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明細書 :薄板状クラッド材の製造方法および製造装置ならびにブレージングシートの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5846991号 (P5846991)
公開番号 特開2013-208629 (P2013-208629A)
登録日 平成27年12月4日(2015.12.4)
発行日 平成28年1月20日(2016.1.20)
公開日 平成25年10月10日(2013.10.10)
発明の名称または考案の名称 薄板状クラッド材の製造方法および製造装置ならびにブレージングシートの製造方法
国際特許分類 B22D  11/00        (2006.01)
B22D  11/06        (2006.01)
B22D  19/16        (2006.01)
B23K  35/40        (2006.01)
FI B22D 11/00 N
B22D 11/06 330B
B22D 19/16 B
B23K 35/40 340J
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2012-079209 (P2012-079209)
出願日 平成24年3月30日(2012.3.30)
審査請求日 平成26年7月15日(2014.7.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
発明者または考案者 【氏名】羽賀 俊雄
個別代理人の代理人 【識別番号】110001195、【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
審査官 【審査官】酒井 英夫
参考文献・文献 特開平04-052052(JP,A)
特開平02-295646(JP,A)
特開2004-050218(JP,A)
調査した分野 B22D 11/00,11/06
特許請求の範囲 【請求項1】
母材形成用の第一縦型双ロールと表材形成用の第二縦型双ロールとを用いて連続鋳造法により、薄板状クラッド材を製造する方法であって、
半径rの前記第一縦型双ロールにより母材を第1の材料から形成する工程と、
半径rの前記第二縦型双ロールによりクラッド材を母材の表面に第2の材料から形成する工程とを備え、
母材と表材の厚さの比を2a:1とし、θを前記第一縦型双ロールにおける凝固角度とし、kを0.7以上1.2以下の定数とし、Gを第二縦型双ロールの堰の内側がロール表面に接する直線と第二縦型双ロールのロール中心軸同士を含む平面と直交するロール接平面との間隔とすると、
0.7r≦[(a/θ)k{cos-1(1-G/r)}]≦1.3rかつaがa≧1の場合はr>r、aがa<1の場合はr<rで表される関係式が成立する、薄板状クラッド材の製造方法。
【請求項2】
前記Gは2.5mm以上30mm以下であり、前記表材の液相線温度が前記母材の液相線温度以下の場合は、前記kは0.7以上1.0以下である、請求項1に記載の薄板状クラッド材の製造方法。
【請求項3】
母材の片面もしくは両面に表材としてろう材が積層されたブレージングシートの製造方法であって、請求項1又は2記載の薄板状クラッド材の製造方法によって製造するブレージングシートの製造方法。
【請求項4】
母材形成用の第一縦型双ロールと、前記第一縦型双ロールにより形成された母材の表面に表材を形成するための表材形成用の第二縦型双ロールとを備え、
半径rの第一縦型双ロールにより母材を第1の材料から形成し、
半径rの第二縦型双ロールにより表材を母材の表面に第2の材料から形成し、
θを第一縦型双ロールにおける凝固角度とし、kを0.7以上1.2以下の定数とし、Gを第二縦型双ロールの堰の内側がロール表面に接する直線と第二縦型双ロールのロール中心軸同士を含む平面と直交するロール接平面との間隔とすると、
0.7r≦[(a/θ)k{cos-1(1-G/r)}]≦1.3rかつaがa≧1の場合はr>r、aがa<1の場合はr<rで表される関係式が成立する、薄板状クラッド材の製造装置。
【請求項5】
前記Gは2.5mm以上30mm以下であり、前記表材の液相線温度が前記母材の液相線温度以下の場合は、前記kは0.7以上1.0以下である、請求項に記載の薄板状クラッド材の製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、薄板状クラッド材の製造方法および製造装置ならびにブレージングシートおよびその製造方法に関し、より特定的には、双ロールを用いた薄板状クラッド材の製造方法および製造装置ならびにブレージングシートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クラッド材の製造方法は、たとえば特開平5-69088号公報(特許文献1)、特開平4-138845号公報(特許文献2)、特開平4-52052号公報(特許文献3)に開示されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平5-69088号公報
【特許文献2】特開平4-138845号公報
【特許文献3】特開平4-52052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、連鋳鋳型内に鋳片の厚みを横切る方向の直流磁束を全幅に亙って付与し、該直流磁束によって鋳型鋳造方向に形成される静磁場帯を境界としてその上下に組成の異なる金属を供給する複層鋳片の連続鋳造方法において、鋳型以後の連続鋳造機内に設置された鋳片を厚み方向に圧下せしめる装置を用いて未凝固鋳片を圧下することにより、組成の異なる2種の金属の相対的な厚み比を調節することが開示されている。
【0005】
特許文献2では、各溶湯の噴出位置からロールのキス部までの距離を溶湯の種類に応じて変化させることが開示されている。
【0006】
特許文献3では、第一双ロールから排出された母材を冷却または加熱して最適温度に維持しながら合わせ材接合用の第2双ロールに供給することが開示されている。
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1から3の方法では、母材と表材との厚みの比(母材厚/表材厚=クラッド比)を大きくすることが困難であった。特に自動車等に用いられる熱交換用のブレージングシートにおいては、アルミニウム合金からなる母材と母材より低融点の材料からなる表材(ろう材)の厚みの比(クラッド比)が大きい、例えば、ろう材:母材:ろう材が約1:8:1以上のものが求められており、従来のAl-Mn合金の板材に圧延して薄くしたAl-Si系合金板を熱圧着して製造する方法では、多工程を要するため製造コストが高くつくという問題があった。
【0008】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、クラッド比の大きなクラッド材を提供することが可能な薄板状クラッド材の製造方法および製造装置、ブレージングシートの製造方法、同法によるブレージングシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従った、薄板状クラッド材を製造する方法は、母材形成用の第一縦型双ロールと表材形成用の第二縦型双ロールとを用いて連続鋳造法により、薄板状クラッド材を製造する方法であって、半径rの第一縦型双ロールにより母材を第1の材料から形成する工程と、半径rの第二縦型双ロールにより表材を母材の表面に第2の材料から形成する工程とを備え、母材と表材の厚さの比を2a:1とし、θを第一縦型双ロールにおける凝固角度とし、kを0.7以上1.2以下の定数とし、Gを第二縦型双ロールの堰の内側がロール表面に接する直線と第二縦型双ロールのロール中心軸同士を含む平面と直交するロール接平面との間隔(以降、間隔Gと略す)とすると、
0.7r≦[(a/θ)k{cos-1(1-G/r)}]≦1.3rかつaがa≧1の場合はr>r、aがa<1の場合はr<rで表される関係式が成立する。
【0010】
好ましくは、間隔Gは2.5mm以上30mm以下であり、表材の液相線温度が母材の液相線温度以下の場合は、kは0.7以上1.0以下である。
【0011】
この発明に従った、ブレージングシートの製造方法は、母材の片面もしくは両面に表材としてろう材が積層されたブレージングシートの製造方法であって、上記の薄板状クラッド材の製造方法によって製造する。
【0012】
この発明に従った薄板状クラッド材の製造装置は、母材形成用の第一縦型双ロールと、第一縦型双ロールにより形成された母材の表面に表材を形成するための表材形成用の第二縦型双ロールとを備え、半径rの第一縦型双ロールにより母材を第1の材料から形成し、半径rの第二縦型双ロールにより表材を母材の表面に第2の材料から形成し、母材と表材の厚さの比を2a:1とし、θを第一縦型双ロールにおける凝固角度とし、kを0.7以上1.2以下の定数とし、Gを第二縦型双ロールの堰の内側がロール表面に接する直線と第二縦型双ロールのロール中心軸同士を含む平面と直交するロール接平面との間隔(間隔G)とすると、
0.7r≦[(a/θ)k{cos-1(1-G/r)}]≦1.3rかつaがa≧1の場合はr>r、aがa<1の場合はr<rで表される関係式が成立する。
【0013】
好ましくは、間隔Gは2.5mm以上30mm以下であり、表材の液相線温度が母材の液相線温度以下の場合は、kは0.7以上1.0以下である。
【0014】
この発明に従ったブレージングシートは、上記のブレージングシートの製造方法により製造される。
【発明の効果】
【0015】
この発明に従えば、クラッド比を自在にコントロールして所望のクラッド比のクラッド材を、特にクラッド比が大きいクラッド材を、省工程および低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態1に従った薄板状クラッド材の製造方法で用いられる第一縦型双ロールの構成を示す図である。
【図2】図1で示す第一縦型双ロールの一部分を拡大して示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に従った2段の縦型双ロールを有する薄板状クラッド材の製造装置の図である。
【図4】図3で示す薄板状クラッド材の製造装置における第二縦型双ロールを拡大して示す図である。
【図5】比較例に従った薄板状クラッド材の製造装置を示す図である。
【図6】間隔G2を3mmとしたときのロール径に対する最小凝固距離を示すグラフである。
【図7】上側および下側ロールの径が同じ場合のクラッド比とロール径の関係を示すグラフである。表材と母材は同じ材料を使用した。
【図8】表材250と母材150と表材250との厚みを1:8:1とするときの上側ロールおよび下側ロールの径の関係を示すグラフである。表材と母材は同じ材料を使用した。
【図9】この発明の実施の形態1に従った2段の双ロールを有する薄板状クラッド材の製造装置により製造されたブレージングシート用のクラッド材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰返さない。

【0018】
図1は、この発明の実施の形態1に従った薄板状クラッド材の製造方法で用いられる第一縦型双ロールの構成を示す図である。図1を参照して、母材形成用の第一縦型双ロール11は、一対の円柱形状のロール20,30を有する。一対のロール20,30と、堰110,110と、サイド堰(図示せず)との間に溶湯または半凝固状態の第1の材料100が保持されている。一対のロール20,30が回転することで、第1の材料100が一対のロール20,30の表面で冷却されて母材150が形成される。

【0019】
ロール20において角度θ(rad)の領域でロール20と第1の材料100がその表面で冷やされて半凝固または凝固した層が接触している。ロール20の半径はr1である。図2は、ロール20を拡大して示す図である。図2を参照して、ロール20の半径r1と、凝固角度θ1(rad)との積L1が凝固距離である。その凝固距離L1に対応する幅G1とすると以下の関係式が成立する。

【0020】
1-G1=r1cosθ1 式(1)
1=r1θ1 式(2)
1=r1cos-1(1-G1/r1) 式(3)
母材150の厚さをD1として、その半分の厚みをd1とする。

【0021】
ロールの周速度(ロール周速)をv1とする。
また材料によって決まる凝固係数(k)は、第1の材料100に対する凝固係数をkとする。これらの間には以下の関係式が成立する。

【0022】
1=k(L/v1/2 式(4)(経験式)
図3は、この発明の実施の形態1に従った2段の双ロールを有する薄板状クラッド材の製造装置の図である。図4は、図3で示す薄板状クラッド材の製造装置における第二縦型双ロールを拡大して示す図である。図3および図4を参照して、薄板状クラッド材の製造装置1は、第一縦型双ロール11と、第一縦型双ロール11により形成された母材150の表面に表材250を形成するための表材形成用の第二縦型双ロール12とを備える。半径r1のロール20,30により厚みがD1の母材150をロール20,30と堰110により保持された第1の材料100から形成し、半径r2のロール220,230より厚みがdの表材250を母材150の両面にロール220,230と、堰210,210とサイド堰(図示せず)とで保持された第2の材料200から形成する。

【0023】
ロール20,30のロール面同士が最接近する点がキス点25であり、ロール220,230のロール面同士が最接近する点がキス点225である。

【0024】
第二縦型双ロール12における凝固距離をLとし、ロール周速をvとし、第2の材料100に対する凝固係数をkとする。第一縦型双ロール11の関係式と同様に、第二縦型双ロール12も以下の関係式が成立する。

【0025】
=k(L/v1/2 式(4-1)(経験式)
=rcos-1(1-G/r) 式(3-1)
クラッド材300における表材250と母材150と表材250との厚みの比を1:2a:1とする。

【0026】
a:1=d1:d2
式(4)と式(4-1)から
a:1=k(L/v)1/2:k(L/v)1/2
なお、ロール周速はv1=vであるので、v1,vをvに置き換えている。

【0027】
=a 式(5)
式(5)に式(2)と(3-1)を代入する。

【0028】
θ=acos-1(1-G/r) 式(6)
第一縦型双ロール11における凝固係数kは、単層板を製造する通常の双ロールキャスターの凝固係数kと同じ値となる。これに対して、第二縦型双ロール12における凝固係数kは単層板を製造する通常の双ロールキャスターにおける凝固係数kの値とは厳密には異なるが、ほぼ同一とみなすことができる。また、凝固係数は、材料特有であり、単層板を製造する通常の双ロールキャスターを用いた実験により求めることができる。

【0029】
つまり、これを式で表すと
=ko (kは単層板を製造する通常の双ロールキャスターにおける凝固係数)
ただし、補正係数ko≒1である。

【0030】
次に、
=k/k1 とすると
ただし、kはk=0.7以上1.2以下の定数であり、表材の液相線温度が母材の液相線温度以下の場合は、k=0.7以上1.0以下である。

【0031】
また、第1の材料100と第2の材料200が同じ材用の場合は、kとkの値がほぼ等しくなるので、k≒1となる。

【0032】
式(6)からrを求める式が導き出せる。
=(a/θ)k{cos-1(1-G/r)} 式(7)
実際に用いるrの値は、式(7)で求めたrの値の70%以上130%以下とすると、
0.7r≦[(a/θ)k{cos-1(1-G/r)}]≦1.3rで表される関係式が成立する。なお、aがa≧1の場合はr>r、aがa<1の場合はr<rとする。

【0033】
実際にクラッド材を製造する場合は、凝固角度θ、間隔G、ロール温度(冷却条件)、溶湯温度、等の条件を適宜調節することにより、所望のクラッド比に調整することができる。ただし、これら条件によるクラッド比の調整幅はそれほど広くないため、0.7r≦[(a/θ)k{cos-1(1-G/r)}]≦1.3rの範囲内にする必要がある。クラッド比の調整をより容易にするためには、0.8r≦[(a/θ)k{cos-1(1-G/r)}]≦1.2rが好ましく、さらに0.9r≦[(a/θ)k{cos-1(1-G/r)}]≦1.1rが、調整がより容易になるためより好ましい。

【0034】
言い換えると、rの値が、式(7)で求めたrの値の70%以上130%以下の範囲(好ましくは80%以上120%以下の範囲、より好ましくは90%以上110%以下の範囲)であれば、凝固角度θ、間隔G、ロール温度(冷却条件)、溶湯温度、等の条件を適宜調節することにより、所望のクラッド比に最適化することができる。

【0035】
さらに、クラッド材300の厚みは、以上の条件に加えてロール周速を適宜調節することにより調節することができる。さらに、クラッド材300を後工程にて圧延して、適当な厚みに圧延することができる。

【0036】
なお、aがa≧1の場合はr>r、aがa<1の場合はr<rとしているのは、クラッド比が1:2:1以上の場合は、ロール半径rをロール半径rより大きくするのが好ましく、クラッド比が1:2:1未満の場合は、ロール半径rをロール半径rより小さくするのが好ましいためである。

【0037】
間隔G2は、図4において、堰210の内側がロール220の表面に接する点とロール220,230のロール中心軸同士を結ぶ直線と直交するロール接線との間隔であり、第2の材料200を安定に供給するためには、少なくとも間隔Gは2.5mm以上あることが好ましく、上限は堰210を設置できる限りいくらでも構わないが、実用上30mm以下が好ましい。

【0038】
なお、この実施の形態では、第二縦型双ロール12では、母材150の両側に厚みdの表材250を形成したが、一方の表材250の厚みをdとし、他方の表材250の厚みをdと異なるものとしてもよい。その場合は、第二縦型双ロール12の一方のロールの半径rおよびまたは間隔Gを他方のロールのものとは異なるものにすることで実現できる。また、母材150の片側だけに厚みdの表材250を形成してもよい。

【0039】
この発明の実施の形態1に従った薄板状クラッド材の製造方法と製造装置によると、所望のクラッド比のクラッド材300を製造するために必要なロール径を計算式から簡単に求めることができる。また、クラッド比の大きい(表材250が母材110に比べて薄い)クラッド材や、クラッド比の小さい(母材150が表材250に比べて薄い)クラッド材でも、省工程および低コストで製造することができる。

【0040】
クラッド材300の用途として、たとえばラジエータ材(三層のブレーシングシート)が挙げられる。一般的に求められているものは、2枚の表材250の厚みの合計を、母材150の約1/4の厚さ以下(板厚比約1:4以上)にする必要がある。つまり、そのとき、表材250と母材150との厚みの比(クラッド比)は約1:8:1以上となる。

【0041】
第一縦型双ロール11における凝固距離L1と、第二縦型双ロール12の凝固距離L2との比は、板厚比の二乗に比例する。板厚比を1:4にするためには、凝固距離比を1:16にする必要がある。凝固距離を調節には、堰110、210の位置を移動させることで達成できるが、表材250が母材110に比べて薄い(クラッド比が大きい)クラッド材300を作製する場合は、凝固距離L2を短くすると間隔G2が狭くなりすぎて第二縦型双ロール12に安定して材料を供給することが困難になる。そこで、下方の第二縦型双ロール12のロール220,230の径を小さくすると間隔G2を狭くせずに凝固距離を短くすることができるので、クラッド比が大きいクラッド材300を作製することができる。

【0042】
三層のブレーシングシートとして、クラッド比が1:8:1のクラッド材300を製造する場合には、母材と表材の厚さの比2a:1=8:1となるので、式(7)より、以下の関係式が成立する。

【0043】
=(16/θ)k{cos-1(1-G/r)} 式(7-1)
次に、クラッド比が1:8:1のクラッド材300を製造する場合において、式(7-1)を用いたロール径の計算方法の一例を示す。

【0044】
先ず、rをr≧50mmの値で設定する。
に下限値を設けた理由は、ロール径100mm(つまりrが50mm)よりも小さくなると十分なロール冷却能が得られないからである。

【0045】
次に、間隔Gを2.5mm以上の値で設定する。間隔Gが小さいほうが凝固距離は短くなり、表材250を薄くすることができる。しかし、狭すぎると溶湯200の供給が不可能となる。実施例では、第二縦型双ロールのロール径が100mmときに、材料供給が可能な間隔として最も狭い間隔Gを3mmとした。

【0046】
次に、凝固角度θ(rad)は、20°≦θ≦90°の範囲で設定する。堰110を使用した場合は,90°が上限であり、好ましくは60°までが上限であり、40°が最適とされている。

【0047】
次に、凝固係数kは、材料特有であり、単層板を製造する通常の双ロールキャスターを用いた実験により求めることができるが、表材の液相線温度が母材の液相線温度以下の場合は0.7≦k≦1となるので、この範囲において任意の値を設定することができる。

【0048】
以上の設定値により、式(7-1)から、第一縦型双ロールのロール半径rを求めることができる。

【0049】
実際に用いるrの値は、式(7-1)で求めたrの値の70%以上130%以下の範囲で、任意の値を設定することができる。これは、例えば、式(7-1)で求めたrの値が130mm(つまりロール径260mm)であって、ロール径が100mm単位でしか用意されておらず、それに近いロール径が300mm(r=150mm)である場合、計算値r=130mmの約115.4%であるr=150mmのロール、つまりロール径が300mmのロールを使用できることを意味する。

【0050】
また、rの値が、式(7-1)で求めたrの値の70%以上130%以下の範囲であれば、凝固角度θ、間隔G、ロール温度(冷却条件)、溶湯温度、等の条件を適宜調節することにより、1:8:1のクラッド比に最適化することができる。

【0051】
さらに、クラッド材300の厚みは、以上の条件に加えてロール周速を適宜調節することにより調節することができる。さらに、クラッド材300を後工程にて圧延して、所望の厚みに圧延することができる。

【0052】
以上の様に、この発明の実施の形態1に従った薄板状クラッド材の製造方法と製造装置によると、ブレーシングシート用のクラッド比の大きいクラッド材300を製造するために必要なロール径を計算式から簡単に求めることができる。また、ブレーシングシート用のクラッド材300を、省工程および低コストで製造することができる。

【0053】
図5は、比較例に従った薄板状クラッド材の製造装置を示す図である。図3は、本発明に従った薄板状クラッド材の製造装置を示す図である。図5および図3で示すように、本発明に従った装置では、下側の第二縦型双ロール12におけるロール220,230の径を小さくしている。これによりクラッド比が大きいクラッド材300を提供することができる。

【0054】
図4における間隔Gが小さいほうが凝固距離は短くなり、表材250を薄くすることができる。しかし、狭すぎるとノズルや樋を使っても詰まったりするため溶湯200を安定して供給することが不可能となる。第二縦型双ロールへ材料供給に必要な間隔Gを3mmとした。このときのロール径と、そのロール径における最短凝固距離との関係を図6で示す。

【0055】
図6は、間隔G2を3mmとしたときのロール径に対する最小凝固距離を示すグラフである。

【0056】
図6を参照して、間隔G2を3mmとしたときに、ロール220の直径が大きいほど凝固距離が長くなることがわかる。すなわち、ロール220の直径が小さければ小さいほど凝固距離が短くなるので、表材の板厚も薄くなる。

【0057】
図7は、上側および下側ロールの径が同じ場合のクラッド比とロール径の関係を示すグラフである。なお、このとき表材と母材が同一の材料を用いている。

【0058】
図7を参照して、たとえば図5で示す第一縦型双ロール11(上側ロール)におけるロール20の径と、第二縦型双ロール12(下側ロール)におけるロール220の径とを同じとした。また、縦型双ロールの凝固角度は、堰110を使用した場合は,90°が上限であり、好ましくは60°までが上限とされているので、第一縦型双ロール11の凝固角度を60°とし、第二縦型双ロール12では間隔G2=3mmとした場合のロールの直径とクラッド比とを図7で示している。ロールの直径が大きいほどクラッド比が大きいことがわかる。しかし、ロール径を1000mmとしても、クラッド比1:6.2:1を得るのが限界である。ただし、これは単なる計算上の結果であり、実際にロール径1000mmのロールを使用して間隔G2を3mmに設定するのは、ロール径が大きくなるほどキス点25近傍にてロール面が急峻になり、堰210の厚みを考慮すると不可能である。その場合、間隔G2を20mm程度に広げる必要があり、そのときに得られるクラッド比は1:3.8:1が限界となる。

【0059】
したがって、クラッド比を大きくするためには、第一縦型双ロール11の凝固距離を長くし、第二縦型双ロール12の凝固距離を短くする必要がある。そのためには、第二縦型双ロール12のロール径を第一縦型双ロール11のロール径よりも小さくすることが最適である。

【0060】
図8は、表材250と母材150と表材250との厚みを1:8:1とするときの上側ロールおよび下側ロールの径の関係を示すグラフである。図8を参照して、クラッド比を1:8:1とする場合の上側ロール(第一縦型双ロール11)と下側ロール(第二縦型双ロール12)におけるロール径が図8で示されている。このように、クラッド比を1:8:1にするためには、下側ロールを十分に小さくする必要があることがわかる。図7のときと同じく、表材と母材が同一の材料の場合を例にとっており、凝固角度θ=60°、間隔G2=3mmにして計算を行った。

【0061】
(実施例)
この発明の実施の形態1に従った2段の双ロールを有する薄板状クラッド材の製造装置により、ブレージングシート用のクラッド材を作製した。

【0062】
母材150には、Al-Mn系アルミニウム合金を材料として用い、表材250には、ろう材となるAl-Si系アルミニウム合金を用いて、クラッド比を1:8:1に設定し、それ以外の条件は以下の通りとした。
第一縦型双ロール11:
=150mm
θ=60°(π/3rad)
=32.98mm・min-1/2(実験値)
第二縦型双ロール12:
=50mm
=3mm
=24.79mm・min-1/2(実験値)
=0.75
図9は、この発明の実施の形態1に従った2段の双ロールを有する薄板状クラッド材の製造装置により製造されたブレージングシート用クラッド材の断面図である。図9を参照して、できたクラッド材の断面図から、表材(ろう材):母材:表材(ろう材)の厚みの比(クラッド比)が、ほぼ1:8:1となっており、母材と表材の接合界面が滑らに接合されておりブレージングシート用クラッド材として好適な結果が得られた。

【0063】
できたクラッド材は、後工程において圧延を繰り返して所望の厚みのブレージングシートに仕上げられる。

【0064】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 薄板状クラッド材の製造装置、11 第一縦型双ロール、12 第二縦型双ロール、20,30,220,230 ロール、100 第1の材料,200 第2の材料、110,210 堰、150 母材、250 表材、300 クラッド材。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
8