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明細書 :熱電材料及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6209781号 (P6209781)
公開番号 特開2013-211540 (P2013-211540A)
登録日 平成29年9月22日(2017.9.22)
発行日 平成29年10月11日(2017.10.11)
公開日 平成25年10月10日(2013.10.10)
発明の名称または考案の名称 熱電材料及びその製造方法
国際特許分類 H01L  35/22        (2006.01)
C04B  35/00        (2006.01)
FI H01L 35/22
C04B 35/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2013-036025 (P2013-036025)
出願日 平成25年2月26日(2013.2.26)
優先権出願番号 2012041206
優先日 平成24年2月28日(2012.2.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年1月20日(2016.1.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】掛本 博文
【氏名】入江 寛
審査官 【審査官】今井 聖和
参考文献・文献 国際公開第2008/146562(WO,A1)
特開平01-093178(JP,A)
特開2011-184288(JP,A)
特開2010-062174(JP,A)
特開昭61-106454(JP,A)
調査した分野 H01L 35/00
C04B 35/00
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
Scopus

特許請求の範囲 【請求項1】
BaxNayNbzOt(0<x≦5、0<y≦5、0<z≦5、0<t≦20)の組成で表され、さらにタングステンブロンズ型構造を有する金属酸化物を還元することにより熱電特性を発現するセラミックス還元体であることを特徴とする熱電材料。
【請求項2】
前記タングステンブロンズ型金属酸化物がBa2NaNb5O15(以下BNNという)の組成で表されることを特徴とする請求項1に記載の熱電材料。
【請求項3】
前記タングステンブロンズ型金属酸化物の結晶が配向性を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱電材料。
【請求項4】
請求項1から3に記載の前記熱電材料を用いたことを特徴とする熱電素子。
【請求項5】
前記熱電材料の温度130℃におけるゼーベック係数の絶対値が120V/K以上であり、導電率が8S/cm以上であることを特徴とする請求項4に記載の熱電素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギー開発の重要性が増し、エネルギー素子の高性能化が必要となっている。特に余剰な熱から電気を生みだすことが可能な熱電素子の高性能化が必要とされている。400-600℃の温度では、熱電材料に優れた特性が見られ、また熱電素子として十分な安定動作が期待できるために、この領域の熱エネルギーの再生が考えられて来た。これまで、熱電材料として、金属系(Bi2Te3等)、Si系(FeSi2等)などで基礎データの蓄積がなされているが、約10年前からは酸化物(NaCoO2, SrTiO3)の優れた特性が見出されるようになり、注目されている。これらの材料群は、無次元性能指数(ZT)に基づいた評価がなされている。
【0003】
Sb系、Si系に比べ、酸化物材料は安定性が高く、特にNaCoO2(NCO: p型)熱電材料の発見以降、多くの関心が寄せられている。最近、還元したタングステンブロンズ型酸化物SrxBa1-xNb2O6 (SBN: n型)単結晶により高い熱電特性が報告されている(非特許文献1)。
【0004】
熱電素子を用いた発電方式は、熱源に依存はするものの、恒久的な発電が望める数少ない方式である。また温度差が100-200℃であるような用途は、潜在的な需要があるにも関わらず、開発例は少ない。
【0005】
この温度差領域においては、カルノー効率で試算される発電効率は、原理的に10-15%であり、試算で使われているモデル(単純な温度勾配)では、発電効率は十分ではない。しかし先進的な排熱利用システムに見られるように、熱源からの排熱を複数回段階的に循環させる方式に、温度領域に合わせて有用な熱電素子を活用することができれば実用性はあると考えられる。さらに新しい熱源とのマッチングを模索することで、的確な経済性が得られると思われる。
【0006】
本発明はそのような背景でなされたものであり、100-200℃の温度差領域での適用が可能な熱電材料を提供するものである。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】S. Lee, R. H.T.Wilke, S. Trolier-McKinstry, S. Zhang, and C. A. Randall, “SrxBa1-xNb2O6-dFerroelectric-thermoelectrics: Crystal anisotropy, conduction mechanism, andpower factor”, Applied Physics Letters 96, 031910 (2010)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
素子への応用のためにSBNを多結晶とすると、SBNのキュリー温度(Tc: 組成により60-200℃)近傍で、試料内部粒界でのPTCR(正の比抵抗温度係数:Positive Temperature Coefficient of Resistivity)効果による導電率が低下するという問題が予想される。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためのものであり、比較的高い温度領域においても高い導電率を有する熱電材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の熱電材料は、タングステンブロンズ型金属酸化物からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、比較的高い温度領域においても高い導電率を有する熱電材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】は、本発明の実施例1によるBNN焼結体の外形を示している。
【図2】は、本発明の実施例1によるBNN焼結体の製法フローを示したものである。
【図3】は、本発明の実施例1によるBNN焼結体のゼーベック係数(|S|)の温度依存特性を示している。
【図4】は、本発明の実施例1によるBNN焼結体の導電率(σ)の温度依存特性を示している。
【図5】は、本発明の実施例2によるBNN焼結体の製法フローを示している。
【図6】は、本発明の実施例2によるBNN焼結体の製法に用いるテンプレート種粒子NBNのXRDパターンを示している。
【図7】は、本発明の実施例2によるBNN焼結体の、500℃ 2hで仮焼を行った後の写真を示している。
【図8】は、本発明の実施例2による配向したBNN焼結体のゼーベック係数、導電率とパワーファクタの温度依存性を、無配向のものと比較して示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。

【0014】
本発明に用いた材料は、結晶構造がタングステンブロンズ型結晶構造を有する材料である。たとえばBa2NaNb5O15 (以下BNNという)であり、強誘電性を示す材料として広く知られている。

【0015】
本発明によれば、高密度なタングステンブロンズ型結晶構造を有する材料、例えばBNNの焼結体に対して約1000℃で還元処理を行うことで、熱電特性を発現し、良好なパワーファクタを得ることができる。以下、BNNを用いた例について説明する。

【0016】
ゼーベック係数の増強、特に100μV/K以上のゼーベック係数の発現には、温度勾配によるバンド湾曲に加えd電子を用いたホッピング伝導を利用する方法が効果的である。本発明は、最も簡単な遷移の一つである酸素8面体内のNb4+、Nb5+間のホッピングを選択した。Nb4+、Nb5+はBNNを還元することで実現可能である。このホッピングによる伝導は、Nb内殻電子間を移動し、最終的に負極に到達し熱起電力となる。結果として大きなゼーベック係数(=dV/dT)を発現する。この遷移は複雑ではないため、再現性が高い。

【0017】
以下、熱電材料として、タングステンブロンズ構造を有し、高温でキュリー温度(Tc)を持つBa2NaNb5O15(BNN:Tc=560℃)を用いた例について説明する。

【0018】
BNNはSBNに比べ、高温(560℃)で構造相転移を生じる。従って使用目的の温度(100-200℃)で、PTCR効果による導電率低下を回避することができる。

【0019】
本発明によれば、BNN焼結体を作製し、還元処理を行う。最適な還元条件においては、ゼーベック係数(|S|)は186μV/K以上、n型、導電率(σ)は16.3 S/cm以上、パワーファクタ(S2σ)は0.3896×10-4 W/mKの特性が得られる。

【0020】
BNNは熱伝導率が酸化物の中でも極めて低く、無次元性能指数(ZT)の向上に有利である。また無配向焼結体なので、結晶育成の必要がなく、その分、安価に市場に供給できる。
【実施例1】
【0021】
以下に、本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1に本実施例のBNN焼結体の外形を示す。BNN焼結体の大きさは、size: 2×1×12 mm3、相対密度95%以上である。
【実施例1】
【0023】
本実施例1による熱電材料であるBNN焼結体の製法フローを図2に示す。
【実施例1】
【0024】
まず、BaCO3、Na2CO3、Nb2O5の粉末を用いて、固相反応法(1350℃、12h)により、焼結体を作製する。
【実施例1】
【0025】
次に、固体(黒鉛)を元にBNN焼結体の還元を行う。表1に示す条件の還元温度と還元時間により、作製が可能である。
【実施例1】
【0026】
得られたBNN焼結体の表面上に電極: Au、Ni、Agをそれぞれ堆積、塗布することで、特性の測定を行うことができる。粉末X線回折(XRD)測定、ゼーベック係数(S,Yokogawa
7263)、導電率(σ, Agilent E5273A)の温度依存測定(室温-230℃)を行った結果を以下に示す。
【実施例1】
【0027】
図3にBNN焼結体のゼーベック係数(|S|)の温度依存特性を示す。熱起電力は高温側端子が正の値を示し、n型の特性を示した。表1の還元条件に従い、|S|の値は増加した。(Sの特性が系統的でないのは、還元が固体ソースであるため、均一ではなく、内部で特性が分布するからであると考えている。) また|S|は還元条件Cによって最大で|S|=186μV/Kを示した。
【実施例1】
【0028】
図4にBNN焼結体の導電率(σ)の温度依存特性を示す。表1の還元条件3、4、5に亘って、金属的な特性から半導体的な特性へと変化した。また180℃で、σは8.2-16.3S/cmと変化し、中でも条件3でσは、最大16.35S/cmを示した。
【実施例1】
【0029】
図3、4より、還元による活性化エネルギー(Ea、Eσ)は、S=σ(kB/e)[Ea/kBT+A]、σ=σoexp[-Eσ/kBT]よりフィッテングしたところ、-10-4eVと得られた。今回の良好なSの値(熱起電力)は、SBN同様、Nb5+とNb4+イオン間のホッピング伝導よることを支持するものと思われる。これに対して、電気伝導は酸素欠陥により行われ、σは表1の条件3の条件が最も適している。
【実施例1】
【0030】
以上より、条件3のパワーファクタ(P.F.=S2σ)は、130℃で、P.F.=0.3896E-04 W/mKを示している。また、一般にタングステンブロンズ型酸化物は、低い熱伝導率(κ)が報告されており、高い性能指数(ZT>1)が実現可能である。
【実施例1】
【0031】
還元を施さないBNNを、試料外皮に形成することで、酸化を防止することも可能である。
【実施例1】
【0032】
【表1】
JP0006209781B2_000002t.gif
【実施例2】
【0033】
以下に、本発明による実施例2について詳細に説明する。本実施例2では、焼結体の結晶を配向させている。
【実施例2】
【0034】
SBN単結晶の熱電特性は異方性が報告されており、それによりゼーベック係数は最大で400μV/Kと大きな値を示していると考えられる。実施例1の焼結体は無配向であるので、試料内部で平均化していると考えられる。SBN単結晶に比べて、BNN焼結体で、約70.5%のゼーベック係数の値が試料から現われており、これは組成が異なることによるが、配向化を実現することで、より高い特性が得られる可能性があると考えられた。
【実施例2】
【0035】
図5に本実施例2によるBNN焼結体の製法フローを示す。以下に工程を説明する。
【実施例2】
【0036】
ボールミルを用いた湿式混合を行った後、1050℃、5時間の処理により、BaNb2O6
(以下BNという)、NaNbO3 (以下NNという) それぞれの仮焼粉3gを作製する。
【実施例2】
【0037】
テンプレートとなるNaBa2Nb5O15 (BNN)の作製のため、NaCl、BaCO3、Nb2O5を乳鉢で乾式混合(30分)する。混合粉を坩堝に投入し、アルミナセメントで坩堝と蓋を固定し、1200℃、4hで処理を行いテンプレート種粒子となるBNNの作製を行う。
【実施例2】
【0038】
ここではテンプレートにBNNを用いたが、KBa2Nb5O15(BKN)を用いることも可能であり、その場合は、NaClに変えて、KClを用いることができる。その場合はKCl、BaCO3、Nb2O5を乳鉢で乾式混合(30分)し、混合粉を坩堝に投入し、アルミナセメントで坩堝と蓋を固定し、1100℃、4hで処理を行いテンプレート種粒子となるBKNの作製を行う。
【実施例2】
【0039】
ビーカーに投入、純水に浸し70℃を保持して、BaCl2を抜く。
【実施例2】
【0040】
BN、NNにテンプレート種粒子NBNを加え(15wt%)、さらにV2O5(0.5wt%)を加えて湿式混合し(ジルコニア・ボールなし、24h)、スラリーとする。
【実施例2】
【0041】
スラリーを手製治具によるドクターブレード法で、ガラス基板上にテープ成型する。
【実施例2】
【0042】
さらに、固めのビニールシート上に、テープ成型、乾燥後に一軸プレスを行う(1ton)。
【実施例2】
【0043】
ビニールシートから取り外した試料をアルミナ板2枚で挟み、500℃、2hで仮焼を行う。
【実施例2】
【0044】
図6にテンプレート種粒子NBNのXRDパターンを示す。図6より、NBN試料の結晶性が高く、配向していることが分かる。
【実施例2】
【0045】
図7に、500℃、2hで仮焼を行った後の写真を示す(マッフル炉内部で撮影)。厚さ200-500mm、最大10mm2角のテープ形成された薄層試料が得られている。
【実施例2】
【0046】
図8に本実施例2による配向したBNN焼結体のゼーベック係数、導電率とパワーファクタの温度依存性を、無配向のものと比較して示す。ゼーベック係数が250μV/K以上、導電率は20 S/cm近く、パワーファクターは1.0~1.5E-04 W/mKを得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明による熱電素子は、その使用温度領域から、大規模集中発電機関よりも、スマートグリット(賢い電力網)に見られる家庭用・分散型発電機器への用途に適している。
【0048】
別の用途として、緊急用・熱電デバイスにも利用が可能である。NCOを用いた例ではガスコンロや焚火の熱から携帯電話器等への5V発電が迅速に可能であり、震災など非常時の用途としての有用性が非常に高いことは明らかである。以上の観点から、熱電デバイスは今後も市場開拓性は十二分に有しており、今回の発明が熱電素子として応用された場合、上記の用途への有用性は非常に高いと思われる。
【0049】
個人用自動車の市場の推移は、やはりエネルギーの使用効率(燃費)の向上であるが、急速にエンジン(20%)から完全電動モータ(60%)に切り替えることは社会環境から難しい。このため、内燃機関(エンジン)と電動モータとのハイブリッド化(ハイブリッド自動車)が行われている。ハイブリッド自動車は、速度に応じてエンジンと電動モータを切り替えて走行している。動力の切り替えは、パワートランジスタ(インバータ)によるが、より高出力化が求められパワートランジスタの発熱(100-200℃)が増大している。大気へ排熱を行うと当然ながら効率が落ちてしまう。ハイブリッド自動車の将来は、やはり排熱を電気エネルギーとして再生することであり、このため高度な熱エネルギー再利用が求められている。本発明の有用性(100-200℃の熱発電)が認識された際には、勿論、カルノー効率を20%近くにするための排熱発電のための高度な循環システムの構築が必要となるが、本発明はハイブリッド自動車の効率を向上させるための主要な要素となる可能性を有している。
【0050】
次の可能性として、企業では、空調およびパーソナルコンピュータ(PC)の使用が高い。PCは特に中央演算処理装置(CPU)の高速演算による高性能化により発熱量が増大している。周知のとおり、その放熱が依然課題となっている。放熱はアルミ製の放熱板とファンによって構成されている。通常の放熱方式に加えて、水冷による熱循環システムも見られて、今後も新しいデバイスや方式を盛んに取り込んでゆく分野である。水冷以外にも、これまで導入されて来たペルチェ素子による冷却に加えて、本発明による熱電素子も試験的に組み込まれる可能性は十分に考えられる。
【0051】
次の可能性として一般家庭においては、電力の消費は、暖房(効率から今後は空調機器による可能性が高い)、給湯(風呂)が大部分を占めている。暖房(空調)機器は、熱源として発生する十分高くはないので、不向きである。しかし、給湯器と風呂の湯の循環部分は、本発明による熱電素子にとっては、理想的な熱源として考えられる。この発明の適用が期待される。また湯沸かし器、調理器具、効率を問わなければ、あらゆる熱源に付属させて発電することが出来る。非常時の携帯電話の充電も、震災時の課題であった。
【0052】
今後は、家庭用電気機器はIT化により、遠隔管理、稼働制御される可能性があるが、そのための電力需要が生じる。機器内部のマイコン電源の電力供給として、排熱エネルギー発電が発展する可能性がある。その際には、熱電素子は充電器と併せてモジュール化することで、外部電源から切り離して使用されることになれば、IT電力需要を一部分支えることも期待される。
【0053】
本発明は、民生機器で発生する熱を電気に変換する材料なので、熱電素子として発展した場合、いわゆる創エネルギー素子としてだけ構成されるだけではなく、高度省エネルギーシステムの内蔵する発電素子としても発展する可能性を有している。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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