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明細書 :多段フラッシュ型海水淡水化装置及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6090839号 (P6090839)
公開番号 特開2014-151302 (P2014-151302A)
登録日 平成29年2月17日(2017.2.17)
発行日 平成29年3月8日(2017.3.8)
公開日 平成26年8月25日(2014.8.25)
発明の名称または考案の名称 多段フラッシュ型海水淡水化装置及び方法
国際特許分類 C02F   1/04        (2006.01)
C02F   1/06        (2006.01)
B01D   3/06        (2006.01)
C02F   1/02        (2006.01)
B01D   3/42        (2006.01)
F02C   1/05        (2006.01)
F02C   1/10        (2006.01)
F02C   6/00        (2006.01)
F02C   6/06        (2006.01)
F02C   6/10        (2006.01)
FI C02F 1/04 A
C02F 1/06
B01D 3/06 Z
C02F 1/02 F
B01D 3/42
F02C 1/05
F02C 1/10
F02C 6/00 B
F02C 6/06
F02C 6/10
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2013-025416 (P2013-025416)
出願日 平成25年2月13日(2013.2.13)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 平成24年10月28日 HTR2012発行「Proceedings of 6th International Topical Meeting on High Temperature Reactor Technology HTR2012 -Nuclear Energy for the Future-」にて発表 平成24年12月7日 http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/er.2995/abstractを通じて発表
審査請求日 平成27年11月13日(2015.11.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】野口 弘喜
【氏名】ヤン ジングロン
【氏名】日野 竜太郎
【氏名】佐藤 博之
【氏名】橘 幸男
【氏名】國富 一彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100092967、【弁理士】、【氏名又は名称】星野 修
【識別番号】100112634、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 美奈子
審査官 【審査官】高橋 成典
参考文献・文献 特開昭54-010542(JP,A)
特開昭55-109483(JP,A)
特開2012-176364(JP,A)
実公昭49-041479(JP,Y1)
特開昭48-042788(JP,A)
特開2006-070889(JP,A)
特開昭53-139039(JP,A)
特開2003-057391(JP,A)
調査した分野 C02F 1/02- 1/06
B01D 3/06
F02C 3/00
G21D 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
高温ガス炉ガスタービン発電システムからの廃熱を利用して、海水を淡水化する装置であって、
高温ガス炉ガスタービン発電システムからの廃熱との熱交換により原料海水を加熱する加熱部と、
当該加熱部において加熱された海水をフラッシュ蒸発させて淡水を得、蒸発潜熱を原料海水により熱回収する熱回収部と、
当該熱回収部からの残余の加熱された海水をフラッシュ蒸発させて淡水を得、蒸発潜熱を外部に放出する熱放出部と、
高温ガス炉ガスタービン発電システムからの廃熱を前記加熱部に供給する循環ループと、
を具備し、
当該加熱部は、段階的に温度が低下するように直列に連結されている複数の加熱セクションを有し、
当該熱回収部は、各加熱セクションにて加熱された海水を受け入れてフラッシュ蒸発させる1以上のフラッシュ蒸発室を有する熱回収セクションを有し、
各加熱セクションと各熱回収セクションとが熱交換関係に連結されており
1段目の加熱セクションには、1番目の熱回収セクションからの海水を導入し、飽和温度まで加熱した後、1番目の熱回収セクションに戻す第1循環ラインが設けられ、
n段目の加熱セクションには、熱回収部のn番目の熱回収セクションから海水を取り出し、飽和温度まで加熱した後、n番目の熱回収セクションに戻す第n循環ラインが設けられており(ただし、nは2以上の整数である)、
第n循環ラインには、n段目の加熱セクションにて加熱された海水の圧力を調節する減圧弁が設けられており、
前記加熱セクションは、加熱された海水温度を熱回収セクションの圧力に応じた海水の飽和温度に調整するバイパスを具備し、当該バイパスは熱媒体を迂回させるラインであり、
当該循環ループは、高温ガス炉ガスタービン発電システムからの廃熱を熱媒体に付与する前置冷却器と、廃熱により加熱された熱媒体を当該加熱部に供給するラインと、当該加熱部で熱交換した後の熱媒体を冷却する冷却器と、冷却された熱媒体を前置冷却器に送るラインと、循環ポンプと、を具備する、
海水淡水化装置。
【請求項2】
前記熱回収部は、熱回収部の蒸発負荷が段階的に増加するように連結されている複数の熱回収セクションを含む、請求項1に記載の海水淡水化装置。
【請求項3】
前記熱回収部は、独立した熱回収セクションが並列に設けられてなる、請求項1に記載の海水淡水化装置。
【請求項4】
高温ガス炉ガスタービン発電システムと、
請求項1~のいずれかに記載の海水淡水化装置と、
を具備する、高温ガス炉ガスタービン発電プラント海水淡水化システム。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の海水淡水化装置を用いて海水を淡水化する方法であって、
循環ループを介して高温ガス炉ガスタービン発電システムからの廃熱を加熱部に供給し、
熱回収部を経由して海水を1段目の加熱セクションに導入し、飽和温度まで加熱した後、1番目の熱回収セクションに戻してフラッシュ蒸発させて淡水化し、
n番目の熱回収セクションから取り出した海水をn段目の加熱セクションに導入して飽和温度まで加熱した後、n番目の熱回収セクションに戻してフラッシュ蒸発させて淡水化する、
海水淡水化方法。
【請求項6】
請求項に記載の高温ガス炉ガスタービン発電プラント海水淡水化システムを用いて海水を淡水化する方法であって、
循環ループを介して高温ガス炉ガスタービン発電システムからの廃熱を加熱部に供給し、
熱回収部を経由して海水を1段目の加熱セクションに導入して飽和温度まで加熱した後、1番目の熱回収セクションに戻してフラッシュ蒸発させて淡水化し、
n番目の熱回収セクションから取り出した海水をn段目の加熱セクションに導入して飽和温度まで加熱した後、n番目の熱回収セクションに戻してフラッシュ蒸発させて淡水化する、
海水淡水化方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、海水の淡水化技術に関し、特に高温ガス炉タービン発電システムにおける海水淡水化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機を駆動するガスタービンの排気と海水とを熱交換する第1の熱交換器と、ガスタービンの空気圧縮段から抽出した圧縮空気と海水とを熱交換する第2の熱交換器とにより海水を加熱し、該海水を多段蒸発装置においてフラッシュさせて淡水を回収する、発電装置の廃熱を利用して海水を淡水化する方法及び装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
従来の多段フラッシュ法(MSF : Multi-Stage Flash)による海水淡水化システムを図4に示す。従来システムは、海水を加熱するブライン加熱器10’、熱回収部20’及び熱放出部30’から構成される。ブライン加熱器10’では、高温熱媒(水)により海水を飽和温度まで加熱する。熱回収部20’と熱放出部30’は、段階的に減圧された複数のフラッシュ蒸発室21’から構成される。飽和温度まで加熱された海水は、減圧された熱回収部20’の先頭のフラッシュ蒸発室21a’に流入し、その一部がフラッシュ蒸発する。蒸気は純水な水蒸気であり、残った海水の塩分濃度は上昇する。フラッシュ蒸発室21’の上部に設置された凝縮管22’の外表面で水蒸気が凝縮し、凝縮潜熱は凝縮管22’内を流れる海水に回収される。塩分濃度が上昇した海水は減圧された次のフラッシュ蒸発室21b’に流入し、蒸発と凝縮が繰り返される。フラッシュ蒸発室間の圧力調整は、フラッシュ蒸発室内に設置されたオリフィス23’により行われる。
【0004】
MSF海水淡水化システムでは、ブライン加熱器の海水出口温度を高めることにより、フラッシュ蒸発可能な温度範囲が広くなり、淡水製造量を増加させることができる。一方で、熱回収部での凝縮潜熱の回収量が増加するため、ブライン加熱器内で回収できる熱量が低下する。この相反する二つの効果により、最大の淡水製造量を与える最適なブライン加熱器の海水出口温度が存在するため、ブライン加熱器で回収できる熱量は限定的となる。特に、高温ガス炉を用いたMSF海水淡水化システムでは、高温ガス炉からの大量廃熱を回収できるようにブライン加熱器での熱回収量を大幅に増大させる必要がある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2006-70889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高温ガス炉からの大量の廃熱を回収して、淡水製造量を大幅に向上させることができる多段フラッシュ型海水淡水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、発電システムからの廃熱を利用して、海水を淡水化する装置であって、発電システムからの廃熱との熱交換により原料海水を加熱する加熱部と、当該加熱部において加熱された海水をフラッシュ蒸発させて淡水を得、蒸発潜熱を原料海水により熱回収する熱回収部と、当該熱回収部からの残余の加熱された海水をフラッシュ蒸発させて淡水を得、蒸発潜熱を外部に放出する熱放出部と、を具備し、当該加熱部は、段階的に温度が低下するように直列に連結されている複数の加熱セクションを有し、当該熱回収部は、加熱セクションにて加熱された海水を受け入れてフラッシュ蒸発させる1以上のフラッシュ蒸発室を有する複数の熱回収セクションを有し、各加熱セクションと各熱回収セクションとが熱交換関係に連結されている、海水淡水化装置が提供される。
【0008】
第1の実施態様では、熱回収部の複数の熱回収セクションは、蒸発負荷が段階的に増加するように連結されて1個の熱回収部を構成している。
【0009】
第2の実施態様では、独立した熱回収セクションが並列に設けられている。
【0010】
1段目の加熱セクションには、1番目の熱回収セクションからの海水を導入し、飽和温度まで加熱した後、1番目の熱回収セクションに戻す第1循環ラインが設けられ、n段目の加熱セクションには、熱回収部のn番目の熱回収セクションから海水を取り出し、飽和温度まで加熱した後、n番目の熱回収セクションに戻す第n循環ラインが設けられている(ただし、nは2以上の整数である)ことが好ましい。
【0011】
前記第n循環ラインには、n段目の加熱セクションにて加熱された海水の圧力を調節する減圧弁が設けられていることが好ましい。
【0012】
前記加熱セクションは、海水の飽和温度を熱回収セクションの圧力に応じて調節するバイパスを具備することが好ましい。
【0013】
発電システムからの廃熱を熱媒体に付与する前置冷却器と、廃熱により加熱された熱媒体を前記加熱部に供給するラインと、前記加熱部で熱交換した後の熱媒体を冷却する冷却器と、冷却された熱媒体を前置冷却器に送るラインと、循環ポンプと、を具備し発電システムからの廃熱を前記加熱部に供給する循環ループをさらに具備することが好ましい。
【0014】
また、本発明によれば、発電システムと、当該発電システムからの廃熱を海水淡水化装置に供給する循環ループと、循環ループを介して発電システムからの廃熱を受け取り、海水を淡水化する上記海水淡水化装置と、を具備する、発電プラント海水淡水化システムが提供される。
【0015】
前記発電システムは、高温ガス炉ガスタービン発電システムであることが好ましい。
【0016】
前記循環ループは、発電システムからの廃熱を熱媒体に付与する前置冷却器と、廃熱により加熱された熱媒体を前記加熱部に供給するラインと、前記加熱部で熱交換した後の熱媒体を冷却する冷却器と、冷却された熱媒体を前置冷却器に送るラインと、循環ポンプと、を具備することが好ましい。
【0017】
さらに、本発明によれば、上記海水淡水化装置を用いて海水を淡水化する方法であって、熱回収部を経由して海水を1段目の加熱セクションに導入し、飽和温度まで加熱した後、1番目の熱回収セクションに戻してフラッシュ蒸発させて淡水化し、n番目の熱回収セクションから取り出した海水をn段目の加熱セクションに導入して飽和温度まで加熱した後、n番目の熱回収セクションに戻してフラッシュ蒸発させて淡水化する、海水淡水化方法が提供される。
【0018】
また本発明によれば、上記発電プラント海水淡水化システムを用いて海水を淡水化する方法であって、循環ループを介して発電システムからの廃熱を加熱部に供給し、熱回収部を経由して海水を1段目の加熱セクションに導入して飽和温度まで加熱した後、1番目の熱回収セクションに戻してフラッシュ蒸発させて淡水化し、n番目の熱回収セクションから取り出した海水をn段目の加熱セクションに導入して飽和温度まで加熱した後、n番目の熱回収セクションに戻してフラッシュ蒸発させて淡水化する、海水淡水化方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、高温ガス炉の大量の廃熱を効率よく回収することが可能となり、かつ、淡水製造量を大幅に増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の多段フラッシュ型海水淡水化装置の一実施態様の概略図である。
【図2】本発明の多段フラッシュ型海水淡水化装置の別の実施態様の概略図である。
【図3】図3aは図1の熱回収部の説明図であり、図3bは図2の熱回収部の説明図である。
【図4】従来の多段フラッシュ型海水淡水化装置の概略図である。
【図5】実施例1による高温ガス炉ガスタービン発電システムにおける従来法による淡水製造量と本発明による淡水製造量を示す。
【図6】実施例1による加熱器出口温度とフラッシュ段数との関係を示す。
【好ましい実施形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の多段フラッシュ型海水淡水化装置(以下「MSF海水淡水化装置」と略す)の概略図である。図1では、高温ガス炉ガスタービン発電システムからの廃熱を回収する態様を示す。図中、同じ構成部材が複数存在する場合、当該構成部材の個々についての説明には添え字a、b、cを用い(たとえば「加熱セクション11a、11b、11c・・・」)、当該構成部材全体の説明には添え字を用いない(たとえば「加熱セクション11」)表記とする。
【0023】
本発明のMSF海水淡水化装置1は、複数の加熱セクション11a、11b、11c・・・を有する加熱部10、加熱セクションの数に応じて段階的に蒸発負荷を増加させた熱回収セクション21a、21b、21c・・・を具備する熱回収部20、熱放出部30、海水循環ポンプ40及び減圧弁50を具備する。
【0024】
熱回収部20は、複数のフラッシュ蒸発室を具備する熱回収セクション21a、21b、21c・・・を具備する。各熱回収セクション21a、21b、21c・・・の蒸発負荷は、具備するフラッシュ蒸発室の数によって調節できる。各熱回収セクション21a、21b、21c・・・には、上部に凝縮管22a、22b、22c・・・が設けられている。各凝縮管22a、22b、22c・・・の長さは各熱回収セクション21a、21b、21c・・・の長さに等しく、それぞれ異なる。凝縮管22の始端は配管34によって熱放出部30と接続され、各凝縮管22a、22b、22c・・・の終端は配管13a、13b、13c・・・によって加熱部10の各加熱セクション11a、11b、11c・・・と接続されている。
【0025】
各熱回収セクションを構成する複数のフラッシュ蒸発室の各々には、凝縮管22を含む上部の淡水流通部23と、淡水流通部23の下部の海水流通部24が設けられている。海水流通部24には、隣接するフラッシュ蒸発室の境界に、海水の圧力を調節するためのオリフィスが設けられている。加熱部10にて加熱された海水を熱回収部20に供給するための配管14が、各加熱セクションと各熱回収セクションの海水流通部24とを接続している。各加熱セクション11a、11b、11c・・・からの配管14a、14b、14c・・・は、各熱回収セクション21a、21b、21c・・・の海水流通部24に接続されている。2番目以後の熱回収セクション21b、21c・・・に接続されている各配管14b、14c・・・には、減圧弁50a、50b・・・が設けられている。
【0026】
図3aを参照しながら、熱回収部の構成を説明する。各熱回収セクションは蒸発負荷が段階的に増加するように連結されて1個の熱回収部を構成する。1番目の熱回収セクション21aが最も長く、順次短くなる。2番目の熱回収セクション21bは、1番目の熱回収セクション21aの途中に連結される。1番目と2番目の熱回収セクション21aと21bとが連結されている部分では、凝縮管22aと22bとを含み、熱回収部20の蒸発負荷が増加する。3番目の熱回収セクション21cは、2番目の熱回収セクション21bの途中に連結され、凝縮管22aと22bと22cとを含み、熱回収部20の蒸発負荷が更に増加する。説明を簡略化するために、1番目の熱回収セクション21aだけの部分(すなわち凝縮管22aのみ)の熱回収部20の蒸発負荷を「1」とすると、2番目の熱回収セクション21bが連結された部分(凝縮管22aと22b)で熱回収部としての蒸発負荷は2倍となり、3番目の熱回収セクション21cが連結された部分(凝縮管22aと22bと22c)で熱回収部としての蒸発負荷は3倍となる。
【0027】
本MSF海水淡水化装置1では、発電システムからの大量の廃熱を回収するために、加熱部10として、複数の加熱セクション11a、11b、11c・・・を直列に多段化したブライン加熱器を用いる。1段目の加熱セクション11aには、凝縮管22aを介して熱回収部20を通過した海水を供給するための配管13aと、加熱セクション11a内で飽和温度まで加熱した後、先頭の熱回収セクション21aに戻すための配管14aが接続されている。2段目の加熱セクション11bに循環される海水は、熱回収部20の2番目の熱回収セクション21bから取り出される。2段目の加熱セクション11bで加熱された海水は、減圧弁50aにより圧力調整され、2番目の熱回収セクション21bに戻される。3段目以後も同様であり、n段目の加熱セクション11nにはn番目のフラッシュ蒸発室21nからの海水が導入され、加熱後n番目の熱回収セクション21nに戻される。各加熱セクションの入口海水温度が段階的に低くなるため、多くの熱を回収することができる。
【0028】
各加熱セクション11a、11b、11c・・・は、加熱された海水温度を熱回収セクション21a、21b、21c・・・の圧力に応じた飽和温度に調整するためのバイパス12を有する。
【0029】
熱放出部30は、複数のフラッシュ蒸発室を具備する。熱回収部20と同様に、複数のフラッシュ蒸発室の各々には、凝縮管37を含む上部の淡水流通部31と、淡水流通部31の下部の海水流通部32が設けられている。海水流通部32には、隣接するフラッシュ蒸発室の境界に、海水の圧力を調節するためのオリフィスが設けられている。熱回収部20の淡水流通部23の終端と、熱放出部30の先頭の淡水流通部31が淡水用配管35によって接続されている。熱回収部20の海水流通部24の終端と、熱放出部30の先頭の海水流通部32が海水用配管36によって接続されている。凝縮管37には熱媒体としての海水を供給する供給配管38と、熱交換後の海水を送り出す送出配管39とが接続されている。海水流通部32には、原料となる海水を供給する供給配管33と、海水を熱回収部20に送り出す海水供給配管34と、が接続されている。供給配管33は送出配管39から分岐している。海水循環ポンプ40は、海水供給配管34に設けられている。
【0030】
海水は、供給配管38を介して凝縮管37に送られ、熱交換により加温される。加温された海水の一部は、送出配管39から供給配管33を介して熱放出部30に供給され、配管34及び海水循環ポンプ40によって熱回収部20の凝縮管22の始端から導入されて、熱回収部20全域を流れ、凝縮管22の終端から加熱部10に送られる。加熱部10で加熱された海水は、配管14を介して熱回収部20の各熱回収セクション21の先頭のフラッシュ蒸発室の海水流通部24に送られる。1番目の熱回収セクション21aにて、海水はフラッシュ蒸発されて、水蒸気が凝縮管22aの外壁に接触し、復水されて、淡水流通部23に落下する。濃縮された海水は、次のフラッシュ蒸発室に送られ、蒸発と復水を繰り返し、淡水化されて熱放出部30の淡水受け部31に送られる。2段目の加熱セクション11bに循環される海水は、熱回収部20の2番目の熱回収セクション21bの先頭のフラッシュ蒸発室から取り出される。2段目の加熱セクション11bで加熱された海水は、減圧弁50aにより圧力調整され、2番目の熱回収セクション21bの先頭のフラッシュ蒸発室に戻され、フラッシュ蒸発した水蒸気が凝縮管22bと接触し復水される。3段目以後も同様であり、n段目の加熱セクション11nにはn番目の熱回収セクション21nの先頭のフラッシュ蒸発室からの海水が導入され、加熱後、n番目の熱回収セクション21nの先頭のフラッシュ蒸発室に戻される。フラッシュ蒸発室内で、蒸発した水蒸気が凝縮管22の外壁に接触することにより発生する凝縮潜熱は、凝縮管22内を流れる海水に回収される。第1段目の加熱セクション11aに導入される海水の温度は、最も長い凝縮管22aを経由しているため最も高い。第2段目の加熱セクション11bに導入される海水の温度は、やや短い凝縮管22bを経由するためやや低下する。第3段目以後も同様に段階的に海水温度が低くなる。一方、第1段目の加熱セクション11aに供給される発電システムからの廃熱と熱交換した熱媒体の温度は最も高く、海水との熱交換後に次の加熱セクションに送られるため順次低下する。つまり、第1段目の高温の海水と高温の熱媒体との間での熱交換により回収できなかった廃熱は、第2段目以降の温度が順次低下する海水と熱媒体との間での熱交換を行うことにより回収されるため、多くの熱を回収することができる。例えば、第1段目の加熱セクション11aには、140℃の熱媒体が供給され、海水との熱交換によって110℃まで低下する。第2段目の加熱セクション11bには、第1段目の加熱セクション11aで熱交換後の110℃の熱媒体が供給され、海水との熱交換によって80℃まで低下する。第3段目の加熱セクション11cには、第2段目の加熱セクション11bで熱交換後の80℃の熱媒体が供給され、海水との熱交換によって50℃まで低下する。従来の装置では加熱セクションが1個であったため、140℃の熱媒体と海水との熱交換によって85℃まで低下した熱媒体はそのまま放出されてしまうため、発電システムからの廃熱の大半を使用できなかった。本発明では、複数の加熱セクションを設け、熱媒体の温度が140℃から50℃に低下するまで、順次海水との熱交換を繰り返すため、廃熱の大半を海水に伝え、有効に利用することができる。
【0031】
図1に示す装置では、MSF海水淡水化装置に供給される熱源として、高温ガス炉ガスタービン発電プラント60を用い、廃熱をMSF海水淡水化装置1に供給するための循環ループ70を具備している。高温ガス炉ガスタービン発電プラント60は、ヘリウムにより冷却される高温ガス炉61、ヘリウムの顕熱を電力に変換するガスタービン発電系62、再生熱交換器63及び前置冷却器64を具備する。ヘリウムは高温ガス炉61内で最高温度まで加熱され、ガスタービン62によりヘリウムの熱エネルギーは電気エネルギーに変換される。ガスタービン62から排出されたヘリウムは、再生熱交換器63により高温ガス炉61に戻る低温ヘリウムと熱交換が行われる。その後、ヘリウムは前置冷却器64で冷却水により室温付近まで冷却される。低温ヘリウムはガスタービン62の動力により駆動する圧縮機65により加圧され、再生熱交換器63を経て、高温ガス炉61に戻る。高温ガス炉ガスタービン発電システムを熱源として用いることにより、本MSF海水淡水化装置1はガスタービン発電の効率を損なうことなく、前置冷却器64の冷却熱(高温ガス炉の廃熱)を海水淡水化に利用するコジェネレーションシステムを構築することができる。
【0032】
高温ガス炉61の廃熱をMSF海水淡水化装置1へ供給するための循環ループ70は、高温ガス炉61の廃熱を熱媒体に供給する前置冷却器64(高温ガス炉ガスタービン発電システムの前置冷却器を兼用する)、加熱された熱媒体を海水淡水化装置1の加熱部10に供給するライン71、前置冷却器64の冷却性能を一定に保つための冷却器72及び循環ポンプ73を含む。前置冷却器64で熱媒体に回収された高温ガス炉61の廃熱は、加熱部10(ブライン加熱器)で海水に伝えられる。加熱部10で熱交換した後の熱媒体を冷却器73で十分に冷却することにより、MSF海水淡水化装置1の負荷変動が発生した場合も、高温ガス炉61を安定に運転することができる。循環ループ70内を循環する熱媒体としては、加圧水又は水蒸気を好適に用いることができる。
【0033】
図2は、本発明の多段フラッシュ型海水淡水化装置の別の実施態様を示す概略図である。図1では、加熱部10の各加熱セクション11a、11b、11c・・・と熱交換状態に連結される各熱回収セクション21a、21b、21c・・・が連結され、1個の熱回収部20内に包含される装置を示したが、図2では、各熱回収セクション21a、21b、21c・・・が独立して並列に設けられている点が異なる。熱放出部30から各熱回収セクション21a、21b、21c・・・への海水の供給は海水用配管36及び分岐管36a、36b、36c・・を介して行われる。各熱回収セクション21a、21b、21c・・・から熱放出部30への淡水及び海水の導入は、淡水用配管35及び分岐管35a、35b、35c・・・、海水用配管36及び分岐管36a、36b、36c・・を介して行われる。また、図1では加熱部10にバイパス12を設けて各熱回収セクションに供給する海水の飽和温度を調整したが、図2に示す装置では、各熱回収セクションが独立しており、各熱回収セクションに導入される海水の飽和温度は減圧弁のみで調整可能であるため、加熱部10にバイパスは不要となる。余の点は、図1に示す装置と同様である。図1に示す多段フラッシュ型海水淡水化装置では、熱回収部が複数の熱回収セクションを直列に連結して構成されているため、各熱回収セクションは個別のフラッシュ蒸発室を具備する必要がなく、最も長い熱回収セクション21aのフラッシュ蒸発室を兼用することができるので、、装置全体を小型化することができる。
【0034】
例示した発明の実施形態は、本発明の原理と実用的な応用に関する説明を目的としたものである。本発明はここで記載した3段の加熱セクションを有するブライン加熱器に限定されるものではなく、前述で提示した構成に対してブライン加熱器の段数及び熱回収部の蒸発負荷増分の段数の変更が可能である。
【実施例】
【0035】
表1及び図5に、高温ガス炉ガスタービン発電システムにおける従来法による淡水製造量と本発明による淡水製造量を示す。本計算は、ブライン加熱器の海水出口温度の上限を110℃、加圧水入口温度を140℃、出口温度の下限を50℃と仮定して計算を行った。従来法による淡水製造量は、図4に示すようにブライン加熱器の海水出口温度約85℃付近に最大値が存在し、淡水製造量38,627 m3/日であった。このとき、利用した高温ガス炉の廃熱量は152MWtであり、高温ガス炉の利用可能な廃熱量(248MWt)の回収率は約60%であった。また、本発明による場合も従来法と同様に、最大の淡水製造量を与えるブライン加熱器の海水出口温度の最適値が存在する。
【0036】
図5にはブライン加熱器の加熱セクションの段数に応じた最大の淡水製造量も示す。例えば、加熱セクションを3段とした場合、淡水製造量は56,178 m3/日となり、従来法に比べて約45%増加する。このとき、利用した高温ガス炉の廃熱量は248MWtであり、高温ガス炉からの廃熱を100%回収することができる。
【0037】
【表1】
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【0038】
図6は、ブライン加熱器海水出口温度とフラッシュ蒸発室段数との関係を示す。図6より、海水の温度とフラッシュ蒸発室段数は比例関係にあることがわかる。加熱セクションを直列に連結して配置することで、加熱セクションで熱交換された後の海水の温度は段階的に低下する。各加熱セクションで加熱された海水の温度に応じたフラッシュ蒸発室の必要段数(蒸発負荷)を決めることができる。本発明においては、加熱セクションと熱回収セクションとが1対1対応で連結されているため、各加熱セクションにおける海水温度に対して最適な蒸発負荷の熱回収セクションを設けることができ、発電システムからの廃熱を無駄にすることなく、効率よく海水の淡水化を達成することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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