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明細書 :LRLSフィルタ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-015586 (P2016-015586A)
公開日 平成28年1月28日(2016.1.28)
発明の名称または考案の名称 LRLSフィルタ
国際特許分類 H03H  21/00        (2006.01)
FI H03H 21/00
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 26
出願番号 特願2014-136121 (P2014-136121)
出願日 平成26年7月1日(2014.7.1)
発明者または考案者 【氏名】堀田 英輔
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100098545、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 伸一
【識別番号】100087745、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 善廣
【識別番号】100106611、【弁理士】、【氏名又は名称】辻田 幸史
審査請求 未請求
テーマコード 5J023
Fターム 5J023DA05
5J023DC06
5J023DD07
5J023DD09
要約 【課題】時変のα(k)の決定について、高精度の解を得ることができ、かつ、演算量を低減できるLRLSフィルタを提供する。また、O(N)のLRLSアルゴリズムにO(N)のα(k)の計算法を追加することで、全体としてO(N)で算出可能なアルゴリズムを有するLRLS(leaky recursive least-squares)フィルタを提供する。
【解決手段】時変の正則化係数を算出する正則化係数算出部21と、アルゴリズムの初期設定を行うアルゴリズム初期設定部22と、理想応答と入力信号を受信する信号受信部23と、理想応答と出力信号との差を事前推定誤差として設定する信号設定部24と、時変の正則化係数の根に基づいて、理想応答と入力信号との相互相関関数ベクトルを更新する更新部25とを備える。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
ディジタル信号処理を行うleaky recursive least-squares(LRLS)フィルタであって、
時変の正則化係数を算出する正則化係数算出部と、
アルゴリズムの初期設定を行うアルゴリズム初期設定部と、
理想応答と入力信号を受信する信号受信部と、
前記理想応答と出力信号との差を事前推定誤差として設定する信号設定部と、
前記時変の正則化係数の根に基づいて、前記理想応答と前記入力信号との相互相関関数ベクトルを更新する更新部と、
を備えることを特徴とするLRLSフィルタ。
【請求項2】
前記正則化係数算出部は、前記入力信号のノイズ大きさ(定数)をη、前記LRLSフィルタの係数ベクトルをw(k)、ベクトルをθ(k)としたとき、前記時変の正則化係数α(k)を次式(41)及び(42)にて算出し、
【数41】
JP2016015586A_000067t.gif
【数42】
JP2016015586A_000068t.gif
前記時変の正則化係数α(k)の前記根は、前記時変の正則化係数α(k)の近似値α(k-1)の定義式から導出されるα(k-1)についての2次方程式の正の根として与えられることを特徴とする請求項1に記載のLRLSフィルタ。
【請求項3】
前記時変の正則化係数α(k)の前記根をα^(k)、忘却係数をλとしたとき、α^(k)-λα^(k-1)の値が0よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のLRLSフィルタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のLRLSフィルタを用いたことを特徴とする音響装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、時変の正則化係数の決定について、高精度の解を得ることができ、かつ、演
算量を低減できるLRLSフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル信号処理において適応フィルタは重要なツールとなっており、様々な適応フィルタが研究されてきた。その中で、least-mean-Square(LMS)アルゴリズムは演算量が少なく広く用いられているが、演算量の増加を許容できればより収束速度の速いRLSアルゴリズムを用いることができる。しかしながら、標準的なRLSアルゴリズムは数値的不安定性を有しているため、その改良アルゴリズムが提案されており、また、近年、指数重み係数を導入した正則化された最小2乗法の適応フィルタとして、本願発明者によりO(N)のLeaky RLS(LRLS)アルゴリズムが報告された(非特許文献1)。
【0003】
正則化された最小2乗問題の一つの解釈として、非特許文献2では入出力双方に雑音が重畳されるシステム同定問題が扱われた。非特許文献2では、入力側に重畳される雑音のパワーが小さく出力側に加算される雑音のパワーが大きい場合に、LRLSアルゴリズムの方がRLSアルゴリズムより精度が高い係数を推定可能であると述べられている。この現象は次のように解釈できる。すなわち、RLSアルゴリズムでは、理想応答d(k)と適応フィルタ出力との差が最小2乗の意味で最小になるように動作するため、d(k)に大きな雑音n(k)が重畳されていると、d(k)+n(k)と適応フィルタ出力との差が最小になるように動作する。そのような場合、d(k)により未知システムの同定をするのではなく、n(k)に大きく影響を受けた信号d(k)+n(k)の特性で未知システムの係数を推定することになり、係数推定法が不適切となってしまう。一方、LRLSアルゴリズムでは、信号d(k)+n(k)と適応フィルタ出力との差をRLSアルゴリズムより小さくしないように動作するため、雑音n(k)の影響をRLSアルゴリズムより緩和できる。そのため、LRLSアルゴリズムにおいて、正則化定数αを時変のα(k)とし、その値を加算される雑音パワーに応じて変動できれば、その特性をRLSアルゴリズムに近づけることも、また、LRLSアルゴリズムに近づけることも可能なため、LRLSアルゴリズムより正確な未知システムの同定が期待できる。
なお、時変のα(k)の計算法は、指数重み係数を導入していないものに対して非特許文献3で提案されている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】堀田英輔著,「時変信号処理のためのO(N2)のleaky RLSアルゴリズム」,信学論(A),Vol.J96-A,no.2,pp.108-112,February 2013.
【非特許文献2】E.Horita, K.Sumiya, H.Urakami,and S.Mitsuishi,「A leaky RLS algorithm:its optimality and implementation」,IEEE Trans. Signal Processing,vol.52,no.10,pp.2924-2932,October 2004.
【非特許文献3】A.H.Sayed,A.Garulli and S.Chandrasekaran,「A fast iterative solution for worst-case parameter estimation with bounded model uncertainties」,in Proc.Amer.Contr.Conf.,Albuquerque,NM,June 1997,pp.1499-1503 .
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献3で提案されている時変のα(k)の計算法は、その演算量は基本的には逆行列計算を含むためO(N)である。非特許文献3の手法に基づけば、指数重み係数を導入した設定に拡張できるが、演算量はO(N)のままである。
【0006】
そこで本発明は、時変のα(k)の決定について、高精度の解を得ることができ、かつ、演算量を低減できるLRLSフィルタを提供することを目的とする。また、非特許文献1のO(N)のLRLSアルゴリズムにO(N)のα(k)の計算法を追加することで、全体としてO(N)で算出可能なアルゴリズムを有するLRLSフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のLRLSフィルタは、ディジタル信号処理を行うleaky recursive least-squares(LRLS)フィルタであって、時変の正則化係数を算出する正則化係数算出部と、アルゴリズムの初期設定を行うアルゴリズム初期設定部と、理想応答と入力信号を受信する信号受信部と、前記理想応答と出力信号との差を事前推定誤差として設定する信号設定部と、前記時変の正則化係数の根に基づいて、前記理想応答と前記入力信号との相互相関関数ベクトルを更新する更新部と、を備えることを特徴とする。
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のLRLSフィルタにおいて、前記正則化係数算出部は、前記入力信号のノイズ大きさ(定数)をη、前記LRLSフィルタの係数ベクトルをw(k)、ベクトルをθ(k)としたとき、前記時変の正則化係数α(k)を次式(41)及び(42)にて算出し、
【数41】
JP2016015586A_000003t.gif
【数42】
JP2016015586A_000004t.gif
前記時変の正則化係数α(k)の前記根は、前記時変の正則化係数α(k)の近似値α(k-1)の定義式から導出されるα(k-1)についての2次方程式の正の根として与えられることを特徴とする。
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載のLRLSフィルタにおいて、前記時変の正則化係数α(k)の前記根をα^(k)、忘却係数をλとしたとき、α^(k)-λα^(k-1)の値が0よりも大きいことを特徴とする。
請求項4に記載の音響装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のLRLSフィルタを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、時変の正則化係数α(k)の決定について、高精度の解を得ることができ、かつ、演算量を低減できるLRLSフィルタを提供することができる。また、時変な正則化係数α(k)の計算精度を落とすことなく、全体としてO(N)で算出可能なアルゴリズムを有するLRLSフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例によるLRLSフィルタを用いた問題設定の構成を示す図
【図2】同LRLSフィルタに適用するO(N)のLRLSアルゴリズムのフローチャート図
【図3】同LRLSフィルタに適用するO(N)のLRLSアルゴリズムのフローチャート図
【図4】RLSアルゴリズムと、非特許文献1のLRLSアルゴリズムにより推定された係数の精度比較を示す図(ケース1)
【図5】従来の更新法のアルゴリズムと、統計的な近似を用いて簡略化した手法と、本発明に用いるアルゴリズムにより推定された係数の精度比較を示す図(ケース1)
【図6】従来の更新法のアルゴリズムと、統計的な近似を用いて簡略化した手法と、本発明に用いるアルゴリズムの時変な正則化係数α(k)の時間変化を示す図(ケース1)
【図7】RLSアルゴリズムと、非特許文献1のLRLSアルゴリズムにより推定された係数の精度比較を示す図(ケース2)
【図8】従来の更新法のアルゴリズムと、統計的な近似を用いて簡略化した手法と、本発明に用いるアルゴリズムにより推定された係数の精度比較を示す図(ケース2)
【図9】従来の更新法のアルゴリズムと、統計的な近似を用いて簡略化した手法と、本発明に用いるアルゴリズムの時変な正則化係数α(k)の時間変化を示す図(ケース2)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の実施の形態によるLRLSフィルタは、時変の正則化係数を算出する正則化係数算出部と、アルゴリズムの初期設定を行うアルゴリズム初期設定部と、理想応答と入力信号を受信する信号受信部と、理想応答と出力信号との差を事前推定誤差として設定する信号設定部と、時変の正則化係数の根に基づいて、理想応答と入力信号との相互相関関数ベクトルを更新する更新部とを備えるものである。
本発明の実施の形態によれば、時変の正則化係数の決定について、高精度の解を得ることができ、かつ、演算量を低減することができる。

【0011】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態におけるLRLSフィルタにおいて、正則化係数算出部は、入力信号のノイズ大きさ(定数)をη、LRLSフィルタの係数ベクトルをw(k)、ベクトルをθ(k)としたとき、時変の正則化係数α(k)を次式(41)及び(42)にて算出し、
【数41】
JP2016015586A_000005t.gif
【数42】
JP2016015586A_000006t.gif
時変の正則化係数α(k)の根は、時変の正則化係数α(k)の近似値α(k-1)の定義式から導出されるα(k-1)についての2次方程式の正の根として与えられるものである。
本発明の実施の形態によれば、時変の正則化係数の決定について、更に高精度の解を得ることができ、かつ、演算量を低減することができる。

【0012】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態におけるLRLSフィルタにおいて、時変の正則化係数α(k)の根をα^(k)、忘却係数をλとしたとき、α^(k)-λα^(k-1)の値が0よりも大きいものである。
本発明の実施の形態によれば、O(N)のLRLSアルゴリズムを用いる場合であっても、逆行列の補助定理の適用条件に抵触するのを避け、値が発散してしまうのを防止することができる。

【0013】
本発明の第4の実施の形態による音響装置は、第1から第3のいずれか1つの実施の形態におけるLRLSフィルタを用いたものである。
本発明の実施の形態によれば、高精度の解を得ることができ、かつ、演算量を低減することができ、より正確な未知システムの同定を行うことができる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例によるLRLSフィルタを用いた問題設定の構成を示す図であり、未知システム10と、適応フィルタ20を備えている。また、図2は、同LRLSフィルタに適用するO(N)のLRLSアルゴリズムのフローチャート図であり、図3は、同LRLSフィルタに適用するO(N)のLRLSアルゴリズムのフローチャート図である。
【実施例】
【0015】
適応フィルタ20は、ディジタル信号処理を行うleaky recursive least-squares(LRLS)フィルタであって、時変の正則化係数を算出する正則化係数算出部21と、アルゴリズムの初期設定を行うアルゴリズム初期設定部22と、理想応答と入力信号を受信する信号受信部23と、理想応答と出力信号との差を事前推定誤差として設定する信号設定部24と、時変の正則化係数の根に基づいて、理想応答と入力信号との相互相関関数ベクトルを更新する更新部25とを備えている。
【実施例】
【0016】
正則化係数算出部21は、入力信号のノイズ大きさ(定数)をη、LRLSフィルタ20の係数ベクトルをw(k)、ベクトルをθ(k)としたとき、時変の正則化係数α(k)を次式(41)及び(42)にて算出し、時変の正則化係数の根α^(k)を、時変の正則化係数α(k)の近似値α(k-1)の定義式から導出されるα(k-1)についての2次方程式の正の根として与える。なお、詳細は後述する。
【実施例】
【0017】
【数41】
JP2016015586A_000007t.gif
【数42】
JP2016015586A_000008t.gif
【実施例】
【0018】
アルゴリズム初期設定部22においては、フィルタ長Nの2乗の演算量のLRLSアルゴリズムの場合(図2)は、時変の正則化係数の根α^(0)に初期値αを設定し、相関行列の逆行列を対角行列α^-1(0)Iとして初期設定し、係数ベクトルを零ベクトルとして初期設定し、理想応答の2乗和を0として初期設定し、理想応答とLRLSフィルタ20への入力との相互相関ベクトルを零ベクトルとして初期設定し、さらに、フィルタ長N、忘却係数(指数重み係数)λ、及び雑音信号を設定する。
また、フィルタ長Nの3乗の演算量のLRLSアルゴリズムの場合(図3)は、時変の正則化係数の根α^(0)に初期値αを設定し、相関行列を対角行列α^(0)Iとして初期設定し、係数ベクトルを零ベクトルとして初期設定し、理想応答の2乗和を0として初期設定し、理想応答とLRLSフィルタ20への入力との相互相関ベクトルを零ベクトルとして初期設定し、さらに、フィルタ長N、忘却係数(指数重み係数)λ、及び雑音信号を設定する。
【実施例】
【0019】
信号受信部23は理想応答と入力信号を受信し、信号設定部24は理想応答と出力信号との差を事前推定誤差として設定する。
更新部25は、フィルタ長Nの2乗の演算量のLRLSアルゴリズムの場合(図2)は、時刻kがトレーニング区間でない場合は、α^(k)をα(k-1)の定義式から導出されるα(k-1)についての2次方程式の正の根として与え、時刻kがトレーニング区間の場合は、α^(k)をαと設定する。そして、α^(k)-λα^(k-1)の大きさと計算機に依存する小さな正の定数であるεの大きさとを比較する。α^(k)-λα^(k-1)がεより大きい場合は、α^(k)-λα^(k-1)の値をその後の計算に使用し、α^(k)-λα^(k-1)がεより小さい場合は、εをその後の計算に使用し、正則化された相関行列の逆行列を更新し、係数ベクトルを更新し、理想応答の2乗和を更新し、理想応答とLRLSフィルタヘの入力との相互相関関数ベクトルを更新する。O(N)の場合は、α^(k)-λα^(k-1)の値は0又はマイナスにもなり得るので、上記のように、α^(k)一λα^(k-1)の大きさと計算機に依存する小さな正の定数であるεの大きさとを比較し、大きいほうの値をその後の計算に用いることで、逆行列の補助定理の適用条件に抵触するのを避け、値が発散してしまうのを防止することができる。
また、更新部25は、フィルタ長Nの3乗の演算量のLRLSアルゴリズムの場合(図3)は、時刻kがトレーニンク区間でない場合は、α^(k)をα(k-1)の定義式から導出されるα(k-1)についての2次方程式の正の根として与え、時刻kがトレーニング区間の場合は、α^(k)をαと設定する。そして、計算を実行し、正則化された相関行列を更新し、正則化された相関行列の逆行列を計算して係数ベクトルを更新し、理想応答の2乗和を更新し、理想応答とLRLSフィルタヘの入力との相互相関関数ベクトルを更新する。なお、このO(N)の場合は、値が発散することはないので、α^(k)-λα^(k-1)の大きさとεの大きさとを比較する必要はない。
【実施例】
【0020】
次に、本発明のLRLSフィルタに導入するアルゴリズム、特に、フィルタ長Nの2乗の演算量のLRLSアルゴリズムについて詳細に説明する。
【実施例】
【0021】
[1.LRLSアルゴリズムの正則化係数の時変化]
LRLSアルゴリズムの評価関数において、正則化係数を時変のα(k)とした次式を考える。
【実施例】
【0022】
【数1】
JP2016015586A_000009t.gif
ここで、忘却係数λは1よりわずかに小さな正の定数であり、d(i)は理想応答である。また、x(i)とw(k)は、各々、フィルタの入力ベクトルと係数ベクトルであり、次式で定義される。
【実施例】
【0023】
【数2】
JP2016015586A_000010t.gif
【数3】
JP2016015586A_000011t.gif
【実施例】
【0024】
式(1)の評価関数より、以下のO(N)のLRLSアルゴリズムが得られる。
アルゴリズムの初期化:
【数4】
JP2016015586A_000012t.gif
各時刻k=1,2,...について計算:
【実施例】
【0025】
【数5】
JP2016015586A_000013t.gif
【数6】
JP2016015586A_000014t.gif
【数7】
JP2016015586A_000015t.gif
【数8】
JP2016015586A_000016t.gif
【数9】
JP2016015586A_000017t.gif
【数10】
JP2016015586A_000018t.gif
ここで、ξk,NはN×1の単位ベクトルで((k-1)mod N)+1番目の要素が1で他は0となっている。また、P(k)=Φ-1(k)であり、Φ(k)は次式で定義される。
【実施例】
【0026】
【数11】
JP2016015586A_000019t.gif
ただし、逆行列の補題の適用条件を満足させるため、α(k)-λα(k-1)>0が成立すると仮定されるので、この条件を満たすようにα(k)を適切に与えなければならない。
【実施例】
【0027】
[2.α(k)の計算法]
{2.1 α(k)の定義と従来の更新法}
時変正則化係数α(k)を以下で定義する。
【実施例】
【0028】
【数12】
JP2016015586A_000020t.gif
【数13】
JP2016015586A_000021t.gif
【数14】
JP2016015586A_000022t.gif
【数15】
JP2016015586A_000023t.gif
【数16】
JP2016015586A_000024t.gif
式(16)のηは、行列A(k)に含まれる不確かさへの摂動行列の上界である。ここでは行列A(k)に含まれる不確かさは適応フィルタ入力に含まれる小さな雑音ととらえる。式(16)の分子に関して
【実施例】
【0029】
【数17】
JP2016015586A_000025t.gif
であるため、分母を一定とみなせば、理想応答d(k)に加算される雑音n(k)が大きければα(k)(>0)は大きくなり、そうでなければα(k)は小さくなる。
【実施例】
【0030】
式(16)に基づいてα(k)を更新する方法については、Ali H.Sayed等の手法(非特許文献3)が知られている。非特許文献3では、忘却係数λが導入されていないため、非特許文献3の手法を式(1)に適用する。
求めるべき係数ベクトルw(k)は次式を満たしている。
【実施例】
【0031】
【数18】
JP2016015586A_000026t.gif
そのため、非特許文献3に基づき、一時的な係数ベクトルh(k)を次式で与える。
【実施例】
【0032】
【数19】
JP2016015586A_000027t.gif
h(k)を導入すれば、次のアルゴリズムが得られる。
【実施例】
【0033】
(非特許文献3に基づいた時変LRLSアルゴリズム)
アルゴリズムの初期化:
【実施例】
【0034】
【数20】
JP2016015586A_000028t.gif
各時刻k-1,2,...について計算:
【実施例】
【0035】
【数21】
JP2016015586A_000029t.gif
【数22】
JP2016015586A_000030t.gif
【数23】
JP2016015586A_000031t.gif
【数24】
JP2016015586A_000032t.gif
【数25】
JP2016015586A_000033t.gif
【数26】
JP2016015586A_000034t.gif
【数27】
JP2016015586A_000035t.gif
【数28】
JP2016015586A_000036t.gif
ここで、α ̄(k)は式(16)において、w(k)の代わりにh(k)としたものであり、
【実施例】
【0036】
【数29】
JP2016015586A_000037t.gif
で与えられる。上式により、α ̄(k)は式(16)のα(k)の近似値となっている。
【実施例】
【0037】
この手法を用いれば、雑音n(k)の状況が未知でも適応的にα(k)を更新可能となるが、P-1(k)を求める逆行列の計算が必要となる。また、式(26)のα ̄(k)の計算に必要な部分の計算量がO(N)であるため、この演算量も少なくない。
また、上記のアルゴリズムに、更に統計的な近似を用いて簡略化した手法(仲川和紀,堀田英輔著,「時変LRLSフィルタとその近似フィルタの収束特性解析」,信学技報,SIP2007-178,pp.121-126,Jan.2008.)が検討されているが、逆行列の計算は残ったままであり、かつα ̄(k)の推定精度はあまりよくない。
【実施例】
【0038】
{2.2 低演算量なα(k)の計算法}
式(17)のεmin(k)を最小2乗法の理論に基づいて考える。式(1)の評価関数をw(k)に関して最小化することで以下の方程式を得る。
【実施例】
【0039】
【数30】
JP2016015586A_000038t.gif
ここで、行列Φ(k)は式(11)で与えられており、ベクトルθ(k)は次式で定義される。
【実施例】
【0040】
【数31】
JP2016015586A_000039t.gif
式(30)を変形することで次の式を得る。
【実施例】
【0041】
【数32】
JP2016015586A_000040t.gif
ここで、emin(i)=d(i)-x(i)w(k)である。式(32)の両辺
にw(k)を左側から掛けることで次式を得る。
【実施例】
【0042】
【数33】
JP2016015586A_000041t.gif
また、emin(i)の定義と式(33)より以下の式を得る。
【実施例】
【0043】
【数34】
JP2016015586A_000042t.gif
ここで、ε(k)、εest(k)、εmin(k)は各々次式で定義される。
【実施例】
【0044】
【数35】
JP2016015586A_000043t.gif
【数36】
JP2016015586A_000044t.gif
【数37】
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式(36)のεest(k)は、また、以下のように別表現できる。
【実施例】
【0045】
【数38】
JP2016015586A_000046t.gif
上式を式(34)に代入することで次の式を得る。
【実施例】
【0046】
【数39】
JP2016015586A_000047t.gif
式(39)を式(16)の両辺を平方した式に代入することでα(k)についての次の2次方程式を得る。
【実施例】
【0047】
【数40】
JP2016015586A_000048t.gif
式(40)をα(k)(>0)について解くと、α(k)は次式で与えられる。
【実施例】
【0048】
【数41】
JP2016015586A_000049t.gif
【数42】
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式(42)ではα(k)を求めるためにw(k)が必要となるため、そのままでは用いることができない。そのため、α(k)の近似値としてα(k-1)を用いる。
以上より、式(41)と式(42)に基づけば、1.のアルゴリズムをα(k)について閉じた形にできる。
【実施例】
【0049】
(本発明において提案する時変LRLSアルゴリズム)
アルゴリズムの初期化:
【実施例】
【0050】
【数43】
JP2016015586A_000051t.gif
【数44】
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各時刻k=1,2,...について計算:
【実施例】
【0051】
【数45】
JP2016015586A_000053t.gif
【数46】
JP2016015586A_000054t.gif
【数47】
JP2016015586A_000055t.gif
【数48】
JP2016015586A_000056t.gif
【数49】
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【数50】
JP2016015586A_000058t.gif
【数51】
JP2016015586A_000059t.gif
【数52】
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【数53】
JP2016015586A_000061t.gif
【数54】
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【数55】
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【数56】
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ここで、εは計算機に依存する小さな正の定数である。
提案アルゴリズムで、1.のアルゴリズムの演算量はO(N)となる。
【実施例】
【0052】
次に、本発明における提案法の有効性を確認するため、数値解析ソフトウェアを用いて32ビット倍精度でシミュレーションを行った。問題設定は図1の、入出力双方に白色雑音が加算されるシステム同定問題である。N=29の特性が異なる2種類の低域FIRフィルタを用意し、時刻k=1,・・・,500とk=501,・・・,1000で、各々の低域FIRフィルタを未知システム10とした。そして、この2種類の低域FIRフィルタを用いて次の表1と表2のSN比で信号を独立試行100回分生成した。
【実施例】
【0053】
【表1】
JP2016015586A_000065t.gif
【表2】
JP2016015586A_000066t.gif
【実施例】
【0054】
生成された二つのケースの信号に対して、RLSアルゴリズム、非特許文献1のLRLSアルゴリズム、2.1のアルゴリズム(従来の更新法)、統計的な近似を用いて簡略化した手法(簡略化手法)、提案法、を用いて未知システム10の同定を行った。ただし、ηは入力側のSN比が一定値であるため区間k=1,2,…,500とk=501,502,・・・,1000でそれぞれ定数、λ=0.98、α=1とし、RLSとLRLSアルゴリズム以外の各アルゴリズムの初期学習期間ではα(k)=α0とした。
【実施例】
【0055】
ケース1は、前半(k=1,2,・・・,500)でLRLSアルゴリズムがRLSアルゴリズムより係数推定精度がよくなり、後半(k=501,502,・・・,1000)でその優劣が逆転する設定である。LRLSアルゴリズムのαは前半の信号に対して非特許文献2の手法で求められた値を後半でもそのまま用いているため、RLSアルゴリズムの係数推定精度が後半に良くなっても、LRLSアルゴリズムの係数推定精度は後半にそれほど良くならない(図4)。一方、α(k)を更新している手法では、図5より、2.1の手法と提案法の結果はほぼ一致しており、後半では両者はRLSアルゴリズムに近い特性を示している。しかしながら、統計的な近似を用いて簡略化した手法は、2.1の手法や提案法とは異なる特性を示しており、図6のα(k)の値を見ても、その計算精度があまり良くないことがわかる。
【実施例】
【0056】
ケース2は、前半と後半のSN比がケース1と逆になっている。このケースでは、LRLSアルゴリズムのαがケース1と同様に前半の信号に対して求められているため、αの値が小さく、RLSアルゴリズムとLRLSアルゴリズムはほぼ同じような特性となっている(図7)。図8より、提案法は2.1の手法とほぼ同じ特性を示しているが、図9のα(k)の値が異なっている時刻k=100付近では、その部分の図8の特性も異なっている。これは提案法では、計算量をO(N)にするため逆行列の補助定理の適用条件より、式(49)によってα(k)-λα(k-1)>0を保持しており、α(k)の急な値の減少を避けているためである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、時変な正則化係数α(k)の計算精度を落とすことなく、全体として演算量を低減可能なアルゴリズムを有し、LRLSフィルタに適している。
【符号の説明】
【0058】
10 未知システム
20 適応フィルタ(LRLSフィルタ)
21 正則化係数算出部
22 アルゴリズム初期設定部
23 信号受信部
24 信号設定部
25 更新部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8