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明細書 :板端面衝撃接合方法および金属板端面接合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-078061 (P2016-078061A)
公開日 平成28年5月16日(2016.5.16)
発明の名称または考案の名称 板端面衝撃接合方法および金属板端面接合体
国際特許分類 B23K  20/00        (2006.01)
FI B23K 20/00 350
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 7
出願番号 特願2014-210319 (P2014-210319)
出願日 平成26年10月14日(2014.10.14)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 発行日 平成26年5月20日 刊行物名 平成26年度塑性加工春季講演会 講演論文集 発行者名 一般社団法人 日本塑性加工工学会 開催日 平成26年6月8日 集会名 平成26年度塑性加工春季講演会 開催場所 つくば国際会議場
発明者または考案者 【氏名】山下 実
出願人 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100147038、【弁理士】、【氏名又は名称】神谷 英昭
審査請求 未請求
テーマコード 4E167
Fターム 4E167AA02
4E167BB01
4E167CA20
要約 【課題】極めて短時間で、かつ外部環境から加熱等を行うことなく金属板同士を接合する方法を提供すること。
【解決手段】2枚の金属板を8~12m/secの高速でせん断して二つの新生断面を形成する工程、前記二つの新生断面を形成後0.01sec以内に押し当てる工程、前記二つの新生断面を押し当てた状態を維持し、両者を接合する工程、を含むことを特徴とする板端面衝撃接合法。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
2枚の金属板を8~12m/secの高速でせん断して二つの新生断面を形成する工程、
前記二つの新生断面を形成後0.01sec以内に押し当てる工程、
前記二つの新生断面を押し当てた状態を維持し、両者を接合する工程、
を含むことを特徴とする板端面衝撃接合法。
【請求項2】
前記金属材料が軟鋼板であることを特徴とする請求項1に記載の板端面衝撃接合方法。
【請求項3】
前記二つの新生断面を押し当てる工程において、一方の新生断面が他方の新生断面に対して平行に、かつ両者の断面が両金属板の厚みの0.7~7.0%の幅でオーバーラップするように押し当てることを特徴とする請求項1又は2に記載の板端面衝撃接合方法。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載の方法により接合した金属板端面接合体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高速せん断により形成した新生面同士を押し当てて金属板をその新生端面同士で接合する新規な接合方法に係わり、外部環境から加熱等を行うことなく金属板同士を接合する方法及びその方法により接合された金属板端面接合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の熱間圧延材の接合方法としては、電熱法、ガス加熱、溶削法、摩擦法などの方式がある。例えば、先行する鋼板の後端部と後続の鋼板の先端部を、誘導加熱コイルで急速加熱して、鋼板同士を押圧し接合する技術(特許文献1、特許文献2など)がある。また、先行材後端部と後行材先端部をそれぞれ一対の金型で挟み、両材の接合面同士を擦り合わせることによってスケールを除去した後、前後の金型を電極として両材に通電し接合部を加熱して前記金型により板厚方向に圧下して接合する技術(特許文献3)も提案されている。
【0003】
さらに、熱間仕上連続圧延機の入側において、先行熱間鋼材の後端と後行熱間鋼材の先端を重ね合わせ、還元炎雰囲気中または無酸化雰囲気中で重ね合わせ部を切断し、切断部を同一水平面内まで戻した後、圧接する方法(特許文献4)が提案されている。しかし、これらはいずれも接合に時間がかかりすぎるという課題を有していた。
【0004】
そこで、熱間圧延材を粗圧延機群及び仕上げ圧延機群にて圧延を行うに際し、短時間で熱間圧延材の接合を行い、連続圧延を可能とするものが提案されている。これは、金属板の接合予定部を重ね合わせる機構と、該重ね合わせ部を前記金属板の片側から支持するための少なくとも2つの支持台と、前記重ね合わせ部を挟んで、支持台と対向する位置にせん断刃を備え、該せん断刃と前記支持台は前記重ね合わせ部を間に挟み込むように相対的に移動する機構を備えたことを特徴とする接合装置(特許文献5)に係わるものである。
【0005】
前記接合装置は、せん断刃の相対的動作軌跡の延長線が支持台の一つの交叉する(すなわち、せん断刃を接合される金属板に押し込む方向にそのまま動かすと、支持台にぶつかる)ように形成されており、接合する金属板の一部がせん断刃と支持台の間に挟まれて圧縮されるというものである。接合時間はわずか0.2秒程度であるが、この装置では被接合材を圧縮しつつせん断するために、重ねて接合した後の接合部以外の重ね部を除去する必要があった。
【0006】
また、重ね合わせた上部金属薄板と下部金属薄板とをせん断接合するための工具(特許文献6)に関するものがある。この提案は、上部金属薄板側に配置されるせん断パンチに対応して、下部金属薄板側に配置して使用されるせん断接合用下型に関するものであり、圧縮工程で下型が外側方向へ回動することを防止して、確実にせん断を実現しようとするものである。この装置も基本は被接合材を圧縮しつつせん断するものであり、重ね合わせた状態で接合が完了するというものである。
【0007】
これらの提案はいずれも圧縮時のせん断過程で生じる、互いのせん断面の変形を利用して接合部を形成するものであり、各鋼板は基本的には分断される前に接合が開始されているので、後工程では接合部以外の不要な部分を除去する必要があった。
【0008】
本発明者らは先に高速せん断で得られる切り口近傍の材料の昇温を利用して、短時間に摺動させながら押しつけることにより、アルミニウム板で板端面同士を接合する方法(非特許文献1)について試みた。しかし、未切断材料の引っ張り強さに対する接合材料の引っ張り強さの比としては30%程度であり、実用性に欠ける結果であった。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開昭63-90302号公報
【特許文献2】特開平4-89120号公報
【特許文献3】特開平5-245507号公報
【特許文献4】特開平7-178416号公報
【特許文献5】特開平9-174117号公報
【特許文献6】特開平10-85856号公報
【0010】

【非特許文献1】板端面同士の衝撃接合に関する基礎的検討(2013年 日本機械学会第21回機械材料・材料加工技術講演会(M&P2013);山下実、手塚達也、服部敏雄、佐藤丈士)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、極めて短時間で、かつ外部環境から加熱等を行うことなく金属板同士を接合する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明の板端面の接合方法は、2枚の金属板を8~12m/secの高速でせん断して二つの新生断面を形成する工程、前記二つの新生断面を形成後0.1sec以内に押し当てる工程、前記二つの新生断面を押し当てた状態を維持し、両者を接合する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
従来技術においては、まず圧縮行程から開始されていたところ、本発明では、板材をせん断する工程から開始する点に特徴がある。また、せん断された直後の新生面同士を押し当てることによって両者に対して外部環境から加熱等の操作を一切行うことなく、二つの新生面で良好な強度を有する接合が得られる。
【0014】
また前記金属材料が軟鋼板であることが好ましい。本発明の接合方法は全ての金属材料に適用できるものの、接合強度は金属材料の種類によって異なり、軟鋼板が最適な材料なのである。
【0015】
そして、前記二つの新生断面を押し当てる工程において、一方の新生断面が他方の新生断面に対して平行に、かつ両者の断面が両金属板の厚みの0.7~7.0%の幅でオーバーラップするように押し当てることが好ましい。この場合のオーバーラップ部分は、従来技術における圧縮工程に近いと理解することもできる。ただし、オーバーラップ部分の幅は非常に狭いので、新生端面同士の摩擦による効果が大きいと考えられる。
【0016】
前記接合方法により、2枚の鋼板を単純な操作によって1枚の金属板端面接合体とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の板端面衝撃接合方法によれば、操作が簡単であるために生産性が高く、加熱が不要であるために加工コストを低減できる。また溶接などの操作に比較して、加工時間を短縮できるとともに、被接合材に対する熱的な影響を少なくすることができる。
【0018】
さらに詳しくは後述するが、接合強度は切断していない状態の鋼板の引っ張り強度を100としたときに、接合部の引っ張り強度はその70%程度を示し、簡易な接合ではあるが非常に高い強度を得ることができる。なお、本明細書では、以下の文章においてこの比率を「接合効率」と定義する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の接合方法に使用する装置の概要を示した図である。
【図2】図2は、本発明の接合方法の各工程について概要を示した図である。
【図3】図3は、オーバーラップ長さを0.05mmとした時の接合部断面写真および接合効率を示す図である。
【図4】図4は、オーバーラップ長さを0.1mmとした時の接合部断面写真および接合効率を示す図である。
【図5】図5は、オーバーラップ長さを0.2mmとした時の接合部断面写真および接合効率を示す図である。
【図6】図6は、オーバーラップ長さを0.3mmとした時の接合部断面写真および接合効率を示す図である。
【図7】図7は、オーバーラップ長さを0.4mmとした時の接合部断面写真および接合効率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
金属材料を高速せん断加工すると、常温でも切り口断面近傍は昇温し断熱せん断帯を生じ、活性化された状態になる。この現象を板端面の接合方法に利用したのが本発明である。本発明は、高速せん断により生じる新生面同士を即座に摺り合わせて接合するものであり、接合時間の短縮は勿論のこと、変形域が小さいために形状精度についても有利になると思われる。

【0021】
本発明の板端面の接合方法は、(A)2枚の金属板を8~12m/secの高速でせん断して二つの新生断面を形成する工程、(B)前記二つの新生断面を形成後0.01sec以内に押し当てる工程、(C)前記二つの新生断面を押し当てた状態を維持し、両者を接合する工程を含むことを特徴とする。はじめに高速でせん断し、新生断面近傍の材料が昇温し活性化している状態の内に素早く切断面同士を接合するのである。

【0022】
この接合方法に使用する装置の概要について図1に示す。接合装置(10)には、接合される2枚の金属板(1,2)がセットされている。パンチ(3)、下部パンチ(4)、カウンターパンチ(5)が可動部となっており、ダイ(6)、ダイ(7)が固定部となっている。ドロップハンマー(図示せず)を、例えば10m/secの高速でパンチ(3)に衝突させると、パンチ(3)が上側の金属板(1)を、下部パンチ(4)が下側の金属板(2)を同時にせん断する。

【0023】
このときカウンターパンチ(5)は下方に押し下げられるが、パンチストッパー(9)によって所定位置以下には移動しないために、可動側の金属板(1)の新生断面と、固定側の金属板(2)の新生断面とが接続して水平ライン上に並べられることになる。

【0024】
円筒形のパイプ(8)は、カウンターパンチ(5)を支持する作用と、各パンチが下方に押し下げられた時に圧縮変形してパンチ間の金属板を正確にせん断することができるように上方向への押し上げ作用とを有している。切断面のせん断面積の割合を増やし、一層平坦な切り口面を得ることができるようになっている。

【0025】
パンチ(3)、下部パンチ(4)、カウンターパンチ(5)とダイ(6)、ダイ(7)の図面水平方向の寸法は同じではなく、上でせん断された可動側の金属板(1)と、下でせん断された固定側の金属板(2)の新生断面が、所定の幅でオーバーラップすることができるようになっている。このときのせん断工程(A)から接合工程(C)までの状態を各工程毎に示したのが、図2である。

【0026】
図2には図1で示した2枚の金属板(1,2)のみを示している。2枚の金属板を高速でせん断して二つの新生断面を形成する工程(A)では、下方向の矢印によりせん断方向を示し、金属板(1)の切断予定位置(11)と、金属板(2)の切断予定位置(12)が示されている。図より、両者の切断予定位置は僅かにずれていることが分かる。

【0027】
前記せん断工程(A)で二つの新生断面を形成後、すぐに両者を押し当てる工程(B)では、せん断直後の新生断面(21,22)が少しオーバーラップさせたまま相対滑りさせている状態が示されている。前記二つの新生断面を押し当てた状態を維持することで、両者を接合する工程(C)を経て、可動側の金属板と固定側の金属板とが接合するのである。接合工程(C)は新生断面同士が接合するまでの間、単に位置関係を保持するだけであり、断面同士の接合には0.01秒でもあれば十分である。もともと金属材料に熱が加えられているわけではなく、せん断時、押し当て時に発生した熱が冷えるまでに時間を要することはないからである。

【0028】
本発明の接合方法は、金属材料として軟鋼板を使用することが最も適切である。軟鋼板としては冷延低炭素Alキルド鋼、低炭素鋼、さらにニオブ、ボロン、チタンを添加した非時効性極低炭素鋼等が好ましく使用される。これらの軟鋼板を用いる理由は、接合効率が高いからである。

【0029】
前記二つの新生断面を押し当てる工程(B)において、一方の新生断面が他方の新生断面に対して平行に、かつ両者の断面が両金属板の厚みの0.7~7.0の幅でオーバーラップするように押し当てることが好ましく、最も好ましくは1.0~4.5%の幅である。前記「両金属板の厚み」とは、2枚の板材の接合部位における合計の板厚に対する比率をいう。

【0030】
前記接合方法により接合した金属板端面接合体は、そのまま製品として使用しても良く、溶接等によってより強固に結合させ完成品としても良い。

【0031】
以下では、図1に示すような構成の接合装置を用いて、軟鋼板SPCについて本発明の接合方法を適用した実施例について説明する。

【0032】
(実施例1)
板厚3.2mmの軟鋼板(SPC)を図1に示すような配置にてセットし、質量22kgのドロップハンマーを10m/secでパンチ(3)に衝突させて、金属板端面接合体を得た。接合に要する時間(せん断から接合完了までの時間)は、ほぼ0.002秒である。また、オーバーラップの長さは0.05mm(両金属板の厚みの0.78%に相当)、0.1mm(同1.56%)、0.2mm(同3.13%)、0.3mm(同4.69%)、0.4mm(同6.25%)にそれぞれ設定した。このときの接合部の断面拡大写真および接合効率の結果を、それぞれ図3~図7に示す。

【0033】
接合効率は引っ張り強度の測定により求めるが、幅10mmの短冊状の試験片を使用して接合界面に対して垂直の方向に引っ張り、その時の破断強さから算出した。

【0034】
図3は、オーバーラップの長さが0.05mmの場合を示したものである。断面拡大写真において接合した部分はおおよそ2割に留まっている。精度或いはパンチなどの影響によると思われるが、接触するように設定されているにも係わらず接触していないことが原因と考えられる。

【0035】
図4は、オーバーラップの長さが0.1mmのものであり、接合効率の最大値は約70%である。またこれよりもオーバーラップが長いものと比較して、接合境界におけるうねりが最も小さかった。さらに板表面での隙間は殆ど見られなかったが、板内部で複数の隙間が生じており、これが接合効率にばらつきとして表れている。

【0036】
図5は、オーバーラップの長さが0.2mmのものであり、接合効率のばらつきが比較的抑えられ、平均で60%を示し、一連のオーバーラップ長さを変化させた中では最も良好な接合強度を示している。但し、板表面で若干の隙間が見られ、接合境界におけるうねりも認められた。

【0037】
図6は、オーバーラップの長さが0.3mmで接合部の上側表面に大きな隙間が生じており、接合効率も0.2mmの場合に比べて低下傾向を示している。さらに図7は、オーバーラップの長さが0.4mmとしたもので、前記同様隙間が大きく、接合効率は一層低下していた。この場合はいわゆる従来技術の圧縮しつつせん断する方法に近いと考えられる。

【0038】
以上説明したように本発明の板端面衝撃接合法は、オーバーラップ部分を適切に設定すれば、極めて短時間で、かつ適度な強度で接合することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
熱間圧延や冷間圧延の圧延機群にて圧延を行うに際し、短時間で圧延材の接合を行い、連続圧延を行うことができる。また、熱源を必要とせず、機械を小型化することも可能で、作業現場に持ち込んで金属板同士を仮止めして、組み立てた後に溶接などにより本接合する方法など、様々な用途に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1,2 金属板
3,4,5 パンチ
6,7 ダイ
10 接合装置
21,22 新生断面
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6