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明細書 :促進酸化活性種の濃度測定方法および濃度測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-048233 (P2014-048233A)
公開日 平成26年3月17日(2014.3.17)
発明の名称または考案の名称 促進酸化活性種の濃度測定方法および濃度測定装置
国際特許分類 G01N  21/33        (2006.01)
FI G01N 21/33
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2012-193266 (P2012-193266)
出願日 平成24年9月3日(2012.9.3)
発明者または考案者 【氏名】東 昇
【氏名】苅山 直美
【氏名】尾崎 幸洋
【氏名】森澤 勇介
【氏名】池羽田 晶文
【氏名】後藤 剛喜
出願人 【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
【識別番号】503092180
【氏名又は名称】学校法人関西学院
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110000729、【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G059
Fターム 2G059AA01
2G059BB04
2G059CC08
2G059CC20
2G059EE01
2G059EE12
2G059FF04
2G059GG10
2G059HH03
2G059JJ05
2G059KK02
2G059KK04
要約 【課題】添加剤を加える必要がなく、かつインラインで直接的に促進酸化活性種の濃度を測定できる促進酸化活性種の濃度測定方法および濃度測定装置を提供する。
【解決手段】 サンプルの波長195~205nmを含む波長領域の吸光特性を測定する工程と、波長195~205nmを含む波長領域における促進酸化活性種の吸光係数に基づいて、測定した前記吸光特性から促進酸化活性種の濃度を求める工程と、を含む促進酸化活性種の濃度測定方法。
【選択図】 図9
特許請求の範囲 【請求項1】
サンプルの波長195~205nmを含む波長領域の吸光特性を測定する工程と、
波長195~205nmを含む波長領域における促進酸化活性種の吸光係数に基づいて、測定した前記吸光特性から促進酸化活性種の濃度を求める工程と、を含む促進酸化活性種の濃度測定方法。
【請求項2】
前記サンプルがオゾン及び過酸化水素を含有すると共に、
促進酸化活性種の濃度を求める工程では、波長195~205nmを含む波長領域における促進酸化活性種、オゾン及び過酸化水素の吸光係数に基づいて、測定した前記吸光特性から促進酸化活性種の濃度を求める請求項1に記載の促進酸化活性種の濃度測定方法。
【請求項3】
オゾンを含有する水溶液に励起光を照射して、波長195~205nmを含む波長領域で照射直後の吸光特性の変化を測定した後、オゾン及び過酸化水素の既知の吸光係数を初期値として、2成分を前提とする吸光係数および濃度-時間プロファイルの最適解を各々求めた後、その最適解から計算した吸光度プロファイルと実測した吸光度プロファイルとの差から求められる第3成分の吸光係数を初期値として、3成分を前提とする吸光係数および濃度-時間プロファイルの最適解を各々求めることで、前記促進酸化活性種の濃度を求める工程を更に含む請求項2に記載の促進酸化活性種の濃度測定方法。
【請求項4】
前記最適解から計算した吸光度プロファイルと前記実測した吸光度プロファイルとの差から、前記第3成分の吸光係数の初期値を求める際に、各波長における吸光度差プロファイルの極大値を利用する請求項3に記載の促進酸化活性種の濃度測定方法。
【請求項5】
サンプルの波長195~205nmを含む波長領域の吸光特性を測定する測定手段と、
波長195~205nmを含む波長領域における促進酸化活性種の吸光係数に基づいて、測定した前記吸光特性から促進酸化活性種の濃度を求める演算手段と、を含む促進酸化活性種の濃度測定装置。
【請求項6】
前記サンプルがオゾン及び過酸化水素を含有すると共に、
促進酸化活性種の濃度を求める演算手段では、波長195~205nmを含む波長領域における促進酸化活性種、オゾン及び過酸化水素の吸光係数に基づいて、測定した前記吸光特性から促進酸化活性種の濃度を求める請求項5に記載の促進酸化活性種の濃度測定装置。
【請求項7】
前記測定手段が、プローブ光を発生させる光源と、プローブ光を照射するセルと、セルから出射したプローブ光を分光する分光器と、分光された特定波長光の強度を検出する検出器とを備え、
前記セル内のサンプルを励起させるためのポンプ光を発生させる励起光源と、この励起光源を制御しつつ時間分解測定によりポンプ光照射直後のサンプルの吸光特性の変化を求める制御演算手段と、サンプルを交換するサンプル交換手段とを更に備える請求項5または6に記載の促進酸化活性種の濃度測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、促進酸化処理の際に発生する活性種である促進酸化活性種の濃度測定方法および濃度測定装置に関し、ヒドロキシルラジカルなどの活性種の濃度の時間変化をマイクロ秒オーダーで測定するのに有用な技術である。
【背景技術】
【0002】
促進酸化処理は、オゾン、過酸化水素、紫外線などの物理化学的な処理手法を併用することでヒドロキシルラジカルなどの強力な酸化力を持つ活性ラジカル種を発生させて、対象物を処理する方法である。近年、このような促進酸化処理が、水処理だけでなく、半導体洗浄プロセス等の分野においても採用されている。
【0003】
半導体洗浄プロセス等の分野では、処理液の濃度管理が重要となるため、(例えば、ヒドロキシルラジカル)の濃度の測定が、より重要なものとなっている。このような水溶性ラジカル濃度の測定には、電子スピン共鳴(ESR)が一般的に利用されているが、ESRにおいては、水溶性ラジカル(特に、ヒドロキシルラジカル)が極短寿命であることから、スピントラップ剤を添加した上で測定する必要があった。
【0004】
そこで、水溶性ラジカル濃度をその発生場所にて、添加剤混入等の前処理なく非侵襲且つリアルタイムに測定する方法として、全反射減衰型遠紫外分光装置を用いる方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、測定対象液にヒドロキシルラジカルと瞬時に反応する反応物を添加して、その副反応による減量分を算出してヒドロキシルラジカルの濃度を測定する方法も知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2011-75447号公報
【特許文献2】特開2011-242166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された測定方法では、ヒドロキシルラジカルが周りの水分子に与える影響から間接的にヒドロキシルラジカルの濃度変化を測定している。また、特許文献2に記載された測定方法では、ヒドロキシルラジカルと反応した物質の吸光度減少量からの逆算によりヒドロキシルラジカルの濃度を計算している。このように、間接的にヒドロキシルラジカルを測定する方法では、測定誤差や検出の遅れが懸念される。
【0008】
それにも係わらず、直接的にヒドロキシルラジカルを測定する方法が存在しないのは、次のような理由のためと考えられる。つまり、ヒドロキシルラジカルの200nm付近での吸光係数が知られておらず、また、210nm以上の波長域での吸光係数が他の活性種と比較して特徴的でなく、しかもその発生濃度が低いため、サンプルの吸光度プロファイルからヒドロキシルラジカルの濃度-時間プロファイルを分離するのが困難なためであった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、添加剤を加える必要がなく、かつインラインで直接的に促進酸化活性種の濃度を測定できる促進酸化活性種の濃度測定方法および濃度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、サンプルの吸光度プロファイルを解析することで、波長195~205nmの波長領域に、促進酸化活性種の特異的な吸光係数が存在し、これを利用することで直接的に促進酸化活性種の濃度を測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の促進酸化活性種の濃度測定方法は、サンプルの波長195~205nmを含む波長領域の吸光特性を測定する工程と、波長195~205nmを含む波長領域における促進酸化活性種の吸光係数に基づいて、測定した前記吸光特性から促進酸化活性種の濃度を求める工程と、を含むことを特徴とする。本発明において、「促進酸化活性種」とは、促進酸化処理の際に発生する活性種を指し、具体的にはヒドロキシルラジカルを主成分とし、その派生ラジカルとして発生するHOOラジカル等の活性酸素種などを含むものである。
【0012】
本発明の促進酸化活性種の濃度測定方法によると、図9(a)に示すような波長195~205nmの波長領域における、促進酸化活性種の特異的な吸光係数(ファクター3-c)に基づいて、サンプルの吸光特性から促進酸化活性種の濃度を求めるため、添加剤を加える必要がなく、かつインラインで直接的に促進酸化活性種の濃度を測定することができる。
【0013】
上記において、前記サンプルがオゾン及び過酸化水素を含有すると共に、促進酸化活性種の濃度を求める工程では、波長195~205nmを含む波長領域における促進酸化活性種、オゾン及び過酸化水素の吸光係数に基づいて、測定した前記吸光特性から促進酸化活性種の濃度を求めることが好ましい。促進酸化処理では、このような3成分の濃度変化が重要となるが、これら3成分を前提とする系では、各々の吸光係数が特徴的であるため、サンプルの吸光度プロファイルから促進酸化活性種の濃度-時間プロファイルを分離するのが容易となり、より精度の高い濃度測定を行うことができる。
【0014】
また、オゾンを含有する水溶液に励起光を照射して、波長195~205nmを含む波長領域で照射直後の吸光特性の変化を測定した後、オゾン及び過酸化水素の既知の吸光係数を初期値として、2成分を前提とする吸光係数および濃度-時間プロファイルの最適解を各々求めた後、その最適解から計算した吸光度プロファイルと実測した吸光度プロファイルとの差から、第3成分の吸光係数の初期値を求め、3成分を前提とする吸光係数および濃度-時間プロファイルの最適解を各々求めることで、前記促進酸化活性種の吸光係数を求め、求めた吸光係数を用いて促進酸化活性種の濃度を求める工程を更に含むことが好ましい。
【0015】
オゾン及び過酸化水素の既知の吸光係数は、各々特徴的なプロファイル(波長ごとの吸光係数変化)を有しており、また、オゾン水溶液に励起光を照射した際、照射直後に増加型と低減型の特徴的な濃度-時間プロファイルを示す。このため、これら2成分を前提とする吸光係数および濃度-時間プロファイルの最適解から計算した吸光度プロファイルと、実測した吸光度プロファイルとの差から、促進酸化活性種に相当する第3成分の吸光係数の初期値を求めることができる。これらを利用して、3成分を前提とする吸光係数および濃度-時間プロファイルの最適解を各々求めることで、促進酸化活性種の吸光係数を精度良く求めることが可能となる。
【0016】
上記のようにして、最適解から計算した吸光度プロファイルと実測した吸光度プロファイルとの差から、第3成分の吸光係数の初期値を求める際に、各波長における吸光度差プロファイルの極大値を利用することが好ましい。促進酸化活性種に相当する第3成分は、発生量が微量であるため、ノイズの影響を受けやすいので、極大値を利用することでノイズの影響を低減して、初期値としてより好ましい第3成分の吸光係数を決定することができる。
【0017】
一方、本発明の促進酸化活性種の濃度測定装置は、サンプルの波長195~205nmを含む波長領域の吸光特性を測定する測定手段と、波長195~205nmを含む波長領域における促進酸化活性種の吸光係数に基づいて、測定した前記吸光特性から促進酸化活性種の濃度を求める演算手段と、を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の促進酸化活性種の濃度測定装置によると、図9(a)に示すような波長195~205nmの波長領域における、促進酸化活性種の特異的な吸光係数(ファクター3-c)に基づいて、サンプルの吸光特性から促進酸化活性種の濃度を演算手段により求めるため、添加剤を加える必要がなく、かつインラインで直接的に促進酸化活性種の濃度を測定することができる。
【0019】
上記において、前記サンプルがオゾン及び過酸化水素を含有すると共に、促進酸化活性種の濃度を求める演算手段では、波長195~205nmを含む波長領域における促進酸化活性種、オゾン及び過酸化水素の吸光係数に基づいて、測定した前記吸光特性から促進酸化活性種の濃度を求めることが好ましい。
【0020】
促進酸化処理では、このような3成分の濃度変化が重要となるが、これら3成分を前提とする系では、各々の吸光係数が特徴的であるため、サンプルの吸光度プロファイルから促進酸化活性種の濃度-時間プロファイルを分離するのが容易となり、より精度の高い濃度測定を行うことができる。
また、前記測定手段が、プローブ光を発生させる光源と、プローブ光を照射するセルと、セルから出射したプローブ光を分光する分光器と、分光された特定波長光の強度を検出する検出器とを備え、前記セル内のサンプルを励起させるためのポンプ光を発生させる励起光源と、この励起光源を制御しつつ時間分解測定によりポンプ光照射直後のサンプルの吸光特性の変化を求める制御演算手段と、サンプルを交換するサンプル交換手段とを更に備えることが好ましい。このような濃度測定装置によると、促進酸化の反応をセル内で再現できるため、時間分解測定により得られたサンプルの吸光度プロファイルから促進酸化活性種の吸光係数をより高精度で求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】オゾン水の時間分解FUVスペクトルを示す図である。
【図2】O水の光反応化学種であるO、H、OHラジカル、HOのモル吸光係数の文献値を示す図である。
【図3】0.690mMオゾン水の時間分解スペクトルを2成分(O、H)で計算した場合のモル吸光係数(a)と濃度-時間プロファイル(b)を示す図である。
【図4】200nmでの実測の吸光度と計算により求めた吸光度の差吸光度を示す図である。
【図5】0.690mMオゾン水の時間分解スペクトルを3成分(O、H、OH・)で計算した場合のモル吸光係数を示す図である。
【図6】0.690mM、0.364mM、0.183mMのオゾン水の時間分解スペクトルを3成分(O、H、OH・)で計算した場合のOH・の濃度-時間プロファイルを示す図である。
【図7】0.690mMオゾン水の時間分解スペクトルを3成分(O、H、HO)で計算した場合のモル吸光係数を示す図である。
【図8】0.690mM、0.364mM、0.183mMのオゾン水の時間分解スペクトルを3成分(O、H、HO・)で計算した場合のHOの濃度-時間プロファイルを示す図である。
【図9】0.690mMオゾン水の時間分解スペクトルを3成分(O、H、過渡種)で計算した場合のモル吸光係数(a)と過渡種の濃度-時間プロファイル(b)を示す図である。
【図10】200nmでの実測の吸光度と計算により求めた吸光度の差吸光度を示す図である。
【図11】3成分目のモル吸光係数の比較を示す図である。
【図12】促進酸化活性種の吸光係数の算出工程を示すフローチャートである。
【図13】促進酸化活性種の吸光係数の算出に用いた測定装置の一例を示すブロック図である。
【図14】本発明の促進酸化活性種の濃度測定装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(促進酸化活性種の吸光係数の算出)
本発明の促進酸化活性種の濃度測定方法は、波長195~205nmを含む波長領域における促進酸化活性種の吸光係数に基づいて、測定した前記吸光特性から促進酸化活性種の濃度を求める工程を含むものである。波長195~205nmを含む波長領域における促進酸化活性種の吸光係数は、これまで知られておらず、また、促進酸化活性種が過渡種であるため、検量線を作成することも困難であった。本発明者らは、以下で説明するように、促進酸化処理の反応を再現したサンプルの吸光度プロファイルを解析することで、波長195~205nmの波長領域に、促進酸化活性種の特異的な吸光係数が存在することを見出した。

【0023】
まず、オゾンを含有する水溶液に励起光を照射して、波長195~205nmを含む波長領域で照射直後の吸光特性の変化を測定する。具体的には、図13に示すような、ポンプ-プローブ型遠紫外透過分光装置を用いて、オゾン水の時間分解スペクトルを測定した。ポンプ光(励起光)にパルス幅10nsのNd:YAGレーザーを用い、光路長5mmで試料を透過したプローブ光を後分光で光電子増倍管(PMT)により検出した。測定時間領域はポンプ光照射前後50msとし、1ns間隔で信号を取り込んだ。

【0024】
測定したオゾン水のスペクトルを図1に示す。測定短波長側(190~200nm)では、ポンプ光照射直後に0.01程度の正の吸光度変化を示した後、負の吸光度変化を示し、長波長側(210~225nm)ではポンプ光照射直後から負の吸光度変化を示した。

【0025】
次ぎに、オゾン及び過酸化水素の既知の吸光係数を初期値として、2成分を前提とする吸光係数および濃度-時間プロファイルの最適解を各々求める。その際の分析手法は次の通りである。
(1)オシロスコープに取り込んだ信号値から吸光度変化(DAbs)を計算する。
(2)DAbsにフーリエ変換フィルターで高周波成分を除去する。
(3)吸光度行列A(時間´波長チャンネル)を作成し、そのAをLambert-Beer則に基づきモル吸光係数行列Sと濃度-時間プロファイル行列Cに線形に分解する。最適解の探索には吸光度行列Aに対し、多変量スペクトル分離(MCR:multivariate curve resolution)を繰り返し交互最小自乗法(ALS:alternating least squares)で行う。

【0026】
具体的には、測定したOの時間分解スペクトルを、そのスペクトルの吸光度行列Aからモル吸光係数と濃度の時間変化をMCR-ALS法で最適解を決定する。モル吸光係数の初期値には図2に示すO水の光反応化学種の文献値を用いた。主に正の吸光度変化はHの生成を、負の変化はOの分解に起因していると考えられることから、まずはO、Hのモル吸光係数を用いて2成分のモル吸光係数行列(S)と濃度-時間プロファイル行列(C)の抽出を行ったところ、図3(a)~(b)に示すようなモル吸光係数と濃度-時間プロファイルとなった。

【0027】
計算値であるS(ファクター1~2)と文献値を比較すると、波長200~210nmでややずれが見られた。このため、2成分でフィッティングしたモル吸光係数Sと濃度-時間プロファイルCから吸光度行列(Ar)を計算し、実測の吸光度行列Aとの差(残余行列:R2=A-Ar2)を検討したところ、波長200nmを中心に明確なシグナル形状が残った。200nmでの差吸光度を図4に示す。このことから、測定された時間分解スペクトルにはO,H以外の反応過度種(促進酸化活性種)の変化が含まれていると考えられた。

【0028】
本発明では次いで、2成分を前提とする最適解から計算した吸光度プロファイルと実測した吸光度プロファイルとの差から、第3成分の吸光係数の初期値を求め、3成分を前提とする吸光係数および濃度-時間プロファイルの最適解を各々求めた。

【0029】
このような方法と比較する目的で、OHラジカルの文献値が存在する210~225nmの波長域で、既知の吸光係数を初期値として、3成分を前提とする吸光係数および濃度-時間プロファイルの最適解を各々求めた。

【0030】
図5及び図6にOHラジカルのモル吸光係数を第3成分の初期値としてフィッティングしたSとCを示す。Cの第1、第2成分は図3に示した2成分でフィッティングした結果と殆ど変わらないことから、第3成分のみを拡大して示す。計算値であるS(ファクター1~3-a)と文献値を比較すると、かなりよい一致を示したことがわかる。しかし、図6に示すようにCの第3成分については、オゾンの初期濃度が変化した場合の第3成分の濃度プロファイルが正確に観測できていないため、OHラジカルのモル吸光係数の文献値を利用する方法では測定精度が低いことが判明した。
一方、HOラジカルの文献値が存在する205~225nmの波長域で、既知の吸光係数を初期値として、3成分を前提とする吸光係数および濃度-時間プロファイルの最適解を各々求めた。

【0031】
図7及び図8に、HOのモル吸光係数を第3成分の初期値としてフィッティングしたSとCを示す。上記と同様、Cの第1、第2成分は図3に示した2成分でフィッティングした結果と殆ど変わらないことから、第3成分のみを拡大して示す。計算値であるS(ファクター1~3-b)と文献値を比較すると、かなりよい一致を示したことがわかる。しかし、図8に示すようにCの第3成分については、オゾンの初期濃度が変化した場合の第3成分の濃度プロファイルが正確に観測できていないため、HOラジカルのモル吸光係数の文献値を利用する方法でも、測定精度が低いことが判明した。
上記のように、促進酸化活性種として考えられるラジカルのモル吸光係数の文献値を利用する方法では、測定精度が低いため、本発明では、より広い波長域において、3成分を前提とする吸光係数および濃度-時間プロファイルの最適解を各々求め、その結果より促進酸化活性種の吸光係数を求めることが好ましい。また、最適解から計算した吸光度プロファイルと実測した吸光度プロファイルとの差から、第3成分の吸光係数の初期値を求める際に、各波長における吸光度差プロファイルの極大値を利用することが好ましい。

【0032】
具体的には、反応から考えられる過渡種のモル吸光係数について、190nmまで報告されている文献がないため、2成分でフィッティングした際の残余行列R2より第3成分のモル吸光係数の抽出を行った。残余行列R2の各波長の極大値をプロットすることで、第3成分の190nmまでのモル吸光係数の形状を求め、この値を初期値として検討した。

【0033】
図9にフィッティング結果のSとCを示す。図9(a)に示すように、波長195~205nmの波長領域において、促進酸化活性種が特異的な吸光係数(ファクター3-c)を有していることが分かる。本発明では、これに基づいて、サンプルの吸光特性から促進酸化活性種の濃度を求めるため、直接的に促進酸化活性種の濃度を精度良く測定することができる。

【0034】
図9(b)に示すように、Cの第3成分については、オゾンの初期濃度が変化した場合の第3成分の濃度プロファイルが正確に観測できているため、モル吸光係数の文献値を利用する方法と比較して、測定精度が高いことが判明した。

【0035】
また、2成分と同様に吸光度行列(Ar)を計算し、実測の吸光度行列Aとの差(残余行列:R3=A-Ar3)を検討したところ、どの波長においてもホワイトノイズであることから、吸光度行列Aの線形分解は第3成分までを考慮すれば十分であるという結論となった。その際の200nmでの差吸光度を図10に示す。

【0036】
3成分目のモル吸光係数を比較すると、図11に示すように生成すると考えられるラジカル種の値と同程度の数値であることがわかる。190nmまでの文献値がないため過渡種の断定はできないが、何らかの過渡種が測定できていることが分かる。

【0037】
以上の各工程のフローチャートを、図12に示した。この図に示すように、本発明においては、オゾンを含有する水溶液に励起光を照射して(S1)、波長195~205nmを含む波長領域で照射直後の吸光特性の変化を測定した後(S2)、オゾン及び過酸化水素の既知の吸光係数を初期値として、2成分を前提とする吸光係数および濃度-時間プロファイルの最適解を各々求めた後(S3)、その最適解から計算した吸光度プロファイルと実測した吸光度プロファイルとの差から、第3成分の吸光係数の初期値を求め(S4)、3成分を前提とする吸光係数および濃度-時間プロファイルの最適解を各々求める(S5)ことで、前記促進酸化活性種の吸光係数を求める工程を更に含むことが好ましい。
これらの工程により求まる促進酸化活性種(第3成分)の吸光係数は、1つの成分として算出されるが、実際の成分としては、1成分(ヒドロキシルラジカル)に限らず、複数の成分が含まれていてもよい。

【0038】
(促進酸化活性種の濃度測定方法)
本発明の促進酸化活性種の濃度測定方法は、サンプルの波長195~205nmを含む波長領域の吸光特性を測定する工程と、波長195~205nmを含む波長領域における促進酸化活性種の吸光係数に基づいて、測定した前記吸光特性から促進酸化活性種の濃度を求める工程とを含むものである。

【0039】
吸光特性を測定する工程は、例えば後述するような測定装置等を用いて、波長195~205nmを含む波長領域について、一般的な吸光光度法に準じた測定により行うことができる。原理的には、波長195~205nmを含む波長領域の光を、サンプルを収容したセルに照射し、透過光の強度から吸光特性を測定することができる。

【0040】
波長195~205nmを含む波長領域としては、波長195~205nmのみの波長領域でもよいが、促進酸化活性種以外の成分も含めて、各成分の測定精度を高める観点から、波長190~240nmの波長領域が好ましく、波長185~320nmの波長領域がより好ましい。

【0041】
本発明は、波長195~205nmを含む波長領域における促進酸化活性種の吸光係数に基づいて、測定した前記吸光特性から促進酸化活性種の濃度を求める点に特徴があるため、吸光特性を測定する工程については、波長195~205nmを含む波長領域で測定を行うこと以外は、従来の吸光光度法に準じた測定方法が何れも採用できる。

【0042】
サンプルとしては、促進酸化活性種が存在又は生成する系であれば何れでもよいが、オゾン、過酸化水素、紫外線などの物理化学的な処理手法を併用する促進酸化処理を行う際の処理液であることが好ましい。このような処理液は、促進酸化活性種の他に、オゾン及び過酸化水素を含有するものである。

【0043】
促進酸化活性種の濃度を求める工程については、波長195~205nmを含む波長領域における促進酸化活性種の吸光係数を利用する点に、特徴を有している。そして、このような促進酸化活性種の吸光係数については、適切な文献値が存在せず、また、促進酸化活性種が過渡種であるため、検量線を作成することも困難であった。このため、促進酸化活性種の吸光係数は、前述した方法で算出した値を使用することが好ましい。なお、この値は物理乗数であり、濃度測定の際の初期値として使用することができるので、測定のたびに吸光度プロファイルと実測した吸光度プロファイルとの差から毎回算出する必要はない。

【0044】
具体的には、波長195~205nmの波長領域のモル吸光係数については、図9(a)に示すように、波長195nmで約820M-1cm-1、197.5nmで約900M-1cm-1、200nmで約1100M-1cm-1、205nmで約970M-1cm-1の値を使用することができる。これらの値の一部を使用したり、更に前述した方法に準じて、波長195~205nmの波長領域における促進酸化活性種の吸光係数を、より細かい波長について算出した値を使用することができる。

【0045】
波長195~205nm以外の波長領域については、図2に示すようなヒドロキシルラジカルの文献値を使用することも可能であるが、前述した方法で算出した値を使用することが好ましい。

【0046】
このような促進酸化活性種の吸光係数に基づいて、測定した吸光特性から促進酸化活性種の濃度を求めるには、Lambert-Beer則に基づき、吸光度とモル吸光係数とセルの光路長とから濃度を求めることが可能である。また、促進酸化活性種以外の成分を含むサンプルの場合には、多成分同時定量法により、複数波長での吸光度と、各成分の複数波長でのモル吸光係数と、セルの光路長とから促進酸化活性種の濃度を求めることが可能である。このため、インラインで吸光特性を測定し、計算結果としての促進酸化活性種の濃度を、リアルタイムで画面表示又はデータ出力等することができる。

【0047】
また、本発明においては、促進酸化活性種の濃度の時間変化をマイクロ秒オーダーで測定することが好ましい。その場合、前述のような促進酸化活性種の吸光係数を求める工程と同様にして、波長195~205nmを含む波長領域で吸光特性の変化を測定した後、上記の促進酸化活性種の吸光係数と、オゾン及び過酸化水素の既知の吸光係数とを初期値として、当該3成分を前提とする吸光係数および濃度-時間プロファイルの最適解を各々求めることで、促進酸化活性種の濃度の時間変化を求めることが好ましい。

【0048】
最適解は、MCR-ALS法などで求めることができ、MCR-ALS法は、Matlab2010b(Mathworks社)などの市販のソフトウエアを使用して実行することができる。

【0049】
また、オゾン及び過酸化水素の既知の吸光係数を初期値として使用する代わりに、前述のような促進酸化活性種の吸光係数を求める工程において、3成分を前提とする吸光係数および濃度-時間プロファイルの最適解を各々求める際に得られた、オゾン及び過酸化水素の吸光係数を使用してもよい。

【0050】
(促進酸化活性種の濃度測定装置)
まず、促進酸化活性種の吸光係数の算出に用いた測定装置について説明する。この測定装置は、図13に示すように、プローブ光14を発生させる光源11と、プローブ光14を照射するセル30と、セル30から出射したプローブ光14を分光する分光器12と、分光された特定波長光の強度を検出する検出器13とを備えている。

【0051】
更に、この測定装置は、時間分解測定を行うために、サンプルSを励起させるためのポンプ光22を発生させる励起光源21と、これらを制御する制御演算手段40と、サンプルを交換するサンプル交換手段23と、を備えている。

【0052】
光源11は、遠紫外波長領域のプローブ光14を発生させるものである。光源11としては、紫外波長領域の光を発生させることができればよく、例えば重水素ランプ、キセノンランプ等を用いることができ、レーザー駆動型のものを使用することも可能である。プローブ光14は、波長195~205nmの紫外波長領域を含むことが好ましい。

【0053】
光源11からのプローブ光14は、適当な光学系を介して集光させた後に、セル30の入射面に入射する。セル30は四角柱の形状であり、4つの側面が、プローブ光14の入射面および出射面、並びにポンプ光22の入射面および出射面に、各々対応している。セル30の底面と上面には、サンプルSの流入部と流出部とを有している。真空容器39内の空間は、真空に排気されている。

【0054】
サンプル交換手段23は、セル30に収容されたサンプルSを交換するものである。本実施形態では、制御演算手段40がサンプル交換手段23を制御しない場合の例を示す。その場合、サンプル交換手段23によるサンプルSの供給は、一定流量で供給してもよく又は断続的に供給してもよいが、ポンプ光22の高速な周期に対応することが難しく、また1周期の測定時間が短いため、サンプル交換手段23により一定流量のサンプルSを供給するのが好ましい。

【0055】
このようなサンプル交換手段23としては、チューブポンプ、ギヤポンプ、シリンジポンプなどの定量ポンプが何れも使用可能である。サンプルSは図示してない容器から吸液され、ポンプ光22の照射後に排出される。

【0056】
分光器12は、セル30から出射したプローブ光14を分光する装置である。分光器12としては、プリズムやグレーティングミラー(回折格子)を用いる方式が存在し、検出器13との組み合わせにより、複数波長を同時に測定する方式と、一度に1つの波長を測定する方式とが存在する。本実施形態では、グレーティングミラー12aを用いて一度に1つの波長を測定する方式の例を示す。

【0057】
この方式の分光器12は、例えば入射スリット、コリメータ鏡、グレーティングミラー12a、集光鏡、出射スリットなどで構成され、スリット位置などの光学経路とグレーティングミラー12aの角度とを変えることによって、選択波長を変化させることができる。分光器12の光学配置方法には、ツェルニターナ形、パッシェンルンゲ形などがある。本発明では、複数の波長により測定を行う場合、分光器12の設定を変えて測定を繰り返すことで、波長毎の吸光特性の時間変化を求めることができる。

【0058】
分光器12によって分光された特定波長光は、検出器13によりその強度が検出される。一度に1つの波長を測定する方式の検出器13としては、光電子増倍管、フォトダイオード、などが挙げられ、複数波長を同時に測定する方式の検出器13としては、フォトダイオードアレイ、CCDなどが挙げられる。本発明では、微弱光を検出できるようにする観点から、光電子増倍管を用いるのが好ましい。

【0059】
光電子増倍管としては、感度波長185~320nmを有するものが好ましい。また、光電子増倍管として、ナノ秒オーダーでラジカルなどの化学種の濃度変化を測定する観点から、立ち上がり時間が10ナノ秒以下のものが好ましく、3ナノ秒以下がより好ましい。

【0060】
励起光源21は、サンプルSを励起させるためのポンプ光22を発生させるものである。励起光源21としては、パルスレーザ用トリガー信号により、ナノ秒~マイクロ秒オーダーの時間幅でポンプ光22を発生可能なパルスレーザ装置等が使用できる。

【0061】
サンプルSを励起させるため波長は、サンプルSの種類や生じる反応の種類に応じて決定されるが、例えば紫外光領域でオゾン水からヒドロキシルラジカルを発生させること等を目的とする場合、250~270nmの波長が選択可能である。本実施形態では、Nd:YAGの4倍波である266nmのナノ秒パルスレーザを用いた例を示す。この励起光源21は、パルスレーザ用トリガー信号により、ポンプ光22を発生させるタイミングを制御することができる。

【0062】
制御演算手段40は、励起光源21によりポンプ光22を周期的に発生させる制御と、ポンプ光22の発生と積分器が積算する取り込み時間ゲートとの時間間隔を制御して、前記検出器13からの検出信号を積分器に取り込んで積算する演算と、複数の時間間隔の制御により時間分解した積算値から吸光特性の時間変化を求める演算とを行うものである。

【0063】
本実施形態では、制御演算手段40が、遅延時間発生器41と、これに接続されたデジタルオシロスコープ42と、これらに接続されたパーソナルコンピュータ(PC)43とを備える例を示す。なお、図13および図14において、点線は電気的に接続されている状態を示す。

【0064】
遅延時間発生器41は、励起光源21に接続されており、ポンプ光22の発生時間(発生周期と時間幅)を制御するパルスレーザ用トリガー信号を、励起光源21に送ることで、ポンプ光22の周期的な発生を行う。遅延時間発生器41は、ポンプ光22の発生周期に対して、積分器が積算する取り込み時間ゲートとの時間間隔を制御するためのタイミング制御用信号を、デジタルオシロスコープ42に送る。

【0065】
デジタルオシロスコープ42は、高速サンプリング(帯域1GHz以上)によりアナログ信号をデジタル信号に変換しながら、リアルタイムでデジタル信号解析を行う装置であり、積分器によりゲート積算が可能なものを使用することができる。また、本発明では、積分器によるゲート積算を含めたデータ処理をPC43側で行うことも可能である。前者のように積分器による演算をデジタルオシロスコープ42で行う場合、デジタルオシロスコープ42により、積分器が積算する取り込み時間ゲートの時間幅を設定し、遅延時間発生器41からの信号により、時間ゲートのタイミングを制御すればよい。

【0066】
本発明では、例えば、ポンプ光22の発生周期を0.1~1ミリ秒とし、取り込み時間ゲートの時間幅を数~10ナノ秒とし、ポンプ光22の発生後の時間ゲートのタイミングτを変化させて、複数の時間間隔の制御により時間分解測定を行うことができる。

【0067】
その際、タイミングτを一定にして、同じタイミングτにおける取り込み時間ゲートにより、検出器13からの検出信号を積分器に取り込んで積算した積算値を得ることで、測定の感度をより高めることができる。このため積算回数としては10回~1万回が好ましく、100回~5千回がより好ましい。このようにすることで、一光子検出が可能な時間分解測定を行うことができる。

【0068】
その際、デジタルオシロスコープ42の入力側には、検出器13からの微弱信号を検出するために、プリアンプを設けるのが好ましい。例えば、応答速度が約50ナノ秒で、一光子検出が可能なプリアンプを使用することができる。

【0069】
デジタルオシロスコープ42は、積算値等をタイミングτと関連付けて保存するメモリを有しており、PC43でそのデータを取り込んで、汎用ソフト(例えば表計算ソフト等)でデータ処理することにより、時間分解した積算値から吸光特性の時間変化を求めることができる。必要により、グラフ描画などを行うことも可能となる。

【0070】
また、PC43にインストールした市販のスペクトル処理ソフトを用いて、デジタルオシロスコープ42のメモリから、生データを取り込んだ後、積分器によるゲート積算を含めたデータ処理を行って、時間分解した積算値から吸光特性の時間変化を求めることができる。

【0071】
本発明では、制御演算手段40による制御が、ポンプ光22の時間幅が1~10ナノ秒であり、取り込み時間ゲートが10ナノ秒~10マイクロ秒であり、ポンプ光22の発生周期が100ミリ秒以下であることが好ましい。

【0072】
本実施形態の測定装置は、図13のように、シングルビーム方式で装置構成した例を示す。このため、ポンプ光22の照射による吸光度の差の時間変化を求める場合、ポンプ光22を照射していない状態での吸光度を求める必要がある。

【0073】
このようなバックグラウンド測定は、例えば、ポンプ光22の照射の直前に、同じゲート時間および積算回数で測定することにより行うことができる。これで得られた積算値を、時間分解した積算値から引き算することで、ポンプ光22の照射による吸光度の差の時間変化を求めることができる。

【0074】
また、ポンプ光22の照射を全く行わずに、同じゲート時間および積算回数で測定することにより、別途バックグラウンド測定を行うことも可能である。

【0075】
次ぎに、本発明の促進酸化活性種の濃度測定装置について説明する。本発明の濃度測定装置は、図14に示すように、サンプルの波長195~205nmを含む波長領域の吸光特性を測定する測定手段と、波長195~205nmを含む波長領域における促進酸化活性種の吸光係数に基づいて、測定した前記吸光特性から促進酸化活性種の濃度を求める演算手段と、を含むものである。

【0076】
測定手段は、前述した装置と同様に、例えばプローブ光14を発生させる光源11と、プローブ光14を照射するセル30と、セル30から出射したプローブ光14を分光する分光器12と、分光された特定波長光の強度を検出する検出器13とを備えている。

【0077】
演算手段は、例えば、検出器13に接続されたデジタルオシロスコープ42と、これに接続されたパーソナルコンピュータ(PC)43とを備えている。また、遅延時間発生器41を備えていてもよく、積分器が積算する取り込み時間ゲートとの時間間隔を制御するためのタイミング制御用信号を、デジタルオシロスコープ42に送るようにしてもよい。

【0078】
本発明では、演算手段が、波長195~205nmを含む波長領域における促進酸化活性種、オゾン及び過酸化水素の吸光係数に基づいて、測定した前記吸光特性から促進酸化活性種の濃度を求めるものであることが好ましい。具体的には、演算手段によって、前述したような促進酸化活性種の濃度を求めるための演算が行われる。

【0079】
(他の実施形態)
(1)前述の実施形態では、図9(a)に示す促進酸化活性種の吸光係数の値を前提として、促進酸化活性種の濃度を求める例を示したが、オゾンを含有する水溶液の濃度、励起光を照射する際の条件、吸光特性の測定条件などにより、3成分を前提とする吸光係数および濃度-時間プロファイルの最適解を各々求めた際に、促進酸化活性種の吸光係数が多少変化する可能性がある。本発明は、波長195~205nmの波長領域に、促進酸化活性種の特異的な吸光係数が存在し、これを利用することで直接的に促進酸化活性種の濃度を測定できることを見出したものであるため、前記のように多少変化した促進酸化活性種の吸光係数を利用する場合も、本発明の技術的範囲に当然包含される。

【0080】
(2)前述の実施形態では、制御演算手段40がサンプル交換手段23を制御しない例を示したが、制御演算手段40により、励起光源21によるポンプ光22の周期的な発生と同期させてサンプル交換手段23によりサンプルSを交換する制御をサンプル交換手段23に対して行ってもよい。具体的には、遅延時間発生器41をサンプル交換手段23に接続し、ポンプ光22の発生時間(発生周期と時間幅)を制御するパルスレーザ用トリガー信号と同期させてサンプルSを交換するためのタイミング制御用信号をサンプル交換手段23に送ることができる。

【0081】
(3)前述の実施形態では、グレーティングミラー12aとPMT13を用いて一度に1つの波長を測定する方式の例を示したが、検出器13としてフォトダイオードアレイ、CCDなどを使用することにより、複数の波長を同時に測定することも可能である。その場合、制御演算手段40として、複数の波長データの同時入力によるA/D変換が可能なものが使用される。

【0082】
(4)前述の実施形態では、制御演算手段40が、遅延時間発生器41と、これに接続されたデジタルオシロスコープ42と、これらに接続されたパーソナルコンピュータ(PC)43とを備える例を示したが、これらの組み合わせ以外でも、制御演算手段40を構成することが可能である。

【0083】
例えば、デジタルオシロスコープ42の代わりに、A/D変換機能を有するI/O装置を使用して、パーソナルコンピュータ(PC)43の側のスペクトル処理ソフトを用いて、遅延時間発生器41からのタイミング制御用信号に基づいて、検出器13からの検出信号を積分器に取り込んで積算しつつ、複数の時間間隔の制御により時間分解した積算値から吸光特性の時間変化を求めることも可能である。更に、遅延時間発生器41の機能をPC43側にもたせることも可能である。

【0084】
(5)前述の実施形態では、本発明の全反射吸収測定装置をシングルビーム方式で構成した例を示したが、本発明の全反射吸収測定装置はダブルビーム方式で構成することも可能である。その場合、プローブ光14を二分する装置を追加し、全反射減衰型のセル30と、サンプル保持部32と、分光器12と、検出器13とを2系統に構成して、2系統入力可能なデジタルオシロスコープ42を用いればよい。参照溶液側のサンプルSとして同じ溶液を使用し、ポンプ光22を照射せずに同じタイミングにより測定を行うことで、バックグラウンドの測定が可能となる。
【符号の説明】
【0085】
11 光源
12 分光器
13 検出器(PMT)
14 プローブ光
21 励起光源
22 ポンプ光
23 サンプル交換手段
30 セル
40 制御演算手段
41 遅延時間発生器
42 デジタルオシロスコープ
43 PC
S サンプル
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13