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明細書 :グラフトポリマー、高分子電解質膜、これらの製造方法、及びそれを用いた燃料電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5463506号 (P5463506)
公開番号 特開2006-291161 (P2006-291161A)
登録日 平成26年1月31日(2014.1.31)
発行日 平成26年4月9日(2014.4.9)
公開日 平成18年10月26日(2006.10.26)
発明の名称または考案の名称 グラフトポリマー、高分子電解質膜、これらの製造方法、及びそれを用いた燃料電池
国際特許分類 C08F 261/04        (2006.01)
H01M   8/02        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
H01B   1/06        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
C08F   8/28        (2006.01)
C08J   5/22        (2006.01)
C08F 289/00        (2006.01)
C08L  51/00        (2006.01)
FI C08F 261/04
H01M 8/02 P
H01M 8/10
H01B 1/06 A
H01B 13/00 Z
C08F 8/28
C08J 5/22 101
C08J 5/22 CEX
C08F 289/00
C08L 51:00
請求項の数または発明の数 20
全頁数 17
出願番号 特願2005-254861 (P2005-254861)
出願日 平成17年9月2日(2005.9.2)
優先権出願番号 2005075790
優先日 平成17年3月16日(2005.3.16)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年8月13日(2008.8.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】高木 繁治
【氏名】比嘉 充
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100101904、【弁理士】、【氏名又は名称】島村 直己
【識別番号】100180954、【弁理士】、【氏名又は名称】漆山 誠一
【識別番号】100105463、【弁理士】、【氏名又は名称】関谷 三男
【識別番号】100099128、【弁理士】、【氏名又は名称】早川 康
【識別番号】100103931、【弁理士】、【氏名又は名称】関口 鶴彦
審査官 【審査官】阪野 誠司
参考文献・文献 特開平01-252610(JP,A)
特開2004-161873(JP,A)
特表平09-507871(JP,A)
特開昭63-090524(JP,A)
特表平11-510192(JP,A)
特開平04-056955(JP,A)
AGGOUR Y A,Reaction kinetics of graft copolymerization and thermochemical studies of the degradation of poly(vinyl alcohol) graft copolymer,Polym Int,英国,2001年 3月,Vol.50 No.3,Page.347-353
調査した分野 C08F 261/00
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ポリビニルアルコールを主鎖とし、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、及びこれらの塩からなる群から選択されるスルホン酸基を有するモノマーを含有するポリマーをグラフト鎖として、合成後に120℃~180℃の熱処理によって物理的に、かつグルタルアルデヒドにより化学的に、架橋されていることを特徴とするグラフトポリマー。
【請求項2】
前記スルホン酸基を有するモノマーが、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸であることを特徴とする請求項1に記載のグラフトポリマー。
【請求項3】
前記スルホン酸基を有するモノマーの含有量がグラフトポリマー全体に対し2~60mol%であることを特徴とする請求項1または2記載のグラフトポリマー。
【請求項4】
前記スルホン酸基を有するモノマーの含有量がグラフトポリマー全体に対し6~20mol%であることを特徴とする請求項3に記載のグラフトポリマー。
【請求項5】
前記熱処理を140℃~180℃で行うことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のグラフトポリマー。
【請求項6】
ポリビニルアルコールに、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びこれらの塩からなる群から選択されるスルホン酸基を有するモノマーを含有するポリマーをグラフト重合してグラフトポリマーを合成する工程、前記合成後に120℃~180℃の熱処理によって物理的に架橋する工程、及びグルタルアルデヒドにより化学的に架橋する工程を含むことを特徴とするグラフトポリマーの製造方法。
【請求項7】
前記スルホン酸基を有するモノマーが、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸であることを特徴とする請求項に記載のグラフトポリマーの製造方法。
【請求項8】
前記スルホン酸基を有するモノマーの含有量がグラフトポリマー全体に対し2~60mo1%であることを特徴とする請求項またはに記載のグラフトポリマーの製造方法。
【請求項9】
重合開始剤として、硝酸2アンモニウムセリウムを用いることを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載のグラフトポリマーの製造方法。
【請求項10】
前記熱処理を140℃~180℃で行うことを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載のグラフトポリマーの製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至のいずれかに記載のグラフトポリマーを有する高分子電解質膜。
【請求項12】
前記グラフトポリマーをキャストして成膜されたことを特徴とする請求項11に記載の高分子電解質膜。
【請求項13】
請求項乃至10のいずれかに記載のグラフトポリマーを合成する工程、物理的に架橋する工程及び化学的に架橋する工程、並びに該グラフトポリマーをキャストする工程を含むことを特徴とする高分子電解質膜の製造方法。
【請求項14】
前記物理的に架橋する工程及び化学的に架橋する工程を前記キャストする工程後に行うことを特徴とする請求項13に記載の高分子電解質膜の製造方法。
【請求項15】
前記キャストを平板状物の上で行うことを特徴とする請求項13または14に記載の高分子電解質膜の製造方法。
【請求項16】
前記キャストを多孔性ポリマーに前記グラフトポリマーを含浸させて行うことを特徴とする請求項13乃至15のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
【請求項17】
前記グラフトポリマーを含む溶液を有機溶媒を用いて不溶化する工程を含むことを特徴とする請求項13乃至16のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
【請求項18】
前記有機溶媒がアセトンであることを特徴とする請求項17に記載の高分子電解質膜の製造方法。
【請求項19】
前記グラフトポリマーを含む溶液を塩を用いて不溶化する工程を含むことを特徴とする請求項13乃至16のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
【請求項20】
請求項11または12に記載の高分子電解質膜を用いてなる固体高分子型燃料電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なグラフトポリマー、高分子電解質膜、これらの製造方法、及びそれを用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、疎水性セグメントとイオン伝導性セグメントからなる共重合体であるNafion(デュポン社の登録商標)等が、固体高分子型燃料電池の高分子電解質として知られており、キャスト法などの製膜方法により膜の形で使用されている。
【0003】
このような高分子電解質膜を用いた場合は、固体高分子型燃料電池を高効率で作動させるために、電解質膜や電極を加湿するなどの水分供給が必要とされている。このため、従来の固体高分子電解質型の燃料電池はポンプ、ブロワ等を用いた水補給システムや、ガスの温度や流速を制御し生成水を気散させるシステム等複雑な配管系、駆動系、制御系を備える必要があり、固体高分子電解質型の燃料電池の本来の長所である小型軽量化の妨げとなるばかりでなく、低温作動型の場合には生成水の気散にも外部からのエネルギー供与が必要となるなど種々の困難が伴うという問題があった。
【0004】
そこで、下記特許文献1には、Nafion(デュポン社の登録商標)等と親水性セグメントを有するポリビニルアルコール等の混合物からなる高分子電解質膜も提案されている。この電解質を用いた燃料電池は、ポリビニルアルコール等の吸水性又は保水性物質によって空気極側と燃料極側を連結し、空気極側で発生した水分及び電池セル内部で燃料極側から空気極側へ移動した水分を集め、これらの水分を上記吸水性又は保水性物質を通して燃料極側へ表面張力により移動させ、燃料極側に必要な水分の補給に当てることがでるとし、これにより複雑な水分制御なしに作動することができ、加湿・給水のためのシステムが不要であり、燃料電池の小型化を実現できるとしている。
【0005】
一方、下記非特許文献1には、ポリビニルアルコール(PVA)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、及びポリエチレングリコール(PEG)各成分の水溶液を所定の組成比で混合、攪拌し、テフロンシート等に広げてキャストして作製する電解質膜が開示されている。このPVA/AMPS/PEGブレンド物を、グルタルアルデヒトのアセトン溶液などで所定時間反応させ、架橋膜とすることも開示されている。
【0006】

【特許文献1】特開平5-283094号公報
【非特許文献1】電池討論会要旨集、676-677(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、得られた高分子電解質膜がマクロに不均一であるためか、プロトン伝導性が十分ではないという問題があった。
【0008】
また、非特許文献1に開示されたPVA/AMPS/PEG架橋膜では、プロトン伝導度が十分でないばかりか、グルタルアルデヒドは主にPVAの水酸基に対して架橋しており、AMPSにはほとんど架橋されておらず、水素透過度やメタノール透過度等を抑制できず、性能は十分ではない。更に、架橋が十分でないため、成分の流出を生じ、性能の維持が出来ないという問題もあった。
【0009】
本発明の目的は、プロトン伝導性に優れ、水素透過度やメタノール透過度等を抑制するとともに、水分バランスの制御が容易で、高効率の燃料電池作動が可能な高分子電解質膜の原料となる、新規なグラフトポリマーを提供することである。同時に、該グラフトポリマーからなる高分子電解質膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意研究を行った結果、特定の主鎖と側鎖の組合せからなるグラフトポリマーによって、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。また、該グラフトポリマーからなる高分子電解質膜は、プロトン伝導性に優れ、水素透過度やメタノール透過度等を抑制するとともに、マクロに実質的に均一であり、該膜内部において水が隅々まで自動的に循環し得、特に高温、低加湿下においても優れたプロトン伝導性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、第1に、本発明は新規構造を有するグラフトポリマーの発明であり、水酸基を含有するポリマーを主鎖とし、スルホン酸基を有するモノマーを含有するポリマーをグラフト鎖とするグラフトポリマーである。
【0012】
水酸基を含有するポリマーとしては後述するように各種ポリマーが用いられるが、特にポリビニルアルコール(PVA)が好ましく例示される。
【0013】
スルホン酸基を有するモノマーとしては後述するように各種モノマーが用いられるが、特に、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、またはこれらの塩が好ましく例示される。2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)は下記化学式で表されるモノマーである。
【0014】
【化1】
JP0005463506B2_000002t.gif

【0015】
本発明のグラフトポリマーにおいて、水酸基を含有するポリマーからなる主鎖とし、スルホン酸基を有するモノマーを含有するポリマーからなるグラフト鎖の比は限定されず、広い範囲で合成することができ、スルホン酸基を有するモノマーの含有量がグラフトポリマー全体に対し1~90mo1%である場合が本発明に含まれる。
【0016】
例えば、本発明のグラフトポリマーを固体高分子型燃料電池の電解質膜に用いる場合は、後述するような理由で、スルホン酸基を有するモノマーの含有量がグラフトポリマー全体に対し2~20mo1%であることが好ましく、6~20mo1%であることがより好ましく、6~10mo1%であることが更に好ましい。2mo1%未満であると、燃料電池に要求されるプロトン伝導度の特性を十分に発揮できず、60mo1%を越えるとグラフトポリマー自体が脆くなって機械的強度に欠ける。
【0017】
本発明のグラフトポリマーを他の用途に用いる場合には、上記広い範囲の主鎖とグラフト鎖の比率で良い。例えば、湿度センサーに用いる場合には、グラフト鎖の比率が高くてもかまわない。
【0018】
本発明のグラフトポリマーは、合成後に、または合成後で成膜後に、物理的及び/又は化学的に架橋することが好ましい。架橋により、親水性成分である水酸基を含有するポリマーからなる主鎖が非水溶性となり、水環境下でも膨潤が抑制され、寸法安定性に優れるとともに、架橋により、機械的強度も向上する。
【0019】
架橋には、物理的架橋と化学的架橋があるが、本発明では、これらのいずれか一方、または両方を行なうことができる。
【0020】
物理的架橋としては、熱処理が好ましい。熱処理により、水酸基を含有するポリマーからなる主鎖同士が集中して配向する結晶領域または結晶点が生成し、これら主鎖同士が物理的に架橋する。熱処理条件としては、100~200℃の温度が好ましく、140~180℃の温度範囲がより。好ましい。200℃近辺の、水酸基を含有するポリマーの酸化温度に近い場合は、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましく、スルホン酸基をナトリウム型に変換しておくことが非酸化のために好ましい。
【0021】
また、化学的架橋としては、グルタルアルデヒド(GA)による架橋が好ましく例示される。水酸基を含有するポリマー、例えばポリビニルアルコール(PVA)はグルタルアルデヒド(GA)により下記化学式のように架橋される。
【0022】
【化2】
JP0005463506B2_000003t.gif

【0023】
第2に、本発明は、上記グラフトポリマーの製造方法の発明であり、水酸基を含有するポリマーに、スルホン酸基を有するモノマーを含有するモノマーをグラフト重合する。
【0024】
上記と同様に、水酸基を含有するポリマーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)が好ましく、例示される。また、スルホン酸基を有するモノマーとしては、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、またはこれらの塩が好ましく例示される。
スルホン酸基を有するモノマーの含有量については上記の通りである。
【0025】
重合は、水溶性媒体中で、後述するように各種重合開始剤を用いて行われる。その中で、重合開始剤として、4価のCe、3価のAg、3価のCu、4価のNi、硝酸2アンモニウムセリウム(CAN)が好ましく例示される。重合開始剤として、硝酸2アンモニウムセリウム(CAN)を用いると、下記化学式で示されるように、4価のセリウムイオンが3価に還元するとともに、水酸基を含有するポリマー中の炭素原子から水素イオンを引き抜き、ラジカルを生じさせ、該ラジカルを開始点としてラジカル重合が行われる。
【0026】
【化3】
JP0005463506B2_000004t.gif

【0027】
第3に、本発明は、上記グラフトポリマーを有する高分子電解質膜である。
本発明のグラフトポリマーを有する高分子電解質膜は、公知の各種方法で成膜される。例えば、グラフトポリマーをキャストして成膜する方法が好ましく例示される。
【0028】
本発明の高分子電解質膜は、グラフトポリマー合成後、または成膜後に、物理的及び/又は化学的に架橋されていることが好ましい。架橋により、親水性成分である水酸基を含有するポリマーからなる主鎖が非水溶性となり、水環境下でも膨潤が抑制され、寸法安定性に優れるとともに、架橋により、機械的強度も向上する。
【0029】
架橋には、物理的架橋と化学的架橋があるが、本発明では、これらのいずれか一方、または両方を行うことができる。物理的架橋としては、熱処理が好ましい。また、化学的架橋としては、グルタルアルデヒド(GA)による架橋が好ましく例示される。
【0030】
第4に、本発明は、上記グラフトポリマーを有する高分子電解質膜の製造方法の発明であり、上記グラフトポリマーを合成する工程と、該グラフトポリマーをキャストする工程とを含む。
【0031】
上記と同様に、グラフトポリマーを物理的及び/又は化学的に架橋する工程を含むことが好ましい。
【0032】
本発明において、キャスト工程は、平板状物の上で行っても良く、多孔性ポリマーにグラフトポリマーを含浸させて行っても良い。
【0033】
キャスト工程後に、水溶性の本発明の高分子電解質膜を不溶化しておくことが好ましい。具体的には、グラフトポリマーを含む溶液をアセトンなどの有機溶媒を用いて不溶化する方法、及びグラフトポリマーを含む溶液を塩化ナトリウムなどの塩を用いて不溶化する方法が好ましく例示される。
第5に、本発明は、上記高分子電解質膜を用いてなる固体高分子型燃料電池である。
【発明の効果】
【0034】
本発明の、水酸基を含有するポリマーを主鎖とし、スルホン酸基を有するモノマーを含有するポリマーをグラフト鎖とするグラフトポリマーは、プロトン伝導性に優れ、水素透過度やメタノール透過度等を抑制するとともに、水分バランスの制御が容易で、高効率の燃料電池作動が可能な高分子電解質膜の原料となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明において、主鎖を構成する水酸基を含有するポリマーとしては特に制限されない。具体的には、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体のけん化物、ポリ-α-ヒドロキシビニルアルコールに代表されるビニルアルコール樹脂、カルボキシメチルセルロースに代表されるセルロース誘導体、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメチルアクリレートに代表される水酸基含有ポリアクリル樹脂、パラヒドロキシポリスチレンに代表される水酸基含有ポリスチレン樹脂などが好ましく例示される。
【0036】
本発明において、グラフト鎖を構成するスルホン酸基を有するモノマーとしては特に限定されない。具体的には、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、α-メチルスチレンスルホン酸、2-スルホエチルメタクリレート、及びこれらの塩が好ましく例示される。
【0037】
上記スルホン酸基を有するモノマーは他のビニルモノマーと共重合してグラフト鎖を構成することもできる。共重合される他のビニルモノマーとしては特に制限されず、共重合性の高いものが選ばれる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸グリシジル、アクリロニトリル、アクリル酸またはメタクリル酸のエステル等のアクリル系、スチレン、クロルメチルスチレン等のスチレン系、ジビニルベンゼン等のジエン系化合物があるがこれに限定されない。更に、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-ペンテン-1、オクテン-1等のα-オレフィン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルエーテル類、ビニルカルバゾール、アクリロニトリル等が挙げられる。ビニリデン基を含むビニリデン化合物も共重合可能であり、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、イソブチレン等が挙げられる。更に、ビニルモノマー、ビニリデン化合物以外の炭素-炭素二重結合を有する化合物も共重合可能であり、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、2-ブテン酸、四フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレン等及び二重結合を2個以上含む化合物、例えばブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0038】
本発明のグラフト化反応は、(1)触媒または開始剤(以下「開始剤」という。)の存在下に行う方法、(2)開始剤の存在下または不存在下に加熱する方法、または(3)触媒または開始剤の存在下または不存在下に紫外線照射を行う方法のいずれも好ましい。
【0039】
開始剤としては、過酸化物(過酸化ベンゾイル、t-ブチルヒドロキシペルオキシド、ジ-t-ブチルヒドロキシペルオキシド等)、硝酸2アンモニウムセリウム(IV)、過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなど)、酸化還元系開始剤(酸化剤:過硫酸塩、過酸化水素、ヒドロペルオキシドなどと、無機還元剤:銅塩、鉄塩、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなど、または有機還元剤:アルコール、アミン、シュウ酸などとの組合せ、及び酸化剤:ヒドロペルオキシドなどと無機還元剤:銅塩、鉄塩、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなど、または有機還元剤:過酸化ジアルキル、過酸化ジアシルなどと還元剤:第三アミン、ナフテン酸塩、メルカプタン、有機金属化合物(トリエチルアルミニウム、トリエチルホウ素など)との組合せ)、その他の公知のラジカル重合開始剤などが挙げられる。この中で、硝酸2アンモニウムセリウム(IV)や過硫酸カリウム等の水溶性の重合開始剤が好ましく用いられるが、過酸化ベンゾイルやN,N-アゾビスイソブチロニトリル等の非水溶性開始剤は、メタノールやアセトンに溶解して、水と混合して用いることができる。紫外線照射の場合には、触媒として、これらの重合開始剤の他に、ベンゾフェノンや過酸化水素などの光増感剤を加えても良い。
【0040】
グラフト化反応は、一般的なグラフト化方法を使用できる。具体例を以下に示す。水溶性の開始剤の場合は水に必要量を溶解する。水不溶性の開始剤の場合は、アルコールやアセトンなどのような水と混合する有機溶剤(例えばアセトン、メタノール等)に溶解してから、開始剤が析出しないように水と混合する。開始剤溶液に、主鎖となる水酸基を含有するポリマーを入れ、スルホン酸基を有するモノマーを加えてグラフト化を行う。処理容器内は必要に応じて窒素置換しておく。加熱グラフトさせる場合は、この反応混合物を適宜の温度で適宜の時間加熱する。または、紫外線照射の下でグラフトさせる場合は、適宜の温度、時間で紫外線照射を照射する。
【0041】
本発明において、成膜方法は特に限定されず、公知の手法を適用することができる。例えば、グラフトポリマーをキャストして成膜する方法が好ましく例示される。
【0042】
キャスト法による成膜には、グラフトポリマーを溶媒に溶解してキャストすることができる。
【0043】
製膜に用いる溶媒は、本発明に係る高分子電解質を溶解可能であり、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、または水などが用いられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。中でも、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドがポリマーの溶解性が高く好ましい。
【0044】
本発明の高分子電解質膜は支持膜である多孔膜と複合化してもよく、使用する多孔膜は高分子電解質を含浸する母材となるものであり、高分子電解質の強度や柔軟性、耐久性のさらなる向上のために使用される。
【0045】
用いられる多孔膜は、上記使用目的を満たすものであればその形状や材質によらず用いる事ができるが、固体高分子電解質型燃料電池の隔膜として使用する場合、多孔膜の形状としては膜厚1~100μm、好ましくは3~30μm、さらに好ましくは5~20μm、孔径は0.01~10μm、好ましくは0.02~7μm、空隙率は20~98%、好ましくは30~95%である。
【0046】
多孔膜の膜厚が薄すぎると複合化後の強度補強の効果あるいは、柔軟性や耐久性を付与するといった補強効果が不十分となり、ガス漏れ(クロスリーク)が発生しやすくなる。膜厚が厚すぎると電気抵抗が高くなり、得られた複合膜が固体高分子型燃料電池の隔膜として好ましくない。孔径が小さすぎると高分子固体電解質の含浸が非常に困難となり、大きすぎると高分子固体電解質への補強効果が弱くなる。空隙率が小さすぎると固体電解質膜としての抵抗が大きくなり、大きすぎると一般に多孔膜自体の強度が弱くなり補強効果が得られない。
【0047】
また、多孔膜の材質としては、耐熱性の観点や、物理的強度の補強効果を鑑みれば、脂肪族系高分子または、含フッ素高分子が好ましい。
【0048】
ここで、脂肪族系高分子としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なおポリエチレンはポリエチレンの結晶構造を有するエチレン系のポリマーであり、例えばエチレンと他のモノマーとの共重合体をも含み、具体的には直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と称されるエチレンとα-オレフィンとの共重合体や、超高分子量ポリエチレンなどを含む。またここでいうポリプロピレンはポリプロピレンの結晶構造を有するプロピレン系のポリマーであり、一般に使用されているプロピレン系ブロック共重合体、ランダム共重合体など(これらはエチレンや1-ブテンなどとの共重合体である)を含むものである。
【0049】
また、含フッ素高分子とは、分子内に炭素-フッ素結合を少なくとも1個有する公知の熱可塑性樹脂が制限なく使用される。通常は、脂肪族系高分子の水素原子のすべてまたは大部分がフッ素原子によって置換された構造のものが好適に使用される。
【0050】
好適に使用できる含フッ素高分子を例示すれば、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン-ペルフルオロアルキルエーテル)、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このうち、本発明では、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン)が好ましく、特にポリテトラフルオロエチレンが好ましい。また、これらのフッ素系樹脂は、機械的強度の良好さから平均分子量が10万以上のものが好ましい。
【0051】
本発明の高分子電解質膜を多孔膜と複合化する方法に特に制限は無く、高分子電解質溶液中に多孔膜を含浸し、多孔膜を取り出した後に溶媒を乾燥させて複合膜を得る方法や、高分子電解質溶液を多孔膜に塗布し、溶媒を乾燥させて複合膜を得る方法、多孔膜に減圧下で高分子電解質溶液を接触させ、その後常圧に戻す事で溶液を多孔膜空孔内に含浸させ、溶媒を乾燥させて複合膜を得る方法、等が複合化方法として例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
本発明の高分子電解質膜は通常用いられる添加剤、例えば酸化防止剤などの安定剤や離型剤を含んでいてもよい。
【0053】
本発明の高分子電解質膜の厚みは、特に制限はないが10~200μmが好ましい。実用に耐える膜の強度を得るには10μmより厚い方が好ましい。膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには200μmより薄い方が好ましく、100μmより薄い方がより好ましい。膜厚は溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御できる。
【0054】
次に本発明の燃料電池について説明する。
本発明の燃料電池は、高分子電解質膜の両面に、触媒及び集電体としての導電性物質を接合することにより製造することができる。
【0055】
該触媒としては、水素または酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、白金の微粒子を用いることが好ましい。白金の微粒子は活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンに担持されて用いることが好ましい。
【0056】
集電体としての導電性物質に関しても公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン不織布またはカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
【0057】
多孔質性のカーボン不織布またはカーボンペーパーに白金微粒子または白金微粒子を担持したカーボンを接合させる方法、およびそれを高分子電解質膜と接合させる方法については、広く公知の方法を適用できる。
【0058】
このようにして製造された本発明に係る燃料電池は、燃料として水素ガス、改質水素ガス、メタノールを用いる各種の形式で使用可能である。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例及び比較例を説明する。
本発明を実施するにあたって、電解質膜の特性を表すパラメーターとして
Φ = σ / P
を用いた。ここで、σ = 電解質のプロトン伝導度(s/cm)であり、P = メタノール透過係数(m/s)である。メタノール透過係数が低いとメタノールを燃料ガスとする燃料電池に好適であるばかりでなく、水素ガスの透過性を類推することができ、水素ガスを燃料ガスとする燃料電池に対する好適さの指標となる。即ち、上記パラメーターΦが大きいほど燃料電池特性が優れていることになる。ちなみに、Nafion117のΦは約8000程度である。
【0060】
[実施例1]
(1)ポリビニルアルコール(PVA)2g、2-アクリルアミド-2-メチル-プロパンスルホン酸(AMPS)モノマー12gをイオン交換水60mLに溶解させた。
(2)60分間、窒素ガスをパブリルグした後、重合開始剤として硝酸2アンモニウムセリウム(CAN)を0.115g加えてスターラーで攪拌しながら40℃で15h重合した。
(3)NMRにてグラフトポリマーの組成を解析した結果、AMPS含有量は29.1mol%であった。
(4)このグラフトポリマーとPVAをAMPS含有量が8mol%となるように、ブレンドして30mLのイオン交換水中に溶解させて、アクリル板上にキャストして製膜した。
(5)120℃×20分間の熱処理を行った。
(6)0.05vol%のグルタルアルデヒド水溶液に24h浸漬させた。
(7)膜の乾燥重量と湿潤重量から含水率(H)を求めた。結果を図1に示す。
(8)25℃純水中で交流インピーダンス測定を行い、プロトン伝導度σを求めた。結果を図2に示す。
(9)25℃において膜を2つのセルに挟み、片側に2mol/lメタノール水溶液、反対側にイオン交換水を入れて、イオン交換水側のメタノール濃度の時間変化をガスクロマトグラフで測定し、メタノール透過係数Pを求めた。結果を図3に示す。
(10)膜の特性値として、Φ=σ/Pを算出した。結果を図4に示す。
【0061】
[実施例2]
(1)~(3)、(5)~(10)は実施例1と同じとし、
(4)このグラフトポリマーとPVAをAMPS含有量が6mol%となるように、ブレンドして30mLのイオン交換水中に溶解させて、アクリル板上にキャストして製膜した。
【0062】
[実施例3]
(1)~(3)、(5)~(10)は実施例1と同じとし、
(4)このグラフトポリマーとPVAをAMPS含有量が4mol%となるように、ブレンドして30mLのイオン交換水中に溶解させて、アクリル板上にキャストして製膜した。
【0063】
[実施例4]
(1)~(3)、(5)~(10)は実施例1と同じとし、
(4)このグラフトポリマーとPVAをAMPS含有量が2mol%となるように、ブレンドして30mLのイオン交換水中に溶解させて、アクリル板上にキャストして製膜した。
【0064】
[比較例1]
(1)Nafion117について、実施例と同じ(8)~(10)の評価を行った。
図1~図4の結果より、以下のことが分かる。
a)メタノール透過係数Pについては、AMPS含有量8mol%以下の全ての実施例においてNafion117より優れた。なお、Nafion117のメタノール透過係数Pは3.3×10-10である。
b)パラメーターΦについては、AMPS含有量6moI%以上でNafion117より優れている。
a)及びb)から、本発明の電解質膜は6mol%以上では特に優れた性能を示した。
【0065】
[実施例5]
(1)ポリビニルアルコール(PVA)15g、2-アクリルアミド-2-メチル-プロパンスルホン酸(AMPS)モノマー24gをイオン交換水225mL中に溶解させた。
(2)60分間、窒素ガスをバブリングした後、重合開始剤として硝酸2アンモニウムセリウム(CAN)を0.855g加えてスターラーで攪拌しながら40℃で1.5h重合した。
(3)NMRにてグラフトポリマーの組成を解析した結果、AMPS含有量は4.3mol%であった。
(4)このグラフトポリマーを30mLのイオン交換水中に溶解させて、アクリル板上にキャストして50℃で24h乾燥させ、製膜した。
(5)120℃×20分間の熱処理を行った。
(6)アセトン188mLにイオン交換水10mL、濃塩酸1.73mL、グルタルアルヒド(GA)溶液を加えた水溶液に、熱処理を行った膜を浸漬させ、25℃で24h攪拌した。
(7)膜の乾燥重量と湿潤重量から含水率Hを求めた。
(8)25℃純水中で交流インピーダンス測定を行い、プロトン伝導度σを求めた。
(9)25℃において膜を2つのセルに挟み、片側に2mol/Lのメタノール水溶液、反対側にイオン交換水を入れて、イオン交換水側のメタノール濃度の時間変化をガスクロマトグラフで測定し、メタノール透過係数Pを求めた。
(10)膜の特性値として、Φ=σ/Pを算出した。結果を図5に示す。
【0066】
[実施例6]
(1)~(4)、(6)~(10)は実施例5と同じように行った。
(5)140℃×20分間の熱処理を行った。
【0067】
[実施例7]
(1)~(4)、(6)~(10)は実施例5と同じように行った。
(5)160℃×20分間の熱処理を行った。
【0068】
[比較例2]
(1)~(4)、(6)~(10)は実施例5と同じように行った。
(5)熱処理については行わなかった。
図5の結果より、熱処理を行うことによって、パラメーターΦが向上することが分かる。特に、熱処理温度としては140℃~180℃が好ましいことが分かる。
以下、AMPS含有量に対してプロトン伝導度、水素透過度、強度を評価した。
【0069】
参考例1
(1)オイルバス100℃において三角フラスコ中のイオン交換水150mlにポリビニルアルコール(PVA)10gを溶解させた。
(2)常温にまで冷やした後、2-アクリルアミド-2-メチル-プロパンスルホン酸(AMPS)モノマー25gを加えた。
(3)セプタムで栓をし、窒素ガスを用いてバブリングを行った(1h)。
(4)重合開始剤として硝酸2アンモニウムセリウム(CAN)を0570g加えてスターラーで攪拌しながら40℃で1.5h重合した。
(5)メタノールを用いて重合溶液からポリマーを沈殿させ、ろ過、乾燥した。
(6)得られたポリマー7.4gをイオン交換水350mlに溶かし(100℃)、アクリル板にキャストし、50℃で乾燥させて製膜した。
(7)NMRにてグラフトポリマーの組成を解析した結果、AMPS含有量は12.8mol%であった。
(8)80℃の70%RH下で交流インピーダンス測定を行い、プロトン伝導度を求めた。
(9)80℃90%RH下での膜の水素透過度評価を行った。
(10)室温で引張試験を行い、最大点から引張強度を求めた。
【0070】
参考例2
(1)オイルバス100℃において三角フラスコ中のイオン交換水225mlにポリビニルアルコール(PVA)15gを溶解させた。
(2)常温にまで冷やした後、2-アクリルアミド-2-メチル-プロパンスルホン酸(AMPS)モノマー30gを加えた。
(4)重合開始剤として硝酸2アンモニウムセリウム(CAN)を0.855g加えてスターラーで攪拌しながら40℃で1.5h重合した。
(7)NMRにてグラフトポリマーの組成を解析した結果、AMPS含有量は8.5mo1%であった。
(3)、(5)、(6)、(8)~(10)は参考例1と同じように行った。
【0071】
参考例3
(1)オイルバス100℃において三角フラスコ中のイオン交換水225mlにポリビニルアルコール(PVA)15gを溶解させた。
(2)常温にまで冷やした後、2-アクリルアミド-メチル-プロパンスルホン酸(AMPS)モノマー19gを加えた。
(4)重合開始剤として硝酸2アンモニウムセリウム(CAN)を0.855g加えてスターラーで攪拌しながら40℃で15h重合した。
(7)NMRにてグラフトポリマーの組成を解析した結果、AMPS含有量は2.5mol%であった。
(3)、(5)、(6)、(8)~(10)は参考例1と同じように行った。
【0072】
参考例4
(1)オイルバス100℃において三角フラスコ中のイオン交換水225mlにポリビニルアルコール(PVA)15gを溶解させた。
(2)常温にまで冷やした後、2-アクリルアミド-2-メチル-プロパンスルホン酸(AMPS)モノマー24gを加えた。
(4)重合開始剤として硝酸2アンモニウムセリウム(CAN)を0.855g加えてスターラーで攪拌しながら40℃で1.5h重合した。
(7)NMRにてグラフトポリマーの組成を解析した結果、AMPS含有量は1.4mol%であった。
(3)、(5)、(6)、(8)~(10)は参考例1と同じように行った。
【0073】
参考例1の結果から得られる、AMPS含有量に対するプロトン伝導度を図6に示す。透過度評価を行った。AMPS含有量に対する水素透過度を図7に示す。AMPS含有量に対する引張強度を図8に示す。
【0074】
図6の伝導度の結果より、AMPS含有量1mol%以上で、十分な伝導度が得られ、6mol%以上でさらに十分な伝導度が得られることが分かった。図7の、水素透過度の結果より、AMPS含有量増加により、水素透過度は増加したが、顕著な増加は見られず、Nafion117に対しては著しく小さい値となった。図8の引張強度の結果より、AMPS含有量が10mol%を超えると、著しく強度が減少することが分かった。
【0075】
これらの結果より、AMPS含有量が6~10mol%である場合に、プロトン伝導度、水素透過度(メタノール透過度)、及び引張強度の全てで最適の効果が奏せられることが分かった。
【0076】
[実施例
(1)オイルバス100℃において三角フラスコ中のイオン交換水225mlにポリビニルアルコール(PVA)15gを溶解させた。
(2)常温にまで冷やした後、2-アクリルアミド-2-メチル-プロパンスルホン酸(AMPS)モノマー5gを加えた。
(3)セプタムで栓をし、窒素ガスを用いてバブリングを行った(1h)。
(4)重合開始剤として硝酸2アンモニウムセリウム(CAN)を0.855g加えてスターラーで攪拌しながら40℃で1.5h重合した。
(5)メタノールを用いて重合溶液からポリマーを沈殿させ、ろ過、乾燥した。
(6)得られたポリマーをイオン交換水350mlに溶かし(100℃)、アクリル板にキャストし、50℃で乾燥させて製膜した。
(7)NMRにてグラフトポリマーの組成を解析した結果、AMPS含有量は0.6mol%であった。
(8)160℃×20minの熱処理を行った。
(9)イオン交換水5voI%、0.1mol/l塩酸、0.01vol%グルタルアルデヒド(GA)溶液を加えたアセトン溶液に、熱処理を行った膜を浸潰させ、室温でスターラーを用いて撹拝した(24h)。
(10)膜をイオン交換水に浸漬させた(途中で数回イオン交換水を交換した)。
(11)室温純水中で交流インピーダンス測定を行い、プロトン伝導度を求めた。
【0077】
[実施例
(2)常温にまで冷やした後、2-アクリルアミド-2-メチル-プロパンスルホン酸(AMPS)モノマー10gを加えた。
(7)NMRにてグラフトポリマーの組成を解析した結果、AMPS含有量は1.0mol%であった。
(1)、(3)~(6)、(8)~(11)は実施例と同じように行った。
【0078】
[実施例10
(2)常温にまで冷やした後、2-アクリルアミド-2-メチル-プロパンスルホン酸(AMPS)モノマー15gを加えた。
(7)NMRにてグラフトポリマーの組成を解析した結果、AMPS含有量は1.4mol%であった。
(1)、(3)~(6)、(8)~(11)は実施例と同じように行った。
【0079】
[実施例11
(2)常温にまで冷やした後、2-アクリルアミド-2-メチル-プロパンスルホン酸(AMPS)モノマー20gを加えた。
(7)NMRにてグラフトポリマーの組成を解析した結果、AMPS含有量は1.6mol%であった。
(1)、(3)~(6)、(8)~(11)は実施例と同じように行った。
【0080】
[実施例12
(1)~(8)まで実施例と同じように行った。
(9)熱処理を行った膜を2mol/lのNaCl水溶液に浸漬させた(24h)。
(10)2mol/lのNaCl水溶液にpHが1となるように濃塩酸を加え,グルタルアルデヒド(GA)を加えた水溶液に膜を浸潰させ、室温でスターラーを用いて攪拌した(24h)。
(11)1mol/lのHCl水溶液に浸漬させた(24h)。
(12)膜をイオン交換水に浸漬させた(途中で数回イオン交換水を交換した)。
(13)室温純水中で交流インピーダンス測定を行い、プロトン伝導度を求めた。
【0081】
[実施例13
(1)~(8)まで実施例と同じように行った。
(9)~(13)まで実施例12と同じように行った。
【0082】
[実施例14
(1)~(8)まで実施例10と同じように行った。
(9)~(13)まで実施例12と同じように行った。
【0083】
[実施例15
(1)~(8)まで実施例11と同じように行った。
(9)~(13)まで実施例12と同じように行った。
【0084】
実施例15の結果から得られる、AMPS含有量に対するプロトン伝導度を図9に示す。図9の結果より、重合・熱処理後の化学的架橋を行う際は、アセトン水溶液を用いることで、プロトン伝導度、機械的強度、ガス透過抑制度、が特に優れた値を示す。これは、アセトン中で膜の結晶化度が増加するためと推定される。これにより、本発明の新規高分子においての、最適な化学的架橋条件が得られた。即ち、PVAとAMPSをグラフトさせることによって、性能の維持を可能とする。更に組成及び架橋条件を最適化させることにより、プロトン伝導度、水素透過度(メタノール透過度)、機械的強度を全て成り立たせることができる。なお、実施例1215の高分子電解質(塩)を用いたグルタルアルデヒド(GA)架橋が、実施例11のアセトン溶液を用いたグルタルアルデヒド(GA)架橋に比べて、非実用的であるということではない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の、水酸基を含有するポリマーを主鎖とし、スルホン酸基を有するモノマーを含有するポリマーをグラフト鎖とするグラフトポリマーは、プロトン伝導性に優れ、水素透過度やメタノール透過度等を抑制するとともに、水分バランスの制御が容易で、高効率の燃料電池作動が可能な高分子電解質膜の原料となる。これにより、燃料電池の普及に貢献する。
【0086】
また、本発明の固体高分子電解質膜は、燃料電池の他、水電解、ハロゲン化水素酸電解、食塩電解、酸素濃縮器、湿度センサー、ガスセンサ等に広く用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】AMPS含有量と含水率Hとの関係を示すグラフ。
【図2】AMPS含有量とプロトン伝導度σとの関係を示すグラフ。
【図3】AMPS含有量とメタノール透過係数Pとの関係を示すグラフ。
【図4】AMPS含有量とパラメーターΦとの関係を示すグラフ。
【図5】熱処理温度とパラメーターΦとの関係を示すグラフ。
【図6】AMPS含有量とプロトン伝導度との関係を示すグラフ。
【図7】AMPS含有量と水素透過度との関係を示すグラフ。
【図8】AMPS含有量と引張強度との関係を示すグラフ。
【図9】アセトン架橋の際の、AMPS含有量とプロトン伝導度との関係を示すグラフ。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8