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明細書 :ポリ乳酸系樹脂組成物、並びに成形品及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5114651号 (P5114651)
公開番号 特開2008-101096 (P2008-101096A)
登録日 平成24年10月26日(2012.10.26)
発行日 平成25年1月9日(2013.1.9)
公開日 平成20年5月1日(2008.5.1)
発明の名称または考案の名称 ポリ乳酸系樹脂組成物、並びに成形品及びその製造方法
国際特許分類 C08L  67/04        (2006.01)
C08K   3/00        (2006.01)
C08K   3/34        (2006.01)
B29C  39/02        (2006.01)
C08L 101/16        (2006.01)
C08J   5/00        (2006.01)
B29K  67/00        (2006.01)
FI C08L 67/04 ZBP
C08K 3/00
C08K 3/34
B29C 39/02
C08L 101/16
C08J 5/00 CFD
B29K 67:00
請求項の数または発明の数 9
全頁数 14
出願番号 特願2006-284309 (P2006-284309)
出願日 平成18年10月18日(2006.10.18)
審査請求日 平成21年10月1日(2009.10.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000116622
【氏名又は名称】愛知県
【識別番号】391008250
【氏名又は名称】瀬戸製土株式会社
発明者または考案者 【氏名】谷口 良治郎
【氏名】福田 徳生
【氏名】北川 陵太郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100094190、【弁理士】、【氏名又は名称】小島 清路
【識別番号】100117134、【弁理士】、【氏名又は名称】萩野 義昇
【識別番号】100111752、【弁理士】、【氏名又は名称】谷口 直也
審査官 【審査官】岡▲崎▼ 忠
参考文献・文献 特開2004-315724(JP,A)
特開2005-200600(JP,A)
特開2005-000035(JP,A)
特開2006-070178(JP,A)
特開2005-213376(JP,A)
調査した分野 C08L 67/00-67/04
101/16
B29C 39/00-39/44
C08K 3/00-3/40
C08J 5/00-5/24
特許請求の範囲 【請求項1】
(A)ポリ乳酸系重合体、(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物、及び(C)カオリンを含有し、ポリ乳酸系樹脂組成物全量を100質量%とした場合、上記(A)ポリ乳酸系重合体の含有量が30~85質量%、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物の含有量が5~40質量%、上記(C)カオリンの含有量が5~50質量%であるとともに、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物100質量部に対する上記(C)カオリンの割合が100~180質量部であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項2】
上記(A)ポリ乳酸系重合体100質量部に対する上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物及び上記(C)カオリンの割合の合計が20~250質量部である請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項3】
上記(C)カオリンの上記含有量が10~50質量%である請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物を用いて成形されたことを特徴とする成形品。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物を用いて成形することを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項6】
(A)ポリ乳酸系重合体、(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物、及び(C)カオリンを含有し、ポリ乳酸系樹脂組成物全量を100質量%とした場合、上記(A)ポリ乳酸系重合体の含有量が30~85質量%、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物の含有量が5~40質量%、上記(C)カオリンの含有量が5~50質量%であるポリ乳酸系樹脂組成物からなる成形品の製造方法であって、
溶媒中に(A)ポリ乳酸系重合体、(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物、及び(C)カオリンを含有する分散液を調製し、次いで、該分散液を型に流し込み、上記溶媒を除去し、その後、加熱することにより行うことを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項7】
上記成形品における上記(A)ポリ乳酸系重合体100質量部に対する上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物及び上記(C)カオリンの割合の合計が20~250質量部である請求項6記載の成形品の製造方法。
【請求項8】
上記成形品における上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物100質量部に対する上記(C)カオリンの割合が50~200質量部である請求項6又は7記載の成形品の製造方法。
【請求項9】
上記加熱の温度は、180~250℃であり、上記加熱の時間は、30分~5時間である請求項6乃至8のうちのいずれかに記載の成形品の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂組成物、並びに該ポリ乳酸系樹脂組成物を成形して得られる成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、及び塩化ビニル等のプラスチック製品が使用されている。これらのプラスチック製品は、化学的安定性が極めて高く、耐久性があり、軽量であり、優れた強度を有する。よって、上記プラスチック製品は、様々な分野で広く使用されている。
【0003】
しかし、上記プラスチック製品は、化学的安定性が極めて高く、微生物等による分解が殆ど起こらない。よって、上記プラスチック製品を環境中に廃棄すると、環境中で半永久的に残存するおそれがある。その結果、景観を損なう等の問題が生じるおそれがある。また、従来より、上記プラスチック製品は、焼却により処分されている。しかし、例えば、ポリエチレン等は燃焼カロリーが高いため、ポリエチレン等を焼却処分すると、焼却炉を傷めることがある。更に、ポリ塩化ビニル等を焼却処分すると、有害ガスが発生するおそれがある。更に、従来のプラスチック製品は、石油を原料として製造される。石油は化石資源であり、その埋蔵量にも限界がある。従って、プラスチック製品の価格及び供給は、石油の価格及び埋蔵量により左右されるおそれがある。
【0004】
この状況から、現在、石油以外の原料から得ることができ、自然環境下で分解する樹脂の開発が進められている。この条件を満たす樹脂として、現在、天然物由来の生分解性樹脂が注目されている。生分解性樹脂は、自然環境下で加水分解や生分解により、徐々に分解が進行し、最終的に無害な分解物となることが知られている。上記生分解性樹脂の具体例として、例えば、微生物が産生する生分解性樹脂(ポリヒドロキシブチレート等)、化学合成により得られる生分解性樹脂(ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、及びポリエチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール並びにポリアミノ酸等)、及び天然物由来の生分解性樹脂(キトサン、デンプン、酢酸セルロース等)等が挙げられる。
【0005】
上記生分解性樹脂の中でも特に、ポリ乳酸が注目されている。ポリ乳酸は、トウモロコシ及び砂糖キビ等の植物等から合成される乳酸を原料として合成することができる。ポリ乳酸は、融点が高く、強靭である。よって、ポリ乳酸は、石油資源を使用しない植物由来の樹脂として、石油由来の樹脂が使用されていた用途へ利用が進みつつある。更に、ポリ乳酸は、他の生分解性樹脂と比べて、透明性を有するという特徴がある。よって、ポリ乳酸は、透明性を生かしてフィルム及び各種シートに使用されている。
【0006】
しかし、ポリ乳酸は、他の生分解性樹脂と比べて、機械的な伸びや柔軟性に劣り、耐衝撃性が低いという問題点がある。また、ポリ乳酸は、60℃以上の高温環境下で変形が発生し易い等、従来の石油由来の樹脂に比べて耐熱性が低いという問題点がある。
【0007】
そこで従来より、ポリ乳酸の物性を改善するために、ポリ乳酸に他の成分を添加したポリ乳酸系樹脂組成物が知られている。例えば、下記特許文献1には、ポリ乳酸及び焼成貝殻粉を含有するポリ乳酸系樹脂組成物が記載されている。また、下記特許文献2には、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂及び耐衝撃改良剤を含有する樹脂組成物が記載されている。そして、下記特許文献2には、この樹脂組成物に、更にマイカ等から選ばれる強化剤を含有させることができることが記載されている。更に、下記特許文献3には、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂、並びにマイカ、カオリン及びクレイから選ばれた少なくとも1種である強化材を含有する樹脂組成物が記載されている。
【0008】
尚、下記特許文献4には、合成樹脂とホタテ貝殻殻粉砕物とを含有する合成樹脂組成物が記載されている。そして、下記特許文献4には、ホタテ貝殻殻粉砕物を含むことにより、曲げ弾性率等、成形品の機械的物性を向上させることができることが記載されている。
【0009】

【特許文献1】特開2004-315724号公報
【特許文献2】特開2003-286400号公報
【特許文献3】特開2003-286402号公報
【特許文献4】特開2004-75964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、樹脂は様々な分野、用途で使用されている。その中には、食事関連器具類、OA機器、及び家電機器等、更に高い耐熱性及び耐衝撃性が要求される用途もある。このような用途に用いるために、生分解性樹脂は、更に耐熱性及び耐衝撃性に優れていることが必要である。そこで、従来のポリ乳酸系樹脂組成物と比べて、耐熱性及び耐衝撃性に優れたポリ乳酸系樹脂組成物の開発が望まれている。
【0011】
本発明は、従来のポリ乳酸系樹脂組成物と比べて、更に耐熱性及び耐衝撃性に優れたポリ乳酸系樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、上記の優れた性質を有するポリ乳酸系樹脂組成物を用いて成形された成形品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の通りである。
(1)(A)ポリ乳酸系重合体、(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物、及び(C)カオリンを含有し、ポリ乳酸系樹脂組成物全量を100質量%とした場合、上記(A)ポリ乳酸系重合体の含有量が30~85質量%、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物の含有量が5~40質量%、上記(C)カオリンの含有量が5~50質量%であるとともに、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物100質量部に対する上記(C)カオリンの割合が100~180質量部であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
(2)上記(A)ポリ乳酸系重合体100質量部に対する上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物及び上記(C)カオリンの割合の合計が20~250質量部である上記(1)記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(3)上記(C)カオリンの上記含有量が10~50質量%である上記(1)に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物を用いて成形されたことを特徴とする成形品。
(5)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物を用いて成形することを特徴とする成形品の製造方法。
(6)(A)ポリ乳酸系重合体、(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物、及び(C)カオリンを含有し、ポリ乳酸系樹脂組成物全量を100質量%とした場合、上記(A)ポリ乳酸系重合体の含有量が30~85質量%、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物の含有量が5~40質量%、上記(C)カオリンの含有量が5~50質量%であるポリ乳酸系樹脂組成物からなる成形品の製造方法であって、
溶媒中に(A)ポリ乳酸系重合体、(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物、及び(C)カオリンを含有する分散液を調製し、次いで、該分散液を型に流し込み、上記溶媒を除去し、その後、加熱することにより行うことを特徴とする成形品の製造方法。
(7)上記成形品における上記(A)ポリ乳酸系重合体100質量部に対する上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物及び上記(C)カオリンの割合の合計が20~250質量部である上記(6)記載の成形品の製造方法。
(8)上記成形品における上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物100質量部に対する上記(C)カオリンの割合が50~200質量部である上記(6)又は(7)記載の成形品の製造方法。
(9)上記加熱の温度は、180~250℃であり、上記加熱の時間は、30分~5時間である上記(6)乃至(8)のうちのいずれかに記載の成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物及び成形品は、上記構成を有することにより、耐熱性及び耐衝撃性に優れる。
本発明の成形品の製造方法は、上記構成を有することにより、耐熱性及び耐衝撃性に優れる成形品を容易に得ることができる。
本発明の成形品の製造方法として、溶媒中に(A)ポリ乳酸系重合体、(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物、及び(C)カオリンを含有する分散液を調製し、次いで、該分散液を型に流し込み、上記溶媒を除去し、その後、加熱することにより成形を行うと、更に耐熱性及び耐衝撃性に優れる成形品を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(1)ポリ乳酸系樹脂組成物
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、(A)ポリ乳酸系重合体、(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物、及び(C)カオリンを含有し、ポリ乳酸系樹脂組成物全量を100質量%とした場合、上記(A)ポリ乳酸系重合体の含有量が30~85質量%、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物の含有量が5~40質量%、上記(C)カオリンの含有量が5~50質量%であるとともに、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物100質量部に対する上記(C)カオリンの割合が100~180質量部であることを特徴とする。
【0015】
(A)ポリ乳酸系重合体
上記(A)ポリ乳酸系重合体は、単量体単位として乳酸単位又は乳酸単位及び他の単量体単位を含む重合体である。即ち、上記(A)ポリ乳酸系重合体は、ポリ乳酸及び乳酸共重合体のいずれも用いることができる。上記(A)ポリ乳酸系重合体は、ポリ乳酸及び乳酸共重合体のいずれか一方のみを用いてもよく、両方とも用いてもよい。更に、上記(A)ポリ乳酸系重合体は、重量平均分子量等が異なる2種以上のポリ乳酸を用いてもよい。また、上記(A)ポリ乳酸系重合体は、重量平均分子量、他の単量体の種類及び構造、並びに乳酸単位の割合等が異なる2種以上の乳酸共重合体を用いてもよい。
【0016】
ポリ乳酸系重合体には、結晶性及び非結晶性の両者が存在する。上記(A)ポリ乳酸系重合体としては、結晶性ポリ乳酸が好適である。また、上記(A)ポリ乳酸系重合体としては、結晶性ポリ乳酸系重合体及び非結晶性ポリ乳酸系重合体の両方を用いてもよい。
【0017】
上記(A)ポリ乳酸系重合体の重量平均分子量には特に限定はない。本発明では、必要に応じて様々な重量平均分子量のポリ乳酸系重合体を用いることができる。上記(A)ポリ乳酸系重合体の重量平均分子量は、通常5万~50万、更に好ましくは8万~30万、より好ましくは10万~25万である。この重量平均分子量の範囲は、結晶性のポリ乳酸系重合体及び非結晶性のポリ乳酸系重合体のいずれにも妥当する。上記(A)ポリ乳酸系重合体の重量平均分子量が上記範囲であると、ポリ乳酸系樹脂組成物の耐衝撃性及び成形加工性を高めることができるので好ましい。
【0018】
上記(A)ポリ乳酸系重合体中の上記乳酸単位の割合は、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の生分解性、透明性、及び耐衝撃性等の機械特性に影響を与える。上記乳酸単位の割合は、ポリ乳酸系樹脂組成物に要求される性質に応じて適宜調節することができる。上記(A)ポリ乳酸系重合体中の上記乳酸単位の割合は、通常は40~100モル%、好ましくは50~100モル%、更に好ましくは60~100モル%、より好ましくは80~100モル%である。尚、上記(A)ポリ乳酸系重合体が共重合体の場合、上記乳酸単位の割合の上限は通常99モル%、好ましくは95モル%、更に好ましくは90モル%である。
【0019】
上記(A)ポリ乳酸系重合体を得る方法には特に限定はない。上記(A)ポリ乳酸系重合体を得る方法としては、例えば、環状ジエステルであるラクチド(低分子量ポリ乳酸)の開環重合、及び乳酸からの直接脱水縮合重合等が挙げられる。これらの重合において、必要に応じて上記他の単量体を加えることにより、乳酸単位及び他の単量体単位を含むポリ乳酸系重合体を得ることができる。
【0020】
上記乳酸は、例えば、トウモロコシ、砂糖大根、及び砂糖キビ等の植物並びに古米から得ることができる。また、上記乳酸は、生ゴミ等から乳酸発酵法により得ることができる。上記乳酸は、L-乳酸及びD-乳酸のいずれか一方でもよく、両方でもよい。例えば、直接脱水縮合により重合を行なう場合、L-乳酸、D-乳酸、DL-乳酸、又はこれらの混合物のいずれの乳酸を用いてもよい。上記乳酸単位に含まれるL-乳酸単位及びD-乳酸単位の構成モル比L/Dは、必要に応じて適宜の範囲とすることができる。上記L/Dは、通常、上記(A)ポリ乳酸系重合体が結晶性を有する範囲である。上記L/Dとして好ましくは100/0~80/20である。
【0021】
上記ラクチドは通常、低分子量ポリ乳酸を解重合することにより合成することができる。上記ラクチドとして、L-ラクチド、D-ラクチド、DL-ラクチド、メソ-ラクチド又はこれらの混合物のいずれを用いてもよい。
【0022】
上記他の単量体は、乳酸又はラクチドと共重合可能な単量体であれば、その種類及び構造に特に限定はない。上記他の単量体としては、例えば、2個以上のエステル結合形成性の官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、及びラクトン、並びにこれらの誘導体(エステル等)等が挙げられる。上記他の単量体は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、及びフマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、並びにテレフタル酸及びイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0024】
上記多価アルコールとしては、例えば、脂肪族多価アルコール、エーテルグリコール、及び芳香族多価アルコール等の1種又は2種以上が挙げられる。上記脂肪族多価アルコールとしてより具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、及びソルビタン等の1種又は2種以上が挙げられる。また、上記エーテルグリコールとしてより具体的には、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0025】
上記ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ吉草酸、4-ヒドロキシ吉草酸、及び6-ヒドロキシカプロン酸等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0026】
上記ラクトンとしては、例えば、グリコリド、ε-カプロラクトングリコリド、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、δ-ブチロラクトン、β-又はγ-ブチロラクトン、ピバロラクトン、及びδ-バレロラクトン等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0027】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の全量を100質量%とした場合、上記(A)ポリ乳酸系重合体の含有量は、通常30~85質量%、好ましくは33~80質量%、更に好ましくは35~80質量%である。上記(A)ポリ乳酸系重合体の含有量が上記範囲内であると、耐熱性及び耐衝撃性の両方に優れるポリ乳酸系樹脂組成物とすることができるので好ましい。
【0028】
(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物
上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物は、イタヤガイ科に属する貝であるホタテ貝の貝殻を原料として、焼成及び粉砕を行うことにより得られる材料である。例えば、真珠貝及びカキ貝殻は、洗浄を行っても可溶性塩類を除去しにくい。そのため、真珠貝殻及びカキ貝殻の粉砕物は、ホタテ貝殻粉砕物と比べて可溶性塩類の残存が多い。このような貝殻粉砕物を用いると、ポリ乳酸系樹脂組成物の機械的強度の低下を招くおそれがあるので好ましくない。
【0029】
上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物の平均粒子径は、必要に応じて種々の径とすることができる。本発明において、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物の平均粒子径は、通常0.1~50μm、好ましくは0.5~30μm、更に好ましくは1~10μmである。上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物の平均粒子径が上記範囲であると、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物の樹脂組成物への分散性を高め、樹脂組成物中に均一に分散させることができる。その結果、得られるポリ乳酸系樹脂組成物の機械的強度を高めることができるので好ましい。
【0030】
上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物の形状には特に限定はない。上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物は球状物でもよく、アスペクト比が1を超える棒状粒子でもよい。上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物の形状として、例えば、アスペクト比が1.5以上(例えば、1.5~10、2~8、3~5)の棒状粒子でもよい。
【0031】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の全量を100質量%とした場合、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物の含有量は、通常5~40質量%、好ましくは7~40質量%、更に好ましくは10~35質量%、より好ましくは10~30質量%である。上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物の含有量が上記範囲であると、耐熱性及び耐衝撃性の両方に優れるポリ乳酸系樹脂組成物とすることができるので好ましい。
【0032】
上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物を得る方法には特に限定はない。上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物を得る方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。即ち、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物は、原料であるホタテ貝の貝殻を焼成し、冷却後、粉砕することにより得ることができる。また、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物は、原料であるホタテ貝の貝殻を粉砕し、かかる粉砕物を焼成することにより得ることができる。尚、上記の原料としては、ホタテの貝殻の代わりに、ホタテ貝自体を用いてもよい。ホタテ貝自体を原料として用いる場合は、必要に応じて貝殻以外の成分を除去するのが好ましい。
【0033】
上記方法において、原料であるホタテ貝の貝殻は、海洋生物、海藻、及び砂等の異物を分離除去した後に分級し、所要の大きさのホタテ貝を洗浄乾燥することにより得ることができる。また、原料であるホタテ貝は、焼成前に必要に応じて可溶性塩類(例えば、NaCl,KCl,CaCl,MgCl等)を除去する処理を行うことができる。原料であるホタテ貝から可溶性塩類を除去する方法には特に限定はない。該方法として通常は、原料であるホタテ貝を水洗する方法(例えば、原料であるホタテ貝に流水する方法及び原料であるホタテ貝を水中に浸漬する方法等)等が挙げられる。原料であるホタテ貝から可溶性塩類を除去すると、ポリ乳酸系樹脂組成物の機械的強度を高めることができるので好ましい。また、後述のように、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を用いて、窯業的手法により成形品を得る場合、スラリー中の粘土の凝集を抑制できるので好ましい。
【0034】
上記焼成の条件については特に限定はない。上記焼成の条件は必要に応じて適宜設定することができる。上記焼成の温度は、例えば、300~1000℃、好ましくは300~800℃、更に好ましくは300~600℃とすることができる。また、上記焼成の時間は、例えば、1~24時間、好ましくは2~10時間、更に好ましくは2~5時間とすることができる。
【0035】
上記粉砕は、例えば、ハンマーミル、ローラミル、ボールミル、及びジェットミル等、衝撃、圧縮及び摩擦等の粉砕力を用いた一般的な粉砕機で行うことができる。また、上記粉砕後、必要に応じて、乾式若しくは湿式での篩分け、又は気流分級等の各種分級操作を施すことにより、目的とする平均粒子径及び形状を有する上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物を選択することができる。
【0036】
(C)カオリン
カオリンは、天然の含水ケイ酸アルミニウムでカオリナイト(Al・SiO・2HO)を主成分(通常、90~98%程度。尚、本発明において、カオリナイトの割合はこの値に限定されない。)とする粘土鉱物である。通常、カオリンは産地等の違いにより、含まれているカオリナイト、長石、及び珪石等の配合比が異なる。しかし、本発明の上記(C)カオリンの具体的種類には特に限定はなく、種々の種類のカオリンを用いることができる。また、上記(C)カオリンは、1種単独で用いてもよく、種類の異なる2種以上のカオリンを併用してもよい。例えば、上記(C)カオリンとして、含まれているカオリナイト、長石、及び珪石等の配合比が異なる2種以上のカオリンを併用することができる。上記(C)カオリンとして具体的には、例えば、オーストラリアカオリン、イギリスカオリン、ニュージーランドカオリン、スペインカオリン、河東カオリン、WA(韓国カオリン)等が挙げられる。更に、上記(C)カオリンは、焼成し結晶水を飛ばした焼成カオリンでもよく、焼成していない未焼成カオリンでもよい。未焼成カオリンは、後述する窯業的手法により成形品を得るのに好適である。
【0037】
上記(C)カオリンの平均粒径には特に限定はない。上記(C)カオリンの平均粒径は、通常20μm以下、好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下、より好ましくは1~5μmである。
【0038】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の全量を100質量%とした場合、上記(C)カオリンの含有量は、通常5~50質量%、好ましくは5~45質量%、より好ましくは7~40質量%である。上記(C)カオリンの含有量が上記範囲であると、ポリ乳酸系樹脂組成物の耐熱性及び耐衝撃性を向上させることができるので好ましい。
【0039】
また、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物100質量部に対する上記(C)カオリンの割合は、通常50~200質量部、好ましくは75~200質量部、更に好ましくは100~200質量部、より好ましくは100~180質量部であるが、本ポリ乳酸系樹脂組成物の発明では100~180質量部である。上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物100質量部に対する上記(C)カオリンの割合が上記範囲であると、ポリ乳酸系樹脂組成物の耐熱性及び耐衝撃性を向上させることができるので好ましい。
【0040】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物において、上記(A)ポリ乳酸系重合体100質量部に対する上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物及び上記(C)カオリンの割合の合計は、通常20~250質量部、好ましくは20~230質量部、更に好ましくは25~230質量部である。上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物及び上記(C)カオリンの割合の合計が上記範囲であると、ポリ乳酸系樹脂組成物の耐熱性及び耐衝撃性を向上させることができるので好ましい。
【0041】
(D)その他
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、その作用効果を著しく損なわない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。該他の成分としては例えば、他の樹脂、他の粘土鉱物、及び他の添加剤等が上げられる。上記他の樹脂としては、例えば、他の生分解性樹脂等が挙げられる。上記生分解性樹脂の具体例として、例えば、微生物が産生する生分解性樹脂(ポリヒドロキシブチレート等)、化学合成により得られる生分解性樹脂(ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、及びポリエチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール並びにポリアミノ酸等)、及び天然物由来の生分解性樹脂(キトサン、デンプン、酢酸セルロース等)等が挙げられる。尚、上記他の樹脂は、1種単独でもよく、2種以上併用してもよい。尚、上記他の樹脂を配合する場合、相溶化剤を併用してもよい。尚、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂を含まない組成物とすることができる。
【0042】
上記他の粘土鉱物としては、例えば、マイカ、タルク、及びクレー等が挙げられる。上記他の粘土鉱物は、1種単独でもよく、2種以上併用してもよい。尚、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、上記他の粘土鉱物を含まない組成物、即ち、粘土鉱物として上記(C)カオリンのみを含む構成とすることができる。
【0043】
上記他の添加剤としては、例えば、滑剤(ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸マグネシウム等の脂肪族金属塩等)、結晶核剤、安定剤、加水分解防止剤、難燃助剤、カップリング剤、抗菌剤、防カビ剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、耐候(耐光)剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、発泡剤、シリコーンオイル、及び木粉等が挙げられる。上記他の添加剤は、1種単独でもよく、2種以上併用してもよい。更に、上記他の添加剤として、ガラス繊維、炭素繊維、ワラストナイト、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ミルドファイバー、酸化亜鉛ウィスカー、及びチタン酸カリウムウィスカー等の充填材を、1種単独で又は2種以上併用することができる。これらの充填材を配合することで、剛性等を付与することができる。尚、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、カップリング剤及び滑剤を含まない組成物とすることができる。例えば、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物、カップリング剤及び滑剤を含めずに上記(A)~(C)成分を混合することにより得ることができる。また、上記他の添加剤は、1つで複数の機能を有する添加剤でもよい。例えば、上記ステアリン酸カルシウムは、滑剤として機能する他、結晶核剤としての作用をも奏することができる。よって、上記他の添加剤として、上記ステアリン酸カルシウムを加えることにより、滑剤及び結晶核剤の両者を加えたのと同様の機能を発揮させることができる。
【0044】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、シート・フィルム成形、射出成形、シート押出、真空成形、異形成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、及びブロー成形等の公知の成形方法により、各種成形品とすることができる。
【0045】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、上記のように、耐熱性及び耐衝撃性に優れる。より具体的には、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、JIS K7191-2に準じて、荷重0.45MPaの条件下で測定した荷重たわみ温度を130℃以上、好ましくは150℃以上、更に好ましくは160℃以上とすることができる。また、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、JIS K7110に準じてノッチ付試験片を用いて測定したアイゾット衝撃強度を3.5kJ/m以上、好ましくは4.0kJ/m以上、更に好ましくは4.5kJ/m以上とすることができる。
【0046】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の用途には特に限定はない。上記のように、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、従来のポリ乳酸系樹脂組成物と比べて、優れた耐熱性を維持すると共に、耐衝撃性にも優れる。よって、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、例えば、包装資材、農業資材、土木建築資材、食事関連器具類、並びに玩具及び文房具等の日曜雑貨等に利用できる。特に、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、食事関連器具類、OA機器、及び家電機器等の耐熱性が必要とされる用途に広く利用できる。
【0047】
(2)成形品及びその製造方法
本発明の成形品は、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を用いて成形されたことを特徴とする。また、本発明の成形品の製造方法は、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を成形することを特徴とする。他の本発明の成形品の製造方法は、(A)ポリ乳酸系重合体、(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物、及び(C)カオリンを含有し、ポリ乳酸系樹脂組成物全量を100質量%とした場合、上記(A)ポリ乳酸系重合体の含有量が30~85質量%、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物の含有量が5~40質量%、上記(C)カオリンの含有量が5~50質量%であるポリ乳酸系樹脂組成物からなる成形品の製造方法であって、
溶媒中に(A)ポリ乳酸系重合体、(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物、及び(C)カオリンを含有する分散液を調製し、次いで、該分散液を型に流し込み、上記溶媒を除去し、その後、加熱することにより行うことを特徴とする。
【0048】
本発明の成形品は、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物から直ちに成形して得ることができる。また、本発明の成形品は、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を一旦ペレット化し、その後、必要に応じて該ペレットを溶融成形することにより得ることができる。上記ペレット化後に成形する方法によれば、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物に含まれる各成分をより均一に混合することができるので好ましい。尚、本発明の成形品は、必要に応じて更に他の添加剤の1種又は2種以上を含んでいてもよい。該他の添加剤としては、上述の添加剤が例示される。例えば、本発明の成形品は、更にステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、脂肪酸、脂肪酸エステル、及び脂肪酸アミド等の1種又は2種以上を含んでいてもよい。かかる成分を含むことにより、結晶化が更に促進され、その結果、本発明の成形品の耐熱性の向上に寄与するので好ましい。
【0049】
本発明の成形品を得る方法には特に限定はない。本発明の成形品は、上記のように、公知の成形方法、例えば、シート・フィルム成形、射出成形、シート押出、真空成形、異形成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、及びブロー成形等の公知の成形方法により得ることができる。この中で、射出成形が好適である。
【0050】
射出成形により本発明の成形品を得る場合、通常、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の溶融混練物を用いる。上記射出成形において、該溶融混練物の温度は、通常170~250℃、好ましくは180~200℃である。該溶融混練物の温度を上記範囲とすると、上記(A)ポリ乳酸系重合体を熱劣化させることなく溶融でき、上記(A)ポリ乳酸系重合体と、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物及び上記(C)カオリンとを共に流動化できるので好ましい。
【0051】
射出成形により本発明の成形品を得る場合、射出成形後、更に熱処理を行うことができる。上記熱処理により、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物及び上記(C)カオリンを上記(A)ポリ乳酸系重合体の結晶核剤として作用させることができる。その結果、得られる成形品の耐熱性を向上させることができるので好ましい。
【0052】
上記熱処理の方法としては、例えば、金型から取り出した成形体を、上記(A)ポリ乳酸系重合体のガラス転移温度以上、融点未満の温度雰囲気下に所定時間保持する方法、及びガラス転移温度以上、融点未満の温度に設定された金型内で熱処理する方法等が挙げられる。上記熱処理の温度として具体的には、例えば、60~160℃、好ましくは80~150℃、更に好ましくは100~140℃とすることができる。また、上記熱処理の時間として具体的には、例えば、1分~3時間、好ましくは5分~2時間、更に好ましくは10分~1時間とすることができる。
【0053】
その他の成形方法においても、熱処理温度及び熱処理時間等の条件を最適化することにより、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物からなる成形品を得ることができる。
【0054】
また、上記(C)カオリンは、水と混合することにより可塑性を有するという性質がある。よって、本発明の成形品は、射出成形等の樹脂の成形方法のみならず、窯業的方法により得ることができる。上記窯業的方法とは、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物に含まれる各成分を溶媒中に含む分散液又はスラリーを調製し、これを型に流し込む等の方法により特定の形態とし、その後、適宜加熱することにより成形する方法である。上記窯業的方法による成形とは具体的には、例えば、ろくろ成形、鋳込み成形等が挙げられる。上記窯業的方法としてより具体的には、例えば、溶媒中に(A)ポリ乳酸系重合体、(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物、及び(C)カオリンを含有する分散液を調製し、次いで、該分散液を型に流し込み、上記溶媒を除去し、その後、加熱することにより行う方法が挙げられる。上記窯業的方法による成形によると、射出成形等の通常の樹脂の成形法により得られた成形品と比べて、表面の光沢が適度に抑えられ、陶磁器のような仕上がりとなり、また、耐熱性及び耐衝撃性により優れているので好ましい。
【0055】
上記分散液及び上記スラリーを構成する上記溶媒については特に限定はない。通常は水が使用される。また、上記溶媒の量についても特に限定はない。上記分散液を調製する場合、上記溶媒の量は通常、上記(A)ポリ乳酸系重合体、(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物、及び(C)カオリンの合計100質量部に対して10~70質量部、好ましくは15~60質量部、更に好ましくは20~50質量部、より好ましくは20~40質量部である。
【0056】
上記分散液及び上記スラリーを調製する場合、必要に応じて他の成分を添加してもよい。当該他の成分は1種単独でもよく、2種以上用いてもよい。例えば、各成分、特に粘土成分である上記(C)カオリンの分散性を向上させるために、分散剤を上記分散液に添加することができる。上記分散剤の種類には特に限定はなく、上記(C)カオリンの性質等に応じて適宜選択することができる。上記分散剤としては、例えば、一般的に粘土の分散に用いられる分散剤(ソーダ灰、水ガラス、NaOH、HCl、ポリリン酸、CMC塩、リグニンスルホン酸塩、及びポリアクリル酸塩)等を用いることができる。上記分散剤は1種単独でもよく、2種以上併用してもよい。
【0057】
上記窯業的手法による成形において、上記加熱の手段及び条件には特に限定はない。上記加熱の手段としては、例えば、電気炉による加熱及び窯での加熱等が挙げられる。また、上記加熱の温度は、通常100~300℃、好ましくは180~250℃である。また、上記加熱の時間は、通常30分~5時間、好ましくは1~3時間である。
【0058】
本発明の成形品としては、例えば、包装資材、農業資材、土木建築資材、食事関連器具類、並びに玩具及び文房具等の日曜雑貨等が挙げられる。特に、本発明の成形品を構成する上記ポリ乳酸系樹脂組成物は、耐熱性及び耐衝撃性に優れている。よって、本発明の成形品は、食事関連器具類、OA機器、及び家電機器等の耐熱性が必要とされる用途に広く利用できる。尚、上記食事関連器具類とは、飲食品を入れて食事に直接用いる食器、食事の際に間接的に用いる食器類、及び該食器類以外に食事の際に間接的に用いられる食事関連器具の全てを意味する。上記食器として具体的には、例えば、茶碗、皿、及び椀等が挙げられる。また、上記食器類として具体的には、例えば、トレー、お盆、スプーン入れ、箸受け、茶托、ケーキ型、バターケース、及びソーサー等が挙げられる。更に、上記食事関連器具として具体的には、例えば、スプーン、フォーク、おたま、及びマドラー等が挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0060】
(1)ポリ乳酸系樹脂組成物の調製及び成形品の製造
上記(A)ポリ乳酸系重合体として、結晶性ポリ乳酸ペレット(Mw;123000、D;0.6%、MFR;13.5)を用いた。また、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物として、平均粒子径が2~3μmの焼成ホタテ貝殻殻粉砕物を用いた。更に、上記(C)カオリンとして、未焼成のオーストラリアカオリン(商品名「エカライトカオリン」、イメリスミネラルズ社製、平均粒子径5μm)を用いた。
【0061】
上記各原料を使用し、以下のA法及びB法により、実験例1~10のポリ乳酸系樹脂組成物の成形品を得た。
(A法)
上記結晶性ポリ乳酸ペレットは、冷凍粉砕及び分級により、平均粒子径が50μmになるまで粉砕した。次いで、粉砕後の上記結晶性ポリ乳酸ペレットと、他の上記各原料とを混合した。上記各原料の配合割合は表1に記載の通りである(単位は質量部)。その後、上記各原料の合計100質量部に対して30質量部の水を加え、更に分散剤(「プライマルN-580-S」、日本アクリル化学株式会社製)を0.5~1質量%加え、分散液を調製した。次いで、この分散液を石膏の型に流し込み、該型を乾燥室に入れて乾燥させて水分を除去した。その後、電気炉で200℃、1.5時間加熱することにより、実験例1、2、4~7、9~10の試験片を製造した。
(B法)
上記各原料及び(D)ステアリン酸カルシウムを表1に示す割合(単位は質量部)で混合し、原料組成物を調製した。次いで、二軸押出機(株式会社テクノベル製、φ;20mm、L/D;30)を用いて、上記原料組成物を溶融混練し、ペレット状物とした。上記溶融混練における混練温度は190℃である。乾燥後、上記ペレット状物を用いて射出成形機(株式会社名機製作所製、型締め圧;70t)により射出成形を行い(金型温度;55℃、冷却時間;60秒)、次いで120℃、30分の熱処理を行い、実験例3及び8の試験片を製造した。
【0062】
(2)性能評価
上記実験例1~10のポリ乳酸系樹脂組成物の成形品について、以下に記載の方法により、性能評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0063】
(A)アイゾット衝撃強度(kJ/m
JIS K7110に準じてノッチ付試験片を用いて測定した。
(B)荷重たわみ温度(℃)
JIS K7191-2に準じて、荷重0.45MPaの条件下で測定した。
【0064】
【表1】
JP0005114651B2_000002t.gif

【0065】
(3)結果
表1より、ポリ乳酸からなる実験例8と比べて、本願発明の範囲内である実験例1~6は、アイゾット衝撃値及び荷重たわみ温度のいずれも大きい値を示している。よって、本願発明の範囲内である実験例1~6は、耐熱性及び耐衝撃性に優れていることが分かる。
【0066】
また、表1より、上記(C)カオリンを含まない実験例9の荷重たわみ温度は、本願発明の範囲内である実験例1~6とほぼ同じ値を示している。しかし、実験例9のアイゾット衝撃値は、ポリ乳酸からなる実験例8とほぼ同じ値であり、実験例1~6よりもかなり低い。更に、上記(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物を含まない実験例10は、アイゾット衝撃値及び荷重たわみ温度が実験例1~6よりもかなり低い。また、上記(A)ポリ乳酸系重合体、(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物、及び(C)カオリンの含有量が本願発明の範囲外である実験例7は、アイゾット衝撃値が実験例1~6よりもかなり低く、ポリ乳酸からなる実験例8よりも低い。この結果から、耐熱性及び耐衝撃性の両方を向上させるには、上記(A)ポリ乳酸系重合体、(B)焼成ホタテ貝殻粉砕物、及び(C)カオリンを含むと共に、上記三成分の含有量を適切な範囲とする必要があることが分かる。
【0067】
更に、表1より、B法(ペレット状物の射出成形による成形方法)により得られた実験例3と比べて、A法(窯業的手法)により得られた実験例2は、アイゾット衝撃値及び荷重たわみ温度のいずれも大きい値を示している。よって、A法(窯業的手法)による成形方法によれば、より優れた耐熱性及び耐衝撃性を有する成形品を得ることができる。尚、成形品の外観を比べた場合、B法(ペレット状物の射出成形による成形方法)により得られた実験例3と比べて、A法(窯業的手法)により得られた実験例2は、表面の光沢が適度に抑えられ、陶磁器のような仕上がりとなった。
【0068】
尚、本発明は、上記実施例に限らず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、従来のポリ乳酸系樹脂組成物と比べて、耐熱性及び耐衝撃性に優れる。本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、これまで石油由来の樹脂が使用されていた様々な用途へ利用できる。本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、例えば、包装資材、農業資材、食事関連器具類、並びに玩具及び文房具等の日曜雑貨に利用できる。特に、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物及び成形品、並びに本発明の製造方法により得られるポリ乳酸系樹脂組成物は、食事関連器具類、OA機器及び家電機器等の耐熱性が必要とされる用途、並びに各種成形品等の耐衝撃性が必要とされる用途に好適に利用できる。