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明細書 :多孔性物質の特性測定装置および多孔性物質の特性測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-203657 (P2015-203657A)
公開日 平成27年11月16日(2015.11.16)
発明の名称または考案の名称 多孔性物質の特性測定装置および多孔性物質の特性測定方法
国際特許分類 G01N   5/02        (2006.01)
G01N  15/08        (2006.01)
FI G01N 5/02 Z
G01N 15/08 Z
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2014-084107 (P2014-084107)
出願日 平成26年4月16日(2014.4.16)
新規性喪失の例外の表示 申請有り
発明者または考案者 【氏名】飯山 拓
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
要約 【課題】多成分混合吸着系の成分別吸着量を直接測定できる多孔性物質の特性測定装置を提供する。
【解決手段】測定する多孔性物質を収納する試料収納部と、所定のガスを測定装置へ導入するガスの導入量を制御するガス導入制御部と、該試料収納部へのガスの導入を制御するバルブと、測定装置の内部圧力を測定する圧力計と、該測定装置から排出されるガスの排気量を制御する排気制御部と、該排出されるガスの成分量を分析する成分分析部と、ガスを排出するポンプとを備えることを特徴とする多孔性物質の特性測定装置および、該多孔性物質の特性測定装置を用いる多成分混合吸着系の成分別吸着量を測定する方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
測定する多孔性物質を収納する試料収納部と、所定のガスを測定装置へ導入するガスの導入量を制御するガス導入制御部と、該試料収納部へのガスの導入を制御するバルブと、測定装置の内部圧力を測定する圧力計と、該測定装置から排出されるガスの排気量を制御する排気制御部と、該排出されるガスの成分量を分析する成分分析部と、測定装置からガスを排出するポンプとを備える測定装置であって、前記成分分析部が、質量分析器からなることを特徴とする多孔性物質の特性測定装置。
【請求項2】
前記ガス導入制御部が、2個以上備えられていることを特徴とする請求項1記載の多孔性物質の特性測定装置。
【請求項3】
前記ガス導入制御部が、開度が調整可能なバルブと流量センサとを備えていることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の多孔性物質の特性測定装置。
【請求項4】
前記排気制御部が、開度が調整可能なバルブと、該開度を調整するコントローラーと、流量センサを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の多孔性物質の特性測定装置。
【請求項5】
多孔性物質への吸着開始時から平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分の検出量の時間積分から成分別の吸着量を算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の多孔性物質の特性測定装置。
【請求項6】
2個以上のガス導入制御部の、各バルブと流量センサにより、各導入ガスの流量を調整することにより、該試料収納部へ導入する混合ガスの成分比を制御することを特徴とする請求項5記載の多孔性物質の特性測定装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の多孔性物質の特性測定装置を用い、且つ、
(1)試料収納部に測定する多孔性物質をいれ、真空とした後、該試料収納部を封鎖する工程、
(2)ガス導入制御部および排気制御部のバルブを全開としてポンプで脱気する工程、
(3)所定の複数のガスを、該ガス導入制御部を介して測定装置に導入する工程、
(4)該導入された複数のガスの混合ガスの成分量を、質量分析器で分析する工程、
(5)該質量分析器の検出量および測定装置内の圧力を定常化する工程、
(6)試料収納部へのガスの導入を制御するバルブを開放して、該測定装置内に導入されている該混合ガスを該試料収納部へ導入する工程、
(7)該混合ガスの該多孔性物質への吸着開始時から平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分量を測定する工程、
(8)多孔性物質への吸着開始時から平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分の検出量の時間積分から成分別の吸着量を算出する工程、
(9)該平衡吸着量到達後、排気制御部のバルブ(?)の開度を下げて該測定装置内の圧力を上げ、加圧開始時から該加圧状態での平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分量を測定する工程、および、
(10)加圧開始時から該加圧状態での平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分の検出量の時間積分から成分別の吸着量を算出する工程、からなることを特徴とする多孔性物質の成分別の吸着等温線測定方法。
【請求項8】
請求項5または6に記載の多孔性物質の特性測定装置を用い、且つ、
(1)試料収納部に測定する多孔性物質をいれ、真空とした後、該試料収納部を封鎖する工程、
(2)ガス導入制御部および排気制御部のバルブを全開としてポンプで脱気する工程、
(3)所定の複数のガスを、該ガス導入制御部を介して測定装置に導入する工程、
(4)該導入された複数のガスの混合ガスの成分量を、質量分析器で分析する工程、
(5)該質量分析器の検出量および測定装置内の圧力を定常化する工程、
(6)試料収納部へのガスの導入を制御するバルブを開放して、該測定装置内に導入されている該混合ガスを該試料収納部へ導入する工程、
(7)該混合ガスの該多孔性物質への吸着開始時から平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分量を測定する工程、
(8)多孔性物質への吸着開始時から平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分の検出量の時間積分から成分別の吸着量を算出する工程、
(9)該平衡吸着量到達後、排気制御部のバルブ(?)の開度を上げて該測定装置内の圧力を下げ、減圧開始時から該減圧状態での平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分量を測定する工程、および、
(10)減圧開始時から該減圧状態での平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分の検出量の時間積分から成分別の吸着量を算出する工程、からなることを特徴とする多孔性物質の成分別の脱着等温線測定方法。
【請求項9】
請求項1~7の何れかに記載の多孔性物質の特性測定装置を用い、且つ、
(1)試料収納部に測定する多孔性物質をいれ、真空とした後、該試料収納部を封鎖する工程、
(2)ガス導入制御部および排気制御部のバルブを全開としてポンプで脱気する工程、
(3)所定の複数のガスを、該ガス導入制御部を介して測定装置に導入する工程、
(4)該導入された複数のガスの混合ガスの成分量を、質量分析器で分析する工程、
(5)該質量分析器の検出量および測定装置内の圧力を定常化する工程、
(6)試料収納部へのガスの導入を制御するバルブを開放して、該測定装置内に導入されている該混合ガスを該試料収納部へ導入する工程、
(7)該混合ガスの該多孔性物質への吸着開始時から平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分量を測定する工程、
(8)多孔性物質への吸着開始時から平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分の検出量の時間積分から吸着量を算出する工程、および、
(9)請求項9および10記載の測定方法により測定された成分別の吸着等温線および成分別の脱着等温線に基づいて、各成分別の吸着量を算出する工程
からなることを特徴とする混合吸着系での多孔性物質の特性測定方法。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性物質の特性測定装置および多孔性物質の特性測定方法、詳細には、複数成分混合ガスの混合吸着系での多孔性物質の特性測定装置および多孔性物質の特性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素やメタン等の貯蔵や、環境負荷物質の除去等に有用な多孔性物質の開発が盛んに行われている。
【0003】
多孔性物質の開発において、多孔性物質の特性を調べる事は極めて重要であり、このような多孔性物質の特性の一つとして、多孔性物質のガス吸着量特性が挙げられる。そのため、新規な多孔性物質が合成された際等には、必ず、ガスの吸着量の測定が行われている。
【0004】
かかるガス吸着量の測定方法としては、コイルスプリング等の弾性体の伸長量から多孔性物質の重量増加分を測定することで吸着量を直接的に測定する重量法や、密閉容器内に封入したガスの圧力の変化を測定し気体の状態方程式を用いて吸着量を間接的に測定する容量法が知られている(たとえば、特許文献1から3参照)。
【0005】
重量法や容量法では、多孔性物質が収納された収納容器の内部温度を所定の温度に維持した状態で、吸着量の圧力依存性が測定される。すなわち、一定温度下において、収納容器の内圧を変化させたときの多孔性物質の吸着量が測定され、その測定結果に基づいて、一定温度下における多孔性物質の吸着量と収納容器の内圧との関係を示す吸着等温線が作成される。吸着量の圧力依存性の測定は、必要に応じて、収納容器の内部温度を種々変えながら行われ、各温度に対応した吸着等温線が作成される。そして、作成された吸着等温線を用いて吸着量の算出や多孔性物質の他の特性の解析が行われる。
【0006】
多孔性物質の特性として、上述した吸着量以外にも重要な特性がある。たとえば、吸着されたガスと多孔性物質との結合力の指標となる吸着熱が、多孔性物質の重要な特性として挙げられる。かかる吸着量以外の特性を得るためには、重量法や容量法での測定結果から作成された吸着等温線を利用した複雑な解析が必要となる。
【0007】
本発明者らは、先に、多孔性物質の種々の特性を容易に得ることが可能な構成を備えた多孔性物質の特性測定装置および多孔性物質の特性測定方法を提供している(特許文献4参照)。
【0008】
上記特性測定装置は、多孔性物質が収納された収納部と、該収納部の内部圧力を検出する圧力検出部と、該収納部へ導入される所定のガスが貯蔵されたガス貯蔵部と、該収納部からガスの排気を行うガス排気部とを備えているものである。この特性測定装置では、該圧力検出部で検出された検出圧力に基づいて、該収納部へのガスの導入量や該収納部からのガスの排出量を制御して、該収納部の内部圧力を一定に維持するフィードバック制御が行われる。そして、上記特性測定方法は、該検出圧力に基づいて算出した該ガスの導入量と該ガスの排出量との差に基づいて、該多孔性物質のガス吸着量を検出することを特徴とする測定方法である。
【0009】
さらに、該特性測定装置は、基本的に単一成分のガスの吸着量を検出するものである。これに対して本発明の装置は、複数成分の混合ガスの混合吸着系での成分別の吸着量を測定できる装置であり、これまで、このような複数成分の混合ガスの混合吸着系での成分別の吸着量を測定できる装置はこれまで報告されていない。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開2005-69848号公報
【特許文献2】特開2002-277369号公報
【特許文献3】特開2000-292246号公報
【特許文献4】特開2007-64731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らが先に提供した、多孔性物質の特性測定装置および多孔性物質の特性測定方法は、多孔性物質の種々の特性を容易に得ることが可能なものであり、前記のとおり、多孔性物質が収納された収納部の内部圧力を調整することにより、該収納部へのガスの導入量や該収納部からのガスの排出量を制御し、該検出圧力に基づいてガスの導入量と該ガスの排出量を算出し、該ガスの導入量と該ガスの排出量との差に基づいて、該多孔性物質のガス吸着量を検出するものである。しかしながら、測定するガスは単一の成分のものであり、複数成分の混合ガスでの成分別の吸着量を測定できるものではない。
【0012】
複数成分の混合ガスの混合吸着については、成分別の吸着量の測定方法が確立されておらず、その解明は十分になされていない。本発明はこのような、混合吸着系での成分別の吸着量を直接測定できる装置および測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明者らは、鋭意研究を行い、以下のような構成による測定装置を考案し、混合吸着系、例えば、水とエタノール混合ガスでの多孔性物質の成分別吸着量測定を行ったところ、極めて良好な結果を得ることができた。
【0014】
すなわち本発明は、
[1]
測定する多孔性物質を収納する試料収納部と、所定のガスを測定装置へ導入するガスの導入量を制御するガス導入制御部と、該試料収納部へのガスの導入を制御するバルブと、測定装置の内部圧力を測定する圧力計と、該測定装置から排出されるガスの排気量を制御する排気制御部と、該排出されるガスの成分量を分析する成分分析部と、測定装置からガスを排出するポンプを備える測定装置であって、前記成分分析部が、質量分析器からなることを特徴とする多孔性物質の特性測定装置、
[2]
前記ガス導入制御部が、2個以上備えられていることを特徴とする請求項1記載の多孔性物質の特性測定装置、
[3]
前記ガス導入制御部が、開度が調整可能なバルブと流量センサとを備えていることを特徴とする[1]または[2]のいずれか1記載の多孔性物質の特性測定装置、
[4]
前記排気制御部が、開度が調整可能なバルブと、該開度を調整するコントローラーと、流量センサを備えていることを特徴とする[1]から[3]のいずれか1記載の多孔性物質の特性測定装置、
[5]
多孔性物質への吸着開始時から平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分の検出量の時間積分から成分別の吸着量を算出することを特徴とする[1]から[4]のいずれか1記載の多孔性物質の特性測定装置、
[6]
2個以上のガス導入制御部の、各バルブと流量センサにより、各導入ガスの流量を調整することにより、該試料収納部へ導入する混合ガスの成分比を制御することを特徴とする[5]記載の多孔性物質の特性測定装置、に関する。
[7]
また本発明は、
[5]または[6]に記載の多孔性物質の特性測定装置を用い、且つ、
(1)試料収納部に測定する多孔性物質をいれ、真空とした後、該試料収納部を封鎖する工程、
(2)ガス導入制御部および排気制御部のバルブを全開としてポンプで脱気する工程、
(3)所定の複数のガスを、該ガス導入制御部を介して測定装置に導入する工程、
(4)該導入された複数のガスの混合ガスの成分量を、質量分析器で分析する工程、
(5)該質量分析器の検出量および測定装置内の圧力を定常化する工程、
(6)試料収納部へのガスの導入を制御するバルブを開放して、該測定装置内に導入されている該混合ガスを該試料収納部へ導入する工程、
(7)該混合ガスの該多孔性物質への吸着開始時から平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分量を測定する工程、
(8)多孔性物質への吸着開始時から平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分の検出量の時間積分から成分別の吸着量を算出する工程、
(9)該平衡吸着量到達後、排気制御部のバルブの開度を下げて該測定装置内の圧力を上げ、加圧開始時から該加圧状態での平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分量を測定する工程、および、
(10)加圧開始時から該加圧状態での平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分の検出量の時間積分から成分別の吸着量を算出する工程、からなることを特徴とする多孔性物質の成分別の吸着等温線測定方法、
[8]
[5]または[6]に記載の多孔性物質の特性測定装置を用い、且つ、
(1)試料収納部に測定する多孔性物質をいれ、真空とした後、該試料収納部を封鎖する工程、
(2)ガス導入制御部および排気制御部のバルブを全開としてポンプで脱気する工程、
(3)所定の複数のガスを、該ガス導入制御部を介して測定装置に導入する工程、
(4)該導入された複数のガスの混合ガスの成分量を、質量分析器で分析する工程、
(5)該質量分析器の検出量および測定装置内の圧力を定常化する工程、
(6)試料収納部へのガスの導入を制御するバルブを開放して、該測定装置内に導入されている該混合ガスを該試料収納部へ導入する工程、
(7)該混合ガスの該多孔性物質への吸着開始時から平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分量を測定する工程、
(8)多孔性物質への吸着開始時から平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分の検出量の時間積分から成分別の吸着量を算出する工程、
(9)該平衡吸着量到達後、排気制御部のバルブの開度を上げて該測定装置内の圧力を下げ、減圧開始時から該減圧状態での平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分量を測定する工程、および、
(10)減圧開始時から該減圧状態での平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分の検出量の時間積分から成分別の吸着量を算出する工程、からなることを特徴とする多孔性物質の成分別の脱着等温線測定方法、
[9]
[1]~[6]の何れかに記載の多孔性物質の特性測定装置を用い、且つ、
(1)試料収納部に測定する多孔性物質をいれ、真空とした後、該試料収納部を封鎖する工程、
(2)ガス導入制御部および排気制御部のバルブを全開としてポンプで脱気する工程、
(3)所定の複数のガスを、該ガス導入制御部を介して測定装置に導入する工程、
(4)該導入された複数のガスの混合ガスの成分量を、質量分析器で分析する工程、
(5)該質量分析器の検出量および測定装置内の圧力を定常化する工程、
(6)試料収納部へのガスの導入を制御するバルブを開放して、該測定装置内に導入されている該混合ガスを該試料収納部へ導入する工程、
(7)該混合ガスの該多孔性物質への吸着開始時から平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分量を測定する工程、
(8)多孔性物質への吸着開始時から平衡吸着量到達時までの、排出ガスの成分の検出量の時間積分から吸着量を算出する工程、および、
(9)請求項9および10記載の測定方法により測定された成分別の吸着等温線および成分別の脱着等温線に基づいて、各成分別の吸着量を算出する工程
からなることを特徴とする混合吸着系での多孔性物質の特性測定方法、に関する。
【0015】
本発明の多孔性物質の特性測定装置は、測定する多孔性物質を収納する試料収納部と、所定のガスを測定装置へ導入するガスの導入量を制御するガス導入制御部と、該試料収納部へのガスの導入を制御するバルブと、測定装置の内部圧力を測定する圧力計と、該測定装置から排出されるガスの排気量を制御する排気制御部と、該排出されるガスの成分量を分析する成分分析部と、該測定装置からガスを排出するポンプとを備えることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の多孔性物質の特性測定装置は、該ガス導入制御部を2個以上備え、該2個以上のガス導入制御部の、各バルブと流量センサにより、各導入ガスの流量を調整することにより、該試料収納部へ導入する混合ガスの成分比を制御することを特徴とするものである。
【0017】
さらに本発明の多孔性物質の特性測定装置は、成分分析部が、質量分析器からなることを特徴とするものである。
【0018】
そして、本発明の多孔性物質の特性測定装置を用いて以下のように操作することにより、多孔性物質の成分別の吸着等温線を測定することができる。
【0019】
すなわち、(1)試料収納部に測定する多孔性物質をいれ、真空とした後、該試料収納部を封鎖し、(2)ガス導入制御部および排気制御部のバルブを全開としてポンプで脱気し、(3)所定の複数のガスを、該ガス導入制御部を介して測定装置に導入し、(4)該導入された複数のガスの混合ガスの成分量を、質量分析器で分析する。 次いで、(5)該質量分析器の検出量および測定装置内の圧力を定常化し、(6)試料収納部へのガスの導入を制御するバルブを開放して、該測定装置内に導入されている該混合ガスを該試料収納部へ導入する。 さらに、(7)該混合ガスの該多孔性物質への吸着開始時から吸着飽和量到達時までの、排出ガスの成分量を測定し、(8)多孔性物質への吸着開始時から吸着飽和量到達時までの、排出ガスの成分の検出量の時間積分から成分別の吸着量を算出する。 そして、(9)該吸着飽和量到達後、排気制御部のバルブ(?)の開度を下げて該測定装置内の圧力を上げ、加圧開始時から該加圧状態での吸着飽和量到達時までの、排出ガスの成分量を測定し、(10)加圧開始時から該加圧状態での吸着飽和量到達時までの、排出ガスの成分の検出量の時間積分から成分別の吸着量を算出することにより、多孔性物質の成分別の吸着等温線を測定できる。
【0020】
また、本発明の多孔性物質の特性測定装置を用いて以下のように操作することにより、多孔性物質の成分別の脱着等温線を測定することができる。
【0021】
すなわち、(1)試料収納部に測定する多孔性物質をいれ、真空とした後、該試料収納部を封鎖し、(2)ガス導入制御部および排気制御部のバルブを全開としてポンプで脱気し、(3)所定の複数のガスを、該ガス導入制御部を介して測定装置に導入し、(4)該導入された複数のガスの混合ガスの成分量を、質量分析器で分析する。 次いで、(5)該質量分析器の検出量および測定装置内の圧力を定常化し、(6)試料収納部へのガスの導入を制御するバルブを開放して、該測定装置内に導入されている該混合ガスを該試料収納部へ導入する。 さらに、(7)該混合ガスの該多孔性物質への吸着開始時から吸着飽和量到達時までの、排出ガスの成分量を測定し、(8)多孔性物質への吸着開始時から吸着飽和量到達時までの、排出ガスの成分の検出量の時間積分から成分別の吸着量を算出する。 そして、(9)該吸着飽和量到達後、排気制御部のバルブ(?)の開度を上げて該測定装置内の圧力を下げ、減圧開始時から該減圧状態での吸着飽和量到達時までの、排出ガスの成分量を測定し、(10)減圧開始時から該減圧状態での吸着飽和量到達時までの、排出ガスの成分の検出量の時間積分から成分別の吸着量を算出することにより、多孔性物質の成分別の脱着等温線を測定できる。
【0022】
さらにまた、本発明の多孔性物質の特性測定装置を用いて以下のように操作することにより、混合吸着系での、多孔性物質の成分別の吸着量を測定することができる。
【0023】
すなわち、(1)試料収納部に測定する多孔性物質をいれ、真空とした後、該試料収納部を封鎖し、(2)ガス導入制御部および排気制御部のバルブを全開としてポンプで脱気し、(3)所定の複数のガスを、該ガス導入制御部を介して測定装置に導入し、(4)該導入された複数のガスの混合ガスの成分量を、質量分析器で分析する。 次いで、(5)該質量分析器の検出量および測定装置内の圧力を定常化し、(6)試料収納部へのガスの導入を制御するバルブを開放して、該測定装置内に導入されている該混合ガスを該試料収納部へ導入する。 さらに、(7)該混合ガスの該多孔性物質への吸着開始時から吸着飽和量到達時までの、排出ガスの成分量を測定し、(8)多孔性物質への吸着開始時から吸着飽和量到達時までの、排出ガスの成分の検出量の時間積分から成分別の吸着量を算出する。 そして、上記記載の成分別の吸着等温線および成分別の脱着等温線測定方法により測定された成分別の吸着等温線および成分別の脱着等温線に基づいて、各成分別の吸着量を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る多孔性物質の特性測定装置の一例の概要図である。
【図2】実施例1に係る特性測定装置の真空ラインの簡略図である。
【図3】φw = 0.5における水・エタノール混合吸着等温線を示すグラフである。
【図4】φw = 0.5における水・エタノール各成分の吸着等温線を示すグラフである。
【図5】φw = 0.85における水・エタノール混合吸着等温線を示すグラフである。
【図6】φw = 0.85における水・エタノール各成分の吸着等温線を示すグラフである。
【図7】φw = 0.15における水・エタノール混合吸着等温線を示すグラフである。
【図8】φw = 0.15における水・エタノール各成分の吸着等温線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る多孔性物質の特性測定装置および多孔性物質の特性測定方法を実施するための形態について説明する。

【0026】
図1に、本発明に係る多孔性物質の特性測定装置の形態の一例を示す。

【0027】
成分分析部から時間当たりの各ピーク強度がPa単位で示される。本発明に係る装置を用いて測定を行う場合には、2個以上あるガス導入制御部から、それぞれのガス導入量を適宜調整することにより、常に一定の気相分率の混合気体が系内に導入される。このため、閉鎖系の装置を用いて吸着実験を行ったときのように、吸着により気相の分率が変化することを抑えることが可能となり、正確に混合吸着を測定することが可能となる。

【0028】
本発明に係る多孔性物質の特性測定装置による測定を行った結果、試料収納部に収納された吸着媒に吸着が起こらない場合、装置からは、装置内に導入された量と同量の気体が排出され、成分分析部で検出される各ピーク強度は、ある強度で一定になる。一方、吸着媒に吸着が起こった場合、装置から排出される気体の量は、吸着媒によって吸着された分だけ減少するため、成分分析部で検出される各ピーク強度が減少する。これとは逆に、吸着媒から脱着が起こると、各ピーク強度は増加する。したがって、吸着が平衡に達している時のピーク強度をベースラインにし、吸着によるピークのベースラインからの増減の積分値から試料の吸着量を求めることが可能となる。ピーク強度のベースラインとの差は、時間当たりの吸着量を示し、それを吸着の始まりから平衡に至るまでの時間で積分することでその測定点の吸着量が示される。

【0029】
本発明に係る多孔性物質の特性測定装置は、上流のガス導入制御部から、常に一定量の気体を系内に流すことにより、系内の気相の分率を一定に保つことを可能とする。また、下流の排気制御部により、系内の気体排出量を制御することで、系内の圧力を自在に制御することが可能である。系から排出されたガスの組成を成分分析部により常に分析することによって、各成分の吸着量の測定を可能とする。

【0030】
本発明に係る多孔性物質の特性測定装置は、系内へのガス導入にキャリアガスを用いない。キャリアガスを用いた実験では、吸着にキャリアガスの影響はないとみなして測定することが一般的であるが、本発明に係る多孔性物質の特性測定装置を用いて測定を行うことにより、では真にキャリアガスの影響のない状態で、測定することが可能となる。

【0031】
本発明に係る多孔性物質の特性測定装置を用いて、吸着量の測定を行う際には、ガス導入制御部が示す値を校正する必要がある。これは、例えば、気体の流量係数や、成分分析部が示すピーク強度を、吸着量に換算するための係数を把握することで可能となる。気体の流量係数は、例えば、流量係数が決まっている窒素などの気体と比較する方法がある。系内に一定流量の気体を導入していき、この際の圧力上昇の傾きを窒素の時と流量係数を決定したい物質の時と比較することで、各気体の流量係数を決定することが可能となる。成分分析部が示すピーク強度を、吸着量に換算する方法としては、例えば、単成分の気体を用いて検量線を取る方法がある。気体の導入量を変更していき、排出側の流量計が示した排出量に対して成分分析部が示すピーク強度を取っていくことで検量線を作成する。この際、上述した気体の流量係数を決定しておけば、ピーク強度の時間積分をとることで吸着量が算出できる。

【0032】
また、ガス導入制御部の気体の流量係数と成分分析部のピーク強度換算係数を同時に決定する方法として、例えば、係数を決定したい気体を用いて重量法、圧力フィードバック法、質量分析法で同時に吸着等温線を測定する方法が挙げられる。これは、測定点ごとの吸着量が、重量法と圧力フィードバック法で求めた吸着量と、質量分析法から求めた吸着量は同じとなる点を利用したもので、これにより、効率的に本発明の実施のための係数を求めることが可能となる。この場合には、本発明に係る多孔性物質の特性測定装置の試料収納部には、例えば、磁気浮遊天秤等の重量計を備える必要がある。
【実施例】
【0033】
本発明に係る多孔性物質の特性測定装置を用いて、水・エタノール混合吸着等温線測定を行った。本実施例においては、吸着質として、超純水(日本ミリポア株式会社製)と、純度99.5%エタノール(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
【実施例】
【0034】
測定の前処理として、吸着装置にある液だめに超純水とエタノールを入れて、液体窒素を用いた凍結真空脱気を3回行った。この際、気相水モル分率0.15の水・エタノール混合溶液については、予め調製した上で、同様の処理を行った。エタノールはモレキュラーシーブ3Aにて脱水を行った後、液体窒素を用いた凍結真空脱気を3回行った。
【実施例】
【0035】
本実施例では、吸着媒として、活性炭素繊維A10(株式会社アドール製)を用いた。活性炭は、グラファイト表面からなるスリット型細孔を持ち、非常に大きな比表面積を持つ。グラファイト表面は電気的に中性であるため、無極性分子と強い相互作用を持つ。窒素吸着等温線から求めた細孔特性を表に示す。
【実施例】
【0036】
【表1】
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活性炭は前処理として、ダイヤフラムポンプとターボ分子ポンプを用い、P < 10-4 Paの高真空下で、セル温度120 ℃に3時間静置した。
【実施例】
【0037】
本実施例では、ラインやガス導入制御部を収納した空気恒温槽の温度を34.0 ℃、ラインと試料収納部を接続するラインを39.0 ℃、試料収納部を15.0 ℃にそれぞれ保持し、温度条件が一定となるよう制御しながら、測定を行った。
【実施例】
【0038】
図2に、本実施例に係る特性測定装置の真空ラインの簡略図を示す。真空ラインにあるバルブには、便宜上通し番号を振っている。本実施例における吸着等温線の測定方法は以下のとおりである。
1.系内を真空引きし(ダイヤフラムポンプ、ターボ分子ポンプ)、セル(試料収納部)の前処理をする。(バルブ2、5、10を除き、バルブ開にする)
2. 系内を真空にしたまま(ダイヤフラムポンプ、ターボ分子ポンプ)所定の温度にし、最も低い圧力の測定点が測定できるようにバルブを設定して(手動バルブと排出バルブは開度100%)、圧力の0点を決定し、重量法の測定前の各モードの重量を記録する。(バルブ1、3、7、8、11、12、13を開にする)
3. セルにつながるバルブ12を閉じ、ラインに測定したい気体の比率になるように流量を決定し、バルブ2、5を開け気体を導入し排出量が安定するまで待つ。また質量分析器(成分分析部)も作動させピーク強度が安定するまで待つ。
4. 安定したらセルにつながるバルブ12を開けて吸着平衡まで待つ。
5. セルにつながるバルブ12を閉じ、質量分析器の示すピーク強度のベースラインを確認する。
6. セルにつながるバルブ12を開け、測定したい圧力になるようにバルブの開度を変更していく。
手動バルブ13と排出バルブは開度100%、バルブ1、2、3、5、7、8、11を開にした時に系内の圧力が最も低くなる(全圧約1Torr)。
次に手動バルブ13を回し、開度を0%にして、排出バルブは開度100%、バルブ1、2、3、5、7、8、11を開にした時に1Torrほど圧力が増加する(全圧約2Torr)。
次にバルブ11を閉じた時にさら1Torrほど圧力が増加する(全圧約3Torr)。
次に排出バルブ50%に変更したとするとさら3から7Torrほど圧力が増加する
(全圧約7から10Torr)。混合気体の流量や比率によって圧力増加に幅があるので適宜排出バルブの開度を調節する。
以降はさらに排出バルブの開度を小さくし、圧力を変化させる。排出バルブの開度に対して圧力の変化は1次関数的ではなく、2次関数的なので注意すること。
7. 測定したい圧力になったら、バルブの開度を調節し、圧力を保つようにし、吸着平衡を待つ。
8. 5~7の手順を繰り返し、圧力を制御し測定点を増やしていく。
【実施例】
【0039】
本実施例では、測定の温度条件を制御するため、装置全体を恒温槽に収納して測定を行う。この際、恒温槽内の温度にムラがあると、ガスがライン内で凝縮し、流量がうまく制御できなくなる恐れがある。これを回避するためには、例えば、ガス導入制御部につながる液だめの温度を恒温槽内で一番低くする方法が挙げられる。温度差はわずかでよいのでたとえば液だめの周りに衝立を置き、ヒーターからの温風を遮るだけでも効果が期待できる。
【実施例】
【0040】
ここで、水の気相モル分率をφwと定義する。本実施例では、気相の水モル分率が0.5、0.85になるようにガス導入制御部を設定した。なお、各気体の流量を水0.1ccm、エタノール0.242ccm(実質0.1ccm)にすることによって気相の水モル分率を0.5に保つことができる。また、気相の水モル分率が0.15となるよう調製した混合液体を、液だめにセットし、排出量を変更することで圧力を制御し、吸着等温線を測定した。
【実施例】
【0041】
(気相分率0.5での測定)
φw = 0.5における活性炭素繊維A10への水・エタノール混合吸着等温線(測定温度15 ℃)を図3に示す。図中、横軸は混合気体の全圧、縦軸は全吸着量である。
【実施例】
【0042】
図の吸着側を見ると0Torrから5Torr付近まで直線的な吸着量の立ちあがりを示し、細孔を充填した。5Torr以上の圧力範囲では、5Torr以下の領域と比べて、わずかな吸着量の増加を示した。一方、脱着側を見ると5Torr以上の領域では吸着側の等温線の経路よく一致している脱着等温線となるが、5Torr以下の圧力領域では吸着側の経路から外れ、ヒステリシスを示した。
【実施例】
【0043】
次に水、エタノールの各成分の吸着等温線を図4に示す。図に示す水、エタノール各成分の吸着等温線は○が水成分の吸着等温線、□がエタノール成分の吸着等温線を示す。図中の○の水成分の吸着等温線の吸着側を見ると、0Torrから5Torr付近まで直線的な吸着量の増加を示し、5Torr以上の圧力領域では吸着量の変化はほとんどなかった。水を●、エタノールを■で示す脱着側は、10Torr付近まで吸着側と同じ経路を取っているが、10Torr以下の圧力領域では徐々に吸着側で示していた吸着量よりも少ない吸着量を示し、ヒステリシスを示した。ヒステリシスは通常、吸着側の吸着量が脱着側の吸着量より少ないが、水エタノール混合系における水成分の吸着等温線は吸着側の吸着量が脱着側の吸着量より多いという通常とは逆のヒステリシスを示していることが認められる。
【実施例】
【0044】
(気相分率0.85での測定)
φw = 0.85における質量分析器により測定した吸着等温線を示す。横軸を全圧とした全吸着量の等温線を図5に示す。
【実施例】
【0045】
図5に示した全吸着量の吸着等温線は吸着側において3Torr付近から吸着量の立ち上がりが起こり、細孔を充填していく。7Torr付近で吸着量の立ち上がりが終わり、7Torr以降でも徐々に吸着量が増加していった。脱着においては、8Torr付近まで吸着側と同じ吸着量を示し、吸着側で示した吸着量の立ち上がり位置よりわずかに低相対圧側にシフトした。5Torr以下の領域の各測定点では対応する吸着側の各測定点よりも100 mg/g以上吸着量の差を示し、ヒステリシスを示した。14Torr付近にある測定点は8Torrから12Torrにある測定点の直線上にあると考えられるが実際には外れている。これは気相の水が凝縮していることが考えられる。
【実施例】
【0046】
φw = 0.85における水・エタノールの各成分の吸着等温線を図6に示す。図6の水エタノール各成分の吸着等温線では、低相対圧においては、両成分ともあまり吸着量を示さないが、3Torr付近から吸着量の立ち上がりを示し、7Torr付近でおおむね立ち上がりきり、7Torr以降でも徐々に吸着量が増加していき細孔を充填した。脱着において、水成分の吸着等温線は5Torr付近まで吸着量の立ちあがりの付近で吸着、脱着において少し吸着量の差があるものの、同じ経路をたどっている。5Torr以下の領域では吸着側の吸着量より大きな吸着量を示し、成分ヒステリシスを示した。一方、脱着側のエタノール成分の吸着等温線は圧力が減少するに従って、吸着量がわずかに増加していき、成分ヒステリシスを示した。吸着側において、水、エタノール成分の吸着等温線は吸着量のスケールに違いがあるが、吸着量の立ち上がり位置や等温線の形状はよく似ている。そのため、φw = 0.85の条件でも、水とエタノールは集団で吸着していると考えられる。
【実施例】
【0047】
(気相分率0.15での測定)
φw = 0.15における全吸着量の吸着等温線を図7に示す。φw = 0.15の時の全吸着量の吸着等温線は吸着側の始めの測定点から大きな吸着量を示し、測定した1Torr以上の圧力領域では圧力が増加しても穏やかに吸着量が増加していることが認められる。
【実施例】
【0048】
φw = 0.15における水、エタノール各成分の吸着等温線を図8に示す。水、エタノールの各成分の吸着等温線はともに、低相対圧から大きな吸着量を示し、測定した1Torr以上の圧力領域では圧力が増加しても穏やかに吸着量が増加していることが認められる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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