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明細書 :ミセル及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5397822号 (P5397822)
登録日 平成25年11月1日(2013.11.1)
発行日 平成26年1月22日(2014.1.22)
発明の名称または考案の名称 ミセル及びその利用
国際特許分類 C08G  77/46        (2006.01)
C09D 183/12        (2006.01)
C09J 183/12        (2006.01)
C09D   5/02        (2006.01)
C09K  19/40        (2006.01)
A61K   9/00        (2006.01)
A61K  47/34        (2006.01)
FI C08G 77/46
C09D 183/12
C09J 183/12
C09D 5/02
C09K 19/40
A61K 9/00
A61K 47/34
請求項の数または発明の数 8
全頁数 17
出願番号 特願2011-553642 (P2011-553642)
出願日 平成23年5月10日(2011.5.10)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 高分子学会予稿集 59巻1号[2010](平成22年5月11日 社団法人高分子学会発行)の第1623頁に発表
特許法第30条第1項適用 高分子学会予稿集 59巻2号[2010](平成22年9月 1日 社団法人高分子学会発行)の第3852頁に発表
国際出願番号 PCT/JP2011/060748
国際公開番号 WO2012/063509
国際公開日 平成24年5月18日(2012.5.18)
優先権出願番号 2010252923
優先日 平成22年11月11日(2010.11.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年1月31日(2012.1.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
発明者または考案者 【氏名】宮田 隆志
【氏名】浦上 忠
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】前田 孝泰
参考文献・文献 特開平05-032736(JP,A)
特開平04-019903(JP,A)
国際公開第99/025788(WO,A1)
特開平07-109455(JP,A)
特開2004-513137(JP,A)
特開2002-011338(JP,A)
Bernd Luhmann, Heino Finkelmann, Gunther Rehage,Makromolekulare Chemie,Vol.186,No.5,1985,p.1059-1073
Helmut Loth, Ulrich Foltin,Journal of Controlled Release,Vol.54,No.3,1998,p.273-282
Guo-Ping Chang-Chien,Journal of Chromatography A,Vol.808,No.(1+2),1998,p.201-209
調査した分野 C08G 77/00- 77/62
C08G 81/00- 85/00
C08L 1/00-101/16
C09D 1/00-201/10
C09J 1/00-201/10
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/34- 47/48
B01F 17/00- 17/56
C09K 19/00- 19/60

特許請求の範囲 【請求項1】
水中においてミセルを形成する化合物であって、
酸素原子を含む主鎖に、親水基とメソゲン基とが、側鎖として結合されてなり、
ビニル基、アリル基またはメタクリロイル基を有する上記親水基およびビニル基、アリル基またはメタクリロイル基を有する上記メソゲン基が、当該ビニル基、アリル基またはメタクリロイル基を介してポリシロキサン主鎖中のケイ素原子に結合しており、
上記親水基がポリアルキレングリコール基であり、
上記主鎖が下記式
【化1】
JP0005397822B2_000006t.gif
(式中、Rは、それぞれ独立して、炭化水素基である。nは1~10,000の整数である。)
で示されるポリシロキサンであり、
分子量が500~5,000,000の範囲内であり、
当該ミセル内部において、液晶相を形成する化合物により形成されるミセル。
【請求項2】
両親媒性化合物であって、
酸素原子を含む主鎖に、親水基とメソゲン基とが、側鎖として結合されてなり、
ビニル基、アリル基またはメタクリロイル基を有する上記親水基およびビニル基、アリル基またはメタクリロイル基を有する上記メソゲン基が、当該ビニル基、アリル基またはメタクリロイル基を介してポリシロキサン主鎖中のケイ素原子に結合しており、
上記親水基がポリアルキレングリコール基であり、
上記主鎖が下記式
【化2】
JP0005397822B2_000007t.gif
(式中、Rは、それぞれ独立して、炭化水素基である。nは1~10,000の整数である。)
で示されるポリシロキサンであり、
100℃以下で液晶相を示し、
分子量が500~5,000,000の範囲内である化合物により水中において形成されるミセル。
【請求項3】
上記ミセル内部において液晶相を形成する、請求項2に記載のミセル。
【請求項4】
上記ミセル内部が100℃以下で液晶相を示し、
上記ミセル内部の液晶相における、液晶相から等方相への転移温度が20~60℃の範囲内である、請求項1または3に記載のミセル。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のミセル内部に薬物を保持させ、外部刺激によって当該薬物の放出を制御する方法。
【請求項6】
水性塗料、又はコーティング剤に用いられる、請求項1~4の何れか1項に記載のミセル。
【請求項7】
接着剤に用いられる、請求項1~4の何れか1項に記載のミセル。
【請求項8】
吸着剤に用いられる、請求項1~4の何れか1項に記載のミセル。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、薬物放出キャリア、水性塗料、コーティング剤、接着剤、吸着剤等として有用な化合物を含むミセル、およびその利用に関するものである。

【背景技術】
【0002】
親水鎖と疎水鎖とからなる両親媒性分子は水中でミセルを形成することが知られており、様々な分野で利用されている。
【0003】
例えば、このようなミセルはその内部に疎水性薬物等を保持させることができ、様々な薬物を放出制御するための薬物キャリアとしてドラッグデリバリーシステム(DDS)等への応用研究が精力的に行われている。最近では、pHや温度変化によってミセルの安定性が変化して薬物放出を制御できるシステムも報告されており、自律応答型DDSや標的指向型DDS等への応用が期待されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Y. Bae, N. Nishiyama, S. Fukushima, H. Koyama, M. Yasuhiro, K. Kataoka, Bioconjugate Chem. 2005, 16, 122-130
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これまでに、水中においてミセルを形成する化合物であって、当該ミセル内部において、液晶相を形成する化合物は全く報告されていない。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、水中においてミセルを形成する化合物であって、当該ミセル内部において、液晶相を形成する化合物を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記化合物を実現することによって、物質を内包することが可能で、特定の刺激に応答して当該物質を放出する際に、ある一定時間徐放することが可能なミセルを形成し得る化合物を実現できるのではないかと考えた。
【0008】
具体的には、温度等の特定の刺激に応答して薬物放出する際に、瞬時の放出よりもある一定時間徐放することが有効な場合もある。従来から、pHや温度等の物理化学的な環境変化に応答するミセルは既に報告されているが、そのほとんどが外部刺激によってミセルが崩壊する等の劇的な構造変化を伴う。このため、このような従来のミセルを薬物放出等に利用する場合には瞬時に薬物の放出が完了される場合が多い。つまり、従来のミセルを利用した場合では、刺激に応答したミセル崩壊に基づいて放出を制御しているため、刺激応答後に薬物を一定時間徐放することは困難である。
【0009】
そこで、本発明者は、上記課題を解決するためには、薬物放出等に利用するためのミセルとして、コア部分の分子鎖が配向し、外部刺激によってその配向構造が変化するが、ミセルそのものの崩壊は誘起しないような新規なミセルが有効であると考えた。しかしながら、一般的なミセルは水中において疎水鎖が集合してコアを形成し、親水鎖はシェル層としてミセルの安定化に寄与しており、これらの分子鎖はランダム構造を有している。このため、コアにおいて分子鎖が分子配向性を有するミセルは皆無である。
【0010】
一方、一般に、液晶分子は温度変化等によって、分子が配向した液晶状態から等方相状態へと変化し、その液晶-等方相転移点で分子配向状態が大きく変化する。従って、ミセルのコア部分が液晶状態を示すミセルを形成させることができれば、温度変化によってミセル構造を崩壊させず、分子配向状態等の内部構造を変化させる温度応答性ミセルが得られると本発明者は考えた。
【0011】
更には、本発明者は、上記新規化合物はミセル内部において液晶相を形成するため、従来のフィルム型液晶や溶媒溶解型液晶とは異なり、水分散型液晶として水性塗料、コーティング剤、接着剤、吸着剤等の幅広い分野での応用が可能になると考えた。
【0012】
そこで、本発明者は、表示素子等に既に幅広く利用されているが、医用材料に関する研究は報告されていない液晶性分子に注目し、鋭意検討を行った。その結果、水中においてミセルを形成する化合物であって、当該ミセル内部において、液晶相を形成する化合物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明に係る化合物は、上記課題を解決するために、水中においてミセルを形成する化合物であって、当該ミセル内部において、液晶相を形成することを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、ミセル内部において、液晶相と等方相とを温度等の外部刺激によって制御することができるため、例えば、ミセル内部に、薬物等の物質を含有させれば、温度変化等の外部刺激によって、当該物質を少しずつ放出させることができると考えられる。よって、薬物等の物質を内包することが可能で、特定の刺激に応答して物質放出する際に、ある一定時間徐放することが可能なミセルを形成し得る化合物を提供することが期待できる。
【0015】
更には、従来の液晶が利用されている分野とは全く異なった、環境やエネルギー関係等の新分野、例えば、水性塗料、コーティング剤、接着剤、吸着剤等への利用も期待できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る化合物は、以上のように、水中においてミセルを形成する化合物であって、当該ミセル内部において、液晶相を形成することを特徴としている。
【0017】
このため、水中においてミセルを形成する化合物であって、当該ミセル内部において、液晶相を形成する化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】各温度におけるPEG-g-LCPフィルムの偏光顕微鏡写真を示す図である。
【図2】PEG-g-LCP濃度とピレンの蛍光強度との関係を示すグラフである。
【図3】水中におけるPEG-g-LCP高分子ミセルについての、(a)SEM写真、(b)TEM写真、(c)AFM写真を示す図である。
【図4】PEG-g-LCP高分子ミセルを模式的に示す図である。
【図5】光散乱によって決定された液晶高分子ミセルの粒径の温度依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳しく説明する。尚、本明細書で挙げられている各種物性は、特に断りの無い限り後述する実施例に記載の方法により測定した値を意味する。

【0020】
(I)化合物
本発明に係る化合物は、水中においてミセルを形成する化合物であって、当該ミセル内部において、液晶相を形成する。また、本発明に係る化合物は、両親媒性化合物であって、通常の使用温度(100℃以下)で液晶相を示し、分子量が500~5,000,000の範囲内である化合物とも言い換えることができる。

【0021】
尚、本明細書において、「両親媒性化合物」とは、分子内に親水基と疎水基とを有する化合物であって、具体的には、水溶液とした際に、任意の濃度範囲においてミセルを形成する化合物を意味する。

【0022】
また、本明細書において「ミセル」とは、水中において両親媒性化合物が形成する集合体を意味し、球状ミセル、ベシクル等の層状ミセル、棒状ミセル等の各種形状の集合体を含む。

【0023】
これまで、親水鎖と疎水鎖とからなる様々な両親媒性高分子が合成されており、そのミセル形成を利用した薬物放出等が報告されている。しかしながら、その薬物保持部位となる疎水鎖が集合したコア部分は分子鎖がランダム状態にあり、液晶のような高い運動性と規則性とを兼ね備えた状態のミセルは全く報告されていない。

【0024】
一方で、世界中で様々な液晶分子が合成されているが、室温付近で液晶性を示す両親媒性液晶高分子を合成し、水中におけるその自己集合による液晶高分子ミセルの形成は全く報告されていない。尚、溶媒との共存で形成されるリオトロピック液晶は、その溶液全体が液晶性を示しているため、本発明に係る上記化合物が形成するミセルの状態とは全く異なる状態である。

【0025】
よって、コア部分が液晶状態となっているミセルを調製することができれば、これまでにない刺激応答性を示す可能性があり、DDS等の医療分野や環境分野に利用できるミセルとして幅広い応用展開が期待される。一方で、水に分散できる液晶という点でも全く新しい液晶材料であり、液晶の新しい分野展開につながることが予想される。つまり、本発明に係る上記化合物は、従来のミセル及び液晶分子の両方の特徴を併せ持った新規材料として様々な応用展開が期待される材料である。

【0026】
上記化合物における液晶相を示す温度範囲は、0~100℃の範囲内であることが好ましく、15~60℃の範囲内であることがより好ましく、25~45℃の範囲内であることが特に好ましい。

【0027】
また同様に、上記ミセル内部における液晶相を示す温度範囲は、0~100℃の範囲内であることが好ましく、15~60℃の範囲内であることがより好ましく、25~45℃の範囲内であることが特に好ましい。

【0028】
上記ミセル内部の液晶相における、液晶相から等方相への転移温度は20~60℃の範囲内であることが好ましく、30~50℃の範囲内であることがより好ましく、35~45℃の範囲内であることが特に好ましい。このような、ミセル内部において、室温付近で液晶状態となり、適当な条件で等方相へと変化する液晶-等方相転移点を有する化合物であれば、DDS等の医療分野に好適に用いることができる。

【0029】
上記化合物の分子量は、500~5,000,000の範囲内であることが好ましく、1,000~3,000,000の範囲内であることがより好ましく、10,000~1,000,000の範囲内であることが特に好ましい。

【0030】
上記化合物は、親水基とメソゲン基とを含むことが好ましく、鎖状化合物に、側鎖として、親水基と、メソゲン基とを含む構造を有することが好ましい。

【0031】
上記化合物の主鎖としては、メソゲン基が互いに配向して液晶相を形成し易くする観点から、柔軟な構造を有するものが好ましい。具体的には、主鎖中に、エーテル結合等の酸素原子を含む構造が挙げられ、例えば、ポリシロキサン及びこの誘導体が挙げられる。


【0032】
尚、上記ポリシロキサンとしては、シロキサン結合を繰り返し単位に含むポリマーであれば特には限定されないが、親水基及びメソゲン基を導入し易くする観点から、下記式

【0033】
【化1】
JP0005397822B2_000002t.gif

【0034】
(式中、Rは、それぞれ独立して、有機基であり、好ましくは炭化水素基、より好ましく炭素数1~5の炭化水素基である。nは1~10,000の整数である。)
に示すシロキサンのように、繰り返し単位中に活性水素を有するポリシロキサンが好ましい。

【0036】
上記親水基としては、メソゲン基よりも親水性が高い置換基であれば特には限定されず、例えば、-OH、下記式
-(OR-OH
(式中、Rは2価の炭化水素基、nは1~50の整数である。)
で表されるポリアルキレングリコール基等の非イオン性基や、-COOH、-SOH、及びこれらのアルカリ金属塩等のアニオン性基や、
-NR
(式中、Rは、水素若しくは1価の炭化水素基である。)
及びその4級アンモニウム塩等のカチオン性基及びそれらを含む高分子鎖が挙げられる。

【0037】
生体親和性の観点からは、-(OR-OHで表されるポリアルキレングリコール基が好ましく、ポリエチレングリコール基が特に好ましい。

【0038】
尚、上記ポリアルキレングリコール基は、ポリエチレングリコールのようなホモポリマーからなる基であってもよいし、ポリエチレングリコール/プロピレングリコールのようなコポリマーからなる基であってもよい。また、コポリマーからなる基である場合には、その重合形態は、ブロックコポリマーであってもよいし、ランダムコポリマーであってもよい。

【0039】
上記メソゲン基としては、従来公知の液晶分子の基本骨格であるメソゲン構造を有する基を用いることができる。液晶分子は、通常、硬い部分構造と1以上の柔軟な部分構造とからなり、この硬い部分構造であって、一般的に、棒状又は板状の剛直な部分構造を「メソゲン」という。

【0040】
このようなメソゲン基としては、例えば、下記一般式
-(A-B)-A-C
(式中、A及びAは、それぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-フェニレン基の1個若しくは2個以上のCH基がNにより置き換えられたヘテロ環基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基の1個のCH基若しくは隣接していない2個のCH基がO及び/又はSにより置き換えられていてもよいへテロ環基、1,4-シクロヘキセニレン基、又はナフタレン-2,6-ジイル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。Bは、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-OCH-、-CHO-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、又は単結合である。Cは、一価の有機基であり、mは1~10の整数である。)
尚、鎖状化合物として、ポリアルキレングリコールのような親水基を用いる場合には、側鎖として、別途親水基を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。

【0041】
上述した化合物は、従来公知の方法によって合成することができる。例えば、(i)鎖状化合物の主鎖に対して、当該主鎖と反応し得る基を有する親水基と、当該主鎖と反応し得る基を有するメソゲン基とを反応させる方法や、(ii)重合性基を有する親水基と、重合性基を有するメソゲン基と、高分子主鎖となり得る単量体とを重合させる方法等が挙げられる。

【0042】
より具体的には、(i)の方法としては、後述する実施例に示すように、活性水素を有するポリシロキサンに、ビニル基を有する親水基と、ビニル基を有するメソゲン基とを反応させる方法が挙げられる。

【0043】
また、(ii)の方法としては、グリシジル基を有する親水基と、グリシジル基を有するメソゲン基との存在下、エチレンオキシド等のアルキレンオキシドを単量体として重合する方法が挙げられる。

【0044】
(II)ミセル
本発明に係るミセルは、本発明に係る上記化合物を含む。

【0045】
本発明に係る上記化合物は、上述したように、ミセル内部において、液晶相と等方相とを温度変化等の外部刺激によって制御することができるため、ミセル内部に、薬物等の物質を含有させれば、温度変化等の外部刺激によって、当該物質を少しずつ放出させることができる。

【0046】
上記ミセルは、水系溶媒中において形成され、本発明に係る上記化合物のみから構成されていてもよいが、液晶相の形成を妨げない範囲内で、他の界面活性剤や、溶剤、溶質等を含有させてもよい。また、ミセルを形成する、本発明に係る上記化合物は、1種類のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。

【0047】
ミセルの形状及び大きさは、用途によって適宜変更すればよく、例えば、薬物放出キャリアとして用いる場合には、内包させる薬物の種類に応じて適宜変更すればよい。

【0048】
ミセルの形成は、本発明に係る上記化合物を、単に水系溶媒中に分散させることによって行ってもよいし、透析によって行ってもよい。

【0049】
(III)薬物の放出を制御する方法
本発明に係る薬物の放出を制御する方法は、上記薬物放出キャリアを水中でミセル形成させ、当該ミセル内部に薬物を保持させ、外部刺激によって当該薬物の放出を制御する方法である。

【0050】
上記外部刺激としては、薬物放出キャリア内部の液晶相を等方相へ転移させることができれば特には限定されないが、例えば、温度変化、電流等が挙げられる。

【0051】
薬物放出キャリアが保持及び放出し得る薬剤としては、例えば、可塑剤や抗ガン剤が挙げられる。

【0052】
(IV)組成物
本発明に係る組成物は、水性塗料、コーティング剤、接着剤又は吸着剤に用いられ、本発明に係る上記化合物を含む。

【0053】
上記組成物は、本発明に係る上記化合物を含むため、通常の使用温度(100℃以下)で液晶相を示す。このため、上記組成物は、各種用途において、高い運動性と規則性を併せ持った液晶構造の特性を利用することができ、あるいは相転移によって物性を制御することが可能となる。

【0054】
上記組成物には、本発明に係る上記両親媒性化合物以外に、その用途に合わせて、水性塗料、コーティング剤、接着剤又は吸着剤等に一般的に用いられている各種成分を含有させることができる。

【0055】
すなわち、本願には以下の発明が含まれる。

【0056】
本発明に係る化合物は、上記課題を解決するために、水中においてミセルを形成する化合物であって、当該ミセル内部において、液晶相を形成することを特徴としている。

【0057】
また、本発明に係る化合物は、上記課題を解決するために、両親媒性化合物であって、100℃以下で液晶相を示し、分子量が500~5,000,000の範囲内であることを特徴としている。

【0058】
上記構成によれば、上記両親媒性化合物は、水中においてミセルを形成し、当該ミセル内部において液晶相を形成することができる。そして、ミセル内部において、液晶相と等方相とを温度等の外部刺激によって制御することができるため、例えば、ミセル内部に、薬物等の物質を含有させれば、温度変化等の外部刺激によって、当該物質を少しずつ放出させることができると考えられる。よって、薬物等の物質を内包することが可能で、特定の刺激に応答して物質放出する際に、ある一定時間徐放することが可能なミセルを形成し得る化合物を提供することが期待できる。

【0059】
更には、従来の液晶が利用されている分野とは全く異なった、環境やエネルギー関係等の新分野、例えば、水性塗料、コーティング剤、接着剤、吸着剤等への利用も期待できる。

【0060】
本発明に係る化合物は、水中においてミセルを形成し、当該ミセル内部において液晶相を形成することが好ましい。

【0061】
本発明に係る化合物は、上記ミセル内部が100℃以下で液晶相を示し、液晶相から等方相への転移温度が20~60℃の範囲内であることが好ましい。

【0062】
上記構成によれば、体温に近い温度でミセルの粒子径を制御することができるため、ドラッグデリバリーシステム(DDS)等の薬物キャリアとしてより有用な化合物を提供することができる。また、水性塗料、コーティング剤、接着剤、吸着剤等に使用する温度範囲でミセル内部が液晶状態となり、その高い運動性と規則性とをより容易に利用することが可能になる。

【0063】
本発明に係る化合物は、親水基と、メソゲン基とを含むことが好ましい。

【0064】
本発明に係る化合物は、酸素原子を含む主鎖に、親水基とメソゲン基とを側鎖として含むことが好ましい。

【0065】
本発明に係る化合物は、上記主鎖がポリシロキサンであることが好ましい。

【0066】
本発明に係る化合物は、上記親水基がポリアルキレングリコール基であることが好ましい。

【0067】
上記構成によれば、ポリアルキレングリコール基は生体親和性が高いため、ドラッグデリバリーシステム(DDS)等の薬物キャリアとしてより有用な化合物を提供することができる。

【0068】
本発明に係るミセルは、本発明に係る上記化合物を含むことを特徴としている。

【0069】
上記構成によれば、ミセル内部において、液晶相と等方相とを温度変化等の外部刺激によって制御することができるため、例えば、ミセル内部に、薬物等の物質を含有させれば、温度変化等の外部刺激によって、当該物質を少しずつ放出させることができると考えられる。よって、薬物等の物質を内包することが可能で、特定の刺激に応答して物質放出する際に、ある一定時間徐放することが可能なミセルを形成し得る薬物放出キャリアを提供することができる。

【0070】
本発明に係る、薬物の放出を制御する方法は、本発明に係る上記ミセル内部に薬物を保持させ、外部刺激によって当該薬物の放出を制御することを特徴としている。

【0071】
上記方法によれば、本発明に係るミセルを用いるため、特定の刺激に応答して薬物放出する際に、ある一定時間徐放することができるという効果を奏する。

【0072】
本発明に係る組成物は、水性塗料、コーティング剤、接着剤又は吸着剤に用いられ、本発明に係る上記化合物を含むことを特徴としている。

【0073】
上記構成によれば、従来の比較的高温領域に相転移温度を有する液晶性高分子にはない特性を本化合物は有するため、通常の使用温度(100℃以下)で液晶状態であり、その特性を生かすことができるシステム、例えば、室温付近で相転移に伴う物性変化を制御できるシステムを提供することができる。

【0074】
尚、液晶は表示素子や高強度繊維等の分野において幅広く実用化されており、様々な構造の液晶分子が合成されている。これまでの液晶は、そのフィルムそのものが液晶状態を形成しているものやある種の溶媒に溶解して溶液として液晶を示すものがほとんどである。しかし、液晶を上記のようにDDS等に利用する場合、更には水性塗料、コーティング剤、吸着剤等に利用する場合には、従来のようなフィルム型液晶や溶媒溶解型液晶ではなく、ミセルのように水溶液中で微細な液晶の集合体が分散した液晶ミセルが有用である。

【0075】
また、従来のフィルム型液晶や溶媒溶解型液晶の場合には、上記のようにDDS等に利用することは困難である。更には水性塗料、コーティング剤、接着剤、吸着剤等に利用する場合にも、従来のようなフィルム型液晶ではフィルム状であるために成形性が低いといった欠点を有しており、溶媒溶解型液晶の場合には溶媒存在下でのみ液晶状態を示すので溶媒を使用する必要がある。加えて、低分子液晶とは異なり、高分子液晶は室温よりもかなり高い温度でのみ液晶状態になるものが多い。室温付近で液晶の規則性と運動性を利用できる液晶高分子は側鎖メソゲン基を導入した液晶性ポリシロキサンのみであるが、これまで報告されている液晶性ポリシロキサンは両親媒性でないためにミセルを形成することは困難であった。
【実施例】
【0076】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
〔合成例1:メソゲン基含有単量体の合成〕
メソゲン基含有単量体を下記合成経路に従って合成した。
【実施例】
【0078】
【化2】
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【実施例】
【0079】
具体的には、まず、27.6g(0.20mol)のp-ヒドロキシ安息香酸をメタノール70mlに溶解させ、その溶液に対して33.7g(0.60mol)の水酸化カリウムのメタノール溶液130mlを1時間かけて滴下した。得られた溶液に対し、18ml(0.22mol)の塩化アリルを加え、還流条件(70℃)で6時間反応させた。
【実施例】
【0080】
反応終了後、エバポレーターでメタノール溶媒及び未反応の塩化アリルを除去し、 水/ジエチルエーテルで数回抽出した。未反応のp-ヒドロキシ安息香酸はエーテル相に、また目的生成物であるp-アリロキシ安息香酸はカリウム塩として水相に存在しているため、水相を塩酸で中和し、p-アリロキシ安息香酸を析出させ、当該沈殿物を吸引濾過により濾別させた。得られた沈殿物をイソプロパノールで数回再結晶させることで白色結晶のp-アリロキシ安息香酸を得た。
【実施例】
【0081】
得られたp-アリロキシ安息香酸11.2g(62.9mmol)に対して約330mlの塩化チオニルを加え、室温で2時間撹拌させた後、エバポレーターで未反応の塩化チオニルを除去した。得られた酸塩化物(淡黄色液体)をジクロロメタンで希釈させ、氷浴中で7.8g(62.9mmol)のp-メトキシフェノールのジクロロメタン溶液に1時間かけて滴下し、室温で6時間反応させた。反応終了後、エバポレーターでジクロロメタンを除去し、白色固体を得た。これを酢酸エチル/水酸化ナトリウム水溶液で数回抽出させた。
【実施例】
【0082】
未反応のp-アリロキシ安息香酸及びp-メトキシフェノールはNa塩となり水相中に存在しているため、酢酸エチル相を分離し、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水させた後、エバポレーターで溶媒を除去した。最後にエタノールで数回再結晶させることで、白色結晶のメソゲン基含有単量体を得た。
【実施例】
【0083】
〔実施例1〕
下記合成経路に従って、PEG-g-LCPを合成した。
【実施例】
【0084】
【化3】
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【実施例】
【0085】
まず、1.3g(4.57mmol)の、合成例1で得られたメソゲン基含有単量体と、0.253g(0.81mmol)のポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)(商品名:ポリエチレングリコールメタクリレート、SIGMA-ALDRICH社製)と、0.339g(97.8μmol)のポリメチルシロキサン(PMS)(商品名:SH1107、東レ・ダウコーニング社製)とをトルエン20mlに溶解させ、Speier触媒(HPtCl)3mgを用いて窒素雰囲気下で110℃、24時間反応させ、PEG-g-LCPを合成した。用いたPMSは、H-NMRより平均重合度nが55であると算出した。
【実施例】
【0086】
反応終了後、得られた黄色溶液を遠心分離にかけ、さらにガラスフィルターを用いて濾過することにより、Speier触媒を除去した。
【実施例】
【0087】
Speier触媒を除去した溶液を、約100mlのメタノールに対して滴下することで、PEG-g-LCPを沈殿させた。これは、ポリマーのトルエン、メタノールに対する溶解度の差を利用したもので、これを数回繰り返すことでPEG-g-LCPを精製し、十分に減圧乾燥させた。
【実施例】
【0088】
得られたPEG-g-LCPの組成をH-NMRによって決定し、さらに熱的性質を示差走査熱量計(DSC)によって調べた。
【実施例】
【0089】
尚、用いたPMSは、MALDI-MSスペクトルより分子量分布がおよそ500~5,500であることがわかった。平均重合度nが55であるとき、PMSの数平均分子量は3,500である。このPMSに対して分子量284であるメソゲン基が82mol%、さらに数平均分子量360であるPEGMAが10mol%付加しているため、得られたPEG-g-LCPの分子量の合計はおよそ18,300と算出された。
【実施例】
【0090】
表1に、合成したPEG-g-LCPのPEG鎖及びメソゲン基の導入量、そのガラス転移温度(T)、並びに液晶(ネマチック)-等方性相転移温度(TNI)を示す。尚、参考として、原料として用いたポリメチルシロキサンの値も表1に示す。
【実施例】
【0091】
〔比較例1〕
PEGMAを用いないで、メソゲン基含有単量体の添加量を0.92gに変更したこと以外は実施例と同様の操作を行い、重合体を得た。表1に、実施例1と同様にして求めた、合成した重合体のPEG鎖及びメソゲン基の導入量、そのガラス転移温度(T)並びに液晶(ネマチック)-等方性相転移温度(TNI)を示す。
【実施例】
【0092】
〔比較例2〕
PEGMAを用いないで、メソゲン基含有単量体の添加量を1.25gに変更したこと以外は実施例と同様の操作を行い、重合体を得た。表1に、実施例1と同様にして求めた、合成した重合体のPEG鎖及びメソゲン基の導入量、そのガラス転移温度(T)並びに液晶(ネマチック)-等方性相転移温度(TNI)を示す。
【実施例】
【0093】
〔比較例3〕
PEGMAを用いないで、メソゲン基含有単量体の添加量を1.53gに変更したこと以外は実施例と同様の操作を行い、重合体を得た。表1に、実施例1と同様にして求めた、合成した重合体のPEG鎖及びメソゲン基の導入量、そのガラス転移温度(T)並びに液晶(ネマチック)-等方性相転移温度(TNI)を示す。
【実施例】
【0094】
【表1】
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【実施例】
【0095】
尚、表1中の「メソゲン基含有量」は、PMSにおける活性水素の合計数に対するメソゲン基が導入された割合を意味し、「PEG基含有量」は、PMSにおける活性水素の合計数に対するPEG基が導入された割合を意味する。
【実施例】
【0096】
表1に示すように、実施例1の方法でPMSにメソゲン基及びPEG鎖を導入できることがわかった。また、DSC測定により、実施例1で得られたPEG-g-LCPは、TとTNIに起因するピークが観測された。
【実施例】
【0097】
更には、比較例1~3の結果から、PMSへのメソゲン基の導入率が増加すると、LCPのTとTNIは次第に増加することが確認された。一方、実施例1と比較例2との結果から、メソゲン基を有するPMSに親水鎖としてPEGを導入してもT及びTNIはほとんど変化しなかった。
【実施例】
【0098】
また、比較例1、2、3で得られた重合体を用いて後述する高分子ミセル水溶液の作製に従い高分子ミセル水溶液を作製したところいずれの重合体においても沈殿が見られた。この高分子ミセル水溶液の上澄みを、動的光散乱法によって測定したが、上澄みにミセルは存在しなかった。このことから、比較例1、2、3で得られた重合体では、ミセルが形成されないことが判った。
【実施例】
【0099】
<フィルム状態の偏光顕微鏡での観察>
様々な温度でのPEG-g-LCPの液晶構造を偏光顕微鏡で観察した結果を図1に示す。
【実施例】
【0100】
図1から明らかなように、DSC測定によって決定された、PEG-g-LCPのTとTNIとの間の温度範囲において偏光顕微鏡における複屈折パターンが観察され、ネマチック相を形成していることが確認された。この結果からも、PEG-g-LCPは43℃で液晶転移(ネマチック液晶-等方相転移)を示す両親媒性液晶高分子であることが明らかとなった。
【実施例】
【0101】
<臨界ミセル濃度(CMC)>
一般的に、高分子ミセルが形成されると、疎水鎖が集合したコア部分にピレン等の疎水性分子が取り込まれる。ピレンのような蛍光発光する疎水性分子の場合には、ピレン分子の周りの環境によって蛍光強度が大きく変化するため、その蛍光強度を測定することによって高分子ミセル形成の有無を調べることができる。このような原理を利用して臨界ミセル濃度(CMC)測定を行なった。
【実施例】
【0102】
図2に、PEG-g-LCP濃度を変化させたときのピレンの385nmに対する374nmの蛍光強度比(I374/I385)の変化を示す。図2より、PEG-g-LCP濃度の増加に伴って蛍光強度比も次第に低下し、その変化からCMCが5.0×10-4mg/mlであることがわかった。尚、蛍光強度比I374/I385は溶媒の双極子モーメントとピレンの励起一重項との相互作用に依存するため、臨界ミセル濃度付近で蛍光強度比に鋭い変化が見られたと考えられる。
【実施例】
【0103】
尚、CMCの具体的な測定方法は以下の通りである。
【実施例】
【0104】
〔高分子ミセル水溶液の作製〕
1mgのPEG-g-LCPを4mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、さらに超純水を0.2ml加え、透析チューブ内に封入させた。DMSOと超純水の溶媒交換速度は非常に速く、急激な親疎水性変化によって自己集合体の形成に異常をきたすのを防ぐため、予めDMSOに対して数%程度水に置換した状態で透析を開始した。超純水中で48時間透析させることにより、PEG-g-LCPの自己集合体が形成された、高分子ミセル水溶液を作製した。
【実施例】
【0105】
尚、本実施例で作製した両親媒性化合物は、疎水性基であるメソゲン基の導入比率から考えて非常に疎水性の強い化合物で、単に超純水中に入れるだけでは殆ど溶解せずに沈殿や凝集を引き起こしてしまう。このため、本化合物を分子レベルでミセルを形成させるためには、本化合物に対して良溶媒であるDMSOを用いて一旦溶解させ、貧溶媒である超純水を系内に均一に拡散させることができる透析法を用いた。
【実施例】
【0106】
〔臨界ミセル濃度(CMC)測定〕
3.6mg/100mlのピレンのアセトン溶液を調製し、このピレン溶液を、作製した上記高分子ミセル水溶液を種々の濃度に調製した各溶液に対して、それぞれ4μl滴下し、常温及び暗所にて一晩静置させた。その後、各溶液について蛍光強度を測定し、蛍光強度の変化によってPEG-g-LCPの臨界ミセル濃度(CMC)を決定した。
【実施例】
【0107】
<ミセルの粒径>
上述した〔高分子ミセル水溶液の作製〕に従って作製した高分子ミセル水溶液を凍結乾燥し、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)によってその高分子ミセルの構造観察を行った。その結果、図3に示すように、100nm~200nm程度の球状の高分子ミセルが観察された。尚、図3中のスケールバーは200nmである。
【実施例】
【0108】
また、動的光散乱法(DLS)によって水中における高分子ミセルの粒径を測定した結果、直径270nm程度の粒子の存在が確認された。
【実施例】
【0109】
光散乱で測定した粒径がSEMやTEM、AFMで観測した高分子ミセルの粒径よりも大きな値を示したのは、水中において親水性のPEG鎖が大きく広がっている構造を形成しているためと考えられる。
【実施例】
【0110】
したがって、図4に示すような、PEG-g-LCPは水中で疎水性のメソゲン基をコア部分に親水性のPEG鎖をシェル部分に有する、直径が270nm程度の高分子ミセルを形成していることがわかった。さらに、コア部分はメソゲン基が集合しており、室温付近で液晶性を示していると考えられる。
【実施例】
【0111】
さらに、PEG-g-LCP高分子ミセルの粒径と温度との関係をDLSによって調べ、その結果を図5に示した。
【実施例】
【0112】
図5から明らかなように、TNIである43℃付近までは温度上昇に伴ってPEG-g-LCP高分子ミセルの粒径は次第に減少し、43℃以上でほぼ一定の値になった。したがって、TNI以下ではコア部分を形成しているメソゲン基が配向した液晶構造を形成しているが、TNI以上で等方相に変化し、それらの構造変化に伴って高分子ミセルの粒径も変化していると考えられた。
【実施例】
【0113】
これらの結果より、両親媒性液晶高分子であるPEG-g-LCPは、5.0×10-4mg/ml付近にCMCを示し、水中で高分子ミセルを形成することがわかった。さらに、そのミセルサイズは、温度変化によって次第に減少し、液晶相転移温度以上で一定になった。従って、PEG-g-LCPからなる高分子ミセルは、従来の温度応答性高分子ミセルとは異なって、転移点でミセルが崩壊することなく、ミセル内部構造の規則性が大きく変化する新規な液晶高分子ミセルであると考えられる。
【実施例】
【0114】
以上のように、実施例1で得られた両親媒性液晶高分子は室温付近で液晶性を示し、所定温度で液晶-等方相転移することによって規則構造が大きく変化する。また、疎水性のメソゲン基と親水性のポリエチレングリンコール(PEG)鎖とを有するため、水中で安定な高分子ミセルを形成することができる。
【実施例】
【0115】
このような高分子ミセルは温度変化等によって液晶構造の配向制御が可能であり、それによる内包薬物の放出を制御できる新しい薬物放出キャリアとして用いることができる。また、これまでの液晶高分子と異なって、本発明の内容は内部が液晶状態の高分子ミセルが水に分散した水分散型液晶に関するものであり、従来の液晶が利用されている分野とは全く異なった新分野への利用も期待できる。
【実施例】
【0116】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の化合物は、ドラッグデリバリーシステム(DDS)における薬物放出キャリアのような医療分野だけでなく、従来の液晶が利用されている分野とは全く異なった、環境やエネルギー関係等の新分野、例えば、水性塗料、コーティング剤、接着剤、吸着剤等への利用も期待できる。
図面
【図2】
0
【図4】
1
【図5】
2
【図1】
3
【図3】
4