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明細書 :半導体集積回路の配線構造設計装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-081261 (P2016-081261A)
公開日 平成28年5月16日(2016.5.16)
発明の名称または考案の名称 半導体集積回路の配線構造設計装置
国際特許分類 G06F  17/50        (2006.01)
H01L  21/3205      (2006.01)
H01L  21/768       (2006.01)
H01L  23/522       (2006.01)
FI G06F 17/50 666S
G06F 17/50 612H
H01L 21/88 Z
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2014-211318 (P2014-211318)
出願日 平成26年10月16日(2014.10.16)
発明者または考案者 【氏名】神谷 庄司
【氏名】大宮 正毅
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 5B046
5F033
Fターム 5B046AA08
5B046JA08
5F033HH11
5F033HH32
5F033MM01
5F033RR04
5F033RR06
5F033RR25
5F033SS04
5F033UU01
5F033UU07
5F033XX37
要約 【課題】半導体集積回路における配線の配線構造設計装置1に関する。
【解決手段】配線10の配線層間の破壊じん性値を測定する配線層間破壊じん性測定部2と、配線10の加工プロセスに起因した応力を計算する応力計算部31および配線のエネルギー解放率を計算するエネルギー解放率計算部32からなるエネルギー解放率計算部3と、配線10の結晶粒構造を測定する結晶粒構造解析部4と、剥離判定部5とを有し、剥離判定部5において、配線層間破壊じん性測定部2から得られた配線10の破壊じん性値分布40およびエネルギー解放率計算部32から得られた配線10のエネルギー解放率分布42より、半導体集積回路の配線層間の剥離発生確率を計算する配線構造設計装置1である。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
半導体集積回路の配線を設計する配線構造設計装置において、
前記配線の配線層間の破壊じん性値を測定する配線層間破壊じん性測定部と、
前記配線の加工プロセスに起因した応力を計算する効力計算部および前記配線のエネルギー解放率を計算するエネルギー解放率計算部からなるエネルギー解放率計算部と、
前記配線の結晶粒構造を測定する結晶粒構造解析部と、
剥離判定部とを有し、
前記剥離判定部において、
前記配線層間破壊じん性測定部から得られた前記配線の破壊じん性値分布および前記エネルギー解放率計算部から得られた前記配線のエネルギー解放率分布より、
前記半導体集積回路の配線層間の剥離発生確率を計算することを特徴とする配線構造設計装置。
【請求項2】
前記エネルギー解放率計算部の前記エネルギー解放率を計算する工程において、
前記エネルギー解放率を、
前記配線の配線層間を仮想的に剥離させることにより生じるエネルギー変化を剥離面積で割ることにより計算することを特徴とする請求項1に記載する配線構造設計装置。






発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路における配線を設計する配線構造設計装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路は銅配線と絶縁膜層が交互に多層に積層された多層配線構造となっている.そして、次世代の高速・高集積度LSI内部では、集積回路内の配線間隔の微細化がすすめられている。さらに、配線遅延による性能劣化を防ぐため、銅を用いた配線と低誘電率をもつ層間絶縁材が使用されている。しかし、層間絶縁膜は低誘電率になるほど、ヤング率が低下するなどの機械的特性が低下を引き起こす。そして、異種材料が隣り合っている銅配線と絶縁膜の界面の機械的強度低下させ層間剥離を誘発する。
【0003】
一方、集積回路を形成したシリコンチップを実装基板に取り付ける際に、はんだボールを用いて接合するフリップチップ実装が行われている。その結果、シリコンチップと実装基板との熱膨張係数の違いから、接合部に熱応力が発生する。また、実稼働時の外力負荷により、ヤング率の大きいシリコンチップとヤング率の小さい層間絶縁膜との変形のミスマッチからも応力が発生する。
【0004】
このようなシリコンチップと基板との相互作用(Chip Package Interaction、以下CPI)による応力は製品の機械的信頼性を大きく低下させ、半導体集積回路製造の後工程でたびたび問題となり、設計や製造プロセスの見直しなど、製品開発において多大な損失を生じさせる(非特許文献1、2)。
【0005】
CPIによる半導体集積回路の配線層間剥離については、複合材料の物性値を用いてLSIチップのモデルを簡易化して応力を解析する方法や、剥離発生の予測を多段階のステップに分けて解析することで計算を容易にする方法等が提案されている(特許文献1、非特許文献3)。また、LSIチップの特定箇所の剥離強度を評価するために、配線層間のエネルギー解放率を計算し剥離を予測する手法も提案されている(特許文献2)。
【0006】
配線層間の剥離がおきるか否かについては、破壊力学的な考察から式1で判定することが可能である。
G>Gc (式1)
ここで,Gはエネルギー解放率を,Gcは破壊じん性値を表す.すなわち、銅配線/絶縁膜界面にき裂または欠陥がある場合、そのき裂または欠陥を進展させる駆動力であるエネルギー解放率と、その進展に対する抵抗力である破壊じん性値を用いて判定できる。一方、銅配線/絶縁膜界面の破壊じん性値は銅配線表面の結晶粒の大きさ・分布、結晶方位などの不均質な結晶粒構造に依存することが指摘されている(非特許文献4)。そのため、局所的な結晶粒構造の特性を反映した界面強度の定量的評価が重要な課題となってきている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特許公開2007-213269号公報
【特許文献2】特許公開2011-204081号公報
【0008】

【非特許文献1】Guotao Wang, Paul S. Ho, Steven Groothuis, "Chip-packaging interaction: a critical concern for Cu/Low k packaging", Microelectronics Reliability, Vol.45, (2005), pp.1079-1093.
【非特許文献2】内堀,他4名,信学技報,SDM2008-214,p.45-49.
【非特許文献3】望月宣宏,他3名,「CMP中のlow-k材料界面のはく離可能性の予測方法」,エバラ時報,株式会社荏原総合研究所,No.219, 2008年4月,pp.21-27.
【非特許文献4】Kamiya S., Sato, H., Nishida, M., Chen, C., Shishido, N., Omiya, M., Suzuki, T., Nakamura, T., Nokuo, T., Nagasawa, T., "Micro-scale evaluation of interface strength on the patterned structures in LSI interconnects", AIP Conference Proceedings, Vol.1300, (2010), pp.33-38.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、銅配線/絶縁膜界面における破壊を予測するためには、銅配線/絶縁膜界面の破壊じん性値が必要となる。しかし、従来手法では、応力あるいはエネルギー解放率といったき裂を進展するための駆動力側のみに着目しており、材料側のじん性値を考慮できていない点に問題がある。さらに,銅配線/絶縁膜界面の破壊じん性値は銅配線表面の不均質な結晶粒構造に依存するため、曲げ試験など比較的大きな試験片から得られる銅配線/絶縁膜界面の破壊じん性値は結晶粒構造を反映しておらず不十分である。そのため、従来手法では、剥離の危険性を定性的に示すことはできても、定量的に剥離を予測することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以上のような目的を解決するためになされたものである。
発明1は、半導体集積回路の配線を設計する配線構造設計装置において、配線の配線層間の破壊じん性値を測定する配線層間破壊じん性測定部と、配線の加工プロセスに起因した応力を計算する工程および配線のエネルギー解放率を計算する工程からなるエネルギー解放率計算部と、配線の結晶粒構造を測定する結晶粒構造解析部と、剥離判定部とを有し、剥離判定部において、配線層間破壊じん性測定部から得られた配線の破壊じん性値分布およびエネルギー解放率計算部から得られた配線のエネルギー解放率分布より、半導体集積回路の配線層間の剥離発生確率を計算することを特徴とする配線構造設計装置である。
発明2は、エネルギー解放率計算部のエネルギー解放率を計算する工程において、エネルギー解放率を、配線の配線層間を仮想的に剥離させることにより生じるエネルギー変化を剥離面積で割ることにより計算することを特徴とする請求項1に記載する配線構造設計装置である。
【発明の効果】
【0011】
開示の配線構造設計装置によれば、半導体集積回路の配線層の剥離を定量的に予測することができる。
発明1は、配線層の剥離を設計段階で把握することができるため、剥離を防ぐ配線構造設計により、半導体装置が高品質・高信頼性化する効果がある。また、半導体集積回路製造時の配線層間の剥離に伴う故障リスクを定量的に把握することができるため、剥離を防ぐ製造プロセス設計により、半導体装置の生産効率を向上させる効果がある。さらに、半導体集積回路の配線層間の剥離故障リスクを定量化することができるため、製品の適切な設計寿命、価格設定が可能となる効果がある。
発明2は、配線層の塑性変形を考慮して剥離に必要な正味のエネルギーを正確に算出する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態1の配線構造設計装置の構成を示す。
【図2】実施形態2の配線構造断面図を示す。
【図3】実施形態2の配線層間破壊じん性測定試験方法を示す。
【図4】実施形態2の配線層間破壊じん性測定試験の結果を示す。
【図5】実施形態2の配線層間破壊じん性値分布とエネルギー解放率分布および判定結果を示す。
【図6】実施形態3の配線構造断面図を示す。
【図7】破壊じん性値分布とエネルギー解放率分布との積集合を取ることで銅配線/絶縁膜界面における破壊確率を示す(温度変化:400℃から25℃)。
【図8】破壊じん性値分布とエネルギー解放率分布との積集合を取ることで銅配線/絶縁膜界面における破壊確率を示す(温度変化:800℃から25℃)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0014】
(実施形態1)
図1は、実施形態1における配線構造設計装置1の構成を示す。配線構造設計装置1は、LSIチップの製造プロセス中に生じる応力に対して配線層間に与える影響を評価し、プロセス起因の剥離に強い配線構造を提供する装置である。

【0015】
配線構造設計装置1は、配線層間破壊じん性測定部2と、エネルギー解放率計算部3と、結晶粒構造解析部4と、剥離判定部5と、出力部6とを有している。
配線層間破壊じん性測定部2は、設計対象の半導体集積回路と同じ材料で構成される試験片から配線層間の破壊じん性値を測定する。即ち、配線層間破壊じん性測定部2は、まず,半導体集積回路における配線構造を有した試験片を集束イオンビームにより加工してブロック形状の試験片を製作する。その後、ナノインデンターで銅配線/絶縁膜界面付近にブロックの横方向から荷重を負荷することで、銅配線/絶縁膜界面にき裂を進展させる。このとき、界面より離れた箇所に荷重点がくると不安定破壊を引き起こし、正確にじん性値を求めることができない。破壊荷重は、ナノインデンターに取り付けたロードセルで測定する。

【0016】
上記実験では破壊荷重しか求まらないため、シミュレーションにより界面の破壊じん性値を求める。界面の破壊じん性値を仮定したき裂進展シミュレーションを実施し、破壊荷重が一致する場合のじん性値を、界面の破壊じん性値として採用する。なお、き裂進展シミュレーションを行うソフトウェアとしては、例えば、ABAQUS,ANSYS,NASTRAN等が挙げられるが、実施形態1の目的に適うものであれば特に限定されず、いかなるソフトウエアも用いることができる。

【0017】
得られた実験結果は、銅の結晶方位によって破壊じん性値が変わる。そのため、電子線後方散乱回折法(EBSD)等で破壊実験を行った箇所の銅の結晶方位を測定し、結晶方位別に破壊じん性値を整理する。

【0018】
エネルギー解放率計算部3では、設計対象の半導体集積回路をモデル化した回路モデルを製作する際に生じる加工プロセスに起因した応力を計算する応力計算部31と、測定対象部位の配線層間を仮想的に剥離させることにより生じるエネルギー変化を剥離面積で割り、エネルギー解放率を計算するエネルギー解放率計算部32とから構成される。半導体デバイスの製造工程をシミュレートすることで、製造時に銅配線/絶縁膜構造に生じる応力を再現することが可能であり、これをもとにエネルギー解放率計算を行うことで,銅配線/絶縁膜界面の剥離予測を行うことができる。

【0019】
半導体集積回路の加工プロセスに起因した応力を計算する応力計算部31では、シリコンウェハの酸化、絶縁膜のデポジション、エッチング、熱処理、銅配線のデポジション、メッキなどのプロセスをシミュレートする。これらの製造工程において、温度変化や結晶構造の違いに起因した応力が銅配線や絶縁膜に生じるため、応力を正確に予測する必要がある。

【0020】
上記シミュレーションを行うためのソフトウェアとしては、例えば、HyENEXSS,Synopsys Sentaaurus Process等があげられるが、本発明の目的に適うものであれば特に限定されず、いかなるソフトウエアも用いることができる。

【0021】
エネルギー解放率を計算するエネルギー解放率計算部32では、加工プロセスに起因した応力を計算する応力計算部31で得られた応力をもとに、有限要素法により銅配線/絶縁膜界面のエネルギー解放率を計算する。具体的には、銅配線/絶縁膜界面に所定のき裂寸法を仮定して配線構造全体をメッシュで区切ったメッシュモデルを作成する。そしてき裂先端の配線層間で共有する1節点を分離して、分離する前後のエネルギー変化を求める。これを、節点を分離することで生じるき裂進展面積で除すことによりその節点におけるエネルギー解放率を計算する。そして、この作業を銅配線上のすべての節点に対して行い、エネルギー解放率の空間分布をヒストグラムを用いて統計的に処理する。

【0022】
なお、「所定のき裂寸法」とは、銅配線/絶縁膜構造を研磨などで絶縁膜を薄く削った際に、電子顕微鏡で銅配線表面を観察した際に見える欠陥の寸法を用いると精度よくエネルギー解放率を評価できる。

【0023】
結晶粒構造解析部4は、銅配線の結晶粒構造を解析する。たとえば、電子線後方散乱回折法(EBSD)で銅配線上における結晶粒の大きさや方位分布を求めることができる。そして、配線層間破壊じん性測定部2で求めた結晶方位別の破壊じん性値の配線上における出現頻度をヒストグラムを用いて統計的に処理する。

【0024】
剥離判定部5は、配線層間破壊じん性測定部から得られた配線上の破壊じん性値分布と、エネルギー解放率計算部から得られた配線上のエネルギー解放率分布を比較することにより、半導体集積回路の配線層間の剥離発生確率を計算する。

【0025】
まず、エネルギー解放率計算部3から得られた配線上におけるエネルギー解放率のヒストグラムから、確率密度関数を決定する。同様に、結晶粒構造解析部5から得られた配線上の破壊じん性値のヒストグラムから、確率密度関数を決定する。

【0026】
実施形態1の剥離判定には、破壊力学的な考察から式1を用いる。この式を満足すれば,銅配線/絶縁膜界面における剥離が発生する。上記より破壊じん性値およびエネルギー解放率の確率密度関数が決定されたので、両者の積集合をとることで剥離する確率を求めることができる。なお、具体的な比較判定工程についての一例は、実施形態2および実施形態3にて詳述する。

【0027】
確率密度関数として、正規分布、ワイブル分布などがあり、実施形態1の目的に適うものであれば特に限定されず、いかなる分布関数を用いてもよい.

【0028】
出力部6は、判定部5より得られた判定結果、およびエネルギー解放率、破壊じん性値分布などの各種情報を出力する。

【0029】
このような配線構造設計装置1によれば、配線層間破壊じん性測定部2により、配線層間のじん性値が求められる。また、エネルギー解放率計算部3により、設計対象の半導体集積回路をモデル化した回路モデルを用いて、加工プロセスに起因した配線構造に負荷される応力分布が求められる。さらに、測定対象部位の配線層間を仮想的に剥離させることにより生じるエネルギー変化を剥離面積で割ることで、エネルギー解放率が求められる。そして、配線上の全節点に対して、エネルギー解放率を求めることで、配線上のエネルギー解放率分布が計算される。

【0030】
また、結晶粒構造解析部4により、配線上の結晶方位およびその分布を求め、配線層間破壊じん性測定部2で求めた結晶方位別の破壊じん性値の配線上における出現頻度をヒストグラムを用いて統計的に処理される。

【0031】
そして、剥離判定部5により、配線層間破壊じん性測定部から得られた配線上の破壊じん性値分布と、エネルギー解放率計算部から得られた配線上のエネルギー解放率分布から、それぞれの確率密度関数が計算され、その積集合を計算することにより、半導体集積回路の配線層間の剥離発生確率が計算される。

【0032】
出力部6により、剥離判定部5より得られた判定結果、エネルギー解放率、および破壊じん性値分布などの各種情報が出力される。

【0033】
実施形態1は、材料が持つ剥離に対する抵抗力である銅配線/絶縁膜界面における破壊じん性値分布と、加工プロセスに起因した剥離の駆動力となるエネルギー解放率分布とを対比させることで、銅配線/絶縁膜界面において剥離が発生する確率が計算可能となる。そして、半導体集積回路の製造工程における銅配線/絶縁膜界面の剥離発生予測に限らず、実働時における外力に起因した剥離発生等、CPIによる故障発生を予測する手法として利用することができる。

【0034】
ユーザーは、剥離発生確率をもとに、配線構造や材料選択の変更を行うことで、CPIによる配線層の剥離が起きにくい半導体集積回路を製作することができ、高い信頼性を有した製品開発が可能となる。

【0035】
なお、エネルギー解放率計算部3、剥離判定部5は配線構造設計装置1が有するCPU(Central Processing Unit)が備える機能により実現することができる。

【0036】
以下、実施の形態をより具体的に説明する。
(実施形態2)

【0037】
(配線層間破壊じん性測定)
図2に、実施形態2の半導体集積回路で用いられている配線構造の断面を示す。試験片は、シリコンウェハ上にダマシン法により銅の配線10を形成したサンプルを用いた。

【0038】
図3に、実施形態2の配線層間破壊じん性測定試験方法を示す。図3に示す形状に、集束イオンビームにより加工し、ナノインデンターによる破壊実験を実施した。まず、図3に示す形状(300 nm x 300 nm x 470 nm)に試験片を集束イオンビームにより加工した。その後、ナノインデンター22により荷重を負荷して、配線10と試験片20、即ち銅とSiN界面をはく離させる破壊実験を実施し、配線層間破壊じん性値を測定した。

【0039】
図4に、実施形態2の配線層間破壊じん性測定試験の結果を示す。これは、用いた試験片の銅配線上の結晶方位分布を電子線後方散乱回折法(EBSD)で解析し、き裂進展シミュレーションより得られた結晶方位別の破壊じん性値であり、Cu原子30による結晶モデルにおいて、[001]すべり面32、[111]すべり面34、[101]すべり面36における破壊じん性値をそれぞれ示す。

【0040】
(エネルギー解放率計算部)
シリコンウェハ上にダマシン法により銅配線を形成する過程をシミュレートした。具体的には、酸化シリコンの成膜、エッチング、銅のデポジション、エッチング、絶縁膜のデポジション工程となる。これらの製造工程で生じる応力を逐次計算し、最終的な構造に残る残留応力を計算した。

【0041】
続いて、プロセスシミュレータの結果を有限要素解析の初期応力として与えた。そして、銅配線/絶縁膜界面におけるエネルギー解放率を求めた。そして、銅配線上のエネルギー解放率分布をヒストグラムで整理し、確率密度関数を図5のように決定した。

【0042】
(剥離判定結果)
図5に、実施形態2の配線層間破壊じん性値分布40とエネルギー解放率分布42および判定結果を示す。配線層間破壊じん性値分布40とエネルギー解放率分布42との積集合を取ることで、破壊確率は0.0167と計算された。即ち、銅配線/絶縁膜界面における剥離発生確率が定量的に求められることが確認された。

【0043】
(実施形態3)
(エネルギー解放率計算部)
半導体集積回路で用いられている多層配線構造について、層間絶縁膜(ILD)としてTEOS材を用いた場合とSiLK材を用いた場合の比較を行った。図6に、実施形態3の配線構造断面図を示す。層間絶縁膜(ILD)を介して2本の配線10が平行あり、2本の配線10は配線繋ぎ部12により電気的に接続されている。この構造について、シリコンウェハ上にダマシン法により銅配線を形成する過程をプロセスシミュレータにて解析を行った。具体的には、酸化シリコンの成膜、エッチング、銅のデポジション、エッチング、絶縁膜のデポジション工程となる。これらの製造工程で生じる応力を逐次計算し、最終的な構造に残る残留応力を計算した。なお、プロセス温度を400℃から25℃に冷却した場合と、800℃から25℃に冷却した場合の2つの解析を行った。

【0044】
続いて、プロセスシミュレータの結果を有限要素解析の初期応力として与えた。そして、銅配線/絶縁膜界面におけるエネルギー解放率を求めた。そして、銅配線上のエネルギー解放率分布をヒストグラムで整理し、確率密度関数を図7のように決定した。

【0045】
(剥離判定結果)
銅および絶縁膜は実施形態2と同じ材料構成なので、破壊じん性値分布は実施形態2の結果を用いた。その結果、図7のように破壊じん性値分布40とエネルギー解放率分布42との積集合を取ることで銅配線/絶縁膜界面における破壊確率は、400℃から25℃の温度変化で、TEOS材の場合0.00706、SiLK材の場合0.00713と計算された。

【0046】
同様に、図8のように破壊じん性値分布40とエネルギー解放率分布42との積集合を取ることで銅配線/絶縁膜界面における破壊確率は、800℃から25℃の温度変化では、TEOS材の場合0.00995、SiLK材の場合0.01292と計算された。この結果から、プロセス温度が上がるほど銅配線/絶縁膜界面ではく離する危険性が増すことが示された。

【0047】
半導体集積回路の配線層間の剥離の発生を予測する配線構造設計装置1は、配線層間破壊じん性測定部2とエネルギー解放率計算部3、結晶粒構造解析部4、剥離判定部5を有している。
配線層間破壊じん性測定部2は、設計対象の半導体集積回路のモデル試験片から、配線層間の破壊じん性値を測定する。エネルギー解放率計算部3は、設計対象の半導体集積回路をモデル化した回路モデルの加工プロセスに起因した応力を計算する応力計算部31と測定対象部位の配線層間を仮想的に剥離させることにより生じるエネルギー変化を剥離面積で割りエネルギー解放率を計算するエネルギー解放率計算部32からなる。結晶粒構造解析部4は、設計対象の半導体集積回路の配線上における結晶粒構造を測定する。剥離判定部5は、配線層間破壊じん性測定部2から得られた配線上の破壊じん性値分布と、エネルギー解放率計算部3から得られた配線上のエネルギー解放率分布を、それぞれ統計的に処理し比較し、重ね合わせた面積を計算することにより、半導体集積回路の配線層間の剥離発生確率を計算する。

【0048】
以上、実施形態による発明は以下のようである。
発明1は、半導体集積回路の配線を設計する配線構造設計装置1において、配線10の配線層間の破壊じん性値を測定する配線層間破壊じん性測定部2と、配線10の加工プロセスに起因した応力を計算する応力計算部31および配線のエネルギー解放率を計算するエネルギー解放率計算部32からなるエネルギー解放率計算部3と、配線10の結晶粒構造を測定する結晶粒構造解析部4と、剥離判定部5とを有し、剥離判定部5において、配線層間破壊じん性測定部2から得られた配線10の破壊じん性値分布40およびエネルギー解放率計算部32から得られた配線10のエネルギー解放率分布42より、半導体集積回路の配線層間の剥離発生確率を計算することを特徴とする配線構造設計装置1である。
発明2は、エネルギー解放率計算部32のエネルギー解放率を計算する工程において、エネルギー解放率を、配線10の配線層間を仮想的に剥離させることにより生じるエネルギー変化を剥離面積で割ることにより計算することを特徴とする請求項1に記載する配線構造設計装置1である。

【0049】
以上、実施形態による発明は以下の効果がある。本発明の配線構造設計装置1によれば、半導体集積回路の配線層の剥離を定量的に予測することができる。
発明1は、配線層の剥離を設計段階で把握することができるため、剥離を防ぐ配線構造設計により、半導体装置が高品質・高信頼性化する効果がある。また、半導体集積回路製造時の配線層間の剥離に伴う故障リスクを定量的に把握することができるため、剥離を防ぐ製造プロセス設計により、半導体装置の生産効率を向上させる効果がある。さらに、半導体集積回路の配線層間の剥離故障リスクを定量化することができるため、製品の適切な設計寿命、価格設定が可能となる効果がある。
発明2は、配線層の塑性変形を考慮して剥離に必要な正味のエネルギーを正確に算出する効果がある
【符号の説明】
【0050】
1 配線構造設計装置
2 配線層間破壊じん性測定部
3 エネルギー解放率計算部
31 応力計算部
32 エネルギー解放率計算部
4 結晶粒構造解析部
5 剥離判定部
6 出力部
10 配線
12 配線繋ぎ部
20 試験片
22 インデンター
30 Cu原子
32 [001]すべり面
34 [111]すべり面
36 [101]すべり面
40 破壊じん性値分布
42 エネルギー解放率分布




図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7