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明細書 :荷電粒子軌道制御装置、荷電粒子加速器、荷電粒子蓄積リング及び偏向電磁石

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5854518号 (P5854518)
登録日 平成27年12月18日(2015.12.18)
発行日 平成28年2月9日(2016.2.9)
発明の名称または考案の名称 荷電粒子軌道制御装置、荷電粒子加速器、荷電粒子蓄積リング及び偏向電磁石
国際特許分類 H05H  13/04        (2006.01)
FI H05H 13/04 S
H05H 13/04 E
請求項の数または発明の数 12
全頁数 30
出願番号 特願2012-549810 (P2012-549810)
出願日 平成23年12月19日(2011.12.19)
国際出願番号 PCT/JP2011/079423
国際公開番号 WO2012/086612
国際公開日 平成24年6月28日(2012.6.28)
優先権出願番号 2010283850
優先日 平成22年12月20日(2010.12.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年10月2日(2014.10.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】佐々木 茂美
【氏名】宮本 篤
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100138955、【弁理士】、【氏名又は名称】末次 渉
【識別番号】100109449、【弁理士】、【氏名又は名称】毛受 隆典
審査官 【審査官】鳥居 祐樹
参考文献・文献 特開平06-089800(JP,A)
特開平05-182797(JP,A)
特開平04-112500(JP,A)
特開平02-299200(JP,A)
調査した分野 H05H 13/04
特許請求の範囲 【請求項1】
周回型の荷電粒子加速器又は荷電粒子蓄積リングに用いられ、
荷電粒子が折れ線軌道で周回し複数周回で元の軌道に復帰可能に構成されており、
それぞれが少なくとも1つの偏向電磁石を有し、前記荷電粒子を偏向させるように構成された複数の偏向部を有し、
前記荷電粒子が通過する度に、前記各偏向部における前記荷電粒子の軌道が2つの軌道の間で交互に切り替わるように、前記各偏向部の偏向角と互いの位置関係が規定されている、
荷電粒子軌道制御装置。
【請求項2】
前記荷電粒子が通過する度に、前記各偏向部に入射する前記荷電粒子の入射位置が2つの位置で交互に切り替わるように、前記各偏向部の偏向角と互いの位置関係が規定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子軌道制御装置。
【請求項3】
前記荷電粒子が通過する度に、前記各偏向部に入射する前記荷電粒子の入射角度が2つの角度で交互に切り替わるように、前記各偏向部の偏向角と互いの位置関係が規定されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の荷電粒子軌道制御装置。
【請求項4】
前記各偏向部には、
前記荷電粒子の軌道の内周側から外周側に沿って磁気勾配が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子軌道制御装置。
【請求項5】
mの倍数でない自然数をnとすると、正n角形の外縁に前記各偏向部を配置して、前記荷電粒子がm(mは1でない自然数)周回で元の軌道に復帰するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子軌道制御装置。
【請求項6】
前記各偏向部は、
前記荷電粒子の周回中の軌道に前記正n角形の各辺の一部が含まれるように、かつ、前記荷電粒子が前記正n角形の各辺をm-1個置きに通るように、前記荷電粒子を偏向させる、
ことを特徴とする請求項5に記載の荷電粒子軌道制御装置。
【請求項7】
mは3であり、
前記偏向部は、
前記正n角形の各頂点にそれぞれ配置され、
一方の隣接頂点から到達した前記荷電粒子を、他方の隣接頂点に隣接する頂点に向かって偏向させ、
前記一方の隣接頂点に隣接する他の頂点から到達した前記荷電粒子を、前記他方の隣接頂点に向かって偏向させる、
ことを特徴とする請求項5に記載の荷電粒子軌道制御装置。
【請求項8】
前記正n角形の各頂点の間に、一方の隣接頂点から出た前記荷電粒子を他方の隣接頂点に偏向させる偏向部がさらに設けられている、
ことを特徴とする請求項7に記載の荷電粒子軌道制御装置。
【請求項9】
nは、2の倍数でなく、かつ、3の倍数でもない自然数であり、
前記偏向電磁石の磁力を制御する電磁石電源をさらに備え、
前記電磁石電源が、前記複数の偏向電磁石各々の磁力を調整することにより、
前記荷電粒子の周回数を1乃至3の間で切り換え可能である、
ことを特徴とする請求項5に記載の荷電粒子軌道制御装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の荷電粒子軌道制御装置によって荷電粒子の軌道が制御された荷電粒子加速器。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の荷電粒子軌道制御装置によって荷電粒子の軌道が制御された荷電粒子蓄積リング。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の荷電粒子軌道制御装置に用いられ、
複数の異なる位置から荷電粒子を入射し、その入射位置に応じた荷電粒子の互いに交差する複数の異なる軌道を有し、各軌道に応じた複数の異なる位置から荷電粒子を出射する、
偏向電磁石。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子の周回型の軌道を制御する荷電粒子軌道制御装置、荷電粒子加速器、荷電粒子蓄積リング及び偏向電磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
周回(リング)型の荷電粒子加速器には、主要なタイプとして、サイクロトロンとシンクロトロンとがある。サイクロトロンでは、加速する荷電粒子のエネルギーが高くなるにつれてその軌道半径が大きくなる。一方、シンクロトロンでは、加速する荷電粒子のエネルギーが高くなるのに同期して偏向電磁石の強度も大きくするため、加速する荷電粒子の軌道は常に一定に保たれている。
【0003】
シンクロトロン型の荷電粒子加速器や荷電粒子蓄積リングは、現在では電子(陽電子)やプロトンの高エネルギー加速器として用いられる他、大小の放射光源リングとして世界中で建設され稼働している(例えば、非特許文献1乃至5参照)。また、近年では、プロトンや炭素イオンを加速・蓄積し、医療用に供するシンクロトロン施設が数多く建設されている(例えば、非特許文献6乃至8参照)。
【0004】
これら非特許文献1乃至8に開示されたシンクロトロン加速器中の粒子軌道は全て1周で閉じている。すなわち、加速器中の荷電粒子は、リング1周で元の軌道に復帰している。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】H.Yokomizo, S.Sasaki, et al., "Design of a small storage ring in JAERI.", Proceedings of EPAC88, 1988, p.455
【非特許文献2】W.Namkung, "Review of third generation light sources." Proceedings of IPAC10, Kyoto, Japan, 2010, WEXRA01
【非特許文献3】S.Koda, et al., "Progress and status of synchrotron radiation facility Saga Light Source." ibid, WEPEA040
【非特許文献4】M.Adachi, et al., "Present status and upgrade plan on coherent light source developments at UVSOR-II." ibid, WEPEA038
【非特許文献5】A.Miyamoto, et al., "HiSOR-II future plan of Hiroshima Synchrotron Radiation Center." ibid, WEPEA029
【非特許文献6】S.Yamada, et al., "The progress of HIMAC and particle therapy facilities in Japan." , Proceeding of 2nd Asian Particle Accelerator Conference, Beijing, China, 2001, p.829
【非特許文献7】T.Furukawa, et al., "Design of synchrotron and transport line for carbon therapy facility and related machine study at HIMAC.", Nucl. Instrum. Methods, A562(2006)1050
【非特許文献8】K.Noda, et al., "New treatment research facility project at HIMAC.", Proceedings of IPAC10, Kyoto, Japan, 2010, TUOCRA01
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、周回型の荷電粒子加速器や放射光源用の荷電粒子蓄積リングは、荷電粒子束(バンチ)がリングを1周する度に同じ周回軌道に乗るように設計、製作されている。すなわち、従来の荷電粒子加速器や荷電粒子蓄積リングでは、リング1周が、周回軌道の1周期となる。
【0007】
この場合、最大蓄積可能バンチ数は、RF周波数とリング1周の長さ(周長)を決めれば一意的に決まり、1周に1個のバンチを蓄積した場合には、バンチがリング内のある場所に到達する時間間隔は、周長で一意的に決まってしまう。
【0008】
これにより、例えば、放射光パルスによる励起によって引き起こされた物質の電子状態の時間変化を追う実験(TOF;Time of Flight)を行う場合、パルス間隔の最大値は、リングの周長によって決まってしまうため、リングの周長が短いと、変化の過程を最後まで追うのが困難になる場合がある。
【0009】
すなわち、従来の荷電粒子加速器や荷電粒子蓄積リングでは、周長が決まればバンチが周回して元の軌道に戻るまでの時間が決まるため、周長の短い小型リングでは、単バンチ運転を行っても放射光を利用する研究のうち、TOFなどの実験に必要な長いバンチ間隔を得ることが困難になる。また、周長によって決まる最大バンチ数により蓄積可能な最大の荷電粒子数も決まってしまう。
【0010】
さらに、放射光源として用いられる電子シンクロトロンでは、挿入光源と呼ばれる高輝度光発生装置をリングの直線部に設置することが一般に行われている。1周で元の軌道に復帰するリングでは挿入光源を設置可能な直線部の数が限られてくる。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、同じ設置面積で、周長を実質的に長くすることができる周回型の荷電粒子軌道制御装置、荷電粒子加速器、荷電粒子蓄積リング及び偏向電磁石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る荷電粒子軌道制御装置は、
周回型の荷電粒子加速器又は荷電粒子蓄積リングに用いられ、
荷電粒子が折れ線軌道で周回し複数周回で元の軌道に復帰可能に構成されており、
それぞれが少なくとも1つの偏向電磁石を有し、前記荷電粒子を偏向させるように構成された複数の偏向部を有し、
前記荷電粒子が通過する度に、前記各偏向部における前記荷電粒子の軌道が2つの軌道の間で交互に切り替わるように、前記各偏向部の偏向角と互いの位置関係が規定されている。
【0013】
前記荷電粒子が通過する度に、前記各偏向に入射する前記荷電粒子の入射位置が2つの位置で交互に切り替わるように、前記各偏向の偏向角と互いの位置関係が規定されている、
こととしてもよい。
【0014】
前記荷電粒子が通過する度に、前記各偏向に入射する前記荷電粒子の入射角度が2つの角度で交互に切り替わるように、前記各偏向の偏向角と互いの位置関係が規定されている、
こととしてもよい。
【0015】
前記各偏向には、
前記荷電粒子の軌道の内周側から外周側に沿って磁気勾配が形成されている、
こととしてもよい。
【0016】
mの倍数でない自然数をnとすると、正n角形の外縁に前記各偏向を配置して、前記荷電粒子がm(mは1でない自然数)周回で元の軌道に復帰するように構成されている、
こととしてもよい。
【0017】
前記各偏向は、
前記荷電粒子の周回中の軌道に前記正n角形の各辺の一部が含まれるように、かつ、前記荷電粒子が前記正n角形の各辺をm-1個置きに通るように、前記荷電粒子を偏向させる、
こととしてもよい。
【0018】
mは3であり、
前記偏向は、
前記正n角形の各頂点にそれぞれ配置され、
一方の隣接頂点から到達した前記荷電粒子を、他方の隣接頂点に隣接する頂点に向かって偏向させ、
前記一方の隣接頂点に隣接する他の頂点から到達した前記荷電粒子を、前記他方の隣接頂点に向かって偏向させる、
こととしてもよい。
【0019】
前記正n角形の各頂点の間に、一方の隣接頂点から出た前記荷電粒子を他方の隣接頂点に偏向させる偏向がさらに設けられている、
こととしてもよい。
【0020】
nは、2の倍数でなく、かつ、3の倍数でもない自然数であり、
記偏向電磁石の磁力を制御する電磁石電源をさらに備え、
前記電磁石電源が、前記複数の偏向電磁石各々の磁力を調整することにより、
前記荷電粒子の周回数を1乃至3の間で切り換え可能である、
こととしてもよい。
【0021】
本発明の第2の観点に係る荷電粒子加速器は、
本発明の荷電粒子軌道制御装置によって荷電粒子の軌道が制御されている。
【0022】
本発明の第3の観点に係る荷電粒子蓄積リングは、
本発明の荷電粒子軌道制御装置によって荷電粒子の軌道が制御されている。
【0023】
本発明の第4の観点に係る偏向電磁石は、
本発明の荷電粒子軌道制御装置に用いられ、
複数の異なる位置から荷電粒子を入射し、その入射位置に応じた荷電粒子の互いに交差する複数の異なる軌道を有し、各軌道に応じた複数の異なる位置から荷電粒子を出射する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、荷電粒子が元の軌道に復帰する周回数を複数周回としているので、同じ設置面積で、その周長を実質的に2倍以上に延ばすことができる。周長の伸長は、以下に示す効果を奏する。
(1)小型放射光源用電子蓄積リングで行うTOF(例えば時間分解光電子分光実験)において、物質の電子状態の時間変化を終状態まで追うことが可能となる。
(2)同じ設置面積で周長が2倍、3倍となるので、リング内に蓄積できる最大荷電粒子数も2倍、3倍となるため、放射線療法などの医学応用加速器に適用した場合に、ビームを取り出し患部に照射できる放射線量を格段に増やすことができる。
(3)挿入光源を設置可能な直線部の数が増えるので、高輝度光を利用できる実験ステーションを数多く設置できる。
(4)省スペース、低コストで荷電粒子加速器や荷電粒子蓄積リングを構成することができる。
また、本発明によれば、偏向電磁石を荷電粒子が通過する度に荷電粒子の軌道が交互に切り替わるように、各偏向電磁石が配置されている。これにより、本発明は、以下の効果を奏する。
(5)偏向電磁石の数に対する荷物粒子の軌道における直線の数を、さらに増やすことができる。
(6)荷電粒子が1周の間に通過する偏向電磁石の数を増やすことができるので、直線の数を増やしつつも、偏向角を小さくすることができる。低エミッタンス化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る荷電粒子軌道制御装置の構成を示す上面図である。
【図2】図1の荷電粒子軌道制御装置の荷電粒子軌道形状を示す図である。
【図3A】2周回の軌道を有する正5角形の荷電粒子軌道制御装置(頂点型)の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図3B】2周回の軌道を有する正5角形の荷電粒子軌道制御装置の変形された粒子軌道を示す図である。
【図3C】2周回の軌道を有する正5角形の荷電粒子軌道制御装置(辺型)の構成を示す図である。
【図3D】2周回の軌道を有する正5角形の荷電粒子軌道制御装置(辺型)の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図4A】2周回の軌道を有する正7角形の荷電粒子軌道制御装置(頂点型)の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図4B】2周回の軌道を有する正7角形の荷電粒子軌道制御装置の変形された粒子軌道を示す図である。
【図4C】2周回の軌道を有する正7角形の荷電粒子軌道制御装置(辺型)の構成を示す図である。
【図4D】2周回の軌道を有する正7角形の荷電粒子軌道制御装置(辺型)の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図5A】2周回の軌道を有する正9角形の荷電粒子軌道制御装置(頂点型)の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図5B】2周回の軌道を有する正9角形の荷電粒子軌道制御装置の変形された粒子軌道を示す図である。
【図5C】2周回の軌道を有する正9角形の荷電粒子軌道制御装置(辺型)の構成を示す図である。
【図5D】2周回の軌道を有する正9角形の荷電粒子軌道制御装置(辺型)の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図6A】2周回の軌道を有する正11角形の荷電粒子軌道制御装置(頂点型)の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図6B】2周回の軌道を有する正11角形の荷電粒子軌道制御装置(辺型)の構成を示す図である。
【図6C】2周回の軌道を有する正11角形の荷電粒子軌道制御装置(辺型)の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図7A】2周回の軌道を有する正13角形の荷電粒子軌道制御装置(頂点型)の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図7B】2周回の軌道を有する正13角形の荷電粒子軌道制御装置(辺型)の構成を示す図である。
【図7C】2周回の軌道を有する正13角形の荷電粒子軌道制御装置(辺型)の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図8】2周回の軌道を有する正5角形の荷電粒子軌道制御装置(辺型)の構成を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る荷電粒子軌道制御装置の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図10A】図9の粒子軌道折れ線を有する荷電粒子軌道制御装置(ダブルベンド型)の構成を示す上面図である。
【図10B】図9の粒子軌道折れ線を有する荷電粒子軌道制御装置(トリプルベンド型)の構成を示す上面図である。
【図11A】正7角形を基準とするダブルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図11B】正7角形を基準とするダブルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の構成を示す図である。
【図11C】正7角形を基準とするトリプルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図11D】正7角形を基準とするトリプルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の構成を示す図である。
【図12A】正8角形を基準とするダブルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図12B】正8角形を基準とするダブルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の構成を示す図である。
【図12C】正8角形を基準とするトリプルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図12D】正10角形を基準とするトリプルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の構成を示す図である。
【図13A】正10角形を基準とするダブルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図13B】正10角形を基準とするダブルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の構成を示す図である。
【図13C】正10角形を基準とするトリプルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図13D】正10角形を基準とするトリプルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の構成を示す図である。
【図14A】正11角形を基準とするダブルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図14B】正11角形を基準とするダブルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の構成を示す図である。
【図14C】正11角形を基準とするトリプルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図14D】正11角形を基準とするトリプルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の構成を示す図である。
【図15A】正13角形を基準とするダブルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図15B】正13角形を基準とするダブルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の構成を示す図である。
【図15C】正13角形を基準とするトリプルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図15D】正13角形を基準とするトリプルベンド型の荷電粒子軌道制御装置の構成を示す図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る荷電粒子軌道制御装置の構成を示す上面図である。
【図17A】トリプルベンド型の正7角形の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図17B】正7角形を基準とするトリプルベンド型ラティスを有する荷電粒子軌道制御装置における荷電粒子の3周回軌道を示す図である。
【図17C】正7角形を基準とするトリプルベンド型ラティスを有する荷電粒子軌道制御装置における荷電粒子の2周回軌道を示す図である。
【図17D】正7角形を基準とするトリプルベンド型ラティスを有する荷電粒子軌道制御装置における荷電粒子の1周回軌道を示す図である。
【図18A】ダブルベンド型の正7角形の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図18B】正7角形を基準とするダブルベンド型ラティスを有する荷電粒子軌道制御装置における荷電粒子の3周回軌道を示す図である。
【図18C】正7角形を基準とするダブルベンド型ラティスを有する荷電粒子軌道制御装置における荷電粒子の2周回軌道を示す図である。
【図18D】正7角形を基準とするダブルベンド型ラティスを有する荷電粒子軌道制御装置における荷電粒子の1周回軌道を示す図である。
【図19A】トリプルベンド型の正11角形の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図19B】正11角形を基準とするトリプルベンド型ラティスを有する荷電粒子軌道制御装置における荷電粒子の3周回軌道を示す図である。
【図19C】正11角形を基準とするトリプルベンド型ラティスを有する荷電粒子軌道制御装置における荷電粒子の2周回軌道を示す図である。
【図19D】正11角形を基準とするトリプルベンド型のラティスを有する荷電粒子軌道制御装置における荷電粒子の1周回軌道を示す図である。
【図20A】ダブルベンド型の正11角形の粒子軌道折れ線を示す図である。
【図20B】正11角形を基準とするダブルベンド型ラティスを有する荷電粒子軌道制御装置における荷電粒子の3周回軌道を示す図である。
【図20C】正11角形を基準とするダブルベンド型ラティスを有する荷電粒子軌道制御装置における荷電粒子の2周回軌道を示す図である。
【図20D】正11角形を基準とするダブルベンド型ラティスを有する荷電粒子軌道制御装置における荷電粒子の1周回軌道を示す図である。
【図21】正3角形を基準とするラティスを有する荷電粒子軌道制御装置の構成(その1)を示す上面図である。
【図22】正3角形を基準とするラティスを有する荷電粒子軌道制御装置の構成(その2)を示す上面図である。
【図23】正5角形を基準とするラティスを有する荷電粒子軌道制御装置の構成の一例を示す上面図である。
【図24】偏向角と軌道の交差角を説明するための図である。
【図25】偏向電磁石に付与された磁気勾配を説明するための図である。
【図26】正多角形でない構造を有する荷電粒子軌道制御装置の構成の一例を示す図である。
【図27】荷電粒子の直線部分にアンジュレータが挿入されている様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。

【0027】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。

【0028】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る荷電粒子軌道制御装置100の構成について説明する。図1に示すように、荷電粒子軌道制御装置100は、複数の偏向電磁石1(1A~1K)と、複数の4極電磁石2と、を備える。

【0029】
偏向電磁石1(1A~1K)は、正11角形の各頂点にそれぞれ配置されている。すなわち、本実施形態では、周回数mは2であり、辺の数nは11であり、nはmの倍数ではない。

【0030】
偏向電磁石1(1A~1K)は、荷電粒子3を偏向させる。偏向電磁石1(1A~1K)は、荷電粒子3が正11角形の各頂点を1つ置きに通るように、荷電粒子3を偏向させる。例えば、偏向電磁石1Aは、偏向電磁石1Jから到達した荷電粒子3を、偏向電磁石1Cに向かって偏向させる。

【0031】
図1では、荷電粒子3の軌道が破線で示されている。図1に示すように、荷電粒子3は、正11角形の各頂点を1つ置きに通っているのがわかる。

【0032】
4極電磁石2は、荷電粒子3の軌道上に配置されている。4極電磁石2は、荷電粒子3による荷電粒子束が発散するのを防いでいる。

【0033】
なお、図1では、荷電粒子3を加速させる高周波加速空洞等については、その図示を省略している。

【0034】
図2には、荷電粒子軌道制御装置100における荷電粒子3の軌道を近似的に示す多角形が実線で示されている。図2に示すように、この荷電粒子軌道制御装置100の粒子軌道折れ線は、11回回転対称となっており、直線部で軌道が交差している。この粒子軌道折れ線は、例えば頂点型とも言うべきものである。

【0035】
この荷電粒子軌道制御装置100では、荷電粒子3は、2周回で元の軌道に復帰する。すなわち、本実施形態では、m=2である。

【0036】
本実施形態に係る荷電粒子軌道制御装置100は、荷電粒子3が元の軌道に復帰する周回数を2周回とし、リング2周を1周期としているので、同じ設置面積で、その周長を実質的に2倍以上に延ばすことができる。周長の伸長は、以下に示す効果を奏する。
(1)単バンチ運転を行った場合、バンチ間隔を2倍にすることができる。例えば、小型放射光源用電子蓄積リングで行うTOF型実験(例えば時間分解光電子分光実験)において、物質の電子状態の時間変化を終状態まで追うことが可能となる。
(2)多バンチ運転の場合、蓄積電荷量を最大2倍とすることができる。例えば、同じ設置面積で周長が2倍となるので、リング内に蓄積できる最大荷電粒子数も2倍となる。これにより、例えば、放射線療法などの医学応用加速器に適用した場合に、ビームを取り出し患部に照射できる放射線量を格段に増やすことができる。
(3)挿入光源や高周波加速空洞を挿入できる直線部の数を格段に増やすことができる。これにより、高輝度光を利用できる実験ステーションを数多く設置できるようになる。
(4)省スペース、低コストで荷電粒子加速器や荷電粒子蓄積リングを構成することができる。

【0037】
なお、周回数を2とするラティスは、正11角形のものには限られない。

【0038】
例えば、図3A~図3Dに示すように、正5角形のラティスを組むことも可能である。図3Aには、荷電粒子3が正5角形の各頂点を1つ置きに通るように、荷電粒子3を偏向させたときの粒子軌道折れ線(頂点型)が示されている。

【0039】
正5角形におけるラティスは、図3B、図3Cに示すように変形することが可能である。このラティスは、最終的には、図3Dに示すように、いわゆる辺型の粒子軌道を持つように変形することが可能である。辺型のラティスでは、偏向電磁石1は、荷電粒子3の周回中の軌道に正5角形の各辺の一部が含まれるように、かつ、荷電粒子3が正5角形の各辺を1つ置きに通るように、荷電粒子3を偏向させる。

【0040】
また、例えば、図4A~図4Dに示すように、正7角形のラティスを組むことも可能である。図4Aには、荷電粒子3が正7角形の各頂点を1つ置きに通るように、荷電粒子3を偏向させたときの粒子軌道折れ線(頂点型)が示されている。

【0041】
正7角形のラティスは、図4B、図4Cに示すように変形することが可能である。このラティスは、図4Dに示すように、最終的には、辺型の粒子軌道を持つように変形することが可能である。辺型のラティスでは、偏向電磁石1は、荷電粒子3の周回中の軌道に正7角形の各辺の一部が含まれるように、かつ、荷電粒子3が正7角形の各辺を1つ置きに通るように、荷電粒子3を偏向させる。

【0042】
また、例えば、図5A~図5Dに示すように、正9角形のラティスを組むことも可能である。図5Aには、荷電粒子3が正9角形の各頂点を1つ置きに通るように、荷電粒子3を偏向させたときの粒子軌道折れ線(頂点型)が示されている。

【0043】
正9角形のラティスは、図5B、図5Cに示すように変形することが可能である。このラティスは、図5Dに示すように、最終的には、辺型の粒子軌道を持つように変形することが可能である。辺型のラティスでは、偏向電磁石1は、荷電粒子3の周回中の軌道に正9角形の各辺の一部が含まれるように、かつ、荷電粒子3が正9角形の各辺を1つ置きに通るように、荷電粒子3を偏向させる。

【0044】
また、例えば、図6A~図6Cに示すように、正11角形のラティスを組むことも可能である。図6Aには、荷電粒子3が正11角形の各頂点を1つ置きに通るように、荷電粒子3を偏向させたときの粒子軌道折れ線(頂点型)が示されている。

【0045】
正11角形のラティスは、図6Bに示すように変形することが可能であり、最終的には、図6Cに示すように、いわゆる辺型に変形することが可能である。辺型のラティスでは、荷電粒子3の周回中の軌道に、正11角形の各辺の一部が含まれている。辺型のラティスでは、偏向電磁石1は、荷電粒子3の周回中の軌道に正11角形の各辺の一部が含まれるように、かつ、荷電粒子3が正11角形の各辺を1つ置きに通るように、荷電粒子3を偏向させる。

【0046】
また、例えば、図7A~図7Cに示すように、正13角形のラティスを組むことも可能である。図7Aには、荷電粒子3が正13角形の各頂点を1つ置きに通るように、荷電粒子3を偏向させたときの粒子軌道折れ線(頂点型)が示されている。

【0047】
正13角形のラティスは、図7Bに示すように変形することが可能であり、最終的には、図7Cに示すように、いわゆる辺型に変形することが可能である。辺型のラティスでは、荷電粒子3の周回中の軌道に、正13角形の各辺の一部が含まれている。辺型のラティスでは、偏向電磁石1は、荷電粒子3の周回中の軌道に正13角形の各辺の一部が含まれるように、かつ、荷電粒子3が正13角形の各辺を1つ置きに通るように、荷電粒子3を偏向させる。

【0048】
辺型の荷電粒子軌道制御装置100についてより詳細に説明する。

【0049】
図8には、2周回の軌道を有する正5角形の荷電粒子軌道制御装置(辺型)100の構成の一例が示されている。図8に示すように、この荷電粒子軌道制御装置(辺型)100では、正5角形の各頂点に、偏向電磁石1が設けられている。各偏向電磁石1は、入射角に対する出射角が所定の偏向角(72度)となるように荷電粒子3を偏向させる。

【0050】
図8では、荷電粒子3の軌道が実線で示されている。各偏向電磁石1において、荷電粒子3が通過する軌道は2つ存在する。各偏向電磁石1では、荷電粒子3が通過する度に、各偏向電磁石1における荷電粒子3の軌道が2つの軌道の間で交互に切り替わるように、各偏向電磁石の偏向角と互いの位置関係が規定されている。

【0051】
より具体的には、この荷電粒子軌道制御装置100では、荷電粒子3が通過する度に、各偏向電磁石1に入射する荷電粒子3の入射位置が2つの位置で交互に切り替わるように、各偏向電磁石1の偏向角と互いの位置関係が規定されている。入射位置が交互に切り替わり、各偏向電磁石1では、偏向角が一定であるため、偏向電磁石1を通過する荷電粒子3の軌道は2通りとなる。

【0052】
なお、各偏向電磁石1は、距離Lや、荷電粒子3の軌道の直線部分の長さが荷電粒子軌道制御装置100の用途に適したものとなるように、設計される必要がある。また、この偏向電磁石1の磁極端は軌道と直交するようになっているが、一般的には任意の角度を選択可能である。

【0053】
図8に示す荷電粒子軌道制御装置100によれば、偏向電磁石1を荷電粒子3が通過する度に荷電粒子3の軌道が交互に切り替わるように、各偏向電磁石1が配置されている。このため、荷電粒子軌道制御装置100は、さらに以下に示す効果を奏する。
(1)’偏向電磁石1の数に対する荷物粒子3の軌道における直線の数を、図1に示すいわゆる頂点型の荷電粒子軌道制御装置100よりもさらに増やすことができる。
(2)’荷電粒子3が1周の間に通過する偏向電磁石1の数を増やすことができるので、直線の数を増やしつつも、偏向角を小さくすることができる。このため、粒子ビームの低エミッタンス化(小径化)を実現することができる。

【0054】
(第2の実施形態)
まず、本発明の第2の実施形態について説明する。

【0055】
本実施形態に係る荷電粒子軌道制御装置100は、2周回でなく、3周回で元の軌道に復帰する点が、上記第1の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、m=3である。

【0056】
図9には、本実施形態に係る荷電粒子軌道制御装置100の粒子軌道折れ線が示されている。図9に示すように、この粒子軌道折れ線は、正11角形を基準として構築されている。

【0057】
図9では、この粒子軌道折れ線では、荷電粒子3の1周目の軌道を太線で示している。また、この粒子軌道折れ線では、荷電粒子3の2周目の軌道を実線で示している。さらに、この粒子軌道折れ線では、荷電粒子3の3周目の軌道を点線で示している。図9に示すように、この粒子軌道折れ線では、荷電粒子3は、3周回で元の軌道に復帰する。

【0058】
図10Aには、本実施形態に係る荷電粒子軌道制御装置100の構成の一例が示されている。図10Aに示すように、荷電粒子軌道制御装置100では、偏向電磁石1は、正11角形の各頂点にそれぞれ配置されている。

【0059】
偏向電磁石1は、一方の隣接頂点から到達した荷電粒子3を、他方の隣接頂点に隣接する頂点に向かって偏向させる。また、偏向電磁石1は、一方の隣接頂点に隣接する他の頂点から到達した荷電粒子3を、他方の隣接頂点に向かって偏向させる。この配置では、荷電粒子軌道に着目すれば、正11角形の各頂点で、2つの隣接する偏向電磁石が、1組として荷電粒子3の軌道を隣接頂点に隣接する他の頂点に向かって曲げて(偏向させて)いる。以下では、この型のラティスをダブルベンド型とも呼ぶ。

【0060】
この荷電粒子軌道制御装置100では、図10Bに示すように、正11角形の各頂点の間に、一方の頂点から出た荷電粒子3を隣接する頂点に偏向させる偏向電磁石4をさらに配置することも可能である。この配置では、正11角形の隣り合う2つの頂点の偏向電磁石1に、それらの間に配置された偏向電磁石4を加えた3つの偏向電磁石が、1組として荷電粒子3の軌道を曲げている。以下では、この型のラティスをトリプルベンド型とも呼ぶ。

【0061】
なお、周回数mを3とするラティスは、正11角形を基準とするものには限られない。

【0062】
図11Aには、正7角形を基準とするダブルベンド型の粒子軌道折れ線が示され、図11Bには、そのラティスのうちの偏向電磁石1の配置が示されている。また、図11Cには、正7角形を基準とするトリプルベンド型の粒子軌道折れ線が示され、図11Dには、そのラティスのうちの偏向電磁石1、4の配置が示されている。

【0063】
図12Aには、正8角形を基準とするダブルベンド型の粒子軌道折れ線が示され、図12Bには、そのラティスのうちの偏向電磁石1の配置が示されている。また、図12Cには、正8角形を基準とするトリプルベンド型の粒子軌道折れ線が示され、図12Dには、そのラティスのうちの偏向電磁石1、4の配置が示されている。

【0064】
図13Aには、正10角形を基準とするダブルベンド型の粒子軌道折れ線が示され、図13Bには、そのラティスのうちの偏向電磁石1の配置が示されている。また、図13Cには、正10角形を基準とするトリプルベンド型の粒子軌道折れ線が示され、図13Dには、そのラティスのうちの偏向電磁石1、4の配置が示されている。

【0065】
図14Aには、正11角形を基準とするダブルベンド型の粒子軌道折れ線が示され、図14Bには、そのラティスのうちの偏向電磁石1の配置が示されている。また、図14Cには、正11角形を基準とするトリプルベンド型の粒子軌道折れ線が示され、図14Dには、そのラティスのうちの偏向電磁石1、4の配置が示されている。

【0066】
図15Aには、正13角形を基準とするダブルベンド型の粒子軌道折れ線が示され、図15Bには、そのラティスのうちの偏向電磁石1の配置が示されている。また、図15Cには、正13角形を基準とするトリプルベンド型の粒子軌道折れ線が示され、図15Dには、そのラティスのうちの偏向電磁石1、4の配置が示されている。

【0067】
本実施形態に係る荷電粒子軌道制御装置100は、荷電粒子3が元の軌道に復帰する周回数を3周回とし、リング3周を1周期としているので、同じ面積で、その周長を実質的に3倍以上に延ばすことができる。周長の伸長は、以下に示す効果を奏する。
(1)単バンチ運転を行った場合、バンチ間隔を通常の3倍にすることができる。例えば、小型放射光源用電子蓄積リングで行うTOF(例えば時間分解光電子分光実験)において、物質の電子状態の時間変化を終状態まで追うことが可能となる。
(2)多バンチ運転の場合、蓄積電荷量を最大3倍とすることができる。例えば、同じ設置面積で周長が3倍となるので、リング内に蓄積できる最大荷電粒子数も3倍となる。これにより、例えば、放射線療法などの医学応用加速器に適用した場合に、ビームを取り出し同じ治療時間内に患部に照射できる放射線量を格段に増やすことができる。この結果、総治療時間を大幅に短縮することができる。
(3)挿入光源や高周波加速空洞を挿入できる直線部の数を格段に増やすことができる。これにより、高輝度光を利用できる実験ステーションを数多く設置できるようになる。

【0068】
荷電粒子軌道制御装置100は、荷電粒子3を偏向させる複数の偏向電磁石1を有し、荷電粒子3が通過する度に、各偏向電磁石1における荷電粒子3の軌道が2つの軌道の間で交互に切り替わるように、各偏向電磁石1の偏向角と互いの位置関係が規定されている。

【0069】
より詳細には、荷電粒子軌道制御装置100では、荷電粒子3が通過する度に、各偏向電磁石1に入射する荷電粒子3の入射位置が2つの位置で交互に切り替わるように、各偏向電磁石1の偏向角と互いの位置関係が規定されている。さらに、荷電粒子軌道制御装置100では、荷電粒子3が通過する度に、各偏向電磁石1に入射する荷電粒子の入射角度が2つの角度で交互に切り替わるように、各偏向電磁石1の偏向角と互いの位置関係が規定されている。

【0070】
本実施形態に係る荷電粒子軌道制御装置100は、以下に示す効果を有する。
(1)’偏向電磁石1の数に対する荷物粒子3の軌道における直線の数を、2周回のいわゆる頂点型の荷電粒子軌道制御装置100(図1参照)よりも(偏向電磁石1を交互に1つ抜かしにするよりも)増やすことができる。
(2)’荷電粒子3が1周の間に通過する偏向電磁石1の数を増やすことができるので、直線の数を増やしつつも、偏向角を小さくすることができる。このため、粒子ビームの低エミッタンス化を実現することができる。

【0071】
(第3の実施形態)
まず、本発明の第3の実施形態について説明する。

【0072】
本実施形態に係る図16の荷電粒子軌道制御装置100は、元の軌道に復帰する周回数mを切り換え可能な装置である。荷電粒子軌道制御装置100は、偏向電磁石1、4を備える。

【0073】
荷電粒子軌道制御装置100は、偏向電磁石1、4各々の磁力を制御する電磁石電源5をさらに備える。本実施形態では、電磁石電源5が、偏向電磁石1、4の磁力を調整することにより、周回数mを1乃至3の間で切り換え可能となっている。

【0074】
荷電粒子軌道制御装置100のラティスは、正7角形を基準としている。本実施形態では、n=7である。nは、2の倍数でなく、かつ、3の倍数でもない自然数である。

【0075】
図17Aには、正7角形を基準とするトリプルベンド型の粒子軌道折れ線が示されている。

【0076】
図17Bには、トリプルベンド型のラティスによる荷電粒子3の3周回軌道が示されている。このような軌道を実現するためには、電磁石電源5により正7角形の各辺の中心に位置する偏向電磁石1の磁力を、一方の隣接する偏向電磁石4から到達した荷電粒子3を他方の隣接辺に隣接する辺の中心に位置する他の偏向電磁石1に向かって偏向させ、一方の隣接辺に隣接する辺の中心に位置する他の偏向電磁石1から到達した荷電粒子3を隣接する偏向電磁石4に向かって偏向させるような大きさとすればよい。また、電磁石電源5は、偏向電磁石4の磁力の大きさを、一方の隣接する偏向電磁石1から出た荷電粒子3を他方の隣接する偏向電磁石1に偏向させる大きさとすればよい。

【0077】
図17Cには、トリプルベンド型のラティスによる荷電粒子3の2周回軌道が示されている。このような軌道を実現するためには、電磁石電源5により偏向電磁石1の磁力を、荷電粒子3が正7角形の各辺の中心にある偏向電磁石1を1つ置きに通るような大きさに設定すればよい。このとき、偏向電磁石4を荷電粒子3が通ることはないので、偏向電磁石4の磁力の大きさを0としてもよい。

【0078】
図17Dには、そのラティスによる荷電粒子3の1周回軌道が示されている。このような軌道を実現するためには、電磁石電源5により偏向電磁石1の磁力の大きさを0とし、偏向電磁石4の磁力の大きさを、荷電粒子3が正7角形の各頂点をその辺に沿って通るような大きさに設定すればよい。

【0079】
図18には、正7角形を基準とするダブルベンド型の粒子軌道折れ線が示されている。

【0080】
図18Bには、ダブルベンド型のラティスによる荷電粒子3の3周回軌道が示されている。このような軌道を実現するためには、電磁石電源5により正7角形の各頂点に位置する偏向電磁石1の磁力の大きさを、一方の隣接頂点から到達した荷電粒子3を他方の隣接頂点に隣接する頂点に向かって偏向させ、一方の隣接頂点に隣接する他の頂点から到達した荷電粒子3を他方の隣接頂点に向かって偏向させる大きさに設定すればよい。

【0081】
図18Cには、ダブルベンド型のラティスによる荷電粒子3の2周回軌道が示されている。このような軌道を実現するためには、電磁石電源5により偏向電磁石1の磁力の大きさを、荷電粒子3が正7角形の各頂点を1つ置きに通るような大きさに設定すればよい。

【0082】
図18Dには、そのラティスによる荷電粒子3の1周回軌道が示されている。このような軌道を実現するためには、電磁石電源5により偏向電磁石1の磁力の大きさを、荷電粒子3が正7角形の各頂点をその辺に沿って通るような大きさに設定すればよい。

【0083】
また、図19Aには、正11角形を基準とするトリプルベンド型の粒子軌道折れ線が示されている。また、図19B乃至図19Dには、正11角形を基準とするトリプルベンド型のラティスによる荷電粒子3の3周回軌道、2周回軌道、1周回軌道がそれぞれ示されている。これらの周回軌道の切り換えも、電磁石電源5による偏向電磁石1、4の磁力の大きさを上述のように調整することにより可能となる。

【0084】
また、図20Aには、正11角形を基準とするダブルベンド型の粒子軌道折れ線が示されている。また、図20B乃至図20Dには、正11角形を基準とするダブルベンド型のラティスによる荷電粒子3の3周回軌道、2周回軌道、1周回軌道がそれぞれ示されている。これらの周回軌道の切り換えも、電磁石電源5による偏向電磁石1の磁力の大きさを上述のように調整することにより可能となる。

【0085】
本実施形態に係る荷電粒子軌道制御装置100は、荷電粒子3の1周期の軌道を1周回から3周回まで切り替え可能とした。この荷電粒子軌道制御装置100によれば、その目的に応じて荷電粒子3の軌道の周長を調整することが可能となる。

【0086】
なお、一般的に、頂点型よりも辺型のラティスの方が、偏向電磁石の数を低減し、直線の数を増やすことができる。しかしながら、辺型のラティスでは、1周回目の直線軌道と、2周回目の直線軌道とが近接する傾向があるので、2つの直線軌道をある程度離間させる必要があることに留意すべきである。

【0087】
なお、これまで様々なラティスについて説明したが、荷電粒子軌道制御装置100におけるラティスは上記各実施形態に係るものには限られない。

【0088】
例えば、図21、図22に示すように、正3角形を基準とするラティスを組むことも可能である。図21に示すラティスは、いわゆる辺型であり、2周回(m=2)のラティスである。また、図22に示すラティスも、2周回(m=2)のラティスであるが、このラティスでは、正3角形の各頂点に対応して、外側頂点と内側頂点がそれぞれ設けられ、荷電粒子3は、外側頂点と内側頂点とを交互に通る軌道を取る。図22に示す荷電粒子軌道制御装置では、正3角形の各頂点に設置される偏向電磁石中での荷電粒子の軌道に関して、内側の軌道で偏向角が小さく、外側の軌道で偏向角が大きくなるように偏向電磁石が製作調整されている。これにより、荷電粒子は、隣接する偏向電磁石を通る度に交互に内側と外側とを通るようになる。

【0089】
また、正5角形を基準とするラティスでは、図23に示すようなラティスを組むことも可能である。このラティスにおいても、正5角形の各頂点に対応して、外側頂点と内側頂点がそれぞれ設けられ、荷電粒子3は、外側頂点と内側頂点とを交互に通る軌道を取る。図23に示す荷電粒子軌道制御装置では、正5角形の各頂点に設置される偏向電磁石中での荷電粒子の軌道に関して、内側の軌道で偏向角が小さく、外側の軌道で偏向角が大きくなるように偏向電磁石が製作調整されている。これにより、荷電粒子は、隣接する偏向電磁石を通る度に交互に内側と外側とを通るようになる。

【0090】
すなわち、各偏向電磁石1において、荷電粒子3が通過する軌道は2つ存在する。各偏向電磁石1では、荷電粒子3が通過する度に、各偏向電磁石1における荷電粒子3の軌道が2つの軌道の間で交互に切り替わるように、各偏向電磁石の偏向角と、互いの位置関係とが規定されている。

【0091】
より具体的には、この荷電粒子軌道制御装置100も、荷電粒子3が通過する度に、各偏向電磁石1に入射する荷電粒子3の入射位置が2つの位置で交互に切り替わるように、各偏向電磁石1の偏向角と互いの位置関係が規定されている。また、この荷電粒子軌道制御装置100では、荷電粒子3が通過する度に、各偏向電磁石1に入射する荷電粒子の入射角度が2つの角度で交互に切り替わるように、各偏向電磁石の偏向角と互いの位置関係とが規定されている。

【0092】
各偏向電磁石1の磁界の強度は、軌道の内側に入射した荷電粒子3の偏向角は、72度よりも若干小さくなるように規定されており、軌道の外側に入射した荷電粒子3の偏向角は、72度よりも若干大きくなるように規定されている。これにより、各偏向電磁石1では、内側の軌道を通って各偏向電磁石1に入射した荷電粒子3は、外側の軌道に向かい、外側の軌道を通って各偏向電磁石1に入射した荷電粒子3は、内側の軌道に向かうようになる。

【0093】
このような荷電粒子3の軌道の設定と、各偏向電磁石1との配置により、図23に示す荷電粒子軌道制御装置100では、軌道における直線部において、荷電粒子3の軌道が交差するようになる。直線部で軌道が交差する軌道の交差角は、内外のn角形同士の距離と辺の長さによって決定される。

【0094】
なお、この荷電粒子軌道制御装置100においても、各偏向電磁石1は、荷電粒子3の軌道の直線部分の長さ等が荷電粒子軌道制御装置100の用途に適したものとなるように、設計される必要がある。この偏向電磁石1の磁極端は軌道と直交するようになっているが、一般的には任意の角度を選択可能である。

【0095】
また、上記各実施形態では、荷電粒子3が2周回、3周回で元の軌道に復帰するラティスについて説明したが、本発明はこれには限られない。例えば、荷電粒子3が4周回以上で元の軌道に復帰するラティスを組むことも可能である。

【0096】
いずれにしても、mは1でない自然数であり、nは、mの倍数ではない自然数である。

【0097】
このように、上記各実施形態に係る荷電粒子軌道制御装置100では、偏向電磁石1は、図24に示すように、交差する2つの軌道を有する。偏向電磁石1における偏向角θ1及び軌道の交差角θ2は、幾何学的に求められる。

【0098】
n角形、m周回の荷電粒子軌道制御装置100について、ダブルベンド型とトリプルベンド型の2つに分けて、偏向電磁石1の構造を特徴づける2つの角度を以下にまとめる。

【0099】
まず、ダブルベンド型の荷電粒子軌道制御装置100の場合、正n角形の1つの内角は、180(n-2)/n[deg.]となり、偏向角θ1の総和は、360×m[deg.]となる。また、荷電粒子3が通過する偏向電磁石1ののべ数は2×nとなる。この場合、各偏向電磁石1の偏向角θ1は、以下の式のようになる。
【数1】
JP0005854518B2_000002t.gif

また、2つの軌道の交差角θ2は、以下の式のようになる。
【数2】
JP0005854518B2_000003t.gif

n角形、m周回のダブルベンド型の荷電粒子軌道制御装置100の交差角θ2について以下の表にまとめる。
【表1】
JP0005854518B2_000004t.gif

【0100】
次に、トリプルベンド型の荷電粒子軌道制御装置100の場合、正n角形の1つの内角は、180(n-2)/n[deg.]となり、偏向角θ1の総和は、360×m[deg.]となる。また、荷電粒子3が通過する偏向電磁石1ののべ数は、軌道が交差しない偏向電磁石4については、nとなり、軌道が交差する偏向電磁石1については、2×nとなる。この場合、各偏向電磁石1、4の偏向角θ1は、交差しない偏向電磁石4については、
【数3】
JP0005854518B2_000005t.gif

となり、
交差する偏向電磁石1については、
【数4】
JP0005854518B2_000006t.gif

となる。

【0101】
また、2つの軌道の交差角θ2は、以下の式のようになる。
【数5】
JP0005854518B2_000007t.gif

n角形、m周回のトリプルベンド型の荷電粒子軌道制御装置100の交差角θ1について以下の表にまとめる。
【表2】
JP0005854518B2_000008t.gif

【0102】
また、上記各実施の形態では、各偏向電磁石1に、荷電粒子3の軌道の内周側から外周側に沿って磁気勾配が設けられているようにしてもよい。例えば、図25に示すように、紙面に直交する方向に進む荷電粒子3に対して、その軌道の内周側に沿って磁気が強くなるように磁気勾配が形成されるように設定することができる。このようにすれば、荷電粒子3によって形成される粒子ビームをより低エミッタンス化することが可能となる。なお、外周側に沿って磁気が強くなるような磁気勾配が形成されるようにしてもよい。

【0103】
また、上記各実施の形態では、各偏向電磁石1が、正多角形の外周上に配置されていたが、本発明はこれには限られない。例えば、図26に示すように、正多角形でない図形の外周上に、各偏向電磁石1を配置するようにしてもよい。

【0104】
図27に示すように、荷電粒子3の軌道における直線上の部分には、様々なものが設置される。例えば、図27では、各直線部分にアンジュレータ10が設置されている。このように、この荷電粒子軌道制御装置100では、直線部分の数が多いため、多数のアンジュレータ10を設置することができる。

【0105】
いずれにしても、上記各実施形態に係る荷電粒子軌道制御装置100は、複数の異なる位置から荷電粒子3を入射し、その入射位置に応じた荷電粒子3の複数の軌道を有し、その軌道に応じた複数の異なる位置から荷電粒子3を出射する偏向電磁石1が必要となる。このような偏向電磁石1を備えることにより、上述した荷電粒子軌道制御装置100の効果が発揮される。

【0106】
本発明は、上記実施の形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で実施の形態及び図面に変更を加えることができるのはもちろんである。要は、荷電粒子の軌道の1周期が1周回ではなく、複数周回である構成であればよい。

【0107】
すなわち、この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。

【0108】
本出願は、2010年12月20日に出願された、日本国特許出願2010-283850号に基づく。本明細書中に日本国特許出願2010-283850号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、上述のように、荷電粒子加速器や、荷電粒子蓄積リングに用いられるのに好適である。
【符号の説明】
【0110】
1(1A~1K) 偏向電磁石
2 4極電磁石
3 荷電粒子
4 偏向電磁石
5 電磁石電源
10 アンジュレータ
100 荷電粒子軌道制御装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3A】
2
【図3B】
3
【図3C】
4
【図3D】
5
【図4A】
6
【図4B】
7
【図4C】
8
【図4D】
9
【図5A】
10
【図5B】
11
【図5C】
12
【図5D】
13
【図6A】
14
【図6B】
15
【図6C】
16
【図7A】
17
【図7B】
18
【図7C】
19
【図8】
20
【図9】
21
【図10A】
22
【図10B】
23
【図11A】
24
【図11B】
25
【図11C】
26
【図11D】
27
【図12A】
28
【図12B】
29
【図12C】
30
【図12D】
31
【図13A】
32
【図13B】
33
【図13C】
34
【図13D】
35
【図14A】
36
【図14B】
37
【図14C】
38
【図14D】
39
【図15A】
40
【図15B】
41
【図15C】
42
【図15D】
43
【図16】
44
【図17A】
45
【図17B】
46
【図17C】
47
【図17D】
48
【図18A】
49
【図18B】
50
【図18C】
51
【図18D】
52
【図19A】
53
【図19B】
54
【図19C】
55
【図19D】
56
【図20A】
57
【図20B】
58
【図20C】
59
【図20D】
60
【図21】
61
【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
67