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明細書 :セシウム含有廃棄物の処理方法。

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6210659号 (P6210659)
公開番号 特開2014-032031 (P2014-032031A)
登録日 平成29年9月22日(2017.9.22)
発行日 平成29年10月11日(2017.10.11)
公開日 平成26年2月20日(2014.2.20)
発明の名称または考案の名称 セシウム含有廃棄物の処理方法。
国際特許分類 G21F   9/28        (2006.01)
C04B  28/26        (2006.01)
C04B  18/06        (2006.01)
C04B  14/10        (2006.01)
B09B   3/00        (2006.01)
FI G21F 9/28 511B
C04B 28/26 ZAB
C04B 18/06
C04B 14/10 A
C04B 14/10 B
G21F 9/28 Z
B09B 3/00 301H
B09B 3/00 301M
B09B 3/00 304G
請求項の数または発明の数 3
全頁数 12
出願番号 特願2012-170952 (P2012-170952)
出願日 平成24年8月1日(2012.8.1)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 ▲1▼ 発行者名 国立大学法人京都大学 刊行物名 平成23年度地球工学科環境工学コース 特別研究発表会要旨集 発行年月日 平成24年2月8日 ▲2▼ 研究集会名 平成23年度地球工学科環境工学コース 特別研究発表会 主催者名 国立大学法人京都大学 開催日 平成24年2月8日
審査請求日 平成27年7月27日(2015.7.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】高岡 昌輝
【氏名】中村 尊郁
【氏名】大下 和徹
【氏名】塩田 憲司
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】関根 裕
参考文献・文献 特表2008-536105(JP,A)
特開平05-034497(JP,A)
特表2011-500494(JP,A)
米国特許出願公開第2009/0012343(US,A1)
特表平03-500255(JP,A)
米国特許第04859367(US,A)
中村尊郁、外3名,都市ゴミ焼却飛灰中セシウムのジオポリマー化による不溶化処理,第23回廃棄物資源循環学会研究発表会講演集,日本,一般社団法人 廃棄物資源循環学会,2012年10月22日,セッションID:E2-3
調査した分野 G21F 9/28
B09B 1/00 - 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
(1)アルミノケイ酸塩原料、及びアルカリ活性剤を含む溶液に、セシウムが付着した瓦礫を焼却して生じる飛灰を添加する工程1、及び、
(2)前記溶液を、ゲル化させる工程2を含み、
前記飛灰の含有量は、前記飛灰と、前記アルミノケイ酸塩原料との含有量の合計を100重量%として、40~80重量%であり、
前記アルミノケイ酸塩原料、及び前記飛灰の含有量の合計は、前記アルミノケイ酸塩原料、前記飛灰、及び前記アルカリ活性剤の含有量の合計を100重量%として、50~80重量%である
ことを特徴とするセシウムが付着した瓦礫を焼却して生じる飛灰の処理方法。
【請求項2】
前記アルミノケイ酸塩原料は、メタカオリン、及びケイ酸アルミニウムから選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の飛灰の処理方法。
【請求項3】
前記アルカリ活性剤は、水酸化ナトリウム、及びケイ酸ナトリウムを含む、請求項1又は2に記載の飛灰の処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、セシウム含有廃棄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平成23年3月11日に起こった東日本大震災(以下、震災という。)により、大量の瓦礫が発生し、福島第一原子力発電所において事故が発生したため、瓦礫が放射能汚染を受けた。このため、震災により発生した瓦礫等を処理場で焼却すると、焼却残渣から、8,000Bq/kgを超える高濃度の放射性セシウムが検出されている。このような焼却残渣を土中に埋め立てて処理すると、放射性セシウムが土中に溶出してしまうという問題がある。
【0003】
放射性セシウムを含有する焼却残渣をセメントで固化することによって、不溶化して処理を行うことが検討されているが、それでも溶出率が高く、放射性セシウムの不溶化が十分ではない。このため、放射性セシウムを不溶化して処理することができ、被処理物を土中に埋め立てても、放射性セシウムが溶出し難いセシウム含有廃棄物の処理方法の開発が求められている。
【0004】
廃棄物を固化して処理する処理方法として、下水汚泥溶融スラグ粉末を活性フィラーとし、ケイ酸ナトリウム水溶液をシリケートモノマー供給源として、これをポリマー化することでジオポリマーのモノマー源のシリケートモノマーが、下水汚泥溶融スラグ由来の金属イオンにより縮重合して固化したマトリックス構造体中に、下水汚泥溶融スラグ粉末が分散している構造を有する固化体とする下水汚泥溶融スラグ固化体の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、上記下水汚泥溶融スラグ固化体の製造方法は、Pが豊富に含まれている下水汚泥溶融スラグの再資源化を可能とし、下水汚泥溶融スラグ固化体製品を提供することを目的としており、放射性セシウムを含有する廃棄物を固化させ、且つ放射性セシウムが溶出しない処理方法とするための最適の条件については検討されておらず、セシウム含有廃棄物の処理に適した方法であるとはいえない。放射性セシウムを不溶化して処理することができ、被処理物を土中に埋め立てた場合、放射性セシウムの溶出が抑制された、セシウム含有廃棄物の処理方法は、未だ開発されていない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2010-143774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、セシウムを含有廃棄物を固化して処理するのに適しており、且つ、固化された被処理物からのセシウムの溶出が抑制されたセシウム含有廃棄物の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アルミノケイ酸塩原料、及びアルカリ活性剤を含む溶液に、セシウム含有廃棄物を添加し、上記溶液をゲル化させて、セシウム含有廃棄物の処理を行う場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の飛灰の処理方法に関する。
1.(1)アルミノケイ酸塩原料、及びアルカリ活性剤を含む溶液に、セシウムが付着した瓦礫を焼却して生じる飛灰を添加する工程1、及び、
(2)前記溶液を、ゲル化させる工程2を含み、
前記飛灰の含有量は、前記飛灰と、前記アルミノケイ酸塩原料との含有量の合計を100重量%として、40~80重量%であり、
前記アルミノケイ酸塩原料、及び前記飛灰の含有量の合計は、前記アルミノケイ酸塩原料、前記飛灰、及び前記アルカリ活性剤の含有量の合計を100重量%として、50~80重量%である
ことを特徴とするセシウムが付着した瓦礫を焼却して生じる飛灰の処理方法。
2.前記アルミノケイ酸塩原料は、メタカオリン、及びケイ酸アルミニウムから選択される少なくとも1種である、上記項1に記載の飛灰の処理方法。
3.前記アルカリ活性剤は、水酸化ナトリウム、及びケイ酸ナトリウムを含む、上記項1又は2に記載の飛灰の処理方法
【0010】
本発明のセシウム含有廃棄物の処理方法は、(1)アルミノケイ酸塩原料、及びアルカリ活性剤を含む溶液に、セシウム含有廃棄物を添加する工程1、及び、(2)上記溶液を、ゲル化させる工程2を含む。上記処理方法では、工程1により、溶液中でセシウム含有廃棄物の存在下において、アルミノケイ酸塩原料とアルカリ活性剤とを反応させ、工程2により、ゲル化させることによりジオポリマーが形成され、三次元網目構造のジオポリマー骨格のアルミニウムイオンに、セシウムイオンが結合することにより、セシウムイオンをジオポリマー中に強固に固定化することが容易となり、且つ、セシウムの溶出を抑制することが可能となる。
【0011】
以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。
【0012】
1.工程1
上記工程1は、アルミノケイ酸塩原料、及びアルカリ活性剤を含む溶液に、セシウム含有廃棄物を添加する工程である。
【0013】
(アルミノケイ酸塩原料)
上記アルミノケイ酸塩原料は、ケイ酸塩中にあるケイ素原子の一部をアルミニウム原子に置換した、下記一般式(1)
xMO・yAl・zSiO・nHO (1)
(Mは、アルカリ金属を示し、x、y、zは、それぞれ正の整数を示し、nは、0又は正の整数をす。)
で表されるアルミノケイ酸塩を生成することができるものであれば特に限定されない。
【0014】
上記アルミノケイ酸塩原料としては、例えば、メタカオリン、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸とアルミナとの混合物等が挙げられる。中でも、セシウムの固定化率に優れたジオポリマーを形成することができる点で、メタカオリン、及びケイ酸アルミニウムを用いることがより好ましく、メタカオリンを用いることが更に好ましい。また、上記アルミノケイ酸塩原料としては、メタカオリン、及びケイ酸アルミニウムを混合して用いてもよい。
【0015】
(アルカリ活性剤)
上記アルカリ活性剤は、アルミノケイ酸塩中のケイ素成分、及び金属成分の重合を促進させる成分である。上記アルカリ活性剤としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム又はケイ酸カリウムの水溶液が挙げられ、中でも、ケイ酸ナトリウム、及び水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。ケイ酸ナトリウム、及び水酸化ナトリウムを用いることにより、セシウムをジオポリマー中により強固に固定化することができ、セシウムの溶出を抑制することができる。また、水酸化ナトリウムと、ケイ酸ナトリウムとを混合して用いてもよい。
【0016】
(セシウム含有廃棄物)
上記工程1では、セシウム含有廃棄物が用いられる。このようなセシウム含有廃棄物は、震災により発生した瓦礫等をゴミ処理場で焼却して得られる焼却残渣を用いることができるが、これに限定されず、木材、プラスチック等を焼却して得られ、セシウムを含有する廃棄物であればよい。
【0017】
また、上記セシウム含有廃棄物は、震災により発生した瓦礫等を、焼却炉内で焼却する際に、焼却炉内に消石灰を噴霧することによりHCl、SO等の酸性ガスを除去し、織布や不織布を用いて焼却作業中に発生する処理ガス中の煤塵をろ過捕集する、いわゆるバグフィルターと呼ばれる集塵装置を備えた焼却炉から排出されるセシウム含有廃棄物を用いてもよい。上記バグフィルターを備えた焼却炉から排出されるセシウム含有廃棄物は、バグフィルターを備えない焼却炉から排出されるセシウム含有廃棄物の成分に加え、消石灰由来のカルシウムを含有する。
【0018】
上記焼却残渣は、一般に、飛灰と主灰を含むものである。ここで、飛灰とは、セシウムが付着した瓦礫等を焼却した際に発生する排ガス中の煤塵であり、主灰と比べて、塩素及び重金属を多量に含む。また、主灰とは、セシウムが付着した瓦礫等を焼却した際に、焼却炉の炉底に溜まる残渣である。本発明において、上記セシウム含有廃棄物は、セシウムが付着した瓦礫等を焼却して生じる飛灰であることが好ましい。このような飛灰は、セシウムの含有量が比較的多いため、セシウム含有廃棄物として、このような飛灰を用いることにより、セシウム含有廃棄物を固化して好適に処理することができ、且つ、固化された被処理物からのセシウムの溶出を抑制することができるとの本発明の効果をより顕著に発揮することができる。
【0019】
上記セシウム含有廃棄物の含有量(以下、当該含有量をFAとも示す。)は、上記セシウム含有廃棄物と、上記アルミノケイ酸塩原料との含有量の合計を100重量%として、30~90重量%であることが好ましく、40~80重量%であることがより好ましい。セシウム含有廃棄物の含有量を上述の範囲とすることにより、セシウムの溶出を、より効果的に抑制することができる。
【0020】
上記アルミノケイ酸塩原料及びセシウム含有廃棄物の含有量の合計(以下、当該含有量の合計をFiとも示し、アルミノケイ酸塩原料、及びセシウム含有廃棄物の混合物を、フィラーともいう。)は、上記セシウム含有廃棄物、アルミノケイ酸塩原料、及びアルカリ活性剤の含有量の合計を100重量%として、45~90重量%であることが好ましく、50~80重量%であることがより好ましい。上記アルミノケイ酸塩原料、及びセシウム含有廃棄物の含有量の合計を上述の範囲とすることにより、セシウムの溶出を、より効果的に抑制することができる。
【0021】
上記溶液は、上記アルミノケイ酸塩原料、アルカリ活性剤、及び上記セシウム含有廃棄物のみからなるものであってもよいし、水等の公知の溶媒を含むものであってもよい。また、所望の濃度の水酸化ナトリウムを用いることにより、水酸化ナトリウム由来の水が溶液に含まれていてもよい。
【0022】
工程1においては、上記アルミノケイ酸塩原料、及びアルカリ活性剤を含む溶液に、セシウム含有廃棄物を添加する。上記溶液にセシウム含有廃棄物を添加する方法としては、これらを混合することができれば特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、上記セシウム含有廃棄物を添加した溶液をビーカー内で混合撹拌させる方法が挙げられ、混合撹拌の際に、加熱してもよい。
【0023】
上記混合撹拌の際の溶液の温度は特に限定されないが、20℃程度の室温であることが好ましい。上記溶液の温度が低過ぎると、反応速度が遅くなるおそれがあり、高過ぎると、水等の溶液中の溶媒が蒸発してしまい、重合反応を継続できなくなるおそれがある。
【0024】
上記溶液の混合撹拌の時間は特に限定されないが10分以上であることが好ましい。上記混合撹拌の時間が短過ぎると、反応が不十分となるおそれがある。
【0025】
以上説明した工程1により、アルミノケイ酸塩原料、及びアルカリ活性剤を含む溶液に、セシウム含有廃棄物の粉末を分散させることができる。
【0026】
2.工程2
上記工程2は、上記溶液をゲル化させる工程である。上記溶液をゲル化させる方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、上記溶液を20℃前後の室温下で静置して養生する方法が挙げられ、また、ゲル化を促進させるため、溶液を室温以上の温度に加熱する方法が挙げられる。加熱温度は、20℃程度の室温~110℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10分~48時間であることが好ましく、30分~24時間であることがより好ましい。
【0027】
上記溶液をゲル化させる方法としては、具体的には、20℃程度の室温で1週間静置して養生する方法、20℃程度の室温で24時間静置した後、105℃で24時間静置し、更に、20℃程度の室温で24時間静置して養生する方法等が挙げられる。
【0028】
上記工程2における溶液は、強いアルカリ性であることが好ましい。ゲル化の際の溶液を強いアルカリ性とすることにより、ゲル化をより促進することができる。
【0029】
以上説明した工程2により、工程1で調製された溶液をゲル化させて、セシウムをジオポリマー中に固定化することができる。
【0030】
本発明のセシウム含有廃棄物の処理方法は、上記工程1、及び2の他に、更に、他の工程を含んでいてもよい。上記他の工程としては、例えば、上記工程2によりゲル化されたジオポリマーを、水、イオン交換水等の洗浄液により洗浄し、過剰なNaOHを除去する洗浄工程が挙げられる。上記洗浄工程により過剰なNaOHを除去する方法としては、ジオポリマー中のNaOHを除去できれば特に限定されない。上記洗浄工程に用いられた水等の洗浄液は、ジオポリマーのセシウムの固定化率を算出するために、洗浄液中に含まれるセシウム濃度を測定するとよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の処理方法によれば、セシウム含有廃棄物を固化して好適に処理することができ、且つ、固化された被処理物からのセシウムの溶出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】スプリングエイトにより測定したセシウム原子のXANESスペクトルを示す図である。(a)は実施例29により得られたジオポリマー中のセシウム原子のXANESスペクトル、(b)は飛灰に塩化セシウムを添加した混合飛灰中のセシウム原子のXANESスペクトル、(c)はセシウムを含む鉱石であるポルックス石中のセシウム原子のXANESスペクトル、(d)は炭酸セシウム中のセシウム原子のXANESスペクトル、(e)は塩化セシウム中のセシウム原子のXANESスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。

【0034】
アルミノケイ酸塩原料、及びアルカリ活性剤を含む溶液に、セシウム含有廃棄物を分散させた。セシウム含有廃棄物として、都市ゴミ処理場で焼却して得られた飛灰を用いた。飛灰は、都市ゴミ処理場の焼却炉により焼却した際に排出される中性灰と、バグフィルターを備える焼却炉により焼却した際に排出され、消石灰由来のカルシウムを含有するアルカリ灰とを用いた。

【0035】
なお、以下の実施例及び比較例で用いた飛灰のセシウム含有量は、後述する(セシウム元素全量)を測定する際の測定方法により測定したところ、中性灰は、7.1mg-Cs/kgであり、アルカリ灰は、1.8mg-Cs/kgであった。

【0036】
実施例1
(セシウム元素全量の測定)
飛灰のセシウムの含有量を、以下の方法により測定した。実施例1においては、飛灰として中性灰を使用した。先ず、中性灰をテフロン(登録商標)製の容器に50mg量りとり、濃硝酸(電子工学用:ナカライテスク株式会社製)5ml、濃塩酸(電子工学用:ナカライテスク株式会社製)2ml、及びフッ化水素酸(特級:ステラケミファ株式会社製)3mlを添加して、マイクロウェーブ分解装置(MARS5:CEM株式会社製)により、180psi(1.2MPa)、190℃の条件で分解した。分解後、フッ素のマスキングを行うことを目的として、ホウ酸水溶液を18ml添加して、100psi(0.69MPa)、170℃の条件で再度分解を行った。得られた分解液を、0.2μmのメンブランフィルターを用いてろ過した。得られたろ液を、硝酸(電子工学用:ナカライテスク株式会社製)を超純水により希釈して調製した1mol/lの硝酸水溶液を用いて、100mlにメスアップすることにより検液を得た。

【0037】
得られた検液について、セシウム含有量を、ICP-MS分析装置(横河アナリティカルシステムズ株式会社製 HP4500)を用いて、5点検量線によるイットリウム固定内標準法により測定した。セシウムの検量線用標準資料濃度は、セシウム標準液(1000ppm:和光純薬工業株式会社製)を用いて、0、10、20、50、100μg/lに調製した。標準資料溶液、及び、測定対象となる、不溶物除去後のイオン交換水に、それぞれ、イットリウム標準液(1000ppm:和光純薬工業株式会社製)を用いて100μg/lの濃度で添加し、1mol/lの硝酸でメスアップした。測定条件は、高周波電力1.4kW、プラズマガス14.5~15.5L/min、補助ガス0.9~1L/min、サンプリング位置7.5mm、酸化物生成比<0.5%、2価イオン生成比<2%の条件とした。

【0038】
以上に説明した方法により測定された、単位数量あたりの飛灰のセシウム含有量の測定値と、後述する(ジオポリマーの合成)に用いられる飛灰(中性灰)の採取量との積を、「セシウム元素全量」として、固定化率を算出する下記式に用いた。

【0039】
(ジオポリマーの合成)
中性灰を、105℃の条件下で15分間乾燥させた。セシウム含有廃棄物として、乾燥後の中性灰を、100mlのポリ瓶内に適量採取した。ポリ瓶内で、中性灰に、アルミノケイ酸塩原料としてのメタカオリンを添加して、ポリ瓶を5分間振とうすることにより混合撹拌し、フィラーを得た。上記メタカオリンは、カオリン(和光純薬工業株式会社製)を900℃で12時間焼成したものを用いた。フィラー中の飛灰(中性灰)の含有量(FA)は、飛灰とアルミノケイ酸塩原料との含有量の合計を100重量%として、50重量%であった。

【0040】
次に、14MNaOH水溶液、及びケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)(JIS K1408 1号:ナカライテスク株式会社製)を質量比1:1の割合で混合することにより、アルカリ活性剤を調製した。上記14MNaOH水溶液は、固体のNaOH(96%)試薬(和光純薬工業株式会社製)をイオン交換水で溶解させて調製したものを用いた。

【0041】
次に、100mlのポリ瓶内のフィラーに、上述のように調製したアルカリ活性剤を添加し、薬さじを用いて10分間撹拌することにより、アルミノケイ酸塩原料、及びアルカリ活性剤を含む溶液に、セシウム含有廃棄物である飛灰を添加する工程を行った。アルミノケイ酸塩原料、及び飛灰の含有量の合計(フィラーの含有量)(Fi)は、アルミノケイ酸塩原料、飛灰、及びアルカリ活性剤の含有量の合計を100重量%として、50重量%であった。溶液中の気泡を除去するため、ポリ瓶に蓋をして、超音波発生装置(model BRANSON2210:ヤマト科学株式会社製)を用いて2分間超音波振動を加えた。

【0042】
得られた溶液を養生して、縮重合させることによりゲル化させ、ジオポリマーを得た。養生は、72時間行い、最初の24時間は室温で静置し、次の24時間は105℃の温度条件下で静置し、最後の24時間は室温で静置することにより行った。

【0043】
得られたジオポリマーに含まれる過剰のNaOHを除去するために、イオン交換水で洗浄を行った。具体的には、200mlのビーカーに100mlのイオン交換水を入れ、ポリ瓶内のジオポリマーをイオン交換水中に移し、5分間静置した。静置後、ジオポリマーを取り出し、105℃の温度条件下で24時間乾燥させて、洗浄後のジオポリマーを得た。

【0044】
(洗浄流出量の測定)
ジオポリマーの洗浄に用いた後のイオン交換水について、0.45μmのメンブランフィルターを用いて吸引ろ過を行い、不溶物を除去した。不要物除去後のイオン交換水について、上述のICP-MS分析装置による測定条件と同一の条件でセシウム含有量を測定した。

【0045】
以上に説明した方法により測定された、単位数量あたりの不要物除去後のイオン交換水のセシウム含有量の測定値と、洗浄に用いたイオン交換水全量との積を、「洗浄流出量」として、固定化率を算出する下記式に用いた。

【0046】
(溶出量の測定)
上記洗浄後のジオポリマーを用いて、セシウムの溶出量を測定した。上記セシウムの溶出量の測定は、環境省による「土壌の汚染に係る環境基準について」の環境庁告示46号試験に準拠した方法により行った。具体的には、以下の通りである。

【0047】
先ず、得られたジオポリマーを粉砕し、非金属製の2mmの目のふるいを通過させて、得られた粉末を十分混合した。次に、得られた粉末5gと、溶媒(純水に塩酸を加え、pH=6.0となるように調製したもの)50mlとを100mlのポリ瓶に入れ、試料液を調製した。

【0048】
次に、調製した試料液を振とう器(ヤマト科学株式会社製:model Shaker300)を用いて、常温(約20℃)常圧(約1気圧)、振とう回数200回/分、振とう幅4cm以上5cm以下の条件で、6時間連続して振とうさせた。

【0049】
次に、振とう後の試料液を、10~30分程度静置後、遠心分離機により、毎分約3,000回転の条件で20分間遠心分離を行い、上澄み液を得た。

【0050】
最後に、得られた上澄み液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過してろ液を取り、定量に必要な量を正確に量り取った。量り取ったろ液を、硝酸(電子工学用:ナカライテスク株式会社製)を超純水により希釈して調製した1mol/lの硝酸水溶液を用いて、100mlにメスアップすることにより検液を得た。得られた検液について、上述のICP-MS分析装置による測定条件と同一の条件でセシウム含有量を測定した。

【0051】
以上に説明した方法により測定された、単位数量あたりの溶出量の測定値と、洗浄後のジオポリマー全量との積を、「セシウム溶出量」として、固定化率を算出する下記式に用いた。

【0052】
(固定化率の算出方法)
以上に説明した測定方法により測定された測定値を用いて、下記式に基づいて、セシウムの固定化率を算出した。
[固定化率(%)]=[((セシウム元素全量)-(セシウム溶出量+洗浄流出量))/(セシウム元素全量)]×100
実施例2~28、比較例1~3
使用飛灰の種類、飛灰の含有量(Fa)、並びに、アルミノケイ酸塩原料及び飛灰の含有量の合計(Fi)を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして処理試験を行い、固定化率を算出した。結果を表1に示す。

【0053】
【表1】
JP0006210659B2_000002t.gif

【0054】
表1の結果から明らかなように、実施例1~28では、セシウムの固定化率が35.4~94.0%であり、セシウムがジオポリマー中に固定化され、ジオポリマーからのセシウムの溶出が抑制されていることが分かった。また、セシウム含有廃棄物として中性灰を用いた実施例1~9及び、アルカリ灰を用いた実施例10~28のいずれにおいても同様にセシウムがジオポリマー中に固定化され、ジオポリマーからのセシウムの溶出が抑制されていることが分かった。

【0055】
一方、比較例1~3では、アルミノケイ酸塩を用いていないため、ジオポリマーを十分に形成することができないので、セシウムを十分に固定化することができず、固定化率が0~15.4%と低くなってしまった。

【0056】
実施例29~43
セシウム含有廃棄物に、セシウムが多量に含有されている場合にも同様に、セシウムの固定化が可能であることを確認するために、実施例29~43により、飛灰にセシウム含有化合物を添加した混合飛灰を用いて、セシウム含有廃棄物の処理試験を行った。

【0057】
具体的には、上記混合飛灰1kgに対して、塩化セシウム(CsCl)又は炭酸セシウム(CsCO)の含有量が1000mg/kgとなるように、飛灰に、塩化セシウム又は炭酸セシウムを添加し、乳鉢で摺り合わせることにより混合飛灰を得た。飛灰に代えて、上述の混合飛灰を用い、混合飛灰中の飛灰の種類、混合飛灰の含有量(FA)、並びに、アルミノケイ酸塩及び混合飛灰の含有量の合計(Fi)を表2のように変更した以外は、実施例1と同様にして処理試験を行った。結果を表2に示す。

【0058】
【表2】
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【0059】
表2の結果から、セシウム含有廃棄物にセシウムが多量に含有されている場合にも同様に、セシウムを固定化することが可能であることが分かった。飛灰に塩化セシウムを添加した混合飛灰を用いた実施例29~35では、固定化率が56.4~95.1%であり、セシウムがジオポリマー中に固定化されており、ジオポリマーからのセシウムの溶出が抑制されていた。

【0060】
同様に、飛灰に炭酸セシウムを添加した混合飛灰を用いた実施例36~43では、固定化率が76.4~98.2%であり、セシウムがジオポリマー中に非常に高い割合で固定化されており、ジオポリマーからのセシウムの溶出が抑制されていた。

【0061】
ジオポリマー中のセシウムの結合状態を調べるために、実施例29により得られたジオポリマー中のセシウム原子のXANESスペクトルを、大型放射光施設SPring8(SuperPhoton ring-8 GeV:スプリングエイト)を用いて測定した(図1(a))。測定には、モノクロメータ(結晶面Si311)を用い、検出器は19素子半導体検出器を使用した。また、比較のために、飛灰に、セシウム含有化合物である塩化セシウムを添加した混合飛灰中のセシウム原子(図1(b))、セシウムを含む鉱石であるポルックス石(CsAlSi)中のセシウム原子(図1(c))、炭酸セシウム中のセシウム原子(図1(d))、及び塩化セシウム中のセシウム原子(図1(e))のXANESスペクトルを測定した。XANESスペクトルは、セシウム原子に近接する原子の立体配置等についての情報を含有しており、これを測定することにより、セシウム原子の結合状態が把握できる。

【0062】
実施例29により得られたジオポリマー中のセシウム原子のXANESスペクトル(図1(a))は、ポルックス石中のセシウム原子のXANESスペクトル(図1(c))とピーク位置が共通しており、チャートが殆ど同一である。ポルックス石中のセシウム原子は、鉱石の分子構造の一部を形成しているため、セシウム原子に酸素原子が近接している。

【0063】
また混合飛灰中のセシウム原子(図1(b))、炭酸セシウム中のセシウム原子(図1(d))、及び塩化セシウム中のセシウム原子(図1(e))のXANESスペクトルとは、ピーク位置等が相違している。

【0064】
以上より、実施例29により得られたジオポリマー中では、セシウム原子は、単に物理吸着等の物理的要因により取り込まれているのではなく、セシウム原子が鉱石の分子構造の一部を形成しているポルックス石中のセシウム原子と同様に、ジオポリマーの分子構造中に、分子構造の一部を形成している状態で取り込まれており、本発明のセシウム含有廃棄物の処理方法により処理されたセシウムが、ジオポリマーから溶出し難いことが裏付けられているといえる。
図面
【図1】
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