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明細書 :蕎麦様食品、及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-217321 (P2014-217321A)
公開日 平成26年11月20日(2014.11.20)
発明の名称または考案の名称 蕎麦様食品、及びその製造方法
国際特許分類 A23L   1/16        (2006.01)
FI A23L 1/16 C
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2013-098787 (P2013-098787)
出願日 平成25年5月8日(2013.5.8)
発明者または考案者 【氏名】鶴永 陽子
出願人 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B046
Fターム 4B046LA02
4B046LA04
4B046LC06
4B046LG29
4B046LG30
4B046LG33
4B046LP03
要約 【課題】蕎麦粉以外の穀粉を用いて、蕎麦に類似した外観(麺の色調及びキメ)、及び食感を有する蕎麦様食品、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】蕎麦粉以外の穀粉、及び未脱渋柿加工物を麺用材料として用いて製麺することにより製造する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
蕎麦粉以外の穀粉、及び未脱渋柿加工物を用いて製麺することにより製造される、蕎麦様食品。
【請求項2】
蕎麦粉以外の穀粉が、小麦粉及び米粉から選択される少なくとも1種の穀粉である、請求項1に記載する蕎麦様食品。
【請求項3】
未脱渋柿加工物が、脱渋していない渋柿の乾燥粉末、搾汁、ペースト、並びに搾汁及びペーストの乾燥粉末からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載する蕎麦様食品。
【請求項4】
穀粉100重量部に対する未脱渋柿加工物の割合が、乾燥重量に換算して0.5~20重量部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載する蕎麦類食品。
【請求項5】
蕎麦代替食品である、請求項1乃至4のいずれかに記載する蕎麦様食品。
【請求項6】
蕎麦の製造方法において、蕎麦粉以外の穀粉及び未脱渋柿加工物を用いて製麺する工程を有する、蕎麦様食品の製造方法。
【請求項7】
蕎麦粉以外の穀粉が、小麦粉及び米粉から選択される少なくとも1種の穀粉である、請求項6に記載する蕎麦様食品の製造方法。
【請求項8】
未脱渋柿加工物が、脱渋していない渋柿の乾燥粉末、搾汁、ペースト、並びに搾汁及びペーストの乾燥粉末からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6または7に記載する蕎麦様食品の製造方法。
【請求項9】
穀粉100重量部に対する未脱渋柿加工物の割合が乾燥重量に換算して0.5~20重量部であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載する蕎麦様食品の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、蕎麦粉以外の穀粉を用いて、蕎麦に類似した外観(麺の色調及びキメ)、及び食感を有する蕎麦様食品、およびその製造方法に関する。特に、蕎麦粉を含まない蕎麦様食品、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本には、蕎麦アレルギー患者が3万5千人いるといわれている。蕎麦によるアレルギーはアナフィラキシーショックを引き起こす等、他の食物アレルギーと比較して症状が重篤である。このため、蕎麦アレルギーの患者は、少量たりとも蕎麦を食することができない。
【0003】
近年、アレルギー患者を対象とした代替食品が開発されているが、蕎麦は独特な風合いと食感を有しているため、蕎麦の代替食品を製造することは難しく、その開発は遅れている。雑穀とタピオカ澱粉で製造された蕎麦代替食品が市販されているが、本物の蕎麦と比較すると、風合いや食感はほど遠いものがある。また、イカスミなどで小麦粉や米粉を色づけすることも考えられるが、この場合、麺から黒色が溶出し、茹で汁が黒くなるなどの欠点がある。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2005-143480号公報
【特許文献2】特開2004-166509号公報
【特許文献3】特許3671175号公報
【特許文献4】特開2000-175639号公報
【特許文献5】特許3086679号公報
【0005】

【非特許文献1】アレンタウン(株式会社ソーコムの通販サイト)インターネット<URL:http://allentown.co.jp/SHOP/FMS002.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の従来技術の課題を解決すること、具体的には、蕎麦粉以外の穀粉を用いて、蕎麦に類似した外観(麺の色調及びキメ)、及び食感を有する蕎麦様食品、およびその製造方法を提供することである。特に本発明が目的とするところは、蕎麦粉を用いることなく、蕎麦に類似した外観(麺の色調及びキメ)、及び食感を有する蕎麦様食品、およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねていたところ、蕎麦粉に代えて、小麦粉や米粉に脱渋していない渋柿の搾汁またはペースト(未脱渋柿加工物)を添加したものを用いて、蕎麦粉と同様の方法で製麺した麺が、本物の蕎麦麺と麺の色調(明度、色度)やキメ等の外観、及び食感において極めて類似していることを見出した。また本発明者は、上記の未脱渋柿加工物に代えて、脱渋した渋柿の搾汁またはペースト(脱渋柿加工物)を用いて小麦粉を製麺した場合は、蕎麦麺とは異なる外観及び食感の麺しか得られないことを確認し、上記蕎麦様食品が得られるという効果は脱渋していない渋柿加工物(未脱渋柿加工物)を用いることによって得られる特有の効果であることを確認した。
【0008】
本発明はこれらの知見に基づいて完成したものであり、下記の実施態様を包含する。
【0009】
(I)蕎麦様食品
(I-1)蕎麦粉以外の穀粉及び脱渋していない渋柿加工物(未脱渋柿加工物)を用いて製麺することにより製造される、蕎麦様食品。
(I-2)蕎麦粉を含まないことを特徴とする、(I-1)に記載する蕎麦様食品。
(I-3)蕎麦粉以外の穀粉が、小麦粉及び米粉から選択される少なくとも1種の穀粉である、(I-1)または(I-2)に記載する蕎麦様食品。
(I-4)上記未脱渋柿加工物が、脱渋していない渋柿の乾燥粉末、搾汁、ペースト、並びに搾汁及びペーストの乾燥粉末からなる群から選択される少なくとも1種である、(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する蕎麦様食品。
(I-5)穀粉100重量部に対する未脱渋柿加工物の割合が、乾燥重量で0.5~20重量部であることを特徴とする(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する蕎麦類食品。
(I-6)蕎麦代替食品である、(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載する蕎麦様食品。
【0010】
(II)蕎麦様食品の製造方法
(II-1)蕎麦の製造方法において、蕎麦粉以外の穀粉及び脱渋していない渋柿加工物(未脱渋柿加工物)を用いて製麺する工程を有する、蕎麦様食品の製造方法。
(II-2)蕎麦粉以外の穀粉が、小麦粉及び米粉から選択される少なくとも1種の穀粉である、(II-1)に記載する蕎麦様食品の製造方法。
(II-3)上記未脱渋柿加工物が、脱渋していない渋柿の乾燥粉末、搾汁、ペースト、並びに搾汁及びペーストの乾燥粉末からなる群から選択される少なくとも1種である、(II-1)または(II-2)に記載する蕎麦様食品の製造方法。
(II-4)穀粉100重量部に対する未脱渋柿加工物の割合が、乾燥重量に換算して0.5~20重量部であることを特徴とする(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載する蕎麦様食品の製造方法。
(II-5)蕎麦粉を使用しないことを特徴とする、(II-1)乃至(II-4)のいずれかに記載する製造方法。
(II-6)蕎麦代替食品の製造方法である、(II-1)乃至(II-5)のいずれかに記載する蕎麦様食品の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の蕎麦様食品は、原料として未脱渋柿加工物を用いることを特徴とし、かかる未脱渋柿加工物を用いることにより、小麦粉や米粉等の蕎麦粉以外の穀粉を用いた場合でも、蕎麦に類似した外観(色調、キメ)及び食感を有する蕎麦様食品(麺)を製造することができる。このため、本発明の製造方法によれば、蕎麦粉を用いることなく、蕎麦と類似した麺が製造できるため、蕎麦アレルギー患者に、蕎麦粉を含まない蕎麦類似食品(蕎麦代替食品)として提供することができる。
【0012】
また、本発明は渋柿の果実の加工物(果実の乾燥粉末、果実から搾った搾汁、果実をすり潰したペーストなど)を使用するため、本発明によれば、規格外の渋柿の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実験例1において、対照麺(1段目)、被験麺A(2段目:渋柿搾汁配合)、被験麺B(3段目:脱渋ペースト配合)、被験麺C(4段目:渋柿ペースト配合)の各製造工程における状態(混ねつ10分、混ねつ20分、ねかし(熟成))、及び茹でた後の麺状態を示す画像である。
【図2】(A)実験例1にて製造した生麺[上から対照麺(1段目)、被験麺A(2段目:渋柿搾汁配合)、被験麺B(3段目:脱渋ペースト配合)、被験麺C(4段目:渋柿ペースト配合)]の外観を示す画像である。(B)実験例1にて製造した生麺を茹でた状態[対照麺(上段左)、被験麺A(下段左:渋柿搾汁配合)、被験麺B(上段右:脱渋ペースト配合)、被験麺C(下段右:渋柿ペースト配合)]の外観を示す画像である。
【図3】(A)実験例1にて製造した生麺[対照麺(Cont(水))、被験麺A(渋柿搾汁添加)、被験麺B(脱渋ペースト添加)、被験麺C(渋柿ペースト添加)]の色調(明度L、色度b)を市販の蕎麦(蕎麦市販:生麺)の色調と対比した結果を示す。(B)上記(A)で対比した麺をそれぞれ茹でた後に、色調(明度L、色度b)を市販の蕎麦(蕎麦市販:茹で麺)の色調と対比した結果を示す。
【図4】実験例1にて製造した生麺の茹で麺[対照麺(Cont(水))、被験麺A(渋柿搾汁添加)、被験麺B(脱渋ペースト添加)、被験麺C(渋柿ペースト添加)]の弾性率(Pa)を市販の蕎麦(茹で麺)の弾性率と対比した結果を示す。
【図5】実験例2において、被験麺a(渋柿搾汁25g)、被験麺b(渋柿搾汁50g)、被験麺c(渋柿搾汁75g)、及び被験麺d(渋柿搾汁100g)の混ねつ工程(混ねつ10分、混ねつ20分)における状態を示す画像である。
【図6】(A)実験例2にて製造した乾麺[対照麺、被験麺a(渋柿搾汁25g)、被験麺b(渋柿搾汁50g)、被験麺c(渋柿搾汁75g)、被験麺d(渋柿搾汁100g)、被験麺e(脱渋ペースト50g)、及び被験麺f(渋柿ペースト50g)]の色調(明度L)を市販の蕎麦(乾麺)の色調と対比した結果を示す。(B)実験例2にて製造した乾麺[対照麺、被験麺a(渋柿搾汁25g)、被験麺b(渋柿搾汁50g)、被験麺c(渋柿搾汁75g)、被験麺d(渋柿搾汁100g)、被験麺e(脱渋ペースト50g)、及び被験麺f(渋柿ペースト50g)]の色調(色度b)を市販の蕎麦(乾麺)の色調と対比した結果を示す。
【図7】実験例2にて製造した乾麺の茹で麺〔対照麺、被験麺a(渋柿搾汁25g)、被験麺b(渋柿搾汁50g)、被験麺c(渋柿搾汁75g)、被験麺d(渋柿搾汁100g)、被験麺e(脱渋ペースト50g)、及び被験麺f(渋柿ペースト50g)〕の弾性率(Pa)を、市販の蕎麦(乾麺の茹でた麺)の弾性率と比較した結果を示す。
【図8】実験例2にて製造した乾麺の茹で麺〔対照麺、被験麺a(渋柿搾汁25g)、被験麺b(渋柿搾汁50g)、被験麺c(渋柿搾汁75g)、被験麺d(渋柿搾汁100g)、被験麺e(脱渋ペースト50g)、及び被験麺f(渋柿ペースト50g)〕の破断荷重(N)を、市販の蕎麦(乾麺の茹でた麺)の破断荷重と比較した結果を示す。
【図9】実験例2にて製造した乾麺の茹で麺〔対照麺、被験麺a(渋柿搾汁25g)、被験麺b(渋柿搾汁50g)、被験麺c(渋柿搾汁75g)、被験麺d(渋柿搾汁100g)、被験麺e(脱渋ペースト50g)、及び被験麺f(渋柿ペースト50g)〕の外観(麺の色)を、市販の蕎麦(乾麺の茹でた麺)の外観(麺の色)と比較した結果を示す。
【図10】実験例2にて製造した乾麺の茹で麺〔対照麺、被験麺a(渋柿搾汁25g)、被験麺b(渋柿搾汁50g)、被験麺c(渋柿搾汁75g)、被験麺d(渋柿搾汁100g)、被験麺e(脱渋ペースト50g)、及び被験麺f(渋柿ペースト50g)〕の外観(麺のキメ)を、市販の蕎麦(乾麺の茹でた麺)の外観(麺のキメ)と比較した結果を示す。
【図11】実験例2にて製造した乾麺の茹で麺〔対照麺、被験麺a(渋柿搾汁25g)、被験麺b(渋柿搾汁50g)、被験麺c(渋柿搾汁75g)、被験麺d(渋柿搾汁100g)、被験麺e(脱渋ペースト50g)、及び被験麺f(渋柿ペースト50g)〕の食感を、市販の蕎麦(乾麺の茹でた麺)の食感と比較した結果を示す。
【図12】実験例3にて、小麦粉と米粉との混合粉を用いて製造した生麺(左から、(A)対照麺[渋柿搾汁なし]、(B)被験麺D[渋柿搾汁配合])の外観を示す画像である。
【図13】(A)実験例3にて製造した生麺(対照麺(渋柿搾汁なし)、被験麺D(渋柿搾汁有り))の色調(明度L、色度b)を対比した結果を示す。(B)上記(A)で対比した麺をそれぞれ茹でた後に、色調(明度L、色度b)を対比した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(I)蕎麦様食品
本発明の蕎麦様食品は、蕎麦粉以外の穀粉及び未脱渋柿加工物を用いて製造される食品であって、外観(色調及びキメ)及び食感が蕎麦に類似していることを特徴とする。

【0015】
(1)穀粉
ここで蕎麦粉以外の穀粉としては、小麦粉及び米粉を挙げることができる。これらは一種単独で使用してもよいし、また二種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。好ましくは小麦粉単独使用、及び小麦粉と米粉との混合使用である。

【0016】
小麦粉は、大きく強力粉、準強力粉、中力粉、及び薄力粉に分類することができるが、本発明において、好ましくは準強力粉、中力粉、及び薄力粉であり、より好ましくは中力粉、及び薄力粉であり、特に好ましくは中力粉である。またこれらの各種小麦粉も、一種単独で使用してもよいし、また二種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。

【0017】
なお、穀粉として、小麦粉と米粉との混合物を使用する場合、両者の割合は特に制限されないものの、通常、重量比で小麦粉:米粉が5:1~1:5の割合、好ましくは5:1~1:2の割合を挙げることができる。

【0018】
これらの穀粉の粒度は、通常、麺製品に製造に使用される粒度であれば制限はされないものの、例えば60メッシュの篩(JIS篩)を通過する穀粉の総量が95%以上、望ましくは100メッシュの篩(JIS篩)を通過する穀粉の総量が95%以上であることが好ましい。

【0019】
本発明の蕎麦様食品は、上記する蕎麦粉以外の穀粉を、穀粉全量(100重量%)の90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは98重量%以上、さら好ましくは100重量%含むものである。本発明の蕎麦様食品は、特に好ましくは、蕎麦粉を含まず、穀粉全量が蕎麦粉以外の穀粉からなるものである。

【0020】
(2)未脱渋柿加工物
本発明の蕎麦様食品は、上記穀粉に加えて、未脱渋柿加工物を含むことを特徴とする。

【0021】
本発明において「未脱渋柿加工物」とは、脱渋していない渋柿の加工物を意味する。

【0022】
ここでいう柿は、カキノキ属に属するカキノキの果実であり、渋柿とは、カキノキの果実のうち、実が熟しても果肉に渋が残る柿である。よく知られた渋柿としては、西条柿、甲州百目、蜂屋、富士、江戸柿、平核無、刀根柿(刀根早生柿)、市田柿、四つ溝、会津身知らず、愛宕、西村早生、横野及び堂上蜂屋柿などを例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。

【0023】
渋柿に関して「脱渋」とは、渋柿の果肉内で渋味を感じさせる可溶性タンニン(カキタンニン)が完全に不溶化することで渋味がなくなることを意味する。従って「脱渋柿」とは、カキタンニンが不溶化することで渋味が消失した渋柿を意味する。一方、「未脱渋柿」(脱渋していない渋柿)とは、渋柿の果肉内に渋味を感じさせる可溶性タンニン(カキタンニン)が不溶化しないままで存在しているために渋味がする渋柿である。このため、本発明が対象とする「未脱渋柿」には、収穫したそのままの状態の渋柿、収穫後に脱渋処理をしていない渋柿、及び収穫後に脱渋処理を行っていても可溶性タンニンが十分に不溶化しておらず、渋味が残っている渋柿(可溶性タンニンが残存する渋柿)が含まれる。 なお、脱渋処理とは、渋柿の果肉内の可溶性タンニン(カキタンニン)を不溶化するための処理である。一般に、渋柿の脱渋処理としては、炭酸ガス処理、ドライアイス処理、アルコール処理、温湯処理、包装密封処理、乾燥処理などを例示することができるが、これらに限定されない。炭酸ガス処理は、脱渋する対象の渋柿をいれた密閉容器内に炭酸ガスを充填して炭酸ガスに渋柿を晒す方法である。ドライアイス処理は、脱渋する対象の渋柿をドライアイスとともに密閉容器(袋)にいれ、ドライアイスから発生する炭酸ガスに渋柿を晒す方法である。この意味で炭酸ガス処理の一種といえる。アルコール処理は、脱渋する対象の渋柿をアルコールに浸漬するか、または渋柿にアルコールを噴霧して密封することで脱渋する方法である。温湯処理は、40℃前後の温湯に渋柿を15時間程度浸漬して脱渋する方法である。包装密封処理は、渋柿を気密性の高いフィルム袋に密封し、果実の呼吸により排出される炭酸ガスを利用して脱渋する方法である。また乾燥処理は、渋柿を乾燥させて干柿にする方法である。

【0024】
前述するように、本発明が対象とする「未脱渋柿」は、このような脱渋処理に供されていない渋柿であることが好ましいが、脱渋処理に供されたとしても完全に脱渋されていなければよく、従って渋味が残っている渋柿(可溶性タンニンが残存する渋柿)も含まれる。

【0025】
本発明が対象とする「未脱渋柿加工物」は、上記する未脱渋柿の果肉を加工処理した物であり、例えば未脱渋柿の果肉の乾燥粉末、未脱渋柿の果肉の搾汁またはその乾燥粉末、並びに未脱渋柿の果肉のペーストまたはその乾燥粉末などを挙げることができる。好ましくは未脱渋柿の果肉の搾汁またはその乾燥粉末である。

【0026】
未脱渋柿の果肉の乾燥粉末は、未脱渋柿の果肉を乾燥後、粉末状に粉砕することによって製造することができる。乾燥及び粉砕方法は、未脱渋柿の果肉が完全に脱渋されてしまう方法及び条件でなければよい。その限りにおいて、乾燥方法は、真空凍結乾燥、熱風乾燥、遠赤外線乾燥、減圧乾燥、及びマイクロ波減圧乾燥の中から選択することができる。また、粉砕方法も、上記の限りにおいて特に制限されず、粉砕器を用いた通常の粉砕方法を挙げることができる。

【0027】
搾汁は、未脱渋柿の果肉から、例えば果肉を圧搾または裏漉しすることで搾り出した汁であり、簡便には、搾汁器または搾汁機を用いて調製することができる。なお、搾汁機として、チョッパーバルバー式、インライン式、ブラウン式、ベルト式、キャタピラ式の搾汁機等を挙げることができる。なお、搾汁は、完全に脱渋されないことを限度として使用に供するまで冷凍保存されてもよい。搾汁の乾燥粉末は、未脱渋柿の果肉の搾汁を乾燥後、粉末状に粉砕することによって製造することができる。乾燥及び粉砕方法は、未脱渋柿の果肉の搾汁が完全に脱渋されてしまう方法及び条件でなければよく、その限りにおいて、前述する方法を同様に用いることができる。

【0028】
ペーストは、未脱渋柿の果肉をすり潰してペースト状にしたものであり、簡便にはミキサーを用いて調製することができる。なお、すり潰しに際しては、必要に応じて、未脱渋柿の果肉重量の約5倍量を上限として水を添加してもよく、斯くしてペーストの硬さや粘度を調整することもできる。

【0029】
なお、ペーストは、完全に脱渋されないことを限度として使用に供するまで冷凍保存されてもよい。ペーストの乾燥粉末は、未脱渋柿の果肉のペーストを乾燥後、粉末状に粉砕することによって製造することができる。乾燥及び粉砕方法は、未脱渋柿の果肉のペーストが完全に脱渋されてしまう方法及び条件でなければよく、その限りにおいて、前述する方法を同様に用いることができる。

【0030】
本発明の蕎麦様食品において、穀粉の総重量(100重量部)に対する未脱渋柿加工物の割合は、本発明の効果を奏することを限度として、特に制限されない。未脱渋柿加工物として未脱渋柿の搾汁を使用する場合は、穀粉の総重量100重量部(乾燥重量)に対して5~30重量部(湿重量、以下同じ)、好ましくは10~30重量部、より好ましく15~25重量部の割合を挙げることができる。また未脱渋柿加工物として未脱渋柿のペーストを使用する場合は、穀粉の総重量100重量部(乾燥重量)に対して5~30重量部(湿重量、以下同じ)、好ましくは10~30重量部、より好ましくは15~25重量部の割合を挙げることができる。

【0031】
また、未脱渋柿加工物として未脱渋柿の果肉の乾燥粉末、未脱渋柿の果肉搾汁の乾燥粉末、または未脱渋柿の果肉ペーストの乾燥粉末を使用する場合は、穀粉の総重量100重量部(乾燥重量)に対して0.5~20重量部(乾燥重量、以下同じ)、好ましくは1~5重量部、より好ましくは1.5~4.5重量部、特に好ましく2~4重量部の割合を挙げることができる。従って前述する搾汁及びペーストの割合も乾燥重量に換算すると、上記の割合(穀粉の総重量100重量部に対して0.5~20、好ましくは1~5重量部、より好ましくは1.5~4.5重量部、特に好ましく2~4重量部)になる。

【0032】
(3)その他の副原料
本発明の蕎麦様食品には、製造原料として、前述する穀粉及び未脱渋柿加工物(これを、以下、本発明の蕎麦様食品の「主原料」ともいう)以外に、本発明の効果を損なわないことを限度にして、山芋、鶏卵及び海藻類(いずれも乾燥粉末形態のものを含む)などのつなぎ;食塩;澱粉(馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、ワラビ粉など);プロピレングリコールやソルビットなどの水分活性低下剤、重合リン酸塩類等の金属イオン封鎖剤、乳化剤、増粘安定剤、pH調整剤などの食品添加物を配合することもでき、また即席麺の場合は、必要に応じて、蕎麦の即席麺と同様に、さらにローカストビーンガム、炭酸カルシウム、重曹、イースト、グアガム、ソルビット、第2リン酸ナトリウム、アミラーゼ、レシチン、CMC等を添加することも可能である。以下、これらを総称して、本発明の蕎麦様食品の「副原料」ともいう。

【0033】
(4)蕎麦様食品の種類及び特徴
本発明の蕎麦様食品は、麺の形態を有しており、前述する上記穀粉及び未脱渋柿加工物(主原料)、及び必要に応じて上記の副原料を含む麺用原料を製麺することで製造することができる。製麺は、通常の蕎麦の製麺工程に従って(または準じて)行うことができ、その詳細は、下記(II)において説明する。本発明の蕎麦様食品は、その製造方法に応じて、生麺、半生麺、乾燥麺、即席麺(ノンフライ麺、フライ麺、生めんタイプ)、茹で麺、蒸し麺、及び冷凍麺として製造することができ、いずれも本発明の蕎麦様食品に含まれる。

【0034】
斯くして製造される本発明の蕎麦様食品は、蕎麦に類似する外観を有しており、且つ食感も蕎麦に類似していることを特徴とする。

【0035】
ここで外観としては、特に麺の色調及びキメを挙げることができる。麺のキメは目視により、また麺の色調は、目視並びに色度計により測定することができ、蕎麦粉を用いて製造される本物の蕎麦を対照品(以下、単に「対照品」という)として、それとの類似性をもとに評価することができる。

【0036】
目視による評価(色調及びキメ)は、被験対象となる本発明の蕎麦様食品と対照品とを被験サンプルとして用いてパネルに2点試験法(2点識別法)を行うことで実施できるが、簡便には、パネルに対照品と本発明の蕎麦様食品とを提示して、対照品との類似の程度を3~5段階で評価してもらう方法で実施することができる。色度計による評価(色調)は、例えばCIE1976(L*a*b*)表色系(JIS Z 8729)を用いる場合、明度を示すL*の値と色度(色相と彩度)を示すa*またはb*の値から評価することができる。特に蕎麦特有の麺の黒色は、L*値とb*値が、対照品のL*値とb*値に類似しているか否かで評価することができる。

【0037】
蕎麦の食感は、上記目視試験と同様に、被験対象となる本発明の蕎麦様食品と対照品とを被験サンプルとして用いてパネルに食してもらい、2点試験法(2点識別法)を行うことで実施できるが、簡便には、パネルに対照品と本発明の蕎麦様食品とを食してもらい、対照品との食感の類似の程度を3~5段階で評価してもらう方法で実施することができる。また、他の方法として、後述する実験例で示すように、本発明の蕎麦様食品の物性(最大荷重、破断荷重)を測定し、対照品の当該物性との類似性を評価することで実施することもできる。

【0038】
(II)蕎麦様食品の製造方法
本発明の蕎麦様食品は、穀粉及び未脱渋柿加工物(主原料)、及び必要に応じて副原料を含む麺用原料を通常の蕎麦と同様の方法で製麺する工程により製造することができる。

【0039】
製麺工程は、混ねつ、麺帯形成、圧延、及び麺線切り出しの大きく4つの工程からなる。

【0040】
(1)混ねつ工程
混ねつ工程は、麺用原料を、水(以下、「捏水」という)と混ぜ合わせ、捏ねる工程である。麺用原料には、(I)で説明する穀粉及び未脱渋柿加工物(主原料)の他、副原料が含まれる。

【0041】
捏水は飲料水であればよい。通常、pHがpH5.8~8.6の範囲にあり、アルカリ度が20ppm以下、硬度が150ppm以下の飲料水が用いられる。アルカリ度は水中に含まれる重炭酸塩、炭酸塩、及び水酸化物等のアルカリ分を炭酸カルシウムのppmで表したものであり、好ましくは0~20ppmの範囲のうち、より低いアルカリ度を有する飲料水であることが好ましい。硬度は水中に溶解しているカルシウムとマグネシウムのイオンの量をこれに対する炭酸カルシウムのppmで表したものである。前述するように150ppm以下であればよいが、好ましくは150ppm以下の軟水である。

【0042】
副材料として食塩を使用する場合、捏水に溶解して用いられる。食塩は通常、主原料として使用する穀粉100重量部に対して0~8重量部程度の割合で使用することができる。好ましくは穀粉100重量部に対して2~5重量部の割合になるように配合する。

【0043】
混ねつ工程は麺用原料(主原料、副原料)を、上記の捏水と混ぜ合わせて捏ねる工程であり、ここで用いる捏水の割合は、主原料として用いる未脱渋柿加工物中の水分含量に応じて、穀粉の総重量100重量部(乾燥重量)に対して20~50重量部の範囲から、適宜選択設定することができる。なお、捏水の温度は、制限されないものの、20~30℃程度を挙げることができる。

【0044】
混ねつ方法は、手で捏ねる方法(手捏ね)であっても、また混ねつ機(ミキサー)等の機械を用いて捏ねる方法(機械捏ね)のいずれでもよい。機械を用いる場合、通常、ミキサー回転数65~85rpm程度を挙げることができる。混ねつ時間は、手捏ねと機械捏ねで異なるものの、機械捏ねの場合15~30分程度、手捏ねの場合であっても45分以内で捏ねあげることが好ましい。なお、混ねつ工程中、生地温度は30℃以下、好ましくは20~30℃に保持することが好ましい。

【0045】
(2)麺帯形成工程
麺帯形成工程は、上記混ねつ工程で作製した生地(ドウ)をシート状の麺帯(粗麺帯)に成形する工程である。機械を用いて行う場合は、2個一組のロールからなる二組の圧延ロールにより、生地(ドウ)からそれぞれ1枚のシートを作り(2組のシート)、これらの各シートを重ねて1枚の麺帯にする。手で行う場合、圧延ロールに代えて麺棒を用いることで、シート状の麺帯(粗麺帯)を成形することができる。なお、必要に応じて、当該麺帯形成工程の前に、上記混ねつ工程で調製した生地(ドウ)を20~35℃の条件下で0.5~20時間程度静置し、熟成してもよい。

【0046】
この工程中も、生地及び麺帯(粗麺帯)の温度は30℃以下、好ましくは20~30℃に保持することが好ましい。

【0047】
(3)圧延工程
圧延工程は、上記麺帯形成工程で作製した麺帯(粗麺帯)を圧力をかけながら、所望の厚さになるまで薄く延伸する工程である。機械を用いて行う場合は、2個一組のロールからまる圧延ロールを3~5組程度組み合わせた装置に、上記で作製した麺帯(粗麺帯)を供して、徐々に薄くなるように延伸する。手で行う場合、圧延ロールに代えて麺棒を用いることで、麺帯(粗麺帯)を薄く延伸することができる。この工程で、最終的に調製する麺帯の厚みは、通常、1~3mm程度、より好ましくは1.5mm程度である。

【0048】
この工程中も、麺帯の温度は30℃以下、好ましくは20~30℃に保持することが好ましい。

【0049】
(4)麺線切り出し工程
麺線切り出し工程は、上記圧延工程で作製した所望の厚みの麺帯を切断し、麺線を作製する工程である。機械を用いて行う場合は、切刃を備えた切出機を用いて、所望の太さの麺線を作製することができる。麺線の太さは、制限されないものの、通常の蕎麦麺と同じく、JISの規定に基づいて18番手(1.67mm径)~24番手(1.25mm径)の太さになるように調製することが好ましい。より好ましくは20番手~22番手である。手で行う場合、切出機に代えて包丁を用いることで、所望の太さの麺線を作製することができる。

【0050】
この工程中も、麺帯の温度は30℃以下、好ましくは20~30℃に保持することが好ましい。

【0051】
(5)製品化
蕎麦様食品のうち、生麺は上記の工程により製造することができ、そのまま調理に供されるか、または包装されて生麺製品として市場に提供される。

【0052】
蕎麦様食品のうち、茹で麺は、上記の工程で製造された生麺を、熱湯で茹でることによって製造することができ、水洗冷却後、または温かいままで茹で麺として直接消費者に供されるか、または水洗冷却後、包装されて、茹で麺製品として市場に提供される。茹で時間は、麺中の澱粉がα化する時間であればよく制限されないが、通常3~15分程度を挙げることができる。

【0053】
蕎麦様食品のうち、蒸し麺は、上記の工程で製造された生麺を、蒸し機を用いて100℃程度の蒸気で蒸す(蒸熱)ことによって製造することができ、水洗冷却後、または温かいままで蒸し麺として直接消費者に供されるか、または水洗冷却後、包装されて、蒸し麺製品として市場に提供される。蒸し時間は、麺中の澱粉がα化する時間であればよく制限されないが、通常100℃の蒸気で1~5分程度を挙げることができる。

【0054】
蕎麦様食品のうち、半生麺は、上記の工程で製造された生麺を、水分含量が20重量%~24重量%程度になるまで乾燥することで製造することができる。乾燥方法は、特に制限されず、天日干し、温度及び湿度が調整できる乾燥室内で温度と湿度を制御しながら乾燥する方法、熱風乾燥法などを挙げることができる。その後、半生麺は、包装されて市場に提供される。

【0055】
蕎麦様食品のうち、乾麺は、上記の工程で製造された生麺を、水分含量が14重量%程度以下になるまで乾燥することで製造することができる。乾燥方法は、特に制限されず、上記と同様に、天日干し、温度及び湿度が調整できる乾燥室内で温度と湿度を制御しながら乾燥する方法、熱風乾燥法などを挙げることができる。その後、乾麺は、包装されて市場に提供される。

【0056】
蕎麦様食品のうち、冷凍麺は、上記の方法で製造される茹で麺または蒸し麺を、さらに冷凍工程に供して冷凍したものであり、冷凍した状態で包装されて市場に提供される。

【0057】
蕎麦様食品のうち、即席麺は、フライ麺、ノンフライ麺、及び生タイプ麺が3タイプに分類することができる。

【0058】
即席麺は、前述する上記の工程で製造された生麺を、さらに蒸熱工程、切断又は型詰め工程、及び必要に応じて乾燥工程に供することで製造することができる。蒸熱工程は、蒸し機を用いて蒸気で生麺を蒸す工程であり、通常100℃の蒸気で1~5分程度蒸すことによって実施される。ここで麺の中の澱粉がアルファー化される。切断又は型詰め工程は、麺を所望の長さに切断し、棒状即席麺以内の即席麺(袋麺、カップ麺)の場合は、さらに包装形態又は包装容器に応じて、丸型か角形の金属枠に一食ずついれて成型される。乾燥工程は、即席麺の種類によって、その方法が異なる。フライ麺の場合は、金属枠にいれたまま140~160℃の揚げ油に入れ、1~2分通過させる方法(油揚げ法)を採用することができ、かかる方法により30~40%あった水分を3~6%程度まで減少させることができる。ノンフライ麺の場合は、熱風乾燥により乾燥することができ、同じく金属枠にいれたまま熱風乾燥機に入れ、80℃前後の熱風で30分以上乾燥させることにより、水分含量を低下させることができる。なお、生タイプ即席麺は、こうした乾燥工程に供することなく、蒸熱処理した麺を有機酸で処理した後に殺菌することで製造することができる。斯くして製造された麺は、必要に応じて、冷却後、調味料やかやくとともに包装されて、即席麺として市場に提供される。

【0059】
斯くして製造される本発明の蕎麦様食品は、穀粉として蕎麦粉を配合しないで製造した場合でも、前述するようにその外観(色調、麺のキメ)及び食感が、本物の蕎麦麺と類似しており、蕎麦代替食品として市場に供給することができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明およびその効果を、実験例および実施例を用いてより明確に説明する。ただし、本発明はかかる実験例および実施例になんら制限されるものではない。なお、下記の実験例及び実施例において特に言及しない場合は、「部」は重量部を、「%」は重量%を意味するものとする。
【実施例】
【0061】
参考実施例 渋柿加工物の調製
(1)渋柿搾汁の調製
脱渋処理していない渋柿からヘタと種子を除去し、得られた果肉をミキサー(パナソニック製)で荒く砕き、つぎにブレンダー(SUN BEAM OSTER社製)にかけて均質なペースト状になるまで攪拌した。さらに、得られたペーストを搾汁機(SUS社製)にかけてエキスを得た。これを下記の実験例1及び2にて「渋柿搾汁」(未脱渋柿搾汁)として用いた。
【実施例】
【0062】
(2)渋柿ペーストの調製
脱渋処理していない渋柿からヘタと種を除去し、得られた果肉をミキサー(パナソニック社製)で荒く砕き、つぎにブレンダー(SUN BEAM OSTER社製)にかけて均質なペースト状になるまで撹拌した。これを下記の実験例1及び2にて「渋柿ペースト」(未脱渋柿ペースト)として用いた。
【実施例】
【0063】
参考比較例 脱渋柿加工物の調製
渋柿をドライアイスを入れた容器に収容して密閉保存することで脱渋処理し、ついでヘタと種を除去した。斯くして得られた脱渋果肉をミキサー(パナソニック社製)で荒く砕き、つぎにブレンダー(SUN BEAM OSTER社製)にかけて均質なペースト状になるまで撹拌した。これを下記の実験例1及び2にて「脱渋ペースト」として用いた。
【実施例】
【0064】
実験例1 生麺の評価
(1)被験麺の調製
【実施例】
【0065】
【表1】
JP2014217321A_000002t.gif
【実施例】
【0066】
表1に記載する各材料を用いて定法に従って対照麺、及び被験麺A~C(渋柿搾汁添加麺、脱渋ペースト添加麺、渋柿ペースト添加麺)を製造した。具体的には、表1に記載する、打ち粉以外の材料をニーダー(PK601、アシストV株式会社製)にいれ、途中、打ち粉を添加しながら、生地の様子を見ながら約20℃で20~40分間混ねつした(混ねつ工程)。生地がしっかりとまとまった状態を混ねつの終点とした。得られた生地(ドウ)を約5℃の温度条件で、30分間ねかして熟成させ(熟成工程)、次いで延べ棒で生地を厚さ1cm以下にし(麺帯形成工程)、これを製麺機(NC200、日本ニーダー株式会社製)に供し、生地をダイヤル4で一往復、ダイヤル3で一往復させて圧延した(圧延工程)。麺帯の長さが16cmになるように調整し、製麺機(NC200、日本ニーダー株式会社製)を用いて幅4mmに切断した(切り出し工程)。斯くして得られた生麺のうち100gを、沸騰した湯3,000mLにいれて、12分間、時々かき混ぜながら茹でた(茹で麺)。
【実施例】
【0067】
(2)被験麺の評価
(2-1)生地のまとまり性(グルテン形成性)
上記対照麺及び被験麺A~Cの各製造工程における状態(混ねつ10分、混ねつ20分、ねかし(熟成))、及び茹でた後の麺状態を示す画像を図1に示す。「混ねつ10分」、及び「混ねつ20分」の結果からわかるように、渋柿搾汁または渋柿ペーストを配合することで小麦粉のまとまり性が悪くなること、つまり小麦粉に渋柿搾汁または渋柿ペーストを配合することでグルテン形成性が阻害されることがわかった(被験麺A及びC)。一方、脱渋ペーストを配合した小麦粉(被験麺B)は、対照麺とほとんど変わらず生地(ドウ)を調製することができた。
【実施例】
【0068】
(2-2)被験麺の色調
製造した各生麺の画像を図2(A)に、茹で麺の画像を図2(B)に示す。図2(B)の中央の画像は、市販の出雲蕎麦(生麺)を茹でた茹で麺の画像である。
【実施例】
【0069】
これからわかるように、小麦粉に渋柿搾汁または渋柿ペーストを配合して調製した被験麺A及びCは生麺も茹で麺もいずれも蕎麦と同じような黒色を呈していた。これに対して、小麦粉に脱渋ペーストを配合して調製した被験麺Bは、生麺も茹で麺もいずれも柿果実のようにやや黄みがかった色調を呈していた。
【実施例】
【0070】
各種の生麺及び茹で麺の色調(明度L、色度b)を、それぞれ色度計で測定した結果を図3(A)及び(B)に示す(n=10)。
【実施例】
【0071】
この結果から、小麦粉に渋柿搾汁または渋柿ペーストを配合して調製した被験麺A及びCは、明度L*及び色度b*ともに、蕎麦麺に極めて類似していることが判明した。これに対して、小麦粉に渋柿搾汁及び渋柿ペーストを配合しない対照麺はもちろん、小麦粉に脱渋ペーストを配合して調製した被験麺Bは、明度L*及び色度b*ともに、蕎麦麺とは明らかに相違することが判明した。
【実施例】
【0072】
(2-3)被験麺の弾性率
各種の茹で麺の弾性率(Pa)を、クリープメーター(YAMADEN社製 RE3305)で測定した結果を図4に示す(n=10)。
【実施例】
【0073】
この結果から、小麦粉に渋柿搾汁または渋柿ペーストを配合して調製した被験麺A及びCは、小麦粉に渋柿搾汁及び渋柿ペーストのいずれも配合しない対照麺、並びに脱渋ペーストを配合して調製した被験麺Bと比べて、弾性率が、蕎麦麺に類似していることが判明した。
【実施例】
【0074】
(2-4)官能評価
パネル20名に上記で製造した対照麺及び各被験麺A~C(渋柿搾汁添加麺、脱渋ペースト添加麺、渋柿ペースト添加麺)の茹で麺を提示し、外観(麺の色とキメ)、食感、味、及び香りをそれぞれ評価してもらった。なお、評価は、陽性対照としての市販の蕎麦麺と比較して、“とても似ている”を「5」とし、“全く似ていない”を「1」として、5段階評価で行った。なお、パネル20名の得点を集計しその平均値(平均±標準偏差)を求め、その結果から評価した。
【実施例】
【0075】
結果を表2に示す。
【実施例】
【0076】
【表2】
JP2014217321A_000003t.gif
【実施例】
【0077】
この結果からわかるように、小麦粉に渋柿搾汁または渋柿ペーストを配合して調製した被験麺A及びCは、香りを除いて、いずれも外観(麺の色及びキメ)、並びに味と食感において、蕎麦麺に極めて類似していることが判明した。
【実施例】
【0078】
実験例2 乾麺の評価
(1)被験麺の調製
【実施例】
【0079】
【表3】
JP2014217321A_000004t.gif
【実施例】
【0080】
表3に記載する各材料を用いて定法に従って対照麺、及び被験麺a~f(渋柿搾汁25g添加麺、渋柿搾汁50g添加麺、渋柿搾汁75g添加麺、渋柿搾汁100g添加麺、脱渋ペースト50g添加麺、渋柿ペースト50g添加麺)を製造した。具体的には、表3に記載する、打ち粉以外の材料をニーダー(PK601、アシストV株式会社製)にいれ、生地の様子を見ながら約20℃で20~40分間混ねつした(混ねつ工程)。生地がしっかりとまとまった状態を混ねつの終点とした。得られた生地(ドウ)を約5℃の温度条件で、30分間ねかして熟成させ(熟成工程)、次いで延べ棒で生地を厚さ1cm以下にし(麺帯形成工程)、これを製麺機(NC200、日本ニーダー株式会社製)に供し、生地をダイヤル4で一往復、ダイヤル3で一往復させて圧延した(圧延工程)。麺帯の長さが16cmになるように調整し、製麺機(NC200、日本ニーダー株式会社製)を用いて幅4mmに切断した(切り出し工程)。切り出した生麺は、一晩常温にて放置し、乾燥させた(乾燥工程)。得られた乾麺約100gを、沸騰した湯3,000mLにいれて、12分間、時々かき混ぜながら茹でた(茹で麺)。
【実施例】
【0081】
(2)被験麺の評価
(2-1)生地のまとまり性(グルテン形成性)
上記被験麺a~dの混ねつ工程における状態(混ねつ10分、混ねつ20分)を示す画像を図5に示す。「混ねつ10分」、及び「混ねつ20分」の結果からわかるように、渋柿搾汁の添加量を増やすほど小麦粉のまとまり性が悪くなること、つまり小麦粉への渋柿搾汁の配合量が増すほどグルテン形成が阻害されることがわかった。
【実施例】
【0082】
(2-2)色調
製造した各乾麺の色調(明度L*、色度b*)を、色度計で測定した結果を図6(A)及び(B)に示す。この結果から、小麦粉に渋柿搾汁または渋柿ペーストを配合して調製した被験麺a~d及びfの色度b*は、蕎麦麺に極めて類似していることが判明した。また被験麺a及びdを除く、被験麺b、c及びfの明度L*も蕎麦麺に極めて類似していることが判明した。これに対して、小麦粉に渋柿搾汁及び渋柿ペーストを配合しない対照麺はもちろん、小麦粉に脱渋ペーストを配合して調製した被験麺eは、明度L*及び色度b*ともに、蕎麦麺とは明らかに相違することが確認された。
【実施例】
【0083】
(2-3)被験麺の弾性率
各種の乾麺を茹でた茹で麺の弾性率(Pa)を、クリープメーター(YAMADEN社製 RE3305)で測定した結果を図7に示す。
【実施例】
【0084】
この結果から、小麦粉に渋柿搾汁25g~75gを配合して調製した被験麺a~cは、小麦粉に渋柿搾汁及び渋柿ペーストのいずれも配合しない対照麺と比べて、弾性率が、市販の蕎麦麺に類似していることが判明した。
【実施例】
【0085】
(2-4)破断荷重及び最大荷重
各種の乾麺を茹でた茹で麺の硬さを評価するために、当該茹で麺の破断荷重(N)及び最大荷重(N)を、クリープメーター(YAMADEN社製 RE3305)で測定した結果を、それぞれ図8(A)及び(B)に示す。これらの結果から、小麦粉に渋柿搾汁を配合して調製した被験麺a~dおよび渋柿ペーストを配合して調製した被験麺fは、小麦粉に渋柿搾汁及び渋柿ペーストのいずれも配合しない対照麺、及び小麦粉に脱渋ペーストを配合して調製した被験面eと比べて、破断荷重及び最大荷重、つまり茹で麺の硬さが、市販の蕎麦麺と類似していることが判明した。
【実施例】
【0086】
(2-5)官能評価
パネル20名に上記で製造した対照麺及び各被験麺a~f(渋柿搾汁25g添加麺、渋柿搾汁50g添加麺、渋柿搾汁75g添加麺、渋柿搾汁100g添加麺、脱渋ペースト50g添加麺、渋柿ペースト50g添加麺)の茹で麺を提示し、外観(麺の色とキメ)、及び食感をそれぞれ評価してもらった。なお、評価は、陽性対照としての市販の蕎麦麺と比較して、“とても似ている”を「5」とし、“全く似ていない”を「1」として、5段階評価で行った。なお、パネル20名の得点を集計しその平均値(平均±標準偏差)を求め、その結果から評価した。
【実施例】
【0087】
結果を図9に示す。具体的には、図9(A)は麺の色、(B)は麺のキメ、(C)は食感について、本物の蕎麦との類似性を示す。
【実施例】
【0088】
この結果からわかるように、小麦粉に渋柿搾汁(25g~100g)を配合して調製した被験麺a~dは、いずれも外観(麺の色及びキメ)、並びに食感において、蕎麦麺と極めて類似していることが判明した。また渋柿ペーストを配合して調製した被験麺fは、外観、特に麺の色が蕎麦麺と極めて類似していることが判明した。一方、脱渋ペーストを配合して調製した被験麺eは、外観(麺の色及びキメ)、並びに食感のいずれも蕎麦麺との類似性は低かった。
【実施例】
【0089】
実験例3 米粉の使用について
(1)被験麺の調製
【実施例】
【0090】
【表4】
JP2014217321A_000005t.gif
【実施例】
【0091】
表4に記載する各材料を用いて定法に従って対照麺、及び被験麺D(渋柿搾汁添加麺)を製造した。具体的には、表2に記載する材料をニーダー(PK601、アシストV株式会社製)にいれ、途中、打ち粉(中力小麦粉少々)を添加しながら、生地の様子を見ながら約20℃で20~40分間混ねつした(混ねつ工程)。生地がしっかりとまとまった状態を混ねつの終点とした。得られた生地(ドウ)を約5℃の温度条件で、30分間ねかして熟成させ(熟成工程)、次いで延べ棒で生地を厚さ1cm以下にし(麺帯形成工程)、これを製麺機(NC200、日本ニーダー株式会社製)に供し、生地をダイヤル4で一往復、ダイヤル3で一往復させて圧延した(圧延工程)。麺帯の長さが16cmになるように調整し、製麺機(NC200、日本ニーダー株式会社製)を用いて幅4mmに切断した(切り出し工程)。斯くして得られた生麺のうち100gを、沸騰した湯3,000mLにいれて、12分間、時々かき混ぜながら茹でた(茹で麺)。
【実施例】
【0092】
(2)被験麺の評価
(2-1)被験麺の色調
製造した各生麺の画像を図12に示す。これからわかるように、小麦粉及び米粉の混合粉に渋柿搾汁を配合して調製した被験麺Dは蕎麦と同じような黒色を呈していた。これに対して、渋柿搾汁無添加の小麦粉及び米粉の混合粉で調製した対照麺は小麦粉と米粉そのものの淡黄色を呈していた。色調は、茹でた後も変わらず、茹で麺も同様の色調であった。対照麺と被験麺Dの生麺及び茹で麺の色調(明度L、色度b)を、それぞれ色度計で測定した結果を図13(A)及び(B)に示す。
【実施例】
【0093】
(2-2)官能評価
パネル6名に上記で製造した対照麺及び被験麺D(渋柿搾汁添加麺)の茹で麺を提示し、外観(麺の色とキメ)、食感、味、及び香りをそれぞれ評価してもらった。なお、評価は、陽性対照としての市販の蕎麦麺と比較して、“とても似ている”を「5」とし、“全く似ていない”を「1」として、5段階評価で行った。なお、パネル6名の得点を集計しその平均値(平均±標準偏差)を求め、その結果から評価した。
【実施例】
【0094】
結果を表5に示す。
【実施例】
【0095】
【表5】
JP2014217321A_000006t.gif
【実施例】
【0096】
図12及び13、並びに表5の結果からわかるように、小麦粉と米粉の混合粉に渋柿搾汁を配合して調製した被験麺Dは、香りを除いて、いずれも外観(麺の色及びキメ)、並びに味と食感において、蕎麦麺に極めて類似していることが判明した。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12