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明細書 :固液分離機能を有する装置、μ-TASデバイス及び固液分離方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5340419号 (P5340419)
登録日 平成25年8月16日(2013.8.16)
発行日 平成25年11月13日(2013.11.13)
発明の名称または考案の名称 固液分離機能を有する装置、μ-TASデバイス及び固液分離方法
国際特許分類 B01D  24/00        (2006.01)
B01D  29/00        (2006.01)
B03B   5/00        (2006.01)
G01N  35/08        (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
FI B01D 29/00 Z
B03B 5/00 Z
G01N 35/08 A
G01N 37/00 101
請求項の数または発明の数 13
全頁数 30
出願番号 特願2011-547535 (P2011-547535)
出願日 平成22年12月20日(2010.12.20)
国際出願番号 PCT/JP2010/072887
国際公開番号 WO2011/078115
国際公開日 平成23年6月30日(2011.6.30)
優先権出願番号 2009293605
優先日 平成21年12月25日(2009.12.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年6月25日(2012.6.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
発明者または考案者 【氏名】筒井 博司
個別代理人の代理人 【識別番号】100104709、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 誠剛
審査官 【審査官】関口 哲生
参考文献・文献 特開2007-155441(JP,A)
特開2009-109232(JP,A)
特開2005-211759(JP,A)
特開2005-257337(JP,A)
特表平9-504362(JP,A)
特開2004-45357(JP,A)
特開2006-136837(JP,A)
調査した分野 B01D 24/00
B01D 29/00
B01J 19/00
B81B 1/00
B03B 5/00
G01N 1/10
G01N 33/48
G01N 35/08
G01N 37/00
特許請求の範囲 【請求項1】
一定の大きさ以上の固体を捕捉することにより固液を分離する分離部が設けられた固液分離機能を有する装置であって、入口側から出口側に向けて固液混合物が分離部を上流から下流に向けて通過するようにされており、
前記分離部には、一の面と対向する他の面に挟まれた間隙中に固体捕捉部が複数個設けられており、
前記固体捕捉部は、前記一の面から前記他の面に向かって伸びる隔壁により形成され、入り口部と、前記入り口部から入った固体を1個以上収容する収容部と、前記収容部の下流側に設けられ前記一定の大きさ以上の固体は通さない開口部とを備えているものであり、
前記分離部の固体捕捉部が設けられた領域の幅が上流側から下流側に向けて徐々に狭くなっていることを特徴とする固液分離機能を有する装置。
【請求項2】
前記隔壁が柱体列又は壁体からなることを特徴とする請求項1に記載の固液分離機能を有する装置。
【請求項3】
前記一の面上に前記隔壁が形成されており、
前記他の面を構成する材料が前記隔壁を構成する材料よりも軟らかい材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の固液分離機能を有する装置。
【請求項4】
前記一の面上に前記隔壁が形成されており、
前記隔壁を構成する材料が前記他の面を構成する材料よりも軟らかい材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の固液分離機能を有する装置。
【請求項5】
前記一の面上に前記隔壁が形成されており、
前記隔壁と前記他の面との間には、前記他の面を構成する材料及び前記隔壁を構成する材料よりも軟らかい材料からなる緩衝層が配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の固液分離機能を有する装置。
【請求項6】
前記軟らかい材料はデュロメーター硬さが10~100である樹脂からなることを特徴とする請求項3~5のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置。
【請求項7】
前記分離部には、上流から下流へと向かう流路が複数設けられ、前記流路に沿って流路に向けて開口した前記固体捕捉部が複数設けられており、前記一の流路と他の流路とが障壁または前記一定の大きさ以上の固体は通さない開口部を有する障壁により画されていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置。
【請求項8】
固体捕捉部が設けられた領域の幅が上流側に比し下流側の方が狭くなっている分離部を一平面上に複数有しており、前記複数の分離部からの液体が合流するようにされていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置。
【請求項9】
固体捕捉部が設けられた領域の幅が上流側に比し下流側の方が狭くなっている分離部が複数集まって円状または円弧状を呈しており、円または円弧の中心部に前記複数の分離部からの液体の合流液の排出口が設けられていることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置。
【請求項10】
分離部の最下流部が、前記一定の大きさ以上の固体が通過できないようにされていることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置。
【請求項11】
前記一の面と対向する他の面に挟まれた間隙が2~6μmであることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置を一部分として有することを特徴とするμ-TAS(マイクロ トータル アナリシス システムズ)デバイス。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置を用いて固液を分離する固液分離方法であって、前記分離部として、固液分離しようとする固液分離物に含まれる固体の総体積よりも大きい容積を有する分離部が設けられた固液分離機能を有する装置を準備するとともに、当該固液分離機能を有する装置を用いて固液を分離することを特徴とする固液分離方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、固液分離機能を有する装置、特に液体と固体の混合物から一定の大きさ以上の固体をろ過する機能、例えば、血液から血球を分離する機能を有するフィルター機能(固液分離機能)を有する装置、フィルター機能を有するμ-TAS(マイクロ トータル アナリシス システムズ)デバイス及び固液分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、マイクロマシン技術を応用して、化学分析や合成などの機器・手法を微細化して行うμ-TAS(μ-TotalAnalysisSystems、 マイクロ トータル アナリシス システムズ)と呼ばれるマイクロ化学デバイスが研究開発されている。μ-TASは、試料の量が少ない、反応時間が短い、分析に好適であるなどのメリットがあり、これを血液分析等の医療用に利用することが期待される。この場合、血液分析を行うには、前処理として血液中の血球分離を行う必要がある。しかし、マイクロオーダーの流路内にフィルターを製造簡易に設置するのは困難であった。例えば、フィルターに不織布等を流路内に液漏れなく取り付けるのは小さいために難しく、また、コストアップにもなるという問題がある。また、濾過部の最初の部分で血球が詰まりろ過効率が悪くなるという問題もあった。
【0003】
これらの問題を解決するために、特許文献1には、平板状の本体に流体を通す溝部が形成されており、前記溝部の一の端部に流体の入口が形成されており、他の端部に出口が形成されている固液分離機能を有する装置であって、入口が固液混合物を導入する導入口であり、溝中に、一定の大きさ以上の固体を捕捉することにより固液を分離する分離部が形成されており、入口と出口の圧力差により、入口側から出口側に向けて固液混合物が分離部を上流から下流に向けて通過するようにされており、前記分離部には固体捕捉部が複数個設けられており、前記固体捕捉部は、溝部の底部と一定の大きさ以上の固体を通さない隔壁とにより構成されており、一定の大きさ以上の固体の通り得る入り口部と、前記入り口部から入った固体を1個以上収容する収容部と、前記収容部の下流側に設けられた前記固体よりも小さい開口部とを備えていることを特徴とする固液分離機能を有する装置が提案されている。
【0004】
特許文献1の装置においては、分離部の固体捕捉部が設けられた領域は上流側から下流側まで同じ幅になっている。すなわち、特許文献1の図1においては、分離部5の下流部分は徐々に狭くなっているが、これは分離部の固体捕捉部が設けられた領域よりも下流の部分であって、分離部の固体捕捉部が設けられた領域は上流側から下流側まで同じ幅になっている。また、特許文献1の図7においても、分離部の固体捕捉部が設けられた領域である胴部54は上流側から下流側まで同じ幅になっている。また、特許文献1の図8においても同様である。
【0005】
特許文献1の装置は、前記血球が詰まる等の問題点を解決しているが、少量のサンプルで正確な分析を行うために、固液混合物から分離される液体の収集効率が高い固液分離機能を有する装置が求められている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2009-109232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、固液混合物を経路に流入させるだけで、その賦勢された液体の流れにより固体が運ばれ、途中で一定の大きさ以上の固体のみが効率よく捕捉されて分離されるフィルター機能(固液分離機能)を有する製造容易で安価な小型の装置であって、特に分離される液体の収集効率が高く効率的な装置、フィルター機能を有するμ-TAS(マイクロ トータル アナリシス システムズ)デバイス及び固液分離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、一定の大きさ以上の固体を捕捉することにより固液を分離する分離部が設けられた固液分離機能を有する装置であって、入口側から出口側に向けて固液混合物が分離部を上流から下流に向けて通過するようにされており、前記分離部には、一の面と対向する他の面に挟まれた間隙中に固体捕捉部が複数個設けられており、前記固体捕捉部は、前記一の面から前記他の面に向かって伸びる隔壁により形成され、入り口部と、前記入り口部から入った固体を1個以上収容する収容部と、前記収容部の下流側に設けられ前記一定の大きさ以上の固体は通さない開口部とを備えているものであり、前記分離部の固体捕捉部が設けられた領域の幅が上流側に比し下流側の方が狭くなっていることを特徴とする固液分離機能を有する装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記隔壁が柱体列又は壁体からなることを特徴とする請求項1に記載の固液分離機能を有する装置である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記一の面上に前記隔壁が形成されており、前記他の面を構成する材料が前記隔壁を構成する材料よりも軟らかい材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の固液分離機能を有する装置である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記一の面上に前記隔壁が形成されており、前記隔壁を構成する材料が前記他の面を構成する材料よりも軟らかい材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の固液分離機能を有する装置である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記一の面上に前記隔壁が形成されており、前記隔壁と前記他の面との間には、前記他の面を構成する材料及び前記隔壁を構成する材料よりも軟らかい材料からなる緩衝層が配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の固液分離機能を有する装置である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記軟らかい材料はデュロメーター硬さが10~100である樹脂からなることを特徴とする請求項3~5のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記分離部には、上流から下流へと向かう流路が複数設けられ、前記流路に沿って流路に向けて開口した前記固体捕捉部が複数設けられており、前記一の流路と他の流路とが障壁または前記一定の大きさ以上の固体は通さない開口部を有する障壁により画されていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、固体捕捉部が設けられた領域の幅が上流側に比し下流側の方が狭くなっている分離部を一平面上に複数有しており、前記複数の分離部からの液体が合流するようにされていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置である。
【0016】
請求項9に記載の発明は、固体捕捉部が設けられた領域の幅が上流側に比し下流側の方が狭くなっている分離部が複数集まって円状または円弧状を呈しており、円または円弧の中心部に前記複数の分離部からの液体の合流液の排出口が設けられていることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置である。
【0017】
請求項10に記載の発明は、分離部の最下流部が、前記一定の大きさ以上の固体が通過できないようにされていることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置である。
【0018】
請求項11に記載の発明は、前記一の面と対向する他の面に挟まれた間隙が2~6μmであることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置である。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項1~11のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置を一部分として有することを特徴とするμ-TAS(マイクロ トータル アナリシス システムズ)デバイスである。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項1~11のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置を用いて固液を分離する固液分離方法であって、前記分離部として、固液分離しようとする固液分離物に含まれる固体の総体積よりも大きい容積を有する分離部が設けられた固液分離機能を有する装置を準備するとともに、当該固液分離機能を有する装置を用いて固液を分離することを特徴とする固液分離方法である。
【0021】
以下、本発明について詳しく説明する。
請求項1に記載の本発明の固液分離機能を有する装置は、一定の大きさ以上の固体を捕捉することにより固液を分離する分離部が設けられた固液分離機能を有する装置であって、入口側から出口側に向けて固液混合物が分離部を上流から下流に向けて通過するようにされており、前記分離部には、一の面と対向する他の面に挟まれた間隙中に固体捕捉部が複数個設けられており、前記固体捕捉部は、前記一の面から前記他の面に向かって伸びる隔壁により形成され、入り口部と、前記入り口部から入った固体を1個以上収容する収容部と、前記収容部の下流側に設けられ前記一定の大きさ以上の固体は通さない開口部とを備えているものであり、前記分離部の固体捕捉部が設けられた領域の幅が上流側に比し下流側の方が狭くなっていることを特徴とする。
【0022】
本発明でいう固液混合物としては、特に限定されるわけではないが、例えば、血漿と血球を含有する血液が挙げられる。
【0023】
上記発明を図面を参照しつつ説明する。図1(a)は本発明の固液分離機能を有する装置Aの一例を示す一部切り欠き斜視図であり、図1(b)は図1(a)のX-X線断面の要部を示す図であり、図1(c)は図1(a)のY-Y線断面の要部を示す図である。すなわち、本発明の固液分離機能を有する装置Aは、本体1と蓋100とからなる。蓋100は本体1の全面を覆う蓋であるが、図1(a)においては蓋100の一部が切り欠かれて描かれている。図1(a)のY-Y線断面は、固液分離機能を有する装置Aの短手方向を2等分する断面であるが、図1(a)において蓋100の一部が切り欠かれて描かれているため、蓋100の断面になっていないかのように見えるが、本体1が蓋100で覆われた状態のものの短手方向を2等分する断面である。
【0024】
本体1は、平板状の本体1に流体を通す溝部2が形成されており、前記溝部2の一の端部に流体の入口3が形成されており、他の端部に出口4が形成されている。入口3は固液混合物を導入する導入口であり、溝部2の中に、一定の大きさ以上の固体を捕捉することにより固液を分離する分離部5が形成されており、入口側から出口側に向けて固液混合物が分離部5を上流から下流に向けて通過するようにされている。前記分離部5は溝部の底面と蓋の下面との間隙中に形成されており、溝部の底面上に底面に対し垂直方向に伸び、蓋100の下面にその先端が接する壁体にてなる固体捕捉部6,6,6・・・が複数個設けられている。符号10,11で表されるものは、流体の流れる通路である。そして、前記分離部5の固体捕捉部6が設けられた領域(この図の場合は、この領域は分離部5の領域と同じである)の幅が上流側に比し下流側の方が狭くなっている。
【0025】
蓋100には、平板状の板に固液混合物を導入するための蓋入口101と分離後の液体を取り出すための蓋出口102が形成されており、前記入口101は本体1の入口3の真上にあり、前記出口102は本体1の出口4の真上にありそれぞれが連通するようにされている。分離時間を短縮することにより分離効率を上げることができるが、一の面と他の面の液体に対する濡れ性が近い方が分離効率を上げる上で好ましいため、蓋の下面の表面は底面の表面と濡れ性が近い状態にされていることが好ましい。
【0026】
図2は、分離部5の一部を拡大して示すと共に、固液分離の状況を説明する平面図であって、蓋体をとりはずした状態を模式的に示す図である。分離部5には一の面としての溝部2の底面部と対向する他の面としての蓋100の下面とに挟まれた間隙中に固体捕捉部6,6,6・・・が複数個設けられている。固体捕捉部6は、溝部2の底面部と同底面から底面に対し略垂直に立ち上がった隔壁61,61とにより形成されており、一見U字型の形状をしている。固体捕捉部6は、前記隔壁61により形成された、入り口部62と前記入り口部62から入った固体7を1個以上収容する収容部63と前記収容部63の下流側に設けられた前記固体7以上の大きさの固体は通さない開口部64とを備えている。
【0027】
固液分離に際し、固液混合物は矢印で示したように移動し、一定の大きさ以上の固体7は、収容部63に留まり、液体は開口部64から下流に流れるようにされている。言い換えると、対向する面により挟まれた間隙を上流方向から固液混合物が流れ、この間隙中の固体捕捉部(固体7よりも小さい開口部64で下流に流れられなくなるので)により一定の大きさ以上の固体粒子は捕捉され、液体のみが間隙中を下流に流れることになる。また、一つの固体捕捉部では捕捉できる固体粒子の容積が限られるため、多数の固体捕捉部を設けている。
【0028】
なお、図1(b)においては、固体捕捉部6を6個画いているが、個々の固体捕捉部6の中央部に見えるはずの開口部64の描画は省いている。また、固体捕捉部6については、断面の最前列に見えるものだけを描画しており、その後列以降のものは描いていない。しかし、蓋100の出口102と本体の出口4については破線でその位置を示してある。また、図1(c)においては、固体捕捉部6を7個描いているが、断面の最前列に見えるものだけを描画しており、その後列以降のものは描いていない。蓋100の入口101と出口102及び本体の入口3と出口4についてはその位置を正確に描いてある。
【0029】
以下、本発明を説明するための図面中で用いられる符号については、同じ機能を有するものには、紛らわしくならない限りは、原則として同じ符号を用いることにする。
【0030】
上記固体捕捉部6の形状はU字型に限らず、Y字型など種々の形状が可能である。固体捕捉部6の隔壁61は、壁体に開口部64が開口したもの、柱体が列状に並んだ柱体列など種々な形状が可能である。また、捕捉された一定の大きさ以上の固体7が開口部64を塞ぐと流れが途絶え一定の大きさ以上の固体7が再浮遊するため、図3(a)に示すように、開口部64が複数設けられたもの、図3(b)に示すように、隔壁61の内側に突起65が設けられ開口部を塞がないようにしたものなどが好ましい。図3において、矢印は流体の移動方向を示す。
【0031】
また、図3(c)及び図3(d)に示すものは、柱体が列状に並んだ柱体列からなる固体捕捉部6の例である。図3(c)及び図3(d)において、符号66は柱体であり、この柱体66間の隙間が開口部64となる。図3(c)は、柱体列がU字型に並んだ例であり、図3(d)は、柱体列が矩形状に並んだ例である。柱体列からなる固体捕捉部においては、開口部64が多数存在するので、一定の大きさ以上の固体によって開口部が全て塞がれる恐れは少ない。
【0032】
上記装置の大きさとしては、血液から血球を分離して血漿を得る装置として使用する場合の1例を挙げると、分離部5の胴部は縦0.1~10mm、横0.1~10mm、分離部中の固体捕捉部6の高さは4~100μm程度とされる。
【0033】
この装置Aの使用に際して、固液混合物中の液体は入口と出口の間を固体が再浮遊して捕捉部から流出しない程度に実質上続けて流れることが必須である。この移動の推進力としては、入口からの圧力注入、又は、出口からの吸引でもよい。移動速度は、血液から血球を分離する場合は、血球が変形しないように一定の速度にすることが好ましい。
【0034】
また、この装置Aにおいて、対向する面間の閉ざされた間隙内を流体が流れるようにしている理由は、分離すべき固液混合物の前進する推進力にそれぞれの面に対する液体の濡れ性による表面張力が寄与するからである。また、固液混合物を、入口からの圧力注入、又は、出口からの吸引で移動させる場合でも閉じた空間であることが必要だからである。また、固液混合物として血液を扱う場合では、安全衛生上も密閉されていることが好ましいからである。
【0035】
このように、本発明の装置においては、固液混合物の移動経路中に分離部5がある。液体の流れにより浮遊する固体7が移動し、分離部5中に設けられた固体捕捉部6の入り口部62から固液が流入し、前記入り口部62から入った固体を1個以上収容する収容部63に一定の大きさ以上の固体7が捕捉される。そして、収容部63に固体7と一緒に入った液体は、前記収容部63の下流側に設けられた前記一定の大きさ以上の固体は通さない開口部64を通って下流側に流れる。これにより収容部63には一定の大きさ以上の固体7のみが捕捉される。一旦捕捉された一定の大きさ以上の固体が再浮遊しないように収容部63は液体が流れ続けることが必要であり、このため開口部64を捕捉された固体が塞がぬよう、収容部63の下流側の隔壁61の曲率を捕捉される固体の曲率と異なるものにすること、隔壁61に開口部64を複数設けること、隔壁61の内側に突起65を設けること等がなされていることが好ましい。
【0036】
上記収容部63には、1個または複数の一定の大きさ以上の固体を収容する。満杯になっておれば、満杯の収容部は流体抵抗が大きくなり、固液はその収容部に入らず他の収容部を通過し、そこで一定の大きさ以上の固体7が捕捉される。この際、できるだけ、流路抵抗を小さく、分離効率良く、分離部の終端までに完全に一定の大きさ以上の固体7が捕捉されつくすことが必要である。よって分離部における固体捕捉部6の配置が重要になる。
【0037】
本発明においては、前記分離部5の固体捕捉部6が設けられた領域の幅が上流側に比し下流側の方が狭くなっている。このような構成とすることにより、上流部の幅の広いところで多くの固体を捕捉することができ、下流では固体がより少なくなった固液混合物を分離するので、分離部の固体捕捉部が設けられた領域の幅が下流側の方が狭くなっていても、多くの液体を収集することができる。一方、固体捕捉部が設けられた領域が上流側から下流側まで一様の幅である従来のものでは、本発明に比較して幅の狭い上流部で固体が捕捉されると、次に流れてくる固液混合物が詰まり易くなり、液体の下流への流れも減少してくる。したがって本発明のものでは、従来のものに比較し、面積効率よく固液混合物を分離することができると共に液体の収集効率がよい。また、従来の一様の幅のものは分離後の液体を1箇所の出口に集めるのに、例えば、特許文献1の図7の収束部56のようなものが必要だが、本発明では分離部の固体捕捉部の領域自体が下流側の方が狭くなっているので、上記の液体の収束機能を有しているので、収束部を設ける必要がない。したがって、より小さな装置となるので、分離後装置中に付着して残留する無駄な液体の量がより少なくなり、液体の収集効率がよい。
【0038】
この装置Aの使用方法の一例を、血液から血漿を得る際に用いる場合について説明すると、蓋入口101にシリンジの先端を装着し、ピストンによりシリンジ中の血液を注入する。血液は蓋入口101から本体の入口3に注入される。注入血液量としては、装置の大きさによっても変わるが、シリンジを使用する場合は、通常0.1~1マイクロリットル程度でよい。また、蓋入口101に血液を1滴落とし、その一部を本体の入口3を経由させて通路10を通って分離部5に到達させるようにしても良い。この場合は、落とす血液量は、通常1~15マイクロリットル程度である。注入された血液は分離部5で血球が除去され、血漿のみが出口4に集まる。この血漿に試薬導入口から試薬が注入され混合部で混合されるようにされてもよい(試薬導入口、及び混合部は図示せず)。血漿を装置から取り出し、血糖値、PH等を測定してもよいし、出口4に電極等を突き刺し測定してもよいし、予め、出口4に電極を設けておいて検出してもよい。更に分離部を覆う蓋及びまたは本体を透明にしておけば分離部の透過光、反射光から血球の捕捉状況を光学特性としてヘマトクリット値相当値を測定することもできる。
【0039】
請求項2に記載の本発明の固液分離機能を有する装置は、請求項1に記載の固液分離機能を有する装置において、前記隔壁が柱体列又は壁体からなることを特徴とするものである。上記の柱体列又は壁体については、請求項1の説明の中で述べた通りである。特に隔壁が柱体列である場合は、固体捕捉部に開口部が多数存在するので、一定の大きさ以上の固体によって開口部が全て塞がれる恐れが少なくなるので、固液混合物の分離がより容易となる。
【0040】
請求項3に記載の本発明の固液分離機能を有する装置は、請求項1又は2に記載の固液分離機能を有する装置において、前記一の面上に前記隔壁が形成されており、前記他の面を構成する材料が前記隔壁を構成する材料よりも軟らかい材料からなることを特徴とするものである。
【0041】
請求項4に記載の本発明の固液分離機能を有する装置は、請求項1又は2に記載の固液分離機能を有する装置において、前記一の面上に前記隔壁が形成されており、前記隔壁を構成する材料が前記他の面を構成する材料よりも軟らかい材料からなることを特徴とするものである。
【0042】
請求項5に記載の本発明の固液分離機能を有する装置は、請求項1又は2に記載の固液分離機能を有する装置において、前記一の面上に前記隔壁が形成されており、前記隔壁と前記他の面との間には、前記他の面を構成する材料及び前記隔壁を構成する材料よりも軟らかい材料からなる緩衝層が配設されていることを特徴とするものである。
【0043】
請求項6に記載の本発明の固液分離機能を有する装置は、請求項3~5のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置において、前記軟らかい材料はデュロメーター硬さが10~100である樹脂からなることを特徴とするものである。
【0044】
上記請求項3~請求項6に記載の発明について説明する。 本発明の固液分離機能を有する装置において、隔壁を構成する例えば柱体列又は壁体の先端の先とその接する対向面との間隔は分離すべき固体粒子の通過を防ぐようにされていなければならない。例えば、分離すべき固体粒子が球体であれば、その間隔は固体粒子の直径以下で無ければならないし、扁平な円板のようなものであれば、その円板の厚み以下でなければならない。しかるに本装置の製造上、隔壁を構成する例えば柱体列又は壁体が生えた物体と、柱体列又は壁体の先端が接する相手の物体は通常別個に製造されるため、装置の製造に際して、先端が接するように物体間に適切な間隔を保ち組み立てることが好ましい。微小な固体を分別捕捉すべき場合においては特に先端の接するべき物体の面精度、すなわち平面性と面粗度が問題になる。したがって、柱体列又は壁体の先端が接する相手の物体は、成形上のひけ等による寸法誤差を吸収できる構造にしておくことが好ましい。そのために、前記他の面を構成する材料は、前記隔壁を構成する材料よりも軟らかい材料からなることが好ましい。なお、本発明においては、隔壁を構成する材料が、前記他の面を構成する材料よりも軟らかい材料からなっていてもよいし、前記隔壁と前記他の面との間に、前記他の面を構成する材料及び前記隔壁を構成する材料よりも軟らかい材料からなる緩衝層が配設されていてもよい。
【0045】
隔壁を構成する例えば柱体列又は壁体の先端が組み立て時に相手の物体の面に当たって折れてはならず、また隙間が開きすぎてはならない。隔壁を構成する例えば柱体列又は壁体は、通常底面等を構成する物体上に伸びて構築されるため、隔壁を構成する例えば柱体列又は壁体またはそれらを有する物体は、柔軟性を有する材料であることが好ましい。例えば、硬化性の樹脂が用いられる場合では硬化後においても硬度の低いものが好ましい。このような硬化性の樹脂の例としては、ジメチルシリコーン樹脂が挙げられる。
【0046】
一方、材料の選定上、隔壁を構成する例えば柱体列又は壁体、並びに隔壁を構成する例えば柱体列又は壁体またはそれらを有する物体を硬度の高い樹脂で製造する場合においては、隔壁を構成する例えば柱体列又は壁体の先端が接する物体の面は、当然、前記隔壁を構成する材料よりも軟らかい材料からなることが好ましい。
【0047】
隔壁を構成する例えば柱体列又は壁体の先端が、対向する物体の面に当たって折れる恐れが少なくなると共に、また、対向する面により密着し易くなるという理由から、隔壁を構成する物体の対向する面を構成する材料はデュロメーター硬さが10~100、好ましくは10~60、より好ましくは20~50である樹脂からなることが好ましい。 また、隔壁を構成する物体を硬度の高い樹脂で製造する場合には、隔壁を構成する物体の先端が接する物体の面には、隔壁を形成する材料よりも更に軟らかい材料による被覆塗膜を形成するか、あるいは膜厚数μm~数百μm、好ましくは4μm~数十μm厚のフィルムを挟み込むことが好ましい。
【0048】
また、隔壁の先端の接する物体は、接着性又は微粘着性を有することが好ましい。ただし、分離しようとする固体(例えば、血球)とは非接着性であることが好ましい。
【0049】
請求項7に記載の本発明の固液分離機能を有する装置は、請求項1~6のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置において、前記分離部には、上流から下流へと向かう流路が複数設けられ、前記流路に沿って流路に向けて開口した前記固体捕捉部が複数設けられており、前記一の流路と他の流路とが障壁または前記一定の大きさ以上の固体は通さない開口部を有する障壁により画されていることを特徴とするものである。
【0050】
上記請求項7記載の本発明を図面を参照しつつ説明する。図4は本発明で用いられる一つの流路9の一例を模式的に示す平面図である。本発明においては、このような流路9が分離部に複数設けられている。図4において、流路9は他の流路と障壁91によって画されている。障壁91は開口部を有さなくて良いし、または前記一定の大きさ以上の固体は通さない開口部を有していても良い。障壁91は、一定の大きさ以上の固体を通さなければよく、壁体又は柱体列のいずれかで作製されていることが好ましい。図4は、障壁91が柱体66からなる柱体列によって作製されている例である(なお、図4においては、障壁91が柱体66からなる柱体列によって作製されていることを示すために、複数(4本)の柱体66からの引出線を1つの符号91に結び付けるように描いてある)。障壁91が開口部を有さない場合は、一つの流路と隣接する他の流路との間で固液混合物中の液体の移動は起こらないが、障壁91が前記一定の大きさ以上の固体は通さない開口部を有している場合は、隣接する他の流路との間で固液混合物中の液体の移動が起こる。いずれにせよ、一つの流路と隣接する他の流路との間で上記開口部よりも大きい固体の移動は起こらない。
【0051】
上記障壁91を柱体列で作製し、この装置を血液から赤血球を分離して血漿を得る装置として使用する場合の1例を挙げると、赤血球が厚み約2.5μm、直径約8μmの円板状であるので、柱体間の間隔(内法)は0.8~2μm、柱体の高さは10μm程度とすることが好ましい。
【0052】
さらに、前記流路9に沿って流路9に向けて開口した前記固体捕捉部6が複数設けられている。この場合、流路9に沿って設けられる固体捕捉部6は、固体を捕捉するための開口は、流路9の上流又は上流に近い方向に向いていることが固体捕捉の効率が高まるため好ましい。図4においては、固体捕捉部6はその隔壁が柱体66からなる柱体列によって作製されている例であるが、図2、図3(a)又は図3(b)に示したような壁体によって作製されてもよい。
【0053】
次に、この流路9に固液混合物を入れて固液分離する過程を説明する。固液混合物は流路入口92から入り、液体は図の右下方向に流れるが、固体は障害を受けてaで示す経路に沿ってジグザグ状に進行する。そして、進行方向正面に固体捕捉部6の開口があるところで、固体の一部が図中に示したb方向、又はc方向に進んで固体捕捉部6に入り、その収容部に一定の大きさ以上の固体7が捕捉され、収容部に固体と一緒に入った液体は、前記収容部の下流側に設けられた前記一定の大きさ以上の固体は通さない開口部を通って下流側に流れる。これにより収容部には一定の大きさ以上の固体のみが捕捉される。
【0054】
一旦捕捉された一定の大きさ以上の固体が再浮遊しないように収容部には液体が流れ続けることが必要である。固液混合物の一部が固体捕捉部に入った際に、収容部が固体で満杯になっておれば、満杯の収容部は流体抵抗が大きくなり、固液はその収容部に入らず又は入りにくくなり流路に沿ってジグザグに進行し、より下流側で、進行方向正面に固体捕捉部6の開口があるところで、固液混合物の一部がb方向、又はc方向に進んで固体捕捉部6に入り、その収容部に固体7が捕捉され、収容部に固体と一緒に入った液体は、前記収容部の下流側に設けられた前記一定の大きさ以上の固体は通さない開口部を通って下流側に流れる。
【0055】
このような、過程を繰り返すことにより、固体が分離され流路9の流路出口93においては液体(及び、分離しようとする固液混合物中に上記収容部の下流側の開口部よりも小さい固体があれば、そのものも含まれる)のみが流れることになる。固体捕捉部6の収容部の下流側開口部からでた液体は、他の部分から流れてくる液体と合流し出口方向に流れる。固体捕捉部6の配置は限定されないが、面積効率を上げるためには、流路の両側に規則的に配置されていることが好ましく、又固体捕捉部6同士も隣接していることが好ましい。
【0056】
本発明の固液分離機能を有する装置においては、このような流路9が分離部に複数設けられている。さらに、前記分離部の固体捕捉部が設けられた領域の幅が上流側に比し下流側の方が狭くなっている。このような固液分離機能を有する装置の本体側の装置Bの平面図を図5に示した(なお、真の固液分離機能を有する装置は、前記本体側の装置Bと例えば図1に示したような蓋とからなる)。この装置Bは、平板状の本体1に流体を通す溝部2が形成されており、前記溝部2は、流体の入口3、分離部5、出口4及び通路10,11から構成されている。分離部5は、内部に柱体66列からなる固体捕捉部が多数設けられた胴部54(なお、胴部54中に設けられた柱体66列は、模式的に描いたものであり、真の柱体66列を表したものではない。したがって、この柱体66列からなる固体捕捉部も図5からは分からない。真の柱体66列は、後述の図6に図示する)からなるが、この他に通路10からの固液混合物を拡散するための固液混合物拡散部51、胴部54で万一捕捉しきれずにたどりついた一定の大きさの以上の固体を通さないための完全捕捉部55が設けられていることが好ましい。
【0057】
上記固液混合物拡散部51は、水平断面が三角形状の空間部であり、その中に水平断面が菱形の柱状妨害体52が多数設けられている。
【0058】
上記の胴部54は、水平断面が三角形状の空間部であり、図5の胴部と完全捕捉部が位置している部分を拡大して示した図6に見られるように、その中に柱体66,66,66
・・・から構成された固体捕捉部6,6,6・・・が多数設けられている。上記完全捕捉部55は、水平断面が台形状の空間部であり、図6に見られるように、その中に柱体間の間隔が捕捉しようとする固体を通さないように、捕捉しようとする固体より小さくされた柱体列が設けられている。図6において、分離しようとする固液混合物は矢印方向に流される。なお、図6において、本発明でいう分離部の固体捕捉部が設けられた領域とは、胴部54を指す。
【0059】
また、この図5からは分からないが、入口3、分離部5内の固液混合物拡散部51、出口4及び通路10,11の深さは、分離部5内の胴部54及び完全捕捉部55の深さよりも深くされている。
【0060】
なお、上記のように、深さを変えたもののうち、特に、入口3と分離部5とを結ぶ通路10と分離部5内の固液混合物拡散部51とを深くし、分離部5内の胴部54の深さを浅くした理由は以下の通りである。通路10は固体を含む粘性液体を流すにあたり、スムーズな流れを得、かつ流路抵抗を増加させないためには、適度の通路断面積を必要とするため、例えば、通路幅100μm、通路深さ30μmとすることができる。これに対し分離部5内の胴部54は固体(例えば、赤血球)の分離を主目的とするために深さを例えば、10μmと浅くし、胴部幅を使用目的に合わせて拡大した。このために、分離部の胴部直前までは流路を深くして流路抵抗を下げ、胴部において深さを浅くする構造を採用することができる。
【0061】
なお、請求項7に記載の本発明の固液分離機能を有する装置においても、請求項1に記載の本発明の固液分離機能を有する装置の場合と同様の特徴を有することが好ましい。
【0062】
すわなち、前記固体捕捉部及び障壁が柱体列により構成されていることが好ましい。柱体列により構成されている固体捕捉部及び障壁については、上記請求項7の説明の中で述べた通りであり、柱体列により構成されている固体捕捉部及び障壁には開口部が多数存在するので、一定の大きさ以上の固体によって開口部が全て塞がれる恐れが少なくなり、固液混合物の分離がより容易となる。
【0063】
また、前記一の面上に前記固体捕捉部及び障壁が形成されており、前記他の面を構成する材料が前記固体捕捉部及び障壁を構成する材料よりも軟らかい材料からなることが好ましい。
【0064】
また、前記他の面を構成する材料はデュロメーター硬さが10~100である樹脂からなることが好ましい。
【0065】
上記特徴について説明する。
本発明の固液分離機能を有する装置において、固体捕捉部及び障壁を構成する例えば柱体列又は壁体の先端の先とその接する対向面との間隔は分離すべき固体粒子の通過を防ぐようにされていなければならない。しかるに本装置の製造上、固体捕捉部及び障壁を構成する例えば柱体列又は壁体が生えた物体と、柱体列又は壁体の先端が接する相手の物体は通常別個に製造されるため、装置の製造に際して、先端が接するように物体間に適切な間隔を保ち組み立てることが好ましい。微小な固体を分別捕捉すべき場合においては特に先端の接するべき物体の面精度、すなわち平面性と面粗度が問題になる。したがって、柱体列又は壁体の先端が接する相手の物体は、成形上のひけ等による寸法誤差を吸収できる構造にしておくことが好ましい。そのために、前記他の面を構成する材料は、前記固体捕捉部及び障壁を構成する材料よりも軟らかい材料からなることが好ましい。
【0066】
固体捕捉部及び障壁を構成する例えば柱体列又は壁体の先端が組み立て時に相手の物体の面に当たって折れてはならず、また隙間が開きすぎてはならない。固体捕捉部及び障壁を構成する例えば柱体列又は壁体は、通常底面等を構成する物体上に伸びて構築されるため、固体捕捉部及び障壁を構成する例えば柱体列又は壁体またはそれらを有する物体は、柔軟性を有する材料であることが好ましい。例えば、硬化性の樹脂が用いられる場合では硬化後においても硬度の低いものが好ましい。このような硬化性の樹脂の例としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が挙げられる。
【0067】
一方、材料の選定上、固体捕捉部及び障壁を構成する例えば柱体列又は壁体、並びに固体捕捉部及び障壁を構成する例えば柱体列又は壁体またはそれらを有する物体を硬度の高い樹脂で製造する場合においては、固体捕捉部及び障壁を構成する例えば柱体列又は壁体の先端が接する物体の面は、当然、前記柱体列又は壁体を構成する材料よりも軟らかい材料からなることが好ましい。
【0068】
固体捕捉部及び障壁を構成する例えば柱体列又は壁体の先端が、対向する物体の面に当たって折れる恐れが少なくなると共に、また、対向する面により密着し易くなるという理由から、固体捕捉部及び障壁を構成する物体の対向する面を構成する材料はデュロメーター硬さが10~100、好ましくは10~60、より好ましくは20~50である樹脂からなることが好ましい。 また、固体捕捉部及び障壁を構成する柱体列又は壁体あるいはそれらを有する物体を硬度の高い樹脂で製造する場合には、柱体列又は壁体の先端が接する物体の面には、柱体列又は壁体を形成する材料よりも軟らかい材料による被覆塗膜を形成するか、あるいは膜厚数μm~数百μm、好ましくは4μm~数十μm厚のフィルムを挟み込むことが好ましい。
【0069】
また、固体捕捉部及び障壁を構成する例えば柱体列又は壁体の先端の接する物体は、接着性又は微粘着性を有することが好ましい。ただし、分離しようとする固体(例えば、血球)とは非接着性であることが好ましい。
【0070】
本発明の固液分離機能を有する装置を製造する方法は、限定されるわけではないが、例えば、特許文献1に記載されているようなフォトリソグラフィープロセスを製造工程の一部に用いる方法が挙げられる。
【0071】
例えば、図5及び6に示した固液分離機能を有する装置の本体側の装置Bを製造する場合を例に、フォトリソグラフィープロセスによる製造について図7を参照しながら説明する。図7の中央部の1、2、3、4および5の説明は、この装置を製造する際の工程を記したものである。上記の各工程における通路10とその近辺の状態を示す模式的な断面図(図5に示したE-E線断面図)を図内の右側に示し、分離部5の胴部54とその近辺の状態を示す模式的な断面図(図5に示したF-F線断面図)を図内の左側に示した。なお、通路10とその近辺の状態を示す模式的な断面図においては、各層の名称が記載されていないが、その各層の名称は、対応する、分離部5の胴部54とその近辺の状態を示す模式的な断面図に記載された名称とそれぞれ同じである。
【0072】
工程1は、レジスト塗布工程であり、ガラス基板上にフォトレジスト第1層を塗布する工程である。これにより、図7でみると、通路10、分離部5の胴部54を含む、ガラス基板上の全てにフォトレジスト第1層が積層されている。
【0073】
工程2は、露光工程1である。この工程は、入口3;分離部5内の固液混合物拡散部51の菱形の柱状妨害体52以外の部分;出口4及び通路10,11をマスクして露光する工程である。上記の部分のみに光が当たらないようなフォトマスクを、上記のフォトレジスト第1層に載せた状態でUV光を照射する。これにより、上記部分以外が感光される。図7でみると、通路10はUV光がマスクされた状態で露光されるので感光されず、通路10の外側の本体部分が感光される。また、分離部5の胴部54はUV光がマスクされない状態で露光されるので感光される。
【0074】
工程3は、フォトレジスト第1層の上にフォトレジスト第2層を塗布する工程である。これにより、図7でみると、通路10、分離部5の胴部54を含む、フォトレジスト第1層が積層された層の全てにフォトレジスト第2層が積層されている。
【0075】
工程4は、露光工程2である。この工程は、入口3;分離部5内の固液混合物拡散部51の柱状妨害体52以外の部分;分離部5内の胴部54の柱体列以外の部分;分離部5内の完全捕捉部55の柱体列以外の部分;出口4及び通路10,11をマスクして露光する工程である。上記の部分のみに光が当たらないようなフォトマスクを、上記のフォトレジスト第2層に載せた状態でUV光を照射する。これにより、上記部分以外が感光される。図7でみると、通路10はUV光がマスクされた状態で露光されるので感光されず、通路10の外側の本体部分が感光される。分離部5の胴部54では柱体列以外の部分ではUV光がマスクされた状態で露光され、これにより、上記のUV光がマスクされた部分以外、すなわち、柱体列部分が感光される。
【0076】
工程5は、現像工程である。現像により上記のUV光がマスクされた部分のフォトレジスト層が溶解される。これにより、図5に示した固液分離機能を有する装置の本体側の装置Bが得られる。図7でみると、フォトレジスト第1層とフォトレジスト第2層が積層された硬化物からなる本体部の間に、ガラス基板を内底面とする通路10が形成されている。分離部5の胴部54では、フォトレジスト第1層の硬化物の上に、フォトレジスト第2層の硬化物からなる柱体列が形成されており、胴部54の外側には、フォトレジスト第1層とフォトレジスト第2層が積層された硬化物からなる本体部が形成されている。
【0077】
尚、他の製造方法としてフォトリソグラフィーにより本体の形状を形成し、これを型とし、あるいはニッケル燐等による無電解メッキを行うことによって型とし、型中に液状の未硬化のモノマー、オリゴマー、樹脂等を注入し、熱、放射線等により硬化させることによって本体を作製することもできる。また、熱可塑性樹脂による射出成形によっても製造できる。
【0078】
また、一方、金属型材料に直接リソグラフィー法により電鋳するLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)法(この方法によると、厚さ100 μm以上のレジスト(感光性有機材料)に直進性の良いシンクロトロン放射(SR)光装置から発生するX線を用い、X線マスクを介してパターンを転写することにより、100μm以上の深さ(高さ)で横方向に任意の形状を持った超精密部品の製造が可能である)にて、例えば柱列の柱を形成するためのアスペクト比の高い深孔を有する型を直接製造し、型に未硬化のモノマー、オリゴマー、樹脂等を注入し、熱、放射線等により硬化させ取り出すことにより本体を作製することもできる。また、熱可塑性樹脂による射出成形によっても製造できる。このようにすれば量産性よく生産することができるため好適である。
【0079】
なお、蓋は熱可塑性樹脂による射出成形などによって製造できる。
【0080】
請求項8に記載の発明は、請求項1~7のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置の発明において、固体捕捉部が設けられた領域の幅が上流側に比し下流側の方が狭くなっている分離部を一平面上に複数有しており、前記複数の分離部からの液体が合流するようにされていることを特徴とする。
【0081】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1~8のいずれかに記載の固液分離機能を有する装置において、固体捕捉部が設けられた領域の幅が上流側に比し下流側の方が狭くなっている分離部が複数集まって円状または円弧状を呈しており、円または円弧の中心部に前記複数の分離部からの液体の合流液の排出口が設けられていることを特徴とする。
【0082】
図8は、請求項8又は9に記載された発明における、固体捕捉部が設けられた領域の幅が上流側に比し下流側の方が狭くなっている複数の分離部5,5・・・と、複数の分離部の間の仕切り部56,56・・・と、複数の分離部からの液体が合流する合流部57との例を説明するための平面図である。なお、図8の各図において、分離部5の中に実際には固体捕捉部が多数見えるのであるが、その描画は省略してある。各々の分離部5,5・・
・は、仕切り部56,56・・・によって区分されている。隣り合う分離部5,5・・・を仕切っている仕切り部56,56・・・の間には、図8(a)に示すように何もない空間が存在しても良いし、図8(b)、図8(c)、図8(d)及び図8(e)に示すように、隣り合う分離部5,5・・・が、共通の仕切り部56,56・・・によって区分されていても良い。
【0083】
図8(a)のように、隣り合う分離部の間に何もない空間が存在すると、強度が低下する恐れがあるので、その空間部を埋めて強度を向上させてもよいし、その埋めた部分に分離以外の機能、例えば貯液タンクのような別機能物を存在させることも可能である。共通の仕切り部56,56・・・によって区分されている場合は、装置がよりコンパクトになるという利点がある。言い換えると、分離部が隣接している方が分離における面積効率が良く、強度面からも好ましい。
【0084】
各々の分離部5,5・・・と仕切り部56,56・・・とから構成される全体の平面図の形状としては、特に限定されるわけではないが、例えば円状、円弧状、多角形状などが挙げられる。固液混合物が分離部を流れ分離された液体が合流部に至る時間は各分離部毎に等しいことが好ましい。このため多角形状のものとしては正多角形が好ましい。また辺の数は限られない。したがって例えば図8(c)に示すような正8角形のものばかりでなく、正4角形、正5角形、正6角形、正7角形、・・・等のものが挙げられる。
【0085】
上記の円状の例には図8(b)に示すようなものが挙げられ、上記円弧状のものとしては図8(d)に示す楕円形のもの、図8(e)に示す陸上競技用トラックに似た形状のもの等が挙げられる。円状、円弧状のものは分離部を流れ合流部に至る時間は各分離部毎に略等しい時間となることの他にも、製造、流通、μ-TASに組み込むあるいは外す時等に動的外力を受けるが、その際に一部に応力が集中しにくいため壊れにくく、かつμ-TASに組み込む時に液漏れしにくい構造にしやすいため特に好ましい。
【0086】
複数の分離部からの液体が合流する合流部57の形状は、特に限定されず、例えば、円形、多角形などが挙げられる。
【0087】
複数の分離部からの液体が合流するに際して、各分離部の分離状況が類似している方が得られる液体がより均一になり易い。そのため、各分離部は類似した構造であることが好ましい。
【0088】
固体捕捉部が設けられた領域の幅が上流側に比し下流側の方が狭くなっている分離部が複数集まって円状または円弧状を呈しており、円または円弧の中心部に前記複数の分離部からの液体の合流液の排出口が設けられていると、装置がコンパクトになり得るので特に好ましい。
【発明の効果】
【0089】
請求項1に記載の発明によれば、固液混合物を経路に流入させるだけで、その賦勢された液体の流れにより固体が運ばれ、途中で一定の大きさ以上の固体のみ捕捉され液体及び所定の大きさよりも小さい固体が出口に到達し、且つ流入固液混合物に対し得られる液体の割合が高い。このように、電場が不要のため、電極、電圧装置が不要となり、小型化でき得、製造容易となり低価格となる。また、分離も早い。
【0090】
更に、分離部の固体捕捉部が設けられた領域の幅が上流側に比し下流側の方が狭くなっているので、上流部の幅の広いところで多くの固体を捕捉することができ、下流では固体がより少なくなった固液混合物を分離するので、分離部の固体捕捉部が設けられた領域の幅が上流側に比し下流側の方が狭くなっていても、多くの液体を収集することができる。一方、固体捕捉部が設けられた領域が上流側から下流側まで一様の幅である従来のものでは、本発明に比較して幅の狭い上流部で固体が捕捉されると、次に流れてくる固液混合物が詰まり易くなり、液体の下流への流れも減少してくる。
【0091】
したがって本発明のものでは、従来のものに比較し、面積効率よく固液混合物を分離することができると共に液体の収集効率がよい。また、従来の一様の幅のものは分離後の液体を1箇所の出口に集めるのに、例えば、特許文献1の図7の収束部56のようなものが必要だが、本発明では分離部の固体捕捉部の領域の幅自体が下流側の方が狭くなってゆくので、上記の液体の収束機能を有しているので、収束部を設ける必要がない。したがって、より小さな装置となるので、分離後装置中に付着して残留する無駄な液体の量がより少なくなり、液体の収集効率がよい。
【0092】
請求項2に記載の発明によれば、上記請求項1と同様な効果を奏するが、特に隔壁が柱体列である場合は、固体捕捉部に開口部が多数存在するので、一定の大きさ以上の固体によって開口部が全て塞がれる恐れが少なくなるので、固液混合物の分離がより容易となる。
【0093】
請求項3~6に記載の発明によれば、組み立て中あるいは組み立て後において、寸法の誤差により所定の間隔よりも狭くなっても、隔壁を構成する例えば柱体列又は壁体の先端が、対向する物体の面に当たって折れる恐れが少なくなると共に、また、対向する面により密着し易くなるという効果がある。
【0094】
請求項4に記載の発明によれば、スタンピング法によって隔壁構造を作製する場合には、隔壁構造を型から抜く作業をスムーズに歩留まりよく行うことができるという効果もある。
【0095】
請求項7に記載の発明によれば、上記請求項1~6のいずれかの発明と同様な効果を奏するが、特に、流路が柱体列からなる場合は、流路中に開口部が多数存在するので、一定の大きさ以上の固体によって開口部が全て塞がれる恐れが少なくなるので、固液混合物の分離がより容易となる。
【0096】
請求項8に記載の発明によれば、上記請求項1~7のいずれかの発明と同様な効果を奏すると共に、更に、複数の分離部からの液体が合流するようにされているため、一度により多くの液体が得られるので、得られた液体の分析などの処理により都合良くなる。
【0097】
請求項9に記載の発明によれば、上記請求項1~8のいずれかの発明と同様な効果を奏すると共に、更に、固体捕捉部が設けられた領域の幅が上流側に比し下流側の方が狭くなっている分離部が複数集まって円状または円弧状を呈しており、円または円弧の中心部に前記複数の分離部からの液体の合流液の排出口が設けられているため、分離時の装置の面積効率がより一層高まり、より一層コンパクト化且つ小型化できる。また、液体をより一層効率よく収集できる。また、合流液の排出口に得られた液体の分析のための装置をつなげればより効率よく分析できる。
【0098】
請求項10に記載の発明によれば、上記請求項1~9のいずれかの発明と同様な効果を奏すると共に、更に、分離部での分離が完全となる。
【0099】
請求項11に記載の発明によれば、形状異方性を有する固体(例えば赤血球)が、間隙に沿った方向に長手方向を向けた姿勢を取り難くなるため、隔壁の開口部や柱状体の隙間をすり抜けることがなくなり、分離部での分離がより一層完全となる。
【0100】
請求項12に記載の発明によれば、より効率よく固体を分離した液体をより多く得ることができるフィルター機能を有するμ—TASを得ることができる。
【0101】
請求項13に記載の発明によれば、固液混合物から分離された固体が分離部で詰まってしまうという事態の発生を極力防止することができるようなる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1(a)は本発明の固液分離機能を有する装置Aの一例を示す一部切り欠き斜視図であり、図1(b)は図1(a)のX-X線断面の要部を示す図であり、図 1(c)は図1(a)のY-Y線断面の要部を示す図である。
【図2】分離部の一部を拡大して示すと共に、固液分離の状況を説明する平面図であって、蓋体をとりはずした状態を模式的に示す図である。
【図3】固体捕捉部の例を示す平面図である。
【図4】本発明で用いられる一つの流路の一例を模式的に示す平面図である。
【図5】本発明の固液分離機能を有する装置の本体側の装置の一例を示す平面図である。
【図6】図5の胴部と完全捕捉部が位置している部分を拡大して示した図である。
【図7】固液分離機能を有する装置の製造方法の一例を説明するための断面図である。
【図8】固体捕捉部が設けられた領域の幅が上流側に比し下流側の方が狭くなっている複数の分離部と、複数の分離部の間の仕切り部と、複数の分離部からの液体が合流する合流部との例を説明するための平面図である。
【図9】図9(a)は、固液分離機能を有する装置Cが組み込まれるμ-TASデバイス本体の平面図であり、図9(b)は、そのG-G線断面図である。
【図10】図10(a)は、フィルター素子の平面図であり、図10(b)は、その正面図、図10(c)は、その下面図、図10(d)は図10(a)のH-H線断面図である。
【図11】図11(a)は、蓋体の平面図であり、図11(b)はその正面図、図1 1(c)はその下面図、図11(d)は図11(a)のI-I線端面図である。
【図12】図12(a)は、固液分離機能を有する装置Cが組み込まれたμ-TASデバイス本体の平面図であり、図12(b)は拡大して示すそのJ-J線断面図である。
【図13】図13(a)は、別の蓋体の平面図であり、図13(b)はその正面図、図13(c)はその下面図、図13(d)は、図13(a)のK-K線断面図である。
【図14】図14(a)、図14(b)、図14(c)はそれぞれ別の蓋体における、図12(b)におけるJ-J線断面図に相当する断面図である。それぞれの図において、フィルター素子のフィルター部分の描画は省略してある。
【図15】図15(a)は、ガラス基板の下面からUV光で露光して血液フィルター本体を形成させた状態のものの、フィルター部分を含む断面の要部を拡大して示した模式的な断面図である。図15(b)は血液フィルター本体の平面図である。図15(c)は図15(b)の血液フィルター本体をd-d線に沿って長さ方向に半分に割って得られた血液フィルター本体の半分の平面図である。図15(d)は図15(b)のd-d線断面図である。
【図16】図16(a)は、長さ方向に半分に割って得られた血液フィルター本体の半分のものの上に、PDMSフィルムを、血液フィルター本体のフィルター部分が形成されている方の端部から100μmだけ奥側に入った位置に、PDMSフィルムの端部が重なるように載せた状態を示す平面図である。図16(b)は、図16(a)の正面図であり、図16(c)は図16(b)のc-c線断面の要部を示す断面図である。
【図17】実験試料を顕微鏡観察して得られた顕微鏡写真である。
【図18】図6に示す固液分離機能を有する装置により血液から赤血球成分と血漿成分とを分離する様子を示す顕微鏡写真である。
【図19】図18を部分的に拡大して示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0103】
本発明の発明を実施するための形態の一例を図面に基づいて説明する。この例においては、固液分離機能を有する装置Cは、図12に示すように、μ-TAS(マイクロ トータル アナリシス システムズ)デバイスの装置本体21に組み込まれて使用される。この装置Cについて、その製造方法の1例と共に説明する。

【0104】
図9(a)は、固液分離機能を有する装置Cが組み込まれるμ-TASデバイス本体21の平面図であり、図9(b)は、そのG-G線断面図である。μ-TASデバイス本体21には、円筒状の窪み22が穿たれている。この窪み22の内径をM、深さをNとする。窪み22の内底面には、中央部から円周部まで連なる排出溝23が少なくとも1つは形成されている。後述のように、分離された液体はこの排出溝23を通って排出される。

【0105】
固液分離機能を有する装置Cは、μ-TASデバイス本体21の円筒状の窪み22に、後述のように、まずフィルター素子が嵌め込まれ、次いで、フィルター素子上に蓋体が嵌め込まれることにより組み立てられる。

【0106】
図10(a)は、フィルター素子24の平面図であり、図10(b)は、その正面図、図10(c)は、その下面図、図10(d)は図10(a)のH-H線断面図である。フィルター素子24は、フィルター素子基体25と、その下面から下方に向けて垂設された多数の柱体66から形成されたフィルター部26とからなる(なお、図10(b)及び図10(d)において、個々の柱体66は模式的に表わされている)。

【0107】
フィルター素子基体25は、円板251とその周囲の12ケ所に30度の間隔で設けられた側面リブ252,252・・・とからなる。側面リブ252は、μ-TASデバイス本体21の円筒状の窪み22に、フィルター素子24が嵌め込まれる際に、フィルター素子24が円筒状の窪み22に密着して動かないように取り付けられ得るように設けられたものであり、円板251と側面リブ252の合計の直径は、上記窪み22の内径Mに等しいか、又は、取り付け時に押し込むことにより僅かに変形して固定できる程度に僅かに大きくされている。

【0108】
フィルター部26には、図10(c)に見られるように、45度の間隔を空けて合計5ケの仕切り板27,27・・・と、1ケの約四分の一の円に相当する広い仕切り板271が設けられている。そして、隣り合う仕切り板27,27で画される約八分の一円部分に、図6に示したような、多数の柱体66,66,66・・・から構成された固体捕捉部6,6,6・・・が多数設けられてなる分離部5の胴部54と、柱体列からなる完全捕捉部55とが設けられている(図10(c)において、個々の柱体66は、便宜上、点で模式的に表わされており、点の分布密度が胴部54よりも完全捕捉部55の方が高められている)。ただし、このフィルターのうち、μ-TASデバイス本体21の円筒状の窪み22に、フィルター素子24が嵌め込まれた際に、窪み22の内底面に設けられた排出溝23の上部に位置するフィルター部には、上記の分離部を設けない。上記仕切り板27の高さは,柱体66の長さと等しいか、又は、それより僅かに低くされる。また、図10(d)から分かるように、フィルター部26の中央部は、円筒状の空間28にされている。

【0109】
なお、血液から血球を分離して血漿を得るために本装置Cを使用する際に、分離部5の胴部54と完全捕捉部55を構成する柱体66列の寸法の一例を示すと以下の通りである。

【0110】
分離部5内の胴部54の柱体66列:3.4μm×3.4μm×高さ10μmの4角柱からなる柱体66からなる列。 分離部5内の障壁が柱体66列からなる流路の幅:7μm。 上記障壁の隣り合う柱体66間の間隔:0.86μm。 分離部5内の固体捕捉部の隔壁を形成する隣り合う柱体間の間隔:0.86μm。 分離部5内の固体捕捉部:形状は矩形とし、入り口部の柱体間の間隔は7μm、幅は12μm、奥行き12μm。 分離部5内の完全捕捉部55の柱体列:3.4μm×3.4μm×高さ10μmの4角柱からなる柱体からなる列とし、隣り合う柱体間の間隔は0.86μm。

【0111】
フィルター素子24の製造方法は、限定されるわけではないが、例えば、フォトリソグラフィープロセスを含む方法、又は、フォトリソグラフィーにより本体の形状を形成し、これを型とし、あるいはニッケル燐等による無電解メッキを行うことによって型とし、型中に液状の未硬化のモノマー、オリゴマー、樹脂等を注入し、熱、放射線等により硬化させる方法などによって作製することができる。また、熱可塑性樹脂による射出成形によっても製造できる。

【0112】
本実施形態の場合は、フィルター素子24の製造方法は以下のフォトリソグラフィー工程にて作製した。

【0113】
1)フォトレジストレジスト第1層塗布工程 定法により洗浄した厚み1mmのガラス基板上にフォトレジスト第1層を塗布する。 レジストとしては、アクリル系の厚膜レジストである商品名SU-8(化薬マイクロケム株式会社製)を使用し、スピンコーター(ミカサ株式会社製、型式MS-A100)にて、約10μmの厚さに塗布した。
2)プリベーク ホットプレート上で、65℃で4分、95℃で7分間加熱することによりプリベークした。これにより、フォトレジスト中に含まれる溶剤を蒸発させた。

【0114】
3)露光工程1 UV光を照射条件5~10mj/cm2で照射した。これにより、フォトレジスト第1層を感光させてフィルター素子基体25を作製した。
4)フォトレジストレジスト第2層塗布工程 フォトレジスト第1層の上にフォトレジスト第2層を塗布した。レジストとしては、フォトレジスト第1層と同様の商品名SU-8(化薬マイクロケム株式会社製)を使用し、スピンコーター(ミカサ株式会社製、型式MS-A100)にて、約10μmの厚さに塗布した。

【0115】
5)プリベーク ホットプレート上で、65℃で4分、95℃で7分間加熱することによりプリベークした。これにより、フォトレジスト中に含まれる溶剤を蒸発させた。
6)露光工程2 マスクアライナー(ミカサ株式会社製、型式MA-20)を用いて、フォトマスクを上記のフォトレジスト第2層に載せた状態で、UV光を照射条件3~8mj/cm2で照射した。これにより、フォトレジスト第2層の、分離部5の胴部54の柱体66列以外の部分及び完全捕捉部55の柱体列以外の部分が感光されず、分離部5の胴部54の柱体66列、分離部5の完全捕捉部55の柱体列、仕切り板27及び仕切り板271が感光された。

【0116】
7)ポストベーク ホットプレート上で、65℃で1分、95℃で3分間加熱することによりポストベークした。これにより、露光(感光)されたフォトレジストの架橋を促進すると共に、ガラス基板とフォトレジストとの接着強度を高めた。
8)現像工程 シャーレ内の現像液(化薬マイクロケム社製、SU-8 Developer)中で現像処理および洗浄を行い、上記のマスクされた部分(感光されなかった部分)のフォトレジスト層を溶解した。次いで、エアスプレイを用いて乾燥させた。これにより、ガラス基板上に、フィルター素子基体25が形成され、その上に、分離部5の胴部54の柱体66列、分離部5の完全捕捉部55の柱体列、仕切り板27及び仕切り板271が形成されたフィルター素子24が形成された。

【0117】
得られたフィルター素子の各部分の寸法は、ほぼ設計値通りであったが、柱体はその最上部付近では、水平断面が3.4μm×3.4μmよりも小さく、その最下部付近では、水平断面が3.4μm×3.4μmに近かった。そのため、得られた固液分離機能を有する装置において、固体捕捉部の隣り合う柱体間の間隔は下部(基部)では、1.7μmに近いが、先端部付近では、1.7μmよりも大きくなっていた。なお、上記で用いたガラス基板は取りはずすことなく、フィルター素子24のフィルター素子基体25の一部としてそのまま用いた。

【0118】
図11(a)は、蓋体29の平面図であり、図11(b)はその正面図、図11(c)はその下面図、図11(d)は11(a)のI-I線端面図である。蓋体29は円板状をしており、その中央部には円形の穴30が貫通している。蓋体29の下面には、溝31,31・・・が45度の間隔で設けられている。ただし、蓋体29をμ-TASデバイス本体21の窪み22に嵌めた際に、排出溝23の上に位置する部分には溝は設けられていない。蓋体の直径は、μ-TASデバイス本体21の窪み22の直径Mと等しいか、又は、押し込むことにより僅かに変形して固定できる程度に僅かに大きくされている。

【0119】
次に、固液分離機能を有する装置Cの組み立て方法を説明する。まず、μ-TASデバイス本体21に上記のフィルター素子24を嵌め込む。この際、フィルター素子24の仕切り板27を、μ-TASデバイス本体21の内底面に確実に密着させる。次に、上記の蓋体29をその下面がフィルター素子基体25の上面に確実に密着させるようにして、μ-TASデバイス本体21の窪み22に嵌め込む。なお、蓋体29をμ-TASデバイス本体21の窪み22に嵌め込むに際しては、蓋体29の溝31,31・・・の位置と、フィルター素子基体25の側面リブ252,252・・・の位置及びフィルター部26の仕切り板27,27・・・の位置が重なり合わないようにする必要がある、今の場合、仕切り板27,27・・は45度の間隔で設けられているので、蓋体29の溝31,31・・・の位置と、フィルター部26の仕切り板27,27・・・の位置との間のなす角度が約22.5度となるように嵌め込む。なお、このようにすると、溝31,31・・・の位置と、フィルター素子基体25の側面リブ252,252・・・の位置も重ならない。 一の面と他の面は、固液混合物中の液体に対する濡れ性が同程度であることが好ましく、それぞれの面を構成する材質、加工等により濡れ性に差が有る場合には、例えば表面プラズマ処理等の各種常法を用いて、両面の濡れ性を近い状態に合わせておくことが好ましい。 したがってフィルター素子24の下面とμ-TASデバイス本体21の内底面は、濡れ性が近い状態にされていることが好ましい。

【0120】
このようにして得られた、固液分離機能を有する装置Cが組み込まれたμ-TASデバイス本体21の平面図を図12(a)に、拡大して示すそのJ-J線断面図を図12(b)に示した。

【0121】
なお、装置のコンパクト化の観点から、μ-TASデバイス本体21の円筒状の窪み22としては、直径20mm以下、深さ8mm以下が好ましく、直径4mm以下、厚み2mm以下が更に好ましい。

【0122】
この固液分離機能を有する装置Cを用いる固液混合物の分離を、図12(b)を参照しつつ説明する。例えば、血液のような固液混合物を蓋体29の中央部の円形の穴30から入れる。その固液混合物は蓋体29の下面の溝31,31・・・を通って、μ-TASデバイス本体21の円筒状の窪み22とフィルター素子基体の円板251との間の空間に入り、更に、上記窪み22とフィルター部26との間の空間に達し、そこから分離部5の胴部54に入って、所定の大きさ以上の固形物が分離される。得られた液体は完全捕捉部55を通って万一残っていた所定の大きさ以上の固形物が除かれた後、フィルター部26の中央部の円筒状の空間28に達し、そこからμ-TASデバイス本体21の排出溝23に達する。上記空間28及び排出溝23には、分割された全ての分離部5,5・・・からの液体が合流する。

【0123】
排出溝23に入った固液分離後の液体は、図12(b)では図面における紙面の裏側の方に流れて行き、図12(a)における、符号32で示される液体の通路に導かれる。そして、この通路32を通るうちに液体の各種の特性が測定されるようにされても良い。符号33で示されるものは、測定後の液体の出口である。

【0124】
上記の固液分離機能を有する装置Cにおいては、蓋体29の下面に、溝31,31・・・が設けられていたが、溝31,31・・を設けずに、図13に示した蓋体34に示すように、蓋体34の下面に柱状のリブ35を45度間隔で設けると共に、1ケの扇状のリブ351を設けてもよい。図13(a)に蓋体34の平面図、図13(b)にその正面図、図13(c)にその下面図、図13(d)に図13(a)のK-K線断面図を示した。この場合は、使用開始時、分離部5に流れる固液混合物の量が多くなる。

【0125】
また、上記の固液分離機能を有する装置Cにおいて、蓋体29の側面とμ-TASデバイス本体21の窪み22の側面との密着性が緩くなると、使用時にその部分から固液混合物が沁み出す恐れがある。このような恐れを避けるには、蓋体29の上部の直径をμ-TASデバイス本体21の窪み22の直径よりも大きくすることが好ましい。このような蓋体の例として、図14(a)に示す蓋体36のように、μ-TASデバイス本体21の窪み22より大きい直径としたもの、図14(b)に示す蓋体37のように、フィルター素子基体25の一部をμ-TASデバイス本体21の窪み22より上部に出すようにしておき、μ-TASデバイス本体21の窪み22より大きい直径とした蓋体で、フィルター素子基体25の一部を更に覆うようにしてもよい。図14(c)に示す蓋体38のように、図14(b)のようにした蓋体の上部を段差構造として、直径のより大きい上方の穴381に指を入れて指を固定し、傷つけた指先を直径の小さい穴382に押し付けるようにして血液を固液混合物試料として用いるようにしてもよい。

【0126】
固液分離機能を有する装置Cについては、同じ発明思想に基づいて更に各種の態様が考えられる。例えば、フィルター素子基体25の側面リブ252,252・・・は、μTASデバイス本体21の円筒状の窪み22に、フィルター素子24が嵌め込まれる際に、フィルター素子24が円筒状の窪み22に密着して動かないようにするために設けられたものであるが、この側面リブ252,252・・・に代えて、μ-TASデバイス本体21の窪み22の内壁面にリブを設けてもよい。また、この側面リブ252,252
・・・と、窪み22の内壁面との両方にリブを設けてもよい。

【0127】
フィルター素子24とμ-TASデバイス本体21の円板状の窪み22の底面との間に隙間が生じると、固液混合物が分離されずに排出溝23に入る可能性があるので、これを避けるために、フィルター素子24とμ-TASデバイス本体21の円筒状の窪み22の底面との間に平らな膜状体を設けて、パッキングの役割を持たせても良い。なお、この場合、この膜状体においては、その中央部には貫通穴が設けられ、分離された液体がμ-TASデバイス本体21の排出溝23に流れ得るようにされる。

【0128】
また、蓋体の下面に、溝31,31・・・が設けられて、そこから固液混合物が分離部5に流れるようにされていたが、溝は蓋体の下面ではなく、フィルター素子基部25の上面に設けられてもよい。また、前記図13に示した蓋体34の下面に設けられたリブ35の代わりに、フィルター素子基部25の上面にリブが設けられてもよい。

【0129】
また、フィルター素子24は、フィルター素子基体25と、その下面から下方に向けて垂設された多数の柱体66から形成されたフィルター部26とからなっていたが、フィルター素子基体と、その上面から上方に向けて垂設された多数の柱体から形成されたフィルター部としてもよい。

【0130】
なお、上記固液分離機能を有する装置Cにおいては、一の面としてのフィルター素子基体25の下面と、対向する他の面としてのμ-TASデバイス本体21の窪み22の底面とに挟まれた間隙中に固体捕捉部が複数個設けられており、固体捕捉部は前記一の面から前記他の面に垂直方向に伸びる柱体66列により形成された、入り口部と前記入り口部から入った固体を1個以上収容する収容部と前記収容部の下流側に設けられた前記一定の大きさ以上の固体は通さない開口部とを有するものである。

【0131】
また、前記一の面としてのフィルター素子基体25の下面上に前記固体捕捉部及び障壁が形成されており、前記他の面としてのμ-TASデバイス本体21の窪み22の底面部を構成する材料が前記固体捕捉部及び障壁を構成する柱体列の材料よりも軟らかい材料からなっていることが好ましい。

【0132】
次に、固体捕捉部及び障壁を構成する柱体の先端とその対向する面とが接する状態を示す実験を行ったので、それを以下に述べる。

【0133】
[実験の説明]
1.PDMSフィルムの作製
信越シリコーン社製 KE-17(型用シリコーン樹脂、硬化後デュロメーター硬さ約50)と硬化剤CAT-RNを混合してアルミニウム板上に滴下し、直径約30mm,高さ約1.2mm厚に盛り上がって平らになった状態で一昼夜常温にて硬化させた。硬化後のポリジメチルシロキサン(PDMS)層の厚みは約1.2mmであった。次に、硬化してできたPDMSフィルムを約30mm×約10mmの帯状に切り取った。得られたフィルムは軟らかく微粘着性を有していた。

【0134】
2.血液フィルター本体の製造
1)ガラス基板(30mm×50mm×1mm厚)の上面に金を蒸着してマスクを形成した。
2)その上に、アクリル系の厚膜レジストである商品名SU-8(化薬マイクロケム株式会社製)からなる樹脂層を形成した。
3)ガラス基板の下面から露光して血液フィルター本体を形成した。この血液フィルター本体の形状は、図5に示したような、平板状の本体に流体を通す溝部が形成されており、前記溝部は、流体の入口、分離部、出口及び通路から構成されており、分離部は、柱体列からなる固体捕捉部が多数設けられた胴部を有するものである。上記胴部は図6に示したような柱体列からなるものであり、分離部の固体捕捉部が設けられた領域の幅は上流側に比し下流側の方が狭くなっているものである。この血液フィルター本体を、図を用いて以下に説明する。図15(a)は、ガラス基板201の下面からUV光で露光して血液フィルター本体200を形成させた状態のものの、フィルター部分202を含む断面の要部を拡大して示した模式的な断面図である。フィルター部分202は、多数の柱体203,203・・・と金蒸着膜からなるマスク204とからなる。なお、柱体203,203・・・は模式的に示したものである。205は本体部である。なお、柱体203は3.4μm×3.4μm×高さ10μmの4角柱とした。

【0135】
3.実験試料の作製
1)上記のようにして得られた、幅30mm,長さ50mmの血液フィルター本体200の平面図を図15(b)に示した。次に、血液フィルター200の中央部を、長さが25mmになるようにガラス基板201の裏面をダイヤモンドカッターで傷つけ、図15(b)に示したd-d線に沿って長さ方向に半分に割った。長さ方向に半分に割って得られた血液フィルター本体200の半分の平面図を図15(c)に示した。また、得られたdd線断面図を図15(d)に示した。

【0136】
2)次に、図16(a)に示すように、上記1)で得られた、長さ方向に半分に割って得られた血液フィルター本体200の半分のものの上に、前記の1.PDMSフィルムの作製で得られたPDMSフィルム206を、血液フィルター本体200のフィルター部分202が形成されている方の端部から100μmだけ奥側に入った位置に、PDMSフィルム206の端部が重なるように載せて軽く押し付けた。このようにして実験試料を作製した。

【0137】
図16(b)は、図16(a)の正面図であり、図16(c)は図16(b)のc-c線断面の要部を示す断面図である。

【0138】
4.観察方法と観察結果
上記3.で得られた実験試料を、図16(c)に観察方向を矢印で示したように、斜め上から観察した。その写真を図17に示した。図17において、左の写真が全体像であり、実体顕微鏡を使用して観察したものである。
下部がガラス基板(厚さ1mm)201であり、上部がPDMSフィルム(厚さ約1.2mm)206である。前述のように、PDMSフィルム206はガラス基板201の端面よりも約100μm奥に載っている。写真の中央部の丸で囲んだところがフィルター部分202である。

【0139】
図17における右上の写真は、走査型共焦点レーザ顕微鏡を用いて、図16(c)に観察方向を矢印で示したように、斜め上から観察した顕微鏡写真である。なお、上記顕微鏡は白色光による通常の光学的顕微鏡として、スキャンをせずに用いた。撮影条件は走査型共焦点レーザ顕微鏡を使用して通常の光学顕微鏡モード(対物レンズ×20)で撮影したものである。断面を斜めから撮影した、この写真において、「シリコーン樹脂端部」と記入され矢印を付してあるところの矢印の先端から右に向かって横線が右端まで延びているのが見える。この横線がガラス基板上のフィルター部分とPDMSフィルムの境界を示す境界線である。この境界線を挟んで上下にフィルター部分の柱体列からなる迷路構造が見える。なお、この写真の右下にスケールが表示されているが、このスケール表示の全長は80μmである。

【0140】
図17における右下の写真は、右上の写真と同じものを対物レンズ×50で撮影したものである。上記の右上の写真と同様に、「シリコーン樹脂端部」と記入され矢印を付してあるところの矢印の先端から右に向かって横線が右端まで延びているが、この横線がガラス基板上のフィルター部分とPDMSフィルムの境界を示す境界線である。境界線は、言い換えれば、PDMSフィルムの端部とも言えるものである。なお、この写真の右下にスケールが表示されているが、このスケール表示の全長は30μmである。この境界線よりも下の部分がフィルター部分の柱体列からなる微細構造で、白く輝いて見えている。一方、境界線よりも上の部分はPDMSフィルムが透明であるので、PDMSフィルムを通してPDMSフィルムの下面にあるフィルター部分の柱体列からなる微細構造が透けて見えている。この写真において境界線を挟んで上下に見える、PDMSフィルム存在部(写真の上)とPDSMフィルム非存在部(写真の下)のフィルター部分の柱体列からなる微細構造を観察すると、微細構造の先端部(すなわち、柱体の上端部)に注目すると、PDMSフィルム存在部(写真の上)の下にある部分の先端部は、PDMSフィルム非存在部(写真の下)の先端部と比較して黒く見えるのが分かる。このことは、PDMSフィルム存在部の下にある微細構造の先端部はPDMSフィルムと接触していることにより、光の反射が減少し黒く観察されると考えられる。すなわち、PDMSフィルムはその下面に存在するフィルター部分の柱体列からなる微細構造を構成する柱体の先端部と接触していることが確認された。

【0141】
次に、図6に示す固液分離機能を有する装置により血液から赤血球成分と血漿成分とを分離する実験を行ったので、その結果を説明する。

【0142】
図18は、図6に示す固液分離機能を有する装置により血液から赤血球成分と血漿成分とを分離する様子を示す顕微鏡写真である。図19は、図18を部分的に拡大して示す顕微鏡写真である。なお、図18(b)~図18(e)中、分離部5の左側に位置する黒い部分は赤血球成分が存在する部分であり、赤血球成分が存在する部分の右側に位置する白い部分は血漿成分が存在する部分であり、血漿成分が存在する部分の右側に位置する黒い部分は血液成分が到達していない部分である。なお、図18(a)においては、血液成分(赤血球成分及び血漿部分)がまだ分離部5に達していない状態にある。また、図18(f)においては、赤血球成分が存在する部分が分離部5全体に分布しており、血漿部分の大部分が分離部5を通過した状態にある。

【0143】
図18(a)~図18(f)に示すように、図6に示す固液分離機能を有する装置を用いることにより、血液から赤血球成分と血漿成分とを良好に分離することができることがわかった。また、その際、図19に示すように、数個~十数個の赤血球が1個の固体捕捉部6に捕捉されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の固液分離機能を有する装置は、液体と固体の混合物から一定の大きさ以上の固体をろ過する機能を有するので、例えば、血液から血球を分離して血漿を得る機能を有する固液分離機能を有する装置などとして、臨床検査分野などに利用され得る。また、発酵食品(例えば日本酒)から酵母を回収する装置などとして、食品製造分野に利用され得る。また、有用な微細粒子を含有する溶液から微細粒子を回収する装置などとして、各種産業分野に利用され得る。
【符号の説明】
【0145】
1 本体、 2 溝部、 3 入口、 4 出口、 5 分離部、 51 固液混合物拡散部、 52 柱状妨害体、 54 胴部、 55 完全捕捉部、 56 仕切り部、 57 合流部、 6 固体捕捉部、 61 隔壁、 62 入り口部、 63 収容部、 64 開口部、 65 突起、 66 柱体、 7 固体、 91 障壁、 92 流路入口、 93 流路出口、 10,11 通路、 100 蓋、 101 蓋入口、 102 蓋出口、 21 μ-TASデバイス本体、 22 窪み、 23 排出溝、 24 フィルター素子、 25 フィルター素子基体、 26 フィルター部、 251 円板、 252 側面リブ、 27 仕切り板、 271 仕切り板、 28 空間、 29 蓋体、 30 穴、 31 溝、 32 通路、 33 出口、 34 蓋体、 35 柱状のリブ、 351 扇状のリブ、 36,37,38 蓋体、 381 穴、 382 穴、 200 血液フィルター本体、 201 ガラス基板、 202 フィルター部分、 203 柱体、 204 金蒸着膜からなるマスク、 205 本体部、 206 PDMSフィルム、 A,C 固液分離機能を有する装置、 B 固液分離機能を有する装置の本体側の装置
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図13】
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【図15】
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【図19】
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