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明細書 :光応答性溶液、その調製方法及び金属ナノ粒子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-187299 (P2015-187299A)
公開日 平成27年10月29日(2015.10.29)
発明の名称または考案の名称 光応答性溶液、その調製方法及び金属ナノ粒子の製造方法
国際特許分類 B22F   9/00        (2006.01)
B22F   9/24        (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
FI B22F 9/00 B
B22F 9/24 Z
B82Y 30/00
B82Y 40/00
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2014-065291 (P2014-065291)
出願日 平成26年3月27日(2014.3.27)
発明者または考案者 【氏名】酒井 俊郎
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100117226、【弁理士】、【氏名又は名称】吉村 俊一
審査請求 未請求
テーマコード 4K017
Fターム 4K017AA03
4K017AA08
4K017BA02
4K017CA01
4K017CA08
4K017EJ01
4K017EK08
4K017FB04
要約 【課題】光を照射すると分散し、光を遮断すると沈殿する性質を持つ光応答性溶液、及びその調製方法を提供する。
【解決手段】水素ラジカルで還元された平均粒径2nm以上100nm以下の金属ナノ粒子と溶媒とを含む光応答性溶液であって、光の照射によって溶媒中に金属ナノ粒子が分散し、光を遮蔽することによって溶媒中で金属ナノ粒子が沈殿する。この金属ナノ粒子は球状粒子であることが好ましい。この光応答性溶液は、生じた水素ラジカルを還元種として金属塩を還元し、平均粒径2nm以上100nm以下の範囲内の金属ナノ粒子を前記溶液中で合成して得られる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
水素ラジカルで還元された平均粒径2nm以上100nm以下の金属ナノ粒子と溶媒とを含み、前記金属ナノ粒子は、光の照射によって前記溶媒中に分散し、光を遮蔽することによって前記溶媒中で沈殿することを特徴とする光応答性溶液。
【請求項2】
前記金属ナノ粒子が、球状粒子又は略球状粒子である、請求項1に記載の光応答性溶液。
【請求項3】
金属塩と水とを含む溶液に超音波を照射して水素ラジカルを生じさせ、生じた水素ラジカルを還元種として金属塩を還元し、平均粒径2nm以上100nm以下の範囲内の金属ナノ粒子を前記溶液中で合成することを特徴とする光応答性溶液の調製方法。
【請求項4】
前記金属ナノ粒子が、球状粒子又は略球状粒子である、請求項3に記載の光応答性溶液の調製方法。
【請求項5】
金属塩と水とを含む溶液に超音波を照射して水素ラジカルを生じさせ、生じた水素ラジカルを還元種として金属塩を還元し、平均粒径2nm以上100nm以下の範囲内の金属ナノ粒子を前記溶液中で合成し、前記金属ナノ粒子を含む溶液を遮光して前記金属ナノ粒子を沈殿させて得ることを特徴とする金属ナノ粒子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光を照射すると分散し、光を遮断すると沈殿する性質を持つ光応答性溶液、その調製方法、及び金属ナノ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノスケールの金属微粒子(金属ナノ粒子という。)は、バルクにはないユニークな物理的性質を発現することが知られており、ナノテクノロジー分野を含む様々な分野で大きな関心を集めている。そうした物理的性質は、金属ナノ粒子のサイズや形状に大きく依存することから、サイズや形状を自在に制御することができる金属ナノ粒子の合成法の研究開発が盛んに行われている。
【0003】
金属ナノ粒子の代表的な合成法として、有機溶媒を使用する逆ミセル法が挙げられる。逆ミセル法は、溶液中で形成する金属ナノ粒子のサイズ、形状、分散量等を高度に制御する方法として広く利用されているが、有機溶媒を使用していることから、溶媒の水への転換が求められるようになってきている。
【0004】
水系での金属ナノ粒子の合成法としては、一般に、界面活性剤や水溶性ポリマー中に金属塩を溶解し、還元剤(水素化ホウ素ナトリウムやヒドラジン等)によって金属イオンを還元して金属ナノ粒子を合成する湿式化学還元法が行われている。このときの金属イオンの還元は、加熱、光照射、超音波照射、マイクロ波照射等のような外部エネルギーを印加して行う場合が多い。これらの方法も、水溶液中に形成される金属ナノ粒子のサイズ、形状、分散量を高度に制御する方法として知られている。
【0005】
上記方法で合成された金属ナノ粒子は、一般にアルカンチオール等の配位子、界面活性剤等の両親媒性分子、ポリマー等の保護剤によって覆われている。金属ナノ粒子を覆う配位子、両親媒性分子、ポリマー等は、金属ナノ粒子の機能や性能を低下させる。例えば、金属ナノ粒子を集積した電子デバイス等では、配位子や両親媒性分子等の存在により、電気伝導性が低下する。そのため、金属ナノ粒子を覆う配位子や両親媒性分子等を除去しなければならない。
【0006】
しかし、配位子や両親媒性分子等を除去する一般的な方法である焼成処理を行うと、電子デバイスの基板であるプラスチック基板が破損してしまため、焼成処理によって除去することができない。また、環境浄化用触媒や燃料電池用触媒等の触媒として利用される金属ナノ粒子も焼成処理によって配位子や両親媒性分子等を除去することが行われているが、その焼成処理を行うと、金属ナノ粒子が融合(シンタリング)してしまい、触媒機能が低下するという問題が生じる。そのため、金属ナノ粒子のサイズ、形状、分散量を高度に制御することができるとともに、配位子や両親媒性分子等を使用しない金属ナノ粒子の合成法が要請されている。
【0007】
こうした要請に対し、本発明者は、特許文献1において、界面活性剤や両親媒性高分子を用いることなく形状を制御できる金属微粒子の製造方法を提供した。この製造方法は、金属塩溶液中の金属塩を還元して所定の形状の金属微粒子とする金属微粒子の製造方法であって、前記金属塩濃度、前記金属塩溶液中への超音波照射周波数、前記金属塩溶液中への光照射、前記金属塩溶液のpH、前記金属塩溶液中の温度のうち少なくとも1条件と還元後の金属微粒子の所定の形状の予め求めた相関関係に基づき、所望の形状の金属微粒子に製造することを特徴としている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2009-57594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、配位子や両親媒性分子等を使用せずに金属ナノ粒子を合成できる新しい合成法の研究を継続して行っている過程で、合成した金属ナノ粒子を含む溶液が、光を照射すると分散し、光を遮断すると沈殿する性質を持つことを見出し、その性質を安定して生じさせることができる溶液の調製方法についてさらに研究した。
【0010】
本発明は、そうした研究の結果得られたものであって、その目的は、光を照射すると分散し、光を遮断すると沈殿する性質を持つ光応答性溶液、その光応答性溶液の調製方法、及び金属ナノ粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る光応答性溶液は、水素ラジカルで還元された平均粒径2nm以上100nm以下の金属ナノ粒子と溶媒とを含み、前記金属ナノ粒子は、光の照射によって前記溶媒中に分散し、光を遮蔽することによって前記溶媒中で沈殿することを特徴とする。
【0012】
この発明は、金属塩を還元剤で還元せず、界面活性剤も含まない方法で合成された金属ナノ粒子を含む光応答性溶液であり、水素ラジカルで還元された平均粒径2nm以上100nm以下の範囲内の金属ナノ粒子と溶媒とを含むことにより、光スイッチング機能を示す。その光スイッチング機能は、光の照射によって溶媒中に金属ナノ粒子が分散し、光を遮蔽することによって溶媒中で金属ナノ粒子が沈殿し、さらに光を照射すると再び溶媒中に金属ナノ粒子が分散するという特異な性質を奏する。
【0013】
本発明に係る光応答性溶液において、前記金属ナノ粒子が、球状粒子又は略球状粒子であることが好ましい。この発明によれば、より分散が良好になる。
【0014】
(2)本発明に係る光応答性溶液の調製方法は、金属塩と水とを含む溶液に超音波を照射して水素ラジカルを生じさせ、生じた水素ラジカルを還元種として金属塩を還元し、平均粒径2nm以上100nm以下の範囲内の金属ナノ粒子を前記溶液中で合成することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、従来のように金属塩と還元剤と保護剤と溶媒とを用いる湿式化学還元法とは異なり、金属塩と水とを含む溶液に超音波を照射して金属ナノ粒子を得ることができるので、必要最小限の原料から必要な金属ナノ粒子を極めて簡単な方法で得ることができる。また、水中で合成された金属ナノ粒子は、分散剤や界面活性剤等の有機化学種を含まなくても光の照射により分散し、遮光により沈殿するという特異な現象を生じることができる。
【0016】
本発明に係る光応答性溶液の調製方法において、前記金属ナノ粒子が、球状粒子又は略球状粒子であることが好ましい。この発明によれば、より分散が良好な光応答性溶液を製造できる。
【0017】
(3)本発明に係る金属ナノ粒子の製造方法は、金属塩と水とを含む溶液に超音波を照射して水素ラジカルを生じさせ、生じた水素ラジカルを還元種として金属塩を還元し、平均粒径2nm以上100nm以下の範囲内の金属ナノ粒子を前記溶液中で合成し、前記金属ナノ粒子を含む溶液を遮光して前記金属ナノ粒子を沈殿させて得ることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、従来のように金属塩と還元剤と保護剤と溶媒とを用いる湿式化学還元法とは異なり、金属塩と水とを含む溶液に超音波を照射して金属ナノ粒子を合成し、合成した金属ナノ粒子含有溶液を遮光して溶液中に分散する金属ナノ粒子を沈殿させて得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光を照射すると分散し、光を遮断すると沈殿する性質を持つ光応答性溶液、その光応答性溶液の調製方法、及び金属ナノ粒子の製造方法を提供することができる。特に、従来のように金属塩と還元剤と保護剤と溶媒とを用いる湿式化学還元法で得たものとは異なり、金属塩と水とを含む溶液に超音波を照射して金属ナノ粒子を得ることができるので、必要最小限の原料から必要な金属ナノ粒子を極めて簡単な方法で得ることができる。また、水中で合成された金属ナノ粒子は、分散剤や界面活性剤等の有機化学種を含まなくても光の照射により分散し、遮光により沈殿するという特異な現象を生じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る光応答性溶液を構成する金属ナノ粒子の写真であり、(A)は5℃、(B)は10℃、(C)は20℃、(D)は40℃、(E)は50℃、(F)は60℃のときを示している。
【図2】実施例1の光応答性溶液を明所に置いたときの変化(A)と暗所に置いたときの変化(B)である。
【図3】図2に示した0日間~10日間の各試料のUV-visスペクトル結果であり、(A)は明所に置いた試料のUV-visスペクトルであり、(B)は暗所に置いた試料のUV-visスペクトルである。
【図4】図3に示すUV-visスペクトルの吸収ピーク(波長540nm)の経時変化を示すグラフである。
【図5】暗所に置いたときのゼータ電位の測定結果である。
【図6】比較例1の溶液を明所に置いたときの変化(A)と暗所に置いたときの変化(B)である。
【図7】図6に示した0日間~7日間の各試料のUV-visスペクトル結果であり、(A)は明所に置いた試料のUV-visスペクトルであり、(B)は暗所に置いた試料のUV-visスペクトルである。
【図8】図7に示すUV-visスペクトルの吸収ピーク(波長540nm)の経時変化を示すグラフである。
【図9】暗所に置いたときのゼータ電位の測定結果である。
【図10】再び明所に置いて分散状態に変化したときの写真である。
【図11】再び明所に置いて分散状態になったときの吸収スペクトルと最大吸収ピークの吸収強度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る光応答性溶液、その光応答性溶液の調製方法及び金属ナノ粒子の製造方法について詳しく説明する。本発明は、その要旨に範囲内であれば、以下の実施形態に限定されない。

【0022】
本発明に係る光応答性溶液は、水素ラジカルで還元された平均粒径2nm以上100nm以下の金属ナノ粒子と溶媒とを含み、その金属ナノ粒子は、光の照射によって前記溶媒中に分散し、光を遮蔽することによって前記溶媒中で沈殿することを特徴とする。この光応答性溶液の調製方法は、生じた水素ラジカルを還元種として金属塩を還元し、平均粒径2nm以上100nm以下の範囲内の金属ナノ粒子を前記溶液中で合成することに特徴がある。

【0023】
得られた光応答性溶液は、金属塩を還元剤で還元せず、界面活性剤も含まない方法で合成された金属ナノ粒子を含む光応答性溶液であり、水素ラジカルで還元された上記平均粒径範囲の金属ナノ粒子と溶媒とを含むことにより、光スイッチング機能を示す。その光スイッチング機能は、光の照射によって溶媒中に金属ナノ粒子が分散し、光を遮蔽することによって溶媒中で金属ナノ粒子が沈殿するという特異な性質を奏する。そして、さらに光を照射すると再び溶媒中に金属ナノ粒子が分散する。

【0024】
こうした特異な性質は、配位子や両親媒性分子等の有機化学種を使用せずに金属ナノ粒子を合成できる新しい合成法の研究を継続して行っている過程で見出したものであり、本発明は、そうした特異な性質を安定して生じさせることができる溶液の調製方法について研究して成し得たものである。

【0025】
以下、本発明に係る光応答性溶液及びその調製方法の構成要素について詳しく説明する。

【0026】
(金属ナノ粒子)
金属ナノ粒子は、平均粒径2nm以上、100nm以下の範囲内の粒子である。この範囲内の粒子は、分散剤や両親媒性分子等の有機化学種を含まない水溶液中での光存在時の分散や遮光時の沈殿が良好である。平均粒径が100nmを超えると、光存在下であっても分散性が低下して沈殿気味になることがある。なお、平均粒径の下限値を2nmにしたのは、2nm未満の粒子は十分に得ることができないために便宜的に設定したものであり、特性上の限界値ではない。

【0027】
図1(A)~(D)に示すように、Auナノ粒子の平均粒径が2nm以上100nm以下の範囲内の場合は、光存在下の水溶液中での良好な分散を確認でき、遮光時の良好な沈殿を確認できる。一方、図1(E)と(F)に示すように、Auナノ粒子の平均粒径が凝集したり連結したりして100nmを超える場合は、光存在下であっても水溶液中で沈殿気味になる。

【0028】
金属ナノ粒子の形状は特に限定されないが、球状、略球状、棒状、略棒状、三角板状、略三角板状、六角板状、略六角板状のうちいずれか1又は2以上の形状であればよい。これらのうち、球状に近い形状、例えば球状、略球状、多角形状(六角板状、略六角板状等)の金属ナノ粒子は、光存在下での良好な分散性と、遮光下での良好な沈殿性を示す点で好ましい。

【0029】
(金属ナノ粒子の合成)
金属ナノ粒子は、原料である金属塩が水素ラジカルで還元されて合成される。詳しくは、上記の平均粒径の範囲内の金属ナノ粒子は、原料である金属塩が水素ラジカルを還元種として還元され、水溶液中で合成される。

【0030】
水素ラジカルは、還元種として機能し、溶媒である水に超音波を照射することにより、HO→H・+OH・として生成できる。この水素ラジカル(H・)が、例えば塩化金であるAlCl4-を還元するように作用し、AlCl4-+3H・→Au0+4Cl-+3H+となって、金ナノ粒子を合成できる。超音波は、任意の周波数に調整して照射することができるが、200kHz以上、1000kHz以下の範囲内であると好適である。なお、後述する実施例では、200kHzや950kHzを適用しているが、これに限定されない。超音波を照射する超音波照査装置としては、各種のものを用いることができる。

【0031】
溶媒は、水である。水は、水素ラジカを発生させることができる。水の詳しい種類は特に限定されず、化学合成に一般に用いられる蒸留水、純水、超純水、イオン交換水等であればよい。

【0032】
金属塩は、水素ラジカルで還元されて金属ナノ粒子を合成できるものであれば特に限定されず、各種のものを適用できる。例えば、金、銀、白金、パラジウム等の貴金属の金属塩、銅、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、クロミウム、マンガン、マグネシウム、カドミウム、アルミニウム、錫、タングステン等の金属塩を挙げることができる。

【0033】
具体的には、Ag+,Ag(CN)2-,AlCl4-,Au3+,AuCl4-,AuBr4-,PtCl62-,Mg2+,Mn2+,Co2+,Ni2+,Cu2+,Zn2+,Cd2+,Fe3+,Al3+,Pd2+,PdCl42-,Sn2+,SnO32-,Ga3+,WO42-)等のように、溶液中でイオンになることができる金属塩、AgAsF6,AgBF4,AgBr,AgCl,AgClO3,AgClO4,AgF,AgF2,AgF6P,AgF6Sb,AgI,AgIO3,AgMnO4,AgNO2,AgNO3,AgO3V,AgO4Re,Ag2CrO4,Ag2O,Ag23S,Ag24S,Ag2S,Ag2Se,Ag2Te,Ag3AsO4,Ag3AsO4,Ag3AsO4,Ag34P,Ag8164,KAg(CN)2,CH3CO2Ag,AgCN,AgCNO,AgCNS,Ag2CO3、AlCl312,AlCl4Cs,AlCl4K,AlCl4Li,AlCl4Na,AlCl2Ti3,AlCsO4Si,AlCsO6Si2,AlCsO82,AlF4K,AlF6Na3,AlKO82,AlLiO2,AlN39,AlO4P,AlO93,Al2BaO4,Al2MgO4,Al25Ti,Al3123,Al6Bi212,Al613Si2,H4AlLi,H4AlNO82,AuBr3,KAuBr4,NaAuBr4,AuCl3,KAuCl4,NaAuCl4,HAuCl4,AuI3,Au23,HAuCl4N,AuCN、CoF2,CoF3,CoI2,CoLiO2,CoN26,CoN6Na312,CoO,CoO4S,CoSe,Co34,Co382,Co5Sm,Co7Sm2,H8CoN282,H12CoN99,H15Cl3CoN5,CoCO3、CdCl2,CdCl28,CdF2,CdI2,CdMoO4,CdN26,CdO3Zr,CdO4S,CdO4W,CuF2,CuI,CuMoO4,CuN26,CuNb26,CuO,CuO3Se,CuO4S,CuO4W,CuS,CuSe,CuTe,Cu2HgI4,Cu2O,Cu272,Cu2S,Cu2Se,Cu2Te,H8Cl4CuN2,H12CuN44S,CuCN,CuCNS、MgMn28,MgMoO4,MgN26,MgO32,MgO3Ti,MgO3Zr,MgO4S,MgO4W,Mg272,Mg382,H4MgNO4P,MnMoO4,MnN26,MnNoO,MnO4S,H4MnO42,NiO,NiO3Ti,NiO4S,H42NiO62,H2PtCl6,H6Cl22Pt,H6Cl42Pt,H644Pt,H6Na26Pt,H8Br62Pt,H8Cl42Pt,H8Cl62Pt,H86Pt,H12Cl24Pt,H12Cl44Pt2,H1266Pt,H1442Pt,C22Pt,H6Br22Pd,H6Cl22Pd,H622Pd,H644Pd,H8Cl42Pd,H8Cl62Pd,H12Br24Pd,H12Cl24Pd,H12Cl44Pd2,H1266Pd,C22Pd,Pd(OAc)2,Pd(NO32,H4FeNO82,H8FeN282,FeCl3,C22Zn,H2SnO3,Na2SnO3,SnCl・2H2O,SnO,SnSO4,SnO2,GaBr3,GaCl3,GaI3,Ga(NO33・H2O,Ga(SO43・H2O,Ga2(SO43,GaAs,GaN,GaP,GaS,Ga23,GaSe,GaSe,Ga2Se3,GaTe,Ga2Te3,GaO2H,H2WO4等を挙げることができる。これらのうち好ましくは、AgNO3,KAuCl4,NaAuCl4,HAuCl4,H2PtCl6,Pd(OAc)2,Pd(NO32,Ga(NO33・H2O等を挙げることができる。

【0034】
金属塩の濃度は、特に限定されないが、溶媒である水中における金属塩の濃度が10mM以下であることが好ましい。

【0035】
本発明では、金属ナノ粒子の合成の際に、分散剤、両親媒性分子、界面活性剤等の有機化学種を添加しない点にも特徴がある。その結果、金属ナノ粒子を合成した後に、分散剤、両親媒性分子、界面活性剤等の有機化学種を除去する必要がなく、また、副生成物も生じないので、その後の廃棄処理等が不要になるという利点がある。

【0036】
(光応答性溶液)
光応答性溶液は、上記したように、水素ラジカルで還元された平均粒径2nm以上100nm以下の金属ナノ粒子と溶媒とを含み、その金属ナノ粒子は、光の照射によって前記溶媒中に分散し、光を遮蔽することによって前記溶媒中で沈殿する。この光応答性溶液の調製方法は、上記したように、生じた水素ラジカルを還元種として金属塩を還元し、平均粒径2nm以上100nm以下の範囲内の金属ナノ粒子を前記溶液中で合成し、合成された金属ナノ粒子を溶液中にそのまま含む状態で光応答性溶液とすることができる。

【0037】
この光応答性溶液は、光スイッチング機能を示す点に特徴があり。光スイッチング機能は、光の照射によって溶媒中に金属ナノ粒子が分散し、光を遮蔽することによって溶媒中で金属ナノ粒子が沈殿するという特異な性質を奏する。そして、さらに光を照射すると再び溶媒中に金属ナノ粒子が分散する。

【0038】
(金属ナノ粒子の製造)
上記した知見から、金属ナノ粒子の製造方法を提案できる。すなわち、金属塩と水とを含む溶液に超音波を照射して水素ラジカルを生じさせ、生じた水素ラジカルを還元種として金属塩を還元し、平均粒径2nm以上100nm以下の範囲内の金属ナノ粒子を前記溶液中で合成し、前記金属ナノ粒子を含む溶液を遮光して前記金属ナノ粒子を沈殿させて得ることによって、金属ナノ粒子を製造することができる。この方法では、金属ナノ粒子を含む溶液を遮光するだけで、容器の底に沈殿させることができるので、沈殿した状態で溶媒である水を捨てれば、平均粒径2nm以上100nm以下の範囲内の極めて微細な金属ナノ粒子を容易に回収することができる。この方法は、金属ナノ粒子の製造方法であるが、金属ナノ粒子の沈殿方法と言い換えることもできる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0040】
[平均粒径と光分散性についての実験例1]
先ず、Auナノ粒子の平均粒径と光応答性の関係について検討した。塩化金酸四水和物(HAuCl・4HO)を金属塩として用い、超純水を溶媒として用いた。0.1mMに調整したHAuCl4水溶液(50mL)をアルゴンバブリングした後、その水溶液の温度を5℃、10℃、20℃、40℃、50℃、60℃の各温度にして、それぞれの水溶液に超音波(950kHz、300W)を8分間照射し、水素ラジカルを発生させるとともに、その水素ラジカルで還元反応を進行させ、金ナノ粒子を水中で合成した。得られたAuナノ粒子を含む水溶液を採取し、顕微鏡で観察した。その結果を図1に示す。図1中、(A)は5℃、(B)は10℃、(C)は20℃、(D)は40℃、(E)は50℃、(F)は60℃の結果である。
【実施例】
【0041】
図1(A)~(D)は、Auナノ粒子の平均粒径がいずれも2nm以上100nm以下の範囲内であり、光存在下の水溶液中での良好な分散を確認でき、遮光時の良好な沈殿を確認できた。一方、図1(E)と(F)は、Auナノ粒子の平均粒径が凝集したり連結したりして100nmを超えており、光存在下であっても水溶液中で沈殿気味になっていた。なお、平均粒径は、図1に示すように観察された顕微鏡画像から500個の金属ナノ粒子を無作為に測定し、その平均値で表したものである。
【実施例】
【0042】
[実施例1]
塩化金酸四水和物(HAuCl・4HO)を金属塩として用い、超純水を溶媒として用いた。0.1mMに調整したHAuCl4水溶液(50mL、20℃)をアルゴンバブリングした後、超音波(950kHz、300W)を8分間照射し、水素ラジカルを発生させるとともに、その水素ラジカルで還元反応を進行させ、金ナノ粒子を水中で合成し、実施例1に係る金ナノ粒子を含む光応答性溶液を得た。得られた光応答性溶液は、Auナノ粒子の表面プラズモン共鳴(SPR)に起因する赤色からピンク色であった。
【実施例】
【0043】
光応答性溶液を複数準備し、波長400nm~700nmの光を発する蛍光灯を照射し、1日ごとの光応答性溶液を観察した。その結果を、図2(A)に示す。また、光応答性溶液に光が当たらないように遮光し、1日ごとの光応答性溶液を観察した。その結果も図2(B)に示す。この結果より、明所に置いたときの光応答性溶液は、図2(A)に示すように10日経過しても沈殿が生じなかったが、暗所に置いたときの光応答性溶液は、図2(B)に示すように徐々に透明度が増して沈殿しているのが確認できた。
【実施例】
【0044】
図3は、図2に示した0日間~10日間の各試料のUV-visスペクトル結果であり、(A)は明所に置いた試料のUV-visスペクトルであり、(B)は暗所に置いた試料のUV-visスペクトルである。図3(A)に示すように、明所に置いた試料のUV-visスペクトルは、波長540nmに吸収ピークを持った全て同様のスペクトルであり、分散が維持していることが確認できた。一方、図3(B)に示すように、暗所に置いた試料のUV-visスペクトルは、波長540nmの吸収ピークが日数の経過とともに低下したことから、徐々に沈殿していくのが確認された。図4は、図3(A)(B)に示すUV-visスペクトルの吸収ピーク(波長540nm)の経時変化を示すグラフである。図4に示すように、明所に置いた試料の10日後の吸収ピークは、0日目の吸収ピークと同じで変化しなかったが、暗所に置いた試料の10日後の吸収ピークは、0日目の吸収ピークの50%になっていた。
【実施例】
【0045】
図5は、暗所に置いたときのゼータ電位の測定結果である。暗所に置いたときのゼータ電位は、-38mVから-19mVまで低下した(図5)が、明所に置いたときのゼータ電位は一定であった(図示しない)。この結果は、超音波還元法により調製された金ナノ粒子の表面電位が暗所で低下し、表面電荷が減っていることを意味している。表面電荷の低下は、ナノ粒子の静電反発力が低下して分散性が低下し、沈殿が進んでいるものと考えられる。暗所で表面電荷の低下がなぜ起こるかについては、明所下では、Auナノ粒子の表面プラズモン共鳴(SPR)により光を吸収して、Auナノ粒子の表面電荷が誘発されるが、暗所下では、吸収する光が存在しないため、Auナノ粒子の表面電荷が誘発されないためであるということが考察できる。なお、ゼータ電位の測定は、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子株式会社製、製品名:ELSZ-1000ZS)を用い、電気泳動光散乱法により測定した。
【実施例】
【0046】
[比較例1]
塩化金酸四水和物(HAuCl・4HO)を金属塩として用い、クエン酸を含む超純水を溶媒として用いた。1重量%のHAuCl4水溶液(0.5mL)と、1重量%のクエン酸ナトリウム4水溶液(2.5mL)と、超純水47mLとを80℃で撹拌し、アルゴンバブリングした後、クエン酸還元法によって金ナノ粒子を合成し、比較例1に係る金ナノ粒子を含む溶液を得た。得られた溶液は、Auナノ粒子の表面プラズモン共鳴(SPR)に起因する赤色からピンク色であった。
【実施例】
【0047】
溶液を複数準備し、波長400nm~700nmの光を発する蛍光灯を照射し、1日ごとの光応答性溶液を観察した。その結果を、図6(A)に示す。また、その溶液に光が当たらないように遮光し、1日ごとの溶液を観察した。その結果も図6(B)に示す。この結果より、明所に置いたときも暗所に置いたときも、いずれも沈殿が生じなかった。
【実施例】
【0048】
図7は、図6に示した0日間~7日間の各試料のUV-visスペクトル結果であり、(A)は明所に置いた試料のUV-visスペクトルであり、(B)は暗所に置いた試料のUV-visスペクトルである。図7(A)に示すように、明所に置いた試料のUV-visスペクトルは、波長540nmに吸収ピークを持った全て同様のスペクトルであり、分散が維持していることが確認できた。また、図7(B)に示すように、暗所に置いた試料のUV-visスペクトルも波長540nmに吸収ピークを持った全て同様のスペクトルであり、分散が維持していることが確認できた。図8は、図7(A)(B)に示すUV-visスペクトルの吸収ピーク(波長540nm)の経時変化を示すグラフである。図8に示すように、明所に置いた試料及び暗所に置いた試料のいずれも、7日後の吸収ピークは0日目の吸収ピークと同じで変化しなかった。
【実施例】
【0049】
図9は、暗所に置いたときのゼータ電位の測定結果である。暗所に置いたときのゼータ電位は、-55mV付近で一定していた。この結果は、クエン酸還元法により調製された金ナノ粒子の表面電位が暗所でも変化せず、表面電荷に変動がないことを意味している。表面電荷が変化しないため、ナノ粒子の静電反発力が変化せず分散性が維持され、沈殿しないものと考えられる。クエン酸還元法により調製された金ナノ粒子の表面電荷が暗所で低下しないのは、Auナノ粒子の表面にクエン酸が吸着しているため、常に(光の有無にかかわらず)、Auナノ粒子の表面は負の電荷を帯びているためであるということが考察できる。
【実施例】
【0050】
[実施例2]
実施例1で沈殿した光応答性溶液を再び明所に置いた。図10は、0時間~48時間まで6時間ごとに観察したときの写真である。時間の経過とともに色が濃くなって、沈殿していたAuナノ粒子が、徐々に分散する様子が観察できた。
【実施例】
【0051】
図11は、図10に示した0時間~48時間の各試料のUV-visスペクトル結果であり、図11(A)は再び明所に置いた試料のUV-visスペクトルであり、波長540nmの吸収ピークが時間の経過とともに上昇したことから、徐々に分散していくのが確認された。また、図11(B)は、図11(A)に示すUV-visスペクトルの吸収ピーク(波長540nm)の経時変化を示すグラフである。図11(B)に示すように、48時間後の吸収ピークは、0時間の吸収ピークの約2倍になっていた。
【実施例】
【0052】
[各種の測定手段]
超音波照射は、超音波照射器(三井電気精機株式会社製、製品名:SD-32CP-950K)を用いて行った。
【実施例】
【0053】
光の照射は、紫外光、蛍光灯、赤外光を照射し、それぞれの波長は、400nm以下、400nm~700nm、700nm以上であった。また、太陽光も照射した場合、その波長は、300nm~2500nmであった。遮光は、光が入らない暗所に入れて行った。
【実施例】
【0054】
紫外・可視吸光分光(UV-vis)測定は、紫外・可視吸光分光器(日立ハイテクノロジーズ株式会社製、製品名:U-1900)を用いた。また、透過型電子顕微鏡(TEM)観察は、日本電子株式会社製のJEM-2010(製品名)を用いて行った。
図面
【図5】
0
【図9】
1
【図1】
2
【図2】
3
【図3】
4
【図4】
5
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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