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明細書 :膀胱癌の悪性度の検査方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4815589号 (P4815589)
公開番号 特開2007-212252 (P2007-212252A)
登録日 平成23年9月9日(2011.9.9)
発行日 平成23年11月16日(2011.11.16)
公開日 平成19年8月23日(2007.8.23)
発明の名称または考案の名称 膀胱癌の悪性度の検査方法
国際特許分類 G01N  33/574       (2006.01)
G01N  30/88        (2006.01)
FI G01N 33/574 B
G01N 30/88 N
請求項の数または発明の数 8
全頁数 13
出願番号 特願2006-031618 (P2006-031618)
出願日 平成18年2月8日(2006.2.8)
審査請求日 平成20年11月27日(2008.11.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
発明者または考案者 【氏名】大山 力
【氏名】西村 紳一郎
【氏名】中川 裕章
個別代理人の代理人 【識別番号】100106611、【弁理士】、【氏名又は名称】辻田 幸史
【識別番号】100087745、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 善廣
【識別番号】100098545、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 伸一
審査官 【審査官】淺野 美奈
参考文献・文献 特開2005-069846(JP,A)
特表2005-515440(JP,A)
特開2001-289860(JP,A)
特開平10-168098(JP,A)
特開平02-034601(JP,A)
国際公開第02/077649(WO,A1)
大山力,膀胱癌の生物学的悪性度を反映する糖鎖性腫瘍マーカー,日本泌尿器科学会雑誌,日本,2004年 3月15日,Vol. 95, No. 2,223
三塚浩二 他,GM3糖鎖を中心としたGM3/ CD9/ integrin-α3複合体(glycosynapse3)による膀胱癌細胞の悪性度の制御,日本泌尿器科学会雑誌,日本,2006年 3月10日,Vol. 97, No. 2,233
調査した分野 G01N 33/574
G01N 30/88
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
膀胱癌の悪性度の検査方法であって、体内から採取した膀胱癌組織におけるN型糖鎖の発現分布を膀胱正常上皮組織における発現分布と比較し、下記の構造式(1)および/または構造式(2)で表される構造を持つオリゴ糖および/またはそのシアル酸結合体の検出量が膀胱正常上皮組織由来の検出量よりも多い方が、悪性度が低い乃至良性であるとの検査結果とする方法。
【化1】
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【化2】
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【請求項2】
膀胱癌の悪性度の検査方法であって、体内から採取した膀胱癌組織におけるN型糖鎖の発現分布を膀胱正常上皮組織における発現分布と比較し、下記の構造式(1)および/または構造式(2)で表される構造を持つオリゴ糖および/またはそのシアル酸結合体の検出量が膀胱正常上皮組織由来の検出量よりも少ない方が、悪性度が高い乃至悪性であるとの検査結果とする方法。
【化3】
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【化4】
JP0004815589B2_000012t.gif

【請求項3】
膀胱癌の悪性度の検査方法であって、体内から採取した膀胱癌組織におけるN型糖鎖の発現分布を分析し、下記の構造式(1)で表される構造を持つオリゴ糖の検出量が全体の4.50%以上(モル比)の場合、悪性度が低い乃至良性であるとの検査結果とする方法。
【化5】
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【請求項4】
膀胱癌の悪性度の検査方法であって、体内から採取した膀胱癌組織におけるN型糖鎖の発現分布を分析し、下記の構造式(2)で表される構造を持つオリゴ糖の検出量が全体の4.00%以上(モル比)の場合、悪性度が低い乃至良性であるとの検査結果とする方法。
【化6】
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【請求項5】
膀胱癌の悪性度の検査方法であって、体内から採取した膀胱癌組織におけるN型糖鎖の発現分布を分析し、下記の構造式(1)で表される構造を持つオリゴ糖の検出量が全体の4.50%未満(モル比)の場合、悪性度が高い乃至悪性であるとの検査結果とする方法。
【化7】
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【請求項6】
膀胱癌の悪性度の検査方法であって、体内から採取した膀胱癌組織におけるN型糖鎖の発現分布を分析し、下記の構造式(2)で表される構造を持つオリゴ糖の検出量が全体の4.00%未満(モル比)の場合、悪性度が高い乃至悪性であるとの検査結果とする方法。
【化8】
JP0004815589B2_000016t.gif

【請求項7】
下記の構造式(1)で表される構造を持つオリゴ糖の膀胱癌の悪性度を検査するための使用。
【化9】
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【請求項8】
下記の構造式(2)で表される構造を持つオリゴ糖の膀胱癌の悪性度を検査するための使用。
【化10】
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発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、膀胱癌の悪性度診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、膀胱癌の悪性度の診断は、主として病理組織学的評価に基づいて行われてきており、膀胱癌には大きく分けて2種類のタイプ、即ち、乳頭状で予後が良好な表在性の癌と、結節状で筋層を越えて他の臓器や組織にまで浸潤しうる、再発や転移を起こす予後が不良な浸潤性の癌が存在することが知られている。しかしながら、病理組織学的評価に基づく診断は主観的な判断が含まれるなど客観性に乏しく限界があり、再発や転移の危険性、予後の予測を正確に行うことは困難である。このような問題点に鑑み、例えば特許文献1では、膀胱癌患者の血液中の可溶性Fas濃度を測定し、濃度が一定値未満の場合には予後良好、濃度が一定値以上の場合には予後不良と判定することによる診断方法が提案されているが、より優れた診断方法が望まれている。

【特許文献1】特開2000-131321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明は、再発や転移の危険性、予後の予測を客観的・定量的に行える膀胱癌の悪性度診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記の点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、膀胱癌組織に発現している特定のN型糖鎖の発現量が癌の悪性度と相関していることを見出した。
【0005】
上記の知見に基づいて完成した本発明は、請求項1記載の通り、膀胱癌の悪性度の検査方法であって、体内から採取した膀胱癌組織におけるN型糖鎖の発現分布を膀胱正常上皮組織における発現分布と比較し、下記の構造式(1)および/または構造式(2)で表される構造を持つオリゴ糖および/またはそのシアル酸結合体の検出量が膀胱正常上皮組織由来の検出量よりも多い方が、悪性度が低い乃至良性であるとの検査結果とするものである。
【0006】
【化11】
JP0004815589B2_000002t.gif

【0007】
【化12】
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【0008】
また、本発明は、請求項2記載の通り、膀胱癌の悪性度の検査方法であって、体内から採取した膀胱癌組織におけるN型糖鎖の発現分布を膀胱正常上皮組織における発現分布と比較し、上記の構造式(1)および/または構造式(2)で表される構造を持つオリゴ糖および/またはそのシアル酸結合体の検出量が膀胱正常上皮組織由来の検出量よりも少ない方が、悪性度が高い乃至悪性であるとの検査結果とするものである。
また、本発明は、請求項3記載の通り、膀胱癌の悪性度の検査方法であって、体内から採取した膀胱癌組織におけるN型糖鎖の発現分布を分析し、上記の構造式(1)で表される構造を持つオリゴ糖の検出量が全体の4.50%以上(モル比)の場合、悪性度が低い乃至良性であるとの検査結果とするものである。
また、本発明は、請求項4記載の通り、膀胱癌の悪性度の検査方法であって、体内から採取した膀胱癌組織におけるN型糖鎖の発現分布を分析し、上記の構造式(2)で表される構造を持つオリゴ糖の検出量が全体の4.00%以上(モル比)の場合、悪性度が低い乃至良性であるとの検査結果とするものである。
また、本発明は、請求項5記載の通り、膀胱癌の悪性度の検査方法であって、体内から採取した膀胱癌組織におけるN型糖鎖の発現分布を分析し、上記の構造式(1)で表される構造を持つオリゴ糖の検出量が全体の4.50%未満(モル比)の場合、悪性度が高い乃至悪性であるとの検査結果とするものである。
また、本発明は、請求項6記載の通り、膀胱癌の悪性度の検査方法であって、体内から採取した膀胱癌組織におけるN型糖鎖の発現分布を分析し、上記の構造式(2)で表される構造を持つオリゴ糖の検出量が全体の4.00%未満(モル比)の場合、悪性度が高い乃至悪性であるとの検査結果とするものである。
また、本発明は、請求項7記載の通り、上記の構造式(1)で表される構造を持つオリゴ糖の膀胱癌の悪性度を検査するための使用である。
また、本発明は、請求項8記載の通り、上記の構造式(2)で表される構造を持つオリゴ糖の膀胱癌の悪性度を検査するための使用である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、膀胱癌の再発や転移の危険性、予後の予測を客観的・定量的に行えるので、その結果に応じた適切な措置を患者に対して施せる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の膀胱癌の悪性度診断方法は、体内から採取した膀胱癌組織におけるN型糖鎖の発現分布を膀胱正常上皮組織における発現分布と比較し、下記の構造式(1)および/または構造式(2)で表される構造を持つオリゴ糖および/またはそのシアル酸結合体の検出量が膀胱正常上皮組織由来の検出量よりも多い方が、悪性度が低い乃至良性と判断するものである。
【0011】
【化13】
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【0012】
【化14】
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【0013】
N型糖鎖とは糖タンパク質の糖鎖のうち、タンパク質のアスパラギン残基が持つ側鎖のアミド基の窒素原子に結合している糖鎖を意味し、N結合型糖鎖やアスパラギン結合型糖鎖とも称される。アスパラギン残基に結合している糖はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)であり、上記の構造式(1)および構造式(2)においては右側末端のGlcNAcが相当し、その結合様式はGlcNAcβ1-Asnである。なお、上記の構造式(1)および構造式(2)において、Manはマンノース、Galはガラクトース、Fucはフコースを意味し、2,3,4,6の数字は伸張する糖との結合位置、α,βは伸張した糖が隣接する糖と結合する1位の立体配置を示す。
【0014】
本発明において、膀胱癌組織および膀胱正常上皮組織におけるN型糖鎖の発現分布を調べる方法は特段限定されるものではなく、例えば、自体公知のN-グリコシダーゼF(グリコペプチダーゼ、PNGase、グリカナーゼ、グリコアミダーゼなどとも称される)やグリコペプチダーゼAなどを用いた酵素法やヒドラジン分解法により糖タンパク質から糖鎖を切り出し、切り出した糖鎖(オリゴ糖)をピリジルアミノ化して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分離し同定することによって行うことができる(必要であれば以下の文献を参照のこと)。糖鎖構造解析は生体内で糖鎖の非還元末端のGalなどに結合しうるシアル酸(N-アセチルノイラミン酸)を予め遊離させるための処理(酸処理など)を行って中性オリゴ糖の状態で行うことが高い分析精度を得るためによいが、酸性オリゴ糖であるシアル酸結合体のままで行ってもよい。
(文献1)Takahashi N, Tomiya N. Analysis of N-linked oligosaccharides: Application of glycoamidase A. In: Takahashi N, Muramatsu T, editors. Handbook of endoglycosidases and glycoamidases. Boca Raton, FL: CRC Press; 1992. p.209-41.
(文献2)Yamashita K, Koide N, Endo T, Iwaki Y, Kobata A. Altered glycosylation of serum transferrin of patients with hepatocellular carcinoma. J Biol Chem 1989;264:2415-23.
(文献3)Nakagawa H, Kawamura Y, Kato K, Shimada I, Arata Takahashi N. Identification of neutral and sialyl N-linked oligosaccharide structures from human serum glycoproteins using three kinds of performance liquid chromatography. Anal Biochem 1995;226:130-8.
(文献4)Hase S, Ikenaka T, Matsushima Y. Structure analyses of oligosaccharides by tagging of the reducing end sugars with a fluorescent compound. Biochem Biophys Res Commun 1978;85:257-63.
(文献5)Yamamoto S, Hase S, Fukuda S, Sano O, Ikenaka T. Structures of the sugar chains of interferon-gamma produced by human myelomonocyte cell line HBL-38. J Biochem (Tokyo) 1989;105;547-55.
【0015】
サンプルとする膀胱癌組織は、例えば患者から手術で摘出した癌組織から調製すればよい。膀胱正常上皮組織は手術で癌組織とともに摘出した周辺の正常組織から調製すればよい。
【0016】
診断対象である患者の膀胱癌組織におけるN型糖鎖の発現分布に対し、その比較対照とする膀胱正常上皮組織における発現分布は、診断対象である患者の膀胱正常上皮組織における発現分布であってもよいし、複数の患者の膀胱正常上皮組織における発現分布の平均値であってもよい。後述する実施例で明らかにする通り、膀胱癌組織由来の上記の構造式(1)および構造式(2)で表される構造を持つオリゴ糖の検出量は、表在性の癌と浸潤性の癌とで大きく異なり、表在性の癌由来の検出量は正常上皮組織由来の検出量よりも明らかに多いことから、これらの検出量が多い方が、悪性度が低い乃至良性と判断できる。また、表在性癌組織と浸潤性癌組織との対比に基づけば、上記の構造式(1)で表される構造を持つオリゴ糖の検出量が全体の4.50%以上(モル比:以下同じ)の場合には悪性度が低い乃至良性と判断し、4.50未満の場合には悪性度が高い乃至悪性と判断したり、上記の構造式(2)で表される構造を持つオリゴ糖の検出量が全体の4.00%以上の場合には悪性度が低い乃至良性と判断し、4.00未満の場合には悪性度が高い乃至悪性と判断したりするといったこともできる。もちろん、診断の正確性をより高めるために、従来から行われている病理組織学的評価に基づく診断方法などの既知の診断方法による判断結果を参照してもよいことは言うまでもない。このように、上記の構造式(1)および構造式(2)で表される構造を持つオリゴ糖の検出量は、膀胱癌の悪性度と相関性を持つことから、これらのオリゴ糖やそのシアル酸結合体は膀胱癌のバイオマーカーとして機能する。従って、これらを認識する抗体を作製して当該抗体が介在する免疫染色を膀胱癌組織と膀胱正常上皮組織に対して施し、染色の程度を比較することで膀胱癌の悪性度を診断できる他、血中や尿中におけるこれらの存在量を指標にしても診断できる。また、これらと結合するレクチンを用いても診断できるし、これらを有する糖タンパク質やそのフラグメントの存在量を指標にしても診断できる。なお、これらの検出や定量は、電気泳動やクロマトグラフィーなどの各種の糖鎖分析手段によって行えばよい。
【0017】
本発明の膀胱癌の悪性度診断方法は、固形癌の悪性度を診断するための方法論として一般化できる。即ち、複数の患者の体内から採取した固形癌組織におけるN型糖鎖の発現分布を正常上皮組織における発現分布と比較し、正常上皮組織における発現量と異なる発現量を示し、かつ、例えば従来から行われている病理組織学的評価に基づく診断方法などの既知の診断方法により知られている悪性度と発現量との間に相関性を持つ糖鎖を見出すことで、当該糖鎖の発現量の違いに基づいて固形癌の悪性度を診断できる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の膀胱癌の悪性度診断方法を実施例により詳述するが、本発明は以下の記載によって何ら制限を受けて解釈されるものではない。
【0019】
(実験方法)
異なる10名の膀胱癌患者の体内から採取した、膀胱正常上皮組織4サンプルN1~N4、表在性癌組織(pTa)2サンプルS1,S2、筋層浸潤性癌組織(pT2/3)4サンプルI1~I4について、それぞれの組織におけるN型糖鎖の発現分布を以下のようにして調べた。
サンプルをカミソリで切断し、10mMの重炭酸アンモニウム0.5mL中でボイルした後、クロロホルム・メタノール混合液(2:1,v/v)0.5mLを用いて脂質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥したサンプルを0.1MのTris-HCl緩衝液(pH8.0)100μL中に懸濁し、上記の文献1に記載の方法に従ってトリプシン、キモトリプシン、N-グリコシダーゼF、プロナーゼで順次処理し、組織から切り出した糖鎖をBio-Gel P-4を用いてゲルろ過して精製した。精製した糖鎖(オリゴ糖)を上記の文献4や文献5に記載の方法に従ってピリジルアミノ化(PA化)し、過剰の試薬(2-アミノピリジン)を1×38cmのSephadex G-15カラムで溶出液として10mMの炭酸水素アンモニウム水溶液を用いてゲルろ過して除去した。
上記の方法で得られたPA化オリゴ糖を塩酸存在下で酸処理してシアル酸を遊離させた後、6×150mmのHRC-ODSカラム(島津製作所)と4.6×250mmのTSKgel Amide-80カラム(東ソー)を用い、NANOSPACE SI-II HPLCシステム(資生堂)により分離した。ODSカラム(逆相カラム)からの溶出は55℃において10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH3.8)と1-ブタノールを用いて行った。1-ブタノールの濃度は60分間で0.1%から0.25%(v/v)まで直線的に上昇させた。アミド吸着カラムからの溶出は40℃で3%の酢酸-トリエチルアミン緩衝液(pH7.3)とアセトニトリルを用いて行った。緩衝液とアセトニトリルの組成比は30分間で35:65から44:56(v/v)まで徐々に変化させた。流速は1.0mL/分とし、PA化オリゴ糖を蛍光検出した(励起波長:320nm,蛍光波長:400nm)。さらに、分離したPA化オリゴ糖を上記の文献1に記載の方法に従って段階的にエキソグルコシダーゼ分解し、各分解段階においてHPLC分析を行い、オリゴ糖の標準品(文献1~文献3に記載の方法に従ってヒトトランスフェリンおよび血清から調製)と比較することにより構造を決定した。
【0020】
(実験結果)
図1に表在性癌組織サンプルS1におけるN型糖鎖の発現分布に由来するPA化オリゴ糖のODSカラム上での溶出パターンと個々のピークの糖鎖コードとその構造(シンボル表記)を示す。また、ODSカラムとアミド吸着カラムを用いてHPLCで分離した個々のPA化オリゴ糖のピーク面積からそれぞれの組織サンプル由来の検出割合をモル比で算出した結果を表1に示す。また、主たるオリゴ糖について膀胱正常上皮組織4サンプル由来の検出量の平均値を算出するとともに、当該平均値に対する表在性癌組織2サンプル由来と浸潤性癌組織4サンプル由来の個々の相対的検出量を図2に示す。
【0021】
【表1】
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【0022】
表1と図2から明らかなように、表在性癌組織においては、生合成にN-アセチルグルコサミン転移酵素V(GnT-V)が関与する下記の構造式(1)で表される構造を持つ糖鎖コード410.16のオリゴ糖の検出量と、生合成にN-アセチルグルコサミン転移酵素IV(GnT-IV)が関与する構造式(2)で表される構造を持つ糖鎖コード310.8のオリゴ糖の検出量は、浸潤性癌組織由来の検出量および正常上皮組織由来の検出量よりも多いことがわかった。とりわけ表在性癌組織由来の糖鎖コード410.16のオリゴ糖の検出量は、浸潤性癌組織由来の検出量および正常上皮組織由来の検出量に比較して有意に多く(浸潤性癌組織由来の検出量に対してp=0.0210,正常上皮組織由来の検出量に対してp=0.0026,Student’s t test)、GnT-Vが生合成に関与する糖鎖、即ち、β1-6分岐N型糖鎖の高発現は膀胱癌の悪性度が低いことと密接に関連していることがわかった。従って、この相関性を利用し、例えば、膀胱癌組織由来の糖鎖コード410.16のオリゴ糖や糖鎖コード310.8のオリゴ糖の検出量が膀胱正常上皮組織由来の検出量よりも多いかどうかを調べることで(多い方が悪性度が低い乃至良性と判断)、また、モル比で、糖鎖コード410.16のオリゴ糖の検出量が全体の4.50%以上か未満か、糖鎖コード310.8のオリゴ糖の検出量が全体の4.00%以上か未満かを調べることで(所定の数値以上の場合に悪性度が低い乃至良性と判断)、膀胱癌の再発や転移の危険性、予後の予測を客観的・定量的に行え、その結果に応じた適切な措置を患者に対して施せることがわかった。
【0023】
【化15】
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【0024】
【化16】
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【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、再発や転移の危険性、予後の予測を客観的・定量的に行える膀胱癌の悪性度診断方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例における表在性癌組織サンプルS1におけるN型糖鎖の発現分布に由来するPA化オリゴ糖のODSカラム上での溶出パターンと個々のピークの糖鎖コードとその構造(シンボル表記)を示す図である。
【図2】同、主たるオリゴ糖の膀胱正常上皮組織4サンプル由来の検出量の平均値に対する表在性癌組織由来と浸潤性癌組織由来の個々の相対的検出量を示す図である。
図面
【図2】
0
【図1】
1