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明細書 :原子炉ガスタービン発電システムの運転方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-139529 (P2014-139529A)
公開日 平成26年7月31日(2014.7.31)
発明の名称または考案の名称 原子炉ガスタービン発電システムの運転方法
国際特許分類 G21D   3/08        (2006.01)
G21D   5/06        (2006.01)
G21C   1/12        (2006.01)
FI G21D 3/08 H
G21D 5/06
G21C 1/12
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2013-008359 (P2013-008359)
出願日 平成25年1月21日(2013.1.21)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 平成24年7月30日 ASME発行「Proceedings of the 2012 20th International Conference on Nuclear Engineering collocated with the ASME 2012 Power Conference(ICONE20-Power2012),ICONE20POWER2012-54351 にて発表
発明者または考案者 【氏名】佐藤 博之
【氏名】ヤン ジングロン
【氏名】大橋 弘史
【氏名】橘 幸男
【氏名】國富 一彦
出願人 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100092967、【弁理士】、【氏名又は名称】星野 修
【識別番号】100112634、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 美奈子
審査請求 未請求
要約 【解決課題】大気温度の変動が生じても、原子炉の定格出力運転を維持することができる大気冷却型発電システムの運転方法を提供する。
【解決手段】原子炉タービン発電システムにおいて、一次冷却系10にはインベントリ調整弁16a及び16bが設けられており、二次冷却系20には大気温度計測系23が設けられている。インベントリ調整弁16a及び16bは、大気温度計測系23にて計測された屋外の大気温度の変動に基づいて開閉が調節され、一次冷却系10に冷却材を注入もしくは排出して、一次冷却系圧力を増加もしくは減少させて、原子炉流量を制御し、原子炉出口温度を一定に維持する。インベントリ調整弁16a及び16bの開閉制御は、インベントリ制御系17によって行われる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
原子炉との熱交換に用いる冷却材を循環させる一次冷却系と、一次冷却系からの排熱を除去する二次冷却系と、を具備し、二次冷却系の冷却材からの熱を除去するための熱交換媒体として大気を用いる原子炉ガスタービン発電システムの運転制御方法であって、当該二次冷却系の大気の温度を測定し、当該大気の温度の変動幅に応じて、一次冷却系に設けられたインベントリ調整弁の開閉を制御し、一次冷却系へ冷却材を注入もしくは排出させ、原子炉出口温度を制御する、原子炉ガスタービン発電システムの運転方法。
【請求項2】
測定した大気温度の設定温度からの変動幅を求め、当該変動幅に応じた一次冷却系の圧力設定値を算出して、想定される圧力偏差を相殺するために必要な冷却材の流量となるようにインベントリ調整弁の開閉を制御する、請求項1に記載の原子炉ガスタービン発電システムの運転方法。
【請求項3】
一次冷却系の冷却材として、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラジウム、窒素、二酸化炭素又はこれらの混合物を用いる、請求項1又は2に記載の運転方法。
【請求項4】
原子炉との熱交換に用いる冷却材を循環させる一次冷却系と、一次冷却系からの排熱を除去する二次冷却系と、を具備する、原子炉の熱を利用して発電する原子炉ガスタービン発電システムにおいて、二次冷却系の冷却材からの熱を除去するための熱交換媒体として大気を用い、
一次冷却系に設けられた1以上のインベントリ調整弁と、
二次冷却系に設けられた大気温度計測系と、
当該大気温度計測系により計測された大気温度に基づいて、当該インベントリ調整弁の開閉を制御する制御系と、
を具備する原子炉ガスタービン発電システム。
【請求項5】
一次冷却系の冷却材としてヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラジウム、窒素、二酸化炭素又はこれらの混合物を用いる、請求項4に記載の原子炉ガスタービン発電システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、二次冷却系の冷却材からの熱を除去するための熱交換媒体として大気を用いる原子炉ガスタービン発電システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉ガスタービン発電システムは、周囲温度の変動の影響を受けにくい海水を二次冷却系の冷却材からの熱除去用熱媒体として使用することが多い。しかし、2011年3月に発生した東日本大震災での東京電力福島第一原子力発電所の津波被害をうけ、二次冷却系の冷却材からの熱を除去するために海水を用いる現状の原子炉ガスタービン発電システムの運転方法の脆弱性が指摘されている。二次冷却系の冷却材からの熱を除去する熱交換媒体として大気を用いることができれば、大量の海水を用いる必要がなくなり、原子炉を海岸近辺に設置する必然性が減少する。
【0003】
本発明者らは、二次冷却系の冷却材からの熱を除去する熱交換媒体として大気を用いる原子炉ガスタービン発電システム(以後「大気冷却型発電システム」と略す)を提案している(非特許文献1)。本発明者らが提案した大気冷却型発電システムは、原子炉と、発電用タービン、圧縮機、発電機、再生熱交換器及び前置冷却器を具備するガスタービン発電系と、原子炉とガスタービン発電系との間で熱交換する一次冷却系と、ガスタービン発電系からの排熱を大気中に放出する空気冷却器を具備する二次冷却系と、を具備する。
【0004】
しかし、非特許文献1に開示されている大気冷却型発電システムでは、大気温度が変動した場合に、二次冷却系及び一次冷却系を介して大気温度の変動が原子炉に伝播してしまうことから、原子炉下流にあるタービン翼の健全性を損なわせないため、又はタービン入口温度条件を確保するため、制御棒の位置が変更されてしまい、原子炉出力が低下し、又は定格値を超過してしまうなどの問題があった。すなわち、大気温度上昇時には、原子炉出口温度が上昇し、制御棒が挿入され、原子炉出力は低下する。一方、大気温度下降時には、原子炉出口温度が降下し、制御棒が引き抜かれ、原子炉出力は上昇するため、結果的に原子炉出力が定格値を超過することになる。このように、従来の大気冷却型発電システムでは、大気温度の変動の影響が大きく、原子炉の定格出力運転を維持することが困難である。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Design Study of Air Cooled GTHTR300A for Inland Installation, X. L. Yan, H. Sato, S. Takada, Y. Inaba, Y. Tachibana, K. Kunitomi, Proc. PBNC 2012, PBNC2012-FA-0049, March 18 -23, 2012, Busan, Korea (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、大気温度の変動が生じても、原子炉の定格出力運転を維持することができる大気冷却型発電システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、大気温度の計測及びインベントリ調整弁の制御を組み合わせ、大気温度の変動に応じて原子炉流量を調整し、原子炉出口温度を一定に保持することで、大気温度変動の影響を受けずに原子炉の定格出力運転を維持することが可能な原子炉ガスタービン発電システムの運転方法を提供する。
【0008】
すなわち、本発明によれば、原子炉との熱交換に用いる冷却材を循環させる一次冷却系と、一次冷却系からの排熱を除去する二次冷却系と、を具備し、二次冷却系の冷却材からの熱を除去するための熱交換媒体として大気を用いる原子炉ガスタービン発電システムの運転制御方法であって、当該二次冷却系の大気の温度を測定し、当該大気の温度の変動幅に応じて、一次冷却系に設けられたインベントリ調整弁の開閉を制御し、一次冷却系へ冷却材を注入もしくは排出させ、原子炉出口温度を制御する、原子炉ガスタービン発電システムの運転方法が提供される。
【0009】
測定した大気温度の設定温度からの変動幅を求め、当該変動幅に応じた一次冷却系の圧力設定値を算出して、想定される圧力偏差を相殺するために必要な冷却材の流量となるようにインベントリ調整弁の開閉を制御することが好ましい。
【0010】
一次冷却系の冷却材としてヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラジウム、窒素、二酸化炭素又はこれらの混合物を用いることが好ましい。
【0011】
また、本発明によれば、原子炉の熱を利用して発電する原子炉ガスタービン発電システムにおいて、二次冷却系の冷却材からの熱を除去するための熱交換媒体として大気を用い、一次冷却系に設けられた1以上のインベントリ調整弁と、二次冷却系に設けられた大気温度計測系と、当該大気温度計測系により計測された大気温度に基づいて、当該インベントリ調整弁の開閉を制御する制御系と、を具備する原子炉ガスタービン発電システムが提供される。
【0012】
原子炉ガスタービン発電システムは、原子炉と、発電用タービン、圧縮機、発電機、再生熱交換器及び前置冷却器を具備するガスタービン発電系と、原子炉とガスタービン発電系との間で熱交換する一次冷却系と、ガスタービン発電系からの排熱を大気中に放出する空気冷却器を具備する二次冷却系と、を具備する。
【0013】
原子炉としては、黒鉛減速材を用いる高温ガス炉や炭酸ガス冷却炉、減速材を備えていないガス冷却高速炉などを使用することができる。
【0014】
本発明の原子炉ガスタービン発電システムの一次冷却系の冷却材としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラジウム、窒素、二酸化炭素又はこれらの混合物を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、大気温度の変動の影響を受けずに、原子炉の定格出力運転を維持することができ、原子炉稼働率の低下を防止することで経済性の向上が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の運転方法を適用することができる原子炉ガスタービン発電システムの概略を示す。
【図2】本発明の運転方法を適用することができる原子炉ガスタービン発電システムの別の態様の概略を示す。
【図3】本発明の運転方法のフローチャートを示す。
【図4】比較例における前置冷却器の二次冷却系側の冷却材入口温度が1時間で23℃から40℃に変動した場合の(a)圧縮機の入口温度及び流量の過渡応答、(b)タービンの入口温度及び流量の過渡応答、(c)圧力比及び圧縮機とタービン効率の過渡応答、(d)原子炉出力の過渡応答を示すグラフである。
【図5】温度変化の間の圧縮機作動点の履歴を示すグラフである。
【図6】比較例における前置冷却器の二次冷却系側の冷却材入口温度が1時間で23℃から4℃に変動した場合の(a)圧縮機の入口温度及び流量の過渡応答、(b)タービンの入口温度及び流量の過渡応答、(c)圧力比及び圧縮機とタービンの効率の過渡応答、(d)原子炉出力の過渡応答を示すグラフである。
【図7】実施例における大気温度上昇時の(a)圧縮機の入口温度及び流量の過渡応答、(b)タービン入口温度及び流量の過渡応答、(c)圧力比及び圧縮機とタービンの効率の過渡応答、(d)原子炉出力の過渡応答を示すグラフである。
【図8】実施例における大気温度低下時の(a)圧縮機の入口温度及び流量の過渡応答、(b)タービン入口温度及び流量の過渡応答、(c)圧力比及び圧縮機とタービンの効率の過渡応答、(d)原子炉出力の過渡応答を示すグラフである。
【図9】本発明の運転方法における空気温度変動と一次冷却系圧力及び原子炉入口温度との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の運転方法における空気温度変動と原子炉出口温度及び原子炉出力との関係を示すグラフである。
【図11】大気温度変動に対する原子炉出力を本発明の運転方法と従来の運転方法とを対比して示すグラフである。
【実施形態】
【0017】
添付図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
図1に、本発明の運転方法を適用できる原子炉ガスタービン発電システムの概略を示す。図1において、原子炉ガスタービン発電システムは、原子炉11と、発電用タービン12、圧縮機13、発電機14、再生熱交換器15及び前置冷却器21を具備するガスタービン発電系と、原子炉とガスタービン発電系との間で熱交換する一次冷却系10と、ガスタービン発電系からの排熱を大気中に放出する空気冷却器22を具備する二次冷却系20と、を具備する。原子炉11、再生熱交換器15、前置冷却器21は、一次冷却系の冷却材を介して熱交換状態にある。
【0019】
原子炉11によって加熱された一次冷却系の冷却材は発電タービン12に送られ、原子炉11からの熱を発電タービン12に伝播する。原子炉11からの熱によって発電用タービン12が回転すると、圧縮機13が作動して一次冷却系の冷却材を循環させるとともに、発電機14が駆動して電力が産出される。原子炉11で加熱された一次冷却系の冷却材は発電タービン12で膨張し、再生熱交換器15に送られて熱交換された後、前置冷却器21に送られ熱交換される。前置冷却器21にて熱交換された一次冷却系の冷却材は、圧縮機13に送られる。圧縮機13にて圧縮された一次冷却系の冷却材は、再生熱交換器15にて加熱された後、原子炉11に送られる。二次冷却系では、前置冷却器21にて一次冷却系の冷却材との熱交換により加熱された二次冷却系の冷却材が空気冷却器22に送られて、大気との間で熱交換して冷却され、再び前置冷却器21に戻される。
【0020】
一次冷却系10には2個のインベントリ調整弁16a及び16bが設けられている。インベントリ調整弁16aには冷却材供給タンクが接続されており、インベントリ調整弁16aを開放すると冷却材が注入される。インベントリ調整弁16bには冷却材貯蔵タンクが接続されており、インベントリ調整弁16bを開放すると一次冷却系10内の冷却材が貯蔵タンクへ排出される。二次冷却系20に大気温度計測系23が設けられている。インベントリ調整弁16a及び16bは、大気温度計測系23にて計測された原子炉建屋屋外の大気温度の変動に基づいて開閉が調節され、一次冷却系10に冷却材を注入もしくは排出して、一次冷却系圧力を増加もしくは減少させて、原子炉流量を制御し、原子炉出口温度を一定に維持する。インベントリ調整弁16a及び16bの開閉制御は、インベントリ制御系17によって行われる。インベントリ制御系17は、大気温度計測系23で計測された大気温度の変動幅に応じて、原子炉出力変動を予測し、インベントリ調整弁16a及び16bの開閉を指示する。二次冷却系の大気温度計測系23で計測した原子炉建屋屋外の大気温度が上昇した場合には、インベントリ調整弁16aを開放又はインベントリ調整弁16bを閉鎖して、一次冷却系に冷却材を導入し、一次冷却系内の圧力を増加させる。大気温度の上昇に伴い、原子炉入口温度は上昇するが、一次冷却系内の冷却材の圧力が増加し、冷却材の流量が増加するため、大量の冷却材と熱交換した後の原子炉出口温度は上昇せず、一定に維持され、原子炉出力も一定に維持される。二次冷却系の大気温度計測系23で計測した原子炉建屋屋外の大気温度が低下した場合には、インベントリ調整弁16aを閉鎖又はインベントリ調整弁16bを開放して、一次冷却系内の冷却材の圧力を減少させる。一次冷却系内の冷却材の流量が減少するため、熱交換した後の原子炉温度は低下せず、一定に維持され、原子炉出力も一定に維持される。
【0021】
図1には2個のインベントリ調整弁16a及び16bを設けて、一方のインベントリ調整弁16aを冷却材供給タンクと接続させ、他方のインベントリ調整弁16bを冷却材貯蔵タンクと接続させた態様を示したが、インベントリ調整弁の数は2個に限定されず、1個でも3個以上でもよい。冷却材の供給を制御するインベントリ調整弁だけでなく、冷却材を除去するインベントリ調整弁も設ける態様では、冷却材貯蔵タンクに接続されているインベントリ調整弁16bを開放して、一次冷却系内から冷却材を流出させ、一次冷却系内の圧力を低下させることができ、より正確な圧力制御が可能となる。
【0022】
図2は、複数のインベントリ調整弁16a~16dを具備する別の実施形態を示す。インベントリ調整弁は一次冷却系10のいずれの位置に設けてもよい。インベントリ調整弁の数は必要に応じて増減可能である。
【実施例】
【0023】
[比較例]
本発明によるインベントリ調整弁の制御を行わなかった場合の大気温度変化による影響を確認した。
【0024】
(1)大気温度上昇
前置冷却器の二次冷却系側の冷却材入口温度が1時間で23℃から40℃に変動した場合の(a)圧縮機の入口温度及び流量の過渡応答、(b)タービンの入口温度及び流量の過渡応答、(c)圧力比及び圧縮機とタービンの効率の過渡応答、(d)原子炉出力の過渡応答を図4に示す。
【0025】
前置冷却器の二次冷却系側の入口温度が上昇するにつれ、圧縮機入口温度が上昇する。この上昇により圧力比が減少し、一次冷却系の冷却材の流量が減少するが、圧縮機の効率の減少は1%未満であり、サイクル効率の点からは無視できる。図5は、この温度変化の間の圧縮機作動点の履歴を示す。圧縮機の作動点は修正流量の低い領域にシフトし、サージ限界に対して平行な方向に移動するため、圧縮機の稼働の安定性は、大気温度上昇による影響を受けなかったことを示す。一方、圧縮機入口温度の上昇は、原子炉入口に伝わり、原子炉出口温度制御装置により原子炉出力が100%から94%に減少する。
【0026】
(2)大気温度低下
前置冷却器の二次冷却系側の冷却材入口温度が1時間で23℃から4℃に変動した場合の(a)圧縮機の入口温度及び流量の過渡応答、(b)タービンの入口温度及び流量の過渡応答、(c)圧力比及び圧縮機とタービンの効率の過渡応答、(d)原子炉出力の過渡応答を図6に示す。
【0027】
最初の1時間で、圧縮機入口温度が低下する。結果として、圧力比が増加するため、一次冷却系内の質量流量が増加する。前置冷却器の二次冷却系側の温度低下が終了した後、一次冷却系内圧力制御により一次冷却系内流量が増加するので、一次冷却系内の流量が徐々に増加する。圧縮機及びタービンの効率はこの温度変動の間、変化しない。圧縮機の作動点は定格値から始まり、図5に示すように、サージラインと平行な方向に移動するため、圧縮機は大気温度低下に対して十分なサージマージンを有したまま作動できる。一方、圧縮機入口温度の低下が原子炉に伝わり、原子炉出口温度制御装置により原子炉出力を100%から107%に増加させる。
【0028】
[実施例]
本発明によるインベントリ調整弁の制御を行った場合の大気温度変化による影響を確認した。
【0029】
(1)大気温度上昇時
図7は、大気温度上昇時の(a)圧縮機の入口温度及び流量の過渡応答、(b)タービン入口温度及び流量の過渡応答、(c)圧力比及び圧縮機とタービンの効率の過渡応答、(d)原子炉出力の過渡応答を示す。
【0030】
インベントリ調整弁を制御して、一次冷却系内に、冷却材(ヘリウム)を1時間で0.09kg/sの流量で導入した。冷却材(ヘリウム)の導入により、一次冷却系内の流量は増加する。流量の増加は、原子炉の温度差が増加することによる偏差を相殺し、原子炉出力を一定に維持する。
【0031】
タービン及び圧縮機の効率の変動は、1%未満であり、サイクル効率の点から無視できる。
【0032】
(2)大気温度低下時
図8は、大気温度低下時の(a)圧縮機の入口温度及び流量の過渡応答、(b)タービン入口温度及び流量の過渡応答、(c)圧力比及び圧縮機とタービンの効率の過渡応答、(d)原子炉出力の過渡応答を示す。
【0033】
インベントリ調整弁を制御して、一次冷却系から、冷却材(ヘリウム)を1時間で0.18kg/sの流量で抜き出した。インベントリ調整弁の制御により、一次冷却系内の冷却材(ヘリウム)の流量は減少し、原子炉出力制御の偏差を相殺する。原子炉出口温度は定格状態に維持される。タービン及び圧縮機の効率もこの過渡の間変化しない。
【0034】
本発明の方法により原子炉ガス炉ガスタービン発電システムの運転を制御した結果を表1及び図9~10に示す。図11にはインベントリ調整弁の制御を行った本発明の運転方法と制御を行わない従来方法との大気温度変動による原子炉出力に対する影響を対比して示す。
【0035】
大気温度変動によるインベントリ調整弁の調節を行なわなかった場合に17℃の大気温度上昇により原子炉出力が定格値に対して6%の低下を示したのに対して、本発明の方法では一定に維持できた。また、従前の方法では19℃の大気温度下降により原子炉出力が定格値に対して7%上昇したが、本発明の方法では一定に維持できた。
【0036】
【表1】
JP2014139529A_000003t.gif
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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【図10】
9
【図11】
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