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明細書 :油脂産生酵母及び油脂製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-034240 (P2016-034240A)
公開日 平成28年3月17日(2016.3.17)
発明の名称または考案の名称 油脂産生酵母及び油脂製造方法
国際特許分類 C12P   7/64        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/16        (2006.01)
C12R   1/645       (2006.01)
FI C12P 7/64
C12N 15/00 A
C12N 1/19
C12N 1/16 G
C12P 7/64
C12R 1:645
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2014-157746 (P2014-157746)
出願日 平成26年8月1日(2014.8.1)
発明者または考案者 【氏名】島 純
【氏名】谷村 あゆみ
【氏名】高島 昌子
【氏名】遠藤 力也
【氏名】大熊 盛也
【氏名】杉田 隆
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
【識別番号】505082350
【氏名又は名称】学校法人 明治薬科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】230104019、【弁護士】、【氏名又は名称】大野 聖二
【識別番号】100105991、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 玲子
【識別番号】100119183、【弁理士】、【氏名又は名称】松任谷 優子
【識別番号】100114465、【弁理士】、【氏名又は名称】北野 健
【識別番号】100156915、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 奈月
【識別番号】100149076、【弁理士】、【氏名又は名称】梅田 慎介
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B064
4B065
Fターム 4B024AA17
4B024BA80
4B024DA12
4B024GA11
4B064AD85
4B064CA06
4B064CA19
4B064CC24
4B064CD09
4B064DA16
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BA22
4B065BB15
4B065CA13
4B065CA54
要約 【課題】バイオマスから油脂を製造するために有用な新規酵母の提供。
【解決手段】ロードスポリジウム トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)IPM33-18株(NITE BP-01900)又はその遺伝子改変体を提供する。また、IPM33-18株等を、炭素源を含有する培地中で培養し、培養物中に油脂を蓄積させる工程と、前記培養物から前記油脂を回収する工程と、を含む油脂の製造方法を提供する。この製造方法では、前記培養物の液体分画から前記油脂を回収することが可能である。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
ロードスポリジウム トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)IPM33-18株(NITE BP-01900)又はその遺伝子改変体を、炭素源を含有する培地中で培養し、培養物中に油脂を蓄積させる工程と、
前記培養物から前記油脂を回収する工程と、
を含む油脂の製造方法。
【請求項2】
前記培養物の液体分画から油脂を回収する工程を含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
菌体から油脂を抽出する工程を含まないことを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
菌体から油脂を回収する工程を含む、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項5】
前記遺伝子改変が、2-デオキシグルコース耐性変異の導入である請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
ロードスポリジウム トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)IPM33-18株(NITE BP-01900)又はその遺伝子改変体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂産生酵母及び油脂製造方法に関する。より詳しくは、油脂を菌体外に蓄積する酵母株及びこれを用いた油脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料への依存から脱却するため、また温暖化ガスの排出を抑制するため、カーボンニュートラルな資源であるバイオマスの有効利用が求められている。特許文献1には、バイオマスの利用に関し、クロレラ等の藻類を用いて油脂を産生する技術が開示されている。当該文献に開示される技術は、藻類と水とを含む混合物を圧力容器内で爆砕することによって、有機溶媒を用いずに藻体から油脂を回収するものである。
【0003】
本発明に関連して、特許文献2には、炭水化物から油脂を生成するトリコスポロン(Trichosporon)属酵母が開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2012-5398号公報
【特許文献2】特開平7-236492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示されるトリコスポロン属酵母は油脂を菌体外に産生するため、菌体内からの油脂の抽出操作を行うことなく油脂を得ることができ、バイオマスからの油脂の製造に利用できる可能性がある。しかし、トリコスポロン属酵母については、糖資化性に関する詳細な検討がなされていない。また、トリコスポロン属酵母は、糸状菌様生殖を行うため生育が遅いものが多く、病原性を有する種もある。
【0006】
本発明は、バイオマスから油脂を製造するために有用な新規酵母を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題解決のため、本発明は、以下の[1]~[4]を提供する。
[1]ロードスポリジウム トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)IPM33-18株(NITE BP-01900)又はその遺伝子改変体を、炭素源を含有する培地中で培養し、培養物中に油脂を蓄積させる工程と、
前記培養物から前記油脂を回収する工程と、
を含む油脂の製造方法。
[2]前記培養物の液体分画から油脂を回収する工程を含む、[1]の製造方法。
[3]菌体から油脂を抽出する工程を含まないことを特徴とする[1]又は[2]の製造方法。
[4]菌体から油脂を回収する工程を含む、[1]又は[2]の製造方法。
[5]前記遺伝子改変が、2-デオキシグルコース耐性変異の導入である[1]~[4]のいずれかの製造方法。
[6]ロードスポリジウム トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)IPM33-18株(NITE BP-01900)又はその遺伝子改変体。
【0008】
本発明において、「培地」、「培養物」及び「培養物の液体分画」の用語は以下の意味で用いられる。
「培地」は、酵母の生育のために必要な栄養成分を含む液体を意味する。「培地」には、菌体及び菌体によって産生される油脂は含まれないものとする。
「培養物」は、培地と培地中で生育した菌体とを含む。さらに、「培養物」には、培地中で生育した菌体によって産生される油脂が含まれるものとする。
「培養物の液体分画」は、培養物のうち、菌体を除く液相を意味する。「培養物の液体分画」は、菌体によって産生された油脂のうち当該液体分画中に蓄積されたものを含むものとする。すなわち、菌体によって産生された油脂のうち菌体内に蓄積されたものは、「培養物の液体分画」には含まれない。なお、「培養物の液体分画」は、培地を含む水層と、菌体により液体分画中に産生された油脂を含む油層とから構成され得る。
【0009】
また、本発明において、「培養物中に油脂が蓄積する」とは、酵母により産生された油脂が「菌体」内及び「培養物の液体分画」中に蓄積することを意味する。このうち、「培養物の液体分画中に蓄積する」は、酵母により産生された油脂が当該液体分画中に放出されることを含み、酵母が産生した油脂を菌体外に分泌することにより放出される場合と、菌体内に油脂を産生した酵母が細胞死により崩壊して油脂が菌体外に放出される場合との両者を含むものとする。なお、「菌体外に蓄積する」との用語が、「培養物の液体分画中に蓄積する」と同義に用いられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、バイオマスから油脂を製造するために有用な新規酵母が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】IPM33-18株の菌体内及び菌体外の油脂蓄積量を測定した結果を示すグラフである(実施例1)。
【図2】IPM33-18株の培養上清中のグルコース濃度を測定した結果を示すグラフである(実施例1)。
【図3】IPM33-18株の培養上清中の窒素濃度を測定した結果を示すグラフである(実施例1)。
【図4】IPM33-18株の菌体重量(乾燥重量)を測定した結果を示すグラフである(実施例1)。
【図5】培養開始10日目においてIPM33-18株の菌体外に蓄積された油脂の脂肪酸組成を示すグラフである(実施例1)。
【図6】IPM33-18株の遺伝子改変体の菌体外の油脂蓄積量を測定した結果を示すグラフである(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。

【0013】
本発明者らは、日本の亜熱帯地域(西表島)と寒冷地域(利尻島)の土壌及び植物から酵母株を単離し、1000株以上の酵母を含むライブラリーを構築した(PLOS ONE, 2012, Vol.7, No.11, e50784)。この酵母ライブラリーを用いて、油脂を菌体外に蓄積する能力を有する株をスクリーニングした結果、ロードスポリジウム トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)IPM33-18株が当該能力を有することを新たに見い出した。この知見に基づき、本発明は、同株を用いた油脂の製造方法を提供する。

【0014】
IPM33-18株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、受託番号NITE BP-01900で国際寄託されている。

【0015】
IPM33-18株は、10~37℃の温度で生育し、幅広い種の糖の資化性を有する。このため、通常環境下で、多様なバイオマスから油脂を産生するために利用できる。さらに、IPM33-18株は、産生した油脂を菌体内に蓄積する通常の油糧酵母(油脂を蓄積する酵母)とは異なり、産生した油脂を菌体外に蓄積するため、同株によれば、菌体内から油脂を抽出する操作を行うことなく、油脂を製造することができる。

【0016】
IPM33-18株の菌学性質は以下の通りである。
[分類学上の位置]
ロードスポリジウム トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)
[科学的性質]
ゲノムDNAのD1/D2領域の塩基配列が、上記種の基準株と一致する。培地上の形態等もロードスポリジウム トルロイデスと同様の性質を示す。
[培養条件]
好気、静置培養
培地組成
グルコース 10.0g
ペプトン 5.0g
酵母抽出物 3.0g
麦芽抽出物 3.0g
寒天 20.0g
蒸留水 1.0L

【0017】
また、本発明では、IPM33-18株に替えて、あるいはこれに組み合わせて、IPM33-18株の遺伝子改変体を用いることもできる。遺伝子改変は、変異原性物質を使用したIPM33-18株の培養、ベクターを使用した遺伝子導入法など、当業者において従来公知の手法を適宜選択し得る。

【0018】
遺伝子改変としては、糖の資化性を向上させるための改変または油脂の培養物中の蓄積量を向上させるための改変が好ましい。糖の資化性を向上させるための改変としては、例えば2-デオキシグルコース耐性変異の導入が挙げられる。

【0019】
あるいは、本発明では、IPM33-18株に替えて、IPM33-18株の抽出液を用いることができる。当該抽出液には、所望する酵素を精製した一部またはすべてを用いてもよい。例えば、IPM33-18株由来のリパーゼを利用する場合は、lukaszewiczらの文献(1st Annual International Interdisciplinary Conference, AIIC 2013, 24-26 April, Azores, Portugal, page 441-449)記載の方法に従い、硫安分画より精製することができる。

【0020】
本発明に係る油脂の製造方法は、IPM33-18株又はその遺伝子改変体を、炭素源を含有する培地中で培養し、培養物中に油脂を蓄積させる工程と、前記培養物から前記油脂を回収する工程と、を含む。後述するように、培養物から油脂を回収する工程は、培養物の液体分画から油脂を回収する工程、あるいは当該液体分画からに加えて菌体からも油脂を回収する工程のいずれかであってよい。

【0021】
IPM33-18株の培養は、炭素源を含有する培養液を用いて従来公知の手法によって行うことができる。IPM33-18株は幅広い種の糖の資化性を有するため、炭素源としては、糖類、糖アルコール及び酸性糖あるいはこれらを含むバイオマスを、特に限定されることなく用いることができる。ここで、本発明において「バイオマス」とは、上記炭素源を含む再生可能材料を意味するものとする。

【0022】
糖類としては単糖類、オリゴ糖類及び多糖類が挙げられる。オリゴ糖類は二~十糖類を指称するものとし、これらはホモオリゴ糖類であってもヘテロオリゴ糖類であってもよい。また、多糖類はオリゴ糖類よりも単糖単位数の大きな糖類を指称するものとし、これらはホモ多糖類であってもヘテロ多糖類であってもよい。具体的には、単糖類としてはL-アラビノース、D-キシロース、D-リボース等のペントース、D-グルコース、D-ガラクトース、D-フラクトース、D-マンノース等のヘキソース、L-ラムノース等の6-デオキシヘキソース等が挙げられる。オリゴ糖類としてはスクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース、トレハロース、メリビオース等の二糖類、ラフィノース等の三糖類等が挙げられる。多糖類としては澱粉、セルロース、グリコーゲン、デキストラン、マンナン、キシラン等が挙げられる。上記糖類は単独で用いても適宜組み合わせて用いてもよい。上記組み合わせ中には澱粉加水分解物等も含まれる。また糖類としては糖類を主成分として含有する原料、例えば廃糖蜜、おから等も用いることができる。

【0023】
糖アルコールとしては、D-ソルビトール、D-マンニトール、ガラクチトール、マルチトール等が挙げられる。酸性糖としては、グルクロン酸、ガラクチュロン酸等が挙げられる。

【0024】
培地中の炭素源の量は、特に限定されないが、通常3~15%(w/w)程度とされる。

【0025】
培地は、炭素源の他に、窒素源、無機物その他の栄養素を含んでいてもよい。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素等の無機有機窒素化合物が使用できる。さらに窒素源としては、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーン・スティープ・リカー、カゼイン加水分解物、フィッシュミールもしくはその消化物、脱脂大豆粕もしくはその消化物などの窒素含有天然物も使用できる。無機物としては、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、硫酸マンガン、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、ホウ酸・モリブデン酸アンモニウム、ヨウ化カリウム等が使用できる。

【0026】
培養は振盪培養あるいは深部攪拌培養など好気的条件下で行う。培養温度は一般には20~35℃が好ましいが、菌が生育する温度であれば他の温度条件でもよい。培養中の培地のpHは、通常、4.0~7.2とされる。培養開始後通常2~4日間で菌体外に油脂が生成蓄積する。

【0027】
培養物からの油脂の回収は、親油性溶媒を用いて従来公知の手法によって行うことができる。具体的には、培養物に溶媒を添加して、培養物の液体分画に含まれる油脂を溶媒中に回収する。油脂の回収は、培養物から菌体を分離して液体分画を得た後に、当該液体分画に溶媒を添加し行ってもよい。培養物の液体分画は、遠心分離及び静置沈降等の操作や、セパレータ、デカンター及びフィルタレーション等の装置などによって、培養物から菌体を分離することで得られる。なお、菌体内に蓄積されている油脂についても常法に従って抽出してもよい。溶媒としては、油脂を溶解し、水との混和性がないか乏しい常温で液状の有機溶媒、例えばハロゲン化低級アルカン(クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン)、n-ヘキサン、エチルエーテル、酢酸エチル、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン)等が好適に用いられる。抽出溶媒の添加量は培養物中またはその液体分画中に生成蓄積した油脂を十分に回収できる量であればよく特に限定されない。

【0028】
本発明に係る製造方法により得られる油脂は、脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコールとからなる脂肪族エステル化合物が挙げられる。脂肪族カルボン酸は、酵母が産生するものであれば特に限定されず、例えば、炭素数8~24、好ましくは12~24の脂肪族カルボン酸であって、具体的には、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、ベヘン酸及びリグノセリン酸等を挙げることができる。また、油脂としては、リン脂質、遊離脂肪酸、糖脂質、ステロイド化合物、カロテノイド等の光合成色素等も含み得る。

【0029】
本発明に係る製造方法によれば、菌体内からの油脂の抽出操作を行うことなく培養物またはその液体分画から油脂を回収することができる。従来、菌体内の油脂を抽出するために、強固な細胞壁を破壊する操作が必要とされていた。これに対して、本発明に係る製造方法によれば、培養物またはその液体分画と親油性溶媒を混合するだけで油脂を回収できる。また、上述の通り、本発明に係るIPM33-18株は幅広い種の糖の資化性を有する。従って、本発明は、バイオマスからの油脂の製造に有用であり、例えばバイオディーゼル生産や未利用バイオマスを活用したバイオリファイナリーなどに応用することが可能である。
【実施例】
【0030】
<実施例1:IPM33-18株の油脂菌体外蓄積能>
以下の手順に従って、IPM33-18株を培養し、培養物の液体分画からの油脂回収を行った。
【実施例】
【0031】
[培養]
培養は、以下の条件で行った。
YM寒天培地上のコロニーを白金耳でかき取り、3mlのYM培地に移植し、27℃、150rpmで一晩、前培養を行った。分光光度計にて600nmの吸光度を測定し、濁度(OD600)を決定した。25mlのSS2培地(3%グルコース、0.5%硫酸アンモニウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.01%塩化ナトリウム、0.01%塩化カルシウム、0.01%酵母エキス)に、前培養液をOD600が0.2になるように植菌し、27℃、150rpmで本培養を行った。
【実施例】
【0032】
[サンプリング]
本培養開始後2、4、6、8、10日目に培養物3mlを採取し、12,000rpmで5分間遠心分離し、菌体を回収した。培養上清(培養物の液体分画)は、グルコース濃度及び窒素濃度の測定に供した。菌体を蒸留水で1回洗浄後、再度遠心分離を行って凍結乾燥した。
また、培養上清の残量に5mLのヘキサンを添加、撹拌し、上層(ヘキサン層)を分取した。エバポレーターにてヘキサンを除去し、赤色油状残渣を得た。
【実施例】
【0033】
培養開始後2、4、6、8、10日目に以下の項目について測定を行った。
【実施例】
【0034】
[グルコース濃度]
培養上清中のグルコース濃度の測定は、高速液体クロマトグラフを用いて測定した。高速液体クロマトグラフィー分析は以下の条件で行った。
高速液体クロマトグラフ:島津製作所製Prominence
カラム:Bio-Rad Laboratories社製Aminex Fermentation Monitoring Column
ガードカラム:Bio-Rad Laboratories社製Micro-Guard Cation H Refill Cartridges
検出器:島津製作所製RID 10A
カラムオーブン:島津製作所製CTO 20A
オートサンプラー:島津製作所製SIL-20A
移動相:5mM硫酸水溶液、毎分0.6mL
カラム温度:60℃
【実施例】
【0035】
濃度既知のD-グルコース(和光純薬工業)の相対保持値及びピーク面積から、グルコースを同定し、濃度を決定した。
【実施例】
【0036】
[窒素濃度]
培養上清中の窒素濃度の測定は、文献(Bioresour. Technol., 2012, Vol.114, p.443-449)記載の方法に従って行った。100μlの上清に、500μlのアルカリ性次亜塩素酸塩溶液、500μlのフェノールニトルプルシド溶液及び3mlの水を添加した。25℃で1時間放置後、570nmの吸光度を測定した。20,40,80mg/lの硫酸アンモニウム水溶液を用いて作成した検量線に基づき、窒素濃度を決定した。
【実施例】
【0037】
[油脂量]
上記サンプリングで得た乾燥菌体と赤色油状残渣を、文献(J. Lipid Res, 2010, Vol.51, No.3, p635-640)記載の方法に従ってメチル化した。乾燥菌体又は赤色油状残渣に300μlのトルエン、1.5mlのメタノールを添加した後、乾燥菌体のみ15分間超音波破砕を行った。次に、8%塩酸を含む85%メタノール300μlを添加、撹拌した後、45℃で1晩放置した。最後に、1mLのヘキサン、1mLの蒸留水を添加、撹拌した後、上層(ヘキサン層)を分取し、次のガスクロマトグラフィー分析に供した。
【実施例】
【0038】
ガスクロマトグラフィー分析により脂肪酸メチルエステルの組成を解析した。ガスクロマトグラフィー分析は以下の条件で行った。
ガスクロマトグラフ:島津製作所製GC-2010 Plus
検出器:FID
オートサンプラー:島津製作所製AOC20
カラム:Agilent Technologies社製DB-23キャピラリーカラム(30m × 0.25mm × 0.25μm)
温度プラグラム:50℃で2分保持、毎分10℃ずつ180℃まで昇温、5分間保持、毎分5℃ずつ240℃まで昇温、3分間保持
キャリアガス:ヘリウム(毎分1mL)
メイクアップガス:窒素
インジェクター温度:250℃
検出器温度:300℃
スプリット比:50:1
【実施例】
【0039】
標準物質(Methyl arachidate, Methyl behenate, Methyl decanoate, Methyl cis-13-docosenoate, Methyl dodecanoate, Methyl linoleate, Methyl linolenate, Methyl myristate, Methyl octanoate, Methyl oleate, Methyl palmitate, Methyl palmitoleate, Methyl stearate, Methyl tetracosanoate、和光純薬工業)の相対保持値から、各脂肪酸メチルエステルを同定した。脂肪酸メチルエステルミックス(18918-1AMP, Supelco)のピーク面積から、各脂肪酸メチルエステルの濃度を決定した。
【実施例】
【0040】
培養期間における菌体内及び菌体外の油脂蓄積量の変化を図1に示す。図1の縦軸において、油脂量は、1Lの培養物に含まれる菌体の内部に蓄積された油脂量(intracellular)、及び液体分画中に蓄積された油脂量(extracellular)を示す。また、培養上清中のグルコース濃度、窒素濃度及び乾燥菌体重量の変化を図2~4に示す。
【実施例】
【0041】
培養の経過に伴って培地中のグルコース及び窒素が消費されて油脂が産生され、このうち一定量の油脂が細胞外に蓄積されていることが明らかとなった。特に、菌体の増殖がプラトーに達した培養4日目以降には、油脂の菌体外蓄積が増加し、菌体内蓄積量に対する菌体外蓄積量の比が顕著に増加した。
【実施例】
【0042】
菌体外に蓄積された油脂の脂肪酸組成(培養開始10日目)を図5に示す。菌体外(
10d extra)及び菌体内(10 intra)に蓄積された油脂の組成に大きな差はなく、いずれもミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)、パルミトレイン酸(C16:1)、ステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレイン酸(C18:3)、ベヘン酸(C22:0)、リグノセリン酸(C24:0)といった主要な脂肪酸を含んでいた。
【実施例】
【0043】
<実施例2:IPM33-18株の糖資化性>
実施例1において炭素源に用いたグルコースを他の糖類に替えて、油脂の菌体外蓄積を検出することにより、IPM33-18株の糖資化性を解析した。糖類には、キシロース、アラビノース、グリセロール、セロビオース、デンプン、キシランを用いた。結果、いずれの糖類を炭素源と用いた場合にも、グルコースと同様に、脂質の菌体外蓄積が確認でき、IPM33-18株が幅広い糖の資化性を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0044】
<実施例3:IPM33-18株の遺伝子改変>
IPM33-18株に2-デオキシグルコース耐性変異を導入し、油脂の菌体外蓄積量の変化を解析した。
【実施例】
【0045】
文献(Appl. Microbiol. Biotechnol. 2011, Vol.90, No.4, p.1573-1586)記載の方法に従って、IPM33-18株に2-デオキシグルコース耐性変異を導入し、遺伝子改変体を作成した。遺伝子改変体を、合成キシロース培地(0.17% YNB, 0.5% AS, 6% Xylose)で培養した。培地以外の培養条件は、実施例1と同様とした。
【実施例】
【0046】
培養期間中における菌体外の油脂蓄積量の変化を図6に示す。2-デオキシグルコース耐性変異の導入により油脂の産生量を顕著に増加させることができた。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5