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明細書 :セルロースミクロフィブリルを用いた高強度材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3641690号 (P3641690)
公開番号 特開2003-201695 (P2003-201695A)
登録日 平成17年2月4日(2005.2.4)
発行日 平成17年4月27日(2005.4.27)
公開日 平成15年7月18日(2003.7.18)
発明の名称または考案の名称 セルロースミクロフィブリルを用いた高強度材料
国際特許分類 D21H 15/02      
D21H 17/28      
D21H 17/33      
D21H 25/04      
FI D21H 15/02
D21H 17/28
D21H 17/33
D21H 25/04
請求項の数または発明の数 7
全頁数 8
出願番号 特願2001-394707 (P2001-394707)
出願日 平成13年12月26日(2001.12.26)
審査請求日 平成14年8月6日(2002.8.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000046
【氏名又は名称】関西ティー・エル・オー株式会社
発明者または考案者 【氏名】矢野 浩之
【氏名】中原 進
個別代理人の代理人 【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
【識別番号】100076510、【弁理士】、【氏名又は名称】掛樋 悠路
【識別番号】100086427、【弁理士】、【氏名又は名称】小原 健志
【識別番号】100090066、【弁理士】、【氏名又は名称】中川 博司
【識別番号】100094101、【弁理士】、【氏名又は名称】舘 泰光
【識別番号】100099988、【弁理士】、【氏名又は名称】斎藤 健治
【識別番号】100105821、【弁理士】、【氏名又は名称】藤井 淳
【識別番号】100099911、【弁理士】、【氏名又は名称】関 仁士
【識別番号】100108084、【弁理士】、【氏名又は名称】中野 睦子
審査官 【審査官】山崎 利直
参考文献・文献 特開平08-188980(JP,A)
特開平08-197836(JP,A)
特開昭61-113601(JP,A)
特開平08-049188(JP,A)
特開平09-208714(JP,A)
特開平10-248872(JP,A)
特開平06-311595(JP,A)
特開平05-247879(JP,A)
特開平06-125593(JP,A)
調査した分野 D21H11/00-27/42
特許請求の範囲 【請求項1】
固形分の65~100重量%のセルロースミクロフィブリル及び0~35重量%の添加剤からなり、室温及び相対湿度60%の条件における三点支持中央集中荷重方式による測定法における曲げ強度が200MPa400MPaである高強度材料。
【請求項2】
空隙率が20%以下である請求項1に記載の材料。
【請求項3】
密度が1.2g/cm3以上である請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
固形分の65~99重量%のセルロースミクロフィブリル及び1~35重量%の添加剤からなる請求項1~のいずれかに記載の材料。
【請求項5】
添加剤が熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂である請求項1~のいずれかに記載の材料。
【請求項6】
添加剤がデンプンである請求項1~のいずれかに記載の材料。
【請求項7】
含水率が5%以下である請求項1~のいずれかに記載の材料。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースミクロフィブリルを用いた高強度材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
古くから、熱硬化性樹脂に木粉或いは木材パルプ等を添加して成型物を製造することは行われてきたが、現在、プラスチック等の廃棄物問題が深刻化しており、崩壊性プラスチックや生分解性プラスチックが開発されている。例えば、特開平2-127486号公報には、ミクロフィブリル化した繊維及びキトサンからなる生分解性の耐水性被膜が開示されている。
【0003】
また、様々な用途に用いるためには強度も要求され、例えば、特開平8-193168号公報には生分解性ポリマー組成物が、特表平9-509694号公報にはミクロフィブリルセルロース強化ポリマーが開示されている。
【0004】
しかしながら、未だ十分な強度を有する材料が得られていないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、セルロースミクロフィブリルを用いて、高い強度を有する材料を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
項1. 固形分の65~100重量%のセルロースミクロフィブリル及び0~35重量%の添加剤からなる高強度材料。
【0007】
項2. 空隙率が20%以下である項1に記載の材料。
【0008】
項3. 密度が1.2 g/cm3以上である項1に記載の材料。
【0009】
項4. 強度が200 MPa以上である項1に記載の材料。
【0010】
項5. 固形分の65~99重量%のセルロースミクロフィブリル及び1~35重量%の添加剤からなる項1~4のいずれかに記載の材料。
【0011】
項6. 添加剤が熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂である項1~5のいずれかに記載の材料。
【0012】
項7. 添加剤がデンプンである項1~5のいずれかに記載の材料。
【0013】
項8. 含水率が5%以下である項1~6のいずれかに記載の材料。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明におけるセルロースミクロフィブリル(以下、ミクロフィブリルという。)とは、ミクロフィブリル状のセルロース繊維をいう。
【0016】
本発明において用いられるミクロフィブリルの種類は限定されず、酢酸菌等の微生物、ホヤ等の動物、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、古紙等の植物由来のものが挙げられる。コストの面、入手し易い等の理由から、植物由来のミクロフィブリルを用いるのが好ましい。また、地球環境の面から新聞、雑誌、ダンボール等の古紙、植物繊維からなる古着等の布を再利用することも好ましい。
【0017】
本発明におけるミクロフィブリルは、公知の方法で得ることができ、何ら限定されるものではない。例えば、パルプを微細繊維化することにより得ることができる。
【0018】
ここでいうパルプは、クラフトパルプ、サルファイトパルプなど木材から化学処理して得られる化学パルプ、また、リファイナー、グラインダーなどの機械的処理によってパルプ化されたセミケミカルパルプ、古紙から再生された再生パルプなどが例示できる。これらの中で、コスト面および古紙のリサイクル促進の面からも再生パルプを用いることが望ましい。
【0019】
再生パルプは、新聞、雑誌、ダンボール等の古紙から、一般的な再生紙製造工程を経て得られる。古紙は、まず、パルパーなどによる離解工程、ついで、スクリーン、クリーナーなどによる粗選、精選工程、さらに、フローテーション法などによる脱墨工程を経た後、脱水される。これらの工程において利用される方法は、古紙の種類や品質に応じて、適宜選択使用される。
【0020】
本発明におけるミクロフィブリルは、例えば、上記したパルプを微細繊維化することで得ることができる。
【0021】
パルプを微細繊維化する方法としては、特に限定されず公知の方法が使用でき、パルプから媒体攪拌ミル処理、振動ミル処理、高圧均質化装置での処理、石臼式粉砕処理などが挙げられる。
【0022】
古紙由来の再生パルプから得られるミクロフィブリルを使用する場合には、不純物が混入していてもよい。高い強度を得るためには、混入している不純物が20%以下であることが好ましい。
【0023】
本発明の強化複合材料は、65~100%のミクロフィブリルからなっており、好ましくは65~99%である。また、100%の場合を含むのでミクロフィブリルのみからなっていてもよい。
【0024】
残りの0~35%、好ましくは1~35%に添加剤を加えることもできる。添加剤としては、強度を上昇させる等のためにバインダーを添加することもできるし、また、必要に応じて耐熱性を上昇させるためにセラミックス等の無機化合物、磁性、導電性等を与えるために金属粉末等も加えることもできる。
【0025】
バインダーとしては、公知の有機高分子を用いることができ、例えば、水溶性高分子として、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の合成高分子、デンプン類、アルギン酸等の多糖類、ゼラチン、ニカワ、カゼインをはじめとするタンパク質等の天然高分子、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0026】
デンプンとしては、特に限定されるものではなく、天然のデンプンだけでなく、α化デンプン、可溶性デンプン、デキストリン等のデンプン類、更には、あらゆるデンプン誘導体も用いることができる。加工し易いなどの理由から、可溶性デンプン等が好ましい。
【0027】
熱可塑性樹脂としては、限定されるものではないが、例えば、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート、繊維素プラスチック、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ-3-ヒドロキシブチレート、ポリ-4-ヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレート、ポリエチレンアジペート、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン等のポリエステル、ポリエチレングリコール等のポリエーテル、ポリグルタミン酸、ポリリジン等のポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等を用いることができる。
【0028】
地球環境を考慮して、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等の生分解性の樹脂が好ましい。また、上記樹脂は1種、又は2以上で用いることもできる。
【0029】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ケイ素樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0030】
熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又はデンプンは、それぞれ個々に用いることができるが、熱硬化性樹脂及びデンプン、熱可塑性樹脂及びデンプンというように組み合わせて用いることもできる。
【0031】
また、必要に応じて、顔料、染料、流動調整剤、レべリング剤、消泡剤、導電剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、分散剤、消臭剤等を添加することができる。
【0032】
得られる材料の空隙率は、20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下が例示される。材料の空隙率が20%以下ならば、ミクロフィブリル間の相互作用が低下して強度に問題が生じるということが起こらないからである。
【0033】
含水率は、高い強度を保持できるので、例えば、5%以下が好ましい。
【0034】
また、得られる材料の密度は、添加剤の密度により変化するが、1.2 g/cm3以上、好ましくは1.25 g/cm3以上、更に好ましくは1.35 g/cm3以上が例示できる。
【0035】
本発明において、強度とは、曲げ強度のことをいい、公知の方法で測定できるが、三点支持中央集中荷重方式を用いて、室温で、相対湿度約60%前後の雰囲気下で、測定することが例示できる。
【0036】
本発明の材料は、例えば、以下のようにして得ることができる。
【0037】
高密度のミクロフィブリル材料を得ることができるなら、どのような方法を用いても良い。例えば、ミクロフィブリルの懸濁液を抄紙したミクロフィブリルのシートを作ることが例示できる。抄紙する方法は、特に限定されず、通常、紙を作るときに用いられる方法でよい。懸濁液の濃度は、抄造性、流動性の点から考えると、0.01~10重量%、好ましくは0.02~5重量%、特に好ましくは0.1~1重量%である。
【0038】
抄紙により得られたミクロフィブリルシートを1枚、必要であれば目的に応じた枚数重ね、熱気乾燥、圧縮などにより水分を減少させる。水分が少なくなった時点で、加熱圧締する。
【0039】
ここで、添加剤としてデンプンを用いたい場合には、ミクロフィブリルの懸濁液を水の代わりにデンプン溶液で行うか、ミクロフィブリルシートをデンプン溶液に浸漬するなどの方法が挙げられる。
【0040】
加熱圧締を始める際のタイミングは特になく、作業がし易くなったり、乾燥に時間がかからなくなったりするまで水分を減少させれば十分である。加熱圧締の条件は、目的とする材料(例えば、ミクロフィブリルシートの厚さ、大きさ、添加剤の種類・量等)により異なるが、ミクロフィブリルが劣化しない条件、例えば、0.5~200MPa、好ましくは10~80 MPaの圧締下で、20~200℃、好ましくは80~180℃で行うのが好ましい。加熱圧締の時間は限定されず、例えば、10秒~48時間、好ましくは0.1~24時間、より好ましくは0.1~20時間が例示できるが、目的とする材料により適宜選択することができる。得られる材料(成型品)の含水量は、特に限定されないが、材料の強度の観点から5%以下であるのが好ましい。
【0041】
水分を減少させながら加熱圧締を行う際に、例えば、ポーラスメタルや多孔質セラミックスのような水分を透過させる材質からなる金型を用いて圧縮成型を行うと、目的とする形状に成型し易いので、好ましい。
【0042】
添加剤として熱可塑性樹脂が配合された材料を得る場合には、濾過して水分を十分に減少させたミクロフィブリルと熱可塑性樹脂との混合物を、加熱により溶融させ成型する方法を用いることができる。このときに用いられる樹脂の形状は、溶融して得られる材料に影響を与えない限り、限定されない。
【0043】
また、抄紙したミクロフィブリルシートと熱可塑性樹脂のシートを、目的に応じた枚数重ね合わせて、溶融させる方法でもよい。更には、1又は複数枚のミクロフィブリルシートを熱可塑性樹脂の溶液に浸漬させることも考えられる。
【0044】
添加剤として熱硬化性樹脂が配合された材料を得る場合には、水の代わりに 0.1~60重量%、好ましくは2~20重量%の熱硬化性樹脂の溶液にミクロフィブリルを懸濁し、抄紙し、ミクロフィブリルシートを作る方法を用いることができる。
【0045】
また、ミクロフィブリルの懸濁液を抄紙し、得られた1又は複数枚のミクロフィブリルシートを熱硬化性樹脂の溶液に浸漬することもできる。この熱硬化性樹脂溶液の濃度は、限定されないが、0.1~60重量%、好ましくは2~20重量%が例示でき、含漬時間も限定されないが、1秒~10日間が例示できる。
【0046】
本材料は、軽い上に高い強度を有しているので、パソコン、携帯電話等の家電製品の筐体(ハウジング)に用いることができる。また、文具等の事務機器、家具等の生活用品、スポーツ用品、自動車のダッシュボード等の内装、飛行機の荷物入れ、輸送用機器の構造部材、住宅におけるサッシ等の建材などにも使用することができる。更に、絶縁性に優れるので、電気・電子・通信機器にも使用することができる。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を更に詳しく説明するために実施例を挙げるが、いうまでもなく本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
実施例1(ミクロフィブリルのみからなる材料の製造)
固形分10%のミクロフィブリルの懸濁液を成形し、厚さ約50 mmのミクロフィブリルシートを作った後、そのシートの水分量が約40 %になるまで脱水し、70℃で24時間乾燥させた。その後、100 MPa、150℃で30分間加熱圧締した。
【0049】
得られた材料は、縦60 mm、横60 mm、厚さ1.5 mm、密度は1.45 g/cm3であった。曲げ強度は、20℃、相対湿度約60%の雰囲気下で測定すると200-250 MPaであった。
【0050】
実施例2(ミクロフィブリルとデンプンとからなる材料の製造)
固形分10%のミクロフィブリルの懸濁液に、ミクロフィブリル全乾重量に対し2%の可溶性デンプンを添加・混合し、実施例1と同様にミクロフィブリルシートを作り、乾燥させた。その後、得られたシートを20 MPa、120℃で60分間加熱圧締させた。
【0051】
得られた材料は、縦60 mm、横60 mm、厚さ1.5 mmであり、密度は1.45 g/cm3であった。曲げ強度は、20℃、相対湿度約60%の雰囲気下で測定すると280-320 MPaであった。
【0052】
実施例3(ミクロフィブリルと熱可塑性樹脂とからなる材料の製造)
ミクロフィブリルと長さ5 mmのポリ乳酸繊維を5:2の重量比で十分に混合してから抄紙したシートを乾燥後、30重に重ね合わせ、円形の金型内で、30 MPa、170℃で、10分間加熱圧締させた。
【0053】
得られた材料は、直径50 mm、厚さ1.3 mm、密度は1.37 g/cm3であった。曲げ強度は、20℃、相対湿度約60%の雰囲気下で測定すると200-220 MPaだった。
【0054】
実施例4(ミクロフィブリルと熱硬化性樹脂とからなる材料の製造)
実施例1と同様にして得られたミクロフィブリルシートを35重に重ね合わせたた後、分子量約3000の8 %フェノール樹脂メタノール溶液に浸漬した。その後、メタノールを除去し、円形の金型に内で80 MPa、160℃で、30分間加熱圧締させた。
【0055】
得られた材料は、フェノール樹脂率が16 %、直径50 mm、厚さ1.3 mm、密度は1.42 g/cm3であった。曲げ強度は、20℃、相対湿度約60%の雰囲気下で測定すると350-400 MPaだった。
【0056】
参考として、種々材料の密度、ヤング率、強度を表1に、本実施例1~4で得られた材料を表2に示す。
【0057】
【表1】
JP0003641690B2_000002t.gif
【0058】
【表2】
JP0003641690B2_000003t.gif
【0059】
【発明の効果】
本発明により得られた材料は、軽い上に、構造用鋼にも匹敵するほどの非常に高い強度を有する。また、本発明の材料は、古紙、古着などを再利用して得ることができ、ミクロフィブリルを主成分としていることから廃棄後に微生物等に分解されるので、地球環境に優しい材料である。