TOP > 国内特許検索 > シートセンサシステムおよびシートセンサ > 明細書

明細書 :シートセンサシステムおよびシートセンサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-169532 (P2015-169532A)
公開日 平成27年9月28日(2015.9.28)
発明の名称または考案の名称 シートセンサシステムおよびシートセンサ
国際特許分類 G01L   5/16        (2006.01)
G01L   5/00        (2006.01)
FI G01L 5/16
G01L 5/00 101Z
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2014-044406 (P2014-044406)
出願日 平成26年3月6日(2014.3.6)
発明者または考案者 【氏名】中山 昇
【氏名】田中 航平
【氏名】春日 翔平
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100090170、【弁理士】、【氏名又は名称】横沢 志郎
【識別番号】100142619、【弁理士】、【氏名又は名称】河合 徹
【識別番号】100153316、【弁理士】、【氏名又は名称】河口 伸子
審査請求 未請求
テーマコード 2F051
Fターム 2F051AA10
2F051AB07
2F051BA07
2F051DA03
要約 【課題】センサ受圧面に沿った方向に作用するせん断荷重を測定可能な、廉価で、配線数が少なく、検出分解能の高いシートセンサシステムを実現すること。
【解決手段】シートセンサシステム1では、センサ受圧面20を包含する状態に共通電極22を配置し、センサ受圧面2aを複数の検出区画20(n)に分割し、共通電極22に対して感圧シート25を介して対峙している個別電極24を各検出区画20(n)にそれぞれ配置してある。各検出区画20(n)には、センサ受圧面2aに沿ったx方向に配列した2つの個別電極24が含まれている。共通電極22と、個別電極24のそれぞれの間の電圧変化量に基づき、各検出区画20(n)においてx方向に作用するせん断荷重を検出できる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
予め定めたセンサ受圧面(20)を包含する範囲に配置された感圧導電性材料からなる感圧シート(25)と、
前記感圧シート(25)の一方の側において、前記センサ受圧面(20)を包含する範囲に配置した共通電極(22)と、
前記感圧シート(25)を挟み、前記共通電極(22)に対向配置されている複数の個別電極(24)と、
前記共通電極(22)と前記個別電極(24)のそれぞれとの間に生ずる電圧変化量に基づき前記センサ受圧面(20)の各部に作用する荷重を算出する演算部(51)と、
を有し、
前記センサ受圧面(20)は複数の検出区画(20(n))に分割され、
前記センサ受圧面(20)に沿った一つ方向をx方向とすると、前記検出区画(20(n))のそれぞれには、x方向に沿って複数の個別電極が配列され、
前記演算部(51)は、前記共通電極(22)と各検出区画(20(n))の複数の前記個別電極(24)のそれぞれとの間の電圧変化量(dVm)に基づき、各検出区画(20(n))に作用するx方向のせん断荷重(Pt)の大きさを算出することを特徴とするシートセンサシステム(1)。
【請求項2】
x方向に直交する前記センサ受圧面(20)に沿った方向をy方向とすると、
前記検出区画(20(n))のそれぞれには、x方向およびy方向のそれぞれに沿って複数の前記個別電極(24)が配列され、
前記演算部(51)は、前記共通電極(22)と各検出区画(20(n))の複数の前記個別電極(24)のそれぞれとの間の電圧変化量(dVm)に基づき、各検出区画(20(n))に作用する前記センサ受圧面(20)に沿った任意方向のせん断荷重(Pt)の大きさ、及び方向(φ)を算出する、
請求項1に記載のシートセンサシステム(1)。
【請求項3】
隣り合う一対の前記検出区画を、第1検出区画(20(1))および第2検出区画(20(2))とすると、
前記第1検出区画(20(1))に属するx方向に沿って配列されている前記個別電極の少なくとも一つ(24(1.2))が、前記第2検出区画(20(2))に属するx方向に沿って配列されている前記個別電極に含まれるように、前記センサ受圧面(20)が複数の前記検出区画(20(n))に分割されている、
請求項1または2に記載のシートセンサシステム(1)。
【請求項4】
前記第1検出区画(20(1))に属するy方向に沿って配列されている前記個別電極の少なくとも一つ(24(2.2))が、前記第2検出区画(20(2))に属するy方向に沿って配列されている前記個別電極に含まれるように、前記センサ受圧面(20)が複数の前記検出区画(20(n))に分割されている、
請求項3に記載のシートセンサシステム(1)。
【請求項5】
前記個別電極(24)はx方向およびy方向のそれぞれに所定のピッチで格子状に配列され、
前記検出区画(20(n))のそれぞれには4個の前記個別電極(24)が含まれている、
請求項4に記載のシートセンサシステム(1)。
【請求項6】
前記演算部(51)は、前記共通電極(22)と前記個別電極(24)のそれぞれとの間の電圧変化量(dVm)に基づき、前記検出区画(20(n))のそれぞれに作用する
垂直荷重(Pn)、および、前記個別電極(24)のそれぞれの部分に作用する垂直荷重のうちの少なくとも一方を算出する、
請求項1ないし5のうちのいずれか一つの項に記載のシートセンサシステム(1)。
【請求項7】
前記共通電極(22)を覆う状態に積層した弾性シート(26)、あるいは、前記感圧シート(25)および前記個別電極(24)を覆う状態に積層した弾性シート(26)を有し、
前記弾性シート(26)のシート表面によって前記センサ受圧面(20)が規定されている、
請求項1ないし6のうちのいずれか一つの項に記載のシートセンサシステム(1)。
【請求項8】
各検出区画(20(n))に加わる任意荷重のx、y方向および、これらに直交するz方向の成分をPx、Py、Pzとすると、前記演算部(51)は、
各検出区画(20(n))に作用する垂直荷重Pn(=Pz)を、次の式で示すように、当該検出区画に属する4つの前記個別電極の電圧変化量dV~dVの総和に基づき算出し、
【数1】
JP2015169532A_000014t.gif
各検出区画に作用するせん断荷重Ptを、次の式で示すように、各検出区画に属する4つの前記個別電極の電圧変化量ΔVに基づき算出し、
【数2】
JP2015169532A_000015t.gif
各検出区画に作用する前記せん断荷重Ptの方向を、z方向の軸線を中心としたx方向から反時計回りの角度φで表すと、
【数3】
JP2015169532A_000016t.gif
により算出する、
請求項5に記載のシートセンサシステム(1)。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちのいずれか一つの項に記載のシートセンサシステム(1)に用いるシートセンサ(2)であって、
予め定めたセンサ受圧面(20)を包含する範囲に配置された感圧導電性材料からなる感圧シート(25)と、
前記感圧シート(25)の一方の側において、前記センサ受圧面(20)を包含する範囲に配置した共通電極(22)と、
前記感圧シート(25)を挟み、前記共通電極(22)に対向配置されている複数の個別電極(24)と、
を有し、
前記センサ受圧面(20)は複数の検出区画(20(n))に分割され、
前記センサ受圧面(20)に沿った直交する二つの方向をx方向およびY方向とすると、前記検出区画(20(n))のそれぞれには、x方向およびy方向のそれぞれ沿って、複数の前記個別電極(24)が配列されている、
ことをと特徴とするシートセンサ(2)。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象物の表面に作用する荷重を検出するシートセンサシステムに関し、特に、検出対象物の表面の各部において、当該表面に沿った方向に作用するせん断荷重の分布状態を検出可能なシートセンサシステム、当該シートセンサシステムに用いるシートセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、生産現場では、作業効率、安全性向上のために、ロボットハンドによる作業の自動化が期待されている。ロボットの表面は金属または硬質な樹脂で覆われているので、人間と接触すると危害を加える可能性がある。したがって、ロボット表面に柔軟で且つ荷重を測定できるセンサを配置することが望まれる。
【0003】
現在開発されている柔軟なセンサとして、画像処理を用いて接触状態を測定するセンサが挙げられるが、情報量が多い、小型化が難しいという問題がある。また、感圧導電性ゴムを用いたセンサでは、垂直荷重のみ測定可能であり、せん断荷重等を測定できない。このような問題を解消するために、本発明者等は、特許文献1、2において、垂直荷重およびせん断荷重を測定可能な柔軟型三軸荷重測定センサ、四軸荷重測定センサを提案している。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2013-79831号公報
【特許文献2】特開2013-210368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1、2において提案しているセンサを用いて、例えば自動車のシート、ベッド等の大面積の表面に作用する垂直荷重、せん断荷重の分布を測定するためのセンサシステムを構築するために、特許文献1、2において提案しているセンサを用いることが考えられる。この場合には、多数個のセンサを所定のピッチで検出対象物の表面に配列する必要がある。この構成のセンサシステムは、多数個のセンサを必要とするので、コストが高い、配線数が増加するなどの問題点がある。また、センサの配列密度によって荷重の検出分解能が制約を受けるので、検出分解能を高めることが困難であるという問題もある。
【0006】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、大面積の表面に作用するせん断荷重を測定可能な廉価で、配線数が少なくて済むシートセンサシステム、および当該シートセンサシステムに用いるシートセンサを提供することにある。
【0007】
また、本発明の課題は、上記の課題に加えて、荷重分解能を向上可能なシートセンサシステム、および当該シートセンサシステムに用いるシートセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のシートセンサシステムは、
予め定めたセンサ受圧面を包含する範囲に配置された感圧導電性材料からなる感圧シートと、
前記感圧シートの一方の側において、前記センサ受圧面を包含する範囲に配置した共通
電極と、
前記感圧シートを挟み、前記共通電極に対向配置されている複数の個別電極と、
前記共通電極と前記個別電極のそれぞれとの間に生ずる電圧変化量に基づき、前記センサ受圧面の各部に作用する荷重を算出する演算部と、
を有し、
前記センサ受圧面は複数の検出区画に分割され、
前記センサ受圧面に沿った一つの方向をx方向とすると、前記検出区画のそれぞれには、x方向に沿って複数の個別電極が配列され、
前記演算部は、前記共通電極と各検出区画の複数の前記個別電極のそれぞれとの間の電圧変化量に基づき、各検出区画に作用するx方向のせん断荷重の大きさを算出することを特徴としている。
【0009】
本発明のシートセンサシステムでは、共通電極と、個別電極のそれぞれとの間の電圧変化量から算出した各検出区画に生ずる電圧変化量に基づき、各検出区画においてx方向に作用するせん断荷重を検出できる。また、演算部は、共通電極と個別電極のそれぞれとの間の電圧変化量に基づき、各検出区画に作用する垂直荷重、個別電極のそれぞれの部位に作用する垂直荷重を算出できることは勿論である。
【0010】
本発明によれば、多数個の独立したセンサを検出対象の表面に配列する場合に比べて、センサ部分をコンパクトに構成でき、配線数も少なくて済む。また、個々のセンサの配列密度ではなく、検出区画の配列密度によって検出分解能が規定されるので、多数個の独立したセンサを配列する場合に比べて、検出分解能を高めることが容易である。
【0011】
本発明において、センサ受圧面に作用する任意の方向のせん断荷重を検出するためには、各検出区画に、x方向に直交する方向に配列した少なくとも2つの個別電極が備わっていればよい。
【0012】
この場合における本発明のシートセンサシステムは、上記構成に加えて、x方向に直交する前記センサ受圧面に沿った方向をy方向とすると、前記検出区画のそれぞれには、x方向およびy方向のそれぞれに沿って複数の前記個別電極が配列され、前記演算部は、前記共通電極と各検出区画の複数の前記個別電極のそれぞれとの間の電圧変化量から算出した各検出区画に生ずる電圧変化量に基づき、各検出区画に作用する前記センサ受圧面に沿った任意方向のせん断荷重Ptの大きさ、及び方向を算出するように構成すればよい。
【0013】
ここで、荷重検出の分割能を高めるためには、次のようにすることが望ましい。すなわち、前記検出区画は、隣り合う一対の前記検出区画を、第1検出区画および第2検出区画とすると、前記第1検出区画に属するx方向に沿って配列されている前記個別電極の少なくとも一つが、前記第2検出区画に属するx方向に沿って配列されている前記個別電極に含まれるように、前記センサ受圧面が複数の前記検出区画に分割されていることが望ましい。
【0014】
上記構成に加えて、y方向においても、前記第1検出区画に属するy方向に沿って配列されている前記個別電極の少なくとも一つが、前記第2検出区画に属するy方向に沿って配列されている前記個別電極に含まれるように、前記センサ受圧面が複数の前記検出区画に分割されていることが望ましい。
【0015】
本発明における典型的な構成では、前記個別電極はx方向およびy方向のそれぞれに所定のピッチで格子状に配列され、前記検出区画のそれぞれに4個の前記個別電極が含まれるようにされる。
【0016】
本発明のシートセンサシステムにおいて、前記共通電極を覆う状態に積層した弾性シート、あるいは、前記感圧シートおよび前記個別電極を覆う状態に積層した弾性シートを有し、前記弾性シートのシート表面によって前記センサ受圧面を規定してもよい。
【0017】
なお、本発明のシートセンサシステムにおいては、各検出区画に加わる任意荷重Pのx、y方向および、これらに直交するz方向の成分をPx、Py、Pzとすると、前記演算部は、
各検出区画に作用する垂直荷重Pn(=Pz)を、次の式で示すように、当該検出区画に属する4つの前記個別電極の電圧変化量dV~dVの総和に基づき算出し、
【数1】
JP2015169532A_000003t.gif
各検出区画に作用するせん断荷重Ptを、次の式で示すように、各検出区画に属する4つの前記個別電極の電圧変化量ΔVに基づき算出し、
【数2】
JP2015169532A_000004t.gif
各検出区画に作用する前記せん断荷重Ptの方向を、x方向から反時計回りの角度φで表すと、
【数3】
JP2015169532A_000005t.gif
により算出することができる。
【0018】
一方、本発明は、上記構成のシートセンサシステムに用いるシートセンサであって、
予め定めたセンサ受圧面を包含する範囲に配置された感圧導電性材料からなる感圧シートと、
前記感圧シートの一方の側において、前記センサ受圧面を包含する範囲に配置した共通電極と、
前記感圧シートを挟み、前記共通電極に対向配置されている複数の個別電極と、
を有し、
前記センサ受圧面は複数の検出区画に分割され、
前記センサ受圧面に沿った直交する二つの方向をx方向およびy方向とすると、前記検出区画のそれぞれには、x方向およびy方向のそれぞれに沿って、複数の前記個別電極が配列されていることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は本発明を適用したシートセンサシステムの概略構成図であり、(b)はそのシートセンサの断面構成を示す模式図である。
【図2】シートセンサのセンサ受圧面に設定した検出区画を示す説明図である。
【図3】(a)はシートセンサの1つの検出区画を示す説明図であり、(b)はその等価回路を示す回路図である。
【図4】(a)~(c)は荷重測定原理を説明するための模式図である。
【図5】(a)および(b)は荷重測定手順を示す説明図である。
【図6】(a)は実験装置の一例を示す模式図であり、(b)は荷重印加位置を示す説明図である。
【図7】測定されたせん断荷重ベクトルの分布状態および垂直荷重の分布状態を示す画面表示例を示す説明図である。
【図8】(a)は実験により得られた各ゾーンに生ずる電圧変化量とせん断荷重の関係を示す図表であり、(b)は実験により得られた電圧変化とせん断荷重の関係を示す図表であり、(c)は各ゾーンの位置を示す説明図である。
【図9】個別電極の配列パターンの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したシートセンサシステムおよびシートセンサの実施の形態を説明する。

【0021】
(全体構成)
図1(a)は本実施の形態に係るシートセンサシステムを示す概略構成図であり、図1(b)はそのシートセンサの断面構成を示す模式図である。図1(a)に示すように、シートセンサシステム1は、シートセンサ2、シートセンサ2に電力を供給する安定化電源3、シートセンサ2の出力電圧を検出する電圧検出器4、および、電圧検出器4による電圧検出値に基づき演算処理を行って、シートセンサ2のセンサ受圧面20の各部に作用する荷重を算出するコンピューターを中心に構成されるコントローラー5を備えている。

【0022】
図1(a)、(b)に示すように、シートセンサ2は、下側電極基板21の上側表面に形成した共通電極22と、上側電極基板23の下側表面に形成した多数個の個別電極24との間に、感圧導電性材料からなる一定厚さの感圧シート25が挟まれた構成となっている。上側電極基板23の上側表面には、弾性材料からなる表面プレート26が積層されている。この表面プレート26の上側表面がセンサ受圧面20である。

【0023】
下側電極基板21に形成されている共通電極22は、センサ受圧面20を包含する範囲に亘って形成されている。本例の共通電極22は、図1(a)に示すように、太線枠で示す矩形輪郭のセンサ受圧面20を包含する大きさの太い破線枠で示す矩形輪郭の電極層である。これに対して、個別電極24のそれぞれは同一の大きさの正方形輪郭の電極である。個別電極24は、図1(a)に示すように、縦横に同一の間隔pで格子状に配列されており、個々の個別電極24は電気的に相互に分離している。

【0024】
図において、センサ受圧面20に対応する矩形領域に、36個の正方形の個別電極24が6行6列の格子を形成する状態に配列されている。センサ受圧面20の形状は矩形に限定されるものではなく、多角形、円形等の任意の形状にすることができる。同様に、個別電極24の形状は矩形に限定されるものではなく、多角形、円形、線状などの各種の形状とすることができる。また、個別電極24の配列個数も36個に限定されるものではないことは勿論である。

【0025】
感圧シート25を形成している感圧導電性材料には、例えば、グラッシーカーボン(以下、「GC」と呼ぶ。)およびGCに気相成長炭素繊維(以下「VGCF」と呼ぶ。)を添加した複合材料GC/VGCFを用いることができる。GC/VGCFは、グラッシーカーボンと同様に、高温で使用可能な導電性材料として有効である。また、GCおよびGC/VGCFは、導電性複合材料であるので、電圧を印加しながら荷重を加えると、その電気抵抗値が変化する。例えば、GCにVGCFを質量比で12wt%添加したGC/20wt%VGCFを用いることができる。また、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、エンジニ
アリングプラスチック等の任意の樹脂をマトリクス材(母材)とし、表1に示すフィラー材を添加した複合材料を使用することができる。なお、複合材料中に添加される形状としては、フレーク状、粉末状、繊維状などが適用可能である。

【0026】
【表1】
JP2015169532A_000006t.gif

【0027】
下側電極基板21、上側電極基板23には、フレキシブルフィルム、例えば、ポリエステル製のフレキシブルフィルムを用いることができる。また、個別電極24は、上側電極基板23にエッチング処理によって形成することができる。表面プレート26は例えばシリコーンゴムから形成することができる。これにより、柔軟な積層フィルム状のシートセンサ2が構成される。ここで、場合によっては、表面プレート26を省略することも可能である。また、平坦な表面にシートセンサ2を設置して検出を行う場合には、センサ受圧面2aとは反対側の電極基板としてガラスエポキシ製の剛性の基板を用いることも可能である。

【0028】
この構成のシートセンサ2には、共通電極22と個別電極24のそれぞれとの間に直流電圧を印加するための給電用の配線パターンが作り込まれている。給電用の配線パターンはセンサ端子部27から給電ライン28を介して安定化電源3に接続される。安定化電源3によって、感圧シート25を挟み対峙している共通電極22と個別電極24のそれぞれの間(対向電極間)に、一定の直流電圧が印加される。感圧シート25の各部の電気抵抗値は、センサ受圧面20から加えられる荷重によって変動する。

【0029】
また、シートセンサ2には、荷重印加によって変動する共通電極22と個別電極24のそれぞれの間の電圧値を検出するための検出用の配線パターンが作り込まれている。検出用の配線パターンはセンサ端子部29から検出ライン30を介して電圧検出器4に接続される。電圧検出器4によって各対向電極間の電圧が検出される。コントローラー5では、演算部51において、各対向電極間の検出電圧値に基づき、センサ受圧面20に加わる任意荷重における垂直荷重成分の大きさ、センサ受圧面20に沿った方向のせん断荷重成分の大きさ及び方向を、以下に述べるように、4個の個別電極24を含む検出区画毎に算出する。

【0030】
図2は、シート受圧面20における荷重検出用の検出区画を示す説明図である。コントローラー5の演算部51では検出区画を単位として荷重検出を行う。本例では、縦横に隣り合って配置されている4個の個別電極24を一つの荷重検出単位としているので、概念的には、4個の個別電極24を含むように、センサ受圧面20を同一形状の25個の検出区画に分けている。すなわち、実線枠で示すように、センサ受圧面20は9個の検出区画20Aが形成されていると共に、破線枠で示すように、隣接する実線枠の検出区画に重なる状態に15個の検出区画20Bが形成されている。センサ受圧面20に任意荷重が加わった場合において、検出区画20(n)(n=1~25)のそれぞれについて、4個の個別電極24からの検出電圧値に基づき、後述のように垂直荷重成分の大きさ、せん断荷重成分の大きさ及び方向を算出可能である。

【0031】
4個の個別電極を備えた独立のセンサを、同一のセンサ受圧面20に配置する場合には、図2において実線枠で示すように、3行3列の9個のセンサによって9か所の検出区画20Aにおいてのみ荷重検出が可能である。本例の場合には、実線枠および破線枠で示すように、同一のセンサ受圧面20上において、5行5列の25か所の検出区画20A、20Bにおいて荷重検出が可能になる。換言すると、同一個数の個別電極24を用いて、検出の分解能を高めることができる。

【0032】
(荷重測定原理)
次に、図3、図4を参照して、各検出区画においての荷重測定の原理を説明する。図3(a)はシートセンサ2における一つの検出区画20(n)(n=1~25)を取り出して示す説明図である。この図に示すように、検出区画20(n)において、受圧面に平行で相互に直交する方向をそれぞれx方向およびy方向とし、これらに直交する方向(センサ受圧面2aに直交する方向)をz方向とする。検出区画20(n)の中心からx方向の一方を正方向、同様に中心からy方向の一方を正方向とし、検出区画20(n)におけるx方向およびy方向の正方向をゾーン(zone)1と定義し、検出区画20(n)の中心をz方向に延びる中心軸線を中心として反時計回りに、ゾーン(zone)2、ゾーン(zone)3、ゾーン(zone)4と定義する。

【0033】
図3(b)は、シートセンサシステム1の検出区画20(n)を含む部分の等価回路を示す回路図である。Vは、安定化電源3の電圧であり、Rは分圧用の抵抗を示し、R~Rは感圧シート25における個別電極24mのそれぞれに対応する部位における可変抵抗を示し、V~Vは、共通電極22と4つの個別電極24m(m=1~4)のそれぞれとの間の電位差を示す。各ゾーンmの電圧変化量をdVmとすると、dVm=V-Vmで表される。

【0034】
図4(a)は、検出区画20(n)に加えられる任意荷重Pと各ゾーン1~4の電圧変化量の関係を示す模式図である。ゾーン1~4に作用する荷重P~Pはベクトル量として、電圧変化量dV~dVを用いて次式で表される。
【数4】
JP2015169532A_000007t.gif

【0035】
また、任意荷重Pは各ゾーンmに加わる荷重P~Pの総和であり、任意荷重Pは電圧の変化量dV~dVを用いて、次のように表される。
【数5】
JP2015169532A_000008t.gif

【0036】
ここで、図4(b)に示すように、任意荷重Pはx、y、z方向の成分に分解でき、z方向の成分が垂直荷重に相当し、x、y方向の成分の合力がせん断荷重に相当する。x、y、z方向の成分を、それぞれPx、Py、Pzとすると、任意荷重Pは各成分Px、Py、Pzを用いて、次式で表される。
【数6】
JP2015169532A_000009t.gif

【0037】
したがって、垂直荷重Pnは、次の式で示すように、各ゾーン1~4の電圧変化量の総和に基づき算出できる。
【数7】
JP2015169532A_000010t.gif

【0038】
また、せん断荷重Ptは、次の式に示すように、任意荷重Pのx、y成分Px、Pyを
用いて表すことができ、成分Px、Pyは各ゾーン1~4の電圧変化量dV~dVを用いて表すことができる。よって、せん断荷重Ptは、各ゾーン1~4の電圧変化量ΔVに基づき算出できる。
【数8】
JP2015169532A_000011t.gif

【0039】
さらに、図4(c)に示すように、せん断荷重Ptの方向をx方向から反時計回りの角度φで表すと、次の式に示すように、成分PyとPxの比に基づき、せん断荷重Ptの方向φを求めることができる。なお、xy平面に対する任意荷重Pの作用方向は、任意荷重Pの垂直成分である垂直荷重Pnと水平成分であるせん断荷重Ptの比から同様に求めることができる。
【数9】
JP2015169532A_000012t.gif

【0040】
(荷重測定手順の例)
シートセンサシステム1を用いた具体的な荷重測定に当っては、シートセンサ2において、センサ受圧面20に任意荷重を加えた場合における、検出区画20(n)の4つのゾーンに生ずる電圧変化量dVmと、発生するせん断荷重Ptとの関係、検出区画20(n)に発生した電圧変化ΔVとせん断荷重Ptとの関係、センサ受圧面20の荷重印加位置に対する各検出区画の電圧変化の関係等を、予め測定しておく。測定によって得られた関係に基づき、上記の各式に基づく垂直荷重の大きさ、せん断荷重の大きさ、方向を算出するための算出式を設定する。コントローラー5の演算部51においては、各検出区画20(n)における各ゾーン1~4から検出される検出電圧の変化dVmに基づき、垂直荷重Pnの算出、各検出区画20(n)に生ずる電圧変化量ΔVに基づくせん断荷重Ptの大きさの算出、およびせん断荷重Ptの方向の算出等を行う。

【0041】
図5には具体的な荷重測定手順の一例を示してある。例えば、図5(a)に示すように、矩形のセンサ受圧面20の角に位置する実線で囲む検出区画20(1)の4つの個別電極24(1.1)、24(1.2)、24(2.1)、24(2.2)の検出電圧に基づき、当該検出区画20(1)に作用する垂直荷重Pn(1)とせん断荷重Pt(1)を算出する。

【0042】
次に、図5(b)に示すように、センサ受圧面20の幅方向Wに、個別電極1個分だけずれた位置において、4つの個別電極24(1.2)、24(1.3)、24(2.2)、24(2.3)を含む実線で囲む検出区画20(2)に作用する垂直荷重Pn(2)とせん断荷重Pt(2)を算出する。

【0043】
このようにして、センサ受圧面20において、その幅方向Wおよび縦方向Lに沿って、4個ずつの個別電極24を含む25個の検出区画20(n)について、順次に、垂直荷重Pnとせん断荷重Ptを算出する。これにより、センサ受圧面20における25か所の位置において荷重検出を行うことができる。先に、図2を参照して説明したように、4つの個別電極24を備えた独立したセンサをセンサ受圧面20に配置して荷重検出を行う場合
には、検出箇所は、9か所だけである。したがって、本例のシートセンサシステム1によれば、従来に比べて高い分解能でせん断荷重の検出が可能になる。

【0044】
(実験例)
図6(a)はシートセンサシステム1を用いた実験装置の模式図であり、図6(b)は荷重負荷位置を示す模式図である。実験装置100は、XYステージ101上の6軸ロードセル102に、シートセンサシステム1のシートセンサ2を載せ、この上から、載荷機構103を用いて荷重を加えた。載荷機構103の圧子104の直径は20mm、垂直荷重Pnを20Nで一定とし、荷重印加位置をシートセンサ2のセンサ受圧面2aの中心とした。x方向のせん断荷重Pxを0Nから徐々に増加させながら、各個別電極24の検出電圧に基づき、各検出区画20(n)に発生する垂直荷重Pnおよびせん断荷重Ptの分布状態を算出した。シートセンサ2としては、図6(b)に示すように、センサ受圧面2aに縦横8個の個別電極24を配置した構成のものを使用した。

【0045】
図7には実験により得られたせん断荷重ベクトルの分布と垂直荷重の分布の画面表示例を示す説明図である。図7(a1)、(a2)は、垂直荷重Pn=20Nでせん断荷重Px0Nの場合であり、図7(b1)、(b2)は、垂直荷重Pn=20N、せん断荷重Px=6.5Nの場合であり、図7(c1)(c2)は、垂直荷重Pn=20N、せん断荷重Px=12.1Nの場合の結果である。

【0046】
図8(a)は、実験により測定されたシートセンサ2の中心の検出区画20(n)における4つのゾーン1~4に生ずる電圧変化量ΔVmとせん断荷重Pxの関係を示すグラフであり、図8(b)は、電圧変化Vpxとせん断荷重Pxの関係を示す図表である。図8(c)に示すように、測定対象の検出区画20(n)における4つのゾーンは、ゾーン(4.4)、ゾーン(4.5)、ゾーン(5.5)、ゾーン(5.4)である。これらのゾーンに生ずる電圧変化量をΔV(4.4)、ΔV(4.5)、ΔV(5.5)、ΔV(5.4)とすると、次式に示すように、検出区画20(n)に現れる電圧変化Vpxが算出される。
【数10】
JP2015169532A_000013t.gif

【0047】
図8(a)、(b)の図表から分かるように、電圧変化量ΔVmとせん断荷重Pxの間には所定の相関が確認され、電圧変化Vpxとせん断荷重Pxの間にも所定の相関が確認される。よって、本例のシートセンサシステム1を用いて、シート受圧面20に加わる荷重によって各検出区画20(n)に生ずる垂直荷重の大きさは勿論のこと、せん断荷重の大きさ及び方向(分布)が測定可能であることが分かる。

【0048】
(その他の実施の形態)
なお、上記のシートセンサ2では、シート受圧面20にマトリックス状に個別電極を配置し、各検出区画20(n)には縦横に2個ずつの個別電極が含まれており、任意の方向に作用するせん断荷重を検出可能である。一つの検出区画に含まれる個別電極の数は、2個、3個あるいは5個以上であってもよい。

【0049】
また、検出対象のせん断力の方向が一方向である場合には、当該方向に複数の個別電極が配列された検出区画を構成すればよい。例えば、図9に示すように、x方向に直線状に複数個の個別電極24が配列されている場合には、x方向に作用するせん断荷重を測定することができる。この場合には、2個の個別電極20(1)、20(2)の検出電圧値に基づき、これらを含む検出区画20(1)に作用する垂直荷重およびx方向のせん断荷重
を算出し、次に、個別電極1個分だけx方向にずれた次の検出区画において荷重の算出を行う動作を繰り返して行えば良い。勿論、検出区画として、3個以上の個別電極を含む検出区画を設定して、荷重演算を行っても良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
1 シートセンサシステム
2 シートセンサ
3 安定化電源
4 電圧検出器
5 コントローラー
20 センサ受圧面
21 下側電極基板
22 共通電極
23 上側電極基板
24 個別電極
25 感圧シート
26 表面プレート
27、29 センサ端子部
28 給電ライン
30 検出ライン
51 演算部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図5】
2
【図6】
3
【図9】
4
【図3】
5
【図4】
6
【図7】
7
【図8】
8