TOP > 国内特許検索 > バニシング加工装置 > 明細書

明細書 :バニシング加工装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-016472 (P2016-016472A)
公開日 平成28年2月1日(2016.2.1)
発明の名称または考案の名称 バニシング加工装置
国際特許分類 B24B  39/00        (2006.01)
FI B24B 39/00
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2014-140092 (P2014-140092)
出願日 平成26年7月8日(2014.7.8)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 1.「平成25年度 修士論文概要」番号401,金沢大学大学院自然科学研究科機械科学専攻 機能機械コース,発行日 平成26年2月10日 2.「平成25年度 修士論文発表会 ハイブリッドメカニズムによる力制御を用いたバニシング加工の実現」,スライド発表,開催日 平成26年2月13日,金沢大学 自然科学本館 203講義室 3.「平成25年度 主論文 ハイブリッドメカニズムによる力制御を用いたバニシング加工の実現」,発表日 平成26年2月13日 4.「平成25年度 卒業論文概要」番号304,金沢大学理工学域機械工学類 機械システムコース・知能機械コース,発行日 平成26年2月14日 5.「ハイブリッドメカニズムによる自由曲面へのバニシング加工の実現」,スライド発表,開催日 平成26年2月18日,金沢大学 自然科学本館 303講義室 6.「平成25年度 卒業論文 ハイブリッドメカニズムによる自由曲面へのバニシング加工の実現」,発表日 平成26年2月18日
発明者または考案者 【氏名】岡田 将人
【氏名】立矢 宏
【氏名】岩崎 平
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査請求 未請求
テーマコード 3C158
Fターム 3C158AA09
3C158AA12
3C158AA13
3C158AC02
3C158BA05
3C158BB09
3C158BC01
3C158BC02
3C158CA02
3C158CA04
3C158CB01
要約 【課題】金属表面に加工硬化ならびに圧縮残留応力による機械的性質の向上を図りながら鏡面仕上げ加工が可能な自由曲面へのバニシング加工装置を提供する。
【解決手段】バニシング加工装置は、所定の回転制御及び、被加工物1の加工点における法線方向に対する傾き角αの角度制御を受けるバニシング加工用の工具10と、前記加工点における該バニシング加工用の工具10の法線方向の押圧力を制御するための法線押圧制御手段とを備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
被加工物の加工点における法線方向に対して、所定の角度制御及び回転制御されたバニシング加工用の工具と、
前記加工点における工具の法線方向の押圧力を制御するための法線押圧制御手段とを備えたことを特徴とするバニシング加工装置。
【請求項2】
前記法線押圧制御手段は、前記加工点において被加工物に作用する押圧力のX,Y,Z軸方向3成分を検出する押圧力検知手段を被加工物を載置したテーブル側に有し、
前記押圧力検知手段で得られたデータから法線方向の押圧力を求める演算手段とを有することを特徴とする請求項1記載のバニシング加工装置。
【請求項3】
前記工具の位置と押圧力を同時に制御する手段は、工具又は工具の保持具を制御する工具制御手段と、テーブル制御手段を有し、
前記工具制御手段は、Z軸方向の1軸制御と、工具軸に直交する軸周りに姿勢制御するものであり、
前記テーブル制御手段は被加工物を載置したテーブルをX,Y軸方向に2軸制御するものであることを特徴とする請求項1又は2記載のバニシング加工装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、バニシング加工装置に関し、特に表面が自由曲面からなる被加工物に適したバニシング加工装置に係る。
【背景技術】
【0002】
金属表面に光沢を発現する加工方法に研磨(研削)加工とバニシング加工とがある。
研磨加工は、砥石等の研削工具又は砥粒を含有させたホイールや無端ベルト等にて金属表面を鏡面状に仕上げる加工方法である。
よって、研磨加工は表面を削り取ることで表面粗さを小さくする加工方法である(特許文献1,2)。
これに対して、バニシング加工方法は、被加工物の表面を押付けるように塑性加工することで表面粗さを小さくする加工方法であり、金属表面が塑性変形により加工硬化ならびに圧縮残留応力が生じ、硬度と疲労強度が増すとともに光沢が発現する加工方法である。
このようなバニシング加工は、被加工物の表面が平坦状又は円筒状である場合に回転ローラーで表面を押圧することで得られるが、表面が三次元的に凹凸を有する自由曲面にあっては、そのような工具を用いることができない。
特許文献3には、バニシング工具の先端に設けたバニシング球に加わる加工点の法線押付力を演算し、予め定めた設定法線押付力とが一致するようにバニシング球の位置を制御する技術を開示する。
しかし、同公報に開示する技術は、被加工面に法線方向の押付力を加えるだけのものであり、表面の鏡面性や表面硬度及びその深さに課題が残るものである。
非特許文献1には、バニシングピンを高速回転させながら加工表面を押しならすことで加工表面に圧縮残留応力を生成させる摩擦撹拌形バニシング加工技術を開示する。
しかし、同文献は、金属表面の疲労強度及び硬度の向上を目的とするものであり、表面光沢性に劣るものである。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平10-166267号公報
【特許文献2】特開2013-43255号公報
【特許文献3】特開2005-305604号公報
【0004】

【非特許文献1】「炭素鋼S45Cへの摩擦撹拌形バニシング加工による硬化組織の創成」,笹原弘之,他3名,日本機械学会論文集(C編),78巻787号(2012-3),P.996-1003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、金属表面に加工硬化ならびに圧縮残留応力による機械的性質の向上を図りながら鏡面仕上げ加工が可能な自由曲面へのバニシング加工装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るバニシング加工装置は、被加工物の加工点における法線方向に対して、所定の角度制御及び回転制御されたバニシング加工用の工具と、前記加工点における工具の法線方向の押圧力を制御するための法線押圧制御手段とを備えたことを特徴とする。
このように工具を被加工面に対して所定の角度だけ傾斜させながら、この工具を回転させることで加工点に摩擦力による接線方向力ならびに摩擦熱を与えながら押圧力を加えることになる。
【0007】
本発明において、法線押圧制御手段は、前記加工点において被加工物に作用する押圧力のX,Y,Z軸方向3成分を検出する押圧力検知手段を被加工物を載置したテーブル側に有し、前記押圧力検知手段で得られたデータから法線方向の押圧力を求める演算手段とを有するような構成が例として挙げられる。
ここで、X,Y,Z軸方向とは相互に直交する3成分方向を意味し、本明細書では水平面に対してX,Y軸と定義し、垂直方向をZ軸方向と定義する。
【0008】
本発明においては、前記工具の位置と押圧力を同時に制御する手段は、工具又は工具の保持具を制御する工具制御手段と、テーブル制御手段を有し、前記工具制御手段は、Z軸方向の1軸制御と、工具軸に直交する軸周りに姿勢制御するものであり、前記テーブル制御手段は被加工物を載置したテーブルをX,Y軸方向に2軸制御するものであってよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、バニシング工具を傾斜させ、且つ回転させながら金属表面を押圧しつつ、摺動させたことにより金属表面の硬度上昇による耐摩耗性の向上、圧縮残留応力による疲労強度の向上の他に摩擦熱にて機械的性質が表面から深く改善され、且つ鏡面仕上げ加工が可能である。
【0010】
また、バニシング工具の力および位置制御を行う際に工具又は工具の保持手段をZ軸方向の1軸制御と、工具軸に直交する2軸周りに姿勢制御しつつ、被加工物を載置したテーブルをX,Y軸方向の2軸制御したので、5自由度動作が可能になり、曲面への押圧制御の精度が向上する。
さらには、被加工物の加工点に加わるX,Y,Z軸方向の3成分をテーブル側で検知し、法線方向の押圧力を演算制御したので、自由曲面において法線方向の押圧力が一定になるように安定制御しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)はバニシング工具の例を示し、(b)はバニシング加工の状態を模式的に示す。
【図2】(a)は5自由度ハイブリッド式パラレルメカニズム型加工機の構造例を示し、(b)は機構の説明図を示す。(c)はツール(バニシング工具)の位置姿勢を示す。
【図3】工具動作のコントロールダイヤグラムのブロック図を示す。
【図4】バニシング加工による表面粗さ変化を示す。
【図5】バニシング加工による表面硬度変化を示す。
【図6】表面からの深さ方向の硬度変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るバニシング加工装置の構造例を以下、図面に基づいて説明するが、バニシング工具に傾き角を設け、このバニシング工具を回転制御したものであれば本実施例に限定されない。

【0013】
図1(a)にバニシング工具の拡大図を示し、図1(b)に自由曲面からなる被加工物の表面をバニシング加工する模式図を示す。
バニシング工具10は、先端部に球面状のバニシングチップ11を取り付けてある。
バニシングチップ11は、被加工物となる金属よりも硬いものであれば各種材質が適用される。
具体的にはダイヤモンドチップ,超硬合金,CBN(立方晶窒化ホウ素)等が例として挙げられる。
バニシングチップ11の球面の曲率半径Rは0.5~10mm程度が好ましく、バニシング工具の傾き角αは送り方向に1°以上あればよく、理論的には90°以下でよいが、実用的には1~20°の範囲である。
バニシング工具10の回転数Nはバニシングチップ11の加工点での周速度Vrが5~300m/minの範囲、好ましくは10~200m/minの範囲である。
周速度が300m/minを超えると摩擦熱の発生が多くなり過ぎる。
なお、図1(b)に示した送り速度及びクロスフィード量(CF)は被加工物1の材質や曲面の程度により適宜、選定される。

【0014】
今回の実験評価に用いたバニシング加工装置の構造例を、以下説明する。
図2(a)は空間5自由度ハイブリッド式パラレルメカニズム型加工機である。
本加工機は空間3自由度パラレルメカニズムと平面案内テーブルにより構成される。
出力点の位置・姿勢を示すために、図2(b)のようにベース上にO-XYZ絶対座標系、出力節に取り付けた工具先端にT-X工具座標系を設定する。
O-XYZ絶対座標系は、XY軸をテーブル駆動方向とする右手直交座標系であり、原点Oはベース中心にある。
O-XYZ座標系とT-X座標系の各軸方向が一致する場合を初期姿勢とし、初期姿勢での工具座標系の原点TはZ軸上にあるとする。
本加工機は、上部の空間3自由度パラレルメカニズムによって位置姿勢(Z,θ,θ)、下部の平面案内テーブルによって位置(X,Y)を制御し5自由度の運動を創成する。
なお,θ,θは、図2(c)に示すように、それぞれX平面における回転軸の向きと同回転軸回りの回転角度であり、出力節および工具の姿勢を表す。
XY方向並進はθおよびθの回転に伴って従属的に動作する。
これらのXY方向の従属的な並進は下部案内テーブルにより補正する必要があり、その変位量は式(1)で得られる。
【数1】
JP2016016472A_000003t.gif
空間3自由度パラレルメカニズムの力制御では、XYZの各軸方向への微小変位を与え目標押圧力を達成する。
ヤコビ行列を用いれば,工具先端の微小変位ΔX,ΔYと工具の姿勢角変位Δθ,Δθの関係は式(2)で表される。
そこで、式(2)を用いθ,θを入力としてXY軸方向への力制御を、また、工具の位置Zを入力としてZ軸方向の力を制御することで、結果的に工具の位置姿勢の制御と同じ入力変数で力制御を行う。
【数2】
JP2016016472A_000004t.gif
図3に具体的な制御手法を示す。
工具の動作により発生した力Foutを力センサで計測し、フィードバック対象である押圧方向の力Fへ変換する。
この時、加工点における工作物の法線方向は、CAMデータにより取得した値より求める。
次に、目標力FとFの偏差eにコンプライアンス定数を乗じることで位置偏差eへ変換し、目標変位Linを位置制御する。
なお、FとFは加工面法線方向の押圧力である。
PID制御の各パラメータは過渡応答法により値を設定する。
また、コンプライアンス定数は、予備実験によりあらかじめ決定する.

【0015】
次にバニシング加工の実験方法及びその結果について説明する。
被加工物としてSUS316の表面にワイヤ放電加工により、Rz=20.9μm程度の加工面を形成した。
図1にて、R=1.5mm、傾き角α=15°、クロスフィード量50μm、送り速度12.7mm/secの条件で図2に示した装置にて加工点での負荷力が50Nと一定になるように制御しつつバニシング加工した結果を図4のグラフに示す。
図4のグラフは、バニシングチップ11の周速度Vrが0,17,33,50m/minのときの表面粗さ変化をRaとRzで示したものである。
この結果から本発明に係るバニシング加工によれば前加工面より表面粗さが小さくなり、鏡面状に仕上がることが確認できた。

【0016】
図5は、上記の条件でバニシング加工したときの表面硬度Hvの変化を示す。
バニシング工具の回転数を上げると回転しない周速度0m/minよりも硬度が上昇することが明らかになった。

【0017】
図6は、バニシング工具の周速度が0m/min,50m/minとで表面部からの深さで、どのように硬度変化しているか測定したグラフである。
なお、Pre-stageはバニシング加工しないものである。
この結果から、周速度50m/minの方がより深く硬度が向上していることが明らかになった。
【符号の説明】
【0018】
1 被加工物
10 バニシング工具
11 バニシングチップ
図面
【図3】
0
【図1】
1
【図2】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5