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明細書 :トランスインピーダンスアンプ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5137141号 (P5137141)
公開番号 特開2011-029872 (P2011-029872A)
登録日 平成24年11月22日(2012.11.22)
発行日 平成25年2月6日(2013.2.6)
公開日 平成23年2月10日(2011.2.10)
発明の名称または考案の名称 トランスインピーダンスアンプ
国際特許分類 H03F   3/08        (2006.01)
FI H03F 3/08
請求項の数または発明の数 3
全頁数 16
出願番号 特願2009-172791 (P2009-172791)
出願日 平成21年7月24日(2009.7.24)
審査請求日 平成23年11月8日(2011.11.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】中村 誠
【氏名】小野寺 秀俊
【氏名】土谷 亮
個別代理人の代理人 【識別番号】100078499、【弁理士】、【氏名又は名称】光石 俊郎
【識別番号】100102945、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 康幸
【識別番号】100120673、【弁理士】、【氏名又は名称】松元 洋
審査官 【審査官】安井 雅史
参考文献・文献 特開平6-96462(JP,A)
特開2006-333204(JP,A)
特開2007-36329(JP,A)
特開2009-111933(JP,A)
特開平3-6907(JP,A)
特開2000-40925(JP,A)
特開平2-84803(JP,A)
調査した分野 H03F 1/00-3/45,3/50-3/52,
3/62-3/64,3/68-3/72
特許請求の範囲 【請求項1】
光信号から変換された電流信号を受信し電圧信号を出力するトランスインピーダンスアンプにおいて、
ソース接地増幅回路と、ソースフォロワ回路と、負帰還抵抗と、誘導結合性を有する2つのインダクタとを備え、
前記インダクタは、前記ソース接地増幅回路の負荷インピーダンスを構成する第1のインダクタと、前記負帰還抵抗と直列に接続された第2のインダクタである
ことを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項2】
光信号から変換された電流信号を受信し電圧信号を出力するトランスインピーダンスアンプにおいて、
ソース接地増幅回路と、ソースフォロワ回路と、負帰還抵抗と、誘導結合性を有する2つのインダクタとを備え、
前記インダクタは、前記ソース接地増幅回路の負荷インピーダンスを構成する第1のインダクタと、前記ソース接地増幅回路の出力端子と前記ソースフォロワ回路の入力端子とを接続する第2のインダクタである
ことを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項3】
前記第1のインダクタと前記第2のインダクタをスパイラル型インダクタで構成し、該第1のインダクタと該第2のインダクタを重ね合わせることにより誘導結合させる
ことを特徴とする請求項又は請求項に記載のトランスインピーダンスアンプ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスインピーダンスアンプに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信技術の進展とともに伝送されるデータ量が飛躍的に増大しており、伝送装置の大容量化が求められている。この大容量化を実現するために、光受信器の高速化が求められている。
【0003】
図9は、一般的な光通信における光電変換を行う光受信器の構成を示した模式図である。
図9に示すように、一般的に光受信器は、トランスインピーダンスアンプ(TIA)100と、フォトディテクタ(PD)103と、入力寄生容量104とにより構成されている。そして、トランスインピーダンスアンプ100は、負帰還抵抗RF101と、第1の増幅回路102とにより構成されている。
【0004】
この従来の光受信器は、光信号Linをフォトディテクタ103で受信し、光信号Linを電流信号Iinに変換し、さらにトランスインピーダンスアンプ101はこの電流信号Iinを受信及び増幅し、後段の回路が受信可能な振幅の電圧信号Voutに変換するものである。そして、トランスインピーダンスアンプ100において受信可能なデータの高速化を実現するためには、利得周波数特性の広帯域化が必須である。
【0005】
ところで、トランスインピーダンスアンプ100の帯域を制限する要因は、第1にフォトディテクタ103等の入力寄生容量104とトランスインピーダンスアンプ100の入力インピーダンスによる入力回路の周波数特性に起因するもの、第2にトランスインピーダンスアンプ100を構成する構成回路の周波数特性に起因するもの、その他に、トランスインピーダンスアンプ100の出力回路の周波数特性に起因するものとがある。
【0006】
はじめに、第1の要因である入力回路の周波数特性に起因する帯域制限について説明する。
トランスインピーダンスアンプ100のインピーダンス変換利得Ztは、下記式(1)のように与えられる。
【数1】
JP0005137141B2_000002t.gif
ここで、RFは負帰還抵抗、Cinはフォトディテクタ103等の入力寄生容量104、Aoは増幅回路のオープンループ利得である。
【0007】
上記式(1)から、Ztが1/√2になる3dB帯域f3dBは、下記式(2)のように求められる。
【数2】
JP0005137141B2_000003t.gif

【0008】
次に、第2の要因であるトランスインピーダンスアンプ100を構成する構成回路の周波数特性に起因する帯域制限について説明する。
図10は、第1の従来例に係るトランスインピーダンスアンプの構成を示した模式図である。
図10に示すように、第1の従来例に係るトランスインピーダンスアンプ100は、負荷抵抗RL106とトランジスタM1107とソース抵抗RS110とからなるソース接地増幅回路(common‐source amp.)105と、負帰還抵抗RF101と、トランジスタM2108とトランジスタM3109とからなるソースフォロワ回路(Source follower)106とにより構成されている。なお、図10中において、Iinは電流信号、Voutは電圧信号、VDDはドレイン側電源、VSSはソース側電源、VCSはコンスタントソース電圧を示している。
【0009】
このように、第1の従来例に係るトランスインピーダンスアンプ100は、主にソース接地増幅回路105と、ソースフォロワ回路106とにより構成されるが、入力寄生容量Cin104及び帰還抵抗RF101により帯域が制限される。そして、高速動作においては、この入力寄生容量Cin104による帯域制限を無視できなくなるため、周波数特性を改善することが困難であった。ここで、図10に示す第1の従来例に係るトランスインピーダンスアンプ100における周波数特性の例を図11に示す。
【0010】
そこで、従来、トランスインピーダンスアンプ100の帯域を改善する手段としてインダクタを挿入するインダクティブピーキングが用いられている。
図12は、第2の従来例に係るインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプの構成を示した模式図である。
図12に示すように、第2の従来例に係るインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプは、負荷抵抗RL106に直列にインダクタLL120を接続することにより構成されている。なお、第2の従来例に係るインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプは上述した構成以外は第1の従来例に係るトランスインピーダンスアンプと同様の構成である。
【0011】
また、図13は、第3の従来例に係るインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプの構成を示した模式図である。
図13に示すように、第3の従来例に係るインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプは、負荷抵抗RL106に直列に第1のインダクタLL120を接続し、さらにソース接地増幅回路の出力端子とソースフォロワ回路の入力端子との間に第2のインダクタLS130を接続することにより構成されている。なお、第3の従来例に係るインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプは上述した構成以外は第1の従来例に係るトランスインピーダンスアンプと同様の構成である。
【0012】
図12,13に示すように、負荷抵抗RL106に直列にインダクタLL120を接続することにより、高周波での負荷インピーダンスを補うとともに、寄生容量による帯域劣化を補い、図10に示した第1の従来例に係る従来のトランスインピーダンスアンプ100に対して、2倍程度の帯域改善が可能である。
【0013】
図14は、第1の従来例に係るトランスインピーダンスアンプと第2の従来例に係るインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプにおける周波数特性の例を示した図である。なお、図14中において、破線は第1の従来例に係るトランスインピーダンスアンプの周波数特性の例を示し、実線は第2の従来例に係るインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプの周波数特性の例を示す。
【0014】
図14より、第2の従来例に係るインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプは、インダクティブピーキングを用いることにより、第1の従来例に係るトランスインピーダンスアンプに比べ、2倍程度の広帯域化が可能であることが分かる。
【0015】
しかしながら、インダクティブピーキングに用いられるインダクタの大きさは、トランジスタの大きさに比べ面積が極めて大きく、一つのインダクタの面積がトランジスタの面積のおよそ50倍以上の面積を占めてしまうという問題がある。特に、インダクタを2個以上用いるようなインダクティブピーキングにおいて、この問題は顕著である。ここで、従来の2つのインダクタの物理的なレイアウト例を示した模式図を図15に示す。なお、図15においては、2つのスパイラル型インダクタ140がトランスインピーダンスアンプのコア141と接続されている。
【0016】
また、インダクタと比べてトランジスタや抵抗の大きさが極端に異なることから、トランジスタや抵抗で構成される回路部分とインダクタとをつなぐ配線が長くなり、配線に起因する寄生容量や寄生抵抗や寄生インダクタによる悪影響も問題となる。
【0017】
すなわち、トランジスタや抵抗からなる第1の従来例に係るトランスインピーダンスアンプや、第2,3の従来例に係るインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプでは、更なる広帯域化が困難であるという問題があった。
【0018】
さらに、インダクタの素子サイズはトランジスタや抵抗に比べ、極めて大きいため、特に、従来の複数のインダクタによるインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプでは、インダクタの素子サイズが大きくなってしまいコスト高になるという問題があった。
【先行技術文献】
【0019】

【特許文献1】特開2004-274463号公報
【0020】

【非特許文献1】Chao‐Yung Wang、外2名、“An 18‐mW Two‐Stage CMOS Transimpedance Amplifier for 10 Gb/s Optical Application”、IEEE Asian Solid‐State Circuits Conference、2007年11月12-14日、p.412-415
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように、第1の従来例に係るトランスインピーダンスアンプや第2,3の従来例に係るインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプでは、広帯域化が困難であるという問題があった。さらに、従来の複数のインダクタによるインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプでは、チップサイズが大きくなってしまうという問題があった。
【0022】
以上のことから、本発明は、利得周波数特性が広帯域で高速動作が可能であり、チップサイズの小さなトランスインピーダンスアンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の課題を解決する第の発明に係るトランスインピーダンスアンプは、
光信号から変換された電流信号を受信し電圧信号を出力するトランスインピーダンスアンプにおいて、
ソース接地増幅回路と、ソースフォロワ回路と、負帰還抵抗と、誘導結合性を有する2つのインダクタとを備え、
前記インダクタは、前記ソース接地増幅回路の負荷インピーダンスを構成する第1のインダクタと、前記負帰還抵抗と直列に接続された第2のインダクタであることを特徴とする。
【0025】
上記の課題を解決する第の発明に係るトランスインピーダンスアンプは、
光信号から変換された電流信号を受信し電圧信号を出力するトランスインピーダンスアンプにおいて、
ソース接地増幅回路と、ソースフォロワ回路と、負帰還抵抗と、誘導結合性を有する2つのインダクタとを備え、
前記インダクタは、前記ソース接地増幅回路の負荷インピーダンスを構成する第1のインダクタと、前記ソース接地増幅回路の出力端子と前記ソースフォロワ回路の入力端子とを接続する第2のインダクタであることを特徴とする。
【0026】
上記の課題を解決する第の発明に係るトランスインピーダンスアンプは、第の発明又は第の発明に係るトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記第1のインダクタと前記第2のインダクタをスパイラル型インダクタで構成し、該第1のインダクタと該第2のインダクタを重ね合わせることにより誘導結合させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、利得周波数特性が広帯域で高速動作が可能であり、チップサイズの小さなトランスインピーダンスアンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施例に係るトランスインピーダンスアンプの構成を示した模式図である。
【図2】2つのインダクタの物理的なレイアウト例を示した模式図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係るトランスインピーダンスアンプの構成を示した模式図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係るトランスインピーダンスアンプにおけるインピーダンス変換利得の周波数特性を示した図である。
【図5】本発明の第2の実施例に係るトランスインピーダンスアンプの他の構成を示した模式図である。
【図6】本発明の第3の実施例に係るトランスインピーダンスアンプの構成を示した模式図である。
【図7】本発明の第3の実施例に係るトランスインピーダンスアンプの他の構成を示した模式図である。
【図8】MOSFETのゲート端子にインダクタを接続した回路を示した模式図である。
【図9】一般的な光通信における光電変換を行う光受信器の構成を示した模式図である。
【図10】第1の従来例に係るトランスインピーダンスアンプの構成を示した模式図である。
【図11】第1の従来例に係るトランスインピーダンスアンプにおける周波数特性の例を示した図である。
【図12】第2の従来例に係るインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプの構成を示した模式図である。
【図13】第3の従来例に係るインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプの構成を示した模式図である。
【図14】第1の従来例に係るトランスインピーダンスアンプと第2,3の従来例に係るインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプにおける周波数特性の例を示した図である。
【図15】従来の2つのインダクタの物理的なレイアウト例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るトランスインピーダンスアンプを実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。

【0030】
はじめに、本発明に係るトランスインピーダンスアンプの動作原理について説明する。
本発明に係るトランスインピーダンスアンプは、光信号から変換された電流信号を受信し電圧信号を出力するトランスインピーダンスアンプにおいて、ソース接地回路と、ソースフォロワ回路と、負帰還抵抗からトランスインピーダンスアンプを構成し、誘導結合性を有する2つのインダクタ、又は2つ以上のインダクタを備えることにより、利得周波数特性の広帯域化を可能とした。

【0031】
また、上記トランスインピーダンスアンプにおいて、ソース接地回路の負荷インピーダンスを構成する第1のインダクタと、負帰還抵抗と直列に接続された第2のインダクタを備え、第1のインダクタと第2のインダクタが誘導結合性を備える構成とした。

【0032】
さらに、上記ソース接地回路の負荷インピーダンスを構成する第1のインダクタと、ソース接地回路の出力端子とソースフォロワ回路の入力端子を接続する第2のインダクタを備え、第1のインダクタと第2のインダクタが誘導結合性を備える構成とした。

【0033】
したがって、本発明に係るトランスインピーダンスアンプによれば、上記誘導結合性を有する2つのインダクタにより、チップサイズの増加を最小限に抑え利得周波数特性を広帯域化することができる。

【0034】
上述したように、光受信器は、フォトディテクタに入力した光信号をフォトディテクタにおいて電流信号に変換したのち、トランスインピーダンスアンプは電圧信号に対してインピーダンス変換を行う。トランスインピーダンスアンプの帯域は上述したように、主に入力回路の周波数特性により制限され、下記式(3)のように表すことができる。
【数3】
JP0005137141B2_000004t.gif
ここで、RFは負帰還抵抗、Cinはフォトディテクタ等の入力寄生容量、Aoは増幅回路のオープンループ利得である。
上記式(3)より、トランスインピーダンスアンプのオープンループ利得Aoを大きくすると、3dBダウンの周波数帯域f3dBも大きくすることができることが分かる。

【0035】
また、オープンループ利得Aoは、トランジスタのトランスコンダクタンスgmと、負荷インピーダンスZLにより簡易的に、下記式(4)のように表すことができる。
【数4】
JP0005137141B2_000005t.gif

【0036】
ここで、負荷を抵抗RLとインダクタLLとにより構成するインダクティブピーキングの場合、下記式(5)のように表すことができる。
【数5】
JP0005137141B2_000006t.gif
トランジスタのトランスコンダクタンスgmは周波数特性を持つため、高周波で劣化し帯域に制限がかかるが、上記式(5)のようにインダクタLLを追加することにより、インダクティブピーキングでは高周波でこの劣化を補うことが可能である。

【0037】
さらに、複数のインダクタを用いたインダクティブピーキングにおいて、各々のインダクタを誘導結合することにより、誘導電流が流れそれぞれのインダクタの動作電流を補助する役割を果たし、それぞれのインダクタが独立している従来のインダクティブピーキングよりも高い帯域改善の効果を得ることができる。

【0038】
次に、誘導結合性を有するインダクタを用いたトランスインピーダンスアンプにおける広帯域化について説明する。
インダクタは巻線から形成され、巻線に流れる電流が変化すると、巻線を貫く磁束が変化し、その磁束によって磁束の変化を打ち消す方向に誘導起電力が発生する。Lを自己インダクタンス、Iをインダクタに流れる電流とすると、誘導起電力eの大きさは、下記式(6)のようになる。
【数6】
JP0005137141B2_000007t.gif
磁気的に結合された2つの巻線の一方の電流I1を変化させると、もう一方の巻線に誘導起電力が生じる。その大きさe2は、下記式(7)のようになる。
【数7】
JP0005137141B2_000008t.gif

【0039】
ここで、相互インダクタンスMは、下記式(8)で表される。
【数8】
JP0005137141B2_000009t.gif
ここで、kは結合係数、L1は第1のインダクタの自己インダクタンス、L2は第2のインダクタの自己インダクタンスである。そして、上述した誘導結合性を有するインダクタを用いることにより、以下に示すようにトランスインピーダンスアンプの周波数特性を改善できる。

【0040】
第1に、トランスインピーダンスアンプにおいて、ソース接地回路の負荷に誘導結合性を有するインダクタを用いることにより、以下に示すように開ループ利得Aoを高周波で改善することができる。

【0041】
誘導結合性を有するインダクタがない従来のトランスインピーダンスアンプでは、開ループ利得Aoは上述したように、下記式(9)のように与えられる。
【数9】
JP0005137141B2_000010t.gif

【0042】
一方、相互インダクタンスMを用いた本発明に係るトランスインピーダンスアンプでは、開ループ利得Aoは、下記式(10)のようになる。
【数10】
JP0005137141B2_000011t.gif
上記式(10)に示すように、インダクタLLにkMが加算されるため高周波で開ループ利得Aoは大きくなる。先に示したようにトランスインピーダンスアンプにおいて、開ループ利得Aoが大きいと入力インピーダンスが低減さるため、トランスインピーダンスアンプの帯域向上効果が得られる。

【0043】
第2に、負帰還抵抗RFに誘導結合性を有するインダクタを用いることにより、以下に示すようにトランスインピーダンスアンプの広帯域化が可能である。
インダクタを負帰還ループに接続したトランスインピーダンスアンプのインピーダンス変換利得Ztは、下記式(11)のように表される。
【数11】
JP0005137141B2_000012t.gif
ここで、αは周波数帯域を決める極である。一方、相互インダクタンスMを用いた本発明に係るトランスインピーダンスアンプにおいては、Ztは、下記式(12)のように表される。
【数12】
JP0005137141B2_000013t.gif
すなわち、負帰還ループ部のインダクタLfにkMが加算されるため、利得が低下する高周波で負帰還抵抗RFが大きくなり、トランスインピーダンスアンプの帯域向上効果が得られる。

【0044】
第3に、ソース接地回路とソースフォロワ回路を接続する第3のインダクタに誘導結合性を有するインダクタを用いることにより、以下に示すようにトランスインピーダンスの広帯域化が可能である。

【0045】
大入力信号を受信するトランスインピーダンスアンプでは、大きな信号電流を流すためにソースフォロワ回路においてサイズの大きなトランジスタを用いるが、サイズが大きいと寄生容量による帯域劣化の影響を受ける。ソース接地回路の出力端子とソースフォロワ回路の入力端子間にスプリット・インダクタを接続することにより、寄生容量による帯域劣化を改善することができる。

【0046】
図8は、MOSFETのゲート端子にインダクタを接続した回路を示した模式図である。なお、図8(a)はトランジスタのゲート-ソース間の寄生容量Cgsとゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdを示した図、図8(b)はトランジスタの等価入力抵抗Rin、上記寄生容量からなる等価入力容量Cinとし、トランジスタのゲート端子にインダクタLSが接続された等価回路を示した図である。

【0047】
ソースフォロワ回路の入力インピーダンスZinは簡易的に、下記式(13)のように表される。
【数13】
JP0005137141B2_000014t.gif
すなわち、トランジスタの寄生容量により高周波では、ソースフォロワ回路の入力インピーダンスが小さくなってしまい信号伝達帯域が劣化する。

【0048】
一方、上記式(13)において、入力にインダクタを直列接続することにより、下記式(14)のように表すことができる。
【数14】
JP0005137141B2_000015t.gif
すなわち、ソースフォロワ回路の入力インピーダンスZinの高周波での劣化を改善することができ、トランスインピーダンスアンプの帯域向上効果が得られる。

【0049】
さらに、誘導結合性を有するインダクタは従来のインダクタ1個分の面積内に複数のインダクタを構成することができるため、面積も従来のトランスインピーダンスアンプの半分以下にすることができる。

【0050】
したがって、本発明に係るトランスインピーダンスアンプによれば、従来のトランスインピーダンスアンプではトランジスタの性能により制限され改善することができなかった利得周波数特性を大きく改善することができる。

【0051】
さらに、複数のインダクタを用いた場合であってもチップ面積をほぼ同等とすることができる。これにより、低コストで高速動作可能なトランスインピーダンスアンプを提供することができる。
【実施例1】
【0052】
以下、本発明に係るトランスインピーダンスアンプの第1の実施例について説明する。
図1は、本発明の第1の実施例に係るトランスインピーダンスアンプの構成を示した模式図である。なお、図1(a)は本発明の第1の実施例に係るトランスインピーダンスアンプの回路構成図、図1(b)は本発明の第1の実施例に係るトランスインピーダンスアンプにおけるインピーダンス素子の構成例を示した図、図1(c)は本発明の第1の実施例に係るトランスインピーダンスアンプにおける複数のインダクタが誘導結合した構成例を示した図である。
【実施例1】
【0053】
図1(a)に示すように、本実施例に係るトランスインピーダンスアンプは、負荷となる第1のインピーダンスZL10と第1のトランジスタM113とソース抵抗RS16とからなるソース接地増幅回路1と、第2のトランジスタM214と第3のトランジスタM315とからなるソースフォロワ回路2と、ソース接地増幅回路1の入力端子とソースフォロワ回路2の出力端子をつなぐ負帰還ループに負帰還の第2のインピーダンスZF11と、ソース接地増幅回路の出力端子とソースフォロワ回路2の入力端子とを接続する第3のインピーダンスZS12とにより構成されている。なお、図1(a)中において、Iinは電流信号、Voutは電圧信号、VDDはドレイン側電源、VSSはソース側電源、VCSはコンスタントソース電圧を示している。
【実施例1】
【0054】
また、図1(b)に示すように、第1のインピーダンスZL10、第2のインピーダンスZF11及び第3のインピーダンスZS12はそれぞれ抵抗R17とインダクタL18とにより構成されている。
【実施例1】
【0055】
さらに、これら第1のインピーダンスZL10、第2のインピーダンスZF11及び第3のインピーダンスZS12を構成するインダクタLのうち、少なくとも2つ以上のインダクタLが誘導結合されている。なお、図1(c)においては、2つのインダクタLを誘導結合した場合の構成例を示している。
【実施例1】
【0056】
図2は、2つのインダクタの物理的なレイアウト例を示した模式図である。なお、図2(a)は従来の誘導結合のない2つのインダクタの物理的なレイアウト例を示した図、図2(b)は本発明に係る誘導結合のある2つのインダクタの物理的なレイアウト例を示した図である。また、図2(b)中においては判別がしやすいように、第1のインダクタを実線で、第2のインダクタを破線で示している。
【実施例1】
【0057】
図2(b)に示すように、2つのスパイラル型インダクタを巻き込みレイアウトすることにより、一方のインダクタに流れる電流が変化することにより磁束が変化し、もう一方のインダクタに誘導起電力が生じる。この誘導起電力による相互インダクタンスMにより、トランスインピーダンスアンプの高周波特性を改善することができる。
【実施例1】
【0058】
また、トランスインピーダンスアンプに用いられているトランジスタのサイズは数ミクロン四方程度であるのに対し、インダクタは数百ミクロン四方程度と大きいため、2つのスパイラル型インダクタを結合させる本発明によれば、従来の2つのインダクタを用いる構成に対しほぼ面積を半分にすることができる。
【実施例1】
【0059】
なお、上述したスパイラル型インダクタは伝送線路を折り曲げたメアンダ型インダクタであってもよく、この場合はメアンダ型インダクタを近接することにより同様に誘導結合性を有するインダクタを得ることができる。
【実施例1】
【0060】
また、上述のトランスインピーダンスアンプを構成するトランジスタとして、電界効果トランジスタ(FET)を用いた例を示したが、バイポーラトランジスタを用いても同じ効果を得ることができる。
【実施例2】
【0061】
以下、本発明に係るトランスインピーダンスアンプの第2の実施例について説明する。
図3は、本発明の第2の実施例に係るトランスインピーダンスアンプの構成を示した模式図である。
【実施例2】
【0062】
図3に示すように、本実施例に係るトランスインピーダンスアンプは、負荷抵抗RL21と第1のトランジスタM113とソース抵抗RS16とからなるソース接地増幅回路1と、第2のトランジスタM214と第3のトランジスタM315とからなるソースフォロワ回路2からなるトランスインピーダンスアンプにおいて、ソース接地増幅回路1の負荷抵抗RL21と直列に第1のインダクタLL20が接続され、ソース接地増幅回路1の入力端子とソースフォロワ回路2の出力端子をつなぐ負帰還ループに負帰還抵抗RF23と直列に第2のインダクタLF22が接続され、さらに、第1のインダクタLL20と第2のインダクタLF22が相互インダクタンスMにより誘導結合されることにより構成されている。なお、図3中において、Iinは電流信号、Voutは電圧信号、VDDはドレイン側電源、VSSはソース側電源、VCSはコンスタントソース電圧を示している。
【実施例2】
【0063】
ここで、本実施例に係るトランスインピーダンスアンプの動作例について説明する。
図4は、本発明の第2の実施例に係るトランスインピーダンスアンプにおけるインピーダンス変換利得の周波数特性を示した図である。なお、図4中において、実線は本実施例に係るトランスインピーダンスアンプのシミュレーション結果を示し、破線は図10に示す第1の従来例に係るトランスインピーダンスアンプのシミュレーション結果を示し、一点鎖線は図12に示す第2の従来例に係るインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプのシミュレーション結果を示す。また、解析データは、Synopsys社の回路シミュレータ“HSPICE”によるシミュレーションにより取得したものである。
【実施例2】
【0064】
図4より、本実施例に係るトランスインピーダンスアンプによれば、第1の従来例に係るトランスインピーダンスアンプに比べおよそ2倍、第2の従来例に係るインダクティブピーキングを用いたトランスインピーダンスアンプに比べおよそ1.5倍の広帯域な特性が得られていることが分かる。
【実施例2】
【0065】
上述したように、本実施例に係るトランスインピーダンスアンプにおいては、トランスインピーダンスアンプ初段の負荷に負荷抵抗RL21と第1のインダクタLL20を直列に接続し、負帰還ループに負帰還抵抗RF23と直列に第2のインダクタLF22を接続し、この第1のインダクタLL20と第2のインダクタLF22を誘導結合している。
【実施例2】
【0066】
本実施例に係るトランスインピーダンスアンプの構成により、トランスインピーダンスアンプに信号電流が入力されると、第2のインダクタLF22に電流が流れることにより、これに応じて誘導結合した第1のインダクタLL20に誘導起電力が発生し高周波で等価的に高インピーダンスとなる。
【実施例2】
【0067】
一方、第1のインダクタLL20に電流が流れることにより、これに応じて誘導結導した第2のインダクタLF22に誘導起電力が発生し高周波で等価的に負帰還抵抗RF23が大きくなる。したがって、本実施例に係るトランスインピーダンスアンプの構成によれば、これらの相乗効果で周波数特性を改善することができる。
【実施例2】
【0068】
特に、本実施例に係るトランスインピーダンスアンプの構成においては、トランスインピーダンスアンプにおいて特有の利得帯域特性を決める要因である負荷インピーダンス部と負帰還インピーダンス部それぞれにインダクタを用い、これら2つのインダクタに誘導結合性を持たせたことを特徴としており、トランスインピーダンスアンプにおいて初めて有効な構成である。
【実施例2】
【0069】
なお、図3に示した本実施例における負荷抵抗RL21と第1のインダクタLL20のドレイン側電源VDDと第1のトランジスタM113のドレイン端子との間においての接続順は、図5に示すように逆でもかまわないし、負帰還抵抗RF23と第2のインダクタLF22の接続順も逆であってもかまわない。
【実施例3】
【0070】
以下、本発明に係るトランスインピーダンスアンプの第3の実施例について説明する。
図6は、本発明の第3の実施例に係るトランスインピーダンスアンプの構成を示した模式図である。
【実施例3】
【0071】
図6に示すように、本実施例に係るトランスインピーダンスアンプは、負荷抵抗RL21と第1のトランジスタM113とソース抵抗RS16とからなるソース接地増幅回路1と、第2のトランジスタM214と第3のトランジスタM315とからなるソースフォロワ回路2からなるトランスインピーダンスアンプにおいて、ソース接地増幅回路1の負荷抵抗RL21に直列に第1インダクタLL20が接続され、ソース接地増幅回路1の入力端子とソースフォロワ回路2の出力端子をつなぐ負帰還ループに負帰還抵抗RF23が接続され、ソース接地増幅回路1の出力端子とソースフォロワ回路2の入力端子間に第3のインダクタLS30が接続され、さらに、第1インダクタLL20と第3のインダクタLS30が誘導結合されることにより構成されている。なお、図6中において、VDDはドレイン側電源、VSSはソース側電源、VCSはコンスタントソース電圧を示している。
【実施例3】
【0072】
上述したように、本実施例に係るトランスインピーダンスアンプにおいては、トランスインピーダンスアンプ初段のソース接地増幅回路1の負荷インピーダンスに負荷抵抗RL21と第1インダクタLL20を直列に接続し、ソース接地増幅回路1の出力端子と後段のソースフォロワ回路2の入力端子を接続する第3のインダクタLS30を誘導結合している。
【実施例3】
【0073】
本実施例に係るトランスインピーダンスアンプの構成により、トランスインピーダンスアンプ回路に信号電流が入力されると、第3のインダクタLS30に電流が流れ、これに応じて誘導結合した第1インダクタLL20に誘導起電力が発生し高周波で等価的に高インピーダンスとなる。
【実施例3】
【0074】
一方、第1インダクタLL20に電流が流れることにより、これに応じて誘導結導した第3のインダクタLS30に誘導起電力が発生し誘導結合インダクタにより高周波でトランジスタの寄生容量による帯域劣化を補償することができる。したがって、本実施例に係るトランスインピーダンスアンプの構成によれば、これらの相乗効果で周波数特性を改善することができる。
【実施例3】
【0075】
なお、図6に示した本実施例における負荷抵抗RL21と第1インダクタLL20のドレイン側電源VDDと第1のトランジスタM113のドレイン端子との間においての接続順は、図7に示すように逆でもかまわない。
【実施例3】
【0076】
以上説明したように、本発明に係るトランスインピーダンスアンプによれば、光信号を光電変換により変換して光電電流を得て、この光電電流を電圧信号に変換増幅するトランスインピーダンスアンプにおいて、利得周波数特性の広帯域化が可能となる。すなわち、高速動作可能なトランスインピーダンスを提供することができる。
【実施例3】
【0077】
特に、相互インダクタンスMの効果により、それぞれのインダクタの値を大きくしなくても同等の効果が得られるため、チップサイズを大きくすることなく帯域を改善することができるという効果をえることができる。さらに、本発明によれば、複数のチップインダクタを用いる従来の広帯域化技術を使った場合、チップサイズが大きくなるのに対しチップサイズをほぼ同じとできるため、コストを抑え高速動作化に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、例えば、光伝送方式の光電変換を行う光受信回路において、信号等化を行うトランスインピーダンスアンプに利用することができ、特に、高速動作可能な広帯域な利得周波数特性をもつトランスインピーダンスアンプに利用することができる。
【0079】
具体的には、光基幹伝送システム、光アクセスシステム、光インターコネクション等の各種光伝送システムに用いられる光受信用IC、及びこれを用いた高速光受信モジュール、光送受信トランシーバなどに光受信回路等に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 ソース接地増幅回路
2 ソースフォロワ回路
10 第1のインピーダンスZL
11 第2のインピーダンスZF
12 第3のインピーダンスZS
13 第1のトランジスタM1
14 第2のトランジスタM2
15 第3のトランジスタM3
16 ソース抵抗RS
17 抵抗R
18 インダクタL
20 第1のインダクタLL
21 負荷抵抗RL
22 第2のインダクタLF
23 負帰還抵抗RF
30 第3のインダクタLS
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14