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明細書 :自律エージェントの能動的探索行動シミュレーションシステム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-066234 (P2016-066234A)
公開日 平成28年4月28日(2016.4.28)
発明の名称または考案の名称 自律エージェントの能動的探索行動シミュレーションシステム
国際特許分類 G06Q  30/02        (2012.01)
G08G   1/00        (2006.01)
FI G06Q 30/02 120
G08G 1/00 A
請求項の数または発明の数 1
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2014-194573 (P2014-194573)
出願日 平成26年9月25日(2014.9.25)
発明者または考案者 【氏名】兼田 敏之
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 5H181
5L049
Fターム 5H181AA21
5H181EE02
5H181FF11
5H181FF14
5L049BB04
要約 【課題】人の探索行動の際に、人が一度通行した経路を通りたがらない性質があることを考慮した、能動的な人である自律したエージェント(以下、エージェント)の簡便で効率的な能動的探索行動シミュレーションシステムを提供する。
【解決手段】行動処理部30において、ステップ毎に、トークンを置き、視野内において、障害物24までの距離を計算し、すべての方向の集合のなかからトークンが遮らない距離が最深長の方向を選択し、トークンが遮らない方向がない場合には、すべての方向の集合のなかから距離が最深長の方向を選択し、エージェントは選択された方向に向きを転換しステップを1つ前進する行動を、方向転換単位14毎に繰り返す行動算出手段34を有する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
エージェントの初期位置および方向転換単位を入力する入力部と、
二次元空間上における目的物の位置および障害物の位置を示すポリゴン・データを有する地図データベースと、
ステップにおける前記エージェントの位置と方向を算出する位置算出手段と行動算出手段を有する行動処理部と、
前記ステップにおける前記エージェントの位置と方向を表示する行動出力部と、を備え、
前記行動処理部において、
前記ステップ毎に、
前記二次元空間上にポリゴン・データによるトークンを置き、
前記エージェントの視野内において、
前記障害物までの距離を計算し、
まず、すべての方向の集合のなかから前記トークンが遮らない前記距離が最深長の方向を選択し、もし前記トークンが遮らない方向がない場合には、すべての方向の集合のなかから前記距離が最深長の方向を選択し、
前記エージェントは前記選択した方向に向きを転換しステップを1つ前進する行動を、
前記方向転換単位ごとに繰り返す前記行動算出手段を有することを特徴とする能動的探索行動シミュレーションシステム。








発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人の初期位置および方向転換単位を入力する入力部と、目的物の位置および障害物の位置を示すデータを有する地図データベースと、各歩行ステップにおける人の位置と方向を算出する位置算出手段と行動算出手段を有する行動処理部と、各歩行ステップにおける人の位置と方向を表示する行動出力部とを備えた人の能動的な探索行動シミュレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、当該技術分野には、イギリスにおいて、直面する視野のうち最深長を持つ方向に定期的に向きを変えて歩行する「自由な動き」と称する歩行者の自由探索行動モデルを実装したシミュレーションシステムが存在し、その内容は特許「公共空間の知的設計のためのシステムと方法」として公示されている。
また、非特許文献1に示す発明者の論文では、このシステムにより、スーパーマーケットやショッピングモールにおける顧客の探索行動が再現でき、これにより売場効率改善策が検討できると記載されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】Patent US 2004/2005/0054511 A1
【0004】

【非特許文献1】Penn, A., & Turner, A., (2001), Space syntax based agent simulation, in Schreckenberg, M., & Sharma, S. (eds), Pedestrian and Evacuation Dynamics, Heidelberg, Germany: Springer-Verlag, 99-114
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この従来技術による人の行動モデル(以下、従来の探索行動シミュレーションシステム)は目的を持たない人間の探索行動を再現するのには適しているが、人間による実際の目的物の探索行動に比べて、非効率性を有しており、人間行動の解析を行っても精度がよくない問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、精度が高く簡便で効率的な能動的な探索行動モデルによるシミュレーションシステム(以下、能動的探索行動シミュレーションシステム)を構築した。即ち、人の探索行動の際に、人が一度通行した経路を通りたがらない性質があることを考慮した、能動的な人である自律したエージェント(以下、エージェント)の簡便で効率的な能動的探索行動シミュレーションシステムを考案した。
具体的には、エージェントが存在した位置について足跡(以下、トークン)を残し、定期的に方向を選択する際には、エージェントの視野内において、第一にトークンが置かれておらず、かつ、最深長を持つ方向を選択しようとし、第二にその条件を満たさない場合には、トークンが置かれた方向のなかで最深長を持つ方向を選択する、という原理を実装した点に特徴がある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の自律エージェントの能動的探索行動シミュレーションシステムは、足跡であるトークンを置くという発想により、簡便なアルゴリズムで能動的探索行動を効率的に再現した。従来の探索行動シミュレーションシステムに比べて、人の目的物探索行動をよりリアルに短時間に再現できるようにすることができる。
ゆえに、例えば大規模群集のシミュレーションなども原理的に可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態における能動的探索行動シミュレーションシステムの全体構成を示す。
【図2】第1実施形態における能動的探索行動シミュレーションシステムのアルゴリズムのフローチャートを示す。
【図3】第1実施形態における能動的探索行動シミュレーションシステムの行動出力部の表示例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
第1実施形態は、スーパーマーケットにおける商品棚のレイアウトやショッピングモールにおける専門店配置計画の支援に資する来訪者エージェント80の能動的探索行動シミュレーションシステム1に関するものである。

【0010】
本発明の構成を図1に従って説明する。図1は、第1実施形態における能動的探索行動シミュレーションシステム1の全体構成を示す。
能動的探索行動シミュレーションシステム1は、入力部10と、地図データベース20という1つのデータベースと、行動処理部30、行動出力部40から構成される。
入力部10は、エージェント80の初期位置12(二次元空間上の座標)と歩行方向(以下、方向16)と視野18および方向変換単位14を入力するものである。
地図データベース20は、エージェント80の行動を規定(制約)する壁や障害物(以下、障害物24)の空間上の座標のリスト(ポリゴンデータ22)を収納するためのものである。
行動処理部30は、1つのデータベースの情報を参照しつつ、入力部10から入力された初期位置12と方向16に基づき、各ステップにおけるエージェント80の位置と方向16を算出するものである。
行動出力部40は、各ステップにおけるエージェント80の空間上の座標と向きを表示するものである。

【0011】
本発明の概要を説明するために図2に従って説明する。図2は、第1実施形態における能動的探索行動シミュレーションシステム1のアルゴリズムのフローチャートを示す。
ステップS100において、能動的探索行動シミュレーションシステム1は、地図データベース20から初期地図のデータを補助記憶に読み込む。地図データは、エージェント80にとって視線と歩行行動を遮る障害物24の座標のリストをポリゴン・データ22として表現されている。
ステップS110において、能動的探索行動シミュレーションシステム1を使用するユーザは、エージェント80の位置12(地図上の座標)と方向16を入力する。
ステップS130において、一定(ここでは自然数nとする)の方向転換単位14の歩行ステップごとに方向転換を検討するために、歩行ステップのカウンタを導入して、初期化する。
ステップS140おいて、予め設定された視野18(エージェント80の向きから与えられる左右の角度の範囲)内において、エージェント80から障害物24までの距離19を計算し、次の条件のもとで最もその距離19が長い(最深長)方向16を算出する。
条件1:視野18内の視線(エージェント80から障害物24までの線分)を遮る足跡(以下、トークン50)が存在しない場合には、視野内18のすべての方向16の集合のなかから、最深長の方向16を選択する。
条件2:視野18内のすべての方向16に視野18を遮るトークン50が存在する場合には、視野18内のすべての方向16の集合のなかから、最深長の方向16を選択する。
そののち、選択された方向16に、自律したエージェント80は向きを転換する。
ステップS160において、エージェント80は、現地点にトークン50を置く。トークン50は現座標を含み面積を有するポリゴン・データ22として表現される。
ステップS170において、エージェント80は、向きに沿って1歩行ステップ前進する。
ステップS180において、歩行ステップが1進行したことを記録するために、カウンタに1を加える。
ステップS190において、必要に応じて、エージェント80が、新たに障害物24を発見した場合には、地図データベース20に書き込むとともに、補助記憶を更新する。
ステップS200において、もしエージェント80が目的物13を発見したならばステップS220に、発見しないならばステップ210に移る。
ステップS210において、カウンタがnに達しているならばステップS120に、達していないならばステップS150に移る。
ステップS220において、エージェント80は目的物13に到達するまで前進を続ける。

【0012】
ここで、歩行方向を決定するステップS140の以下のエージェント処理の原則が、行動処理部30の特徴であり、本発明が従来技術と異なるところである。
(エージェント処理の原則)
条件1:視野18内の視線(エージェント80から障害物24までの線分)を遮る足跡(以下、トークン50)が存在しない場合には、視野内18のすべての方向16の集合のなかから、最深長の方向16を選択する。
条件2:視野18内のすべての方向16に視野18を遮るトークン50が存在する場合には、視野18内のすべての方向16の集合のなかから、最深長の方向16を選択する。
即ち、能動的探索行動シミュレーションシステム1は、人の探索行動の際に、人が一度通行した経路を通りたがらない性質があることを考慮した、エージェント80の簡便で効率的な能動的探索行動モデルである。

【0013】
図3は、能動的探索行動シミュレーションシステム1の行動出力部40の表示例を示す。
図3(a)は、エージェント80の視野18、障害物24までの距離19、選択した方向16、選択されなかった方向15を示す。エージェント80は、予め設定された視野18の範囲で、障害物24またはトークン50までの距離19を計算する。ここで、トークン50はエージェント80が歩行した履歴として表示される。次に、エージェント処理の原則に基づく処理を行い、最もその距離19が長い(最深長)方向16を算出し選択する。図3(a)では、破線の矢印で選択した方向16を表示する。なお、従来のシステムでは、トークン50を考慮しない最深長である方向15を選択していた。
図3(b)は、エージェント80が、図3(a)で方向16を選択したのち、約15歩行ステップ進行した状態を示す。ここで、エージェント80は、障害物24に遮られていた目的物13を発見する。この後は、目的物13の方向16に歩行する。このように、エージェント80は能動的探索行動を行う。

【0014】
(実施形態の効果)
表1に、能動的探索行動シミュレーションシステム1と従来の探索行動シミュレーションシステムの計算結果の比較を示す。
【表1】
JP2016066234A_000003t.gif
エージェント80が、初期位置12、目的物13、および障害物24が同じ条件で、目的物13に発見するまでの、歩行ステップ数およびトークン50の重複面積を、能動的探索行動シミュレーションシステム1と従来の探索行動シミュレーションシステムにて20回計算した。
歩行ステップ数の平均値は、能動的探索行動シミュレーションシステム1の352回に対して、従来の探索行動シミュレーションシステムが1890回であり、約1/5となった。よって、歩行ステップ数が大幅に低減することができた。歩行ステップの標準偏差は、能動的探索行動シミュレーションシステム1の132回に対して、従来の探索行動シミュレーションシステムが112回であり、約1/8となった。よって、バラツキも小さくできた。
トークン50の重複面積の平均値は、能動的探索行動シミュレーションシステム1の227に対して、従来の探索行動シミュレーションシステムが4563であり、約1/20となった。よって、トークン50の重複面積数が大幅に低減することができた。トークン50の重複面積の標準偏差は、能動的探索行動シミュレーションシステム1の241に対して、従来の探索行動シミュレーションシステムが3180であり、約1/13となった。よって、バラツキも小さくなった。
トークン50の重複面積は、エージェント80が同じ場所を歩行したことを示している。このトークン50の重複面積を低減しつつ、実際の歩行ステップが低減できたことは、能動的探索行動シミュレーションシステム1の有効な効果を示している。
よって、能動的探索行動シミュレーションシステム1は、トークン50を設けるとともに、トークン50の置かれていない方向16を最優先にエージェント80を歩行方向に選択させることで、能動的探索行動の簡便で効率的なアルゴリズムを提供している。

【0015】
次に、自律エージェント80の能動的探索行動シミュレーションシステム1を、第1実施形態であるスーパーマーケットにおける商品棚のレイアウトやショッピングモールにおける専門店配置計画の支援、例えば売上向上に資することについて説明する。
スーパーマーケットにおける商品棚のレイアウトやショッピングモールにおける専門店配置計画をもとに、エージェント80の障害物24となる商品棚等を地図データベース20に二次元空間のポリゴン・データ22として入力する。入力部10より、初期位置12としてスーパーマーケット等の入り口を、二次元空間のポリゴン・データ22として入力する。
次に、複数の検討する商品棚に目的物13を指定し、入力部10より目的物13の位置を入力する。ここで、目的物13は、売上向上に資する売れ筋の商品等を選定する。能動的探索行動シミュレーションシステム1により、歩行ステップを計算する。歩行ステップの多い目的物13の場所は、トークン50の履歴やエージェント80の視野18を考慮して、障害物24即ち商品棚のレイアウトを検討する。検討したレイアウトを地図データベース20に入力して、歩行ステップを計算する。これを繰り返してスーパーマーケットにおける商品棚のレイアウトやショッピングモールにおける専門店配置計画を、売れ筋の商品までの歩行ステップが小さくて均一になるようにブラシュアップして行く。このことでスーパーマーケットやショッピングモールの売り上げ向上に資することができる。

【0016】
(第2実施形態)
屋内自動掃除機82や探し物探索機84において、入力器10と、行動出力部40を出力器に変更することにより、簡便で効率的な探索行動器として本発明を実施できる。具体的には、入力器の位置把握のためにセンサー、出力器には方向転換装置と直進装置を設けることで、それは可能になる。

【0017】
効果として、エージェント処理の原則は、一度通過した場所であるトークン50および障害物24を避けて、いわゆる一筆書きでエージェント80を歩行し前進させる。よって、能動的探索行動シミュレーションシステム1を屋内自動掃除機82または探し物探索機84の制御に提要した場合、掃除した場所または探索した場所を避けて、屋内自動掃除機82または探し物探索機84の運行を制御できる。よって、屋内自動掃除機82は効率的に早く屋内を掃除できる。また、探し物探索機84は効率的に早く捜し物を探索することができる。

【0018】
本実施形態によると以下の効果がある、
第1実施形態は、エージェント80の初期位置12および方向転換単位14を入力する入力部10と、二次元空間上における目的物13の位置および障害物24の位置を示すポリゴン・データ22を有する地図データベース20と、ステップにおけるエージェント80の位置と方向16を算出する位置算出手段32と行動算出手段34を有する行動処理部30と、前記ステップにおけるエージェント80の位置と方向16を表示する行動出力部40と、を備え、行動処理部30において、ステップ毎に、二次元空間上にポリゴン・データ22によるトークン50を置き、エージェント80の視野18内において、障害物24までの距離19を計算し、まず、すべての方向の集合のなかからトークン50が遮らない距離19が最深長の方向16を選択し、もしトークン50が遮らない方向16がない場合には、すべての方向16の集合のなかから距離19が最深長の方向16を選択し、エージェント80は選択した方向16に向きを転換しステップを1つ前進する行動を、方向転換単位14ごとに繰り返す行動算出手段34を有することを特徴とする能動的探索行動シミュレーションシステム1である。
この能動的探索行動シミュレーションシステム1により、従来の探索行動シミュレーションシステムに比べて、より人間の実際の探索行動に近く、かつ、効率的なシミュレーションシステムが提供でしる。よって、スーパーマーケットにおける商品棚のレイアウトやショッピングモールにおける専門店配置計画の売り上げ向上に資することがきる。また、屋内自動掃除機82および探し物探索機84の効率向上に資する制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0019】
1 能動的探索行動シミュレーションシステム
10 入力部
12 初期位置
13 目的物
14 方向転換単位
15 方向(従来の探索行動シミュレーションシステム)
16 方向(能動的探索行動シミュレーションシステム1)
18 視野
19 距離
20 地図データベース
22 ポリゴン・データ
24 障害物
30 行動処理部
32 位置算出手段
34 行動算出手段
40 行動出力部
50 トークン
80 エージェント
82 屋内自動掃除機
84 探し物探索機


図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2