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明細書 :発電デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-186323 (P2015-186323A)
公開日 平成27年10月22日(2015.10.22)
発明の名称または考案の名称 発電デバイス
国際特許分類 H02K  35/02        (2006.01)
FI H02K 35/02
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2014-059771 (P2014-059771)
出願日 平成26年3月24日(2014.3.24)
発明者または考案者 【氏名】卜 穎剛
【氏名】水野 勉
【氏名】小柳津 一晃
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
要約 【課題】 デバイスの小型化を図るとともに、可動子を移動させる操作に伴ってコイルに効率的に誘起電圧を発生させることができ、無線スイッチ等に組み込んで使用することができる発電デバイスを提供する。
【解決手段】 ヨーク22を備えるコイル20と、永久磁石10を備える可動子11と、コイル20の側方位置において、可動子11の移動方向をコイル20の軸線方向に沿うようにガイドするガイド機構14a、14bと、可動子11の移動範囲を規制するストッパ機構12a、12b、16a、16bとを備え、永久磁石10には、可動子11をコイル20の軸線方向に往復動させた際に、コイル20に鎖交する磁束の向きが可動子11の動作に伴い反転する向きに着磁され、可動子11には、前記移動範囲の中央位置から可動子11が変位した際に可動子11を中央位置に引き戻す付勢力が付与されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
ヨークを備えるコイルと、
永久磁石を備える可動子と、
前記コイルの側方位置において、前記可動子の移動方向を前記コイルの軸線方向に沿うようにガイドするガイド機構と、
前記可動子の移動範囲を規制するストッパ機構とを備え、
前記永久磁石は、前記可動子を前記コイルの軸線方向に往復動させた際に、コイルに鎖交する磁束の向きが可動子の動作に伴い反転する向きに着磁され、
前記可動子には、前記移動範囲の中央位置から可動子が変位した際に可動子を中央位置に引き戻す付勢力が付与されていることを特徴とする発電デバイス。
【請求項2】
前記ガイド機構は、前記可動子の移動方向を前記コイルの軸線方向に沿うようにガイドするとともに、前記可動子が前記移動範囲の中央位置から変位した際に、可動子を前記中央位置に引き戻す付勢力を付与する弾性支持体を備えることを特徴とする請求項1記載の発電デバイス。
【請求項3】
前記弾性支持体として板ばねを用いることを特徴とする請求項2記載の発電デバイス。
【請求項4】
前記永久磁石は、前記コイルの軸線方向に垂直となる方向に着磁されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の発電デバイス。
【請求項5】
前記可動子は、永久磁石と該永久磁石を支持するヨーク体とからなり、該ヨーク体は前記コイルの軸線方向に長手となる形状に設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の発電デバイス。
【請求項6】
前記ストッパ機構は、
前記コイルの軸線方向の両端部に配されたストッパヨークと、
前記ヨーク体の両端部に、先端が前記コイルに向けいてL字形に折曲して設けられた折曲部とを備え、
前記可動子が移動した際に、前記ストッパヨークと前記折曲部とが相互に当接する配置に設けられていることを特徴とする請求項5記載の発電デバイス。





発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は発電デバイスに関し、より詳細にはコイルに対し磁束を鎖交させて配置した永久磁石を、コイルに対して往復動させることによりコイルに電圧を誘起させる発電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
運動エネルギーを電気エネルギーに変換するデバイスとして、人の操作力を電気エネルギーに変換する発電デバイスがある。このような人の操作力を利用して発電させるデバイスを、例えば無線スイッチとして利用すれば、スイッチ用の配線が不要になり、スイッチの位置が自由に設定できることから、種々の用途へ応用利用することが可能である。
このような発電デバイスを無線スイッチに利用した例としては、スイッチの内部に、一方側と他方側に反転する形態に支持した永久磁石と、コイルとを配置し、スイッチを押す操作により永久磁石が反転する際に、コイルに鎖交する磁束が変化してコイルに発生する誘起電圧を利用してスイッチ用の無線素子を駆動する構成としたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】米国特許7710227
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した永久磁石とコイルとを備えた発電デバイスは、人の操作力のみによる発電作用を利用したスイッチであり、電池等の電源を要しないという利点がある。
しかしながら、上記発電デバイスは永久磁石を反転させて誘起電圧を発生させる構成としたために、デバイスの構造が複雑になるという問題がある。
【0005】
本発明は、人がスイッチ操作する場合のような切り替え操作に合わせて発電することができ、無線スイッチ等の駆動に利用することができる発電量を得ることができ、小型化が可能でスイッチ等に容易に組み込んで利用することができる発電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発電デバイスは、ヨークを備えるコイルと、永久磁石を備える可動子と、前記コイルの側方位置において、前記可動子の移動方向を前記コイルの軸線方向に沿うようにガイドするガイド機構と、前記可動子の移動範囲を規制するストッパ機構とを備え、前記永久磁石は、前記可動子を前記コイルの軸線方向に往復動させた際に、コイルに鎖交する磁束の向きが可動子の動作に伴い反転する向きに着磁され、前記可動子には、前記移動範囲の中央位置から可動子が変位した際に可動子を中央位置に引き戻す付勢力が付与されていることを特徴とする。
【0007】
また、前記ガイド機構は、前記可動子の移動方向を前記コイルの軸線方向に沿うようにガイドするとともに、前記可動子が前記移動範囲の中央位置から変位した際に、可動子を前記中央位置に引き戻す付勢力を付与する弾性支持体を備えることを特徴とする。
また、前記弾性支持体として板ばねを用いることにより、ガイド機構の構成を簡素化することができ、板ばねの材質等を選択することで、可動子の移動速度等を簡単に調節できる点で有効である。
【0008】
また、前記永久磁石を着磁させる方法として、前記コイルの軸線方向に垂直となる方向に着磁することが有効である。
また、前記可動子は、永久磁石と該永久磁石を支持するヨーク体とからなり、該ヨーク体は前記コイルの軸線方向に長手となる形状に設けることにより、コイルに鎖交する磁束をコイルに集中させ、コイルに発生する誘起電圧を大きくすることができる。
【0009】
また、前記ストッパ機構は、前記コイルの軸線方向の両端部に配されたストッパヨークと、前記ヨーク体の両端部に、先端が前記コイルに向けいてL字形に折曲して設けられた折曲部とを備え、前記可動子が移動した際に、前記ストッパヨークと前記折曲部とが相互に当接する配置に設けられていることにより、可動子の移動範囲を規制する要件と、コイルに永久磁石の磁束を集中させ、コイルに誘起する電圧を増大させる作用をともに達成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る発電デバイスによれば、デバイスの小型化を図るとともに、可動子を移動させる操作に伴ってコイルに効率的に誘起電圧を発生させることができ、無線スイッチ等に組み込んでスイッチ操作に利用するといったことが容易に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】発電デバイスの斜視図である。
【図2】発電デバイスの正面図である。
【図3】発電デバイスの力学運動ブロック図である。
【図4】電磁誘導発電デバイスの静推力と誘起電圧を測定する測定装置のブロック図である。
【図5】静推力特性についての解析結果を示すグラフである。
【図6】静推力特性の実測値と計算値を示すグラフである。
【図7】可動子の変位xにおける鎖交磁束数の算出結果を示すグラフである。
【図8】可動子の変位xにおけるdψ/dxの算出結果を示すグラフである。
【図9】可動子の変位xと静推力Fの時間特性の実測値を示すグラフである。
【図10】可動子の変位xと誘起電圧eの時間特性の実測値を示すグラフである。
【図11】可動子の変位xに対する可動子の速度の実測値と計算値のグラフである。
【図12】可動子の変位xに対する誘起電圧eの実測値と計算値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発電デバイスの構成例)
図1は本発明に係る発電デバイスの一実施形態の構成を示す斜視図である。本実施形態の発電デバイスは、永久磁石10に対してコイル20を永久磁石10の磁束が鎖交する配置に設け、永久磁石10をコイル20の側方に配置して、永久磁石10をコイル20の軸線方向(コイルの巻線の中心軸の方向)に往復動させることにより、コイル20に誘起電圧を発生させる構成としたものである。

【0013】
図1に示す発電デバイスは、プラスチック製の支持体(基台)30上にコイル20を固定し、軟磁性材からなるヨーク体12を、一対の板ばね14a、14bにより支持し、ヨーク体12のコイル20に対向する内面に永久磁石10を固定した構成を有する。
コイル20は支持体30上に設けた収容凹部32に嵌入して固定する。板ばね14a、14bは、ヨーク体12がコイル20の軸線方向に可動となるように支持する。永久磁石10はヨーク体12の内面に取り付けた状態でコイル20の外面から離間する。永久磁石10とヨーク体12とは、コイル20に対して可動する可動子11を構成する。

【0014】
ヨーク体12に取り付ける永久磁石10は厚さ方向に着磁している((コイル20の軸線方向に垂直となる方向が着磁方向)。本実施形態ではコイル20に対向する側がN極、ヨーク体12に接する側をS極である。N極とS極は逆であってもよい。
永久磁石10を厚さ方向に着磁している理由は、可動子11をコイル20の軸線方向に往復動させた際に、コイル20に鎖交する磁束の向きが可動子11の動作に伴って反転し、コイル20に正負の電圧が誘起されるようにするためである。

【0015】
ヨーク体12は、長手方向(移動方向)の長さが、コイル20の軸線方向の長さよりも長く設けられ、板ばね14a、14bにより、コイル20の側方(上方)に位置するよう支持体30に支持される。
ヨーク体12の両端部は、それぞれ先端部が支持体30向けてL字形に曲がる折曲部12a、12bとして形成される。板ばね14a、14bの一端部(上端部)は折曲部12a、12bの外側面にねじ止め固定され、板ばね14a、14bの他端部(基端部)は支持体30の外側面にねじ止め固定されて、支持体30にヨーク体12が支持される。

【0016】
板ばね14a、14bは、可動子11に外力が作用しない場合には支持体30に対して正立した位置(中央位置:変位が0の位置)にあり、可動子11が正立位置から一方あるいは他方に変位した際には、可動子11を正立位置に戻すように弾性力が作用する弾性支持体として作用する。すなわち、板ばね14a、14bは、永久磁石10とヨーク体12とからなる可動子11が、コイル20の軸線方向に沿って往復動可能となるように支持し、かつ、可動子11の移動経路がコイル20の軸線方向から逸脱しないように規制する作用をなす。

【0017】
可動子11の両端を板ばね14a、14bにより支持した場合、可動子11が往復動する際に、可動子11は正面方向から見て、コイル20の軸線方向と完全に平行には移動せず、僅かに傾きながら移動する。可動子11をコイル20の軸線方向に沿って移動させるとは、可動子11がコイル20の軸線方向に略沿って移動するという意味である。可動子11はコイル20の軸線方向と完全に平行に移動してもよいし、若干傾きながら移動してもよい。

【0018】
なお、可動子11を支持する弾性支持体は、板ばね14a、14bに限らない。弾性支持体は、可動子11が、コイル20の軸線方向に沿って往復動可能となるように支持し、かつ、可動子11の移動経路がコイル20の軸線方向から逸脱しないように支持するものであれば、適宜構成の弾性支持体を使用することができる。弾性支持体は一対設ける方法に限らず、1点あるいは3点以上で支持することもできるし、コイル20を支持する支持体30に共通に可動子11を支持するかわりに、発電デバイスを収容する筐体の適宜位置に弾性支持体の基部を支持して可動子11を支持するといった方法によることもできる。

【0019】
図2は、発電デバイスの正面図である。ヨーク体12の長手方向がコイル20の軸線方向に平行に配置され、ヨーク体12に支持された永久磁石10がコイル20の外面に対向して配置されている。
支持体30に支持されたコイル20の上半部の両側面に配置されているのは軟磁性材からなるストッパヨーク16a、16bである。ストッパヨーク16a、16bは、平板体に形成され、コイル20の側面に当接して支持体30に支持されている。コイル20は芯部にヨーク22を備え、ストッパヨーク16a、16bは、コイル20のヨーク22の端面に側面が接触する。
ストッパヨーク16a、16bを軟磁性材により形成することにより、コイル20に永久磁石10の磁束を集中させ、可動子11が往復動したときにコイル20に鎖交する磁束の変化率を大きくし、コイル20に誘起される電圧を大きくすることができる。

【0020】
ストッパヨーク16a、16bは可動子11が往復動した際に折曲部12a、12bの内面が当接して可動子11の移動位置を規制する作用をなす。ヨーク体12の折曲部12a、12bの延出長さと、ストッパヨーク16a、16bの高さ寸法は、可動子11が往復動した際に、折曲部12a、12bの内面がストッパヨーク16a、16bの上端縁に当接するように設定する。ストッパヨーク16a、16bの外面の、折曲部12a、12bの内面が当接する上端縁には、折曲部12a、12bによる衝撃力を緩和するダンパ18がそれぞれ取り付けられている。ダンパ18には、樹脂材等を使用することができる。

【0021】
本実施形態の発電デバイスの寸法を図1、2に示す。
永久磁石10にはネオジウム系焼結磁石を使用し、ヨーク体12には構造用炭素鋼S45Cを使用した。板ばね14a、14bにはステンレス鋼材SUS301Hを使用した。
また、本実施形態の発電デバイスの基本仕様は、次の通りである。
コイル20の銅線径d=0.12(mm)、巻線数N=650(turn)、コイルの占積率ζ=0.39、コイルの直流抵抗Rdc=16.8(Ω)、可動子の質量m=1.91(g)、可動子のストロークs=4(mm)。可動子11の変位は、中央位置(中立位置)に対し±2mmである。

【0022】
図3に本実施形態の発電デバイスの力学運動ブロック図を示す。このブロック図は力学運動方程式に基づいた手法であり、各定数をブロック図に入力して、解析ソフトを用いて解析することができる。可動子の速度および加速度をこのブロック図で解くことができるため、運動学のシミュレーションに多用されている。
ばね定数Kは、静推力特性に基づいて求められる磁気ばね定数Kmsと機械ばね定数Ksから次の(1)式で表される。
K=Kms+Ks(N/m)・・・(1)
本実施形態の発電デバイスは、変位が大きくなるにしたがって推力が大きくなる発散系の磁気ばね特性を備える。減衰対数Cは、次式(2)を用いて算出する。対数減衰率λは板ばね14a、14bの実測値であるλ=0.032を用いた。
C=4mλ/Tlog10e=4mλ/(log10e×2π)×(K/m)1/2 (N・s/m)・・・(2)
誘起電圧eは、コイル20に鎖交する磁束の時間あたりの変化率と可動子の速度から次式(3)によって算出する。ψはコイル20に鎖交する磁束(Wb)、xは可動子の変位(m)、tは時間(s)である。
e=-dψ/dt=-(dψ/dx)×(dx/dt) (V)・・・(3)

【0023】
(測定装置の構成)
図4に静推力と誘起電圧を測定する測定装置のブロック図を示す。測定装置は、可動子11の変位を計測するためのレーザ変位計40と、可動子11を手動操作するハンドル42aを備える操作部42と、可動子11に作用する推力を計測するロードセル44と、コイル20の誘起電圧を計測するためのディジタルオシロスコープ46とを備える。
レーザ変位計40はヨーク体12の一端側に配置して可動子11の変位を測定し、操作部42はヨーク体12の他端側に連繋して配置し、可動子11に操作力を作用させた。操作部42として、ねじ式の送り機構を使用した。
ディジタルオシロスコープ46に、コイル20の誘起電圧e、可動子11の変位x、可動子11に作用する推力F(ロードセル44の出力)を入力し、変位xにおける推力F、変位x、推力F、誘起電圧eについての時間特性等を測定した。

【0024】
(静特性)
本実施形態の発電デバイスの静特性を調べるため、電磁界解析ソフトを用いて静磁界解析により永久磁石10とヨークによる吸引力を算出し、ばねの応力解析を行って板ばね14a、14bによる機械的な力を算出した。静磁界解析及び応力解析は三次元直交座標系での解析を行い、静磁界解析での要素数は約5万個、応力解析の要素数は約1万個である。
なお、永久磁石10とヨークとの吸引力は、永久磁石10とヨーク22との吸引力と、ストッパヨーク16a、16bを介して作用する吸引力の双方の作用による。

【0025】
表1に静磁界解析条件、表2に応力解析条件を示す。
【表1】
JP2015186323A_000003t.gif

【0026】
【表2】
JP2015186323A_000004t.gif

【0027】
図5に静推力特性についての解析結果を示す。図5の横軸は可動子11の変位x(mm)であり、縦軸が可動子11の変位位置xにおける可動子11に作用する静推力F及びFsと、FとFsの和を示す。静推力Fは、永久磁石10とヨークとの磁気的な作用による推力であり、Fsは板ばね14a、14bによる機械的な推力である。

【0028】
板ばね14a、14bによる推力Fs(破線)は、変位xが正の範囲では推力が負となり、負の範囲では推力が正となる。すなわち、可動子11が中央位置(中立位置)から正の方向に動くと、板ばね14a、14bは可動子11を中央位置に戻そうとするように作用し、負の方向に動くと、可動子11を中央位置に引き戻そうとするように作用する。

【0029】
一方、永久磁石10とヨークによる推力F(実線)は、可動子11が中央位置を超えて正の方向に変位すると正の推力が発生し、可動子11が中央位置を超えて負の方向に変位すると負の推力が発生することを示す。この作用は、可動子11が中央位置を超えて正の方向に変位すると、可動子11をさらに正の方向に変位させようとし、可動子11が中央位置を超えて負の方向に変位すると、可動子11をさらに負の方向に変位させようとする作用、すなわち発散系の作用であることを意味する。
永久磁石10とヨーク22による推力Fの大きさは、可動子11がストッパヨーク16a、16bに当接する最大変位位置(停止位置)の近傍で大きく変化している。

【0030】
実際に可動子11に作用する推力は、永久磁石10とヨーク22による推力Fと、板ばね14a、14bによる推力Fsを合わせたものである。図5に、可動子11に作用する推力Fと推力Fsを合わせたグラフ(F+Fs)を示した。
F+Fsのグラフを見ると、可動子11が中央位置を超えて正の方向に移動する際には正の推力が作用し、負の方向に移動する際には負の推力が作用している。したがって、本実施形態の発電デバイスは発散的な作用をなすこと、すなわち、可動子11は正方向と負方向でストッパヨーク16a、16bに当接した状態で安定的に停止する状態になり、外力の作用によって2つの停止位置間において交互に切り替わるように移動する動作をなすことがわかる。

【0031】
図5のF+Fsのグラフを1次近似すると(図5の1点鎖線)、変位x=-2mmのとき、F=F+Fs=-0.768Nとなる。
前述した磁気ばね定数Kmsと機械ばね定数Ksは次式から求められる。
ms=F/x (N/m) Ks=F/x (N/m)
(1)式のばね定数Kは、K=Kms+Ks=F/x + F/xであるから、ばね定数K=384(N/m)となる。

【0032】
図6は静推力特性の実測値(実線)と計算値(破線)を示すグラフである。計算値は、図5のF+Fsを1次近似したものである。変位x=-2mmのときの静推力の実測値は-0.95Nで、静推力の最大計算誤差は23%であった。静推力の計算には有限要素法を用いたため、計算誤差の原因は計算手法によるものと考えられる。

【0033】
図7に、静磁界解析により、可動子11の変位位置xにおける鎖交磁束数を算出した結果を示す。変位x=±2mmのとき、鎖交磁束数は6.12(mWb)で最大となった。
図8に、可動子11の変位位置xにおけるdψ/dxを算出した結果を示す。図7に示した鎖交磁束数-変位特性を6次の多項式で近似し、それを微分することにより図8のグラフを求めた。変位x=±2mmのとき、dψ/dxは、4.66(Wb/m)で最大値となった。

【0034】
(動特性)
図9に変位-時間特性(実線)と、静推力-時間特性(破線)の実測値を示す。図9は、可動子を一方側(負側)から他方側(正側)へ押動するときに、初期状態では大きな推力Fを要し、時間経過とともに徐々に推力が小さくなること、可動子の動作についてみると、推力により可動子が一方側から他方側に徐々に変位していき、可動子が中央位置(0点位置)を超えると、一気に正側に変位することを示す。グラフは、変位x=0を超えると、直線的に起立し、短時間で変位x=1.94mmまで変化している。

【0035】
図10に変位xの時間特性と、誘起電圧eの時間特性についての実測値を示す。可動子11の変位xを実線、誘起電圧eを破線で示す。誘起電圧eは可動子11がストッパに当接する直前で大きく変化する。図10では、横軸(時間軸)の範囲を可動子11がストッパに当接する前後近傍に限定して、拡大表示している。変位x=1.94mmのとき、誘起電圧e=3.66Vである。

【0036】
図11は可動子の変位x(x=0~2mm)に対する可動子の速度の実測値(実線)と計算値(破線)を示す。可動子11の速度の実測値は、図10に示す変位特性の実測グラフを6次の多項式で近似し、それを微分して求めた。速度の計算値は、図3のブロック図に各定数を入力して算出した。
可動子11の変位x=1.94 mmのときの速度の実測値と計算値を比較すると、速度の実測値は0.76 m/s、計算値は0.85 m/sである。速度の計算誤差は11%である。

【0037】
図12に可動子の変位x(x=0~2mm)に対する誘起電圧eの実測値と計算値を示す。誘起電圧eの実測値は出力端を開放したときの値である。また、可動子の初速度が0m/sとして、可動子を変位させたときの最大誘起電圧を求めた。可動子の初速度とは、可動子が中央位置(x=0mm)にあるときの速度であり、初速度0m/sとは、可動子が中央位置にあるときの初速が0m/sということである。
誘起電圧eの実測値と計算値はそれぞれ、3.66Vと3.97Vであり、誘起電圧の計算誤差は8.7%であった。
出力端を開放したときの誘起電圧は3.66 Vであるが、本発電デバイスの内部インピーダンスと同等の負荷を接続した場合の出力電圧は3.66Vの半分程度になると考えられ、その場合の出力電圧は1.83Vとみなすことができる。

【0038】
上述した実施形態の発電デバイスは、永久磁石10とヨーク体12とからなる可動子11をコイル20の側方で、コイル20の軸線方向に沿って往復動させることにより、コイル20に誘起電圧を発生させること、可動子11を支持する板ばね14a、14bの弾性作用と、永久磁石10と、コイル20のヨーク22、ストッパヨーク16a、16bとの磁気的な吸引作用により、可動子11が力学的には発散的な動作となることが特徴的である。本実施形態では、可動子11の移動位置を規制するためにストッパ機構として、ヨーク体12の折曲部12a、12bとストッパヨーク16a、16bを設け、可動子11の移動範囲を規制するとともに、可動子11の移動端位置が安定的な停止位置となり、2つの停止位置間で可動子11が往復動する切り替え動作がなされる。

【0039】
ストッパ機構により可動子11の移動が規制される2つの停止位置間で可動子11が交互に移動する動作は、ON-OFF操作用のスライドスイッチのような、複数の停止位置(クリック位置)を備える装置にみられる動作に対応する。上述した発電デバイスは、可動子11を往復動作に伴ってコイル20に誘起電圧を発生させるから、たとえば可動子11をスライドスイッチに連繋して設けておけば、スライドスイッチのON-OFF操作に連動して、コイル20に誘起電圧を発生させることができる。

【0040】
上述した発電デバイスは可動子11のストロークが±2mmと僅かであり、この発電デバイスをスライドスイッチに使用しても、ストロークがスイッチ操作の支障となるものではない。逆に、スイッチのストロークに合わせて発電デバイスのストロークを調節することもできる。また、上記発電デバイスの大きさは18.6mm×13mm×15.5mmであり、小型であることから、スイッチに内蔵することも容易に可能である。
上記発電デバイスの実効的な出力電圧は2V程度であるが、この出力電圧は、たとえば無線スイッチ用の素子を駆動する電圧として十分に利用できる。したがって、無線スイッチに上記の発電デバイスを組み込み、スイッチ操作により無線素子を駆動することによって室内灯のON-OFFに利用するといったことが可能である。この無線スイッチは、スイッチ操作のみによって発電するから、電池等の電源が不要であり、スイッチ用の室内配線が不要になるという利点もある。もちろん、発電デバイスは無線スイッチに使用する他に種々の装置に使用することができる。

【0041】
なお、上記発電デバイスでは、可動子11が永久磁石10とヨーク体12とから構成されるが、可動子11は少なくとも永久磁石10を備えていればよい。永久磁石10とヨーク体12とを組み合わせて使用しているのは、コイル20に鎖交する永久磁石10の磁束を効率的にコイル20に作用させるためである。
また、ヨーク体12に設けた折曲部12a、12bは、ストッパヨーク16a、16bとの組み合わせにより可動子11の移動範囲を規制するストッパ機構を構成する。可動子11の移動範囲を規制するストッパ機構は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。たとえば、発電デバイスを収納する筐体自体に可動子11の移動範囲を規制するストッパを設けることも可能であり、ストッパの取り付け位置も適宜選択することができる。

【0042】
ただし、ヨーク体12に折曲部12a、12bを設け、コイル20側に軟磁性体からなるストッパヨーク16a、16bを設けた構成は、永久磁石10の磁束をコイル20側に集中させる作用を兼ねている点で有効である。コイル20もヨークを備えない構成とすることも可能であるが、コイル20にヨークを設けることで、永久磁石10の磁束を効率的にコイル20に作用させることができ、コイル20の誘起電圧を大きくすることができる。
なお、コイル20に誘起される電圧は永久磁石10の強さや、ヨーク体12等の各部の材質、可動子11のストローク長などの種々の仕様によって変動する。したがって、発電デバイスの大きさ等の制限や、必要とする出力電圧に応じて、使用する材料、各部材の寸法等を選択する必要がある。

【0043】
上記実施形態の発電デバイスでは、可動子11を支持する弾性支持体として板ばね14a。14bを使用した。板ばね14a、14bは、使用するばね材のばね定数といった特性値を選択することにより、可動子11の動作を調節して、可動子11のストローク長を変えたり、コイル20の誘起電圧を帰るといったことが容易にできるという利点もある。
しかしながら、可動子11がコイル20の軸線方向に沿って往復動するように支持するガイド機構は、板ばね14a、14bを用いる方法に限るものではない。たとえば、ボールベアリングを用いたガイド機構やスライドガイド等のガイド機構を利用して可動子11の移動方向をコイル20の軸線方向に平行にガイドすることも可能である。これらのガイド機構を利用する場合も、可動子11の移動範囲を規制するストッパ機構を設け、可動子11が安定支持される2つの停止位置間で可動子11が往復動するように設ければよい。
【符号の説明】
【0044】
10 永久磁石
11 可動子
12 ヨーク体
12a、12b 折曲部
14a、14b 板ばね
16a、16b ストッパヨーク
20 コイル
22 ヨーク
30 支持体
40 レーザ変位計
42 操作部
44 ロードセル
46 ディジタルオシロスコープ

図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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