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明細書 :金属板製造装置及び金属板の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-193021 (P2015-193021A)
公開日 平成27年11月5日(2015.11.5)
発明の名称または考案の名称 金属板製造装置及び金属板の製造方法
国際特許分類 B22D  11/06        (2006.01)
FI B22D 11/06 330A
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 23
出願番号 特願2014-071815 (P2014-071815)
出願日 平成26年3月31日(2014.3.31)
発明者または考案者 【氏名】羽賀 俊雄
出願人 【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
個別代理人の代理人 【識別番号】110001438、【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4E004
Fターム 4E004DA12
4E004MC07
4E004NA05
4E004NB07
4E004NC05
4E004NC06
4E004NC08
4E004SB09
4E004TB07
要約 【課題】表面が平滑な金属板を製造できる金属板製造装置及び金属板の製造方法を提供する。
【解決手段】冷却能を有し走行するコンベア手段20と、コンベア手段上に形成され、金属溶湯50を貯めるためのプール30と、を具える金属板を製造する金属板製造装置であって、回転方向前方に位置するスクレイパープレート40は、先端部42にコンベア手段によって冷却されて半凝固状態及び/又は凝固状態で送出される基層52に当接する当接部46と、当接部よりもコンベア手段の表面から離れる方向に凹んで形成され、基層よりも凝固状態の低い半凝固状態及び/又は溶湯状態で送出される通過層54の通過を許容する通過部48と、を具える。
【選択図】図12
特許請求の範囲 【請求項1】
冷却能を有し走行するコンベア手段と、
前記コンベア手段上に形成され、金属溶湯を貯めるためのプールと、を具えており、
前記プールは、前記コンベア手段の表面と、前記コンベア手段の走行方向前方に位置するスクレイパープレートと、前記コンベア手段の走行方向後方に位置する後部材と、幅方向左右のサイド部材と、によって形成され、
前記スクレイパープレートは、前記コンベア手段の表面と対向する先端部を有し、前記先端部が、前記コンベア手段の表面との間の距離が変わり得るように可動に設けられ、前記先端部が前記コンベア手段の表面方向に付勢される、
金属板を製造する金属板製造装置であって、
前記スクレイパープレートの先端部は、
前記コンベア手段によって冷却されて半凝固状態及び/又は凝固状態で送出される基層に当接する当接部と、
前記当接部よりも前記コンベア手段の表面から離れる方向に凹んで形成された通過部であって、前記基層上に溶湯及び/又は前記基層よりも固相率の低い半凝固状態の金属にてなる通過層の通過を許容する通過部と、
を具える、
金属板製造装置。
【請求項2】
前記スクレイパープレートよりも走行方向前方にて前記コンベア手段と対向し、前記通過部を通過した前記通過層を均す均し手段を具える、
請求項1に記載の金属板製造装置。
【請求項3】
前記スクレイパープレートの前記先端部は、前記通過部の深さが、前記当接部よりも0.1mm~10mm凹んでいる、
請求項1又は請求項2に記載の金属板製造装置。
【請求項4】
前記スクレイパープレートの前記先端部は、前記通過部の幅は、5mm以上である、
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の金属板製造装置。
【請求項5】
金属板製造装置を用いて金属板を製造する方法であって、
前記金属板製造装置は、
冷却能を有し走行するコンベア手段と、
前記コンベア手段上に形成され、金属溶湯を貯めるためのプールと、を具えており、
前記プールは、前記コンベア手段の表面と、前記コンベア手段の走行方向前方に位置するスクレイパープレートと、前記コンベア手段の走行方向後方に位置する後部材と、幅方向左右のサイド部材と、によって形成され、
前記スクレイパープレートは、前記コンベア手段の表面と対向する先端部を有し、前記先端部が、前記コンベア手段の表面との間の距離が変わり得るように可動に設けられ、前記先端部が前記コンベア手段の表面方向に付勢され、
前記スクレイパープレートの先端部は、
前記コンベア手段によって冷却されて半凝固状態及び/又は凝固状態で送出される基層に当接する当接部と、
前記当接部よりも前記コンベア手段の表面から離れる方向に凹んで形成された通過部であって、前記基層上に形成され、前記基層よりも凝固状態の低い金属溶湯及び/又は半凝固状態で送出される通過層の通過を許容する通過部と、
を有したものであって、
前記プールに前記金属溶湯を注湯し、
前記コンベア手段を走行させて、前記プール内の前記金属溶湯を前記コンベア手段によって冷却して前記コンベア手段の表面に半凝固状態及び/又は凝固状態の基層を形成しながら、前記コンベア手段の表面と共に前記基層を移動させ、
前記スクレイパープレートの前記先端部の前記当接部を前記基層の半凝固及び/又は凝固状態表面に一定の力で面的に常時当接させて、前記スクレイパープレートの前記先端部の前記通過部から、前記基層の上に前記プール内の前記金属溶湯を溶湯及び/又は基層より固相率の低い半凝固状態の通過層として送出し、
前記コンベア手段によって、基層及び通過層を冷却して凝固させて金属板を得る、
金属板の製造方法。
【請求項6】
前記金属板製造装置は、前記スクレイパープレートよりも走行方向前方にて前記コンベア手段と対向し、前記通過部を通過した前記通過層を均して前記基層と一体化する均し手段を具え、
前記基層の上に前記プール内の前記金属溶湯を溶湯及び/又は基層よりも固相率の低い半凝固状態で送出された前記通過層を、前記コンベア手段と前記均し手段によって押圧し、前記通過層の表面を平滑に均した後、
前記コンベア手段によって、基層及び通過層を冷却して凝固させて金属板を得る、
請求項5に記載の金属板の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールの如きコンベア手段を用いた連続鋳造によって、金属板を製造する金属板製造装置及び金属板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車業界等において、車両の軽量化などを図るために、アルミニウム合金薄板を使用することが提案されている。
【0003】
アルミニウム合金薄板を作製する方法としては、DC鋳造・熱間圧延を用いる方法や双ロール法が知られている。また、これら方法よりも安価に作製する方法として、非特許文献1に示されているような単ロール法が提案されている。
【0004】
非特許文献1の単ロール法では、連続して生産していると、ロールにより形成された金属層の表面に、塊状の盛り上がった部分が発生するために、得られたアルミニウム合金薄板の板厚が不均一になるという不具合がある。
【0005】
そこで、発明者は、上記問題を解消すると共に、省工程で、安価に単層の金属板又は複層のクラッド金属板を製造する新たな金属板製造装置及び金属板製造方法を提案した(特許文献1)。
【0006】
特許文献1は、ロールを用いた連続鋳造によって、単層の金属板を製造する金属板製造装置であって、冷却能を有するロールと、金属溶湯を貯めるためのプールとを具える。プールには、ロールの回転方向前方に位置し、先端部とロールの表面との間の距離が変わり得るように可動に設けられた前プレートを有している。ロールを回転すると、プール内の金属溶湯が冷却されつつロール表面に半凝固状態乃至凝固状態でプールから引き出される。引き出される金属には、前プレートの先端部が一定の力で面的に押し付けられているから、ロールにて冷却されて凝固状態となった金属層の表面に形成される溶湯又は半凝固状態の金属は、前プレートの先端部によって掻き取られ、略一定厚さの金属層を得ることができる。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2011-206835号公報
【0008】

【非特許文献1】羽賀俊雄、外3名、「メルトドラッグ法によるAl‐12%Si合金板の性状に及ぼす溶湯とロールの接触状態」、軽金属 第48巻 第12号、1998年、P613-617
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1にて提案された手法を用いて金属板を製造した場合、前プレートにより金属層には、ロールの回転方向である長手方向に、筋状の掻き傷が残ることがある。これは、前プレートの先端部に固相率が高い半凝固状態の金属が玉状となって付着してしまうため金属板表面に掻き傷がつくことや、前プレートの先端部の断熱性を高めるために先端部に装着された断熱材の凹凸が転写されてしまうことが原因と考えられる。
【0010】
また、得られた金属板は、長手方向の平滑度が十分にはならないことがある。すなわち、前プレートは、先端部が金属層の半凝固状態表面を掻き取りながら均すが、その動きには、微小な上下振動を伴うため、金属層の表面にうねりの如き厚さの変動をもたらす。
【0011】
加えて、一定厚さの金属層を得るためには、金属溶湯の温度、ロールの温度、ロールの回転速度、さらには、前プレートの押し付け強さの調整等の生産条件の制御が必要となるが、これら種々の条件を調整することは困難であった。
【0012】
本発明の目的は、ロールを用いた連続鋳造によって金属板を製造する金属板製造装置及び金属板の製造方法において、上記した諸問題を解消することを目的とし、表面が平滑な金属板を、省工程で、安価に、製造できる金属板製造装置及び金属板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る金属板製造装置は、
冷却能を有し走行するコンベア手段と、
前記コンベア手段上に形成され、金属溶湯を貯めるためのプールと、を具えており、
前記プールは、前記コンベア手段の表面と、前記コンベア手段の走行方向前方に位置するスクレイパープレートと、前記コンベア手段の走行方向後方に位置する後部材と、幅方向左右のサイド部材と、によって形成され、
前記スクレイパープレートは、前記コンベア手段の表面と対向する先端部を有し、前記先端部と、前記コンベア手段の表面との間の距離が変わり得るように可動に設けられ、前記先端部が前記コンベア手段の表面方向に付勢される、
金属板を製造する金属板製造装置であって、
前記スクレイパープレートの先端部は、
前記コンベア手段によって冷却されて半凝固状態及び/又は凝固状態で送出される基層に当接する当接部と、
前記当接部よりも前記コンベア手段の表面から離れる方向に凹んで形成された通過部であって、前記基層上に溶湯及び/又は前記基層よりも固相率の低い半凝固状態の金属にてなる通過層の通過を許容する通過部と、
を具える。
【0014】
望ましくは、金属板製造装置は、
前記スクレイパープレートよりも走行方向前方にて前記コンベア手段と対向し、前記通過部を通過した前記通過層を均して前記基層と一体化する均し手段を具える。
【0015】
また、本発明に係る金属板の製造方法は、
前記金属板製造装置は、
冷却能を有し走行するコンベア手段と、
前記コンベア手段上に形成され、金属溶湯を貯めるためのプールと、を具えており、
前記プールは、前記コンベア手段の表面と、前記コンベア手段の走行方向前方に位置するスクレイパープレートと、前記コンベア手段の走行方向後方に位置する後部材と、幅方向左右のサイド部材と、によって形成され、
前記スクレイパープレートは、前記コンベア手段の表面と対向する先端部を有し、前記先端部が、前記コンベア手段の表面との間の距離が変わり得るように可動に設けられ、前記先端部が前記コンベア手段の表面方向に付勢され、
前記スクレイパープレートの先端部は、
前記コンベア手段によって冷却されて半凝固状態及び/又は凝固状態で送出される基層に当接する当接部と、
前記当接部よりも前記コンベア手段の表面から離れる方向に凹んで形成された通過部であって、前記基層上に形成され、前記基層よりも凝固状態の低い金属溶湯及び/又は半凝固状態で送出される通過層の通過を許容する通過部と、
を有したものであって、
前記プールに前記金属溶湯を注湯し、
前記コンベア手段を走行させて、前記プール内の前記金属溶湯を前記コンベア手段によって冷却して前記コンベア手段の表面に半凝固状態及び/又は凝固状態の基層を形成しながら、前記コンベア手段の表面と共に前記基層を移動させ、
前記スクレイパープレートの前記先端部の前記当接部を前記基層の半凝固及び/又は凝固状態表面に一定の力で面的に常時当接させて、前記スクレイパープレートの前記先端部の前記通過部から、前記基層の上に前記プール内の前記金属溶湯を溶湯及び/又は前記基層よりも固相率の低い金属にてなる半凝固状態の通過層として送出し、
前記コンベア手段によって、基層及び通過層を冷却して凝固させて金属板を得る。
【0016】
望ましくは、上記金属板の製造方法において、
前記金属板製造装置は、前記スクレイパープレートよりも走行方向前方にて前記コンベア手段と対向し、前記通過部を通過した前記通過層を均して前記基層と一体化する均し手段を具え、
前記基層の上に前記プール内の前記金属溶湯を溶湯及び/又は前記基層よりも固相率の低い半凝固状態で送出された前記通過層を、前記コンベア手段と前記均し手段によって押圧し、前記通過層の表面を平滑に均した後、
前記コンベア手段によって、基層及び通過層を冷却して凝固させて金属板を得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明の金属板製造装置及び金属板の製造方法によれば、スクレイパープレートの先端部は、当接部が基層の凝固状態及び/又は固相率の高い半凝固状態表面に一定の力で当接し続け、スクレイパープレートの先端部の通過部によりプールの金属溶湯が、溶湯及び/又は基層よりも固相率の低い半凝固状態で基層上に通過層として積層される。この状態で凝固させることで、スクレイパープレートの先端部の形状に応じた断面形状の異形金属板を得ることができる。
【0018】
基層の上に形成される通過層は、たとえ、通過部と接触する部分に掻き傷の如き傷が生じたとしても、溶湯及び/又は固相率の低い半凝固状態で通過部を通過するから、通過層は、凝固するまでにその流動性により、微細な掻き傷は消失又は目立たなくなる。特に、通過部の上辺は、溶湯及び/又は固相率の低い半凝固状態に接しているから、固相率が高い半凝固状態の金属が玉状となって付着してしまうことも殆んどなく、これらを原因として通過層に形成される掻き傷を低減できる。従って、作製された金属板は、表面を平滑にできる。
【0019】
通過層が完全に凝固する前に、コンベア手段と均し手段によって、通過層の表面を均すことで、得られた金属板は、厚さが一定で、表面を平坦且つ平滑なものとなる。また、通過層が完全に凝固する前に表面を均すことで、コンベア手段への均し手段の押し付け圧力も低くて済む。
【0020】
本発明によれば、通過層は、溶湯及び/又は基層よりも固相率の低い半凝固状態で通過部を通過するから、溶湯及び/又は基層より固相率が低い半凝固状態の金属層を掻き取る特許文献1に比して板厚制御等における生産条件の制御が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る金属板製造装置を示す断面概略図である。
【図2】図2は、図1のII矢視部分図である。
【図3】図3は、図1のIII矢視部分図である。
【図4】図4は、スクレイパープレートの先端部の斜視図である。
【図5】図5は、第1実施形態の金属板製造装置により金属板を製造している状態を示す断面概略図である。
【図6】図6は、図5の丸囲み部Vの拡大断面図である。
【図7】図7は、図5の線VII-VIIに沿う金属の断面図である。
【図8】図8は、図7の通過層が完全に凝固して得られた異形金属板の断面図(図5の線VIII-VIIIに沿う)である。
【図9】図9は、金属溶湯の固相率の変化を説明する説明図である。
【図10】図10(a)は、スクレイパープレートの先端部から送出される金属板の斜視説明図であり、図10(b)は、図10(a)の線A-A’に沿う金属板の断面図、図10(c)は、図10(a)の線B-B’に沿う金属板の断面図である。
【図11】図11は、本発明の第2実施形態に係る金属板製造装置を示す断面概略図である。
【図12】図12は、第2実施形態の金属板製造装置により金属板を製造している状態を示す断面概略図である。
【図13】図13は、図12の丸囲み部XIIIの拡大断面図である。
【図14】図14(a)は、図13の線XIV(a)-XIV(a)に沿う金属板の断面図である。図14(b)は、図13の線XIV(b)-XIV(b)に沿う金属板の断面図である。
【図15】図15は、スクレイパープレートの先端部の形状を説明する説明図である。
【図16】図16は、スクレイパープレートの通過部の他の実施形態を示す説明図である。
【図17】図17は、スクレイパープレートの先端部の他の実施形態を示す断面図である。
【図18】図18は、スクレイパープレートの先端部の他の実施形態を示す断面図である。
【図19】図19は、スクレイパープレートの先端部の他の実施形態を示す断面図である。
【図20】図20は、均しロールの異なる実施形態を示す説明図である。
【図21】図21は、実施例1の結果1に係る発明例1の表面観察写真である。
【図22】図22は、実施例1の結果1に係る発明例2の表面観察写真である。
【図23】図23は、実施例1の結果1に係る比較例1の表面観察写真である。
【図24】図24は、実施例1の結果2に係る発明例1の板厚のバラツキを示すグラフである。
【図25】図25は、実施例1の結果2に係る発明例2の板厚のバラツキを示すグラフである。
【図26】図26は、実施例1の結果2に係る比較例1の板厚のバラツキを示すグラフである。
【図27】図27は、第2実施例Cに係る金属板の写真である。
【図28】図28は、比較例2の縦型双ロールキャスターに係る金属板の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る金属板製造装置10について図面を参照しながら説明を行なう。

【0023】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る金属板製造装置10の実施形態を示す断面概略図である。金属板製造装置10は、1種の金属溶湯から単層の金属板を製造するための装置であり、単ロール法を採用している。

【0024】
図1に示すように、金属板製造装置10は、コンベアロール20の如きコンベア手段と、金属溶湯を貯めるプール30を具えている。

【0025】
コンベア手段は、本実施形態では、コンベアロール20として示される単ロールである。コンベア手段は、金属溶湯の送出機能と冷却機能を具備していれば、ロール形状、ベルト形状等であってもよい。コンベア手段としてロール形状を採用することで製造装置を簡易に構成することができる。

【0026】
コンベアロール20の金属溶湯の送出機能は、コンベアロール20を回転駆動可能に構成することで実現できる。たとえば、送出機能は、コンベアロール20を金属溶湯を送出可能となるように図1の矢印R1方向に回転(走行)可能に配置し、コンベアロール20の軸をモータ等により回転させればよい。

【0027】
また、コンベアロール20は、その表面22に接触した金属溶湯を冷却するための冷却機能を有している。その冷却機能は、冷却水がコンベアロール20の内部を循環することにより冷却機能を発揮する「水冷式」を例示できるが、他の機構を採用してもかまわない。また、コンベアロール20の外部に冷却機構を備えていれば、コンベアロール20の内部に冷却機構を有していなくてもよい。

【0028】
上述した送出機能と冷却機能を具備するコンベアロール20は、その表面22に接触するプール30内の金属溶湯を冷却しながら回転する。すなわち、コンベアロール20は、その表面22に半凝固状態及び/又は凝固状態の基層52を形成しながらその基層52を伴って回転する。そして、コンベアロール20は、プール30から送出された金属を凝固させる。

【0029】
プール30は、図1に示すように、金属溶湯を貯めることができるように、コンベアロール20の表面22と、コンベアロール20の回転(走行)方向(矢印R1方向)前方に位置するスクレイパープレート40と、コンベアロール20の回転方向後方に位置する後部材32と、両サイド部材34とで囲まれている。

【0030】
後部材32は、図1及び図2に示すように、プール30からコンベアロール20の後方側への金属溶湯の漏れを防ぐ部材である。後部材32は、製作が安価で設置が簡単なため、本実施形態ではプレートで構成されているが、プール30の後壁を構成できるならば、他の部材でもよい。後部材32の先端縁は、プール30内に貯められた金属溶湯が後方へ漏れるのを防止できる距離まで、コンベアロール20の表面22に近接している。後部材32の先端縁は、コンベアロール20の回転を許容する限りにおいて、コンベアロール20の表面22に当接してもよいが、回転するコンベアロール20との摩擦によって互いに摩耗しないようにするには、コンベアロール20の表面22に当接していない方が好ましい。

【0031】
両サイド部材34は、図1乃至図3に示すように、プール30からコンベアロール20の側方への金属溶湯の漏れを防ぐ部材である。サイド部材34の内面は、プール30内に貯めた金属溶湯がコンベアロール20の両側に漏れるのを防止できる距離まで、コンベアロール20の側面に近接している。なお、両サイド部材34は、本実施形態ではプレートで構成されているが、プール30の両側壁を構成できるならば、他の部材でもよい。また、両サイド部材34は、コンベアロール20の端に、円盤又はリング状の両サイド部材34を、コンベアロール20の鍔となるように取り付けて構成することもできる。

【0032】
スクレイパープレート40は、図1、図3及び詳細には図4に示すように、プール30の前壁を構成するように、プレートを加工して設けられている。スクレイパープレート40は、図4では、断面が、折り曲げ形態を有しているが、断面が直線状又は円弧状の形態を有していてもよい。スクレイパープレート40の先端部42は、図1に示すように、コンベアロール20の表面22との間の距離Hが変わり得るように、可動に設けられている。具体的には、スクレイパープレート40は、基端部61にて、水平軸44を回転軸として(矢印Y方向)に回動自在に支持されており、これにより、距離Hが可変となっている。また、スクレイパープレート40は、距離Hが小さくなる方向(矢印Y1方向)に回動するように、常時付勢されている。具体的には、スクレイパープレート40の基端部61には、紐37を介して所定重量の錘38が連結されており、スクレイパープレート40は、錘38によって、矢印Y1方向に回動するように、常時、一定の力で引っ張られている。これにより、スクレイパープレート40の先端部42は、コンベアロール20の表面22に向かって、常時、一定の力で付勢されている。
スクレイパープレート40の先端部42には当接部46が設けられており、当接部には基層52の表面と接する当接面46aが設けられている。

【0033】
スクレイパープレート40に付勢される力は当接面46aより基層52に対する押し付け力として作用する。

【0034】
上記押し付け力と基層52から当接面46aが受ける反力が釣り合っていることが必要であり、基層52はこの押し付け力に相当する反力を与えることができる硬さを有する。すなわち基層は当接面46aに接する時点で凝固状態または相応の固相率を有する半凝固状態であることが必要である。

【0035】
コンベアロール20上の金属は、コンベアロール20の表面22から冷却されることにより、コンベアロール20の表面22からの距離が小さいほど冷却が進んでいて温度が低く硬く、したがって圧縮抗力が強くなり、コンベアロール20の表面22からの距離が大きい程冷却が不十分で温度が高く、固相率が低く柔らかくしたがって圧縮抗力が小さい。このため、押し付け力が強ければ基層の表面の硬いところ、すなわちコンベアロール20の表面22に近いところで基層からの反力と均衡し、押し付け力が弱ければコンベアロール20の表面22から遠いところで基層からの反力と均衡する。このため押し付け力を調整することで、容易に基層の厚さを制御することができる。なお、基層とはスクレイパープレート40の先端部42に当接部46の接する層をいう暫定的なものである。スクレイパープレート通過時に基層であった部分は、スクレイパープレート通過後は漸次冷やされて、更に固相率が高くなり、凝固状態へと変化していく。

【0036】
この押し付け力を与えるための付勢に一定の力を与えるためにはスクレイパープレート40に対する付勢は、距離Hが変わっても、常時、一定の力で付勢できればよくどのような手段でもよいが、例えば装置を簡易に構成できるので、錘の力で行うのが好ましく、油圧など、他の機構を採用してもよい。また、付勢のため、スクレイパープレート40に直接錘を載せた構成でもよく、スクレイパープレート自体の重量を錘として利用してもよい。錘による付勢は、油圧制御と比べ構造が簡便で応答性がよい。

【0037】
本願発明に至ったのには次の理由がある。
溶湯プール内の溶湯はその接するコンベアロールからの冷却によりコンベアロールに運ばれつつ、溶湯が冷やされて漸次固相率を高め、半凝固状態を経て凝固状態に達し凝固層となる。したがって過渡状態においてロール表面に接する面は固相率が高く(凝固状態では100%)、ロール表面から離れるにしたがって固相率が低くなっている。
すなわちロール表面からの距離により硬度が高いほうから低い方に傾斜分布している。

【0038】
この時、板厚全部が凝固硬化するまでの過渡状態においては、ロール表面に接する面から固化した凝固部分と未凝固部との界面であるが、凝固部分の表面は流方向(周速方向)およびロール幅方向にも、後述するように、原因の詳細は不明であるがおそらく冷却のされ具合等により微妙な凹凸が製造過程で自然に生じる。この凝固部分の起伏を無くすコントロールは難しい。

【0039】
さて、スクレイパープレートを用いて表面を滑らかにし、板厚をコントロールするには、位置制御法とスクレイパープレートの荷重を微妙に一定に制御する力制御法とが考えられる。

【0040】
位置制御法においては、本来、スクレイパープレートの先端部とコンベアロール表面との距離を板厚相当に固定すれば、一定板厚の金属板が製造できるはずであるが、実際は先述の凝固部分の表面の凸部がスクレイパープレートの先端部に当たり、大きな抵抗となってコンベアロールの回転が中断する等が生じることがあり、製造安定性が良くないという問題がある。

【0041】
一方、力制御法では、微妙な制御を要するが、スクレイパープレートの両端部がサイド部材と、溶湯を漏らさないため接しているが、この接触抵抗のために微妙な力制御が行い難い。このため、固相率の時々刻々の変化に追従できず、微妙な制御ができない。このためスクレイパープレートを通過する通過層の固相率が低ければ巣を生じ、固相率が高ければ表面に引っ掻き傷を生じるという問題がある。

【0042】
本願発明は、上記課題に対応したものであって、スクレイパープレート40の先端部42を当接部46と通過部48に分け、当接部46の当接面46aから一定の押し付け力で凝固状態及び又は凝固状態の層とその上の半凝固状態の層を押さえ、当接部46が沈み込まない一定の反力を受けるコンベアロール20の表面から相当硬さを有する高さまでの層を基層52として、スクレイパープレート20の当接面46aが押し付け力と反力とのバランスにより、時々刻々その基層52の高さに合わせて、当接部46の当接面46aの高さを遊動させて保ち、その基層の上に、通過部48から基層52よりも固相率の低い半凝固状態の金属及び/又は溶湯を通過させ、基層52の上に通過層54として積層することで、上記問題を解決したものである。

【0043】
通過部48の深さとスクレイパープレート20への押し付け力を適正に設定することにより、表面性がよく、スクレイパープレート20と凝固状態の層の凸部の衝突による、運転安定性が損なわれることもなく、過当な溶湯も通過しないため巣もない金属板56が製造条件の制御設定も容易に製造できる。

【0044】
スクレイパープレート40の先端部42は、図3及び図4に示すように、当接部46と、当接部46よりもコンベアロール20の表面から離れる方向に凹んだ通過部48とを有する。当接部46は、先端部42の少なくとも両側に突出した形状とすることが望ましい。当接部46の当接面46aは、コンベアロール20上の半凝固状態及び/又は凝固状態の基層52に接する。また、通過部48は、当接部46,46間に形成することができ、コンベアロール20上の溶湯及び/又は基層52よりも固相率の低い半凝固状態の通過層54が通過可能となっている。

【0045】
図4及び後述する図15に示すように、スクレイパープレート40に形成される通過部48は、当接部46よりも深さDだけ凹んで形成することができる。この深さDは、通過層54の通過を許容するために、少なくとも0.1mm以上とすることが望ましい。金属溶湯及び/又は基層より固相率が低い半凝固状態の金属の流動性にもよるが、深さDが0.1mm未満であると、通過部48を通過層54が通過せず、通過部48を形成した効果を得られない虞がある。また、深さDは、その上限を10mmとすることが望ましい。金属溶湯及び/又は半凝固状態の金属の流動性にもよるが、深さDが10mmを越えると、通過部48からプール30中の金属溶湯が多量に流出し、巣の発生につながる虞がある。

【0046】
上記構成の金属板製造装置10を用いた金属板の製造方法について、図5及び図5のスクレイパープレート40の先端部42の近傍の拡大図6を参照しながら、説明する。なお、図5では、両サイド部材34の図示を省略している。

【0047】
まず、金属板製造装置10を起動するとコンベアロール20が回転を開始するとともに、冷却機能が作動する。次にプール30に金属溶湯50を注湯する。コンベアロール20が、所定速度で回転し、その表面22に接触しているプール30内の金属溶湯50を冷却して半凝固状態及び/又は凝固状態の基層52を形成しながら基層52を伴って回転する。なお、溶湯50は、コンベアロール20の表面22側から、冷却されることにより半凝固状態から凝固状態へと漸次変化していく。また、後部材32の下端縁からスクレイパープレート40の先端部42の当接部46までの円周距離L1(図1)は、凝固状態及び/又は固相率の高い半凝固状態表面を有する基層52が形成され得る距離に設定されている。そして、コンベアロール20の走行により、半凝固及び/又は凝固状態にある基層52が、スクレイパープレート40の先端部42とコンベアロール20の表面22との間を通過する。半凝固状態又は凝固状態の表面を有する基層52をスクレイパープレート40が越えるときに、スクレイパープレート40の先端部42の当接部46の当接面46aが基層52の表面を一定の力で面的に当接し続ける。すなわち、当接部46は、基層52の厚さ方向の位置(コンベアロール20の表面22からの高さ)に追従する。

【0048】
そして、スクレイパープレート40の先端部42が基層52上を通過する際に、この先端部42に形成された通過部48から、基層52の上に溶湯及び/又は基層より固相率が低い半凝固状態の金属が流出通過し、図5及び図6に示すように、溶湯及び/又は基層よりも固相率の低い半凝固状態の通過層54として送出される。すなわち、通過層54は、基層52よりも凝固状態は低くなっている。

【0049】
図7は、スクレイパープレート40の先端部42を通過した金属の断面図である。図に示すように、金属は、基層52上に通過部48の形状に略相当する通過層54が形成されていることがわかる。

【0050】
この状態で、コンベアロール20からさらに冷却を受けることで、基層52と通過層54が完全に凝固し、図8に示すように、当接部46と通過部48の形状に相当する断面形状の異形金属板56を得ることができる。

【0051】
図9は、金属溶湯の固相率の変化とスクレイパープレート40の先端部42の位置を説明する説明図であって、コンベアロール20の回転方向の凹凸を誇張して表現している。図9では、通過部48から、溶湯状態の金属70と固相率が低い半凝固状態の金属71が通過層54として通過する例を示している。なお、図9では、符号70乃至73は、金属の凝固状態を示しており、符号70は、溶湯状態、符号71は固相率が低い半凝固状態、符号72は固相率が高い半凝固状態、符号73は凝固状態である。

【0052】
先述の如く、スクレイパープレート40を通過した凝固状態の層73の表面は、コンベアロール20の回転方向および幅方向に、原因の詳細は不明であるがおそらく冷却のされ具合等により微小な凹凸が製造過程で自然に生じる。本図では、スクレイパープレート40の通過時点において、凝固状態の層(凝固層)73の上にある凝固層73の上の固相率の比較的高い半凝固状態の金属72の上面までが基層52となっている。基層52では、半凝固状態の金属72にてなる基層52の表面も、凝固層73の凹凸を受けてやはり凹凸を生じる。

【0053】
スクレイパープレート40の先端部42の当接部46の当接面46aが、その基層52に一定の力で面的に当接し続ける。

【0054】
そして、通過層54は、半凝固状態の金属72及び/又は凝固状態の金属73の基層52の上に形成された状態で通過部48を通過する。スクレイパープレート40を通過したときの基層52からコンベアロール20の表面までの半凝固状態の金属72、通過層54の半凝固状態の金属71及び溶湯状態の金属70は、コンベアロール20による冷却を受けて、図9に示すように、夫々漸次固相率が高まり、最終的に凝固状態である凝固層73に変化していく。図9において、スクレイパープレート40を通過したときの凝固層73(仮想線aとb間)が徐々に厚くなり、固相率が高い半凝固状態72の層(仮想線bとc間)も凝固層73へと変化していることがわかる。さらに、固相率が低い半凝固状態の層(仮想線cとdの間)も固相率が高くなり、凝固層73になることがわかる。また、溶湯状態70で通過部48を通過した層(仮想線dより上側)は、固相率が徐々に高くなり(符号71,72)、凝固層73となる。

【0055】
すなわち、基層52までの高さの上に更に通過層54の厚みが加えられて凝固していくことになる。このため、スクレイパープレート40を通過したときに、凝固層73の上の固相率の比較的高い半凝固状態の金属72までが基層52に相当する場合においては、凝固層73に比し柔らかい基層52にスクレイパープレート40の先端部42が接するため、位置制御法の場合における凝固層の凸部がスクレイパープレート40に当たって生産中断による生産安定性が損なわれるようなことも無く、力制御法のような困難な微妙な力コントロールも必要とせず、表面性がよく製造条件を容易に設定して板が製造できる。

【0056】
尚、板厚の変動は、本図では誇張して示しているが実質問題になる程度ではなく、更に通過層が凝固しないうちに通過層の表面を均し手段(均しロール等)で均せば均一な厚みになる。

【0057】
図10はスクレイパープレート40を通過した後の板を表す模式図である。
図10(a)は斜め上から見た斜視図であり、図10(b)は板幅方向の基層52の凹凸を誇張して示したものである。因みに通過部48の上辺48aが直線のため通過層54の上面は平担である。図10(c)は板の長さ幅方向の基層と全体厚の変化を誇張して示したものである。

【0058】
<第2実施形態>
第2実施形態では、図11乃至図13に示すように、コンベアロール20の回転方向前方にコンベアロール20と対向し、図14(a)、図14(b)に示すように通過部48を通過した通過層54を基層52上で均す機能を有する均し手段均しロール60)を配置したものである。この均し手段で通過層を未硬化の状態で均すことにより、押しつぶされた通過層が基層と一体化させる機能を有する。
図14(b)に示すように、押しつぶされた通過層の金属54が、金属板の上面両端部57において基層52と一体化し、金属板の板厚は、h(基層52の板厚)+h2となる。一体化とは、剥離しない状態をいう。なお、金属板製造装置10は、均し手段以外の構成は、特に説明を行なわない限り、第1実施形態と同じであるためその説明を省略する。

【0059】
均し手段は、本実施形態においては、均しロール60である。第1実施形態と同様にコンベアロール20とスクレイパープレート40を配置し、さらにコンベアロール20の回転方向前方にコンベアロール20と対向する均しロール60を配置した双ロール構成である。

【0060】
均し手段は、通過層54を平滑に均す機能を具備していれば、回転しても回転しなくてもよく、ロール形状、ベルト形状、ブロック形状等であってもよい。均し手段にロール形状を採用することで製造装置を簡易に構成することができる。また、均しロール60は、駆動されていても、つれ周りしていてもよい。

【0061】
均しロール60は、コンベアロール20の表面に向けて所定圧力で付勢又はコンベアロール20と均しロール60との距離が作成される金属板56の厚さと一致するよう保持されていてもよい。上記圧力は、形成される通過層54の幅や厚さによって適宜調整することができる。たとえば、均しロール60は、コンベアロール20に対して、バネや油圧等による荷重制御や位置制御したり、予め最適な位置となるよう調整した後、固定しても構わない。

【0062】
そして、均しロール60は、コンベアロール20と略一致した周速度で回転(矢印R2)可能となっている。すなわち、コンベアロール20と均しロール60の回転速度は、コンベアロール20の半径と均しロール60の半径の逆比となるように設定されている。

【0063】
均しロール60は、少なくとも表面が、熱伝導性にすぐれる銅などの材料から構成されることが望ましい。また、コンベアロール20と同様冷却機構を具備する構成とすることもできる。

【0064】
均しロール60は、スクレイパープレート40の先端部42の当接部46と通過部48を通過した半凝固及び/又は凝固状態の基層52の上に、溶湯及び/又は基層52よりも固相率の低い半凝固状態の通過層54が形成された後、通過層54が完全に凝固してしまう前に、均しロール60を押し付けることができる位置に配置される。

【0065】
そして、通過層54が完全に凝固する前に、図13に示すように、コンベアロール20と均しロール60間に基層52と通過層54からなる積層体を通過させることで、溶湯及び/又は基層52よりも固相率の低い半凝固状態の通過層54は、均しロール60によって押し広げられ、基層52に一体化される。そして、コンベアロール20上をさらに走行し、コンベアロール20からさらなる冷却を受けることで、完全に凝固し、図14(b)に示す単層の金属板56を得ることができる。

【0066】
通過層54が均しロール60によって押し広げられる際に、通過層54の表面は、均しロール60によって均されて平滑となる。従って、得られた金属板56は平滑な表面を具備することとなる。

【0067】
スクレイパープレート40の通過部48の幅W3を調整することで、押し広げられる通過層54の変形後の幅及び厚さを調整することができる。望ましくは、通過部48の幅の設定は、通過層54が押し広げられた後の幅が、基層52の幅と略一致する幅とする。

【0068】
とくに、当接部46を通過部48の両側に位置するようにスクレイパープレート40を構成することで、通過部48を通過した通過層54は、均等に左右に押し広げられるから、得られる金属板56の幅方向の厚さの偏りを抑えることができ、一定厚さの金属板を得ることができる。また、表面が平滑な均しロール60により通過層54を押し広げることで、表面が平坦で平滑な金属板を得ることができる。

【0069】
特に、金属溶湯としてマグネシウムを含有するアルミニウム合金を用いた場合、双ロール法を用いた鋳造では、金属溶湯が凝固収縮を起こしやすく、凝固収縮が起こると結晶粒間に隙間ができるため、鋳巣が発生しやすい。しかし、スクレイパープレート40の当接部46によって、基層52の表面近傍の鋳巣の発生しやすい部位を掻き取られること、また、通過層54は、均しロール60からの押圧力を受けて押し広げられて基層52と一体化されることから、作製される金属板56に鋳巣が発生することが抑えられる。

【0070】
<その他の実施形態>
たとえば、図4に符号45で示すように、スクレイパープレート40には、断熱材45を貼り付けることが望ましい。これにより、金属溶湯50に対する保温効果を高めることができると共に、スクレイパープレート40に溶湯が付着して凝固してしまうことを抑えることができる。更にスクレイパープレート40と金属溶湯間の反応を防ぐこともできる。たとえば、断熱材45はアルミナファイバーの如き不織布(たとえば、商品名「イソウール」(登録商標))を例示できる。特に、断熱材45は、スクレイパープレート40のプール30側に配置することで、たとえば、金属溶湯50をAl合金溶湯、スクレイパープレート40をFe含有合金としたときに、Al溶湯へのFeの混入を防ぐことができる。

【0071】
また、スクレイパープレート40は、基層52と当接する先端部42について、当接部46と通過部48は、コンベアロール20の回転方向後方側にテーパやアールを付す面取形状47,47a(図4、図6)とすることが望ましい。当接部46を面取形状47とすることで、走行する基層52がスクレイパープレート40の先端部42と当接したときに生ずる衝撃を抑えることができる。また、通過部48を面取形状47aとすることで、固相率が高い半凝固状態の金属が玉状となって付着することを抑えることができる。

【0072】
本発明において、図15に示すように、スクレイパープレート40の先端部42に形成される当接部46と通過部48は、先端部42の幅をW1としたときに、当接部46の幅W2,W2’と通過部48の幅W3となる。当接部46の当接面46aは、基層52と当接し、一定の反力を受けるために、幅W2,W2’が夫々5mm~60mmとなることが望ましい。また、通過部48は、溶湯及び/又は基層52よりも固相率の低い半凝固状態の通過層54を送出するために、幅W3は、5mm以上とすることが望ましい。

【0073】
図16は、通過部48の形状の異なる実施形態を示している。図16では、通過部の上辺48aは、凹凸部49を形成している。これにより、実施形態1における金属板製造装置10では、得られる金属板56の表面を凹凸形状とすることができる。また、実施形態2における金属板製造装置10では、凹凸を有する通過層54を均し手段で均すことにより、通過層54の幅方向への押し広げ量を調整することができ、より均一な厚さの金属板56を製造することができる。

【0074】
図17乃至図19の断面図は、スクレイパープレート40の先端部42の形状の異なる実施形態を示している。

【0075】
図17に示すスクレイパープレート40は、先端部42をコンベアロール20に向けて傾斜するように形成したものである。これにより、先端部42を通過する基層52は、当接部46の当接面46aが傾斜していることにより、基層52に対して当接面46aが徐々に半凝固層の深部の基層に至るようになっているので、安定した製造がしやすい。

【0076】
図18及び図19に示すスクレイパープレート40は、先端部42を屈曲させず、直線状としたものである。図18の当接面が傾いているため、線上に基層に接するようになっている。これらのような先端部42とすることで、通過部48の加工が容易になる。

【0077】
また、均し手段は、実施形態2では、コンベア手段であるコンベアロール20と略一致した周速度で回転する均しロール60であったが、均し手段は回転や走行しない構成とすることができる。即ち、均し手段は、コンベア手段に対して一定の間隔を保持するよう固定又は付勢されたブロックとしてもよい。この場合、均し手段と当接する通過部48との間に生ずる摩擦抵抗を抑えるために、ブロックには離型材をコーティング等しておくことが望ましい。

【0078】
さらに、均し手段である均しロール60は、図20に示すように、コンベア手段であるコンベアロール20の幅WR1よりも細幅WR2に形成することもできる。この場合、均しロール60の幅WR2は、スクレイパープレート40の先端部42の通過部48の幅W3(図15)と同じ又はこれよりも広く形成することが望ましい。

【0079】
また、第2実施例において、均しロール60の両側に均し側サイド部材62を設けることもできる。均し側サイド部材62は、たとえば、図20に示すように、均しロール60の両側から鍔状に突出させたり、コンベアロール20のサイド部材と共用するものであってもよい。

【0080】
本実施形態では何れも、プール30は1つであり、単層の金属板56を製造しているが、プール30を特許文献1の如く、多段スクレイパーや、様々な組み合わせにてコンベアロール20の回転方向に複数に区画して形成し、その回転方向の最も前方に位置するプレートに、本発明のスクレイパープレート40を採用することもできるし、多段縦型双ロールに本スクレイパーを利用することもできる。これにより、複数の金属層からなるクラッド合金板を作製することができる。

【0081】
本願発明に用いる金属溶湯の材料は限定されないが、Al、Al合金、Al基複合材料(SiC、および、アルミナ、カーボンナノチューブなどの粒子、長繊維や単繊維を含有する物)、Mg合金、Mg基複合材料(SiC、および、アルミナ、カーボンナノチューブなどの粒子、長繊維や単繊維を含有する物)、Cu合金、Zn、Zn合金、Pb、Pb合金、Fe合金、鋳鉄などが好適である。
スクレイパープレートの材質としては限定されないが、少なくとも先端部は、金属、セラミックス、窒化ケイ素、ボロンナイトライド、SiC、アルミナ、ジルコニアなどがある。
【実施例】
【0082】
<第1実施例>
本実施例では、発明例1、発明例2及び比較例1にて金属板を夫々作製し、種々の比較を行なった。
【実施例】
【0083】
1.発明例1の実施条件(第1実施形態の金属板製造装置10を使用)
[コンベアロール20(冷却ロール)]
・ロール材質…銅合金
・ロール直径…1000mm
・ロール幅WR1…100mm
・ロールの回転速度(周速)…30m/分
・ロールの冷却方式…循環水による水冷
[金属溶湯50]
・材料…A5182(Al-Mg系合金)
・注湯温度…680℃
[スクレイパープレート40]
・形態…図4に示したような折り曲げ形態を有したもの
・材質…鋼板。プール30側を断熱材45であるイソルール(登録商標)(2mm厚)で覆い、更にBN(窒化ホウ素)スプレーしたもので覆ったもの
・先端部42の幅W1…100mm
・先端部42の奥行…基層と平行に形成され、長さ10mm(面取形状47を除く)
・当接部46…幅方向両側に各幅W2,W2’が10mmとなるように形成
・通過部48…幅W3が80mm、深さD:1mm、
上辺48aは、コンベアロール20の回転軸に対して平行な直線である。
スクレイパープレートの当接部46は正方形状の平面であり、スクレイパープレート40の各正方形状の当接面が、コンベアロール20の回転軸中心と、スクレイパープレート40の各当接部46の中心を含む平面に対し略直交し、想定される基層の表面に接する様にスクレイパープレートを配置した。
・スクレイパープレート40の押し付け荷重:50N
(スクレイパープレートの先端で、バネ秤を用い実測し、50Nになるように錘38を調整した。スクレイパープレートの押し付け荷重については、以下同じ方法で調整した。)
[サイド部材34]
・形状…長方形の板材
・使用形態…溶湯が漏れず、スクレイパープレートが可動なようにわずかな隙間を空けて取り付けられている。
・材質…鋼板。プール30側を断熱材であるイソルール(登録商標)(2mm厚)で覆い、更にBN(窒化ホウ素)スプレーしたもので覆ったもの
尚、サイド部材34は、図2のように固定して取り付ける形態に限らず、コンベアロールの鍔として、コンベアロール20と一緒に回転するように構成されていてもよく、取り付け形態は問わない。
【実施例】
【0084】
2.発明例2の実施条件(第2実施形態の金属板製造装置10を使用)
発明例2では、上記発明例1の金属板製造装置10に、均し手段として均しロール60を配置したものである。スクレイパープレート40の先端部42に形成される通過部48の深さDを3.2mmとした。その他の条件は、発明例1と同じであるため記載を省略する。
【実施例】
【0085】
[均しロール60]
・均しロール材質…銅
・均しロール直径…300mm
・均しロール幅WR2…100mm
・単位幅当たりの均しロールの押し付け荷重…10kN(0.1kN/mm)
・均しロールの回転速度(周速)…30m/分
・ロールの冷却方式…積極的冷却なし
【実施例】
【0086】
3.比較例1の実施条件
比較例1として、発明例1で使用した第1実施形態の金属板製造装置において、先端部42に通過部48を形成していないスクレイパープレート40を用いて金属板56を作製した。なお、先端部42には、特許文献1のように先端部42の表裏両面を断熱材でくるみ込んだ。それ以外の条件は、発明例1の金属板製造装置10と同じであるため記載を省略する。
【実施例】
【0087】
(結果1:表面観察)
得られた発明例1、発明例2及び比較例1の金属板の表面を観察した。夫々の表面観察写真を図21乃至図23に示す。
【実施例】
【0088】
得られた表面観察写真を参照すると、発明例1及び発明例2については、図21及び図22に示すように表面が平滑であることがわかる。一方、比較例1については、図23に示すように、表面に微細な掻き傷がコンベアロール20の回転方向に沿って出現していた。この掻き傷は、スクレイパープレート40の先端部42に半凝固状態の金属が玉状となって付着してしまったこと、また、先端部42に配置された断熱材の跡が転写されたものであると考えられる。
【実施例】
【0089】
(結果2:幅方向の板厚のバラツキ)
得られた発明例1、発明例2及び比較例1の金属板について、幅方向の板厚のバラツキを測定した。板厚の測定は、ポイントマイクロメータ(株式会社ミツトヨ製:No.342-261 CPM30-25MJ 先端SR0.3mm)を使用して実施し、金属板の端部から幅方向に直線上で5mmの位置から10mm間隔で行なった。結果を夫々図24乃至図26に示す。なお、縦軸は1目盛り0.5mmであり、横軸は板の幅方向の測定位置である。
【実施例】
【0090】
発明例1である図24を参照すると、幅方向の両側が低いが、中央側はほぼ平坦である。幅方向の両側が低いのは、図8で示したとおり、両端部は基層52であるためである。一方で、通過部48と対向する幅方向10mm~90mmの通過層54は、ほぼ均一な厚さとなっていることがわかる。
【実施例】
【0091】
発明例2である図25を参照すると、幅方向に亘ってほぼ平坦となっていることがわかる。これは、通過層54が均しロール60によって左右に押し広げられたことによるものである。
【実施例】
【0092】
比較例1である図26を参照すると、幅方向のバラツキが大きいことがわかる。これは、表面観察写真図23で示したように、コンベアロール20の回転方向に伸びる掻き傷や断熱材の表面の凹凸、くるみ込んだ繊維の厚みムラが反映されたものと思われる。なお、比較例1についても、均しロール60を通過させることで多少の平坦化を期待しても、スクレイパープレート40を通過する際に、溶湯は先端部42によって掻き取られ、半凝固の薄い層のみが表面に形成されているだけであるため、均しロール60ではほとんど平坦化効果は期待できない。なお、これについては、続く第2実施例の通過部48の深さDがゼロの場合を参照されたい。
【実施例】
【0093】
<第2実施例>
スクレイパープレート40の通過部上辺48aは、図15のようにコンベアロールに平行な直線であることが望ましい。第1実施例の発明例2においてスクレイパープレート40の先端部42に形成される通過部48の深さDを変えて、均しロール60の平滑化効果を比較した。なお、均しロール60の平滑化効果は、通過部幅80mmの領域について目視観察により評価し、[金属光沢有り]であるものを「○」、[金属光沢がない部分が存在する]を「×」として表記している。
【実施例】
【0094】
(第2実施例A)
第1実施例の発明例2の金属板製造装置10において、通過部48の深さDを0mm~6.4mmまで変えたものである。これ以外の条件は、発明例2と同じである。結果を表1に示す。
【実施例】
【0095】
【表1】
JP2015193021A_000003t.gif
【実施例】
【0096】
表1を参照すると、通過部48の深さDが0mm(すなわち通過部形成せず)~0.7mmのものは、通過部48の平滑化効果を得ることができなかった。これは、通過部48の深さDが浅いため、基層52と共に通過部48を溶湯又は半凝固状態の金属がほとんど通過しなかったためである。すなわち、金属板56の基層52の表面は、図10(a)乃至図10(c)に示すように幅方向(A-A’)及び長さ方向(B-B’)に起伏があるため、通過部48の深さDが浅い場合は、通過層54が十分に盛られず、均しロール60の効果が不十分な個所が生じてしまうと推測される。
【実施例】
【0097】
一方、通過部48の深さDが1.0mm以上であれば、通過層54が基層52の上に良好に形成され、均しロール60による平滑化効果も得られていることがわかる。従って、通過部48の深さDは、1.0mm以上であることが好適であることがわかる。
【実施例】
【0098】
なお、通過部48の深さDが6.4mmである実施例については、通過部48を通過する溶湯の量が多くなり、均しロール60の部分で溶湯が滞留すること、また、深さDが深くなるほど巣が発生しやすくなること、が確認された。従って、平滑化効果と巣の発生防止の観点から、通過部48の深さDは、3.2mm以下とすることが好適であることがわかる。
【実施例】
【0099】
(第2実施例B)
続いて、第1実施例の発明例2に使用した金属板製造装置10において、注湯する金属材料をADC12(Al-Si-Cu系合金)に変えて、同様の試験を行なった。なお、ADC12は、第2実施例Aで使用したA5182(Al-Mg系合金)よりも半凝固状態における流動性が高い材料である。結果を表2に示す。
【実施例】
【0100】
【表2】
JP2015193021A_000004t.gif
【実施例】
【0101】
表2を参照すると、流動性の高いADC12は、通過部48の深さDが0.1mm以上であれば、通過層54が基層52の上に良好に形成され、均しロール60による平滑化効果が得られていることがわかる。
【実施例】
【0102】
(第2実施例C)
続いて、第2実施例Bについて、当接部46の幅W2,W2’を夫々35mm、通過部48の幅W3を30mmとし、コンベアロール20の回転速度(周速)を30m/分~60m/分、において、さらに均しロール60の周速をコンベアロール20の周速にあわせて、同様の試験を行なった。結果を表3に示す。
【実施例】
【0103】
【表3】
JP2015193021A_000005t.gif
【実施例】
【0104】
また、第2実施例C(コンベアロールの周速50m/分)、及び、下記条件にて作製した比較例2の金属板の側面観察写真を、図27及び図28に示す。
【実施例】
【0105】
・比較例2の実施条件
縦型双ロールキャスター法にて金属板を作製
・材料:ADC12
・ロール幅:100mm
・ロールの回転速度(周速):30m/分
・ロールの押し付け荷重:30kN(0.3kN/mm)
【実施例】
【0106】
その結果、発明例である第2実施例Cでは、図27のように巻取りや圧延の障害となる縦バリの発生は見られず、極わずかな横バリの発生が見られた。一方、比較例2の縦型双ロール法では、図28のように縦バリが発生していた。縦バリとは、板の側面部において板表面に垂直方向に突出したバリであり、横バリとは、板の側面部において幅方向にはみ出した形状である。
【実施例】
【0107】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0108】
10 金属板製造装置
20 コンベアロール(コンベア手段)
30 プール
40 スクレイパープレート
46 当接部
46a 当接部の基層に対する当接面
47 当接部の面取形状
47a 通過部の面取形状
48 通過部
48a 通過部の上辺
50 金属溶湯
52 基層
54 通過層
56 金属板
60 均しロール(均し手段)
61 スクレイパープレート基端部
70 溶湯状態の金属
71 固相率の低い半凝固状態の金属
72 固相率の高い半凝固状態の金属
73 凝固状態の金属
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図27】
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【図28】
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