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明細書 :ステンレス鋼の制振処理

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-069680 (P2016-069680A)
公開日 平成28年5月9日(2016.5.9)
発明の名称または考案の名称 ステンレス鋼の制振処理
国際特許分類 C21D   8/00        (2006.01)
C21D   6/00        (2006.01)
C21D   7/02        (2006.01)
FI C21D 8/00 E
C21D 6/00 102A
C21D 7/02 E
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2014-199519 (P2014-199519)
出願日 平成26年9月30日(2014.9.30)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 日本鉄鋼協会第168回秋季講演大会 開催日(2014年9月24-26日) 開催場所(名古屋大学:名古屋市千種区不老町)
発明者または考案者 【氏名】渡辺 義見
【氏名】岩田 直也
【氏名】佐藤 尚
【氏名】塚本 英明
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4K032
Fターム 4K032AA04
4K032AA13
4K032AA16
4K032AA24
4K032AA25
4K032AA27
4K032AA29
4K032AA31
4K032BA01
4K032CG00
4K032CH04
4K032CM01
要約 【課題】ステンレス鋼に対し、材料組成を変化させずに制振特性を向上する方法を提供する。
【解決手段】材料に加工と熱処理を繰り返し施すことによって、制振特性を支配する部分転位の数密度(単位体積あたりの個数)を増加させる。この加工時において、振動と同一の変形モードで加工を行うことにより、振動中に移動しやすい制振源を優先的に発生させ、高い減衰能を発現させる。
【選択図】図7
特許請求の範囲 【請求項1】
ステンレス鋼をオーステナイト領域温度で熱処理した後冷却することでオーステナイト化し、塑性加工を施すという操作を繰り返すことにより部分転位の密度を増加させたステンレス鋼の処理方法。
【請求項2】
前記塑性加工が振動と同一の変形モードによる塑性加工である請求項1に記載のステンレス鋼の処理方法。
【請求項3】
前記ステンレス鋼がオーステナイト系のステンレス鋼である請求項1または2に記載のステンレス鋼の処理方法。
【請求項4】
前記部分転位が振動減衰に寄与しうる請求項1~3のいずれかに記載のステンレス鋼の処理方法。
【請求項5】
前記熱処理における温度が700℃であり、塑性加工により導入された部分転位を消滅させうる熱処理条件である請求項1~4のいずれかに記載のステンレス鋼の処理方法。
【請求項6】
前記塑性加工によって導入されるひずみが0.034であり、α’マルテンサイト変態を生じない塑性加工である請求項1~5のいずれかに記載のステンレス鋼の処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス鋼の振動減衰能(制振能)を付与させる処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
身近にある機械製品の多くにおいて、動作する際、振動および騒音が必ず生じる。この振動および騒音は、環境の悪化のみならず機械の性能、安全性の低下などの原因となる。それゆえ、振動および騒音の抑制は非常に重要であり、そのための様々な方法が提案されている。その方法として例えば、ゴムや高分子材料を用いる方法、また構造的に振動を吸収する方法などがある。両者は共に制振性は高いものの、前者には、強度および耐熱性が劣るため、使用箇所が限られるという欠点が、後者には、構造や重量により振動を抑制するため、それらが制限されるという欠点がそれぞれ存在する。従って、これらの方法に代わって、制振合金の利用が提案されている。
【0003】
ところで高い振動吸収能力を有する金属系材料が存在し、制振合金と呼ばれている。この制振合金は金属材料であるため、高強度・高耐熱性などといった性質をも有している。従って、幅広い箇所で利用可能であり、機械などの構造部材として利用すれば、特別な制振機構を必要とせず振動を抑制することができる。しかし、この制振合金は、従来制振材料として用いられていたゴムなどに比べて制振能に劣るといった欠点が存在するため、実用化のためには、高性能化が必須である。また、制振合金は汎用的な材料ではないため、製造コストが高くなってしまうといった課題も存在する。両者の課題を同時に解決する方法として、汎用的な金属材料であるステンレス鋼の振動減衰能が向上できれば社会的意義は高い。
【0004】
ここでステンレス鋼とは、11%以上のCrを含有するFe-Cr系合金のことであり、不動態被膜の形成により高い耐食性を有する。Cr含有量が16%以上になると、不動態被膜がより強化され、耐食性が著しく向上する。また、Crに加えてオーステナイト相形成元素であるNiを添加することによりオーステナイト相(γ相)領域を拡大させ、高温から低温まで安定なγ相が得られるようにしたステンレス鋼を、オーステナイト系ステンレス鋼という。代表的なものとして、FeにCrを18%、Niを8%添加した合金であり、18-8ステンレスとも呼ばれ、SUS304が挙げられる。このオーステナイト系ステンレス鋼は、耐食性、機械的性質、加工性および溶接性などに優れるという万能的性質を有し、製造も容易であるため、家庭用品から航空・宇宙産業まであらゆる分野で利用されている。従って、ステンレス鋼の制振能を向上させることができれば、現在、ステンレス鋼が使用されている機械製品や機械部品の振動を抑制することが可能となり、動作時の振動を吸収させることで、製品性能の向上が見込める。
【0005】
制振合金の制振能を向上させる技術として、特許文献1、特許文献2および非特許文献1に示されている熱トレーニング処理や加工・熱トレーニング処理がある。ここで、熱トレーニング処理や加工・熱トレーニング処理は、通常、形状記憶合金の形状記憶効果向上を目的として施される処理であり、マルテンサイト変態と逆変態とを繰り返すことにより、組織の微細化と均一化を生じせしめ、形状記憶効果向上を達成させる技術である。形状記憶効果向上の要因として、オーステナイト母相強化によるすべり変形の抑制、εマルテンサイトの核となる積層欠陥の導入、同じバーガースベクトルを持った部分転位の密度増加、トレーニング後の組織では低倍率では1枚に見えるε板がナノスケールのオーステナイト/ε積層状態になっていることなどが報告されている。
【0006】
特許文献1記載のFe-Mn系制振合金の制振特性を向上させる熱トレーニング処理として、Fe-Mn系制振合金をオーステナイト領域温度で熱処理した後、水冷し、その後、液体窒素やドライアイスなどを用いたサブゼロ処理にて、より低い温度まで急冷する、という熱処理を繰り返すことによって、Fe-Mn系合金の制振特性を向上させる方法が見出されている。また、Fe-Mn系制振合金をオーステナイト領域温度で熱処理した後、水冷し、その後、液体窒素やドライアイスなどを用いたサブゼロ処理にて、より低い温度まで急冷し、制振特性をさらに向上させるために、この熱処理プロセスの間に、圧延や鍛造などにより、材料へ加工を加える加工・熱トレーニング処理も特許文献1に記載されている。
【0007】
ここで、Fe-Mn系制振合金の制振能発現の要因は、振動による図1に示すような積層欠陥境界、オーステナイト/εマルテンサイト境界、およびεマルテンサイトのバリアント境界の移動によるものであることが報告されている(非特許文献2参照)。ここで、積層欠陥とは面状に形成された2次元的格子欠陥であり、ABCABCABCという面心立方格子の最密面積層の一部がABCABABCAのごとく乱れた部分を指し、部分転位の移動により発生する。また、εマルテンサイトとはhcp構造のマルテンサイト相であり、fcc相の最密面の2層に1層、部分転位が移動することにより形成する。バリアント境界とはこのεマルテンサイト内の兄弟晶の境界を指す。 金属組織学的にFe-Mn系制振合金の制振源は積層欠陥境界、オーステナイト/εマルテンサイト境界、およびεマルテンサイトのバリアント境界の移動と呼べるが、転位論的には部分転位の移動と考えることもできる。
【0008】
特許文献2においては、上記加工・熱トレーニング処理において、その加工プロセスとして振動と同一の変形モードである曲げ加工を適用することで、積層欠陥境界、オーステナイト/εマルテンサイト境界、あるいはεマルテンサイトのバリアント境界といった部分転位の形成や移動に対して、振動中に移動しやすい制振源を優先的に発生・移動させ、さらなる制振能の向上が認められることが記載されている。従って、この加工・熱トレーニング処理では、積層欠陥境界、オーステナイト/εマルテンサイト境界、あるいはεマルテンサイトのバリアント境界といった、制振能発現の要因を増加させることに加えて、曲げ加工により振動と同一の変形モードで加工を行うことで、上記の部分転位を振動減衰に有効に寄与するものへと制御することが可能な技術である。
【0009】
SUS304のようなオーステナイト系のステンレス鋼は、オーステナイト単相である。オーステナイト系ステンレス鋼において、オーステナイト相形成元素であるNi元素の添加は、オーステナイト相を安定化させる働きを有する。しかし、SUS304のような、8%程度のNi含有量においては、オーステナイト相は完全に安定とはならず、準安定な状態で存在する。従って、このようなオーステナイト系ステンレス鋼に対して冷間加工を施すことによって、加工誘起マルテンサイト変態が生じる。ここで、通常のマルテンサイト変態においては、形成するマルテンサイトはbcc構造を有するα’マルテンサイト相であり、その形成に伴い強度の向上などが生じる。また、オーステナイト相からα’マルテンサイト相へと変態する過程において、中間相としてオーステナイト相からεマルテンサイト相への変態が生じるため、ステンレス鋼においてもεマルテンサイト相が形成しうる。さらに、このマルテンサイトは熱処理によってではなく加工によってのみ形成するため、そのバリアント境界は変形に対して優先的なものが形成すると考えられる。つまり、ステンレス鋼においても上記Fe-Mn系制振合金と同様に、部分転位の移動に関連した振動減衰メカニズムが発現すると考えられる。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特許第5200243号公報
【特許文献2】特開2013-221191号公報
【0011】

【非特許文献1】Y. Watanabe, H. Sato, Y. Nishino and I. S. Kim; Mater. Sci. Eng. A, 490, Nos. 1-2, (2008) 138-145.
【非特許文献2】K.-K. Lee, K. Ito, M.-C. Shin, ISIJ Int. 34 (1994) 912-916.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記点に鑑み、ステンレス鋼において振動減衰能(制振能)を発現させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、加工方法を工夫した加工・熱トレーニング処理により、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下の製造方法が提供される。
【0014】
[1]ステンレス鋼をオーステナイト領域温度で熱処理した後冷却することでオーステナイト化し、塑性加工を施すという操作を繰り返すことにより部分転位の密度を増加させたステンレス鋼の処理方法。
【0015】
[2]前記塑性加工が振動と同一の変形モードによる塑性加工である前記[1]に記載のステンレス鋼の処理方法。
【0016】
[3]前記ステンレス鋼がオーステナイト系のステンレス鋼である前記[1]または[2]に記載のステンレス鋼の処理方法。
【0017】
[4]前記部分転位が振動減衰に寄与しうる前記[1]~[3]のいずれかに記載のステンレス鋼の処理方法。
【0018】
[5]前記熱処理における温度が700℃であり、塑性加工により導入された部分転位を消滅させうる熱処理条件である前記[1]~[4]のいずれかに記載のステンレス鋼の処理方法。
【0019】
[6]前記塑性加工によって導入されるひずみが0.034であり、α’マルテンサイト変態を生じない塑性加工である前記[1]~[5]のいずれかに記載のステンレス鋼の処理方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】Fe-Mn系制振合金の制振能の発現要因を示した模式図である。
【図2】内部摩擦測定に用いた装置を示す図である。
【図3】鋼への種々の添加元素のフェライトおよびオーステナイト安定化の程度をCrおよびNiに換算して示したクロム当量およびニッケル当量で組織の安定領域を示したシェフラーの組織図である。
【図4】本発明で行った加工・熱トレーニング処理の熱処理と加工のフローを示す図である。
【図5】本発明の曲げ加工で使用した金型を示す図である。
【図6】6サイクルの加工・熱トレーニングを行ったSUS310Sを光学顕微鏡で観察した図である。
【図7】加工・熱トレーニング処理を施した試料および未処理試料の内部摩擦の値を示す図である。
【図8】加工・熱トレーニング処理を施した試料および未処理試料のビッカース硬さ測定結果を示す図である。
【図9】制振合金を含む種々の金属材料における引張強度と内部摩擦の値(Q-1)との関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0022】
本発明のステンレス鋼は、オーステナイト系のステンレス鋼であり、特に熱トレーニング処理あるいは加工・熱トレーニングにより振動減衰に寄与する部分転位の密度を増加させることを特徴とする。ステンレス鋼をオーステナイト領域温度で熱処理した後冷却することでオーステナイト化し、塑性加工を施すという操作を繰り返すことにより、振動中に移動可能な部分転位の密度を増加させたステンレス鋼の処理方法である。

【0023】
その塑性加工は、振動と異なる変形モードで加工を行うのではなく、振動と同一の変形モードで加工を行うことにより、積層欠陥境界、オーステナイト/εマルテンサイト境界12、あるいはεマルテンサイトのバリアント境界14といった部分転位を発生させることを特徴とする。これにより、優先的に発生した部分転位は振動中に移動しやすくなり、高い減衰能を発現させることが可能となる。

【0024】
本発明では、振動と同一の変形モードである曲げ加工を有する加工・熱トレーニング処理を行う。図2に本発明で内部摩擦測定に用いた装置を示す。ここで内部摩擦とは、材料に外部から振動応力を加えた場合、材料内部に存在する原因によって振動エネルギーを消耗する現象である。図2に示すように、加振コイルにより試料に曲げのたわみを与えて振動させた後、自由減衰させ、そのときの振動現象を検出コイルで測定する。このように、測定時、試料には曲げ変形が加わっている。そこで、この変形モードと同一の曲げ変形にて、加工・熱トレーニング処理を行った。
【実施例1】
【0025】
本発明の実施例で使用したオーステナイト系ステンレス鋼はSUS304およびSUS310Sであり、その化学組成をそれぞれ表1および表2に示す。
【実施例1】
【0026】
【表1】
JP2016069680A_000003t.gif
【実施例1】
【0027】
【表2】
JP2016069680A_000004t.gif
【実施例1】
【0028】
ここで、鋼への種々の添加元素のフェライトおよびオーステナイト安定化の程度をCrおよびNiに換算して示したクロム当量およびニッケル当量で組織の安定領域を示したシェフラーの組織図を図3に示す。このシェフラーの組織図は、高温から急冷して室温で得られる組織を表示したものである。図示の如く、SUS304に比べSUS310Sのオーステナイト相の安定性が高い。トレーニング処理に供する試料の形状は短冊状であり、寸法は長さ81.0mm×幅10.5mm×厚み1.5mmである。しかしながら、これが試料の組成や形状および寸法を限定するものではない。
【実施例1】
【0029】
図4に本発明で実施した加工・熱トレーニング処理法を示す。700℃に加熱し、2時間保持によりオーステナイト化した後に水冷し、室温で曲げ加工、その後の平面化加工を行った。この曲げ加工で用いた金型を図5に示す。曲げ加工により、試料長手方向中央66.2mmの位置において曲率半径23mmの曲げが導入される。これにより、内部摩擦測定時の振動部全体に曲げを導入することができる。この曲げ加工によって導入されるひずみは0.034である。なお、700℃での加熱によるオーステナイト化、室温での曲げ加工およびその後の平面化加工を1サイクルとし、最大6サイクルまでの加工・熱トレーニング処理を施した。さらに、加工・熱トレーニング処理における曲げ加工は、1サイクル毎に試料を裏返し、曲げ加工方向を反転させて行うことで、振動と同一の変形モードによる加工を施した。
【実施例1】
【0030】
加工・熱トレーニングを施した試料の光学顕微鏡による代表的な組織写真を図6に示す。この図はSUS310Sに対して6サイクルの加工・熱トレーニングを施したものである。図より、オーステナイト粒の内部に板状の組織が多数生じていることが確認できる。これは加工・熱トレーニングにより生じた双晶であり、加工・熱トレーニング処理によって試料に多量の部分転位が生じたことがわかる。
【実施例1】
【0031】
作製した試料の内部摩擦を図2に示した装置にて計測した。内部摩擦測定での振動は試料長手方向であり、加工・熱トレーニング処理中の曲げと同じ方向である。作製した試料の振動減衰能(内部摩擦の値)を図7に示す。ここで、内部摩擦の値(Q-1)は制振能を表す指標であり、内部摩擦の値が大きいほど制振能が高い。トレーニング未処理材に比べて、加工・熱トレーニングを行った材料の内部摩擦の値が大きく、未処理材の2倍以上にまで向上していた。この結果から、振動のモードと同一の変形モードで加工・熱トレーニングを行うことにより、導入される部分転位が、そのモードでの振動中に移動しやすいために、制振能が向上することを見出した。また、SUS310Sに比べてSUS304の制振能向上が著しい。ここで、SUS310SおよびSUS304の積層欠陥エネルギーはそれぞれ94[mJ/m]および18[mJ/m]である。従って、SUS310Sに比べてSUS304の方が積層欠陥などの部分転位が形成しやすい。そのため、加工・熱トレーニングによる部分転位密度の増加が大きく、制振能がより向上したと考えられる。
【実施例1】
【0032】
作製した試料のビッカース硬さを図8に示す。加工・熱トレーニング処理を施すことで、ビッカース硬さが向上していることが分かる。さらに、トレーニング回数の増加に伴いビッカース硬さが向上している。これは、加工・熱トレーニング処理によるマルテンサイト変態および、部分転位の増加による加工硬化が生じているためである。このように、加工・熱トレーニングを施すことにより制振能だけでなく、強度も同時に改善できることを見出した。ここで、制振合金を含む種々の金属材料の強度と内部摩擦の値(Q-1)との関係を図9に示す。図9のように、制振合金のような非常に高い内部摩擦を示すグループ、鋳鉄やステンレス鋼のグループ、およびアルミニウムや銅合金のグループといった、3つのグループに分けられるが、何れのグループにおいても、強度と制振能とは二律背反の関係にある。従って、強度と制振能を同時に向上させることが可能であるこの処理方法は、非常に有効な処理方法である。
【実施例1】
【0033】
なお、図中16はγオーステナイト相/εマルテンサイト相境界、18はγオーステナイト相の積層欠陥境界、20はタングステンワイヤ、22は鉄箔、24は加振コイル、26は検出コイル、28はコンンピュータを示す。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の処理方法は、耐食性、機械的性質、加工性および溶接性などに優れるという性質を有し、製造も容易であるため、家庭用品から航空・宇宙産業まであらゆる分野で利用されているオーステナイト系ステンレス鋼において、特に制振性が必要とされる場合に利用することができる。例えば、電化製品や機械などのカバーに制振能を付与させることで、装置の振動および騒音の抑制による性能の向上や作業環境の改善が見込める。また、自動車などの輸送機に用いられるモータの鉄心に制振能を付与することで、振動により生じるブレの防止により、動力伝達時のロスが減少し、燃費の向上につながる。さらに、建造物に用いられる際には、地震や風による振動だけでなく、人が使用する際に生じる生活音なども吸収することができる。このように、汎用性が高く、我々の生活に欠かせない材料であるステンレス鋼が制振能を有するということは、非常に有用である。



図面
【図9】
0
【図1】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
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