲットタンパク質を発現させることを特徴とするタンパク質の発現方法。
【請求項15】
真核細胞を用いたターゲットタンパク質の製造方法であって、
前記真核細胞が、サル、チンパンジー、ハムスター、ラット、マウス、またはウサギの細胞であり、
請求項14記載の発現方法により、前記ターゲットタンパク質を発現させることを特徴とするタンパク質の製造方法。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか一項に記載のターゲットmRNAの輸送促進方法に使用するキットであって、下記(a1’)および下記(a2’)の少なくとも一方を含むことを特徴とするmRNAの輸送促進用キット。
(a1’)ターゲットmRNAの3’側にMS2結合配列を有する融合RNA(X1)を発現する核酸分子(x1)、および、MS2とTAPとを含む融合タンパク質(Y1)を発現するように形質転換した真核細胞の組換え体であり、前記真核細胞が、サル、チンパンジー、ハムスター、ラット、マウス、またはウサギの細胞である組換え体
(a2’)ターゲットmRNAの3’側にRREを有する融合RNA(X2)を発現する核酸分子(x2)、および、Revを含むタンパク質(Y2)を発現するように形質転換した真核細胞の組換え体であり、前記真核細胞が、サル、チンパンジー、ハムスター、ラット、マウス、またはウサギの細胞である組換え体
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、核内から細胞質へのターゲットmRNAの輸送を促進する方法、タンパク質の発現方法および製造方法、ならびに、それに用いるキットに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野等で利用される有用性の高いタンパク質の多くが、活性のために、糖鎖修飾やジスルフィド結合等の翻訳後修飾を必要としている。このため、工業的に前記有用タンパク質を生産するには、大腸菌等の微生物ではなく、真核細胞、特に動物細胞を宿主として利用し、組換えタンパク質として発現させる方法が一般的である。
【0003】
しかしながら、真核細胞を宿主として使用した場合、微生物と比較して生産性が低いという問題がある。そこで、真核細胞による生産性を向上する方法として、転写を強力に誘導するプロモーターを使用して、mRNAの転写量を増加させる方法が報告されている。具体的には、前記プロモーターとして、サイトメガロウイルスのプロモーター(CMVプロモーター)および転写伸長因子1αのプロモーター等が利用されている(非特許文献1および2)。
【0004】
しかしながら、このような改良によっても、動物細胞等の真核細胞におけるタンパク質の生産性は、十分とはいえず、さらなる改善が望まれている。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Stinski,M.F.,Roehr,T.J.,(1985) J Virol 55,431-441
【非特許文献2】Wakabayashi-Ito,N.,Nagata,S.,(1994) J Biol Chem 269,29831-29837
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、真核細胞におけるタンパク質の生産性を向上するための新たな方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のmRNAの輸送促進方法は、核内から細胞質へのターゲットmRNAの輸送を促進する方法であって、前記真核細胞において、下記(A1)工程および下記(A2)工程の少なくとも一方の工程を有することを特徴とする。
(A1)前記真核細胞において、前記ターゲットmRNAとMS2結合配列とを含む融合RNA(X1)、および、MS2とTAPとを含む融合タンパク質(Y1)を発現させる工程
(A2)前記真核細胞において、前記ターゲットmRNAとRREとを含む融合RNA(X2)、および、Revを含むタンパク質(Y2)を発現させる工程
【0008】
本発明のタンパク質の発現方法は、真核細胞を用いたターゲットタンパク質の発現方法であって、前記本発明のmRNAの輸送促進方法によって、ターゲットタンパク質をコードするターゲットmRNAを細胞核から細胞質に輸送させ、前記細胞質において、前記ターゲットタンパク質を発現させることを特徴とする。
【0009】
本発明のタンパク質の製造方法は、真核細胞を用いたターゲットタンパク質の製造方法であって、前記本発明のタンパク質の発現方法により、前記ターゲットタンパク質を製造することを特徴とする。
【0010】
本発明のキットは、前記本発明のmRNA輸送促進方法に使用するキットであって、下記(a1)および下記(a2)の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
(a1)ターゲットmRNAとMS2結合配列とを含む融合RNA(X1)を発現する核酸分子(x1)、および、MS2とTAPとを含む融合タンパク質(Y1)を発現する核酸分子(y1)
(a2)ターゲットmRNAとRREとを含む融合RNA(X2)を発現する核酸分子(x2)、および、Revを含むタンパク質(Y2)を発現する核酸分子(y2)
【0011】
本発明のキットは、前記本発明のmRNA輸送促進方法に使用するキットであって、下記(a1’)および下記(a2’)の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
(a1’)ターゲットmRNAとMS2結合配列とを含む融合RNA(X1)を発現する核酸分子(x1)、および、MS2とTAPとを含む融合タンパク質(Y1)を発現するように形質転換した真核細胞の組換え体
(a2’)ターゲットmRNAとRREとを含む融合RNA(X2)を発現する核酸分子(x2)、および、Revを含むタンパク質(Y2)を発現するように形質転換した真核細胞の組換え体
【発明の効果】
【0012】
本発明者は、鋭意研究の結果、真核細胞におけるタンパク質の生産性を向上する方法として、核内でのmRNAの転写の促進ではなく、核内で転写されたmRNAについて、核内から細胞質への輸送を促進することによって、細胞質でのタンパク質発現の効率を向上させるとの着想を得た。そして、真核細胞の核内において、(1)ターゲットタンパク質のmRNAをMS2結合配列との融合RNAとして発現させ、且つ、MS2とTAPとの融合タンパク質を発現させることによって、または、(2)ターゲットタンパク質のmRNAをRREとの融合RNAとして発現させ、且つ、Revを含むタンパク質を発現させることによって、前記mRNAの核内から細胞質への輸送を促進し、前記ターゲットタンパク質の発現量を向上させるに到った。これは、(1)前記融合RNAにおけるMS2結合配列と、前記融合タンパク質におけるMS2とが結合することによって、または、(2)前記融合RNAにおけるRREと、前記Revとが結合することによって、核内から細胞質への輸送が促進されたことによると推測される。また、(1)MS2結合配列およびMS2は、それぞれ、真核細胞由来のRNAおよびタンパク質ではなく、MS2ファージ由来のRNAおよびタンパク質であることから、前記MS2結合配列とターゲットmRNAとの融合RNAによって、宿主である真核細胞由来のRNAではなく、前記MS2結合配列と前記ターゲットmRNAとを含む融合RNAの核内から細胞質への輸送を、特異的に促進できる。また、(2)RREおよびRevは、それぞれ、真核細胞由来のRNAおよびタンパク質ではなく、HIV-1(ヒト免疫不全ウイルス-1)由来のRNAおよびタンパク質であることから、前記RREとターゲットmRNAとの融合RNAによって、宿主である真核細胞由来のRNAではなく、前記RREと前記ターゲットmRNAとを含む融合RNAの核内から細胞質への輸送を、特異的に促進できる。つまり、真核細胞の核内におけるRNAの中でも、前記ターゲットmRNAの輸送を特異的に促進できる。このため、前記ターゲットmRNAでコードされるターゲットタンパク質の発現を、特異的に向上することが可能となる。なお、本発明は、この推測に制限されない。
【0013】
このように、本発明によれば、核内で転写されたmRNAの細胞質への輸送を促進できるため、真核細胞内で転写されたmRNAを、細胞質におけるタンパク質の発現に効率良く利用できる。このため、本発明によれば、例えば、翻訳後修飾のために、動物細胞等の真核細胞での発現が必要である有用タンパク質についても、より優れた生産性で製造できる。したがって、本発明は、例えば、製薬、医療等の分野において、極めて有用な技術といえる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のmRNA輸送促進方法は、前述のように、真核細胞において、核内から細胞質へのターゲットmRNAの輸送を促進する方法であって、下記(A1)工程および下記(A2)工程の少なくとも一方の工程を有することを特徴とする。
(A1)前記真核細胞において、前記ターゲットmRNAとMS2結合配列とを含む融合RNA(X1)、および、MS2とTAPとを含む融合タンパク質(Y1)を発現させる工程
(A2)前記真核細胞において、前記ターゲットmRNAとRREとを含む融合RNA(X2)、および、Revを含むタンパク質(Y2)を発現させる工程

【0015】
本発明は、前記(A1)工程および前記(A2)工程のいずれか一方のみを有してもよいし、両方を有してもよい。後者の場合、前記(A1)工程および前記(A2)工程は、例えば、同じ真核細胞に対して、同時に行うことが好ましい。

【0016】
以下、本発明について、前記(A1)工程を採用する形態を実施形態1、前記(A2)工程を採用する形態を実施形態2として、説明する。

【0017】
(実施形態1)
(1)mRNA輸送促進方法
本発明の第1のmRNA輸送促進方法は、前述のように、真核細胞において、核内から細胞質へのターゲットmRNAの輸送を促進する方法であって、前記真核細胞において、下記(A1)工程を有することを特徴とする。
(A1)前記ターゲットmRNAとMS2結合配列とを含む融合RNA(X1)、および、MS2とTAPとを含む融合タンパク質(Y1)を発現させる工程

【0018】
本発明において、宿主となる真核細胞の種類は、特に制限されない。前記真核細胞は、例えば、動物細胞、鳥類細胞、昆虫細胞、酵母細胞等があげられる。前記動物細胞は、例えば、ヒト、サル、チンパンジー等の霊長類、ハムスター、ラット、マウス、ウサギ等のげっ歯類等の哺乳類の細胞があげられる。前記真核細胞は、例えば、生体から採取した細胞でもよいし、継代培養した培養細胞でもよい。前記動物細胞の具体例としては、例えば、HeLa細胞、A549細胞、HEK293細胞、COS細胞等のヒト細胞および霊長類細胞、CHO細胞、BHK細胞、NIH3T3細胞等のげっ歯類細胞等があげられる。また、DT40等のニワトリ細胞、S2、High five、SF9、SF21等の昆虫細胞、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Pichia pastoris等の酵母細胞等があげられる。本発明のmRNA輸送促進方法は、例えば、in vivoで行われてもよいし、in vitroで行われてもよい。

【0019】
本発明において、MS2は、MS2ファージ由来のコートタンパク質であり、MS2結合配列は、前記MS2に結合するMS2ファージ由来のRNAであり、TAPは、ペプチド輸送に関与するタンパク質(TAP;tip associating protein、NXF1ともいう)である。本発明において、前記ターゲットmRNAは、何ら制限されず、例えば、目的のタンパク質をコードするmRNAであり、前記タンパク質も何ら制限されない。

【0020】
前記融合RNA(X1)において、前記MS2結合配列の個数は、特に制限されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。前記個数の下限は、例えば、2個が好ましく、より好ましくは4個であり、さらに好ましくは6個であり、上限は、例えば、24個であり、好ましくは12個である。

【0021】
前記融合RNA(X1)は、例えば、前記ターゲットmRNAの5’側に、前記MS2結合配列を有してもよいし、前記ターゲットmRNAの3’側に、前記MS2結合配列を有してもよい。また、前記融合RNA(X1)が2個以上の前記MS2結合配列を有する場合、例えば、前記ターゲットmRNAの5’側および3’側のいずれ一方に、前記MS2結合配列を有してもよいし、前記ターゲットmRNAの5’側および3’側の両方に前記MS2結合配列を有してもよい。

【0022】
前記ターゲットmRNAの5’側および/または3’側に前記MS2結合配列を有するとは、例えば、前記ターゲットmRNAの5’末端および/または3’末端に、前記配列が、直接的に連結している状態でもよいし、間接的に連結している状態でもよい。後者の場合、例えば、前記ターゲットmRNAと前記MS2結合配列との間に、リンカー配列を有してもよい。前記融合RNA(X1)において、前記ターゲットmRNAは、例えば、前記ターゲットタンパク質のアミノ酸配列に従った読み枠を維持するように、前記MS2結合配列と連結していることが好ましい。

【0023】
前記2個以上の前記MS2結合配列は、例えば、それぞれの5’末端と3’末端とが直接的に連結している状態でもよいし、それぞれの5’末端と3’末端とが間接的に連結している状態でもよい。後者の場合、例えば、前記MS2結合配列間に、リンカー配列を有してもよい。

【0024】
前記融合RNA(X1)は、例えば、5’末端がキャップ構造を有し、3’末端がポリアデニル化されていることが好ましい。

【0025】
前記融合タンパク質(Y1)は、例えば、前記MS2のN末端側に、前記TAPを有してもよいし、前記MS2のC末端側に、前記TAPを有してもよい。

【0026】
前記MS2のN末端側またはC末端側に前記TAPを有するとは、例えば、前記MS2のN末端側またはC末端側に、前記TAPが、直接的に連結している状態でもよいし、間接的に連結している状態でもよい。後者の場合、例えば、前記MS2と前記TAPとの間に、リンカー配列を有してもよい。

【0027】
本発明のmRNA輸送促進方法において、前記融合RNA(X1)および前記融合タンパク質(Y1)を真核細胞で発現させる方法は、特に制限されない。具体的な方法として、例えば、前記融合RNA(X1)発現用の核酸分子と前記融合タンパク質(Y1)発現用の核酸分子とを、真核細胞に導入する実施形態1-1、および、前記融合RNA(X1)発現用の核酸分子を、前記融合タンパク質(Y1)を発現するように形質転換した真核細胞の組換え体に導入する実施形態1-2が例示できる。以下に、これらの実施形態を説明するが、これらは例示であって、本発明を制限するものではない。

【0028】
本発明の実施形態1-1は、前述のように、前記融合RNA(X1)を発現する核酸分子(x1)と、前記融合タンパク質(Y1)を発現する核酸分子(y1)と、宿主となる真核細胞を使用する方法である。

【0029】
前記核酸分子(x1)および前記核酸分子(y1)は、それぞれ、宿主である前記真核細胞に対する外来の核酸分子であり、例えば、発現ベクターがあげられる。以下、前記核酸分子(x1)および(y1)が、発現ベクター(x1)および(y1)である例をあげて説明するが、本発明の核酸分子は、これには制限されない。

【0030】
前記発現ベクター(x1)は、例えば、前記融合RNA(X1)をコードするDNA(x1)を含む。前記融合RNA(X1)をコードするDNA(x1)は、例えば、前記ターゲットタンパク質をコードするDNA、つまり、前記ターゲットmRNAをコードするDNAと、前記MS2結合配列をコードするDNAとを含む。以下、前記ターゲットmRNAをコードするDNAを、ターゲットDNAといい、前記MS2結合配列をコードするDNAを、MS2結合配列コードDNAという。前記発現ベクター(x1)において、前記ターゲットDNAと前記MS2結合配列コードDNAとは、例えば、前記融合RNA(X1)として転写されるように、機能的に挿入されている。本発明において、タンパク質またはmRNAをコードするDNAは、例えば、イントロンを含んでもよいし、含まなくてもよい。

【0031】
前記発現ベクター(x1)において、例えば、前記MS2結合配列コードDNAの個数は、特に制限されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。前記個数の下限および上限は、例えば、前記融合RNA(X1)における前記MS2結合配列の条件を援用できる。

【0032】
前記発現ベクター(x1)は、例えば、前記ターゲットDNAの5’側に、前記MS2結合配列コードDNAを有してもよいし、前記ターゲットDNAの3’側に、前記MS2結合配列コードDNAを有してもよい。また、前記発現ベクター(x1)が2個以上の前記MS2結合配列コードDNAを有する場合、例えば、前記ターゲットDNAの5’側および3’側のいずれ一方に、前記MS2結合配列コードDNAを有してもよいし、前記ターゲットDNAの5’側および3’側の両方に前記MS2結合配列コードDNAを有してもよい。

【0033】
前記ターゲットDNAの5’側および/または3’側に前記MS2結合配列コードDNAを有するとは、例えば、前記ターゲットDNAの5’末端および/または3’末端に、前記コードDNAが直接的に連結している状態でもよいし、5’末端または3’末端に、前記コードDNAが間接的に連結している状態でもよい。後者の場合、例えば、前記ターゲットDNAと前記MS2結合配列コードDNAとの間に、リンカー配列を有してもよい。前記発現ベクターにおいて、前記ターゲットDNAは、例えば、前記ターゲットタンパク質のアミノ酸配列に従った読み枠を維持するように、前記MS2結合配列コードDNAと連結していることが好ましい。

【0034】
前記2個以上の前記MS2結合配列コードDNAは、例えば、それぞれの5’末端と3’末端とが直接的に連結している状態でもよいし、それぞれの5’末端と3’末端とが間接的に連結している状態でもよい。後者の場合、例えば、前記MS2結合配列コードDNA間に、リンカー配列を有してもよい。

【0035】
前記発現ベクター(x1)は、例えば、さらに、バイシストロニック性制御配列を含んでもよく、前記バイシストロニック性制御配列は、例えば、IRES配列があげられる。前記発現ベクター(x1)は、例えば、複数の前記MS2結合配列コードDNAを挿入する場合、前記バイシストロニック性制御配列を有することが好ましい。前記発現ベクター(x1)がバイシストロニック性制御配列を有する場合、例えば、さらに、擬似DNA配列を含むことが好ましい。前記発現ベクター(x1)は、前記バイシストロニック性制御配列を介して、前記疑似DNA配列と前記ターゲットDNAとが連結され、この連結した配列の5’側および/または3’側に、前記MS2結合配列コードDNAを有することが好ましい。前記疑似DNA配列と前記ターゲットDNAの位置は、例えば、いずれが、前記バイシストロニック性制御配列の5’側でもよく、具体例としては、5’側に前記疑似DNA配列、3’側に前記MS2結合配列コードDNAを有することが好ましい。また、前記MS2結合配列コードDNAの位置は、例えば、前記連結した配列の5’側および3’側のいずれでもよく、具体例としては、5’側が好ましい。

【0036】
他方、前記発現ベクター(y1)は、例えば、前記融合タンパク質(Y1)をコードするDNA(y1)を含む。前記融合タンパク質(Y1)をコードするDNA(y1)は、例えば、前記MS2をコードするDNAと、前記TAPをコードするDNAとを含む。以下、前記MS2をコードするDNAを、MS2コードDNAといい、前記TAPをコードするDNAを、TapコードDNAという。前記核酸分子(y1)において、前記MS2コードDNAと前記TapコードDNAとは、例えば、前記融合タンパク質(Y1)として発現(転写および翻訳)されるように、機能的に挿入されている。

【0037】
前記発現ベクター(y1)は、例えば、前記MS2コードDNAの5’側に、前記TapコードDNAを有してもよいし、前記MS2コードDNAの3’側に、前記TapコードDNAを有してもよい。

【0038】
前記MS2コードDNAの5’側および/または3’側に前記TapコードDNAを有するとは、例えば、前記MS2コードDNAの5’末端および/または3’末端に、前記TapコードDNAが直接的に連結している状態でもよいし、5’末端または3’末端に、前記TapコードDNAが間接的に連結している状態でもよい。後者の場合、例えば、前記MS2コードDNAと前記TapコードDNAとの間に、リンカー配列を有してもよい。前記発現ベクター(y1)において、前記MS2コードDNAおよび前記TapコードDNAは、例えば、それぞれのアミノ酸配列に従った読み枠を維持するように、連結していることが好ましい。

【0039】
また、前記発現ベクター(x1)および(y1)は、例えば、それぞれ、骨格となるベクター(以下、「基本ベクター」という)に、前述した各種DNAを挿入することで作製できる。前記基本ベクターの種類は、特に制限されず、例えば、前記宿主の種類に応じて、適宜決定できる。前記ベクターは、例えば、pcDNA3、pEF6等の動物細胞発現用、pBact等の鳥類細胞発現用、pFastBAC等の昆虫細胞発現用、pYES2、pPIK3.5K、pPIK9K等の酵母細胞発現用等があげられる。

【0040】
また、前記発現ベクター(x1)および(y1)は、それぞれ、前記融合RNA(X1)および前記融合タンパク質(Y1)の発現を調節する調節配列を有することが好ましい。前記調節配列は、例えば、プロモーター、ターミネーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル配列、複製起点配列(ori)等があげられる。前記プロモーターの由来は、特に制限されず、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、シミアンウイルス-40(SV-40)、筋βアクチンプロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV)等があげられる。前記発現ベクター(x1)および(y1)において、前記調節配列の配置は、特に制限されない。前記調節配列は、前記融合RNA(X1)および前記融合タンパク質(Y1)の発現を、機能的に調節できるように配置されていればよく、公知の方法に基づいて配置できる。

【0041】
前記調節配列は、例えば、前記基本ベクターが予め備える配列を利用してもよいし、前記基本ベクターに、前記調節配列を挿入してもよいし、前記基本ベクターが備える調節配列を、他の調節配列に置換してもよい。

【0042】
本実施形態は、例えば、前記真核細胞に、前記発現ベクター(x1)を導入することで、前記融合RNA(X1)を発現させ、前記発現ベクター(y1)を導入することで、前記融合タンパク質(Y1)を発現させる。前記真核細胞に対する前記発現ベクター(x1)および前記発現ベクター(y1)の導入順序は、特に制限されず、いずれが先でもよいし、同時でもよい。

【0043】
前記真核細胞への導入方法は、特に制限されず、例えば、真核細胞の種類、前記発現ベクターの種類等に応じて、適宜決定できる。前記導入方法は、例えば、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、エレクトロポレーション法、ウイルスベクター等を用いた感染導入法、リン酸カルシウム法、ポリエチレングリコール法、リポソームを用いるリポフェクション法、バクテリオファージ等を用いた感染導入法、超音波核酸導入法、パーティクルガン等の遺伝子銃による導入法、DEAE-デキストラン法、超音波核酸導入法、微小ガラス管を用いた直接注入法等のトランスフェクション法があげられる。

【0044】
前記真核細胞における発現誘導の方法は、特に制限されず、例えば、トランスフェクション後の真核細胞の培養によって行うことができる。前記培養条件は、特に制限されず、前記真核細胞の種類、前記発現ベクターの種類等によって、適宜決定できる。具体例として、培養条件は、例えば、培養温度25~37℃、培養時間1~1000時間が好ましく、より好ましくは、培養温度27~37℃、培養時間5~100時間である。使用する培地は、例えば、DMEM、RPMI1640、Sf-900 II、YPD、SD等があげられる。また、前記培地は、例えば、ウシ胎児血清(FBS)を添加してもよい。

【0045】
このように、本実施形態によれば、真核細胞に前記発現ベクター(x1)および(y1)を導入して、発現誘導を行うことによって、前記融合RNA(X1)と前記融合タンパク質(Y1)とが発現され、両者が、MS2結合配列とMS2とで結合し、前記ターゲットmRNAが、前記融合RNA(X1)として、核内から細胞質に輸送される。この輸送は、例えば、前記ターゲットmRNA単独の輸送よりも促進されることから、前記ターゲットmRNAを、細胞質における前記ターゲットタンパク質の発現に効率良く利用できる。

【0046】
つぎに、本発明の実施形態1-2は、前述のように、前記融合RNA(X1)を発現する核酸分子(x1)と、前記融合タンパク質(Y1)を発現するように形質転換した、宿主となる真核細胞の組換え体とを使用する方法である。本実施形態は、特に示さない限り、前記実施形態1-1の記載を援用できる。

【0047】
前記核酸分子(x1)は、前記実施形態1-1と同様に、宿主である前記真核細胞に対する外来の核酸分子であり、発現ベクターがあげられる。前記核酸分子(x1)は、前記実施形態1-1と同様である。

【0048】
前記組換え体は、例えば、前記融合タンパク質(Y1)を恒常的に発現するように形質転換された、真核細胞の組換え体である。前記組換え体の製造方法は、特に制限されず、従来公知の方法が採用できる。

【0049】
本実施形態は、例えば、前記組換え体に前記発現ベクター(x1)を導入し、発現誘導を行えばよい。前記発現ベクター(x1)の導入方法および前記発現誘導の方法は、前記実施形態1-1と同様である。

【0050】
このように、本実施形態によれば、前記真核細胞の組換え体に前記発現ベクター(x1)を導入して、発現誘導を行うことによって、前記融合RNA(X1)と前記融合タンパク質(Y1)とが発現され、両者が、MS2結合配列とMS2とで結合し、前記ターゲットmRNAが、前記融合RNA(X1)として、核内から細胞質に輸送される。この輸送は、例えば、前記ターゲットmRNA単独の輸送よりも促進されることから、前記ターゲットmRNAを、細胞質における前記ターゲットタンパク質の発現に効率良く利用できる。

【0051】
本発明において、前記MS2結合配列は、前述のように、MS2に結合するRNAであって、例えば、配列番号1の配列があげられる。前記MS2結合配列のコードDNAは、例えば、配列番号1の配列において、UがTに置換された配列(配列番号2)があげられる。前記MS2結合配列の配列情報は、例えば、GeneBankにアクセッションNo.1ZDH_Rで登録されている。また、例えば、Cecile Keryer-Bibens, Carine Barreau1 and H. Beverley Osborne, Biol. Cell, (2008),100, 125-138にも記載されている。

【0052】
MS2結合配列(配列番号1)
5'-ACAUGAGGAUCACCCAUGU-3’
MS2結合配列コードDNA(配列番号2)
5'-ACATGAGGATCACCCATGT-3’

【0053】
前記MS2は、前述のように、MS2ファージ由来のコートタンパク質であって、例えば、配列番号3のアミノ酸配列があげられる。前記MS2のコードDNAは、例えば、配列番号4の塩基配列があげられる。前記MS2の配列情報は、例えば、GeneBankにアクセッションNo.EF108465で登録されている。また、例えば、Cecile Keryer-Bibens, Carine Barreau1 and H. Beverley Osborne, Biol. Cell, (2008),100, 125-138にも記載されている。

【0054】
MS2(配列番号3)
MASNFTQFVLVDNGGTGDVTVAPSNFANGVAEWISSNSRSQAYKVTCSVRQSSAQNRKYTIKVEVPKVATQTVGGVELPVAAWRSYLNMELTIPIFATNSDCELIVKAMQGLLKDGNPIPSAIAANSGIY
MS2コードDNA(配列番号4)
5'-ATGGCTTCTAACTTTACTCAGTTTGTTCTCGTCGACAATGGCGGAACTGGCGACGTGACTGTCGCTCCAAGCAACTTCGCTAACGGGGTCGCTGAATGGATCAGCTCTAACTCGCGCTCACAGGCTTACAAAGTAACCTGTAGCGTTCGTCAGAGCTCTGCGCAGAATCGCAAATACACCATTAAAGTCGAGGTGCCTAAGGTGGCAACTCAGACTGTTGGTGGTGTAGAGCTTCCTGTAGCCGCATGGCGTTCGTACTTAAATATGGAATTAACTATTCCAATTTTCGCTACGAACTCCGATTGCGAGCTTATTGTTAAGGCAATGCAAGGTCTCCTAAAAGATGGAAACCCGATTCCCTCAGCAATCGCAGCAAACTCCGGCATCTACTAA-3'

【0055】
前記TAPは、前述のように、mRNA輸送に関与するタンパク質であって、例えば、配列番号5のアミノ酸配列があげられる。前記TAPのコードDNAは、例えば、配列番号6の塩基配列における137~1996番目にコードされている。前記TAPの配列情報は、例えば、GeneBankにアクセッションNo.NM_006362で登録されている。

【0056】
TAP(配列番号5)
MADEGKSYSEHDDERVNFPQRKKKGRGPFRWKYGEGNRRSGRGGSGIRSSRLEEDDGDVAMSDAQDGPRVRYNPYTTRPNRRGDTWHDRDRIHVTVRRDRAPPERGGAGTSQDGTSKNWFKITIPYGRKYDKAWLLSMIQSKCSVPFTPIEFHYENTRAQFFVEDASTASALKAVNYKILDRENRRISIIINSSAPPHTILNELKPEQVEQLKLIMSKRYDGSQQALDLKGLRSDPDLVAQNIDVVLNRRSCMAATLRIIEENIPELLSLNLSNNRLYRLDDMSSIVQKAPNLKILNLSGNELKSERELDKIKGLKLEELWLDGNSLCDTFRDQSTYISAIRERFPKLLRLDGHELPPPIAFDVEAPTTLPPCKGSYFGTENLKSLVLHFLQQYYAIYDSGDRQGLLDAYHDGACCSLSIPFIPQNPARSSLAEYFKDSRNVKKLKDPTLRFRLLKHTRLNVVAFLNELPKTQHDVNSFVVDISAQTSTLLCFSVNGVFKEVDGKSRDSLRAFTRTFIAVPASNSGLCIVNDELFVRNASSEEIQRAFAMPAPTPSSSPVPTLSPEQQEMLQAFSTQSGMNLEWSQKCLQDNNWDYTRSAQAFTHLKAKGEIPEVAFMK
TAPコードDNA(配列番号6)
5'-cggcgcgcgacgtgctttgctgtataaatgcggtggcgcccggcgtagggacacttcggtcctgagcgcttgggagttaggttgtttgccggcgtagcggccagcgcctgagcccgcccttgatcttcgctgtggcatggcggacgaggggaagtcgtacagcgaacacgatgatgaacgcgttaatttccctcaaagaaagaagaaaggccggggtcccttccggtggaaatatggtgaaggaaaccgtaggtctggaagaggcggttctggtattcggtcttcccgccttgaggaagatgatggagatgtggcaatgagtgatgcccaggatggtccccgagtacgatacaacccctataccacccgacctaaccgtcggggtgatacttggcatgatcgagatcgcattcatgttactgtgcggagagacagagctcctccagagagaggaggggctggcaccagccaggatgggacctcaaagaactggttcaagattacaattccttatggcagaaagtatgacaaggcatggctcctgagcatgattcagagcaagtgcagtgtgcccttcacccctattgagtttcactatgagaatacacgggcccagttcttcgttgaagacgccagtactgcctctgcattgaaggctgtcaactataagattttggatcgggagaaccgaaggatatctatcatcatcaactcttctgctccaccccacactatactgaatgaactgaagccagaacaagtagaacagctaaagctgatcatgagcaaacgatacgatggctcccaacaagcccttgacctcaaaggcctccgttcagacccagatttggtggcccagaacattgacgttgtcctgaatcgcagaagctgtatggcagctaccctgaggatcattgaagagaacatccctgagctattgtccttgaacttgagcaacaacaggctgtacaggctggatgacatgtctagcattgttcagaaggcacccaacctgaagatcctaaacctttctggaaatgaattgaagtctgagcgggaattggacaagataaaggggctgaagctagaagagctctggctcgatggaaactccctgtgtgacaccttccgagaccagtccacctacatcagcgccattcgcgaacgatttcccaagttactacgcctggatggccatgagctacccccaccaattgcctttgatgttgaagcccccacgacgttaccgccctgcaagggaagctattttggaacagaaaacttgaagagtctggtcttgcacttcctgcaacagtactatgcaatttacgactctggagaccgacaagggctcctggatgcctaccatgatggggcctgctgttccctgagcattcctttcattcctcagaaccctgcccgaagcagcttagccgagtatttcaaggatagcagaaatgtgaagaagcttaaagaccctaccttgcggttccggctgctgaagcacacgcgtctcaacgttgttgccttcctcaatgagttgcccaaaacccagcacgacgtcaattccttcgtggtagacataagcgcccagacaagcacattgctgtgtttttctgtcaatggagtcttcaaggaagtggacggaaagtcccgggattctttgcgagccttcacccggacattcattgctgttcctgctagcaattcagggctatgtattgtaaatgatgagctatttgtgcggaatgccagttctgaagagatccaaagagccttcgctatgcctgcacccacgccttcctccagcccggtgcccaccctctctccagagcagcaggaaatgttgcaagcattctctacccagtctggcatgaacctcgagtggtcccagaagtgccttcaggacaacaactgggactacaccagatctgcccaggccttcactcatctcaaggccaagggcgagatcccagaagtggcattcatgaagtgatcgtagtcatgcctcagaagcagtcccccctgtaaatagtccttggatattaccgtctggttgtcgtctgtcatctcctcctgtctggcccgaggccgccccgtgactgtgaccgagggagggagggctgcctgatccctctcctcgcctgccttctggaagacttcagaagattgagcctcactggtgccaggaagccaaagcttactttgtagaactgacactaaactacccgaaggacttaggtgctttgtgtacttaaccccaggacctccttactttttaatataaagagtgatgttgtatttcgtgttctgcactttttaatataaagagtgatgttgtatttc-3'

【0057】
本発明において、前記MS結合配列、前記MS2および前記TAPは、例えば、前述の配列には制限されない。また、前記MS結合配列、前記MS2および前記TAPは、例えば、それぞれの本来の機能を使用可能な範囲で維持していればよく、例えば、前述のようなアミノ酸配列および塩基配列または公知のアミノ酸配列および塩基配列において、1または複数のアミノ酸または塩基が、欠失、置換、挿入および/または付加されている配列であってもよい。

【0058】
前記ターゲットmRNAおよびこれをコードするDNAは、特に制限されず、真核細胞内で発現させる前記ターゲットタンパク質の配列に基づいて決定できる。

【0059】
前記各種コードDNAの調製方法は、特に制限されず、例えば、細胞および生体等から単離してもよいし、既存のベクター等から単離してもよい、化学的手法により合成してもよいし、遺伝子工学的手法により合成してもよい。

【0060】
(2)タンパク質の発現方法
本発明の第1のタンパク質の発現方法は、真核細胞におけるターゲットタンパク質の発現方法であって、前記本発明のmRNAの輸送促進方法によって、前記ターゲットタンパク質をコードするターゲットmRNAを細胞核から細胞質に輸送させ、前記細胞質において、前記ターゲットタンパク質を発現させることを特徴とする。

【0061】
本発明の発現方法は、前記本発明の第1のmRNA輸送促進方法を行うことが特徴であって、その他の工程および条件等は、特に制限されない。

【0062】
本発明の発現方法によれば、前記本発明のmRNA輸送促進方法によって、前記融合RNA(X1)および前記融合タンパク質(Y1)を発現し、核内から細胞質に前記融合RNA(X1)におけるターゲットmRNAが輸送される。このため、引き続き前記ターゲットmRNAから、これがコードするターゲットタンパク質を合成できる。前記ターゲットmRNAからのターゲットタンパク質の合成は、例えば、前記本発明のmRNA輸送促進方法における発現誘導によって行うことができる。具体例としては、例えば、真核細胞内で前記融合RNA(X1)と前記融合タンパク質を発現させる処理を行うことで、引き続き前記融合タンパク質における前記ターゲットmRNAからのターゲットタンパク質の翻訳を行うことができる。したがって、前記ターゲットタンパク質の合成の条件は、特に制限されず、前記本発明のmRNA輸送促進方法における誘導方法の条件が、例示として援用できる。

【0063】
(3)タンパク質の製造方法
本発明の第1のタンパク質の製造方法は、真核細胞におけるターゲットタンパク質の製造方法であって、前記本発明のタンパク質の発現方法により、前記ターゲットタンパク質を発現させることを特徴とする。

【0064】
本発明の製造方法は、前記本発明の第1のタンパク質の発現方法を行うことが特徴であって、その他の工程および条件等は、特に制限されない。

【0065】
本発明の製造方法は、例えば、さらに、真核細胞において発現した前記ターゲットタンパク質を精製する工程を有してもよい。前記精製方法は、特に制限されず、前記ターゲットタンパク質の種類によって、適宜設定できる。前記精製方法としては、例えば、塩析、各種クロマトグラフィー、限外ろ過等があげられる。

【0066】
(4)キット
本発明のキットは、前記本発明の第1のターゲットmRNAの輸送促進方法、前記本発明の第1のタンパク質の発現方法および/または前記本発明の第1のタンパク質の製造方法に使用するキットであり、2種類のキットがあげられる。

【0067】
本発明のキットは、下記(a1)を含むことを特徴とする。
(a1)ターゲットmRNAとMS2結合配列とを含む融合RNA(X1)を発現する核酸分子(x1)、および、MS2とTAPとを含む融合タンパク質(Y1)を発現する核酸分子(y1)

【0068】
本発明のキットは、下記(a1’)を含むことを特徴とする。
(a1’)ターゲットmRNAとMS2結合配列とを含む融合RNA(X1)を発現する核酸分子(x1)、および、MS2とTAPとを含む融合タンパク質(Y1)を発現するように形質転換した真核細胞の組換え体

【0069】
本発明のキットにおいて、前記核酸分子(x1)、前記核酸分子(y1)および前記真核細胞の組換え体は、前述の通りである。本発明のキットは、例えば、さらに、前記核酸分子(x1)を真核細胞に導入するための導入試薬、真核細胞を培養するための培養試薬、使用説明書等を含んでもよい。

【0070】
(実施形態2)
(1)mRNA輸送促進方法
本発明のmRNA輸送促進方法は、前述のように、真核細胞において、核内から細胞質へのターゲットmRNAの輸送を促進する方法であって、下記(A2)工程を有することを特徴とする。
(A2)前記真核細胞において、前記ターゲットmRNAとRREとを含む融合RNA(X2)、および、Revを含むタンパク質(Y2)を発現させる工程

【0071】
本発明の実施形態2は、特に示さない限り、本発明の実施形態1の説明を援用できる。本発明の実施形態2において、例えば、真核細胞、ターゲットmRNA、ターゲットタンパク質、形質転換の方法等は、前記実施形態1と同様である。

【0072】
本発明において、Revは、HIV-1由来のコートタンパク質であり、イントロンを含むウイルスRNAの核外輸送機構を刺激するタンパク質である。また、RREは、HIV-1由来のRNAであり、Rev Response Elementと呼ばれ、5つのステムループ構造を有し、その中で、ステムループIIBは、前記Revとの結合配列として機能するRNAである。本発明において、RREは、例えば、ステムループIIBを含む配列でもよいし、ステムループIIBからなる配列でもよい。本発明において、前記ターゲットmRNAは、前述のように、何ら制限されず、例えば、目的のタンパク質をコードするmRNAであり、前記タンパク質も何ら制限されない。

【0073】
前記融合RNA(X2)において、前記RREの個数は、特に制限されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。前記個数の下限は、例えば、2個が好ましく、より好ましくは3個であり、さらに好ましくは4個であり、上限は、例えば、10個であり、好ましくは5個である。

【0074】
前記融合RNA(X2)は、例えば、前記ターゲットmRNAの5’側に、前記RREを有してもよいし、前記ターゲットmRNAの3’側に、前記RREを有してもよい。また、前記融合RNA(X2)が2個以上の前記RREを有する場合、例えば、前記ターゲットmRNAの5’側および3’側のいずれか一方に、前記RREを有してもよいし、前記ターゲットmRNAの5’側および3’側の両方に前記RREを有してもよい。

【0075】
前記ターゲットmRNAの5’側および/または3’側に前記RREを有するとは、例えば、前記ターゲットmRNAの5’末端および/または3’末端に、前記配列が、直接的に連結している状態でもよいし、間接的に連結している状態でもよい。後者の場合、例えば、前記ターゲットmRNAと前記RREとの間に、リンカー配列を有してもよい。前記融合RNA(X2)において、前記ターゲットmRNAは、例えば、前記ターゲットタンパク質のアミノ酸配列に従った読み枠を維持するように、前記RREと連結していることが好ましい。

【0076】
前記2個以上の前記RREは、例えば、それぞれの5’末端と3’末端とが直接的に連結している状態でもよいし、それぞれの5’末端と3’末端とが間接的に連結している状態でもよい。後者の場合、例えば、前記RRE間に、リンカー配列を有してもよい。

【0077】
前記融合RNA(X2)は、例えば、5’末端がキャップ構造を有し、3’末端がポリアデニル化されていることが好ましい。

【0078】
前記タンパク質(Y2)は、Revを含んでいればよく、その他の構成は、特に制限されない。前記タンパク質(Y2)は、例えば、1分子のRevからなるタンパク質でもよいし、1分子のRevを含むタンパク質でもいし、また、2分子以上のRevを含む融合タンパク質でもよい。前記融合タンパク質の場合、前記Revの分子数は、特に制限されず、その下限は、例えば、1個が好ましく、より好ましくは2個であり、さらに好ましくは3個であり、上限は、例えば、5個であり、好ましくは4個である。

【0079】
本発明のmRNA輸送促進方法において、前記融合RNA(X2)および前記タンパク質(Y2)を真核細胞で発現させる方法は、特に制限されない。具体的な方法として、例えば、前記融合RNA(X2)発現用の核酸分子と前記タンパク質(Y2)発現用の核酸分子とを、真核細胞に導入する実施形態2-1、および、前記融合RNA(X2)発現用の核酸分子を、前記タンパク質(Y2)を発現するように形質転換した真核細胞の組換え体に導入する実施形態2-2が例示できる。以下に、これらの実施形態を説明するが、これらは例示であって、本発明を制限するものではない。

【0080】
本発明の実施形態2-1は、前述のように、前記融合RNA(X2)を発現する核酸分子(x2)と、前記タンパク質(Y2)を発現する核酸分子(y2)と、宿主となる真核細胞を使用する方法である。

【0081】
前記核酸分子(x2)および前記核酸分子(y2)は、それぞれ、宿主である前記真核細胞に対する外来の核酸分子であり、例えば、発現ベクターがあげられる。以下、前記核酸分子(x2)および(y2)が、発現ベクター(x2)および(y2)である例をあげて説明するが、本発明の核酸分子は、これには制限されない。

【0082】
前記発現ベクター(x2)は、例えば、前記融合RNA(X2)をコードするDNA(x2)を含む。前記融合RNA(X2)をコードするDNA(x2)は、例えば、前記ターゲットタンパク質をコードするDNA、つまり、前記ターゲットmRNAをコードするDNAと、前記RREをコードするDNAとを含む。以下、前記ターゲットmRNAをコードするDNAを、ターゲットDNAといい、前記RREをコードするDNAを、RREコードDNAという。前記発現ベクター(x2)において、前記ターゲットDNAと前記RREコードDNAとは、例えば、前記融合RNA(X2)として転写されるように、機能的に挿入されている。

【0083】
前記発現ベクター(x2)において、例えば、前記RREコードDNAの個数は、特に制限されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。前記個数の下限および上限は、例えば、前記融合RNA(X2)における前記RREの条件を援用できる。

【0084】
前記発現ベクター(x2)は、例えば、前記ターゲットDNAの5’側に、前記RREコードDNAを有してもよいし、前記ターゲットDNAの3’側に、前記RREコードDNAを有してもよい。また、前記発現ベクター(x2)が2個以上の前記RREコードDNAを有する場合、例えば、前記ターゲットDNAの5’側および3’側のいずれ一方に、前記RREコードDNAを有してもよいし、前記ターゲットDNAの5’側および3’側の両方に前記RREコードDNAを有してもよい。

【0085】
前記ターゲットDNAの5’側および/または3’側に前記RREコードDNAを有するとは、例えば、前記ターゲットDNAの5’末端および/または3’末端に、前記コードDNAが直接的に連結している状態でもよいし、5’末端または3’末端に、前記コードDNAが間接的に連結している状態でもよい。後者の場合、例えば、前記ターゲットDNAと前記RREコードDNAとの間に、リンカー配列を有してもよい。前記発現ベクターにおいて、前記ターゲットDNAは、例えば、前記ターゲットタンパク質のアミノ酸配列に従った読み枠を維持するように、前記RREコードDNAと連結していることが好ましい。

【0086】
前記2個以上の前記RREコードDNAは、例えば、それぞれの5’末端と3’末端とが直接的に連結している状態でもよいし、それぞれの5’末端と3’末端とが間接的に連結している状態でもよい。後者の場合、例えば、前記RREコードDNA間に、リンカー配列を有してもよい。

【0087】
前記発現ベクター(x2)は、例えば、さらに、バイシストロニック性制御配列を含んでもよく、前記バイシストロニック性制御配列は、例えば、IRES配列があげられる。前記発現ベクター(x2)は、例えば、複数の前記RREコードDNAを挿入する場合、前記バイシストロニック性制御配列を有することが好ましい。前記発現ベクター(x2)がバイシストロニック性制御配列を有する場合、例えば、さらに、擬似DNA配列も含むことが好ましい。前記発現ベクター(x2)は、前記バイシストロニック性制御配列を介して、前記疑似DNA配列と前記ターゲットDNAとが連結され、この連結した配列の5’側および/または3’側に、前記RREコードDNAを有することが好ましい。前記疑似DNA配列と前記ターゲットDNAの位置は、例えば、いずれが、前記バイシストロニック性制御配列の5’側でもよく、具体例としては、5’側に前記疑似DNA配列、3’側に前記RREコードDNAを有することが好ましい。また、前記RREコードDNAの位置は、例えば、前記連結した配列の5’側および3’側のいずれでもよく、具体例としては、5’側が好ましい。

【0088】
他方、前記発現ベクター(y2)は、例えば、前記Revを含むタンパク質(Y2)をコードするDNA(y2)を含む。前記タンパク質(Y2)をコードするDNA(y2)は、例えば、前記RevをコードするDNAを含む。以下、前記RevをコードするDNAを、RevコードDNAという。前記核酸分子(y2)において、前記RevコードDNAは、例えば、前記タンパク質(Y2)として発現(転写および翻訳)されるように、機能的に挿入されている。

【0089】
前記発現ベクター(y2)は、例えば、前記RevコードDNAを1個有してもよいし、2個以上有してもよく、後者の場合、各RevコードDNAは、例えば、直接的に連結している状態でもよいし、間接的に連結している状態でもよい。後者の場合、例えば、前記RevコードDNAの間に、リンカー配列を有してもよい。前記発現ベクター(y2)が複数の前記RevコードDNAを有する場合、例えば、それぞれのアミノ酸配列に従った読み枠を維持するように、連結していることが好ましい。

【0090】
また、前記発現ベクター(x2)および(y2)は、例えば、それぞれ、骨格となるベクター(以下、「基本ベクター」という)に、前述した各種DNAを挿入することで作製できる。前記基本ベクターの種類は、特に制限されず、例えば、前記実施形態1と同様である。

【0091】
また、前記発現ベクター(x2)および(y2)は、それぞれ、前記融合RNA(X2)および前記タンパク質(Y2)の発現を調節する調節配列を有することが好ましい。前記調節配列は、例えば、前記実施形態1と同様である。前記発現ベクター(x2)および(y2)において、前記調節配列の配置は、特に制限されない。前記調節配列は、前記融合RNA(X2)および前記タンパク質(Y2)の発現を、機能的に調節できるように配置されていればよく、公知の方法に基づいて配置できる。

【0092】
前記調節配列は、例えば、前記基本ベクターが予め備える配列を利用してもよいし、前記基本ベクターに、前記調節配列を挿入してもよいし、前記基本ベクターが備える調節配列を、他の調節配列に置換してもよい。

【0093】
本実施形態は、例えば、前記真核細胞に、前記発現ベクター(x2)を導入することで、前記融合RNA(X2)を発現させ、前記発現ベクター(y2)を導入することで、前記タンパク質(Y2)を発現させる。前記真核細胞に対する前記発現ベクター(x2)および前記発現ベクター(y2)の導入順序は、特に制限されず、いずれが先でもよいし、同時でもよい。

【0094】
前記真核細胞への導入方法および前記真核細胞における発現誘導の方法は、特に制限されず、例えば、前記実施形態1と同様である。

【0095】
このように、本実施形態によれば、真核細胞に前記発現ベクター(x2)および(y2)を導入して、発現誘導を行うことによって、前記融合RNA(X2)と前記タンパク質(Y2)とが発現され、両者が、RREとRevとで結合し、前記ターゲットmRNAが、前記融合RNA(X2)として、核内から細胞質に輸送される。この輸送は、例えば、前記ターゲットmRNA単独の輸送よりも促進されることから、前記ターゲットmRNAを、細胞質における前記ターゲットタンパク質の発現に効率良く利用できる。

【0096】
つぎに、本発明の実施形態2-2は、前述のように、前記融合RNA(X2)を発現する核酸分子(x2)と、前記タンパク質(Y2)を発現するように形質転換した、宿主となる真核細胞の組換え体とを使用する方法である。本実施形態は、特に示さない限り、前記実施形態1および前記実施形態2-1の記載を援用できる。

【0097】
前記核酸分子(x2)は、前記実施形態2-1と同様に、宿主である前記真核細胞に対する外来の核酸分子であり、例えば、発現ベクターがあげられる。前記核酸分子(x2)は、前記実施形態2-1と同様である。

【0098】
前記組換え体は、例えば、前記タンパク質(Y2)を恒常的に発現するように形質転換された、真核細胞の組換え体である。前記組換え体の製造方法は、特に制限されず、従来公知の方法が採用できる。

【0099】
本実施形態は、例えば、前記組換え体に前記発現ベクター(x2)を導入し、発現誘導を行えばよい。前記発現ベクター(x2)の導入方法および前記発現誘導の方法は、前記実施形態1と同様である。

【0100】
このように、本実施形態によれば、前記真核細胞の組換え体に前記発現ベクター(x2)を導入して、発現誘導を行うことによって、前記融合RNA(X2)と前記タンパク質(Y2)とが発現され、両者が、RREとRevとで結合し、前記ターゲットmRNAが、前記融合RNA(X2)として、核内から細胞質に輸送される。この輸送は、例えば、前記ターゲットmRNA単独の輸送よりも促進されることから、前記ターゲットmRNAを、細胞質における前記ターゲットタンパク質の発現に効率良く利用できる。

【0101】
本発明において、前記RREは、前述のように、Revと結合するHIV-1由来のRNAであって、例えば、配列番号7の配列があげられる。配列番号7の塩基配列において、下線部の91~109番目が、ステムループIIBの配列である。前記RREのコードDNAは、例えば、配列番号7の配列において、UがTに置換された配列(配列番号8)があげられる。前記RREの配列情報は、例えば、GeneBankにアクセッションNo.FJ649332で登録されている。

【0102】
RRE(配列番号7)
5'-gagcagugggaauaugagcuuuguuccuuggguucuugggagcagcaggaagcacuaugggcgcaccgucaaugacgcugacgguacaggccagacaauuauugucugauauagugcagcagcagaacaauuugcugagggcuauugaggcgcaacagcaucuguugcaacucacagucuggggcaucaaacagcuccaggcaagaauccuggcuguggaaagauaccuaaaggaucaacagcuccu-3'
RREコードDNA(配列番号8)
5'-gagcagtgggaatatgagctttgttccttgggttcttgggagcagcaggaagcactatgggcgcaccgtcaatgacgctgacggtacaggccagacaattattgtctgatatagtgcagcagcagaacaatttgctgagggctattgaggcgcaacagcatctgttgcaactcacagtctggggcatcaaacagctccaggcaagaatcctggctgtggaaagatacctaaaggatcaacagctcct-3’

【0103】
前記Revは、前述のように、HIV-1由来のタンパク質であって、例えば、配列番号9のアミノ酸配列があげられる。前記RevのコードDNAは、例えば、配列番号10の塩基配列があげられる。前記Revの配列情報は、例えば、GeneBankにアクセッションNo.NC_001802で登録されている。

【0104】
Rev(配列番号9)
MAGRSGDSDEELIRTVRLIKLLYQSNPPPNPEGTRQARRNRRRRWRERQRQIHSISERILGTYLGRSAEPVPLQLPPLERLTLDCNEDCGTSGTQGVGSPQILVESPTVLESGTKE
RevコードDNA(配列番号10)
5'-atggcaggaagaagcggagacagcgacgaagagctcatcagaacagtcagactcatcaagcttctctatcaaagcaacccacctcccaaccccgaggggacccgacaggcccgaaggaatagaagaagaaggtggagagagagacagagacagatccattcgattagtgaacggatccttggcacttatctgggacgatctgcggagcctgtgcctcttcagctaccaccgcttgagagacttactcttgattgtaacgaggattgtggaacttctgggacgcagggggtgggaagccctcaaatattggtggaatctcctacagtattggagtcaggaactaaagaatag-3'

【0105】
本発明において、前記RREおよび前記Revは、例えば、前述の配列には制限されない。また、前記RREおよび前記Revは、例えば、それぞれの本来の機能を使用可能な範囲で維持していればよく、前述のようなアミノ酸配列および塩基配列または公知のアミノ酸配列および塩基配列において、1または複数のアミノ酸または塩基が、欠失、置換、挿入および/または付加されている配列であってもよい。

【0106】
(2)タンパク質の発現方法
本発明の第2のタンパク質の発現方法は、真核細胞におけるターゲットタンパク質の発現方法であって、前記本発明の第2のmRNAの輸送促進方法によって、前記ターゲットタンパク質をコードするターゲットmRNAを細胞核から細胞質に輸送させ、前記細胞質において、前記ターゲットタンパク質を発現させることを特徴とする。

【0107】
本発明の発現方法は、前記本発明の第2のmRNA輸送促進方法を行うことが特徴であって、その他の工程および条件等は、特に制限されない。

【0108】
本発明の発現方法によれば、前記本発明の第2のmRNA輸送促進方法によって、前記融合RNA(X2)および前記タンパク質(Y2)を発現し、核内から細胞質に前記融合RNA(X2)におけるターゲットmRNAが輸送される。このため、引き続き前記ターゲットmRNAから、これがコードするターゲットタンパク質を合成できる。前記ターゲットmRNAからのターゲットタンパク質の合成は、例えば、前記本発明のmRNA輸送促進方法における発現誘導によって行うことができる。具体例としては、例えば、真核細胞内で前記融合RNA(X2)と前記タンパク質を発現させる処理を行うことで、引き続き前記融合タンパク質における前記ターゲットmRNAからのターゲットタンパク質の翻訳を行うことができる。したがって、前記ターゲットタンパク質の合成の条件は、特に制限されず、前記本発明のmRNA輸送促進方法における誘導方法の条件が、例示として援用できる。

【0109】
(3)タンパク質の製造方法
本発明のタンパク質の製造方法は、真核細胞におけるターゲットタンパク質の製造方法であって、前記本発明の第2のタンパク質の発現方法により、前記ターゲットタンパク質を発現させることを特徴とする。

【0110】
本発明の製造方法は、前記本発明の第2のタンパク質の発現方法を行うことが特徴であって、その他の工程および条件等は、特に制限されない。

【0111】
本発明の製造方法は、例えば、さらに、真核細胞において発現した前記ターゲットタンパク質を精製する工程を有してもよい。前記精製方法は、特に制限されず、前記ターゲットタンパク質の種類によって、適宜設定できる。前記精製方法としては、例えば、塩析、各種クロマトグラフィー、限外ろ過等があげられる。

【0112】
(4)キット
本発明の第2のキットは、前記本発明の第2のターゲットmRNAの輸送促進方法、前記本発明の第2のタンパク質の発現方法および/または前記本発明の第2のタンパク質の製造方法に使用するキットであり、2種類のキットがあげられる。

【0113】
本発明のキットは、下記(a2)を含むことを特徴とする。
(a2)ターゲットmRNAとRREとを含む融合RNA(X2)を発現する核酸分子(x2)、および、Revを含むタンパク質(Y2)を発現する核酸分子(y2)

【0114】
本発明のキットは、下記(a2’)を特徴とする。
(a2’)ターゲットmRNAとRREとを含む融合RNA(X2)を発現する核酸分子(x2)、および、Revを含むタンパク質(Y2)を発現するように形質転換した真核細胞の組換え体

【0115】
本発明のキットにおいて、前記核酸分子(x2)、前記核酸分子(y2)および前記真核細胞の組換え体は、前述の通りである。本発明のキットは、例えば、さらに、前記核酸分子(x2)を真核細胞に導入するための導入試薬、真核細胞を培養するための培養試薬、使用説明書等を含んでもよい。
【実施例】
【0116】
次に、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により制限されない。
【実施例】
【0117】
[実施例1]
本例では、MS結合配列とルシフェラーゼmRNAとの融合RNAを発現するLuc-MS2発現ベクターと、前記MS2結合配列が結合するMS2とTAPとの融合タンパク質を発現するMS2-TAP発現ベクターとを使用し、動物細胞における、ルシフェラーゼタンパク質の発現量を測定した。
【実施例】
【0118】
(1)Luc-MS2結合配列発現ベクター
以下の方法により、Lucコード配列の3’末端にMS2結合配列のコード配列を連結した、Luc-MS2結合配列発現ベクターを作製した。具体的には、MS2結合配列コードDNAの連続数を6個(6×)、4個(4×)および2個(2×)とした3種類のLuc-MS2結合配列発現ベクターを作製した。また、コントロールとして、MS2結合配列コードDNAを含まないLuc-MS2結合配列発現ベクター(0×)を作製した。
【実施例】
【0119】
pGL3ベクター(プロメガ社)を鋳型としてPCRを行い、ルシフェラーゼのコード配列を増幅した。その際、以下のプライマーセットを用い、ルシフェラーゼのコード配列の開始コドン5’側および終止コドン3’側に、それぞれ、BamHIとXhoIの認識配列を導入した。下記配列において、制限酵素の認識配列を下線で示した。
【実施例】
【0120】
ルシフェラーゼコード配列(配列番号11)
5'-atggaagacgccaaaaacataaagaaaggcccggcgccattctatccgctggaagatggaaccgctggagagcaactgcataaggctatgaagagatacgccctggttcctggaacaattgcttttacagatgcacatatcgaggtggacatcacttacgctgagtacttcgaaatgtccgttcggttggcagaagctatgaaacgatatgggctgaatacaaatcacagaatcgtcgtatgcagtgaaaactctcttcaattctttatgccggtgttgggcgcgttatttatcggagttgcagttgcgcccgcgaacgacatttataatgaacgtgaattgctcaacagtatgggcatttcgcagcctaccgtggtgttcgtttccaaaaaggggttgcaaaaaattttgaacgtgcaaaaaaagctcccaatcatccaaaaaattattatcatggattctaaaacggattaccagggatttcagtcgatgtacacgttcgtcacatctcatctacctcccggttttaatgaatacgattttgtgccagagtccttcgatagggacaagacaattgcactgatcatgaactcctctggatctactggtctgcctaaaggtgtcgctctgcctcatagaactgcctgcgtgagattctcgcatgccagagatcctatttttggcaatcaaatcattccggatactgcgattttaagtgttgttccattccatcacggttttggaatgtttactacactcggatatttgatatgtggatttcgagtcgtcttaatgtatagatttgaagaagagctgtttctgaggagccttcaggattacaagattcaaagtgcgctgctggtgccaaccctattctccttcttcgccaaaagcactctgattgacaaatacgatttatctaatttacacgaaattgcttctggtggcgctcccctctctaaggaagtcggggaagcggttgccaagaggttccatctgccaggtatcaggcaaggatatgggctcactgagactacatcagctattctgattacacccgagggggatgataaaccgggcgcggtcggtaaagttgttccattttttgaagcgaaggttgtggatctggataccgggaaaacgctgggcgttaatcaaagaggcgaactgtgtgtgagaggtcctatgattatgtccggttatgtaaacaatccggaagcgaccaacgccttgattgacaaggatggatggctacattctggagacatagcttactgggacgaagacgaacacttcttcatcgttgaccgcctgaagtctctgattaagtacaaaggctatcaggtggctcccgctgaattggaatccatcttgctccaacaccccaacatcttcgacgcaggtgtcgcaggtcttcccgacgatgacgccggtgaacttcccgccgccgttgttgttttggagcacggaaagacgatgacggaaaaagagatcgtggattacgtcgccagtcaagtaacaaccgcgaaaaagttgcgcggaggagttgtgtttgtggacgaagtaccgaaaggtcttaccggaaaactcgacgcaagaaaaatcagagagatcctcataaaggccaagaagggcggaaagatcgccgtgtaa-3’
【実施例】
【0121】
ルシフェラーゼ用プライマーセット
Luc-F(配列番号12)
5'-atggatccatggaagacgccgccaaaaacat-3'
Luc-R(配列番号13)
5'-atctcgagttacacggcgatctttcc-3'
【実施例】
【0122】
得られたPCR産物を制限酵素BamHIとXhoIで消化し、pcDNA5/FRT/TO(インビトロゲン社)のBamHIとXhoIサイトに連結し、pcDNA5/FRT/TO-Lucを得た。このベクターは、MS2結合配列のコード配列を有していない(0×)ことから、以下、pcDNA5/FRT/TO-Luc-MS2-0×という。
【実施例】
【0123】
つぎに、pSL_MS2-6X(Laboratory of Robert H Singer, PhDから分譲、http://www.singerlab.org)を鋳型として、PCRを行い、連続する6個のMS2結合配列のコード配列を増幅した。1個のM2結合配列のコード配列を、配列番号2に示す。その際、以下のプライマーセットを用い、連続する6個のMS2結合配列のコード配列の開始コドン5’側および終止コドン3’側に、それぞれ、XhoIの認識配列を導入した。下記配列において、制限酵素の認識配列を下線で示した。
【実施例】
【0124】
MS2結合配列コードDNA(配列番号2)
5’-ACATGAGGATCACCCATGT-3’
MS2結合配列6×用プライマーセット
MS2-F(配列番号14)
5'-tactcgaggaattcgaatggccatggga-3'
MS2-R(配列番号15)
5'-atctcgaggccatatgcatcctaggccta-3'
【実施例】
【0125】
得られたPCR産物を制限酵素XhoIで消化し、前記pcDNA5/FRT/TO-LucのXhoIサイトに連結し、pcDNA5/FRT/TO-Luc-MS2-6×を得た。このベクターは、連続する6個のMS2結合配列のコード配列を有するベクターである。
【実施例】
【0126】
つぎに、前記pSL_MS2-6X(Laboratory of Robert H Singer, PhDから分譲、http://www.singerlab.org)を鋳型として、PCRを行い、連続する2個または4個のMS2結合配列のコード配列を増幅した。その際、以下のプライマーセットを用い、連続するMS2結合配列のコード配列の開始コドン5’側および終止コドン3’側に、それぞれ、XhoIの認識配列を導入した。下記配列において、制限酵素の認識配列を下線で示した。
【実施例】
【0127】
MS2結合配列4×または2×用プライマーセット
MS2-F(配列番号16)
5'-tactcgaggaattcgaatggccatggga-3'
MS2-R2(配列番号17)
5'-atctcgagccttaggatctaatgaacccgg-3'
【実施例】
【0128】
得られた2種類の長さのPCR産物(4×、2×)を、それぞれ制限酵素XhoIで消化し、前記pcDNA5/FRT/TO-LucのXhoIサイトに連結し、pcDNA5/FRT/TO-Luc-MS2-4×およびpcDNA5/FRT/TO-Luc-MS2-2×を得た。これらのベクターは、前者が、連続する4個のMS2結合配列のコード配列を有するベクターであり、後者が、連続2個のMS2結合配列のコード配列を有するベクターである。
【実施例】
【0129】
(2)MS2-TAP発現ベクター
MS2-TAP融合タンパク質を発現するMS2-TAP発現ベクターとして、MS2コード配列(配列番号4)と、その3’末端にTAPコード配列(配列番号6における137~1996番目)が連結されたpMS2-TAPを使用した。また、コントロールベクターとして、MS2-TAP融合タンパク質を発現しないpMS2-GC80を使用した。これらのベクターは、Bryan R.Cullen博士(Duke University Medical Center)より分譲されたものを使用した。
【実施例】
【0130】
なお、作製したいずれの発現ベクターについても、変異がないこと、および、読み枠にずれがないことを、シーケンスによって確認した。
【実施例】
【0131】
(3)一過性発現のトランスフェクション
CHO細胞は、FBSを添加したDMEM/HamF12培地を使用し、HeLa細胞は、DMEM培地を使用し、それぞれの培養条件は、37℃、CO5%、湿度100%とした。
【実施例】
【0132】
12ウェルプレートでCHO細胞およびHeLa細胞を培養し、その培養細胞に、前記Luc-MS2結合配列発現ベクター、前記MS2-TAP発現ベクター、さらに標準化用のphRL-TK(プロメガ社製)を、Lipofectamine 2000(商品名、Invitrogen)と混合した後、製品のプロトコールに基づいてトランスフェクションした。前記各発現ベクターは、1ウェルあたり1μgのプラスミド量になるように添加した。また、コントロールとして、前記Luc-MS2結合配列発現ベクターおよびコントロールベクターpMS2-GC80をトランスフェクションした。なお、トランスフェクション効率については、コントロールとしてphRL-TK(プロメガ社製)を用いて、標準化した。
【実施例】
【0133】
(3)ルシフェラーゼアッセイ
つぎに、トランスフェクションした24時間後の細胞を回収し、回収した細胞を、1×PBSで2回洗浄した。洗浄後の細胞に、溶解試薬(商品名1×Cell Culture Lysis Reagent、プロメガ社)を混合し、氷上で30分間インキュベートした後、遠心処理(12000rpm、5分)により、上清を細胞抽出液として得た。なお、細胞抽出液のウエスタンブロットにより、MS2とTAPの融合タンパク質が発現していることは確認済みである。前記各トランスフェクション細胞から得られた細胞抽出液について、luciferase kit(プロメガ社)を用いて、そのプロトコールにしたがって、ルミノメータにより酵素活性を測定した。
【実施例】
【0134】
そして、MS2結合配列が0×であり、MS2-TAP発現ベクターを導入していない比較例のルシフェラーゼ活性を1として、相対活性を求めた。この結果を、表1に示す。表1において、「MS2結合配列」の行における「0×、2×、4×および6×」は、それぞれ、前記Luc-MS2結合配列発現ベクターの種類であって、前記ベクターに挿入されたMS2結合配列コードDNAの連続する個数を示し、「MS2-TAP」の行において、「-」は、前記Luc-MS2結合配列発現ベクターと前記コントロールベクターpMS2-GC80を導入したこと(MS2-TAp誘導タンパク質未発現)を示し、「+」は、前記Luc-MS2結合配列発現ベクターおよび前記MS2-TAP発現ベクターの両方を導入したこと(MS2-TAp誘導タンパク質発現)を示す。
【実施例】
【0135】
【表1】
JP0006099075B2_000002t.gif
【実施例】
【0136】
表1に示すように、HeLa細胞およびCHO細胞のいずれにおいても、前記Luc-MS2結合配列発現ベクターと前記MS2-TAP発現ベクターとを共導入した実施例(2×、4×または6×、およびMS2-TAP(+))は、前記MS2-TAP発現ベクターを導入していない比較例(0×およびMS2-TAP(-))と比べて、ルシフェラーゼの活性量を著しく増加できた。
【実施例】
【0137】
また、前記Luc-MS2結合配列発現ベクターを使用した各系について、MS2-TAP発現ベクターを導入していない比較例のルシフェラーゼ活性を1として、相対活性を求めた。この結果を、表2に示す。表2において、「MS2結合配列」の行における「2×、4×および6×」は、それぞれ、前記Luc-MS2結合配列発現ベクターの種類であって、前記ベクターに挿入されたMS2結合配列コードDNAの連続する個数を示し、「MS2-TAP(-)」は、前記Luc-MS2結合配列発現ベクターと前記コントロールベクターpMS2-GC80を導入したこと(MS2-TAp誘導タンパク質未発現)を示し、「MS2-TAP(+)」は、前記Luc-MS2結合配列発現ベクターおよび前記MS2-TAP発現ベクターの両方を導入したこと(MS2-TAp誘導タンパク質発現)を示す。
【実施例】
【0138】
【表2】
JP0006099075B2_000003t.gif
【実施例】
【0139】
表2に示すように、HeLa細胞およびCHO細胞のいずれにおいても、前記MS2-TAP発現ベクターとを共導入した実施例は、前記MS2-TAP発現ベクターを未導入の比較例と比較して、ルシフェラーゼの活性量を著しく増加できた。
【実施例】
【0140】
これらの結果に示すように、前記実施例は、前記比較例と比べて、ルシフェラーゼの発現量が増加したといえる。そして、実施例および比較例は、いずれも、MS2結合配列のコード配列の個数が異なるのみであり、それ以外は同様のルシフェラーゼ発現ベクター(前記Luc-MS2結合配列発現ベクター)を使用していることから、核内におけるmRNAの転写効率は、ほぼ同一である。したがって、これらの結果から、前記Luc-MS2結合配列発現ベクターと前記MS2-TAP発現ベクターとの共導入により、ルシフェラーゼmRNAとMS2結合配列との融合RNA、および、MS2とTAPとの融合タンパク質を発現させることで、核内から細胞質へのmRNAの輸送が促進され、結果として、前記mRNAを有効に活用してルシフェラーゼタンパク質を合成できたといえる。
【実施例】
【0141】
[実施例2]
本例では、RREとルシフェラーゼmRNAとの融合RNAを発現するLuc-RRE発現ベクターと、前記RRE配列が結合するRevを含むタンパク質を発現するRev発現ベクターとを使用し、動物細胞における、ルシフェラーゼタンパク質の発現量を測定した。
【実施例】
【0142】
(1)Luc-RRE発現ベクター
以下の方法により、Lucコード配列の3’末端にRREコード配列を連結した、Luc-RRE発現ベクターを作製した。また、コントロールとして、前記実施例1におけるpcDNA5/FRT/TO-Lucを使用した。
【実施例】
【0143】
pLUCSALRRE(Guillaume M. Hautbergue, Ming-Lung Hung, Matthew J. Walsh, Ambrosius P.L. Snijders, Chung-Te Chang, Rachel Jones, Chris P. Ponting, Mark J. Dickman, and Stuart A. Wilson1, Curr Biol. (2009) 19, 1918-1924、Dr. Wilson Sから分譲)を鋳型として、PCRを行い、RREのコード配列を増幅した。RREのコード配列を、配列番号8に示す。その際、以下のプライマーセットを用い、RREのコード配列の開始コドン5’側および終止コドン3’側に、それぞれ、XhoIの認識配列を導入した。下記配列において、制限酵素の認識配列を下線で示した。
【実施例】
【0144】
RREコードDNA(配列番号8)
5'-gagcagtgggaatatgagctttgttccttgggttcttgggagcagcaggaagcactatgggcgcaccgtcaatgacgctgacggtacaggccagacaattattgtctgatatagtgcagcagcagaacaatttgctgagggctattgaggcgcaacagcatctgttgcaactcacagtctggggcatcaaacagctccaggcaagaatcctggctgtggaaagatacctaaaggatcaacagctcct-3’
【実施例】
【0145】
RREのコード配列用プライマーセット
RRE-F(配列番号18)
5'-atctcgaggagcagtgggaatatgagct-3'
RRE-R(配列番号19)
5'-atctcgagaggagctgttgatcctttagg-3'
【実施例】
【0146】
得られたPCR産物を制限酵素XhoIで消化し、前記実施例1で作製した前記pcDNA5/FRT/TO-LucのXhoIサイトに連結し、pcDNA5/FRT/TO-Luc-RREを得た。
【実施例】
【0147】
(2)Rev発現ベクター
Revタンパク質を発現するRev発現ベクターとして、Revコード配列(配列番号10)の5’末端に、HAタグのコード配列が連結された、pCG-HA-Revを使用した。また、コントロールとして、Revのコード配列を有さないpCG-HAを使用した。これらのベクターは、木村 富紀博士(立命館大学総合理工学院薬学部薬学科)より分譲されたものを使用した。
【実施例】
【0148】
なお、作製したいずれの発現ベクターについても、変異がないこと、および、読み枠にずれがないことを、シーケンスによって確認した。
【実施例】
【0149】
(3)一過性発現のトランスフェクション
実施例1と同様にして、CHO細胞およびHeLa細胞に、前述の発現ベクターを導入して、一過性で発現させた。
【実施例】
【0150】
具体的には、実施例1と同様に、培養細胞に、前記Luc-RRE発現ベクターおよび前記Rev発現ベクターを同時に添加し、トランスフェクションした。また、コントロールとして、前記pcDNA5/FRT/TO-Lucと、前記pCG-HAを共導入した。
【実施例】
【0151】
(3)ルシフェラーゼアッセイ
実施例1と同様にして、細胞抽出液を調製し、ルシフェラーゼアッセイにより酵素活性を測定した。なお、前記細胞抽出液のウエスタンブロットにより、REVタンパク質が発現していることは、確認済みである。
【実施例】
【0152】
そして、RREコード配列を有さないコントロールベクターおよびRevのコード配列を有さないコントロールベクターを導入した比較例のルシフェラーゼ活性を1として、相対活性を求めた。これらの結果を、表3に示す。表3において、「RRE(-)」は、RREコード配列を有さないコントロールベクターを導入したことを示し、「RRE(+)」は、前記Luc-RRE発現ベクターを導入したことを示し、「Rev(-)」は、Revのコード配列を有さないコントロールベクターを導入したことを示し、「Rev(+)」は、前記Rev発現ベクターを導入したことを示す。
【実施例】
【0153】
【表3】
JP0006099075B2_000004t.gif
【実施例】
【0154】
表3に示すように、HeLa細胞およびCHO細胞のいずれにおいても、前記Luc-RRE発現ベクターと前記HA-Rev発現ベクターとを共導入した実施例(RRE(+)、Rev(+))は、これらの前記発現ベクターを共導入していない比較例(RRE(-)、Rev(-))と比べて、ルシフェラーゼの活性量を著しく増加できた。つまり、前記実施例は、前記比較例と比べて、ルシフェラーゼの発現量が増加したといえる。そして、前記実施例および前記比較例は、いずれも、RREのコード配列の有無が異なるのみであり、それ以外は同様の前記ルシフェラーゼ発現ベクター(前記Luc-RRE発現ベクター、前記pcDNA5/FRT/TO-Luc)を使用していることから、核内におけるmRNAの転写効率は、ほぼ同一である。したがって、これらの結果から、前記Luc-RRE発現ベクターと前記Rev発現ベクターとの共導入により、ルシフェラーゼmRNAとRREとの融合RNA、および、Revを含むタンパク質を発現させることで、核内から細胞質へのmRNAの輸送が促進され、結果として、前記mRNAを有効に活用してルシフェラーゼタンパク質を合成できたといえる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
以上のように、本発明によれば、核内で転写されたmRNAの細胞質への輸送を促進できるため、真核細胞内で転写されたmRNAを、細胞質におけるタンパク質の発現に効率良く利用できる。このため、本発明によれば、例えば、翻訳後修飾のために、動物細胞等の真核細胞での発現が必要である有用タンパク質についても、より優れた生産性で製造できる。したがって、本発明は、例えば、製薬、医療、研究支援等の分野において、極めて有用な技術といえる。