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明細書 :タンパク質内包不織布の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-015959 (P2016-015959A)
公開日 平成28年2月1日(2016.2.1)
発明の名称または考案の名称 タンパク質内包不織布の製造方法
国際特許分類 C12N  11/04        (2006.01)
C12N  11/08        (2006.01)
FI C12N 11/04
C12N 11/08 E
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2014-143141 (P2014-143141)
出願日 平成26年7月11日(2014.7.11)
発明者または考案者 【氏名】水野 稔久
【氏名】小幡 亜希子
【氏名】市来 健太郎
【氏名】小枝 周平
【氏名】柴田 将英
【氏名】岩永 憲彦
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4B033
Fターム 4B033NA01
4B033NA02
4B033NA22
4B033NA26
4B033NA42
4B033NB02
4B033NB13
4B033NB33
4B033NC01
4B033NC06
4B033ND11
4B033ND20
4B033NH10
4B033NJ01
4B033NJ10
要約 【課題】本発明はタンパク質を失活させることなく不織布に内包させ、さらに、高い酵素活性を示すものを提供することにある。
【解決手段】本発明は、水を溶媒とし、タンパク質共存下三次元ポリマーを作製し、電解紡糸して不織布を作製し、該不織布を不溶化処理する行程を含む方法により得られうるタンパク質内包不織布の製造方法である。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
水を溶媒とし、タンパク質共存下三次元ポリマーを作製し、電解紡糸して不織布を作製し、該不織布を不溶化処理する行程を含む方法により得られうるタンパク質内包不織布の製造方法。
【請求項2】
水を溶媒とし、タンパク質共存下ポリγ—グルタミン酸と架橋剤から三次元ポリマーを作製し、電解紡糸して不織布を作製し、該不織布を不溶化処理する行程を含む方法により得られうる請求項1に記載のタンパク質内包不織布の製造方法。
【請求項3】
水を溶媒とし、キモトリプシン共存下ポリγ—グルタミン酸と3—グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランから三次元ポリマーを作製し、電解紡糸して不織布を作製し、該不織布を不溶化処理する行程を含む方法により得られうる請求項1または請求項2に記載のタンパク質内包不織布の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質内包不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質のポリマー(合成高分子)への導入及びポリマーの不織布への成形について以下の文献がある。
【0003】
特許文献1は、天然蛋白質あるいはペプチドとアニオン性高分子電解質水溶液、カチオン性高分子電解質水溶液のいずれか、あるいは、両方との高度高分子複合体からなることを特徴とする成形品、及び、当該成形品の形態が、繊維、編み物、フィルム及びシート状物、ゲル及びゲル状物、カプセル及びビーズ状物、不織布及び紙のうちの少なくとも1種を含むことを開示している。
【0004】
特許文献1は、反対の電荷をもつ高分子電解質溶液を混合すると、両者は直ちに対イオンを放出し、クーロン力を介して、ポリイオンコンプレックスを形成することを利用して、蛋白質、ペプチド、多糖、オリゴ糖などの生体高分子、ならびに、薬剤などの生理活性物質を水あるいは緩衝液に溶解させた後、その電荷によりカチオン性高分子とアニオン性高分子のいずれかあるいは両者へ混合後、両溶液を接触させた後、その界面に形成されるゲル状の膜を利用して化学修飾をすることなしに蛋白質、ペプチド、多糖、オリゴ糖などの生体高分子、ならびに、薬剤などの生理活性物質を導入した成形品へと状態変化させることが可能であるとしている。また、文献1に記載の発明における界面反応による成形品の製造法は、主に水を媒質として利用し、温度は室温程度、pHは中性付近、つまり生体内あるいは自然環境に近い緩和な条件で行うことができるとしている。
【0005】
特許文献1において、成形の例として、カチオン性高分子電解質としてキトサン、アニオン性高分子電解質としてジェランを用い、導入する蛋白質としてヒト毛髪蛋白質溶液をジェラン水溶液に混ぜた混合液を調製し、キトサン水溶液に重層して、その界面をつまみ引っ張ることにより紡糸することを開示している。
【0006】
さらに特許文献1において、成形例としてカプセルを形成することを開示しており、
カプセルのサイズは、チューブの太さや送液速度により変化し、蛋白質及びペプチドに加え、遺伝子、薬剤を含む生理活性物質、色素、香料を内部に埋め込むことや、表面に露出させることが可能であるとしている。
【0007】
電界紡糸について、以下の文献がある。
特許文献2は、緑内障の治療のために眼からの房水の排水を支援するための処置で使用するため、軟組織を維持するために提供される繊維マトリックスが開示されており、当該繊維はポリマー材料を含むことができ、繊維マトリックスは電解紡糸法によって製造されることができるとしている。
特許文献2は、緑内障を治療するために眼から房水を排水するための空間の維持といった軟組織における空間の維持を課題としている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2005-60648
【特許文献2】特表2012-531274
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は、タンパク質を変性させることなく、緩和な条件下でポリマー(合成高分子)にタンパク質を導入することができることを開示している。しかし、タンパク質の酵素機能に着目した際、酵素活性の点で問題を残す。すなわち、特許文献1は、紡糸の一例として、高度高分子複合体における界面をつまみ引っ張ることにより行うとしている。酵素タンパク質と基質の反応は、不織布の繊維に基質溶液が含浸し行われる。繊維に埋もれたタンパク質は機能せず、含浸する部位にタンパク質が集合していることが酵素活性に関わる。特許文献1は、繊維の形状(太さ)を考慮した構成ではない。
また、特許文献1では、成型例として、カプセルを形成することを開示しており、
蛋白質及びペプチド他を、表面に露出させることが可能であるとしているとしているが、具体的な開示はない
特許文献2は、電界紡糸法により作製された繊維マトリックスが開示されているが、電界紡糸法は、緑内障を治療するために眼から房水を排水するための空間の維持といった軟組織における空間の維持を課題とした繊維の作製に用いられたものである。すなわち、特許文献2は、空隙の形成を作用機能とするものであり、タンパク質を導入した三次元ポリマーを紡糸し内包タンパク質の酵素活性を上昇させる目的で電界紡糸法を用いる示唆はない。ゆえに、酵素活性の調整に関して課題を残す。
従って、本発明の課題はタンパク質を失活させることなく不織布に内包させ、さらに、高い酵素活性を示すものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、タンパク質導入三次元ポリマーを極細の繊維に紡糸するという考えの下に、高い酵素活性を保持したタンパク質を、扱いやすい不織布に担持した、タンパク質内包不織布を見出した。
【0011】
発明1は、水を溶媒とし、タンパク質共存下三次元ポリマーを作製し、電解紡糸して不織布を作製し、該不織布を不溶化処理する行程を含む方法により得られうるタンパク質内包不織布の製造方法である。
発明2は、水を溶媒とし、タンパク質共存下ポリγ—グルタミン酸と架橋剤から三次元ポリマーを作製し、電解紡糸して不織布を作製し、該不織布を不溶化処理する行程を含む方法により得られうる発明1に記載のタンパク質内包不織布の製造方法である。
発明3は、水を溶媒とし、キモトリプシン共存下ポリγ—グルタミン酸と3—グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランから三次元ポリマーを作製し、電解紡糸して不織布を作製し、該不織布を不溶化処理する行程を含む方法により得られうる発明1または発明1に記載のタンパク質内包不織布の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態において作成される、キモトリプシンを内包した不織布の走査型電子顕微鏡により求められたナノファーバーの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0014】
発明1は、水を溶媒とする環境で、タンパク質を導入した3次元ポリマーを作製することにより、タンパク質の活性を保つことができる。また、タンパク質を導入した三次元ポリマーを電界紡糸し、極細の繊維を作製し基質と酵素タンパク質の接触面を増すことにより、内包するタンパク質の酵素活性機能を高めている。また、3次元ポリマーは熱処理により架橋度を上げ不溶化することが可能な構成である。ゆえに、3次元ポリマーにタンパク質を導入し、電界紡糸により不織布を作製し、その後三次元ポリマーの架橋度をあげ不溶化処理を施すことにより、系に存在するタンパク質分解酵素等が、内包されたタンパク質を分解すること等を防御し、また、不溶化することにより不織布の扱いが容易となる。さらに、電界紡糸し作製された繊維が、分子サイズに応じたフィルターの役割を果たし、内包タンパク質と特定分子とを選択的に反応させる。

【0015】
水を溶媒とするとは、本発明における三次元ポリマーは、タンパク質共存下、水を溶媒とし合成されることをいう。有機溶媒中では、導入するタンパク質は変性し失活する。
タンパク質共存下三次元ポリマーを作製するとは、三次元ポリマーを生成する際、その網目構造の中にタンパク質が担持されることをいう。三次元ポリマーは架橋剤と架橋剤と反応する官能基を有するポリマーとから生成される。また、架橋剤と架橋剤と反応する官能基を有するポリマーを生成するモノマーとから作製されてもよい。

【0016】
共存させるタンパク質として、キモトリプシン、リパーゼ、DNAポリメラーゼなどの酵素類、抗体蛋白質、生理活性ペプチドなどが考えられる。
また三次元ポリマーとして、ポリγ—グルタミン酸、ポリα-グルタミン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシメチルセルロースなどのポリカルボン酸、ポリリジンなどのポリアミンなどと架橋剤から形成させる三次元ポリマーがある。

【0017】
架橋剤とは、ポリマーを網目構造とする反応点が2点以上ある分子をいい、架橋剤として、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランのようなエポキシド部位とトリアルコキシシリル部位を持つ誘導体あるいは活性エステル部位とトリアルコキシシリル部位を持つ誘導体である。

【0018】
電界紡糸とは、ポリマー溶液をシリンジに入れ、シリンジのニードルとコレクター間に高電圧をかけながらポリマー溶液を射出させ、電圧がしきい値を超えると、電荷の反発力がポリマー液滴の表面張力に打ち勝って電荷を帯びた噴流が発生し、電場内で噴流は伸長して非常に細いファイバーを形成し、コレクター上にファイバーが集積され紡糸する技術をいう。電界紡糸により極細の繊維が形成される。
不織布とは、不繊繊維のことをいい、本発明では電界紡糸により形成された繊維が集積され得られる。

【0019】
不溶化処理とは、三次元ポリマーの架橋度を熱処理により上げることをいう。本発明で電界紡糸により作製した不織布は、水に可溶な状態である。ここで、溶液を熱すると、三次元ポリマーを形成するポリマーにおける架橋剤と反応する官能基がさらに架橋剤と反応することにより、架橋度が上がり、水に不溶となる。熱処理は、内包されたタンパク質が変性されない程度に行われる。

【0020】
発明2において、三次元ポリマーとして、ポリγ—グルタミン酸と架橋剤からなる三次元ポリマーがある。ポリγ—グルタミン酸の化学式を、化1に示す。
【化1】
JP2016015959A_000003t.gif

【0021】
ポリγ—グルタミン酸は、生体適合性に優れる。また、ポリγ—グルタミン酸は、水に溶解しにくいことから水酸化カルシウムを共存させて水に溶解させるが、紡糸し繊維としたとき膨潤しないため、内包したタンパク質を捕捉させておくことができ、また、内包タンパク質と反応させる基質の分子量に選択性を持たせることができる。

【0022】
発明3の3—グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの化学式を化2に示す。
【化2】
JP2016015959A_000004t.gif

【0023】
共存させるタンパク質として、キモトリプシンがある。架橋剤として、3—グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランがある。

【0024】
さらに、本発明として、水を溶媒とし、タンパク質共存下ポリγ—グルタミン酸と3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランから三次元ポリマーを作製し、電解紡糸して不織布を作製し、該不織布を不溶化処理する行程を含む方法により得られうるタンパク質内包不織布がある。

【0025】
(第1実施例)
タンパク質内包不織布は、以下の方法により製造した。
ポリγ-グルタミン酸500mg(和光純薬)と水酸化カルシウム128mg(和光純薬)を2.5mlの蒸留水に溶かし、その後3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン188mg(アルドリッチ社)とテトラエトキシシラン100mg(和光純薬)を添加し室温で2.5時間撹拌を行った。

【0026】
その後、タンパク質150mgを0.5mlの蒸留水に溶かして添加し、そのまま30分撹拌を続けることで蛋白質含有前駆体溶液を得た。この溶液を注射器に移しシリンジポンプで溶液を押し出しながら電解紡糸を行うことにより、不織布とした。ただし、このままでは水系溶媒に溶解してしまうため、50℃で6時間加熱処理行うことにより、目的とする水に不溶なタンパク質内包不織布を得た。その微細構造は、走査型電子顕微鏡により確認を行い、300nm程度の均一な直径を持つことが確認された。

【0027】
(第2実施例)
キモトリプシンを内包した不織布の加水分解活性に関しては、以下の方法で検討を行った。0.365mg、0.75mg、2.25mgと、異なる重さのキモトリプシン内包不織布をそれぞれ量りとり、一辺2mm程度にそれぞれ切り刻んだ。これらを、50mM Tris・HCl(pH7.8)3mlに別々に加えて、25℃で30分程度静置した。

【0028】
その後、ここへ終濃度0.4mMになるようにp-ニトロフェニル酢酸をそれぞれ添加し、10分間溶液を撹拌しながら加水分解反応を進行させた。その後不織布を溶液から取り除き、この溶液中に含まれる、p-ニトロフェニル酢酸の加水分解により生成したp-ニトロフェノールの量を、400nmの吸光度により決定した。なお、pH7.8におけるp-ニトロフェノールの400nmにおけるモル吸光係数は、18380cm-1・dmol-1・Lとした。それぞれの不織布の重量から推定されるキモトリプシンの重量と、それぞれの不織布の量で10分間に生成したp-ニトロフェノールの量をプロットし、0点を通る直線が引けることを確認し、この傾きから不織布に内包されたキモトリプシンの活性を決定した。その結果、同量のキモトリプシンが50mM Tris・HCl(pH7.8)に溶解している場合と比較し、1/3程度の活性の維持が確認された。

【0029】
これは、不織布ナノファイバーの表面近くに存在するキモトリプシンのみが酵素活性の発現に関与しているためであり、不織布内部に留められたキモトリプシン担体の酵素活性が失活したことによるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
生活や産業上の排水処理に、リパーゼ等の酵素(タンパク質等)を使用している場合、酵素は高価なため処理後酵素を回収して再使用するニーズは高い。本発明のタンパク質内包不織布は、この酵素を効果的に回収する担体として使用ができる。


図面
【図1】
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