TOP > 国内特許検索 > 2次元フォトニック結晶及び合分波器 > 明細書

明細書 :2次元フォトニック結晶及び合分波器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3925769号 (P3925769)
公開番号 特開2001-272555 (P2001-272555A)
登録日 平成19年3月9日(2007.3.9)
発行日 平成19年6月6日(2007.6.6)
公開日 平成13年10月5日(2001.10.5)
発明の名称または考案の名称 2次元フォトニック結晶及び合分波器
国際特許分類 G02B   6/12        (2006.01)
FI G02B 6/12 F
G02B 6/12 N
G02B 6/12 Z
請求項の数または発明の数 13
全頁数 17
出願番号 特願2000-084869 (P2000-084869)
出願日 平成12年3月24日(2000.3.24)
審判番号 不服 2004-014940(P2004-014940/J1)
審査請求日 平成14年9月12日(2002.9.12)
審判請求日 平成16年7月16日(2004.7.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000046
【氏名又は名称】関西ティー・エル・オー株式会社
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
発明者または考案者 【氏名】野田 進
【氏名】チュティナン アロンカーン
【氏名】宮内 大助
【氏名】成宮 義和
個別代理人の代理人 【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
参考文献・文献 国際公開第98/57207(WO,A1)
米国特許第5784400(US,A)
Noda, S. et al,”Alignment and stacking of semiconductor photonic bandgaps by wafer-fusion”,Journal of Lightwave Technology,米国,IEEE, 1999年11月,Vol.17 No.11,pp.1948-1955
調査した分野 G02B6/12
特許請求の範囲 【請求項1】
空気より屈折率が高い材料から形成されているスラブに、このスラブ材料よりも屈折率の低い物質を周期的に配列して屈折率分布を形成した2次元フォトニック結晶構造を有し、
前記フォトニック結晶の周期的配列に線状の欠陥が形成されており、この線状欠陥が導波路として機能するフォトニック結晶導波路を有し、
前記フォトニック結晶導波路に隣接して、前記フォトニック結晶の周期的配列を乱す少なくとも1つの点状の欠陥を有し、
この点状欠陥が導波路中を伝搬する光・電磁波のなかで、特定の波長の光・電磁波を捕獲してこれを結晶外部へ放射し、あるいは特定の波長の光・電磁波を結晶外部から捕獲して前記導波路内に導入する光・電磁波取り出し/導入口として機能する2次元フォトニック結晶
【請求項2】
前記光・電磁波取り出し/導入口は、スラブ面と直交する方向の光・電磁波を放射/導入する請求項1の2次元フォトニック結晶
【請求項3】
前記点状欠陥は、その形状により放射/導入する光・電磁波の波長が異なる請求項1又は22次元フォトニック結晶
【請求項4】
前記低屈折率物質の配列が、スラブに形成した円柱状の孔に低屈折率材料が充填されたものである請求項1~3のいずれかの2次元フォトニック結晶
【請求項5】
前記低屈折率物質の配列が、三角格子配列である請求項1~4のいずれかの2次元フォトニック結晶
【請求項6】
前記点状欠陥は、スラブ面に対して上下非対称の形状を有する請求項1~5のいずれかの2次元フォトニック結晶
【請求項7】
前記スラブ材料の屈折率が、2.0以上である請求項1~6のいずれかの2次元フォトニック結晶
【請求項8】
前記スラブ材料は、In、Ga、Al、Sb、As、Ge、Si、P、N、およびOのいずれか1種または2種以上を含有する無機材料であるか、有機材料である請求項7の2次元フォトニック結晶
【請求項9】
前記屈折率の低い物質は空気である請求項1~8のいずれかの2次元フォトニック結晶
【請求項10】
請求項1~9の2次元フォトニック結晶を有するフォトニック結晶合分波器
【請求項11】
点状欠陥を複数有し、この点状欠陥が放射/捕獲する周波数がそれぞれ異なっている請求項10のフォトニック結晶合分波器
【請求項12】
点状欠陥近傍に光ファイバーが配置されている請求項10または11のフォトニック結晶合分波器
【請求項13】
前記点状欠陥近傍に、光電変換機能を有する半導体素子が配置されている請求項10または11のフォトニック結晶合分波器
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば微小光回路素子として用いられるフォトニック結晶、特に2次元の周期的屈折率分布を有する2次元フォトニック結晶に関し、線状欠陥および点欠陥の導入により形成した、光・電磁波取り出し/導入口を有する導波路、および波長分波器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の波長多重通信システムの進展に伴い、分波・合波器や波長フィルターの重要性が高まっている。
【0003】
波長多重通信用の光分岐挿入装置は、光アドドロップ多重装置とも呼ばれ、多重化された信号からあるチャンネルの信号を取り出したり、空いている部分に追加する機能を持つ。一般的構成として、アレイ導波路回折格子型、ファイバーグレーテイング型などがある。アレイ導波路回折格子は、長さの異なる光導波路が多数配列された構造を持つ一種の回折格子で、この導波路の長さの差により波長に依存する波面の傾きが発生し、波長多重光を入力すると波長毎に異なる導波路から分波されて出力される(例えば電気通信学会誌p746-749(1999))。ファイバーグレーテイング型では、特定波長の信号のみファイバーグレーテイングでブラッグ反射させることにより、ドロップポートから取り出す、あるいはアッドポートから入力することが可能となる。
【0004】
しかし、従来のアレイ導波路回折格子型の波長合分波器では、曲げ損を少なくするため曲率半径をかなり大きくする必要があり、素子寸法が非常に大きくなってしまう。
【0005】
そこで、フォトニック結晶を用いて極小型の光合分波器を形成するという考えも多く提案されている。例えば、Applled Physics Letters,Vol.75,P3739-3741(1999)(従来技術1)、Physical Review Letters,Vol.80,P960-963(1998)(従来技術2)等に記載されている。
【0006】
フォトニック結晶とは、その内部に周期的な屈折率分布を持つ結晶であり、人工周期構造による新規な光学特性を実現し得るものである。
【0007】
フォトニック結晶が持っ重要な特徴にフォトニックバンドギャップの存在がある。3次元周期を有するフォトニック結晶(以下3次元フォトニック結晶)では、全ての方向に対して光の伝搬が禁じられる完全バンドギャップを形成することができる。これにより、局所的な光の閉じ込めや、自然放出光の制御、線状欠略の導入による導波路の形成が可能となり、極微小光回路の実現が期待できる。
【0008】
従来技術1には、3次元フォトニック結晶に線状欠陥を導入して形成した導波路を分岐形状とすることにより、超小型光分波器を形成できることが示唆されているが、その具体的な構造については開示されていない。
【0009】
一方、2次元周期構造を有するフォトニック結晶(以下2次元フォトニック結晶)の検討が、作製が比較的容易なことから盛んに行われており、従来技術2には、分岐形状の導波路を用いた分波器の解析結果が示されている。
【0010】
2次元フォトニック結晶の屈折率周期構造は、高屈折率材料に円柱孔を正方格子または三角格子状に配列する。あるいは低屈折率材料中に高屈折率材料の円柱を正方格子状に配列することにより形成する。これらの周期構造からフォトニックバンドギャップが形成され、面内光に対しては光の伝搬が制御される。この周期構造に線状の欠陥を導入することにより導波路を形成することができる(例えば、Physical Review Letters,Vol.77,p3787-3790(1996)、および(従来技術2))。
【0011】
従来技術2は、高屈折材料からなる円柱を正方格子状に配列した形状である。ただし、前述のように面内方向に対しての光の伝搬はバンドギャップにより制御できるが、上下方向への光の伝搬は周期構造では制御できないので、高さを無限大と想定して、直線導波路および90°の曲げ、分岐形状の解析を行っている。
【0012】
しかしながら、実際のデバイスでは高さを無限大とすることはできないので、有限の高さで光を閉じこめる必要がある。
【0013】
一方、高屈折率材料に円柱孔を形成する場合は、高屈折率材料をスラブ形状とし、上下に低屈折率層を設けて全反射により光を閉じ込め、導波路を形成することができる。
【0014】
しかしながら、このような構造での分波器、合波器等の検討はなされていない。また、面内方向に伝搬する光を面直方向に導く、あるいは面直方向からの光を面内方向に導くといった90°の曲げ、分岐形状に関する検討もなされていない。
【0015】
自己クローニング型3次元結晶によるスーパープリズムを用いた光分波、合波器も検討されているが(例えばApplied Physics Letters,Vol74,P1212-1214(1999)、O pIus E,12月号,p1560-1565(1999))、導波路と組み合わされたものではなく、単独のデバイスとしての機能でしか検討されていない。
【0016】
フォトニック結晶導波路から、ある波長帯域で波長選択性を持って光を出力する、あるいはフォトニック結晶導波路に波長選択性を持って光を入力することが可能となれば、通常の素子よりも非常に小型な光分波、合波機能を有する光回路が実現可能となる。また、2次元フォトニック結晶導波路の光・電磁波を面直方向に導くことができれば、立体的な光・電磁波回路とすることもできる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、2次元フォトニック結晶導波路中を伝搬する光・電磁波を面直方向に導く、あるいは入力する形態で、光・電磁波導波路、光・電磁波合分波器を形成するための効果的形態を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の構成により達成される。
(1) 空気より屈折率が高い材料から形成されているスラブに、このスラブ材料よりも屈折率の低い物質を周期的に配列して屈折率分布を形成した2次元フォトニック結晶構造を有し、前記フォトニック結晶の周期的配列に線状の欠陥が形成されており、この線状欠陥が導波路として機能するフォトニック結晶導波路を有し、前記フォトニック結晶導波路に隣接して、前記フォトニック結晶の周期的配列を乱す少なくとも1つの点状の欠陥を有し、この点状欠陥が導波路中を伝搬する光・電磁波のなかで、特定の波長の光・電磁波を捕獲してこれを結晶外部へ放射し、あるいは特定の波長の光・電磁波を結晶外部から捕獲して前記導波路内に導入する光・電磁波取り出し/導入口として機能する2次元フォトニック結晶
(2) 前記光・電磁波取り出し/導入口は、スラブ面と直交する方向の光・電磁波を放射/導入する上記(1)の2次元フォトニック結晶
(3) 前記点状欠陥は、その形状により放射/導入する光・電磁波の波長が異なる上記(1)又は(2)2次元フォトニック結晶
(4) 前記低屈折率物質の配列が、スラブに形成した円柱状の孔に低屈折率材料が充填されたものである上記(1)~(3)のいずれかの2次元フォトニック結晶
(5) 前記低屈折率物質の配列が、三角格子配列である上記(1)~(4)のいずれかの2次元フォトニック結晶
(6) 前記点状欠陥は、スラブ面に対して上下非対称の形状を有する上記(1)~(5)のいずれかの2次元フォトニック結晶
(7) 前記スラブ材料の屈折率が、2.0以上である上記(1)~(6)のいずれかの2次元フォトニック結晶
(8) 前記スラブ材料は、In、Ga、Al、Sb、As、Ge、Si、P、N、およびOのいずれか1種または2種以上を含有する無機材料であるか、有機材料である上記(7)の2次元フォトニック結晶
(9) 前記屈折率の低い物質は空気である上記(1)~(8)のいずれかの2次元フォトニック結晶
(10) 上記(1)~(9)の2次元フォトニック結晶導波路を有するフォトニック結晶合分波器
(11) 点状欠陥を複数有し、この点状欠陥が放射/捕獲する周波数がそれぞれ異なっている上記(10)のフォトニック結晶合分波器
(12) 点状欠陥近傍に光ファイバーが配置されている上記(10)または(11)のフォトニック結晶合分波器
(13) 前記点状欠陥近傍に、光電変換機能を有する半導体素子が配置されている上記(10)または(11)のフォトニック結晶合分波器
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の2次元フォトニック結晶は、空気より屈折率が高い材料から形成されているスラブに、このスラブ材料よりも屈折率の低い物質を周期的に配列して屈折率分布を形成した2次元フォトニック結晶構造を有し、前記フォトニック結晶の周期的配列に線状の欠陥が形成されており、この線状欠陥が導波路として機能するフォトニック結晶導波路を有し、前記フォトニック結晶導波路に隣接して、前記フォトニック結晶の周期的配列を乱す少なくとも1つの点状の欠陥を有し、この点状欠陥が導波路中を伝搬する光・電磁波のなかで、特定の波長の光・電磁波を捕獲してこれを放射し、あるいは外部からの特定の波長の光・電磁波を捕獲して前記導波路内に導入する光・電磁波取り出し/導入口として機能するものである。
【0020】
本発明における導波路および点欠陥は、光のみならず光に近い性質を有する電磁波も伝搬し、入出力可能である。
【0021】
このように、線状の欠陥により形成された導波路の近傍に点状欠陥を形成することにより、点状の欠陥からの光・電磁波取り出し/導入が可能となり、光・電磁波取り出し/導入口を形成することができる。この、点状の欠陥は、空気より屈折率が高い材料から形成されているスラブに、このスラブ材料よりも屈折率の低い物質を周期的に配列して屈折率分布を形成した2次元フォトニック結晶構造を乱すものである。
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
図1に本発明の第1の形態として、2次元フォトニック結晶スラブ導波路に隣接して点欠陥を設け、特定波長の光・電磁波を面直方向に出力する導波路・波長分波器を示す。
【0023】
はじめにフォトニック結晶および導波路に関して記述する。本発明に用いたフォトニック結晶は、2次元の屈折率周期分布により面内方向にバンドギャップを有する2次元フォトニック結晶であり、結晶構造は、例えば図1に示すようにスラブ材料11に円柱孔16を三角格子状に配列したものである。
【0024】
入射光・電磁波13(λ1 ,λ2 ,‥λi ,‥)は、結晶内では、面内方向にはバンドギャップにより伝搬を禁じられ、面直方向には上下の低屈折率材料による全反射により閉じこめられる。
【0025】
ここで、図1に示すように、三角格子状に配列した円柱孔16を一部線状に抜き取ることにより、フォトニック結晶に線状の欠陥12が導入されることになる。この線状欠陥12中には導波モードが存存し、導波路が形成される。
【0026】
フォトニック結晶スラブ構造の材料としては、上下方向に光・電磁波を閉じこめる必要があるので屈折率が大きい材料が望ましく、本実施例ではInGaAsPスラブを用いているが、他にもGaAsあるいはIn、Ga、Al、Sb、As、Ge、Si、P、N、およびOのいずれか1種または2種以上を含む材料、およびSi等の無機材料、特に無機半導体材料、さらには有機材料などを用いることができる。
【0027】
スラブとして用いる材料の屈折率は前述のように大きい方が望ましく、具体的には空気より大であり、2.0以上が好ましく、3.0以上であればより好ましい。
【0028】
なお、上記例では、例えば図3に示すように、円柱孔16を三角格子16a状に配列しているが、例えば図4に示すように、フォトニックバンドギャップが存在するように円柱孔16を正方格子16b状に配列し、線状に欠陥12を導入したフォトニック結晶を用いることもできる。なお、図3,4は、フォトニック結晶を構成するスラブの一部平面図である。
【0029】
次に、光・電磁波取り出し/導入口について説明する。前述のように、光・電磁波は2次元フォトニック結晶の欠陥導波路内を伝播することができる。直線導波路においては、光・電磁波を低損失で伝搬できる波長域は比較的大きい。したがって、数チャンネルの波長を含む波長帯域の光・電磁波を導波路中に伝搬させることができる。これに対して、図1に示したように、導波路近傍に点欠陥14を設けると、ここに特定波長の光・電磁波が捕獲され、欠陥内部で共振している間に、スラブ形状であることに起因するQ因子の小さな上下方向へ光・電磁波15が放射される。
【0030】
また、点欠陥を、波長帯域中の特定チャンネルの波長のみ捕獲するよう設計することによって、光・電磁波取り出し/導入口のみならず特定波長の光・電磁波(λi )を取り出す分波器、合波器あるいは濾波器として機能させることができる。また、この形態により、面内導波光・電磁波を面直方向に導くことができ、微少領域で分岐路、方向転換路を形成することができる。また、反対に面直方向に入射した特定波長の光・電磁波を面内導波路に導くことも可能である。
【0031】
導波路と点欠略の間隔を適宜設定することにより、捕獲、出力する特定波長の光・電磁波の割合を制御することも可能である。このため、所定の割合で光・電磁波を取り出したり、分岐させる光・電磁波回路も容易に形成することができる。
【0032】
また、図1の形態においては特に欠陥に上下非対称性を導入していないので、光・電磁波は上下方向に出力されるが、欠陥に上下非対称性を導入することによって、上下どちらかのみに光・電磁波を出力させることも可能である。非対称性の導入方法としては、例えば図5に示すように点欠陥14の形状を、円柱状から円錐状にしたり、あるいは図6に示すように、点欠陥14の径をスラブ11の上下で変えるという方法を用いることができる。なお、図5,6は点欠陥部分の一部断面図である。
【0033】
図2には、本発明の第2の実施形態として、直線導波路に隣接して2つの点欠陥21,22を設けた形態を示す。それぞれの欠陥の大きさにより捕獲、出力する光・電磁波22,23の波長を制御した形態であり、それぞれの点欠陥から入力された光・電磁波(λ1 ,λ2 ,‥λi ,λj ‥)の帯域中の2波長(λi ,λj )を出力することができる。捕穫、出力された波長以外の光・電磁波は直線導波路中を導波する。また、本実施例では2チャンネルの波長分波器としているが、欠陥数を増やすことによって、よりマルチチャネル化することも可能である。
【0034】
図7は本発明の第3の実施の形態である、合分波器の概念を示している。ある波長帯域の光・電磁波31がフォトニック結晶導波路中を伝搬し、点欠陥32~34により捕獲され、面直方向に出力される。
【0035】
この光・電磁波を点欠陥上に配置されている光・電磁波ファイバー35~37に取り込み、信号として用いる。このとき、光・電磁波ファイバーは、フォトニック結晶構造を乱さない程度の間隙をおいて、点欠陥上に配置されることが好ましい。
【0036】
あるいは図8に示すように、光電変換機能を有する半導体素子、例えばフォトダイオードアレイ45~47と集積化することもできる。これにより、点欠陥42~44から面直方向に出力した光・電磁波を極めて小さな面積内で直接電気信号に変換することができる。
【0037】
以下に、本発明の実施形態のフォトニック結晶導波路・波長分波器の作製方法について記述する。
【0038】
先ず、図9に示すように、例えばInP基板51上にバッファー層としてInP層52と、高屈折率スラブ材料として好ましくはInGaAsP層53を結晶成長させる。結晶成長は、好ましくはMOCVD法により、好ましくは590~650℃で行う。
【0039】
続いて、図10に示すように三角格子状の円孔および点欠陥のパターンを形成するため、電子線描画用のフォトレジスト54を塗布し、図11に示すように露光、現像を行ってレジストをパターニングする。フォトニック結晶の格子定数は、伝搬光・電磁波として赤外領域の波長を想定した場合にも0.5μm 以下程度と非常に小さいため、ここでは電子線による描画を行っている。
【0040】
次に、図12に示すようにレジストをマスクとしてRIE(Reactive Ion Etching)によりInGaAsPスラブに円柱孔と欠陥を形成する。RIEには、例えばH2 とCH4 の混合ガスを用いる。
【0041】
次に、図13に示すようにレジスト除去後、スラブ上下を低屈折率の空気層とするため、図14に示すようにInGaAsPスラブをメンブレン化する。これは、InP層のみを選択的にエッチングするようにウェットエッチングして行う。
【0042】
上記例では高屈折率スラブ材料としてInGaAsPを用いたが、Siも屈折率が高く、またマイクロマシーニングによる加工が可能であるので、有用な材料である。以下にSiをスラブ材料として用いた場合の作製方法について記述する。
【0043】
先ず、図15に示すようにSOI基板を用意する。SOI基板とはベースとなるSi基板61上にSiO2 層62を介して単結晶Si層63が積層されている基板である。また、これに換えてSi基板上にSiO2 層とSi層を成長させた基板を用いることも可能である。次に、図16に示すようにSOI基板61に電子線描画用のフォトレジスト64を塗布し、図17に示すように露光、現像を行ってレジストをパターニングする。
【0044】
続いて、図18に示すようにレジスト64をマスクとしてRIEによりSi層63に円柱孔と欠陥を形成する。RIEにはSF6 ガスを用いる。次いで、図19に示すようにレジストを除去した後、図20に示すようにHF水溶液によりフォトニック結晶下の酸化膜層をエッチングしてメンブレン化する。
【0045】
【実施例】
以下、本発明の具体例について、特性を示す。
まず、フォトニック結晶について記す。フォトニック結晶スラブはInGaAsPから構成し、例えば図21に示すようにフォトニック結晶の格子定数をaとして、穴の半径rは0.29a、スラブの厚さtは0.6a、とした。
【0046】
これに対し、線状欠陥および点欠陥を設けた場合について、時間領域差分法(Finite Difference Time Domain:FDTD)により解析を行い、以下に示す結果を得た。なお、時間領域差分法とはマクスウェル方程式のうち時間に依存する回転方程式を直接解く方法であり、簡単に説明すると次のようになる。
【0047】
等方的な媒質中ではマクスウェル方程式は次のように書かれる。
【0048】
【数1】
JP0003925769B2_000002t.gif
【0049】
ここで、μは透磁率、Eは誘電率、Cは導電率である。
これらの式を差分化すると次の6つの式が得られる。
【0050】
【数2】
JP0003925769B2_000003t.gif
【0051】
【数3】
JP0003925769B2_000004t.gif
【0052】
【数4】
JP0003925769B2_000005t.gif
【0053】
上の6つの式を用いてフォトニック結晶スラブ内における光・電磁波の伝播の様子が解析できる。ことき、欠陥の上の電界を観測し、フーリエ変換することにより、その周波数スペクトルが求められる。
【0054】
はじめに、1周期分円柱孔を除いた直線導波路について記す。規格化周波数fが0.27~0.28[c/a]の範囲において、光・電磁波は導波路中をロスなく伝搬できる。格子定数aは伝搬させたい光・電磁波の波長がこの条件を満たすように決められる。本実施例では伝搬光・電磁波の波長を1.55μm と設定し、0.27-0.28[c/a]の中心であるf=0.275[c/a]を1.55μm として、aを0.275×l.55μm から求め、0.42625μm とした。
【0055】
図22に、導波路に隣接して設けた点欠陥から面直方向に放射される光・電磁波の周波数と強度の関係を示す。なお、点欠陥は一つの円柱孔の半径を変えて設けており、その半径は0.56とした。図から、規格化周波数f=0.273[c/a]の光・電磁波が上下方向に放射することが確認される。また、Q値はおよそ500である。
【0056】
図23に、図2に示した形態、すなわち直線導波路に隣接して異なる大きさの点欠陥を設けた形態における、各点欠陥からの放射光・電磁波の周波数と強度を示す。この場合の点欠陥は、半径がそれぞれ0.56aおよび0.58aの円柱孔とした。それぞれ周波数がf=0.2729[c/a]およびf=0.2769[c/a]の光・電磁波が放射されることが確認される。また、欠陥のQ値はいずれもおよそ500である。
【0057】
これらの結果から、2次元フォトニック結晶に点欠陥および線状欠陥の導入により形成した導波路が点欠陥からの光・電磁波取り出し/導入機能、および面出力型の波長分波・合波器としての機能を有することが確認された。
【0058】
【発明の効果】
以上、本発明のように2次元フォトニック結晶導波路近傍に点欠陥を設けて形成した波長分波器では、2次元フォトニック結晶構造であるにも関わらず面直方向に光・電磁波を入出力することが可能であり、さらに、点欠陥から特定波長の光・電磁波を分波して入出力することができるので、超小型の波長分波器を実現することができる。これはまた、比較的容易な立体的超小型光・電磁波回路の実現を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である1つの点欠陥を有する2次元フォトニック結晶スラブ導波路を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態である2つの点欠陥を有する2次元フォトニック結晶スラブ導波路を示す概略斜視図である。
【図3】図1の2次元フォトニック結晶スラブ導波路の三角格子の様子を示した概略平面図である。
【図4】2次元フォトニック結晶スラブ導波路の正方格子の様子を示した概略平面図である。
【図5】点欠陥の他の形態を示す一部断面図である。
【図6】点欠陥の他の形態を示す一部断面図である。
【図7】本発明の面出力型波長分波器の形態を示す概略斜視図である。
【図8】本発明の面出力型波長分波器の形態を示す概略斜視図である。
【図9】本発明の2次元フォトニック結晶InGaAsPスラブ導波路の製造工程を示した断面図である。
【図10】本発明の2次元フォトニック結晶InGaAsPスラブ導波路の製造工程を示した断面図である。
【図11】本発明の2次元フォトニック結晶InGaAsPスラブ導波路の製造工程を示した断面図である。
【図12】本発明の2次元フォトニック結晶InGaAsPスラブ導波路の製造工程を示した断面図である。
【図13】本発明の2次元フォトニック結晶InGaAsPスラブ導波路の製造工程を示した断面図である。
【図14】本発明の2次元フォトニック結晶InGaAsPスラブ導波路の製造工程を示した断面図である。
【図15】本発明の2次元フォトニック結晶InGaAsPスラブ導波路の製造工程を示した断面図である。
【図16】本発明の2次元フォトニック結晶InGaAsPスラブ導波路の製造工程を示した断面図である。
【図17】本発明の2次元フォトニック結晶InGaAsPスラブ導波路の製造工程を示した断面図である。
【図18】本発明の2次元フォトニック結晶InGaAsPスラブ導波路の製造工程を示した断面図である。
【図19】本発明の2次元フォトニック結晶InGaAsPスラブ導波路の製造工程を示した断面図である。
【図20】本発明の2次元フォトニック結晶InGaAsPスラブ導波路の製造工程を示した断面図である。
【図21】本発明に係る2次元フォトニック結晶の大きさを示す図である。
【図22】図1の2次元フォトニソク結晶スラブ導波路に隣接して設けた点欠陥から面直方向に放射される光・電磁波の周波数と強度の関係を示したグラフである。
【図23】図2の2次元フォトニック結晶スラブ導波路に隣接して設けた2つの点欠陥から面直方向に放射される光・電磁波の周波数と強度の関係を示したグラフである。
【符号の説明】
11 スラブ
12 導波路
13 入射光(電磁波)
14 点欠陥
15 出力光(電磁波)
16 円柱孔
16a 三角格子
16b 正方格子
21 点欠陥
22 点欠陥
23 入射光
31 入射光
35~37 光ファイバー
41 入射光
45~47 光電変換素子
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22