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明細書 :真性複素透磁率の推定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-184852 (P2015-184852A)
公開日 平成27年10月22日(2015.10.22)
発明の名称または考案の名称 真性複素透磁率の推定方法
国際特許分類 G06F  17/50        (2006.01)
G01R  33/12        (2006.01)
FI G06F 17/50 612G
G01R 33/12 Z
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2014-059534 (P2014-059534)
出願日 平成26年3月24日(2014.3.24)
新規性喪失の例外の表示 申請有り
発明者または考案者 【氏名】佐藤 敏郎
【氏名】曽根原 誠
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 2G017
5B046
Fターム 2G017CA09
2G017CD02
5B046JA10
要約 【課題】解析対象物の真性複素透磁率を正確に推定する方法を提供する。
【解決手段】解析対象物の複素透磁率を実測する装置の測定系をモデル化し12、モデル化した解析モデルに、解析対象物の複素透磁率の初期値として、解析対象物を実測して得られた複素透磁率を入力し14、解析対象物の複素透磁率を解析により求め16、解析ソフトウェアに入力した複素透磁率と、解析により求めた複素透磁率が誤差範囲αにあるか否かを判断し18、複素透磁率の入力値を修正して18、20得られた解析結果の複素透磁率を、解析対象物の真性複素透磁率とする22。
【効果】真性複素透磁率を正確に推定することにより、電磁界解析ソフトウェアを用いる高周波デバイス等の解析をより高精度に行うことができる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
解析対象物の複素透磁率を実測する装置の測定系をモデル化し、
測定系のモデルに解析ソフトウェアを適用して、解析対象物の複素透磁率を解析し、解析に用いた複素透磁率の入力値と複素透磁率の解析結果とが、設定した誤差範囲内に収束したときに、解析した結果の複素透磁率を解析対象物の真性複素透磁率とすることを特徴とする真性複素透磁率の推定方法。
【請求項2】
前記解析ソフトウェアに入力する解析対象物の複素透磁率の初期値として、
解析対象物を実測して得られた複素透磁率を用いることを特徴とする請求項1記載の真性複素透磁率の推定方法。
【請求項3】
解析対象物の実測に用いるテストフィクスチャーをモデル化するステップと、
前記モデル化した解析モデルに、解析対象物の複素透磁率の初期値として、解析対象物を実測して得られた複素透磁率μmを入力するステップと、
解析ソフトウェアを使用して解析モデルの複素透磁率μa*を求めるステップと、
解析結果の複素透磁率μa*と、解析ソフトウェアに入力した複素透磁率μmとが、設定した誤差範囲αにあるか否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップにおいて、入力値である複素透磁率μmと解析結果の複素透磁率μa*とが誤差範囲αから外れている場合には、解析ソフトウェアに入力した直前の入力値μmを新たな入力値μx*に修正し、修正後の複素透磁率μa*を得るステップと、
前記判断ステップにおいて、解析結果の複素透磁率μa*と、複素透磁率の入力値μx*との誤差が、誤差範囲αに収束したときに、解析結果の複素透磁率μa*を真性複素透磁率μi*(=μa*)とするステップ、
とを備えることを特徴とする真性複素透磁率の推定方法。
【請求項4】
解析対象物の真性複素透磁率を推定するための、コンピュータが実行可能な真性複素透磁率の解析プログラムであって、
解析対象物の実測に用いるテストフィクスチャーをモデル化するステップと、
前記モデル化した解析モデルに、解析対象物の複素透磁率の初期値として、解析対象物を実測して得られた複素透磁率μmを入力するステップと、
解析ソフトウェアを使用して解析モデルの複素透磁率μa*を求めるステップと、
解析結果の複素透磁率μa*と、解析ソフトウェアに入力した複素透磁率μmとが、設定した誤差範囲αにあるか否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップにおいて、入力値である複素透磁率μmと、解析結果の複素透磁率μa*とが誤差範囲αから外れている場合には、解析ソフトウェアに入力した直前の入力値μmを新たな入力値μx*に修正し、修正後の複素透磁率μa*を得るステップと、
前記判断ステップにおいて、解析結果の複素透磁率μa*と、複素透磁率の入力値μx*との誤差が、誤差範囲αに収束したときに、解析結果の複素透磁率μa*を真性複素透磁率μi*(=μa*)とするステップ、
とを備えることを特徴とする真性複素透磁率の解析プログラム。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波磁気デバイス等の設計、解析等を正確に行うために必要となる解析対象物の真性複素透磁率を推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性薄膜インダクタや高周波キャリア型センサなど各種高周波磁気デバイスの開発に、電磁界開発ソフトウェアの導入が進んでいる。電磁界解析ソフトウェアによる高周波磁気デバイスの解析には、設計対象物の物性値の一つとして複素透磁率を入力する。
複素透磁率の入力値としては、従来、設計対象物を実測して得られた複素透磁率を使用している。しかしながら、磁性材料を実測して得られた複素透磁率は、材料の厚さや寸法によって変化する渦電流損失による作用を含めた値である。
一方、高周波磁気デバイスの解析に用いられる電磁界解析ソフトウェアでは、解析対象物の厚さや寸法、形状、積層構造等をモデリングして解析するから、その解析結果は解析対象物の寸法、形状等を反映しており、渦電流損失を取り込んだ結果となる。すなわち、実測データを解析ソフトウェアに入力して解析した結果は、渦電流損失を2重に取り込むことになり、正確な解析結果にならない。
【0003】
なお、複素透磁率の測定装置には、テストフィクスチャー(試験装置)として同軸型のテストフィクスチャーを用いるもの、TEMセルとシールドループコイルをテストフィクスチャーとするもの(非特許文献2)、コプレーナ線路をテストフィクスチャーとするもの(非特許文献3)等があり、用途に応じて、適宜のテストフィクスチャーを用いて測定されている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Hideyuki Ito, Asako Takeuchi, Shinya Okazaki, Hiroki Kobayashi, Yuichiro Sugawa, Akihiro Takeshima, Makoto Sonehara, Nobuhiro Matsushita, Toshiro Sato; “Fabrication of Planar Power Inductor for Embedded Passives in LSI Package for Hundreds Megahertz Switching DC-DC Buck Converter”, IEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICS, 47, 10, pp.3204-3207 (2011).
【非特許文献2】Masahiro Yamaguchi,Yasunori Miyazawa,Katsuji Kaminishi,Ken-Ichi Arai:“A New 1 MHz-9 GHz Thin-Film Permeameter Using a Side-Open TEM Cell and a Planar Shielded-Loop Coil”,Trans.Nag.Soc.Japan,3,137-140(2003)
【非特許文献3】Y.Ding,T.J.Klemmer,T.M.Crawford:“A coplanar waveguide permeameter for studying high-frequency properties of soift magnetic materials”,Journal of applied physics,volume96,number5,2969-2972
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電磁界解析ソフトウェアを用いて高周波磁気デバイスを解析する際に、複素透磁率として実測値を入力して解析すると、渦電流損失を2重に取り込んだ解析結果になるという問題を解決するには、解析ソフトウェアを使用する際に、まず、実測値に反映されていた渦電流損失の影響を排除した、いわば真性複素透磁率を求め、この真性複素透磁率を、解析ソフトウェアに入力する複素透磁率として使用すればよい。真性複素透磁率は、いわば、解析対象物の大きさ、形状、構造等の複素透磁率に影響を及ぼす属性を取り去ったものであり、解析対象物の大きさ、形状、構造等を反映しない複素透磁率である。
【0006】
本発明は、解析対象物の真性複素透磁率を正確に推定する方法を提供することを目的とするものであり、これにより電磁界解析ソフトウェアを用いる高周波デバイス等の解析をより正確に行えるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る真性複素透磁率の推定方法は、解析対象物の複素透磁率を実測する装置の測定系をモデル化し、測定系のモデルに解析ソフトウェアを適用して、解析対象物の複素透磁率を解析し、解析に用いた複素透磁率の入力値と複素透磁率の解析結果とが、設定した誤差範囲内に収束したときに、解析した結果の複素透磁率を解析対象物の真性複素透磁率とすることを特徴とする。
また、前記解析ソフトウェアに入力する解析対象物の複素透磁率の初期値として、解析対象物を実測して得られた複素透磁率を用いることを特徴とする。
【0008】
また、真性複素透磁率の推定方法として、解析対象物の実測に用いるテストフィクスチャーをモデル化するステップと、前記モデル化した解析モデルに、解析対象物の複素透磁率の初期値として、解析対象物を実測して得られた複素透磁率μmを入力するステップと、解析ソフトウェアを使用して解析モデルの複素透磁率μa*を求めるステップと、解析結果の複素透磁率μa*と、解析ソフトウェアに入力した複素透磁率μmとが、設定した誤差範囲αにあるか否かを判断する判断ステップと、前記判断ステップにおいて、入力値である複素透磁率μmと解析結果の複素透磁率μa*とが誤差範囲αから外れている場合には、解析ソフトウェアに入力した直前の入力値μmを新たな入力値μx*に修正し、修正後の複素透磁率μa*を得るステップと、前記判断ステップにおいて、解析結果の複素透磁率μa*と、複素透磁率の入力値μx*との誤差が、誤差範囲αに収束したときに、解析結果の複素透磁率μa*を真性複素透磁率μi*(=μa*)とするステップ、とを備えることを特徴とする。
また、前記各ステップを備える真性複素透磁率の推定方法は、コンピュータが実行可能な真性複素透磁率の解析プログラムとして構築することができ、電磁界解析ソフトウェア等に組み込んで用いることにより、電磁界解析ソフトウェアの解析結果の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、解析対象物の真性複素透磁率を正確に推定することができ、これにより、電磁界解析ソフトウェアを用いる高周波磁気デバイス等の解析を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】真性複素透磁率を推定する方法を示すフローチャートである。
【図2】同軸型のテストフィクスチャー(a)と、テストフィクスチャーにサンプルをセットした状態(b)の斜視図である。
【図3】Zn-Feフェライトめっき膜を含む測定サンプルの斜視図(a)と断面図(b)である。
【図4】CIP/Epoxyの測定サンプルの側面図である。
【図5】Zn-Feフェライトめっき膜について実測した複素透磁率のグラフである。
【図6】複素透磁率の実測値を入力して解析して得られた複素透磁率のグラフである。
【図7】Zn-Feフェライトめっき膜について推定した真性複素透磁率のグラフである。
【図8】真性複素透磁率を入力して解析して得られた複素透磁率のグラフである。
【図9】CIP/Epoxyの測定サンプルについて実測した複素透磁率のグラフである。
【図10】複素透磁率の実測値を入力して解析して得られた複素透磁率のグラフである。
【図11】CIP/Epoxyの測定サンプルについて推定した真性複素透磁率のグラフである。
【図12】真性複素透磁率を入力して解析して得られた複素透磁率のグラフである。
【図13】TEMセルのテストフィクスチャーの斜視図である。
【図14】CoZrNbアモルファス金属磁性膜について実測した複素透磁率のグラフである。
【図15】複素透磁率の実測値を初期値として解析した複素透磁率(実数部)のグラフである。
【図16】複素透磁率の実測値を初期値として解析した複素透磁率(虚数部)のグラフである。
【図17】解析ソフトウェアを用いて推定した真性複素透磁率のグラフである。
【図18】真性複素透磁率を入力して解析して得られた複素透磁率(実数部)のグラフである。
【図19】真性複素透磁率を入力して解析して得られた複素透磁率(虚数部)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(真性複素透磁率の推定方法)
本発明に係る複素透磁率の推定方法は、解析対象物について複素透磁率を実測する一方、測定に用いた測定系をモデリングし、このモデルを用いて対象物の複素透磁率を解析により求め、解析ソフトウェアに入力した複素透磁率の入力値と、解析によって得られた複素透磁率の解析結果が一致したときに、一致した複素透磁率を真性複素透磁率として推定する方法である。実際には、解析ソフトウェアに入力する複素透磁率の入力値と解析結果とは完全には一致しないから、誤差が十分に小さくなったところで真性複素透磁率が求められたとする。
なお、真性複素透磁率とは、解析対象物の大きさ、形状、構造等の複素透磁率の特定に関わる属性を取り去ったときの値という意味で用いている。

【0012】
図1は、真性複素透磁率を推定する方法をフローチャートに示したものである。
ステップ10は、実際の測定装置を用いて対象物の複素透磁率を実測する工程である。実測で得られた複素透磁率をμmとする。
ステップ12は、解析ソフトウェアを用いて複素透磁率を求めるためにテストフィクスチャーをモデリングする工程である。本方法では、複素透磁率の実測値と解析ソフトウェアによる複素透磁率の解析結果とを比較するから、このモデリング工程では、対象物の実測で使用するテストフィクスチャーについてモデリングする。テストフィクルチャーには試験方法によっていくつかの形態がある。後述する実施例では、同軸型のテストフィクスチャーを用いて複素透磁率を実測しているから、同軸型のテストフィクスチャーについてモデリングしている。

【0013】
ステップ14は、モデリングした解析モデルに、複素透磁率の初期値として、実測で得られた複素透磁率μmを入力する工程である。
解析モデルに入力する初期値として複素透磁率の実測値を入力する方法は、対象物の真性複素透磁率と実測値はさほど大きく外れていないと予想されるから、少ない解析操作によって真値に収束させる方法として有効である。
真性透磁率を推定する解析対象物の磁性材料はなんら限定されないし、磁性材料と非磁性材料とを組み合わせた複合材料を用いる場合もある。また、対象物の形状、大きさ、構造(積層構造等)も多様である。したがって、このような多様な対象物を解析対象とする場合に、複素透磁率をあらかじめ推定することは事実上、不可能であり、実測値から対象物の真性複素透磁率を推定する方法は、現実的でかつ最も有効である。

【0014】
ステップ16は、解析ソフトウェアを使し、ソフトウェア解析によって解析モデルの複素透磁率μa*を求める工程である。
ステップ18は、ソフトウェア解析によって得られた複素透磁率μa*と、解析ソフトウェアに入力した複素透磁率μmとの誤差が、所定の誤差範囲α以下にあるかどうかを判断するステップである。
ステップ18において、入力値である複素透磁率μmと解析結果である複素透磁率μa*とが所定の誤差範囲にない場合には、解析ソフトウェアに入力する複素透磁率を、直前の入力値μmを補正した新たな入力値μx*に修正し(修正工程:ステップ20)、この修正した複素透磁率の入力値μx*を、新たに解析ソフトウェアに入力して、複素透磁率μa*を求める(ステップ18)。

【0015】
ステップ18の判断ステップにおいて、解析結果である複素透磁率μa*と、解析ソフトウェアに入力した複素透磁率μm(μx*:入力値)との誤差が、所定の誤差範囲α内に収束したときには、解析結果である複素透磁率μa*を真性複素透磁率μi*(=μa*)として解析を終了する(ステップ22)。

【0016】
図1に示したフローチャートにしたがって解析した結果得られた真性複素透磁率は、解析対象物の大きさ、形状、構造等の複素透磁率の同定に影響を及ぼす作用を排除したものである。したがって、解析ソフトウェアに入力する物性値の一つとして、この真性複素透磁率を入力して、解析ソフトウェアによるその後の実際の設計解析(デバイスモデルの解析等)を行うことで、従来の設計解析と比較して、より正確な設計解析を行うことができる。
【実施例】
【0017】
(同軸導波管を用いた推定)
以下では、Zn-Feフェライトめっき膜と、カルボニル鉄粉/エポキシ複合磁性材料(Carbonyl-iron-powder/Epoxy:CIP/Epoxy)を対象物とし、同軸導波管を用いて真性複素透磁率を推定した例について説明する。
Zn-Feフェライトめっき膜の電気抵抗率は1.25×102Ω・m程度であり、金属磁性薄膜と比較すると電気抵抗値は高い値であるが、この材料をインダクタに使用するような場合には厚さ10μm程度の比較的厚い膜で使用するから、渦電流損失の影響は無視できず、複素透磁率の実測値と真性複素透磁率とは若干、相違するものと考えられる。
また、CIP/Epoxyも非磁性樹脂中に磁性微粒子を分散させた構造からなるから、電気抵抗率は5Ω・m程度の比較的高い電気抵抗率となる。この電気抵抗率も、渦電流損失が無視できる程度に高いものではないと考えられる。
【実施例】
【0018】
本実施例において、複素透磁率の周波数特性の実測に使用した装置は、インピーダンス・マテリアルアナライザ(4291A Hewlett Packard)であり、テストフィクスチャーとしては、同軸型のテストフィクスチャー(16454A Agilent Technologies)を用いた。電磁界解析ソフトウェアとしては、ansoft社の3次元Full-wave電磁界解析ツールHFSS(Ver.13)を用いた。
【実施例】
【0019】
図2に、同軸型のテストフィクスチャーの解析モデルを示す。同軸型のテストフィクスチャーは、中心に円柱状の芯線5(直径3.1mm)を配し、芯線5の外側にサンプルをセットする空間をあけて、芯線5と同心配置に円筒体6(直径8mm)を配して構成される。テストフィクスチャーの高さは4mmである。芯線と円筒体との間に特性インピーダンス50Ωのソース(発振原)を設けている。
図2(a)はテストフィクスチャーの斜視図、図2(b)はテストフォクスチャーにサンプル8をセットした状態のテストフィクスチャーの斜視図である。
【実施例】
【0020】
図2に示す同軸型のテストフィクスチャーにサンプルをセットしたときの複素透磁率μは次式(1)によって求められる。
【数1】
JP2015184852A_000003t.gif
【実施例】
【0021】
Zmはサンプルをテストフィクスチャーにセットしたときのインピーダンス、Zsmはサンプルをセットしていないテストフィクスチャーのみのときのインピーダンス、μ0は真空の透磁率、hはサンプルの厚さ、cはサンプルの外径、bはサンプルの内径である。
【実施例】
【0022】
図3(a)、(b)は、Zn-Feフェライトめっき膜を構成に含む測定サンプル30の解析モデルを示す。このZn-Feフェライトめっき膜は、有機インターポーザを内蔵するプレーナ型のパワーインダクタへの利用を想定している。そのため、測定サンプル30は、近傍配線を模擬したメタルプレーンとガラスフィラー/エポキシ樹脂を含む。
図3(a)に示すように、測定サンプル30は外径6mm、内径3.5mmである。
図3(b)は解析モデルの断面図であり、ガラスフィラー/エポキシ樹脂層31の両面にメタルプレーン層としてCu層32が設けられ、それぞれのCu層32の外層にエポキシ層33が設けられ、上面側のエポキシ層33の表面にZn-Feフェライトめっき膜34が設けられている。ガラスフィラー/エポキシ樹脂層31の厚さが800μm、Cu層32の厚さが18μm、エポキシ層33の厚さが40μmで、磁性層であるZn-Feフェライトめっき膜34の厚さが10μmである。
【実施例】
【0023】
図4は、CIP/Epoxyの測定サンプル40の解析モデルを示す。この測定サンプル40は、全体形状がが円筒体(外径6mm、内径1.5mm)をなすサンプルであり、CIP/Epoxyからなる薄い環状体を3層に積層した構造を備える。CIP/Epoxyはサンプル作製時にサンプル表面に凹凸が形成されるため、表面の凹凸を考慮して、解析モデルではCIP/Epoxy環状体の層間に3μmの空隙があるとしている。
【実施例】
【0024】
(Zn-Feフェライトめっき膜についての解析)
図5は、図3に示すZn-Feフェライトめっき膜34を備える測定サンプル30を、同軸型のテストフィクスチャーにセットして複素透磁率の周波数特性を実測した結果(実数部、虚数部)を示す。
図6は、複素透磁率の初期値として図5の実測値を入力し、解析ソフトウェアを用いて、上述したモデリングにより複素透磁率を解析して求めた結果である。図6(a)が複素透磁率の実数部、図6(b)が虚数部である。それぞれ、実測値と解析値、実測値と解析値の誤差(error)を示す。
【実施例】
【0025】
図6に示す解析結果は、複素透磁率として実測値を入力して解析した結果である。実数部については、解析値の方が実測値よりもやや小さく表れ、虚数部については解析値が実測値よりも大きく表れている。
実数部の周波数範囲0.01~1GHzの平均誤差は6.7%、虚数部についての誤差は24.8%(0.01~1GHz)である。
虚数部の解析値が実測値よりも大きく表れた理由は、導電率から算出される渦電流損失と、実測した複素透磁率の虚数部に含まれる渦電流損失の双方を重複して取り込んで解析したためである。実数部に生じた差の原因は不明である。
【実施例】
【0026】
図7は、前述した真性複素透磁率を求める解析フローにしたがって、複素透磁率の実測値と解析値との誤差を小さくするように複素透磁率の入力値を修正する操作を進めて(ステップ18、20、22)推定した真性複素透磁率を示す。図7に示す真性複素透磁率は7回、入力値を修正して得たものである。
図8は、推定した真性複素透磁率を入力して複素透磁率を解析した結果を示す。図8には、実測値と解析値、実測値と解析値の誤差を示している。実測値と解析値の誤差は、実数部について、3.9%(0.01~1GHz)、虚数部について、9.1%(0.01~1GHz)である。いずれも、解析フローにより誤差が縮小し、実測値と解析値がよく一致している。
【実施例】
【0027】
図7において、複素透磁率のグラフが100 MHzで不連続になっている理由は、周波数毎に細かく複素透磁率を修正して解析を行うことが困難であったため、大まかに100MHz以下と100MHz以上の範囲に分けて、複素透磁率の値を修正する操作を行ったためである。
なお、複素透磁率を解析する手法としては、周波数帯を複数に分割し、各周波数帯ごとに複素透磁率を収束させて真性複素透磁率を求める方法や、周波数帯を複数点に分けて、各点ごとに複素透磁率が収束するように解析して真性複素透磁率を求める方法がある。
上記解析結果は、Zn-Fe フェライトめっき膜の真性複素透磁率の推定に本発明方法が有効であることを示している。
【実施例】
【0028】
(CIP/Epoxy についての解析)
図9は、図4に示したCIP/Epoxyの測定サンプル40を前述した同軸型のテストフィクスチャーにセットして実測した複素透磁率(実数部、虚数部)の周波数特性を示す。
図10は、複素透磁率の初期値として、図9に示す実測値を入力して、解析ソフトウェアにより解析モデルの複素透磁率を解析した結果を示す。図10(a)が複素透磁率の実数部、図10(b)が虚数部である。図10(b)に示すように、Zn-Fe フェライトめっき膜の場合と同様に、複素透磁率の虚数部について、解析結果が実績値を上回っている。これは、渦電流損失の作用を2重にカウントしているためである。
【実施例】
【0029】
図11は、CIP/Epoxyの測定サンプルモデルについて、真性複素透磁率を求める解析フローにしたがって求めた真性複素透磁率を示す。
図12は、図11に示す、複素透磁率を入力して得られた複素透磁率の解析結果を示す。図12(a)が複素透磁率の実数部、図12(b)が虚数部である。図12に示すように、複素透磁率の実数部、虚数部ともに、複素透磁率の入力値と実測値とがよく一致している。したがって、図11に示す複素透磁率を真性複素透磁率として推定することができる。
【実施例】
【0030】
(TEMセルを用いた推定)
次に、CoZrNbアモルファス金属磁性膜を対象物とし、TEMセル及びシールドループコイルを用いて真性複素透磁率を推定した例について説明する。
図13にTEMセルで使用するテストフィクスチャーの解析モデルを示す。ループコイルを設けた基板の両面を接地層となるプレートで挟み、ループコイルにより囲んだ矩形状の空間内(正面方向から見た矩形領域が6.0mm×1.5mm)にサンプルをセットする。ループコイルの一端が接続端で、他端が特性インピーダンス50Ωのポートとなる。
【実施例】
【0031】
TEMセルにサンプルをセットしたときの複素透磁率μを算出する式は、次式で与えられる。
【数2】
JP2015184852A_000004t.gif
Sc:コイルが囲む面積、t:磁性膜の厚さ、d:磁性膜の幅、Vs:磁性膜の誘起電圧、Zs:磁性膜のインピーダンス、Vr;飽和時における磁性膜の誘起電圧、Zr:飽和時における磁性膜のインピーダンス、Ps:供給パワー。
【実施例】
【0032】
サンプルの寸法等は以下の通りである。
平面寸法:4.4×4.4(mm)、厚さ:1(μm)、
抵抗率:120(μΩ・m)、飽和磁化:1(T)、異方性磁界:0.88(kA/m)。
【実施例】
【0033】
(CoZrNbアモルファス金属磁性膜についての解析)
図14に、上述したTEMセルを用いてサンプルのCoZrNbアモルファス金属磁性膜について複素透磁率の周波数特性を測定した結果を示す。
図15、16は、複素透磁率の初期値として図14に示した実測値を入力し、解析ソフトウェアを使用して、上述したテストフィクスチャーの解析モデルを用いて、サンプルの複素透磁率を解析して求めた結果を示す。図15は複素透磁率の実数部、図16は虚数部である。それぞれ、解析値(μa)と実測値(μm)、解析値と実測値との誤差(error)を示す。
複素透磁率の誤差は、実数部については7.6%(0.01~0.9GHz)、虚数部については、15%(0.01~0.9GHz)である。
【実施例】
【0034】
図17は、解析結果と実測値との差に基づき、前述した真性複素透磁率を求める解析フローにしたがって、複素透磁率の入力値を7回修正して推定した真性複素透磁率の周波数特性を示す。
図18、19は、推定した真性複素透磁率を入力して複素透磁率を解析した結果である。図18は複素透磁率の実数部、図19は虚数部であり、それぞれ、解析値と実測値、解析値と実装値の誤差を示す。
推定した真性複素透磁率を使用した結果、複素透磁率の実数部については誤差が8.7%(0.01~0.9GHz)となり、虚数部については誤差が8.5%(0.01~0.9GHz)となり、虚数部についての誤差が大幅に改善された。
【実施例】
【0035】
上記実施例では、複素透磁率の入力値を修正する操作を手動で行って、真性複素透磁率に収束させた。この操作を、ソフトウェアプログラムを用いて自動解析させることで、より効率的にかつ高精度に真性複素透磁率を求めることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
5 芯線
6 円筒体
8 サンプル
30 測定サンプル
31 ガラスフィラー/エポキシ樹脂層
32 Cu層
33 エポキシ層
34 Zn-Feフェライトめっき膜
40 測定サンプル(CIP/Epoxy)




図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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