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明細書 :植物組織培養による抗癌剤の合成

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4852750号 (P4852750)
公開番号 特開2007-228883 (P2007-228883A)
登録日 平成23年11月4日(2011.11.4)
発行日 平成24年1月11日(2012.1.11)
公開日 平成19年9月13日(2007.9.13)
発明の名称または考案の名称 植物組織培養による抗癌剤の合成
国際特許分類 C12P   7/64        (2006.01)
C12P   7/40        (2006.01)
FI C12P 7/64
C12P 7/40
請求項の数または発明の数 3
全頁数 5
出願番号 特願2006-054586 (P2006-054586)
出願日 平成18年3月1日(2006.3.1)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成17年9月1日(財)八戸地域地場産業振興センターにおいて開催された国立大学法人弘前大学主催の「産学官連携フェアin八戸」で発表
特許法第30条第1項適用 平成17年度化学系学協会東北大会プログラムおよび講演予稿集(平成17年9月15日)日本化学会東北支部発行第282ページに発表
審査請求日 平成20年12月19日(2008.12.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
発明者または考案者 【氏名】長岐 正彦
【氏名】伊丸岡 大斗
【氏名】嵯峨 紘一
【氏名】大谷 典正
【氏名】槙 雄二
【氏名】西野 徳三
【氏名】古山 種俊
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100077517、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 敬
【識別番号】100087871、【弁理士】、【氏名又は名称】福本 積
【識別番号】100087413、【弁理士】、【氏名又は名称】古賀 哲次
【識別番号】100108903、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 和広
審査官 【審査官】藤井 美穂
参考文献・文献 特開平08-116981(JP,A)
特開2001-046093(JP,A)
特開2007-215518(JP,A)
Analytical Sciences,1993年,Vol.9,pp.625-629
Journal of Molecular Catalysis B: Enzymatic,2007年,Vol.47,pp.33-36
調査した分野 C12P1/00-41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
CAPLUS/WPIDS/MEDLINE/BIOSIS/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
プレニルアルコールの存在下でカボチャのカルスを好気的条件下で培養し、培養物から対応するプレニルカルボン酸を採取することを特徴とするプレニルカルボン酸の製造方法。
【請求項2】
前記プレニルアルコールが、イソプレノール、ゲラニオール、ファルネソール、ゲラニルゲラニオール、ゲラニルファルネソール、またはヘキサプレノールであり、前記プレニルカルボン酸がイソプレニル酸、ゲラニル酸、ファルネシル酸、ゲラニルゲラニル酸、ゲラニルファルネシル酸またはヘキサプレニル酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培養を暗所で行なう、請求項1又は2に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗癌剤などとして有望な機能性イソプレノイド類のカルボン酸を対応するプレニルアルコールから生物学的に製造するための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソプレノイド系化合物のアルコールとしては、イソプレノール(炭素原子数5個)、並びに当該イソプレノールを単量体とする重合体であるゲラニオール(炭素原子数10個)、ファルネソール(炭素原子数15個)、ゲラニルゲラニオール(炭素原子数20個)、ゲラニルファルネソール(炭素原子数25)、ヘキサプレノール(炭素原子数30)などが知られており、これらに対応するカルボン酸として、イソプレニル酸、ゲラニル酸、ファルネシル酸、ゲラニルゲラニル酸、ゲラニルファルネシル酸、ヘキサプレニル酸などが存在する。
【0003】
上記のようなイソプレノイド系化合物のカルボン酸の製造方法としては対応するプレニルアルコールのヒドロキシル基を化学的に酸化してカルボン酸をえることが考えられる。ヒドロキシル基のみを選択的に酸化するのは困難である。
他方、カルス培養など、植物の組織培養により有用物質を製造する方法が種々知られている。しかしながら、本発明でいうイソプレノイド系化合物については、それらが植物細胞内に取り込まれ難いため、組織培養系によるイソプレノイド系化合物の製造は困難であると考えられていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、植物の組織培養、特にカルス培養を用いてイソプレノイド系化合物のアルコール(プレニルアルコール)を対応するカルボン酸に生物転換することによりイソプレノイド化合物のカルボン酸を製造する方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者は、上記の課題を解決すべく種々検討した結果、カボチャ植物の組織培養により形成されたカルスはイソプレノイド系化合物を細胞内に取り込むことができ、更に取り込んだイソプレノイド系化合物のアルコールを対応するカルボン酸に転換して、対応するイソプレノイド系化合物のカルボン酸を合成することができるという、新規な知見を得て本発明を完成させた。
従って、本発明は、プレニルアルコールの存在下でカボチャの組織培養物を好気的条件下で培養し、培養物から対応するプレニルカルボン酸を採取することを特徴とするプレニルカルボン酸の製造方法を提供する。
【0006】
上記の方法において、例えば、前記出発イソプレノイド系化合物は、イソプレノール(炭素原子数5個)、並びに当該イソプレノールを単量体とする重合体であるゲラニオール(炭素原子数10個)、ファルネソール(炭素原子数15個)、ゲラニルゲラニオール(炭素原子数20個)、ゲラニルファルネソール(炭素原子数25)、ヘキサプレノール(炭素原子数30)などである。
より具体的な例において、前記出発イソプレノイド系化合物はゲラニオール、ファルネソール及びゲラニルゲラニオールである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、イソプレノイド系化合物とは、イソプレノール(炭素原子数5個)、及び当該イソプレノールを単量体とする種々の重合体(炭素原子数が5の倍数)を意味し、当該重合体としては、ゲラニオール(炭素原子数10)、ファルネソール(炭素原子数15個)、ゲラニルゲラニオール(炭素原子数20個)、ゲラニルファルネソール(炭素原子数25)、ヘキサプレノール(炭素原子数30)などが挙げられる。
【0008】
本発明によれば、前記のアルコールを出発物質として、対応する、即ち炭素原子数が同一で「-CH2-OH」が「-COOH」に酸化されたカルボン酸に酸化される。
【0009】
カルスの形成
本発明の方法において使用するカルスは、カボチャ植物から得られる。培養の出発材料としては、カボチャ植物の葉、茎、頂部(新芽)などの切片が使用される。カルスの培養は、常法に従って行なうことができる。例えば、カボチャの葉や新芽を採り、これを70%エタノール及び1%次亜塩素酸ナトリウム溶液により消毒し、適当な大きさ、例えば5mm×5mmの切片を調製し、植物組織培養用固体培地、例えば固体MS培地上で培養する。培地には、植物の組織培養において通常用いられる植物ホルモン、例えば、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、カイネチンなどを添加することができる。
【0010】
カルスの安定化
培養は、無菌状態で、例えば24℃において行なわれる。1週間~1箇月の培養によりカルスが形成される。このカルスは、そのまま使用することもできるが、継代培養を繰り返して安定なカルスを得てから使用するのが好ましい。
【0011】
イソプレノイドの酸の合成
次に、イソプレニルアルコールの酸化のため、上記のようにして得たカルスを、植物組織培養用液体培地に移して培養する。この培地としては、植物の組織培養のために常用される培地、例えばMS培地などを使用することができる。この培地には、植物の組織培養において通常用いられる植物ホルモン、例えば、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、カイネチンなどを添加することができる。
【0012】
この培養に当っては、先ず、出発プレニルアルコールを添加する。添加濃度は特に限定されないが、例えば0.1mM~100mM、好ましくは1mM~10mM程度である。しかしながら、カルスの能力によっては更に高濃度の出発プレニルアルコールを添加することもできる。また、出発プレニルアルコールは培養の最初の一度の加えてもよく、あるいは複数回に分割して培養中にも加えることができる。
【0013】
培養は好気的条件下で行われ、例えばフラスコ内での振とう培養、培養槽中での通気培養など、植物組織の好気的液体培養に通常用いられる任意の培養方法を用いることができる。
培養期間は特に限定されないが、例えば、1週間~2箇月程度である。
【0014】
目的プレニルカルボン酸の回収・生成
培養液から目的プレニルカルボン酸を単離・精製するには、培養液を、水と混和しない疎水性有機溶媒、例えばペンタンなどにより抽出して、目的プレニルカルボン酸を有機溶媒に移行させ、この有機溶媒からプレニルカルボン酸を精製するための常法に従って回収・精製することができる。
具体的な一例を実施例に記載する。
【実施例】
【0015】
実施例1. ファルネソールからファルネシル酸の製造
【化1】
JP0004852750B2_000002t.gif

【0016】
クリアジカボチャ植物(Cucurbrita maxima. kuriaji)の葉又は新芽を採取し、70%エタノール及び1%次亜塩素酸ナトリウム溶液で消毒し、これを細切して約5mm×5mmの切片とし、下記のとおりに調製したMS(Murashige & Skoog)固体培地に植えつけた。
MS培地に0.8%の寒天並びに3~10μMの2,4-D及び0.3~1μMのカイネチン又はゼアチンを加え、pHを5.7~5.8の調整し、100mlの三角フラスコの20mlを分注し、オートクレーブ殺菌することにより、上記のMS固体培地を調製した。1週間~1箇月の静置培養によりカルスの形成が見られた。
【0017】
上記のMS培地において寒天を加えない液体培地20mlを100mlの三角フラスコに分注してオートクレーブ殺菌した後、上記のとおりに形成したカルスを植え付け、22日間振とう培養した。更に、ファルネソール(5mMのファルネソール5ml)を添加して20日間振とう培養した。フラスコ1本分(培養液25ml)を200mlの分液ロートに入れ、これにペンタン15mlを入れ、300回振り、30分間静置し、水相を抜き出してそれに更にペンタン15ml入れて300回振とうし、30分間静置し、水相と有機層とを分けた。
【0018】
この操作を5回反復した後、有機層を分液ロートに入れ、これに再蒸留水20mlを加えて30回振とうし、30分間静置して有機層と水相とを分離した。この操作を2回行なった。更に、飽和食塩水を20ml入れ、軽く30回振とうし、静置して有機相と水相とを分離した。次に、有機相にMgSO4(無水)を加えて3時間脱水した。有機相をセライトで濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮し、抽出物を得た。これを質量分析にかけたところ、ファルネシル酸の生成が確認された。
【0019】
実施例2. ゲラニルゲラニオールからゲラニルゲラニル酸の製造
【化2】
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【0020】
実施例1に記載した方法を反復した。但し、出発材料として5mMのゲラニルゲラニオールを1ml添加し、13日間培養した。ゲラニルゲラニル酸の生成が確認された。
【0021】
実施例3. ゲラニオールからゲラニル酸の製造
【化3】
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【0022】
実施例1に記載した方法を反復した。但し、出発材料として5mMのゲラニオールを1ml添加し、14日間培養した。ゲラニル酸の生成が確認された。