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明細書 :含エチレングリコール流体用流れ促進剤、及びこの促進剤を含む含エチレングリコール循環水

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-079222 (P2016-079222A)
公開日 平成28年5月16日(2016.5.16)
発明の名称または考案の名称 含エチレングリコール流体用流れ促進剤、及びこの促進剤を含む含エチレングリコール循環水
国際特許分類 C09K   3/00        (2006.01)
FI C09K 3/00 Q
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2014-209342 (P2014-209342)
出願日 平成26年10月10日(2014.10.10)
発明者または考案者 【氏名】多賀 圭次郎
【氏名】山本 靖
【氏名】小松 亘
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
要約 【課題】地域冷暖房などに用いられる温水あるいは冷水の循環水中に添加することにより、循環水の流れを促進して省エネルギーを図るエチレングリコール流体用流れ促進剤の提供。
【解決手段】オルト-トルイル酸20及び非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド22からなる含エチレングリコール流体用流れ促進剤、及び当該流れ促進剤を含む含エチレングリコール循環水。また、非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド22のアルキル鎖炭素原子数を、14又は16或いは18にすることで様々な温度帯で流れを促進する効果のある含エチレングリコール循環水。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
オルト-トルイル酸および非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドからなることを特徴とす
る含エチレングリコール流体用流れ促進剤。
【請求項2】
前記非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドは、アルキル鎖炭素原子数が、14または16または18であることを特徴とする請求項1に記載する含エチレングリコール流体用流れ促進剤。
【請求項3】
前記オルト-トルイル酸および前記アルキル鎖炭素原子数14の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドおよび前記アルキル鎖炭素原子数16の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドからなることを特徴とする含エチレングリコール流体用流れ促進剤。
【請求項4】
前記オルト-トルイル酸および前記アルキル鎖炭素原子数16の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドおよび前記アルキル鎖炭素原子数18の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドからなることを特徴とする含エチレングリコール流体用流れ促進剤。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に記載のいずれか1つの含エチレングリコール流体用流れ促進剤を含むことを特徴とする含エチレングリコール循環水である。






発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、地域冷暖房などに用いられる温水あるいは冷水の循環水中に添加することにより、循環水の流れを促進して省エネルギー効果を有する流れ促進剤と、その流れ促進剤を含むエチレングリコール循環水に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでに使用されている循環水の流れ促進剤は、主として循環水の溶液として水を対象としたものである。一般にセチルトリメチルアンモニウムブロミド(以下、CTAB)に代表される陽イオン性(カチオン性)界面活性剤及びその類似化合物が使用されており、添加剤としてサリチル酸ナトリウム(以下、SalNa)等を加えることにより流れ促進の効果が発現することが知られている(特許文献1、2)。これらを水に溶解させると、CTABはCTAカチオンとBrアニオンに、SalNaはサリチル酸アニオンとNaカチオンに分かれて水溶液中に存在する。しかしながら、主剤CTAカチオンはトリメチルアンモニウム基(N+(CH3)3)を有するので、殺菌作用や抗菌作用があり、漏出すると環境に対して影響を与えるために、欧米では使用禁止となっている。
【0003】
また、日本においてもPRTR法の対象化合物である。一方、低温循環水中での流れ促進剤も望まれている。しかしながら、上に述べたCTAB及びその類似化合物を主剤とする流れ促進剤は、含エチレングリコール(不凍液)循環水中では流れ促進効果がないという問題点がある。
【0004】
一般に流れ促進剤を用いての流れ促進効果の測定は、循環水の配管中におけるレイノルズ数(以下、Re数)の測定および流れ抵抗の低減(Drag Reduction)効果(以下、DR効果)の測定が行わる。しかし、Re数の測定およびDR効果の測定は、大量の溶液が必要であるので、新規の流れ促進剤(抵抗低減剤)のスクリーニングは非常に困難である。
【0005】
ところで、スターラーの上に乗せたビーカー中で撹拌子を用いて撹拌すると、純水では撹拌子の回転によって渦が発生する。しかしながら、流れ促進剤として知られているCTABとSalNaの混合物は、渦の発生が起こらず(渦抑制効果)、またスターラーの回転を止めると、水溶液の流れが次第に遅くなって停止し、それから逆方向への回転が始まる現象がみられる(跳ね戻り現象)。渦抑制と跳ね戻り現象が生じるのは溶液に粘弾性があることを示しており、溶液の粘度増加と溶液の流れ促進効果は相反する現象である。この渦抑制を発現する流れ促進剤が流れ促進効果を有するのは、循環水中で流れ促進剤がひも状ミセルを構成しており、そのひも状ミセルが配管中で乱流が発生するのを防いで、層流状態を維持するためと理解されている。高分子化合物を循環水中に添加することにより循環水の流れが促進されることが知られているが、界面活性剤を循環水に添加することにより流れが促進されるのは、ひも状ミセルという高分子化合物類似の構造ができるためと考えられている。
【0006】
以下、背景技術を図により詳細に説明する。
図4は、渦高さによるスクリーニング装置の全体構成を示す。これは、渦抑制と跳ね戻り現象をスクリーニングとする方法である。即ち、スターラーに乗せた200mlのトールビーカーに200mlのスクリーニング溶液と長さ35mmの撹拌子を入れる。スクリーニング溶液の主剤濃度は1000ppmで、添加剤は主剤の化学量論比とする。スターラー700ppmで撹拌する。
図4(a)は、スターラーで撹拌子を回転させると渦が発生していることを示す。
図4(b)は、流れ促進剤を添加すると渦抑制効果が発生していることを示す。
図4(c)は、回転を停止すると、気泡が逆回転する跳ね戻り現象が発生していることを示す。
【0007】
図5は、流れ促進剤を含む循環水の渦抑制効果の測定と温度依存性を示す。温度制御可能な恒温槽中に浸したスクリーニング溶液を撹拌回転しながら、その渦高さを測定する。温度上昇とともに渦高さが変化するので、温度と渦高さの依存性を測定する。恒温槽中に浸し、700rpmで回転させながら渦の平均高さを測定した結果を示す。
図5(a)は、25℃を示す。図5(b)は、35℃を示す。温度により渦高さが変化することを示す。
【0008】
この渦抑制効果をスクリーニング法として新規の流れ促進剤を探した。
しかしながら、なぜCTAカチオンとSalアニオンの複合体のみが、流れ促進剤としての機能発現を引き起こすかという理由はわかっていない。そこで、まず溶液中でこの複合体がどのような構造をしているのかという知見を得る目的で、密度汎関数法(B3LYP法、6-31G(d)基底関数)を用いてGaussianソースプログラムにて構造最適化を行った。
その結果を図6に示したが、図6は、セチルトリメチルアンモニウム(CTA)カチオン/サリチル酸(Sal)アニオン複合体(CTA-Sal)、即ちCTAカチオンとSalアニオンが静電気的に結合しているような構造が得られている。
【0009】
ところで、主剤のCTAカチオンはトリメチル基を有しているが、そのメチル基の一つを酸素原子に置き換えると非イオン性のアルキルジメチルアミンオキシド(ADMAO:(CH3(CH2)n-1N(CH3)2(=O), n=14,16,18)になる。このADMAO(以下、アルキル鎖長のn=14の化合物をC14DMAO、n=16の化合物をC16DMAO、n=18の化合物をC18DMAO)は界面活性剤補助剤としてよく使用されているが、非イオン性であるので環境低負荷型の流れ促進剤となりうる(特許文献3、4)。
【0010】
よって、炭素鎖がC16のC16DMAOを主剤として、添加剤にSalNaを使用したところ、渦抑制効果は見られなかった。そこで、図6の複合体の分子構造を参考に、SalNaの親分子化合物のサリチル酸(以下、SalOH)を添加したところ白色沈殿を生じた。しかしながら、SalOHのOH基の位置異性体の4-ヒドロキシ安息香酸(以下、4-OHBz)を加えたところ、渦抑制効果が観測された。また、そのほかにも渦抑制効果を示す多くの添加剤を見出すことができた。密度汎関数法を用いて、C16DMAOと4-OHBzの構造最適化から得られた構造を図7に示す。アミンオキシドのN=Oの酸素原子と、安息香酸のカルボキシル基の水素原子の間で水素結合を生成して安定な構造を取っていることがわかる。これは環境低負荷型の流れ促進剤となる。
【0011】
種々の添加剤について渦抑制効果の有無を調べ、いくつかの添加剤について渦高さの温度依存性を測定した結果を図8に示す。図8は、種々の非イオン性のアルキルジメチルアミンオキシドと添加剤の渦高さの温度依存性を示し、4-ヒドロキシ安息香酸(4-OHBz)、安息香酸(0-OHBz)、クミン酸(CumA)、主剤濃度1000ppm、添加剤当量量論比、回転数700rpmである。実用化されているCTAB/SalNaの結果ともあわせて示している。図8では、縦軸が渦の高さ、横軸が温度を示しており、渦高さが低いほど流れ促進剤として有効である可能性があることを示している。また、アルキル鎖長によって、渦抑制の温度領域が異なることがわかる。
【0012】
この結果を名古屋工業大学機械工学教育類の玉野真司准教授に提案したところ、アルキル鎖長C14のC14DMAO/4-OHBzと、比較実験として市販の流れ促進剤であるオレイルジメチルアミンオキシド(以下、ODMAO)についての流れ促進効果の実験が行われた(非特許文献1)。
図9は、C14DMAO/4-OHBz混合物とODMAO単体のDR実験(25℃)である。図9(a)は、管摩擦係数(λ)とRe数の測定結果を示す。図9(b)は、流れ促進の効果即ちDR効果を示す。
図9(a)は、横軸がRe数、縦軸が管内摩擦係数(以下、λ)である。Tap waterで示される水は、低いRe数3000で層流から乱流に移行することがわかる。
黒丸は、C14DMAO/4-OHBz(1000ppm)の1回目の測定結果である。白丸は、C14DMAO/4-OHBz(1000ppm)の2回目の測定結果である。再現性のある結果が得られた。黒三角は、ODMAO(1000ppm)の測定結果である。白三角は、ODMAO(500ppm)の測定結果である。
4つの実験結果は、レイノズル数(流速)の増加と共にλが減少する。ここでは層流である。レイノズル数が10000から30000になると、乱流に変化しλは変曲点を持ち増加する。
よってλは、乱流のTap waterが上側の曲線になり、層流の4つの測定結果が下側の曲線になる。即ち、水は低いRe数で層流から乱流に移行するが、流れ促進剤を添加すると、層流の領域がかなり広がっていることがわかる。
図9(b)は、流れ促進効果(抵抗低減効果(Drag Reduction効果)、以下、DR効果)がほぼ70%程であることを示している。
ここで、DR効果は次式による。
DR効果=(通常水の配管内摩擦損失-DR溶液の配管内摩擦損失)/通常水の配管内摩擦損失×100
【0013】
ひも状ミセルは界面活性剤の集合体の一つであり、高分子化合物類似の構造を取っている。高分子化合物を循環水中に添加することにより循環水の流れが促進されることが知られているが、界面活性剤を循環水に添加することにより、流れが促進されるのは、この高分子化合物類似の構造ができるためと考えられている。
【0014】
以上の分子構造から設計した主剤と添加剤の組み合わせおよびそのスクリーニングの結果については、日本化学会コロイドおよび界面化学部会のニュースレターに報告している(非特許文献1)。
また、主剤のADMAOと白色沈殿を生じた添加剤のSalOHの量論比を1:0.3~1:0.2に調整すると、渦抑制と跳ね戻り現象が生じることを確認している。
【先行技術文献】
【0015】

【特許文献1】特開2002-80820号公報
【特許文献2】特開2004-107521号公報
【特許文献3】特開平11-131088号公報
【特許文献4】特開2000-198996号公報
【0016】

【非特許文献1】分子構造から解析した抵抗低減剤(多賀圭次郎、山本靖) Colloid&Interface Communication -News Letter from DCSC, 2013, 38, 16-19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来の流れ促進剤は、循環水として水を対象としており、外気温度が低い場合、凍結するので循環水として使用することができない問題がある。また、従来の流れ促進剤は不凍液であるエチレングリコール水溶液には効果が無い。
【課題を解決するための手段】
【0018】
循環水としてエチレングリコールを対象とした、含エチレングリコール流体用流れ促進剤、及びこの促進剤を含む含エチレングリコール循環水を提供する。
【0019】
発明1は、オルト-トルイル酸および非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドからなることを特徴とする含エチレングリコール流体用流れ促進剤である。
発明2は、非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドは、アルキル鎖炭素原子数が、14または16または18であることを特徴とする発明1に記載する含エチレングリコール流体用流れ促進剤である。
発明3は、オルト-トルイル酸およびアルキル鎖炭素原子数14の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドおよびアルキル鎖炭素原子数16の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドからなることを特徴とする含エチレングリコール流体用流れ促進剤である。
発明4は、オルト-トルイル酸およびアルキル鎖炭素原子数16の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドおよびアルキル鎖炭素原子数18の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドからなることを特徴とする含エチレングリコール流体用流れ促進剤である。
発明5は、発明1乃至発明4に記載のいずれか1つの含エチレングリコール流体用流れ促進剤を含むことを特徴とする含エチレングリコール循環水である。
【発明の効果】
【0020】
発明1の含エチレングリコール流体用流れ促進剤は、エチレングリコール水溶液に添加することにより、流れを促進する効果がある。
発明2の含エチレングリコール流体用流れ促進剤は、アルキル鎖炭素原子数を、14または16または18にすることで、エチレングリコール水溶液の流れを促進する効果のある温度帯を特定することができる。アルキル鎖炭素原子数が14は低温度用、アルキル鎖炭素原子数が16は中温用、アルキル鎖炭素原子数が18は高温用である。
発明3の含エチレングリコール流体用流れ促進剤は、アルキル鎖炭素原子数14の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドおよびアルキル鎖炭素原子数16の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドを混合することにより、低温用と中温用の中間の温度帯でエチレングリコール水溶液の流れを促進する効果がある。
発明4の含エチレングリコール流体用流れ促進剤は、アルキル鎖炭素原子数16の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドおよびアルキル鎖炭素原子数18の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドを混合することにより、中温用と高温用の中間の温度帯でエチレングリコール水溶液の流れを促進する効果がある。
発明5は、発明1乃至発明4に記載のいずれか1つの含エチレングリコール流体用流流れ促進剤を添加することにより、様々な温度帯で流れを促進する効果のある含エチレングリコール循環水を得ることができる。
また、オルト-トルイル酸および非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドは、環境負荷型のカチオン性ではなく非イオン性であるので発明1乃至4の含エチレングリコール流体用流れ促進剤および発明5の含エチレングリコール循環水は環境低負荷型である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】アルキル鎖炭素原子数が16の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドとオルト-トルイル酸の複合体(以下、C16DMAO-OTA複合体)の分子構造を示す。
【図2】一連の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド(ADMAO)とオルト-トルイル酸(OTA)複合体(ADMAO/OTA複合体)の渦抑制と温度効果(エチレングリコール20%水溶液)
【図3】一連の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド(ADMAO)とオルト-トルイル酸(OTA)複合体(ADMAO/OTA複合体)の渦抑制と温度効果(エチレングリコール30%水溶液)
【図4】渦高さによるスクリーニング装置の全体構成を示す図である。(a) スターラーで撹拌子を回転させると渦が発生、(b) 流れ促進剤を添加すると渦抑制効果が発生、(c) 回転を停止すると、気泡が逆回転する跳ね戻り現象が発生(溶液は水、主剤濃度は1000ppm、回転数は700rpmである)
【図5】流れ促進剤を含む循環水の渦抑制効果の測定と温度依存性を示す。(a)25℃、(b)35℃(溶液は水、回転数は700rpm)
【図6】セチルトリメチルアンモニウム(CTA)カチオン/サリチル酸(Sal)アニオン複合体(CTA-Sal)の分子構造を示す。
【図7】C16DMAO/4-OHBz複合体の分子構造を示す。
【図8】種々のADMAOと添加剤の渦高さの温度依存性:4-ヒドロキシ安息香酸、4-OHBz;安息香酸、0-OHBz;クミン酸、CumA(主剤濃度1000ppm、添加剤当量量論比、回転数700rpm)。
【図9】C14DMAO/4-OHBzとODMAO単体のDR実験(25℃)である。(a)は、管摩擦係数(λ)とRe数の測定結果を示す。(b)は、流れ促進(DR)効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0023】
循環水としてエチレングリコールを対象とした、含エチレングリコール流体用流れ促進剤1、及びこの促進剤3を含む含エチレングリコール循環水を提供する。
含エチレングリコール水溶液中では、CTABとSalNaの組み合わせも、また一連のADMAOとSalOHの組み合わせも渦抑制を示さなかった。そこで、いろいろな添加剤について調べたところ、エチレングリコール水溶液中では、主剤ADMAOに対して渦抑制効果を示す添加剤は、オルト-トルイル酸(OTA)のみであることがわかった。図1に、アルキル鎖炭素原子数が16の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド(C16DMAO)とオルト-トルイル酸(OTA)の複合体(以下、C16DMAO-OTA複合体)との溶液中で推定される分子構造を示す。この結果は、密度汎関数法を用いた構造最適化により得られた構造である。

【0024】
また、主剤のアルキル鎖炭素原子数が14の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド
(C14DMAO)では、0℃以下で渦抑制を示したが、アルキル鎖長を長くすることにより、渦抑制の温度範囲が高温に広がることがわかった。即ち、非イオン性アルキルジメチルアミンオキシドのアルキル鎖炭素原子数を14から16、または16から18とすることで、渦抑制の温度範囲を高温に広げることができる。
図2にエチレングリコール20%水溶液中における渦抑制効果を示す(主剤濃度1000ppm、添加剤当量量論比、回転数700rpm)。縦軸が渦高さ、横軸が温度である。

【0025】
図2は、一連の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド(ADMAO)とオルト-トルイル酸(OTA)の複合体(ADMAO/OTA複合体)の渦抑制と温度効果を、エチレングリコール20%水溶液で示す。
図2に示されるように、アルキル鎖炭素原子数が14の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド(以下、C14DMAO)では-10℃~20℃の範囲で渦抑制効果があり低温用である。アルキル鎖炭素原子数が16の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド(以下、C16DMAO)は10℃~50℃の範囲で渦抑制効果があり中温用である。アルキル鎖炭素原子数が14の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド(以下、C18DMAO)は、35℃以上で渦抑制効果があり高温用である。低温循環水中での流れ促進剤も必要とされているが、C14DMAとOTAの組み合わせが有効であると思われる。

【0026】
図3は、一連の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド(ADMAO)とオルト-トルイル酸(OTA)の複合体(ADMAO/OTA複合体)の渦抑制と温度効果を、エチレングリコール30%水溶液で示す。
図3に示されるように、渦抑制の温度範囲が狭くなっており、低温用のC14DMAOでは-10℃~0℃で渦抑制効果がある。中温用のC16DMAOでは10℃~30℃で渦抑制効果がある。高温用のC18DMAOでは30℃~50℃付近で渦抑制効果がある。

【0027】
また、これ以上の高濃度のエチレングリコール水溶液中では渦抑制は示さない。

【0028】
低温用のC14DMAOと中温用のC16DMAOを混合して用いることにより、両者の中間の温度で渦抑制効果がある。温度範囲はエチレングリコール20%水溶液では10℃~30℃、エチレングリコール30%水溶液では5℃~15℃ほどである。

【0029】
中温用のC16DMAOと高温用のC18DMAOを混合して用いることにより、両者の中間の温度で渦抑制効果がある。温度範囲はエチレングリコール20%水溶液では25℃~60℃、エチレングリコール30%水溶液では20℃~45℃ほどである。

【0030】
以上により、循環水としてエチレングリコールを対象とした、含エチレングリコール流体用流れ促進剤1、及びこの促進剤1を含む含エチレングリコール循環水3を提供することができる。

【0031】
発明1は、オルト-トルイル酸20および非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド22からなることを特徴とする含エチレングリコール流体用流れ促進剤1である。
発明2は、非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド22は、アルキル鎖炭素原子数が、14または16または18であることを特徴とする発明1に記載する含エチレングリコール流体用流れ促進剤1である。
発明3は、オルト-トルイル酸20およびアルキル鎖炭素原子数14の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド224およびアルキル鎖炭素原子数16の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド226からなることを特徴とする含エチレングリコール流体用流れ促進剤である。
発明4は、オルト-トルイル酸20およびアルキル鎖炭素原子数16の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド226およびアルキル鎖炭素原子数18の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド228からなることを特徴とする含エチレングリコール流体用流れ促進剤である。
発明5は、発明1乃至発明4に記載のいずれか1つの含エチレングリコール流体用流れ促進剤1を含むことを特徴とする含エチレングリコール循環水3である。

【0032】
発明1の含エチレングリコール流体用流れ促進剤1は、エチレングリコール水溶液に添加することにより、流れを促進する効果がある。
発明2の含エチレングリコール流体用流れ促進剤1は、非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド22のアルキル鎖炭素原子数を、14または16または18にすることで、エチレングリコール水溶液の流れを促進する効果のある温度帯を特定することができる。
発明3の含エチレングリコール流体用流れ促進剤1は、アルキル鎖炭素原子数14の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド224およびアルキル鎖炭素原子数16の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド226を混合することにより、低温用と中温用の中間の温度帯でエチレングリコール水溶液の流れを促進する効果がある。
発明4の含エチレングリコール流体用流れ促進剤1は、アルキル鎖炭素原子数16の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド226およびアルキル鎖炭素原子数18の非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド228を混合することにより、中温用と高温用の中間の温度帯でエチレングリコール水溶液の流れを促進する効果がある。
発明5は、エチレングリコール水溶液に、発明1乃至発明4に記載のいずれか1つの含エチレングリコール流体用流れ促進剤1を添加することにより、様々な温度帯で流れを促進する効果のある含エチレングリコール循環水3を得ることができる。
また、オルト-トルイル酸20および非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド22は、環境負荷型のカチオン性ではなく非イオン性であるので発明1乃至4の含エチレングリコール流体用流れ促進剤1および発明5の含エチレングリコール循環水3は環境低負荷型である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
エチレングリコール流体用流れ促進剤1および含エチレングリコール循環水3は、冷暖房用の空調設備の循環水として用いることができる。また、エンジンの冷却水としても利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 含エチレングリコール流体用流れ促進剤
3 促進剤を含む含エチレングリコール循環水
10 渦
12 渦高さ
20 オルト-トルイル酸
22 非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド
224 非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド(炭素原子の数14)
226 非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド(炭素原子の数16)
228 非イオン性アルキルジメチルアミンオキシド(炭素原子の数18)
30 炭素原子
32 水素原子
34 酸素原子
36 窒素原子
40 サリチル酸(Sal)アニオン
42 セチルトリメチルアンモニウム(CTA)カチオン
44 4-ヒドロキシ安息香酸 (4-OHBz)




図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8