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明細書 :固体高分子形燃料電池用高電位安定担体および電極触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5858077号 (P5858077)
公開番号 特開2014-146602 (P2014-146602A)
登録日 平成27年12月25日(2015.12.25)
発行日 平成28年2月10日(2016.2.10)
公開日 平成26年8月14日(2014.8.14)
発明の名称または考案の名称 固体高分子形燃料電池用高電位安定担体および電極触媒
国際特許分類 H01M   4/86        (2006.01)
H01M   8/10        (2016.01)
H01M   4/92        (2006.01)
H01M   4/88        (2006.01)
B01J  23/89        (2006.01)
FI H01M 4/86 B
H01M 8/10
H01M 4/92
H01M 4/88 Z
H01M 4/88 K
B01J 23/89 M
請求項の数または発明の数 5
全頁数 15
出願番号 特願2014-060159 (P2014-060159)
分割の表示 特願2009-121269 (P2009-121269)の分割、【原出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
出願日 平成26年3月24日(2014.3.24)
審査請求日 平成26年3月31日(2014.3.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】渡辺 政廣
【氏名】柿沼 克良
【氏名】山下 壽生
【氏名】矢野 啓
審査官 【審査官】守安 太郎
参考文献・文献 特開2005-046808(JP,A)
特開2011-067744(JP,A)
特開2005-310607(JP,A)
調査した分野 H01M 4/86
H01M 4/88
H01M 4/92
特許請求の範囲 【請求項1】
導電性を有する、ランタンとストロンチウムと鉄と酸素からなるペロブスカイト型酸化物であることを特徴とする電極触媒用微粒子担体。
【請求項2】
平均粒子径が1~20nmのPtを、請求項1に記載の電極触媒用微粒子担体に担持させたことを特徴とする電極触媒。
【請求項3】
金属イオンを含む水溶液をミスト化することと、
前記ミスト化した水溶液をプラズマ炎中に導入し熱処理を行うこと、
を特徴とする請求項1に記載の電極触媒用微粒子担体の製造方法。
【請求項4】
前記プラズマ炎のプラズマはアルゴンガスプラズマであることを特徴とする請求項3に記載の電極触媒用微粒子担体の製造方法。
【請求項5】
白金錯体を含む有機溶液を調製することと、
前記白金錯体を含む有機溶液と界面活性剤を混合し、ミセル溶液を調製することと、
前記ミセル溶液を還元し、白金微粒子の分散液を調製することと、
前記白金微粒子の分散液に、請求項3又は4のいずれかに記載の製造方法により製造された電極触媒用微粒子担体の分散液を混合し、前記白金微粒子を前記電極触媒用微粒子担体に担持させることと、
を特徴とする電極触媒の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、温度の降下と共に導電率が上がる、もしくは一定となる金属的な伝導性を有することを特徴とする電極触媒用微粒子担体であり、さらに詳しくは、10S/cm以上の導電性をもつ酸化物および/または窒化物で、3m/g以上の比表面積があり、0.9V以上の電位にて化学的に安定な性質をもつ微粒子について、これを担体として、その表面上に1nm~20nmの粒径をもつ貴金属微粒子を担持させた、燃料電池用電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、貴金属微粒子を炭素担体粒子に担持させたものは、燃料電池の電極触媒として多用されている。この場合の担体粒子としては主に、比表面積が100m/g以上の微粒子が用いられている。特に高い導電性を持つ炭素粒子は燃料電池の電極用触媒の担体として有効なものである。
【0003】
その炭素粒子に、白金や白金とルテニウムもしくは白金と鉄といった貴金属合金粒子を担持させた粉末は、高性能な高分子形燃料電池用電極触媒として知られている。例えば特許文献1、2には、白金や白金と他の1種以上の金属による合金を炭素に担持させることにより固体高分子形燃料電池用電極ができると記載されている。
【0004】
また特許文献3、4、5、6では、白金代替触媒としてペロブスカイト型酸化物微粒子や卑な金属酸化物を用い、それらを炭素へ担持させた触媒が燃料電池用電極触媒としての効果を発揮すると記載されている。さらに、特許文献7では白金を主として二酸化チタン等の酸化物からなる担体材料に担持させ、それに導電性を付与させるため炭素を混ぜることにより燃料電池等の電気化学デバイスの出力特性および耐久性を効果的に向上させると記載されている。また特許文献8、9では白金代替触媒として酸窒化物、窒化物、遷移金属四窒化物を利用し、それらを炭素に担持させることで電極触媒として使用する例も挙げられている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2001-15121
【特許文献2】特開2006-127979
【特許文献3】特開2008-4286
【特許文献4】特開2006-26586
【特許文献5】特開2004-363056
【特許文献6】特開2003-092114
【特許文献7】特開2005-174835
【特許文献8】特開2008-155111
【特許文献9】特開2005-44659
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように白金およびその合金化合物を炭素に担持させたものや、金属酸化物、酸窒化物そして窒化物等を助触媒として、白金およびその合金化合物と共に炭素へ担持させた電極触媒は公知の物質であるとも言える。近年、PEFCは自動車などへの応用が期待されており、走行中の加減速に対応した頻繁な負荷変動・起動停止に対応する電極が必要とされている。しかし、頻繁な負荷変動・起動停止により、カソードの電位は0.9V以上に達するため、炭素は下記の反応式(1)に示す酸化反応により、著しく劣化する。
C+2HO→CO+4H+4e(E0 =0.207V vs RHE)
・・・(1)
また、担体を金属酸化物にして耐久性を向上させる試みがあるものの、その導電性が小さいため、集電体としての機能を十分に発揮できない。現状では、前記特許文献7にあるように、担体に炭素(カーボンブラック、グラファイト化カーボン等)の添加を必要としている。
【0007】
従って、0.9V以上の高電位においても安定で、高い導電性を兼ね備えた担体を開発する必要がある。さらには、その担体の比表面積を大きくすることで、1nm~20nmの粒子径をもつ貴金属微粒子を高分散させた電極触媒を作製し、カソードへ応用する必要もある。
【0008】
そのうえ、PEFCの広汎な普及を目指すためには、カソードに含まれる高価な貴金属の量を大幅に減らす必要もある。
本発明は、上記の課題に対し、0.9V以上の高電位において溶解や腐食等がおきず、PEFCの作動条件下で安定に存在し、高い導電率を有する金属酸化物および金属窒化物の微粒子担体および該担体に、ナノサイズに粒径を制御したPtおよびまたはPt合金を担持した高性能電極触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した電極触媒の腐食を解決するために、本発明はある特定な組成、結晶構造を持つ金属酸化物および金属窒化物の中には0.9V以上の高電位において溶解や腐食等が生じず安定に存在するものがあり、さらに高い導電率を示すものがあることに着目し、それら金属酸化物および金属窒化物の微粒子について、3m/g以上の大きな比表面積を気相および/または液相を利用して合成し、該表面に1~20nmの粒子径をもつ微細な貴金属粒子を凝集させることなく担持させることにより高安定性電極材料を提供する。更に第2の課題であるPt量低減化に関しては金属酸化物、金属窒化物は炭素に比べ比重が2~3倍大きいため、同じ体積%のPtを担持させるのに、金属酸化物担体、金属窒化物担体は炭素担体に比べ1/2~1/3のPtの使用量で済むことになる。すなわち、電極表面に担持されるPtの量を大幅に減らすことができる。
【0010】
本発明は以下の事項に関するものである。すなわち、
(1)金属伝導性を有する、ランタンとストロンチウムと鉄を含有する酸化物であることを特徴とする電極触媒用微粒子担体。
(2)平均粒子径が1~20nmのPtを、(1)に記載の電極触媒用微粒子担体に担持させたことを特徴とする電極触媒。
(3)金属イオンを含む水溶液をミスト化することと、前記ミスト化した水溶液をプラズマ炎中に導入し熱処理を行うこと、を特徴とする(1)に記載の電極触媒用微粒子担体の製造方法。
(4)前記プラズマ炎のプラズマはアルゴンガスプラズマであることを特徴とする(3)に記載の電極触媒用微粒子担体の製造方法。
(5)白金錯体を含む有機溶液を調製することと、前記白金錯体を含む有機溶液と界面活性剤を混合し、ミセル溶液を調製することと、前記ミセル溶液を還元し、白金微粒子の分散液を調製することと、前記白金微粒子の分散液に、(3)又は(4)のいずれかに記載の製造方法により製造された電極触媒用微粒子担体の分散液を混合し、前記白金微粒子を前記電極触媒用微粒子担体に担持させることと、
を特徴とする電極触媒の製造方法。
(6)(2)に記載の電極触媒又は請求項5に記載の電極触媒の製造方法により製造された電極触媒を備えたことを特徴とする燃料電池。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、10(S/cm)以上の導電率を有する金属酸化物、金属窒化物の各微粒子で3m/g以上の比表面積をもつものは、粒子径が1~20nmとなる貴金属を、既存の電極触媒より貴金属を少なく担持させても高い酸素還元活性を有する。さらに、0.9V以上の高電位において、金属酸化物、金属窒化物は溶解や腐食等を生じず、安定な触媒となる。本発明からなる電極触媒材料により安価で、高耐久性に優れたPEFCが実用化でき、燃料電池の広汎な普及が実現できる。
【0012】
本発明からなる金属酸化物担体およびまたは金属窒化物担体に貴金属を担持した電極触媒は炭素担体に貴金属を担持した電極触媒より貴金属の含有量を半分以上減らし、高電位で安定な電極触媒を実現することができ、安価で高耐久性電極触媒を提供することによりPEFCの長期安定作動と広汎な普及が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1で作製したPt担持TiN電極触媒についてのXRDパターンである。
【図2】実施例1で作製したPt担持TiN電極触媒についてのSTEM像である。
【図3】実施例2で作製したPt担持Ti電極触媒についてのXRDパターンである。
【図4】実施例2で作製したPt担持Ti電極触媒についてのSTEM像である。
【図5】実施例2で作製したPt担持(La0.6Sr0.4)FeO3-δ電極触媒についてのXRDパターンである。
【図6】実施例2で作製したPt担持(La0.6Sr0.4)FeO3-δ電極触媒についてのSTEM像である。
【図7】実施例1で作製したPt担持TiN電極触媒について、電池特性評価で得られたCV曲線を表す図である。
【図8】市販Pt担持炭素電極触媒について、電池特性評価で得られた比較のためのCV曲線を表す図である。
【図9】実施例1で作製したPt担持TiN電極触媒について、電池特性評価で得られたORRボルタモグラムを表す図である。
【図10】実施例2で作製したPt担持Ti電極触媒について、電池特性評価で得られたCV曲線を表す図である。
【図11】実施例2で作製したPt担持Ti電極触媒について、電池特性評価で得られたORRボルタモグラムを表す図である。
【図12】実施例3で作製したPt担持(La0.6Sr0.4)FeO3-δ電極触媒について、電池特性評価で得られたCV曲線を表す図である。
【図13】実施例3で作製したPt担持(La0.6Sr0.4)FeO3-δ電極触媒について、電池特性評価で得られたORRボルタモグラムを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の金属酸化物、金属窒化物の各微粒子を作製するにあたっては、アルゴンもしくは窒素を用いたプラズマを用いた、公知の作製方法が適用できる。本発明においては、あらかじめ原料となる金属イオンを含む溶液を調製し、超音波噴霧器により溶液をミストにしてプラズマ内に導入するか、もしくは、原料となる金属を含有する化合物を加熱して蒸発させ、プラズマ内に導入することで微粉末を得る。

【0015】
得られた導電性微粉末担体表面上に1~20nmの白金および白金合金微粒子を担持させるにあたり、逆ミセル法や含浸法などの手法を応用できる。例えば、逆ミセル法で合成した1~20nmの白金および白金合金微粒子を有機溶媒に分散させた状態で、前記粉体を添加する。そして、担体粒子表面に吸着させ、ろ過と乾燥を経て、加熱処理することで、電極触媒を作製する。

【0016】
以下、本発明の金属酸化物、金属窒化物の各微粒子について詳細に説明する。本物質はランタン、ストロンチウム、セリウム、カルシウム、バリウム、イットリウム、エルビウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、マグネシウム、ニオブ、ビスマス、アンチモン、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、タンタル、タングステンから選ばれる一種以上の元素を含む酸化物微粒子、および、鉄、バナジウム、チタン、クロム、ジルコニウム、タンタルから選ばれる一種以上の元素を含む窒化物微粒子である。なお、これら微粒子は強酸性条件下でも溶解しないことから、チタン、鉄、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、スズのうち少なくとも一種類が含有されていることが好ましい。

【0017】
後述する実施例においては、主元素としてチタンや鉄を使用しているが、一般に、金属酸化物、窒化物は添加元素などを加えることにより高い導電性を持つものが多く、強酸性条件下でも溶解しないものがあることから、その選択肢の幅はチタンや鉄に限らず広いと考えられる。いずれの場合にも、高い導電率を有する可能性を持つ元素を、主元素とすることがより好ましい。

【0018】
また、対腐食性に優れているものの、導電率が僅かに下がるような担体であっても、炭素を担体へ混合することで、その電極反応の性能を十分発揮させることも可能である。
本発明の金属酸化物、金属窒化物の各微粒子は、それ自体導電性を持つため、炭素を含まずに電極用の触媒担体として利用できる。導電率は好ましくは10S/cm以上を有すれば、所望の電極性能を得ることができる。また、その際、各微粒子の比表面積は3m/g上あり、好ましくは40m/g以上あることが望まれる。これは、担体の比表面積が上記値より小さい場合、1~20nmの白金および白金合金触媒が、担体上にて凝集し粗大化するためである。このとき1nm未満であれば、電極反応が進行していくうちに溶解してしまい、また20nm以上では所望の電極性能が得られない。またこのときの担持量は1~40重量%であることが望ましい。

【0019】
なお、金属酸化物、金属窒化物各微粒子の比表面積はBET法により測定し、白金および白金合金の平均粒子径は透過型電子顕微鏡(TEM)の撮影像から求める。
【実施例1】
【0020】
(Pt20重量%担持TiN)
RFプラズマ法にて合成されたTiN(比表面積44m/g)50.25mgを、ジフェニルエーテル2.5mlに入れ、超音波分散機にて30分間混合し、TiNの分散液を調製した。ジフェニルエーテル10ml中に白金アセチルアセトナートを50.6mg、ヘキサデカンジオール260mgを入れ、110℃窒素気流中で30分間混合し、白金錯体を含む有機溶液を調製した。得られた溶液に界面活性剤としてオレイン酸85ml、オレイルアミン酸80ml入れ、220℃窒素気流中で30分間混合し、オレイン酸およびオレイルアミン酸で構成され、白金イオンを内包したミセルを含む溶液を調製した。上記溶液に水素化トリエチルホウ素リチウムテトラヒドロフラン溶液を1ml加え、270℃窒素気流中30分間混合することで、上記ミセル中に白金イオンを還元し、界面活性剤に覆われた白金微粒子の分散液を調製した。得られた分散液を200℃まで徐冷し、そこに上記TiN分散液を混合して、270℃窒素気流中30分間混合し、界面活性剤で覆われた白金微粒子をそれぞれのTiN粉末表面に吸着させた。TiN微粒子を室温にてろ過し、エタノールでの洗浄を数回行った。60℃にて乾燥後、電気炉にて400℃にて加熱処理し、TiN微粒子表面の有機物を除去することで、Ptを担持したTiN電極粉末を得た。
【実施例1】
【0021】
このようにして得られたPtを担持したTiN電極粉末について、粉末X線回折測定を行った結果、図1に示す回折パターンが得られ、PtとTiNの存在を確認した。この際回折ピークの半値幅から得られる各粉末の結晶子径はPtが5.4nmであり、TiNは31.4nmであった。なお、Ptの担持量は高周波誘導加熱発光分光法(ICP)を用いて確認した。さらに、得られた粉末の表面および形状を透過走査電子顕微鏡(STEM)にて観察した。その結果、PtがTiN表面に均一に分散して担持されていることが確認された(図2)。また、担持されたPtは球形であり、その平均粒径は4.5nm(50個の粒子径を平均して算出)であった。TiN粉末は立方体もしくは直方体であり、その一辺は10~30nmであった。
【実施例1】
【0022】
また、大気圧プラズマ法にて合成したTiOをアンモニア中で熱処理(1150℃)したTiN(比表面積5m/g)についても同様な処理を行い、Ptを担持したTiN電極粉末を得た。TiN粉末は不定形であった。
【実施例2】
【0023】
(Pt20重量%担持Ti
硫酸チタン(24重量%水溶液)2.78gを29.5mlの水に混合し、Tiイオンを含む水溶液を調製した。上記水溶液を入れたガラス製のフラスコを、水を張ったトレー内に設置し、トレー内の超音波噴霧器を用いて上記水溶液をミストにした。上記フラスコ内にアルゴンガスを流し、上記ミストをアルゴンガスプラズマ内に導入した。その際のプラズマの出力は0.6kWとした。プラズマ内を通過した上記アルゴンガスを純水(比抵抗10MΩ以上)の入ったトラップに通し、アルゴン内の粉末を純水内に分散させた。得られた分散液をろ過して、担体前駆体粉末を得た。上記前駆体粉末を水素中1100℃にて還元し、粉末X線回折法にて相の同定を行った。得られたTi54.5mgをジフェニルエーテル2.5mlに入れ、超音波分散機にて30分間混合し、Tiの分散液を調製した。また、白金アセチルアセトナートを50.6mg、ヘキサデカンジオール260mgをジフェニルエーテル10mlに入れ、110℃窒素気流中で30分間混合し、白金錯体を含む有機溶液を調製した。得られた溶液に界面活性剤としてオレイン酸85ml、オレイルアミン酸80ml入れ、220℃窒素気流中で30分間混合し、オレイン酸およびオレイルアミン酸で構成され、白金イオンを内包したミセルを含む溶液を調製した。上記溶液に水素化トリエチルホウ素リチウムテトラヒドロフラン溶液を1ml加え、270℃窒素気流中30分間混合することで、上記ミセル中の白金イオンを還元し、界面活性剤に覆われた白金微粒子の分散液を調製した。得られた分散液を200℃まで徐冷し、そこに上記Ti分散液を混合して、270℃窒素気流中30分間混合し、界面活性剤で覆われた白金微粒子をTi粉末表面に吸着させた。このTi微粒子が分散した分散液を室温にてろ過し、得られた粉末をエタノールで数回洗浄した。60℃にて乾燥後、電気炉にて400℃にて加熱処理し、Ti微粒子表面の有機物を除去して、Ptを担持したTi電極粉末を得た。
【実施例2】
【0024】
このようにして得られたPtを担持したTi電極粉末について、粉末X線回折測定を行った結果、図3に示す回折パターンが得られ、PtとTiの存在を確認した。その際、回折ピークの半値幅から得られる各粉末の結晶子径はPtが6.0nmであり、Tiは約30nmであった。なお、Ptの担持量は高周波誘導加熱発光分光法(ICP)を用いて確認した。さらに、得られた粉末の表面および形状を透過電子顕微鏡(TEM)にて観察し(図4)、担持されたPtは球形であり、その平均の粒径は5.5nmであった。
【実施例3】
【0025】
(Pt50重量%担持(La0.6Sr0.4)FeO3-δ
硝酸ランタン六水和物0.649g、硝酸ストロンチウム0.410g、硝酸鉄九水和物1.21gを水30mlに溶解させ、La,SrおよびFeイオンを含む水溶液を調製した。上記水溶液を入れたガラス製のフラスコを、水を張ったトレー内に設置し、トレー内の超音波噴霧器を用いて上記水溶液をミストにした。上記フラスコ内にアルゴンガスを流し、ミストとアルゴンガスをプラズマ内に導入した。その際のプラズマの出力は0.6kWとした。プラズマを通過したアルゴンガスを、純水(比抵抗10MΩ以上)を入れたトラップに通し、アルゴンガス内の粉末を純水に分散させた。得られた分散液をろ過することで、(La0.6Sr0.4)FeO3-δ担体粉末を得た。
(La0.6Sr0.4)FeO3-δ粉末24.6mgをジフェニルエーテル2.5mlに入れ、超音波分散機にて30分間混合し、(La0.6Sr0.4)FeO3-δの分散液を調製した。ジフェニルエーテル10ml中に白金アセチルアセトナートを8.0mg、ヘキサデカンジオール260mgを入れ、110℃窒素気流中で30分間混合し、白金錯体を含む有機溶液を調製した。得られた溶液に界面活性剤としてオレイン酸85ml、オレイルアミン酸80ml入れ、220℃窒素気流中で30分間混合し、オレイン酸およびオレイルアミン酸で構成され、白金イオンを内包したミセルを含む溶液を調製した。上記溶液に水素化トリエチルホウ素リチウムテトラヒドロフラン溶液を1ml加え、270℃窒素気流中30分間混合することで、上記ミセル中に白金イオンを還元し、界面活性剤に覆われた白金微粒子の分散液を調製した。得られた分散液を200℃まで徐冷し、そこに上記(La0.6Sr0.4)FeO3-δ分散液を混合して、270℃窒素気流中30分間混合し、界面活性剤で覆われた白金微粒子を(La0.6Sr0.4)FeO3-δ粉末表面に吸着させた。この(La0.6Sr0.4)FeO3-δ微粒子を室温にてろ過し、エタノールでの洗浄を数回行った。60℃にて乾燥後、電気炉にて400℃にて加熱処理し、(La0.6Sr0.4)FeO3-δ微粒子表面の有機物を除去することで、Ptを担持した(La0.6Sr0.4)FeO3-δ電極粉末を得た。
【実施例3】
【0026】
得られたPtを担持した(La0.6Sr0.4)FeO3-δ電極粉末について、粉末X線回折測定を行った結果、図5に示す回折パターンが得られ、Ptと(La0.6Sr0.4)FeO3-δの存在を確認した。この際回折ピークの半値幅から得られる各粉末の結晶子径はPtが11.0nmであり、(La0.6Sr0.4)FeO3-δは31.4nmであった。なお、Ptの担持量は高周波誘導加熱発光分光法(ICP)を用いて確認した。さらに、得られた粉末の表面および形状を透過電子顕微鏡(TEM)にて観察した(図6)。その結果、Ptが(La0.6Sr0.4)FeO3-δ表面に均一に分散して担持されていることが確認された。また、担持されたPtは球形であり、その粒径は8nmから15nmであった。
【実施例3】
【0027】
以上の方法で得られた各電極粉末について、回転リングディスク電極を用いてCV測定を行った。電解液には0.1mol/lの過塩素酸水溶液を、参照極には標準水素電極(RHE)を用いた。電位の走査速度は0.1V/sec.とした。更に、0.9V以上での電極材料の安定性を確認するため、0.05V~1.3Vまで電位範囲を100回操引した後、0.05V~1.0Vの電位範囲でCVを測定した。この測定手順を1セットとして、10セット以上(1000サイクル以上の操引)を行った。Pt20重量%担持TiNにおける1セット後のCV測定結果を図7に示す。比較として0.05V~1.0Vの電位範囲で操引した市販Pt担持炭素のCV測定結果を図8に示す。Pt担持炭素では電位の操引に伴い0.2V~0.6V付近の電流値が増加すると共に、炭素の劣化で生じたキノン基の酸化還元に伴うピークが0.6V付近で現れている。それに対し、Pt担持TiN電極では0.2V~0.6V付近の電流値は各測定とも一定であり、0.05Vから0.2V付近での酸素吸着波に起因するピーク面積から求めた白金有効反応面積(SPt)は13.0m/g(Pt)となった。セット毎のSPtは3セット目以降18.0m/g(Pt)で一定となった。これより、0.9V以上の高電位でもPt担持TiN電極は安定であることが判明した。また、回転リングディスク電極を用いてORR測定を行い、その結果を図9に示す。これより、On set電位が0.9V付近であることから、市販Pt担持炭素カソードより高い電位から酸素還元電流が流れることを確認した。また、Koutecky-Levichプロットより活性化支配電流を見積もったところ、16mA/cmとなり、この値は同じSPtをもつPt担持炭素電極の約10倍高い活性があることを示している。
【実施例3】
【0028】
同様にして測定したPt50重量%担持TiのCV、ORR測定結果を図10,11に示す。SPtは2.0m/g(Pt)となった。また、On set電位は1.0Vであり、通常のPt担持担体の場合と比較して0.3V~0.5Vほど高電位から酸素還元電流が流れることを確認した。Koutecky-Levichプロットより、算出した活性支配電流密度は同じSPtをもつPt担持炭素電極の場合に比べ3~5倍程度大きい値を示した。
【実施例3】
【0029】
Pt50重量%担持(La0.6Sr0.4)FeO3-δのCV、ORR測定結果を図12,13に示す。SPtは2.0m/g(Pt)となった。また、On set電位は0.95Vであり、通常のPt担持担体の場合より高電位から酸素還元電流が流れることを確認した。Koutecky-Levichプロットより、算出した活性支配電流密度は同じSPtをもつPt担持炭素電極の場合に比べ3倍程度大きい値を示した。
【産業上の利用可能性】
【0030】
近年注目されている、燃料電池自動車ではPEFCが採用されている。それに利用される電極材料は炭素を担体として1nm~20nmの粒子径をもつ貴金属微粒子を担持させたものを利用している。しかし、自動車用では、走行中の加減速に対応した頻繁な負荷変動・起動停止が生じ、その際カソードの電位は0.9V以上に達する。この0.9V以上の高い電位において、炭素は前記の反応式(1)に示す酸化反応により、著しく劣化する。本発明は、炭素を全く用いていないため、0.9V以上の高電位においても安定で、高い導電性を兼ね備えた担体を応用しており、高い非表面軌跡を有していることから、1nm~20nmの粒子径をもつ貴金属微粒子をさせることができることから、耐久性と触媒活性を兼ね備えている。従って、PEFCを搭載した電気自動車等へ利用が期待される。
図面
【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図13】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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