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明細書 :4クローラ型車両の姿勢制御機構

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第2890036号 (P2890036)
公開番号 特開平10-194169 (P1998-194169A)
登録日 平成11年2月26日(1999.2.26)
発行日 平成11年5月10日(1999.5.10)
公開日 平成10年7月28日(1998.7.28)
発明の名称または考案の名称 4クローラ型車両の姿勢制御機構
国際特許分類 B62D 55/065     
FI B62D 55/065
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願平09-017801 (P1997-017801)
出願日 平成9年1月16日(1997.1.16)
審査請求日 平成9年1月16日(1997.1.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
発明者または考案者 【氏名】篠田 芳明
【氏名】内田 康之
個別代理人の代理人 、【弁理士】、【氏名又は名称】村井 隆
審査官 【審査官】岡田 孝博
参考文献・文献 特開 平5-294252(JP,A)
特開 平4-92784(JP,A)
特開 昭63-258275(JP,A)
特開 昭57-164804(JP,A)
特公 昭57-26968(JP,B2)
特公 昭36-19956(JP,B1)
調査した分野 B62D 55/065
特許請求の範囲 【請求項1】
車体の前後に設けられた前側クローラ旋回軸及び後側クローラ旋回軸と、前記車体の前後左右に設けられていて前記前側及び後側クローラ旋回軸の回転に伴ってそれぞれ旋回動作を行う4つのクローラ機構とを持つ4クローラ型車両の姿勢制御機構において、
前記前側クローラ旋回軸又は後側クローラ旋回軸のいずれか一方である第1の旋回軸に第1の差動歯車機構を装着して、当該第1の旋回軸両側で左右のクローラ機構が分担する車体重量を均衡状態にさせかつ当該第1の旋回軸位置での前記車体の上下位置制御を行うとともに、
他方のクローラ旋回軸である第2の旋回軸に遊星歯車機構と第2の差動歯車機構を組み合わせた遊星・差動組み合わせ歯車機構を装着して、当該第2の旋回軸位置でも前記車体の上下位置制御を行い、かつ左右のクローラ機構をそれぞれ旋回させる出力軸を前記第2の差動歯車機構の入力軸を回転させることにより相互に逆転させて前記車体の左右傾斜の制御を行うことを特徴とする4クローラ型車両の姿勢制御機構。

【請求項2】
前記第1の差動歯車機構は、前記第1の旋回軸を左右に分離してなる第1の左側出力軸と第1の右側出力軸とにそれぞれ固設されて相互に対向する左傘歯車及び右傘歯車と、前記第1の左側出力軸又は第1の右側出力軸を回転中心とし当該出力軸に対して回転自在な平歯車と、該平歯車に固定のブラケットで前記第1の左側出力軸と第1の右側出力軸に直交する自転軸を持つように支持されかつ前記左傘歯車及び右傘歯車に噛み合う傘歯車と、上下位置制御のための回転を前記平歯車に与える第1の入力軸とを備えるものである請求項1記載の4クローラ型車両の姿勢制御機構。

【請求項3】
前記遊星・差動組み合わせ歯車機構は、相互に連結された左右のサン歯車と、前記第2の旋回軸を左右に分離してなる第2の左側出力軸と第2の右側出力軸とにそれぞれ固設された取付板と、該取付板に枢着されていて前記サン歯車に噛み合う複数のプラネタリ歯車と、外側に位置してそれらのプラネタリ歯車と噛み合うリング歯車とを有する左右の遊星歯車機構と、
該左右の遊星歯車機構が有する各リング歯車にそれぞれ連動しかつ相互に対向する1対の傾斜調整用傘歯車と、左右傾斜制御のための回転を与える第2の入力軸に固設されていて前記1対の傾斜調整用傘歯車に噛み合う傾斜入力用傘歯車とを有する第2の差動歯車機構と、
前記サン歯車に上下位置制御のための回転を与える第3の入力軸とを備えている請求項1又は2記載の4クローラ型車両の姿勢制御機構。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、4つのクローラ機構を持つ4クローラ型車両において、車体を任意の高さに上下させるとともに、前後左右の任意の傾斜に制御することが出来、さらに4つのクローラ(履帯)が常時凹凸地又は不整地等の平坦でない路面に接触して車両重量をほぼ均等に支え、走行性能及び車体の姿勢制御性能を向上させることができる遊星・差動組み合わせ歯車機構を用いた4クローラ型車両の姿勢制御機構に関するものである。

【0002】

【従来の技術】従来、車体の前後に設けられた前側クローラ旋回軸及び後側クローラ旋回軸と、前記車体の前後左右に設けられていて前記前側及び後側クローラ旋回軸の回転に伴ってそれぞれ旋回動作を行う4つのクローラ機構とを持つ4クローラ型車両においては、上記したような遊星・差動組み合わせ歯車機構等を用いた姿勢制御機構を有していないため、平坦でない路面においては4つのクローラ機構が具備する4つのクローラのうちの1つのクローラが地面から浮くか、又は、4つのクローラにかかる荷重が常時変動するため、走行の際、路面とクローラ間の摩擦力が変動し、走行が滑らかでないか又はスリップが頻繁に生じる問題点があった。

【0003】
そこで、前側クローラ旋回軸及び後側クローラ旋回軸の双方に差動歯車機構を設け、常時クローラを地面に接地するようにした構造が提案されたが、この構造は両軸共に差動歯車機構を適用しているため車体の左右傾斜が安定しない欠点があり、それを補うため、クローラ機構に直結したブレーキを用いているが差動歯車機構の利点を損なっている問題点があった。

【0004】
このため、図5に示すように4つのクローラ機構を独立に旋回するモータを有する方式が開発された。この図において、1は4つのクローラ機構を持つ4クローラ型車両であり、車体2の前後左右にそれぞれクローラ機構3が設けられており、各クローラ機構3はクローラ旋回用モータ4で旋回されるようになっている。つまり、各クローラ機構3はアーム3aの基端と先端とにそれぞれ枢着された1対のローラ3b間にクローラ3cを巻き掛けたものであるが、モータ4でアーム3aが一体化されたクローラ旋回軸を旋回させている。

【0005】
この図5の従来例の場合、各クローラ機構3が分担する荷重がクローラ旋回用モータ4に流れる負荷電流に比例することを利用して、負荷電流が左右均衡するまで電流を制御して(負荷電流の差が零になるように制御して)この目的を達成しようとしている。

【0006】

【発明が解決しようとする課題】図5の従来例のように、4つのクローラ機構の各旋回軸を独立に制御して、車体の姿勢を制御しようとする場合、左右のクローラが地面の凹凸から受ける反力のため常時変動する荷重によってクローラ旋回用モータの負荷電流が変動する要素も同時に検出される。すなわち、姿勢制御と左右の荷重変動のために生じるクローラ旋回用モータの負荷電流が相互に関連を持ったパラメータとして検出される(すなわち直交系でない)ため、その最適化が非常に困難であった。

【0007】
また、4個のクローラ機構を制御する4個のクローラ旋回用モータの電流を検出して解析し、その結果で4個のクローラ旋回用モータの制御をするため、制御のアルゴリズムとシステムが複雑化することも問題点の一つであった。

【0008】
本発明は、上記の点に鑑み、いずれかのクローラ旋回軸に遊星歯車機構と差動歯車機構を組み合わせた遊星・差動組み合わせ歯車機構を装着することにより、車体の高さの制御、前後左右の任意方向の傾斜制御を可能とし、さらに4つのクローラで常時車両重量をほぼ均等に支え得るようにして、走行性能及び車体の姿勢制御性能の向上を図った4クローラ型車両の姿勢制御機構を提供することを目的とする。

【0009】
本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。

【0010】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の4クローラ型車両の姿勢制御機構は、車体の前後に設けられた前側クローラ旋回軸及び後側クローラ旋回軸と、前記車体の前後左右に設けられていて前記前側及び後側クローラ旋回軸の回転に伴ってそれぞれ旋回動作を行う4つのクローラ機構とを持つ4クローラ型車両の姿勢制御を行う構成において、前記前側クローラ旋回軸又は後側クローラ旋回軸のいずれか一方である第1の旋回軸に第1の差動歯車機構を装着して、当該第1の旋回軸両側で左右のクローラ機構が分担する車体重量を均衡状態にさせかつ当該第1の旋回軸位置での前記車体の上下位置制御を行うとともに、他方のクローラ旋回軸である第2の旋回軸に遊星歯車機構と第2の差動歯車機構を組み合わせた遊星・差動組み合わせ歯車機構を装着して、当該第2の旋回軸位置でも前記車体の上下位置制御を行い、かつ左右のクローラ機構をそれぞれ旋回させる出力軸を前記第2の差動歯車機構の入力軸を回転させることにより相互に逆転させて前記車体の左右傾斜の制御を行うことを特徴としている。

【0011】
上記4クローラ型車両の姿勢制御機構において、前記第1の差動歯車機構は、前記第1の旋回軸を左右に分離してなる第1の左側出力軸と第1の右側出力軸とにそれぞれ固設されて相互に対向する左傘歯車及び右傘歯車と、前記第1の左側出力軸又は第1の右側出力軸を回転中心とし当該出力軸に対して回転自在な平歯車と、該平歯車に固定のブラケットで前記第1の左側出力軸と第1の右側出力軸に直交する自転軸を持つように支持されかつ前記左傘歯車及び右傘歯車に噛み合う傘歯車と、上下位置制御のための回転を前記平歯車に与える第1の入力軸とを備える構成とするとよい。

【0012】
また、前記遊星・差動組み合わせ歯車機構は、相互に連結された左右のサン歯車と、前記第2の旋回軸を左右に分離してなる第2の左側出力軸と第2の右側出力軸とにそれぞれ固設された取付板と、該取付板に枢着されていて前記サン歯車に噛み合う複数のプラネタリ歯車と、外側に位置してそれらのプラネタリ歯車と噛み合うリング歯車とを有する左右の遊星歯車機構と、該左右の遊星歯車機構が有する各リング歯車にそれぞれ連動しかつ相互に対向する1対の傾斜調整用傘歯車と、左右傾斜制御のための回転を与える第2の入力軸に固設されていて前記1対の傾斜調整用傘歯車に噛み合う傾斜入力用傘歯車とを有する第2の差動歯車機構と、前記サン歯車に上下位置制御のための回転を与える第3の入力軸とを備える構成とするとよい。

【0013】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係る4クローラ型車両の姿勢制御機構の実施の形態を図面に従って説明する。

【0014】
図1において、10は4つのクローラ機構を持つ4クローラ型車両であり、車体12の前後に設けられた前側クローラ旋回軸15及び後側クローラ旋回軸16と、前記車体12の前後左右に設けられていて前記前側及び後側クローラ旋回軸の回転に伴ってそれぞれ旋回動作を行う4つのクローラ機構13とを持っている。各クローラ機構13はアーム13aの基端と先端とにそれぞれ枢着された1対のローラ13b間にクローラ13cを巻き掛けたものであり、アーム13aが対応するクローラ旋回軸と共に回転するように当該旋回軸に連結一体化されている。なお、基端側のローラ13bはクローラ13cを走行させるための駆動輪となる。

【0015】
前記前側クローラ旋回軸15の中間には第1の差動歯車機構20がクローラ旋回機構(クローラ機構のアームを旋回させる機構)として装着されており、これによって当該旋回軸15の位置で左右のクローラ機構13が分担する車体重量を常時自動的に均衡状態にさせ、かつ当該旋回軸位置での車体12の上下位置制御を行うようにしている。

【0016】
また、前記後側クローラ旋回軸16の中間に遊星歯車機構と第2の差動歯車機構を組み合わせた遊星・差動組み合わせ歯車機構30がクローラ旋回機構として装着されており、当該旋回軸16位置でも車体12の上下位置制御を行い、かつ左右のクローラ機構13を逆転させて車体12の左右傾斜の制御を行うようにしている。

【0017】
図2に示す如く、前記第1の差動歯車機構20は、前側クローラ旋回軸15を左右に分離してなる左側出力軸15Lと右側出力軸15Rとにそれぞれ固設されて(固定的に設けられて)相互に対向する左傘歯車21L及び右傘歯車21Rと、左側出力軸15L(又は右側出力軸15R)を回転中心とし当該出力軸に対して回転自在な平歯車22と、平歯車22に固定のブラケット26で左右の出力軸15L,15Rに直交する自転軸を持つように支持されかつ左傘歯車21L及び右傘歯車21Rに噛み合う1対の傘歯車23と、上下位置制御のための回転を平歯車22に与えるために、これと噛み合う平歯車25を固設した第1の入力軸24とを具備している。

【0018】
この第1の差動歯車機構20を設けたことによって、平坦でない地形を走行する場合に、左側出力軸15Lと右側出力軸15Rに連結された左右のクローラ機構13は双方の荷重が常時均衡するように自動的に旋回動作を行うので、左右のクローラ機構13にかかる荷重を均衡させるために外部からの制御を必要としない。また、第1の入力軸24をモータで回転駆動することで左右の出力軸15L,15Rを同一方向に回転させ、左右のクローラ機構13を同一方向に旋回させることができる。この結果、前側クローラ旋回軸15位置での車体の高さを任意に上下させることができる。

【0019】
図3に示す如く、前記遊星・差動組み合わせ歯車機構30は、後側クローラ旋回軸16を左右に分離してなる左側出力軸16Lと右側出力軸16Rとの間に同心配置された連結軸16Mの両端にそれぞれ固設されたサン歯車31L,31Rと、左側出力軸16Lと右側出力軸16Rにそれぞれ固設された取付板32L,32Rと、取付板32L,32Rにそれぞれ枢着されていてサン歯車31L,31Rに噛み合う複数(図示の場合は3個)のプラネタリ歯車33L,33Rと、外側に位置してそれらのプラネタリ歯車33L,33Rと噛み合うリング歯車34L,34Rとを有する左右の遊星歯車機構35L,35R(減速比は互いに同じ)とを具備している。

【0020】
また、遊星・差動組み合わせ歯車機構30は、左右の遊星歯車機構35L,35Rが有する各リング歯車34L,34Rに噛み合う平歯車36L,36Rを一端に固設した軸体37L,37Rと、軸体37L,37Rの他端にそれぞれ固設されかつ相互に対向する1対の傾斜調整用傘歯車38L,38Rと、左右傾斜制御のための回転を与える第2の入力軸39に固設されていて前記1対の傾斜調整用傘歯車38L,38Rに噛み合う傾斜入力用傘歯車40とを有する第2の差動歯車機構41を具備している。なお、左右の出力軸16L,16Rと軸体37L,37Rとは互いに平行であり、傾斜入力用傘歯車40は軸体37L,37Rに直交する回転中心軸を持つように支持されている(軸体37L,37Rと第2の入力軸39とが直交している。)。

【0021】
さらに、遊星・差動組み合わせ歯車機構30は、前記連結軸16Mに上下位置制御のための回転を与える第3の入力軸45とを備えており、第3の入力軸45の端部に固設された傘歯車46が連結軸16Mに固設された傘歯車47と噛み合っている。

【0022】
この遊星・差動組み合わせ歯車機構30において、図3のように、第3の入力軸45に回転数N1の上下位置制御入力(高さ制御入力)が与えられると、左右の出力軸16L,16Rの出力L,Rとして同方向の等角度の回転k11が得られる。但し、k1は遊星歯車機構35L,35Rの各歯車によって定まる定数である。

【0023】
また、第2の入力軸39に回転数N2の左右傾斜制御入力が与えられると、左右の出力軸16L,16Rの出力L,Rとして互いに逆向きの等角度の回転k22が得られる。但し、k2は遊星歯車機構35L,35Rの各歯車によって定まる定数である。

【0024】
従って、第3の入力軸45に回転数N1の上下位置制御入力(高さ制御入力)が、第2の入力軸39に回転数N2の左右傾斜制御入力がそれぞれ同時に与えられた場合、左側出力軸16Lの出力L及び右側出力軸16Rの出力Rは、以下のようになる。
出力L=k11-k22
出力R=k11+k22

【0025】
このように、遊星・差動組み合わせ歯車機構30を設けたことにより、第3の入力軸45をモータで回転駆動することで左右の出力軸16L,16Rを同一方向に回転させ、左右のクローラ機構13を同一方向に旋回させることができる。この結果、後側クローラ旋回軸16位置での車体の高さを任意に上下させることができる。また、第2の入力軸39をモータで回転駆動することで出力軸16L,16Rを互いに逆方向に回転させ、左右のクローラ機構13を互いに逆方向に旋回させることができる。この結果、車体12を左右方向に任意に傾斜させて、傾斜調整を行うことができる。

【0026】
図4は上記2種類の歯車機構を用いた実施の形態と等価な車両制御概念図である。実施の形態による4クローラ型車両は、遊星・差動組み合わせ歯車機構30で後側クローラ旋回軸16の左右のクローラ機構13のクローラ旋回角度を制御すると、第1の差動歯車機構20を適用した前側クローラ旋回軸15の左右のクローラ機構13はそれに追随するから、図4に示すように等価的に3点接地の車両の様な挙動をする。そして、図2の差動歯車機構20の第1の入力軸24を駆動するモータが図4の車体の上下制御モータM1に相当し、図3の遊星・差動組み合わせ歯車機構30の第2の入力軸39を駆動するモータが図4の左右傾斜制御モータM2に相当し、第3の入力軸45を駆動するモータが図4の上下制御モータM3に相当する。従って、上下制御モータM1,M3で車体の前後を等量上下させることで車体全体の上下位置を任意に設定でき、また上下制御モータM1,M3による上下量を互いに変えることで、車体前後方向の傾斜角(ピッチング角)を任意に設定することができる。さらに、左右傾斜制御モータM2で車体左右方向の傾斜角(ローリング角)を任意に設定することができる。

【0027】
本発明に係る4クローラ型車両の姿勢制御機構は、上述したように構成されているので、路外の凹凸のある不整地を走行するのに適し、平坦でない地形を走行する場合でも、4つのクローラが均衡した荷重で常時地面をとらえるため凹凸地の走行能力が向上するとともに滑らかな走行となる。また、前方あるいは後方の左右2つのクローラを任意に旋回できる構造であることから、前述した如く、前傾あるいは後傾(すなわちピッチング)又は車体高全体の上下を任意に設定することができる。

【0028】
また、差動歯車機構20が前側クローラ旋回軸15のクローラ旋回機構に適用されており、左右のクローラ機構13を旋回させて持ち上げた車体12の車軸位置は凹凸地形をとらえた双方のクローラ13cから平均の高さを保つよう作用するため、車体12の上下の動揺を少なくする。さらに、差動歯車機構20が前側クローラ旋回軸15に装着されているため、左右のクローラ13cの平均高の上下の制御が、図2の第1の入力軸24を回転駆動する1台のモータで行うことができ、機構が簡単になる。その上、地面の凹凸による左右のクローラ13cの旋回角度の差は差動歯車機構20が機械的に吸収するため左右傾斜制御モータはその平均角度だけを制御することで車体の姿勢制御が可能となり、簡単な制御アルゴリズムで目的を達成できる。また、差動歯車機構20を有するクローラ旋回機構を用いると、機械系だけを用いた構造であるためその応答性が良好で、信頼性が向上する。

【0029】
また、遊星歯車機構と第2の差動歯車機構を組み合わせた遊星・差動組み合わせ歯車機構30を後側クローラ旋回軸16のクローラ旋回機構として適用しており、図3の第3の入力軸45を介して左右のサン歯車31L,31Rを回転させるモータ(車体の上下制御用)により両側のクローラ機構13は同一方向に回転し車軸の上下を決定する。また、遊星・差動組み合わせ歯車機構30の第2の入力軸39を1台のモータ(車体の左右傾斜制御用)で回転させることにより、その回転が第2の差動歯車機構41から左右のリング歯車34L,34Rに互いに逆向きに伝達され、左右のクローラ機構13を相互に逆転させることになり、車体12を左右に傾けることができる。

【0030】
なお、上記実施の形態では、前側クローラ旋回軸15に第1の差動歯車機構20を、後側クローラ旋回軸16に遊星・差動組み合わせ歯車機構30をそれぞれ装着してクローラ旋回機構として用いたが、逆に前側クローラ旋回軸15に遊星・差動組み合わせ歯車機構30を、後側クローラ旋回軸16に差動歯車機構20を適用する構成としてもよい。

【0031】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。

【0032】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る4クローラ型車両の姿勢制御機構によれば、外部から特別な制御を受けなくとも、車軸(クローラ旋回軸)の左右の凹凸を吸収して常時4つのクローラを地面に接地させながら安定した走行が可能となる。また、遊星・差動組み合わせ歯車機構及び差動歯車機構を有するクローラ旋回機構を4クローラ型車両に適用することにより、各車軸の平均旋回角度をそれぞれ1つのモータで設定し、車体高を任意に決定するとともに、任意のピッチング角で前傾又は後傾させることができるため、車両の姿勢制御が非常に簡単にできる。

【0033】
また、遊星・差動組み合わせ歯車機構の差動歯車側に連結したモータを回転させることで、左右の遊星歯車機構に接続されたクローラ旋回軸を逆転させて車体の左右傾斜角(ローリング角)を前傾後傾角(ピッチング角)の制御とは独立して任意に設定できるため、つまり、遊星・差動組み合わせ歯車機構は車体の上下方向位置制御と左右傾斜角制御について直交系であるため、制御アルゴリズムが非常に簡単になる。

【0034】
さらに、従来左右2つずつのクローラ機構を旋回させるためにそれぞれ左右に設けられていた終段減速機構を、遊星・差動組み合わせ歯車機構及び差動歯車機構のそれぞれ1つずつに置き換えることができるため、構造の簡素化、信頼性の向上、車体の軽量化が可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図3】
4